(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141512
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】保持パッド及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B24B 37/30 20120101AFI20241003BHJP
B24B 37/32 20120101ALI20241003BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B24B37/30 C
B24B37/32 Z
H01L21/304 622H
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053207
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005359
【氏名又は名称】富士紡ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149799
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 陽一郎
(72)【発明者】
【氏名】永井 克樹
【テーマコード(参考)】
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158BA02
3C158BA04
3C158BA05
3C158BA08
3C158CB04
3C158CB10
3C158DA12
3C158DA17
3C158EA11
3C158EA14
3C158EA15
3C158EA16
3C158EA20
3C158EA21
3C158EA22
3C158EA23
3C158EA25
3C158EB02
5F057AA37
5F057CA11
5F057DA03
5F057EC10
5F057EC24
(57)【要約】
【課題】
本発明は、耐薬品性があり、被研磨物を保持するための保持層を備える保持パッドとして保持面に様々な凹凸構造を付与可能な保持パッドを提供する。
【解決手段】
被研磨物を保持するための保持層を備え、前記保持層は光硬化性樹脂で構成される、保持パッド。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被研磨物を保持する保持層を備える保持パッドであって、
前記保持層は光硬化性樹脂で構成される、保持パッド。
【請求項2】
前記保持層の密度が0.5kg/m3以上、3.0kg/m3以下である、請求項1に記載の保持パッド。
【請求項3】
前記保持層のショアA硬度が60以上、90以下である、請求項1に記載の保持パッド。
【請求項4】
前記保持層の圧縮率が0.1%以上、10%以下である、請求項1に記載の保持パッド。
【請求項5】
前記保持層の圧縮弾性率が60%以上、90%以下である、請求項1に記載の保持パッド。
【請求項6】
前記保持層は保持面を一体として備え、前記光硬化性樹脂が紫外線硬化樹脂である、請求項1に記載の保持パッド。
【請求項7】
前記光硬化性樹脂がアクリル樹脂である、請求項1に記載の保持パッド。
【請求項8】
前記保持面は凹部又は凸部が形成されており、凹部又は凸部の高さの平均が0.3mm以上、1.5mm以下である、請求項1に記載の保持パッド。
【請求項9】
請求項1に記載の保持パッドの前記保持面において外周部に枠状部材をさらに備え、前記枠状部材はガラエポ又はSUSで構成されている、保持具。
【請求項10】
請求項1に記載の保持パッドの前記保持面において、前記枠状部材を備える部分に凹部又は凸部が形成されている、請求項9に記載の保持具。
【請求項11】
被研磨物を保持するための保持層を備え、前記保持層は光硬化性樹脂で構成されている保持パッドの製造方法であって、
型を用意する工程と、
前記型に、光硬化性樹脂を配置する工程と、
凹凸構造を付与できるようなマスキングシートを光硬化性樹脂の上に配置する工程と、
前記マスキングシートの上から光を照射することにより、マスキングされていない光硬化性樹脂を硬化する工程と、
溶媒を用いて未硬化の光硬化性樹脂を洗い流すことにより、硬化済の光硬化性樹脂によって構成された保持層を得る工程とを含む、保持パッドの製造方法。
【請求項12】
被研磨物を保持するための保持層を備え、前記保持層は光硬化性樹脂で構成されており、前記保持面と反対側に別部材として基材を備える、保持パッドの製造方法であって、
型を用意する工程と、
前記型に基材を備える工程と、
前記基材の上に、光硬化性樹脂を配置する工程と、
前記光硬化性樹脂に対して基材側から光を照射することにより、前記基材と前記光硬化性樹脂を接着させる工程と、
前記光硬化性樹脂に対して基材の反対側において、凹凸構造を付与できるようなマスキングシートを配置する工程と、
前記マスキングシートの上から光を照射することにより、マスキングされていない光硬化性樹脂を硬化する工程と、
溶媒を用いて未硬化の光硬化性樹脂を洗い流すことにより、基材が接着され、かつ硬化済の光硬化性樹脂によって構成された基材付保持層を得る工程とを含む、保持パッドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の研磨パッドは、被研磨物を保持する保持パッドに関する。詳細には、本発明は、半導体ウエハ等を研磨する際に被研磨物を好適に保持することができる保持パッド及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学材料、半導体ウエハ、半導体デバイス、ハードディスク用基板、シリコーンウエハ、サファイヤガラスの表面を平坦化するための研磨法として、化学機械研磨(chemical mechanical polishing,CMP)法が一般的に用いられている。
CMP法について、
図1を用いて説明する。
図1はCMP法を実施する研磨装置の断面図であり、研磨定盤4に備えられている研磨パッド3と、保持定盤2に備えられている保持パッド10とで被研磨物Wを挟み込み、押圧された状態で回転駆動され、被研磨物Wを研磨する。なお、保持パッド10は、枠状部材12を備え、研磨を効率よく実施できるようにしている。
研磨の際には、研磨パッド3と被研磨物Wとの間には、スラリーが供給される。スラリーは溝又は孔を介して研磨面に供給され、排出される。スラリーは、水と各種化学成分や硬質の微細な砥粒の混合物(分散液)であり、その中の化学成分や砥粒が流されながら、被研磨物Wとの相対運動により、研磨効果を増大させるものである(特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
一般的な保持パッドは、湿式成膜によって作製されたスウェードが用いられるが、湿式成膜では、製造過程で大量の溶剤が使用される。また、スラリーが強酸性の研磨条件下では、保持パッドがスウェード等の素材では耐えられず、保持パッドのライフが短くなるという課題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-61524
【特許文献2】特開平11-151665
【特許文献3】特開平11-151666
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、耐薬品性があり、保持パッドとして保持面に様々な凹凸構造を付与可能であり、適切な吸着力を調整でき、被研磨物の剥離を容易にすることができる保持層を備える保持パッド及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、保持層の材料として、光硬化性樹脂を用いることで、耐薬品性があり、保持パッドとして保持面に様々な凹凸構造を付与可能な保持層を備える保持パッドを作製することができることを見出した。本発明は、以下を包含する。
[1] 被研磨物を保持するための保持層を備える保持パッドであって、前記保持層は光硬化性樹脂で構成される、保持パッド。
[2] 前記保持層の密度が0.5kg/m3以上、3.0kg/m3以下である、[1]に記載の保持パッド。
[3] 前記保持層のショアA硬度が60以上、90以下である、[1]に記載の保持パッド。
[4] 前記保持層の圧縮率が0.1%以上、10%以下である、[1]に記載の保持パッド。
[5] 前記保持層の圧縮弾性率が60%以上、90%以下である、[1]に記載の保持パッド。
[6] 前記保持層は保持面を一体として備え、前記光硬化性樹脂が紫外線硬化樹脂である、[1]に記載の保持パッド。
[7] 前記光硬化性樹脂がアクリル樹脂である、[1]に記載の保持パッド。
[8] 前記保持面は凹部又は凸部が形成されており、凹部又は凸部の高さの平均が0.3mm以上、1.5mm以下である、[1]に記載の保持パッド。
[9] [1]に記載の保持パッドの前記保持面において外周部に枠状部材をさらに備え、前記枠状部材はガラエポ又はSUSで構成されている、保持具。
[10] [1]に記載の保持パッドの前記保持面において、前記枠状部材を備える部分に凹部又は凸部が形成されている、[9]に記載の保持具。
[11] 被研磨物を保持するため保持層を備え、前記保持層は光硬化性樹脂で構成されている保持パッドの製造方法であって、
型を用意する工程と、
前記型に、光硬化性樹脂を配置する工程と、
凹凸構造を付与できるようなマスキングシートを光硬化性樹脂の上に配置する工程と、
前記マスキングシートの上から光を照射することにより、マスキングされていない光硬化性樹脂を硬化する工程と、
溶媒を用いて未硬化の光硬化性樹脂を洗い流すことにより、硬化済の光硬化性樹脂によって構成された保持層を得る工程とを含む、保持パッドの製造方法。
[12] 被研磨物を保持するための保持層を備え、前記保持層は光硬化性樹脂で構成されており、前記保持面と反対側に別部材として基材を備える、保持パッドの製造方法であって、
型を用意する工程と、
前記型に基材を備える工程と、
前記基材の上に、光硬化性樹脂を配置する工程と、
前記光硬化性樹脂に対して基材側から光を照射することにより、前記基材と前記光硬化性樹脂を接着させる工程と、
前記光硬化性樹脂に対して基材の反対側において、凹凸構造を付与できるようなマスキングシートを配置する工程と、
前記マスキングシートの上から光を照射することにより、マスキングされていない光硬化性樹脂を硬化する工程と、
溶媒を用いて未硬化の光硬化性樹脂を洗い流すことにより、基材が接着され、かつ硬化済の光硬化性樹脂によって構成された基材付保持層を得る工程とを含む、保持パッドの製造方法。
【発明の効果】
【0006】
被研磨物を保持する保持層を備え、保持層は保持面を一体として備え、保持層は光硬化性樹脂で構成される保持パッドは、耐薬品性があり、保持層を備える保持パッドとして保持面に様々な凹凸構造を付与可能であり、適切な吸着力を調整でき、被研磨物の剥離を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】
図2は、保持層11の保持面の拡大図であり、
図2(a)は本発明の第一態様であり、
図2(b)は本発明の第二態様である。
【
図3】
図3は、保持層11(第一態様)の保持面の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、発明を実施するための形態について説明するが、本発明は、発明を実施するための形態に限定されるものではない。
【0009】
<<保持パッド>>
保持パッド10は、
図1に示すように、保持定盤2の下面に設けられ、研磨対象となる被研磨物Wを保持面110に吸着して保持する。また、保持パッド10と保持層11の保持面110の外周部に備えられた枠状部材12とにより保持具1が構成されている。
外周部とは、保持面が回転し、回転の中心に近い部分を内周部とした場合、保持面の、回転の中心から離れた周の内側部分を意味する。
保持パッド10は、保持層11の他に、基材、両面テープ(図示されていない)等を備えているが、保持層11のみで構成されていてもよい。
【0010】
(保持層)
保持層11は、光硬化性樹脂で構成されている。光硬化性樹脂は、光を加えることにより硬化する性質の樹脂である。光硬化性樹脂は、光が加えられた部分は硬化し、加えられていない部分は硬化しない。本明細書では、光が加えられず硬化していない光硬化性樹脂を未硬化の光硬化性樹脂とし、光が十分に加えられて硬化した光硬化性樹脂を硬化済の光硬化性樹脂という。
【0011】
光硬化性樹脂としては、特定の波長の光によって重合、硬化する樹脂であれば特に限定されないが、感光性樹脂、紫外線硬化型樹脂、可視光硬化型樹脂が挙げられ、また、光によって活性化されるラジカルにより硬化するラジカル重合性樹脂、光によって発生するカチオンにより硬化するカチオン重合性樹脂が挙げられる。保持層11には、好ましい態様としては、ポリエステル系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ビニルエーテル樹脂、ビニルエステル樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂が挙げられる。より好ましくは、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂が挙げられる。なお、樹脂は1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの樹脂を用いることによって、表面形状の製造が容易であり、かつ、耐薬品性も有するため、強酸性や強アルカリ性の研磨液に対する耐性が向上する。
【0012】
研磨の際には、研磨パッド3と被研磨物Wとの間には、スラリーが供給される。スラリーは、水と各種化学成分や硬質の微細な砥粒の混合物(分散液)であり、保持層11を化学的に劣化させる可能性がある。したがって、保持層11は、熱硬化樹脂や常温硬化樹脂に比べ、架橋密度が高く、耐薬品性に優れるアクリル系の紫外線硬化樹脂で構成されることが好ましい。
【0013】
保持層11は、光硬化性樹脂で構成されているため、凹部又は凸部が形成された保持面110を一体として備えている保持層11が容易に製造でき、凹部又は凸部の高さや位置の調整が容易であり、その結果、保持面110の被研磨物Wに対する接着性や剥離性が容易に調整可能である。ここで言う一体とは、保持層の保持面がすべて同一の材料で構成されており、凸部110Aが保持面の凸部110A以外の部分と分離できない状態で形成されていることを指す。
【0014】
保持層11の密度は0.5kg/m3以上、3.0kg/m3以下が好ましく、1.0kg/m3以上、2.0kg/m3以下がより好ましい。密度が上記範囲内であると、被研磨物の着脱性に優れる。
【0015】
本明細書において、ショアA硬度とは、日本工業規格(JIS K7311)に準じて測定した値を意味する。
保持層11のショアA硬度は60以上、90以下が好ましく、70以上、80以下がより好ましい。ショアA硬度が上記範囲内であると、被研磨物の研磨状態が良好である。
【0016】
本明細書において、圧縮率とは、軟らかさの指標であり、圧縮弾性率とは、圧縮変形に対する戻りやすさの指標である。
圧縮率及び圧縮弾性率は、日本工業規格(JIS L1021)に従い、ショッパー型厚さ測定器(加圧面:直径1cmの円形)を使用して求めることが出来る。具体的には、以下の通りである。
無荷重状態から初荷重を30秒間かけた後の厚さt0を測定し、次に、厚さt0の状態から最終荷重を5分間かけた後の厚さt1を測定する。次に、厚さt1の状態から全ての荷重を除き、5分間放置(無荷重状態とした)後、再び初荷重を30秒間かけた後の厚さt0’を測定する。
圧縮率は、圧縮率(%)=100×(t0-t1)/t0の式で算出することができる(なお、初荷重は100g/cm2、最終荷重は1120g/cm2である)。
圧縮弾性率は、圧縮弾性率(%)=100×(t0’-t1)/(t0-t1)の式で算出することが出来る(なお、初荷重は100g/cm2、最終荷重は1120g/cm2である)。
【0017】
保持層11の圧縮率は0.1%以上、10%以下が好ましく、0.5%以上、5%以下がより好ましい。
保持層11の圧縮弾性率は60%以上、90%以下が好ましく、70%以上、80%以下がより好ましい。圧縮率及び圧縮弾性率が上記範囲内であると、被研磨物の研磨状態が良好である。
【0018】
保持層11の厚みは、0.5~1.7mmの範囲で調整することができ、より好ましくは0.7~1.5mmである。保持層11の厚みが上記範囲内であると、保持層11交換時の作業性が良好である。
【0019】
保持層11の保持面110には凹部又は凸部が形成されている。
一例として、保持層11は、
図2(a)、
図3に示すように、複数の凸部110Aがドット状に配置された保持面110を一体として備えている。
凸部110Aは、
図3に示すように、複数個、略均等に保持面110に配置されている。
【0020】
凸部110Aの形状は、本例では円錐台であるが、略円錐台、楕円錐台、多角錐台、円柱、楕円柱、多角柱であってもよいが、円錐台であれば、作製容易でありかつ被研磨物を傷つけにくくするため、好ましい。
作製容易であり被研磨物を傷つけにくい観点から、円錐台が好ましい。
【0021】
保持層11は、
図2(b)のように、保持面110に凹部を有することができる。凹部の形状は特に限定されるものではなく、円錐台等にすることができ、上記凸部と同様に、ドット状に配置してもよいし、直線状の凹部(直線状の溝)にしてもよい。
【0022】
凹部又は凸部の高さの平均は、0.3mm以上、1.5mm以下であることが好ましく、0.5mm以上、1.3mm以下であることがより好ましい。また、凹部又は凸部は保持層全体の高さに対して18%~88%であることが好ましく、33%~66%であることがより好ましい。本明細書では、凹部の高さとは、凹部の深さを指す。すなわち、本明細書では、凸部の場合は、
図2(a)のαを凸部の高さといい、凹部の場合は、
図2(b)のαを凹部の高さということにする。凹部又は凸部の高さの平均が上記範囲内であると、被研磨物の接着性、剥離性が良好である。
【0023】
保持層11は保持面110の外周部に枠状部材12を備え、保持パッド10と枠状部材12により保持具1が構成される。枠状部材12は被研磨物Wを囲繞し、研磨加工中の被研磨物Wの横ずれや脱落を抑制する。
保持面110の枠状部材12を備える部分(
図2の13)には凹部又は凸部を形成してもよい。枠状部材12は保持面110に粘着層により貼り付けられている。保持層11の保持面110が平滑になりすぎると枠状部材12と保持面110の接着性が低下するが、保持層11の保持面110の枠状部材12を備える部分に凹部又は凸部が形成されている場合、枠状部材12と保持層11との剥離を抑制することができるとともに、それらの間にスラリーが侵入するのを抑制することができる。
枠状部材12はガラエポ又はSUSで構成されている。ガラエポとはガラス織布にエポキシ樹脂を含侵、又は塗布して得られたガラスエポキシ樹脂板である。SUSとはステンレス鋼(Stainless Used Steel)である。枠状部材12は研磨時に研磨パッド3と接することにより発生する摩擦熱や摩耗を考慮すると、耐熱性に優れることが好ましい。
【0024】
<<保持パッドの製造方法>>
本発明の保持パッド10の製造方法は、保持層11の材料として光硬化性樹脂を用いていれば特に限定されないが、一例は、以下の通りである。なお、当該一例は、保持層11に基材を配置した保持パッドを例に挙げて説明する。
すなわち;
被研磨物Wを保持するための保持層11を備え、前記保持層11は光硬化性樹脂で構成されており、前記保持面と反対側に別部材として基材とを備える、保持パッドの製造方法であって、
型を用意する工程と(Step1)、
前記型に基材を配置する工程と(Step2)、
前記基材の上に、光硬化性樹脂を配置する工程(Step3)と、
前記光硬化性樹脂に対して基材側から光を照射することにより、前記基材と前記光硬化性樹脂を接着させる工程と(Step4)、
前記光硬化性樹脂に対して基材の反対側において、凹凸構造を付与できるようなマスキングシートを配置する工程と(Step5)、
前記マスキングシートの上から光を照射することにより、マスキングされていない光硬化性樹脂を硬化する工程と(Step6)、
溶媒を用いて未硬化の光硬化性樹脂を洗い流すことにより、基材が接着され、かつ硬化済の光硬化性樹脂によって構成された保持層11を得る工程と(Step7)を含む、保持パッド10の製造方法。
【0025】
(Step1)
まず、型を用意する。型は保持層11を形成できる型であれば特に限定されるものではないが、保持層11の形状を形成できる型形状を有するものが好ましい。型の材料は、保持層11を形成できれば、特に限定されず、金属型、プラスチック型、樹脂型などが挙げられる。
【0026】
(Step2)
次に、型に基材を配置する。基材は、その上に光硬化性樹脂を配置することが可能なものであって、光を遮蔽しない基材であれば特に限定されず、可撓性フィルム、不織布、織布等を用いることができる。基材の配置は、製造方法の工程として必須のものではないが、安定して光硬化性樹脂を硬化することが可能であるため、使用することが好ましい。
【0027】
(Step3)
基材の上に光硬化性樹脂を配置する。光硬化性樹脂は、東洋紡社製の商品名「コスモライト」や、東レ社製の商品名「PGプレート」、富士フイルム社製の商品名「富士トレリーフ」など、市場で入手可能な樹脂を用いてもよく、所望の特性を有する樹脂を自ら製造してもよい。光硬化性樹脂は、常温で液体状、固体状どちらの状態でも使用できるが、作業性の観点から常温で固体状であるものを使用することが好ましい。
【0028】
(Step4)
次に、光硬化性樹脂に対して基材側から光を照射することにより、基材と光硬化性樹脂を接着させる。「基材側から光を照射する」とは、Step3において、型内部において、基材の上に光硬化性樹脂を配置している状態で、基材の下から(型の底から)光を照射することを意味する。上記のように、光を透過する基材を用いることにより、基材の上に配置される光硬化性樹脂を硬化することができる。この工程により、基材側の光硬化性樹脂が一様に硬化することができるため、その後の工程で、基材と反対側に位置する凸部110Aがそれぞれ独立することなく、さらには独立して分離可能なものではなく、保持層及び保持面全体が一体物として形成される。
なお、基材は保持層11の保持面110から露出してはいない。
【0029】
光を照射する装置は、光硬化性樹脂が硬化する光の波長を含む波長範囲の光を発する装置であれば特に限定されるものではなく、例えば、紫外線照射装置が挙げられ、さらに具体的には、高圧水銀ランプ、UV-LEDランプ、ブラックライトブルー蛍光ランプ(BLB)が挙げられるが、BLBが好ましい。紫外線照射の波長は315nm~400nmが好ましく、照射時間は1分~15分が好ましい。
【0030】
(Step5)
光硬化性樹脂の、基材側とは反対側に、凹凸構造が付与できるようなマスキングシートを配置する。すなわち、基材と光硬化性樹脂が接触している側ではなく、光硬化性樹脂がむき出しになっている側にマスキングシートを配置する。基材と光硬化性樹脂は前述の光硬化により接着しているが、基材が接着していない方の面は、この時点では未硬化の状態である。未硬化の光硬化性樹脂にマスキングシートを配置する。
マスキングシートは、光を遮蔽する材料で構成されるシートであれば特に限定されず、セルローストリアセテート(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)を用いることが出来る。
【0031】
(Step6)
マスキングシートの上から光を照射することにより、マスキングざれていない光硬化性樹脂を硬化し、当該硬化により、保持面110の形状を確定する。紫外線照射装置は基材と光硬化性樹脂を接着させる工程で使用したものと同じものを使用することができ、紫外線照射の波長、照度、照射時間は光硬化性樹脂の種類や望ましい保持面110の形状により調整される。
【0032】
(Step7)
次に、溶媒を用いて未硬化の光硬化性樹脂を洗い流す。基材が接着され、光により硬化した光硬化性樹脂で構成される保持層11を得る。溶媒は、未硬化の光硬化性樹脂を除去できる溶媒であれば特に限定されないが、水を用いることが好ましい。
保持層11は製造工程で溶剤の使用量を少なく又は無使用にすることができ、環境にやさしい。得られた保持層11は、
図1のように、接着している基材を保持定盤2に接続して、研磨工程に供する。なお、必要に応じて基材の光硬化性樹脂が接着されているのとは反対の面に両面テープなどの接着層をさらに設け、この接着層を介して保持定盤へと保持層11を接続してもよい。
【実施例0033】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0034】
各実施例及び比較例において、特段の指定のない限り、「部」とは「質量部」を意味するものとする。
【0035】
(保持パッドの製造)
<実施例1>
金型を用意し、金型底面側にPETフィルム基材を配置する。PETフィルム基材の上に、光硬化性樹脂であるコスモライト(東洋紡社製)を配置し、光硬化性樹脂に対して基材側からBLBを3分照射することにより、基材と光硬化性樹脂を接着させた。
光硬化性樹脂の、基材とは反対側表面に、凸部が形成できるような複数の穴の開いたマスキングシートを配置し、マスキングシートの上からBLBを3分照射することにより、マスキングされていない光硬化性樹脂を硬化させた。
水を用いて未硬化の光硬化性樹脂を洗い流すことにより、硬化済の光硬化性樹脂で構成される保持層11を得た。なお、洗い流しには水を用いたため、溶剤を使用しなかった。基材の光硬化性樹脂が接着されているのとは反対の面に両面テープを貼り付けることで保持パッド10を得た。
【0036】
<実施例2>
金型を用意し、PETフィルム基材を配置する。PETフィルム基材の上に、光硬化性樹脂である紫光(三菱ケミカル社製:UV硬化型ウレタンアクリレート)を配置し、光硬化性樹脂に対して基材側からBLBを3分照射することにより、基材と光硬化性樹脂を接着させた。
光硬化性樹脂の、基材とは反対側表面に、凸部が形成できるような複数の穴の開いたマスキングシートを配置し、マスキングシートの上からBLBを3分照射することにより、マスキングされていない光硬化性樹脂を硬化させた。
水を用いて未硬化の光硬化性樹脂を洗い流すことにより、硬化済の光硬化性樹脂で構成される保持層11を得た。基材の光硬化性樹脂が接着されているのとは反対の面に両面テープを貼り付けることで保持パッド10を得た。
【0037】
<比較例1>
100%モジュラスが6MPaのポリエステル系ポリウレタン樹脂を30質量%含むDMF溶液100部に対し、DMF50部、水5部、カーボンブラック2部、界面活性剤1部を添加混合することにより樹脂溶液を得た。
得られた樹脂溶液を、クリアランス1.5mmに設定したリバースコーターを用いて、ポリエステルフィルム上に1.2mm厚にてキャストした。
その後樹脂溶液をキャストしたポリエステルフィルムを凝固浴(水)に浸漬し(20℃で60分)、該樹脂溶液を凝固させた後、剥離・洗浄・乾燥させて湿式樹脂シートを得た。
樹脂シートのスキン層にバフ処理を施し、その後、バフ処理面とは反対の面に両面テープを貼り付け保持パッドを得た。なお、比較例1の製造工程では大量のDMFを使用した。
【0038】
<比較例2>
PETフィルム基材上にアクリルフェノール樹脂(荒川工業社製)を配置し、加熱することにより硬化させた。硬化後の樹脂表面を格子状に切削した。樹脂の切削した表面と反対に両面テープを貼り付け保持パッドを得た。
【0039】
実施例1、2及び比較例1、2の保持パッドの材料及び製造方法、そして、各保持パッドを下記評価に供した結果を表1にまとめる。
【0040】
【0041】
(表面形状形成)
実施例1、2及び比較例1,2の保持パッドを用いて、被研磨物であるウエハを吸着させ、下記条件で研磨試験を実施した。研磨試験後、目視で被研磨物の保持パッドと接する面を確認し、傷がついていない場合には評価〇、傷がついている場合には評価×とした。なお、比較例2では、表面の凹凸形状作成のために切削を行ったが、その際のバリによって研磨試験で被研磨物に傷が発生した。
【0042】
(耐薬品性)
下記条件で研磨試験を行い、10時間以内で保持パッドが剥離した場合には評価×、18時間以内の場合は評価△、18時間以上耐えた場合は評価〇とした。
【0043】
(研磨影響)
表面形状形成、耐薬品性の両方の評価が○の場合、問題なく研磨を行えるため研磨影響の評価〇、どちらかの評価が△の場合、研磨影響の評価〇に比べ研磨に影響が出るため研磨影響の評価△、どちらかが評価×の場合、研磨に使用できないため研磨影響の評価×とした。
【0044】
(研磨条件)
使用研磨機:15inch 片面研磨機
研磨剤温度:50~120度
研磨定盤回転数:60~100rpm
研磨ヘッド回転数:30~50rpm
研磨圧力:350~500g/cm2
研磨スラリー(金属膜):過マンガン酸カリウム+ルブリカント液
研磨スラリー流量:5 cc/min
研磨時間:3~20 時間
被研磨物(金属膜):SiC WF
本発明は、耐薬品性があり、一体型保持層を備える保持パッドとして保持面に様々な凹凸構造を付与可能であり、適切な吸着力を調整でき、被研磨物の剥離を容易にすることができる保持パッドを提供するものであるため、保持パッドの製造、販売に寄与するので、産業上の利用可能性を有する。