(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141506
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
F01P 7/04 20060101AFI20241003BHJP
F01P 3/20 20060101ALI20241003BHJP
F01P 5/02 20060101ALI20241003BHJP
F01P 7/02 20060101ALI20241003BHJP
F01P 11/10 20060101ALI20241003BHJP
E02F 9/00 20060101ALI20241003BHJP
B60K 11/04 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
F01P7/04
F01P3/20 L
F01P5/02 H
F01P7/02 H
F01P7/02 G
F01P11/10 K
E02F9/00 M
B60K11/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053201
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小泉 博史
(72)【発明者】
【氏名】東 祐司
【テーマコード(参考)】
2D015
3D038
【Fターム(参考)】
2D015CA02
3D038AA06
3D038AB09
3D038AC14
3D038AC23
3D038AC26
(57)【要約】
【課題】複数の冷却ファンによって生起された冷却風を通過させる共通の冷却風流路を有する作業機械において、オーバーヒートを防止する技術を提供する。
【解決手段】作業機械は、第1温度が高いほど速くなるように第1目標回転数を算出し、第2温度が高いほど速くなるように第2目標回転数を算出し(S12)、第1目標回転数から第2目標回転数を減じた差分値が閾値未満の場合に(S13:Yes)、第1目標回転数で第1冷却ファンを回転させ(S14)、且つ第2目標回転数で第2冷却ファンを回転させ(S15)、差分値が閾値以上の場合に(S13:No)、第1目標回転数で第1冷却ファンを回転させ(S17)、且つ第1目標回転数から閾値を減じた修正第2目標回転数で第2冷却ファンを回転させる(S18)ファン制御処理を実行する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却風を生起させる第1冷却ファン及び第2冷却ファンと、
前記第1冷却ファン及び前記第2冷却ファンによって生起された冷却風を通過させる共通の冷却風流路を画定する流路部材と、
前記第1冷却ファンに対面して配置され、前記冷却風流路を通過する冷却風と第1流体を熱交換させる第1熱交換器と、
前記第2冷却ファンに対面して配置され、前記冷却風流路を通過する冷却風と第2流体を熱交換させる第2熱交換器と、
前記第1流体の温度である第1温度を検知する第1温度センサと、
前記第2流体の温度である第2温度を検知する第2温度センサと、
前記第1温度センサ及び前記第2温度センサの検知結果に基づいて、前記第1冷却ファン及び前記第2冷却ファンの回転数を制御するコントローラとを備える作業機械において、
前記コントローラは、
前記第1温度が高いほど速くなるように第1目標回転数を算出し、
前記第2温度が高いほど速くなるように第2目標回転数を算出し、
前記第1目標回転数から前記第2目標回転数を減じた差分値が閾値未満の場合に、前記第1目標回転数で前記第1冷却ファンを回転させ、且つ前記第2目標回転数で前記第2冷却ファンを回転させ、前記差分値が前記閾値以上の場合に、前記第1目標回転数で前記第1冷却ファンを回転させ、且つ前記第1目標回転数から前記閾値を減じた修正第2目標回転数で前記第2冷却ファンを回転させるファン制御処理を実行することを特徴とする作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械において、
前記コントローラは、前記第1温度が低いほど前記閾値を大きくすることを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項1に記載の作業機械において、
前記第1流体および前記第2流体を目標温度に近づける暖機処理を開始させる暖機スイッチを備え、
前記コントローラは、前記暖機スイッチにより前記暖機処理の開始が指示された場合、前記第1温度が高いほど速くなるように算出した第1暖機回転数で前記第1冷却ファンを回転させ、且つ予め固定値に設定された第2暖機回転数で前記第2冷却ファンを回転させる前記暖機処理を、前記第1温度が第1暖機目標温度以上になるか、前記第2温度が第2暖機目標温度以上になるまで継続することを特徴とする作業機械。
【請求項4】
請求項1に記載の作業機械において、
前記第1流体および前記第2流体を目標温度に近づける暖機処理を開始させる暖機スイッチと、
前記作業機械の周囲の温度である外気温度を検知する外気温センサを備え、
前記コントローラは、前記暖機スイッチにより前記暖機処理の開始が指示された場合、前記第1温度が高いほど速くなるように算出した第1暖機回転数で前記第1冷却ファンを回転させ、且つ前記外気温度が高いほど速くなるように算出した第2暖機回転数で前記第2冷却ファンを回転させる前記暖機処理を、前記第1温度が第1暖機目標温度以上になるか、前記第2温度が第2暖機目標温度以上になるまで継続することを特徴とする作業機械。
【請求項5】
請求項1に記載の作業機械において、
前記第1流体および前記第2流体を目標温度に近づける暖機処理を開始させる暖機スイッチを備え、
前記コントローラは、前記暖機スイッチにより前記暖機処理の開始が指示された場合、前記第1温度が高いほど速くなるように算出した第1暖機回転数で前記第1冷却ファンを回転させ、且つ前記第2温度の時間変化が大きいほど速くなるように算出した第2暖機回転数で前記第2冷却ファンを回転させる前記暖機処理を、前記第1温度が第1暖機目標温度以上になるか、前記第2温度が第2暖機目標温度以上になるまで継続することを特徴とする作業機械。
【請求項6】
請求項3に記載の作業機械において、
前記コントローラは、前記暖機処理を終了した場合に、前記第1冷却ファンを規定回転数まで減速してから、前記ファン制御処理を開始することを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の熱交換器及び複数の冷却ファンを備えた作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、油圧ショベルなどの作業機械には、エンジンの冷却水を冷却するラジエータ、油圧システムの作動油を冷却するオイルクーラ、過給機により圧縮された空気を冷却するインタークーラなどの複数の熱交換器が搭載されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、複数の熱交換器と、複数の熱交換器それぞれに対面して配置された複数の冷却ファンとを備える作業機械が開示されている。また、特許文献1では、各冷却ファンが生起させた冷却風の流路が熱交換器毎に分断されている。そして、この作業機械は、複数の冷却ファンそれぞれの回転数を、対応する熱交換器内の流体の温度に応じて個別に制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図15は、従来例に係る熱交換器ユニット90の概略図である。
図16は、
図15の熱交換器ユニット90の熱交換器温度(A)及び冷却ファン回転数(B)の推移を示す図である。
図15に示すように、他の従来例に係る熱交換器ユニット90は、熱交換器91a、91bから冷却ファン92a、92bに至る冷却風の流路が共通化されている。以下、
図15に示す熱交換器ユニット90に対して、前述した個別制御を適用した場合を考える。なお、
図15における矢印の太さは、冷却風の風量を表す。
【0006】
まず、
図15(A)に示すように、冷却ファン92a、92bの回転数が同程度の場合、熱交換器91a、91bを通過する冷却風の風量も同程度になる。この状態から熱交換器91b内の流体の温度が上昇すると、熱交換器91bを通過する冷却風の風量を増加させるために、個別制御によって冷却ファン92bの回転数が速くなる。
【0007】
しかしながら、
図15(B)に示すように、冷却ファン92a、92bの回転数の差が大きくなると、冷却ファン92bは、対面する熱交換器91bのみならず、隣接する熱交換器91aを通過した冷却風をも吸い込んでしまう。すなわち、
図15に示す熱交換器ユニット90において個別制御で冷却ファン92bの回転数を増加させても、熱交換器91bを通過する冷却風は、熱交換器91b内の温度上昇を抑えられる程には増加しない。
【0008】
その結果、
図16に示すように、熱交換器91bの熱交換器温度がさらに上昇し、冷却ファン92bの回転数もさらに上昇する。その結果、冷却ファン92a、92bの回転数の差がさらに大きくなる悪循環に陥って、熱交換器91bの熱交換器温度が上限値に達する(すなわち、オーバーヒートする)。
【0009】
本発明は、上記した実状に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数の冷却ファンによって生起された冷却風を通過させる共通の冷却風流路を有する作業機械において、オーバーヒートを防止する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、冷却風を生起させる第1冷却ファン及び第2冷却ファンと、前記第1冷却ファン及び前記第2冷却ファンによって生起された冷却風を通過させる共通の冷却風流路を画定する流路部材と、前記第1冷却ファンに対面して配置され、前記冷却風流路を通過する冷却風と第1流体を熱交換させる第1熱交換器と、前記第2冷却ファンに対面して配置され、前記冷却風流路を通過する冷却風と第2流体を熱交換させる第2熱交換器と、前記第1流体の温度である第1温度を検知する第1温度センサと、前記第2流体の温度である第2温度を検知する第2温度センサと、前記第1温度センサ及び前記第2温度センサの検知結果に基づいて、前記第1冷却ファン及び前記第2冷却ファンの回転数を制御するコントローラとを備える作業機械において、前記コントローラは、前記第1温度が高いほど速くなるように第1目標回転数を算出し、前記第2温度が高いほど速くなるように第2目標回転数を算出し、前記第1目標回転数から前記第2目標回転数を減じた差分値が閾値未満の場合に、前記第1目標回転数で前記第1冷却ファンを回転させ、且つ前記第2目標回転数で前記第2冷却ファンを回転させ、前記差分値が前記閾値以上の場合に、前記第1目標回転数で前記第1冷却ファンを回転させ、且つ前記第1目標回転数から前記閾値を減じた修正第2目標回転数で前記第2冷却ファンを回転させるファン制御処理を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複数の冷却ファンによって生起された冷却風を通過させる共通の冷却風流路を有する作業機械において、オーバーヒートを防止することができる。なお、上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図5】熱交換器温度と目標回転数との対応関係を示すテーブルの例を示す図である。
【
図6】
図4に示すファン制御処理中における熱交換器温度(A)及び冷却ファン回転数(B)の推移を示す図である。
【
図7】本実施形態に係る暖機制御処理のフローチャートである。
【
図8】本実施形態に係る熱交換器温度と暖機回転数との対応関係を示すテーブルの例を示す図である。
【
図9】
図7に示す暖機制御処理中における熱交換器温度(A)及び冷却ファン回転数(B)の推移を示す図である。
【
図10】変形例1に係る暖機制御処理のフローチャートである。
【
図11】変形例1に係る熱交換器温度と暖機回転数との対応関係を示すテーブルの例を示す図である。
【
図12】変形例2に係る暖機制御処理のフローチャートである。
【
図13】
図12に示す暖機制御処理中における熱交換器温度(A)及び冷却ファン回転数(B)の推移を示す図である。
【
図14】変形例3に係る暖機制御処理のフローチャートである。
【
図15】従来例に係る熱交換器ユニットの概略図である。
【
図16】
図15の熱交換器ユニットの熱交換器温度(A)及び冷却ファン回転数(B)の推移を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る油圧ショベル1(作業機械)の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、作業機械の具体例は油圧ショベル1に限定されず、ホイールローダ、クレーン、ダンプトラック等でもよい。また、本明細書中の前後左右は、特に断らない限り、油圧ショベル1に搭乗して操作するオペレータの視点を基準としている。
【0014】
図1は、油圧ショベル1の側面図である。
図1に示すように、油圧ショベル1は、下部走行体2と、下部走行体2により支持された上部旋回体3とを備える。下部走行体2及び上部旋回体3は、車体の一例である。下部走行体2は、無限軌道帯である左右一対のクローラ4を備える。そして、走行モータ5の駆動により、左右一対のクローラ4が独立して回転する。その結果、油圧ショベル1が走行する。但し、下部走行体2は、クローラ4に代えて、装輪式であってもよい。
【0015】
上部旋回体3は、旋回モータ6によって旋回可能に下部走行体2に支持されている。上部旋回体3は、ベースとなる旋回フレーム7と、旋回フレーム7の前方左側に配置されたキャブ(運転席)8と、旋回フレーム7の後部に配置されたカウンタウェイト9と、旋回フレーム7の前方中央に上下方向に回動可能に取り付けられたフロント作業機10(作業装置)とを主に備える。
【0016】
キャブ8には、油圧ショベル1を操作するオペレータが搭乗する空間が形成されている。そして、キャブ8の内部には、オペレータが着席するシートと、シートに着席したオペレータにより操作される操作装置が配置されている。
【0017】
操作装置は、油圧ショベル1を動作させるためのオペレータの操作を受け付ける。オペレータによって操作装置が操作されることによって、下部走行体2が走行し、上部旋回体3が旋回し、フロント作業機10が動作する。なお、操作装置の具体例としては、レバー、ステアリングホイール、ペダル、スイッチ等が挙げられる。操作装置は、例えば、後述する暖機制御処理の実行を指示する暖機スイッチ8a(
図3参照)と、暖機目標温度Tb_hの調整を指示する調整ボタン8b(
図3参照)とを含む。
【0018】
また、キャブ8には、ディスプレイ8c(
図2参照)が配置されている。ディスプレイ8cは、キャブ8に搭乗したオペレータに情報を報知する報知装置の一例である。なお、報知装置の具体例は、ディスプレイ8cに限定されず、LEDランプ、スピーカ、またはこれらの組み合わせでもよい。
【0019】
フロント作業機10は、上部旋回体3に起伏可能に支持されたブーム11と、ブーム11の先端に回動可能に支持されたアーム12と、アーム12の先端に回動可能に支持されたバケット13と、ブーム11を駆動させるブームシリンダ14と、アーム12を駆動させるアームシリンダ15と、バケット13を駆動させるバケットシリンダ16とを含む。カウンタウェイト9は、フロント作業機10との重量バランスを取るためのもので、上面視円弧形状を成す重量物である。
【0020】
また、上部旋回体3は、エンジン建屋20(建屋)を支持している。エンジン建屋20は、キャブ8及びフロント作業機10より後方で、カウンタウェイト9より前方において、旋回フレーム7に支持されている。エンジン建屋20は、油圧ショベル1を動作させるための構成部品を収容する空間を有する。
【0021】
図2は、上部旋回体3の平面図である。
図2に示すように、エンジン建屋20の内部には、油圧ショベル1を動作させるための構成部品として、エンジン21、油圧ポンプ22、及び熱交換器ユニット23等が収容されている。
【0022】
エンジン21は、熱交換器ユニット23より右方で、油圧ポンプ22より左方に配置されている。エンジン21は、化石燃料と空気とを混合して燃焼させることによって、油圧ショベル1を動作させるための駆動力を発生させる。
【0023】
油圧ポンプ22は、エンジン21及び熱交換器ユニット23より右方に配置されている。油圧ポンプ22は、エンジン21の出力軸に接続されて回転することによって、作動油タンク(図示省略)に貯留された作動油を、油圧アクチュエータ(走行モータ5、旋回モータ6、ブームシリンダ14、アームシリンダ15、及びバケットシリンダ16)に向けて圧送する。
【0024】
熱交換器ユニット23は、複数の流体を冷却するユニットである。本実施形態に係る熱交換器ユニット23は、複数の熱交換器24a、24bと、複数の冷却ファン25a、25bとを備える。
【0025】
熱交換器24aは、エンジン21を冷却する冷却液(流体)を冷却風と熱交換させるラジエータである。熱交換器24bは、油圧アクチュエータを作動させる作動油(流体)を冷却風と熱交換させるオイルクーラである。また、熱交換器ユニット23は、エンジン21に搭載された過給機で圧縮された空気(流体)を冷却するインタークーラを含んでもよい。
【0026】
冷却ファン25a、25bは、エンジン建屋20内を左から右に流れる冷却風を生起させる。冷却ファン25a、25bは、対応するファンモータ26a、26b(
図3参照)の駆動力によって回転する。ファンモータ26a、26bは、電力の供給を受けて回転する電動モータでもよいし、作動油の供給を受けて回転する油圧モータでもよい。
【0027】
冷却ファン25a、25bは、コントローラ30(
図3参照)の制御に従って、独立して回転数を変更可能に構成されている。より詳細には、ファンモータ26a、26bに供給される電力または作動油が増減されることによって、冷却ファン25a、25bの回転数が増減する。
【0028】
図2に示すように、熱交換器ユニット23は、筐体23aを備える。筐体23aは、熱交換器24a、24b及び冷却ファン25a、25bを収容する。但し、冷却風の流れの上流側の面(すなわち、左面)と、冷却風の流れの下流側の面(すなわち、右面)とは開放されている。すなわち、冷却ファン25a、25bによって生起された冷却風は、熱交換器ユニット23の左面から流入し、右面から流出する。筐体23aは、冷却ファン25a、25bによって生起された冷却風を通過させる共通の冷却風流路27を画定する流路部材の一例を構成する。
【0029】
熱交換器24a、24b及び冷却ファン25a、25bは、筐体23aの内部空間に配置されている。熱交換器24a、24bは、冷却風の流れ方向に直交する方向(前後方向)に配列されている。また、冷却ファン25a、25bは、熱交換器24a、24bより冷却風の流れ方向の下流側において、冷却風の流れ方向に直交する方向(前後方向)に配列されている。さらに、冷却ファン25a、25bは、冷却風の流れ方向において、対応する熱交換器24a、24bに対面して配置されている。
【0030】
そのため、熱交換器24aには、主に冷却ファン25aによって生起された冷却風が供給されるものの、冷却ファン25bによって生起された冷却風の一部も供給される。同様に、熱交換器24bには、主に冷却ファン25bによって生起された冷却風が供給されるものの、冷却ファン25aによって生起された冷却風の一部も供給される。換言すれば、熱交換器24a、24bは、共通の冷却風流路27を通過する冷却風と流体(冷却液、空気)を熱交換させる。
【0031】
本実施形態において、熱交換器24aは第1熱交換器の一例であり、熱交換器24bは第2熱交換器の一例であり、冷却ファン25aは第1冷却ファンの一例であり、冷却ファン25bは第2冷却ファンの一例であり、エンジン21の冷却液は第1流体の一例であり、油圧アクチュエータを作動させる作動油は第2流体の一例である。但し、熱交換器24bを第1熱交換器とし、熱交換器24aを第2熱交換器としてもよい。
【0032】
また、
図1に示すように、エンジン建屋20の左側面には、給気口28が形成されている。さらに、エンジン建屋20の右側面には、排気口(図示省略)が形成されている。そして、冷却ファン25a、25bが回転することによって、給気口28からエンジン建屋20の内部に流入した空気(冷却風)が、熱交換器ユニット23を通過して、排気口からエンジン建屋20の外部に排出される。
【0033】
冷却ファン25a、25bによって生起される冷却風の流れ方向は、左から右に限定されない。他の例として、冷却風の流れ方向が右から左の場合、熱交換器ユニット23内において、熱交換器24a、24bと、冷却ファン25a、25bとの配置が左右反転する。すなわち、冷却ファン25a、25bは、熱交換器24a、24bより冷却風の流れ方向の下流側に配置されていればよい。
【0034】
図3は、油圧ショベル1の制御ブロック図である。
図3に示すように、油圧ショベル1は、CPU31(Central Processing Unit)と、メモリ32とを有するコントローラ30を備える。メモリ32は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、またはこれらの組み合わせで構成される。コントローラ30は、メモリ32に格納されたプログラムコードをCPU31が読み出して実行することによって、後述する処理を実現する。
【0035】
但し、コントローラ30の具体的な構成はこれに限定されず、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などのハードウェアによって実現されてもよい。
【0036】
コントローラ30には、温度センサ33a、33bと、暖機スイッチ8aと、調整ボタン8bとが接続されている。一方、
図3には外気温センサ34も図示されているが、本実施形態では外気温センサ34は省略可能である。
【0037】
温度センサ33a、33bは、対応する熱交換器24a、24bの流体(冷却液、作動油)の温度(以下、「熱交換器温度」と表記する。)を検知し、検知した熱交換器温度を示す温度信号をコントローラ30に出力する。温度センサ33aは第1温度センサの一例であり、温度センサ33bは第2温度センサの一例であり、温度センサ33aで検知された熱交換器温度Taは第1温度の一例であり、温度センサ33bで検知された熱交換器温度Tbは第2温度の一例である。
【0038】
また、コントローラ30は、ファンモータ26a、26b、及びディスプレイ8cの動作を制御する。より詳細には、コントローラ30は、温度センサ33a、33bの検知結果に基づいて、ファンモータ26a、26bの回転数を制御する。さらに、コントローラ30は、キャブ8に搭乗したオペレータに対して、ディスプレイ8cを通じて情報を報知する。
【0039】
次に、
図4~
図6を参照して、ファン制御処理を説明する。
図4は、ファン制御処理のフローチャートである。
図5は、熱交換器温度Ta、Tbと目標回転数Na、Nbとの対応関係を示すテーブルの例を示す図である。
図6は、
図4に示すファン制御処理中における熱交換器温度(A)及び冷却ファン回転数(B)の推移を示す図である。コントローラ30は、例えば、後述する暖機処理が終了した後で且つエンジン21が停止するまでの間、所定の時間間隔毎にファン制御処理を繰り返し実行する。
【0040】
まず、コントローラ30は、温度センサ33a、33bで検知された熱交換器温度Ta、Tbを取得する(S11)。次に、コントローラ30は、取得した熱交換器温度Ta、Tbに対応する目標回転数Na、Nbを算出する(S12)。目標回転数Naは、熱交換器温度Taに対応する冷却ファン25aの第1目標回転数の一例である。目標回転数Nbは、熱交換器温度Tbに対応する冷却ファン25bの第2目標回転数の一例である。
【0041】
図5(A)に示すように、メモリ32には、熱交換器24aの熱交換器温度Taと、冷却ファン25aの目標回転数Naとの対応関係が記憶されている。熱交換器温度Taが規定温度Ta_low未満のとき、目標回転数Naは規定回転数Na_lowで一定になる。また、熱交換器温度Taが規定温度Ta_low以上のとき、目標回転数Naは、熱交換器温度Taが高くなるほど速くなる。
【0042】
また、
図5(B)に示すように、メモリ32には、熱交換器24bの熱交換器温度Tbと、冷却ファン25bの目標回転数Nbとの対応関係が記憶されている。熱交換器温度Tbが規定温度Tb_low未満のとき、目標回転数Nbは規定回転数Nb_lowで一定になる。また、熱交換器温度Tbが規定温度Tb_low以上のとき、目標回転数Nbは、熱交換器温度Tbが高くなるほど速くなる。
【0043】
そして、コントローラ30は、
図5(A)に示す対応関係に基づいて目標回転数Naを算出し、
図5(B)に示す対応関係に基づいて目標回転数Nbを算出する。すなわち、コントローラ30は、熱交換器温度Ta、Tbが高いほど速くなるように、目標回転数Na、Nbを算出する。なお、熱交換器温度Ta、Tbと目標回転数Na、Nbとは
図5に示す線形な関係に限定されず、非線形な関係でもよい。
【0044】
次に、コントローラ30は、目標回転数Naから目標回転数Nbを減じた差分値(=Na-Nb)と、メモリ32に記憶された閾値ΔNとを比較する(S13)。閾値ΔNは、予め定められた固定値でもよいし、熱交換器温度Taが低いほど大きな値になる可変値でもよい。
【0045】
そして、コントローラ30は、差分値(Na-Nb)が閾値ΔN未満の場合に(S13:Yes)、ステップS12で算出した目標回転数Naで冷却ファン25aを回転させ(S14)、ステップS12で算出した目標回転数Nbで冷却ファン25bを回転させる(S15)。すなわち、目標回転数Na、Nbの差が小さい場合は、熱交換器温度Ta、Tbに基づいて、冷却ファン25a、25bの回転数が個別に制御される。
【0046】
一方、コントローラ30は、差分値(Na-Nb)が閾値ΔN以上の場合に(S13:No)、ステップS12で算出した目標回転数Naから閾値ΔNを減じて、修正目標回転数Nb’を算出する(S16)。修正目標回転数Nb’は、ステップS12で算出した目標回転数Nbより大きい値になる。修正目標回転数Nb’は、修正第2目標回転数の一例である。
【0047】
そして、コントローラ30は、ステップS12で算出した目標回転数Naで冷却ファン25aを回転させ(S17)、ステップS16で算出した修正目標回転数Nb’で冷却ファン25bを回転させる(S18)。すなわち、目標回転数Na、Nbの差が大きい場合は、
図6(A)に示すように熱交換器24bが過冷却になることを許容しつつ、
図6(B)に示すように冷却ファン25a、25bの回転数の差が一定(=閾値ΔN)になるように制御される。
【0048】
なお、
図5では、Na>Nbを前提とする処理を図示した。一方、Na<Nbの場合は、修正目標回転数Na’(=Nb-ΔN)で冷却ファン25aが回転され、目標回転数Nbで冷却ファン25bが回転される。
【0049】
次に、
図7~
図9を参照して、本実施形態に係る暖機制御処理を説明する。
図7は、本実施形態に係る暖機制御処理のフローチャートである。
図8は、本実施形態に係る熱交換器温度Ta、Tbと暖機回転数Na_h1、Nb_h1との対応関係を示すテーブルの例を示す図である。
図9は、
図7に示す暖機制御処理中における熱交換器温度(A)及び冷却ファン回転数(B)の推移を示す図である。
【0050】
コントローラ30は、例えば、暖機スイッチ8aを通じて暖機処理の実行が指示(すなわち、暖機スイッチ8aがON)された場合に、
図7に示す暖機制御処理を実行する。オペレータは、例えば、寒冷地で油圧ショベル1の駆動を開始した際に、暖機スイッチ8aをONに操作すればよい。
【0051】
暖機処理とは、冷却液及び作動油の温度を、油圧ショベル1が安定して動作する温度帯まで上昇させる処理である。そのため、コントローラ30は、冷却液の温度を上昇させるためにエンジン21を回転させ、作動油の温度を上昇させるために油圧ポンプ22に作動油を圧送させる。本実施形態では、冷却液の目標温度を暖機目標温度Ta_hに設定し、作動油の目標温度を暖機目標温度Tb_hに設定している。但し、コントローラ30は、冷却液及び作動油の両方が目標温度に達するまで、暖機処理を継続する必要はない。すなわち、暖機処理とは、冷却液及び作動油それぞれを目標温度に近づける処理である。本実施形態に係る暖機処理は、冷却液及び作動油の一方が目標温度に達するまで継続される。
【0052】
なお、本実施形態では、熱交換器24bの流体(作動油)の温度が、熱交換器24aの流体(冷却液)の温度より上昇しにくいことを前提にしている。そのため、熱交換器温度Ta、Tbの温度に基づいて冷却ファン25a、25bの回転数を個別に制御すると、熱交換器温度Tbが暖機目標温度Tb_hより遥かに低い状態で、熱交換器温度Taが先に暖機目標温度Ta_hに達して暖機処理が終了してしまう。そこで、本実施形態に係る暖機制御処理では、以下のような制御を行う。
【0053】
まず、コントローラ30は、熱交換器24a、24bの暖機目標温度Ta_h、Tb_hを取得する(S21)。熱交換器24aの暖機目標温度Ta_h(第1暖機目標温度)は、例えば、メモリ32に記憶された固定値である。一方、熱交換器24bの暖機目標温度Tb_h(第2暖機目標温度)は、例えば、調整ボタン8bを通じてオペレータが設定可能な可変値である。但し、暖機目標温度Ta_h、Tb_hの具体例は、前述の例に限定されない。
【0054】
次に、コントローラ30は、温度センサ33a、33bで検知された熱交換器温度Ta、Tbを取得する(S22)。次に、コントローラ30は、ステップS21で取得した暖機目標温度Ta_hと、ステップS22で取得した熱交換器温度Taとを比較する(S23)。また、コントローラ30は、ステップS21で取得した暖機目標温度Tb_hと、ステップS22で取得した熱交換器温度Tbとを比較する(S24)。
【0055】
そして、コントローラは、熱交換器温度Taが暖機目標温度Ta_h未満で、且つ熱交換器温度Tbが暖機目標温度Tb_h未満の場合に(S23:Yes&S24:Yes)、
図8(A)に示す対応関係に基づいて算出された暖機回転数Na_h1(第1暖機回転数の一例)で冷却ファン25aを回転させ(S25)、
図8(B)に示す対応関係に基づいて算出された暖機回転数Nb_h1(第1暖機回転数の一例)で冷却ファン25bを回転させる(S26)。
【0056】
図8(A)に示すように、メモリ32には、熱交換器24aの熱交換器温度Taと、冷却ファン25aの暖機回転数Na_h1との対応関係が記憶されている。熱交換器温度Taが最低温度Ta_min未満のとき、暖機回転数Na_h1は最低回転数Na_minで一定になる。また、熱交換器温度Taが最低温度Ta_min以上のとき、暖機回転数Na_h1は、熱交換器温度Taが高くなるほど速くなる。さらに、熱交換器温度Taが暖機目標温度Ta_hに達すると、暖機回転数Na_h1が最高回転数Na_maxに達する。なお、熱交換器温度Taと暖機回転数Na_h1とは
図8(A)に示す線形な関係に限定されず、非線形な関係でもよい。
【0057】
また、
図8(B)に示すように、メモリ32には、熱交換器24bの熱交換器温度Tbと、冷却ファン25bの暖機回転数Nb_h1との対応関係が記憶されている。暖機回転数Nb_h1は、熱交換器温度Tbに拘わらず一定となる固定値である。
【0058】
すなわち、コントローラ30は、熱交換器温度Taが高いほど速くなるように算出した暖機回転数Na_h1で冷却ファン25aを回転させ(S25)、予め固定値に設定された暖機回転数Nb_h1で冷却ファン25bを回転させる(S26)。
【0059】
そして、コントローラ30は、エンジン21が駆動している間(S27:No)、ステップS22~S26の処理を繰り返し実行する。一方、コントローラ30は、ステップS22~S26の処理を繰り返し実行する過程において、熱交換器温度Taが暖機目標温度Ta_h以上になるか、熱交換器温度Tbが暖機目標温度Tb_h以上になった場合に(S23:No/S24:No)、ステップS22~S26の処理を終了する。ステップS22~S26の処理は、暖機処理の一例である。そして、コントローラ30は、暖機処理を終了した後に、暖機スイッチ8aをOFFにして(S28)、
図4に示すファン制御処理を開始する(S29)。
【0060】
図7に示す暖機処理(S22~S26)によれば、
図9(B)に示すように、熱交換器温度Taの上昇に伴って冷却ファン25aの回転数が上昇するのに対して、冷却ファン25bの回転数は一定になる。これにより、
図9(A)に示すように、熱交換器温度Taの上昇が抑制されて、熱交換器温度Tbの上昇が促進される。その結果、暖機処理の終了時に、熱交換器温度Tbを暖機目標温度Tb_h1に近づけることができる。なお、
図9では、暖機目標温度Ta_h1、Tb_h1を同一値として図示しているが、異なる値でもよい。
【0061】
上記の実施形態によれば、例えば以下の作用効果を奏する。
【0062】
上記の実施形態に係るファン制御処理によれば、熱交換器温度Ta、Tbに基づいて個々に算出した目標回転数Na、Nbの差が閾値ΔN以上になる場合に、目標回転数Nbに代えて、修正目標回転数Nb’(=Na-ΔN)で冷却ファン25bを回転させる。これにより、冷却ファン25a、25bの回転数の差が大きくなり過ぎることがないので、
図15(B)を参照して説明した個別制御と比較して、熱交換器24bを通過した冷却風を冷却ファン25aが吸い込む割合が減少する。その結果、熱交換器24aの温度上昇を抑えることができるので、熱交換器24aの流体(冷却液)で冷却されるエンジン21のオーバーヒートが防止される。
【0063】
また、上記の実施形態によれば、熱交換器温度Taが低いほど閾値ΔNを大きくし、熱交換器温度Taが高いほど閾値ΔNを小さくする。これにより、エンジン21のオーバーヒートの危険性が低い(すなわち、熱交換器温度Taが低い)ときには、目標回転数Na、Nbの差が大きくなるのを許容して、冷却ファン25a、25bに必要最小限の冷却風を発生させる。一方、エンジン21のオーバーヒートの危険性が高い(すなわち、熱交換器温度Taが高い)ときには、目標回転数Na、Nbの差が大きくなるのを阻止して、熱交換器24bが過冷却になるのを許容しつつ、熱交換器24aを適切に冷却する。
【0064】
また、上記の実施形態に係る暖機制御処理によれば、熱交換器温度Taに対応する暖機回転数Na_h1で冷却ファン25aを回転させ、予め固定値に設定された暖機回転数Nb_h1で冷却ファン25bを回転させる。これにより、熱交換器温度Taの温度上昇が抑制され、熱交換器温度Tbの温度上昇が促進される。その結果、暖機処理において、相対的に温度が上昇しにくい流体(この場合は、作動油)の温度を暖機目標温度Tb_hに近い温度まで上昇させることができる。
【0065】
[変形例1]
次に、
図10及び
図11を参照して、変形例1に係る暖機制御処理を説明する。
図10は、変形例1に係る暖機制御処理のフローチャートである。
図11は、変形例1に係る熱交換器温度Ta、Tbと暖機回転数Na_h1、Nb_h2との対応関係を示すテーブルの例を示す図である。なお、上記の実施形態との共通点の詳細な説明は省略し、相違点を中心に説明する。
【0066】
図3に示すように、変形例1に係る油圧ショベル1は、外気温センサ34を備える。外気温センサ34は、油圧ショベル1の周囲の温度である外気温度Toを検知し、検知した外気温度Toを示す温度信号をコントローラ30に出力する。
【0067】
そして、変形例1に係る暖機制御処理では、冷却ファン25bの回転数制御(S30)が、上記の実施形態(
図7のS26)と相違する。すなわち、変形例1に係るコントローラ30は、ステップS30において、外気温センサ34によって検知された外気温度Toに対応する暖機回転数Nb_h2(第2暖機回転数の一例)で冷却ファン25bを回転させる。より詳細には、変形例1に係るコントローラ30は、
図11(B)に示される対応関係に従って、外気温度Toが高いほど速くなるように算出した暖機回転数Nb_h2で冷却ファン25bを回転させる。
【0068】
図11(B)に示すように、メモリ32には、外気温度Toと、冷却ファン25bの暖機回転数Nb_h2との対応関係が記憶されている。外気温度Toが最低温度To_min未満のとき、暖機回転数Nb_h2は最低回転数Nb_minで一定になる。また、外気温度Toが最低温度To_min以上のとき、暖機回転数Nb_h2は、外気温度Toが高くなるほど速くなる。なお、外気温度Toと暖機回転数Nb_h2とは
図11(B)に示す線形な関係に限定されず、非線形な関係でもよい。また、
図11(A)に示す熱交換器温度Taと暖機回転数Na_h1との対応関係は、
図8(A)と共通する。
【0069】
熱交換器24b内の流体(すなわち、作動油)の温度上昇が速すぎると、油圧機器の構成部品にスティックが生じやすくなる。そして、外気温度Toが高いほど、熱交換器24bも暖機されやすい。そこで、変形例1によれば、外気温度Toが高いほど冷却ファン25bの暖機回転数Nb_h2が速くなるので、熱交換器24b内の流体を適切な速度で暖機することが可能になる。
【0070】
[変形例2]
次に、
図12及び
図13を参照して、変形例2に係る暖機制御処理を説明する。
図12は、変形例2に係る暖機制御処理のフローチャートである。
図13は、
図12に示す暖機制御処理中における熱交換器温度(A)及び冷却ファン回転数(B)の推移を示す図である。なお、上記の実施形態との共通点の詳細な説明は省略し、相違点を中心に説明する。
【0071】
変形例2に係るコントローラ30は、ステップS31において、暖機処理中における熱交換器温度Tbの時間変化dTbに対応する暖機回転数Nb_h3(第2暖機回転数の一例)で冷却ファン25bを回転させる。より詳細には、変形例2に係るコントローラ30は、暖機処理中における熱交換器温度Tbの時間変化dTbが大きいほど速くなる暖機回転数Nb_h3で冷却ファン25bを回転させる。
【0072】
すなわち、コントローラ30は、繰り返し実行する暖機処理中において、ステップS22で取得した熱交換器温度Tbをメモリ32に記憶させる。次に、コントローラ30は、メモリ32に記憶された複数の熱交換器温度Tbの時間変化dTbを算出する。時間変化dTbは、例えば、時間的に隣接する2つの熱交換器温度Tbを、熱交換器温度Tbの取得間隔(ステップS22の実行間隔)で除すことによって算出される。
【0073】
そして、コントローラ30は、熱交換器温度Tbの時間変化dTbと暖機回転数Nb_h3との予め定められた対応関係に従って、暖機回転数Nb_h3を決定する。熱交換器温度Tbの時間変化dTbと暖機回転数Nb_h3との対応関係は、例えば
図11(B)のように正の相関関係を有する。
【0074】
変形例2によれば、例えば
図13に示すように、熱交換器温度Tbの上昇速度が遅くなった場合に、冷却ファン25bの暖機回転数Tb_h3が遅くなるので、熱交換器24b内の流体を適切な速度で暖機することが可能になる。すなわち、暖機処理中において、冷却ファン25bの暖機回転数Tb_h3を抑制することによって(
図13(B))、熱交換器温度Tbの上昇が促進される(
図13(A))。また、暖機処理が終了した後に、暖機回転数Tb_h3の抑制を解除することによって(
図13(B))、暖機処理中と比較して熱交換器温度Tbの上昇勾配が緩やかになる(
図13(A))。
【0075】
[変形例3]
次に、
図14を参照して、変形例3に係る暖機制御処理を説明する。
図14は、変形例3に係る暖機制御処理のフローチャートである。なお、上記の実施形態との共通点の詳細な説明は省略し、相違点を中心に説明する。
【0076】
変形例3に係るコントローラ30は、暖機処理(S22~S27)を終了した場合、すなわち、熱交換器温度Taが暖機目標温度Ta_h以上になるか、熱交換器温度Tbが暖機目標温度Tb_h以上になった場合に(S23:No/S24:No)、冷却ファン25aを規定回転数Na_lowに減速する(S32)。その後、コントローラ30は、ステップS28、S29の処理を実行する。
【0077】
ここで、規定回転数Na_lowは、暖機処理の終了時点における暖機回転数Na_h1より小さい値に設定される。規定回転数Na_lowは、例えば、予め定められた固定値でもよいし、暖機処理の終了時点における暖機回転数Nb_h1と同一値でもよい。すなわち、ステップS32を追加することによって、ファン制御処理(S29)の開始時点における冷却ファン25a、25bの回転数の差が小さくなる。
【0078】
冷却ファン25a、25bの回転数の差が大きい状態でファン制御処理(S29)を開始すると、冷却ファン25bに逆流が発生する。この状態で
図4のステップS16の処理(すなわち、冷却ファン25bの回転数を上昇させる処理)を実行すると、ファンモータ26bに大きなトルクが必要になる。そこで、変形例3のように、ファン制御処理(S29)の開始に先立って、冷却ファン25a、25bの回転数の差を小さくすることによって、ファン制御処理をスムーズに実行することができる。
【0079】
上述した実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【符号の説明】
【0080】
1 油圧ショベル(作業機械)
2 下部走行体
3 上部旋回体
4 クローラ
5 走行モータ
6 旋回モータ
7 旋回フレーム
8 キャブ
8a 暖機スイッチ
8b 調整ボタン
8c ディスプレイ
9 カウンタウェイト
10 フロント作業機
11 ブーム
12 アーム
13 バケット
14 ブームシリンダ
15 アームシリンダ
16 バケットシリンダ
20 エンジン建屋
21 エンジン
22 油圧ポンプ
23,90 熱交換器ユニット
23a 筐体
24a,24b,91a,91b 熱交換器
25a,25b,92a,92b 冷却ファン
26a,26b ファンモータ
27 冷却風流路
28 給気口
30 コントローラ
31 CPU
32 メモリ
33a,33b 温度センサ
34 外気温センサ