(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141513
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】研磨パッド
(51)【国際特許分類】
B24B 37/24 20120101AFI20241003BHJP
B24B 37/013 20120101ALI20241003BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B24B37/24 C
B24B37/013
H01L21/304 622F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053211
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005359
【氏名又は名称】富士紡ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149799
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 陽一郎
(72)【発明者】
【氏名】立野 哲平
(72)【発明者】
【氏名】糸山 光紀
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼見沢 大和
(72)【発明者】
【氏名】森明 竜馬
【テーマコード(参考)】
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158BA02
3C158BA04
3C158BA05
3C158BA08
3C158CB01
3C158CB10
3C158DA12
3C158DA17
3C158EA11
3C158EB01
3C158EB06
3C158EB07
3C158EB12
3C158EB15
3C158EB17
3C158EB20
3C158EB22
3C158EB28
3C158EB29
5F057AA05
5F057AA24
5F057BA11
5F057BA15
5F057BB01
5F057BB11
5F057CA11
5F057DA03
5F057EB03
5F057EB06
5F057EB07
5F057EB11
5F057EB12
5F057EB13
5F057EB30
5F057GA12
5F057GB02
5F057GB13
5F057GB20
(57)【要約】
【課題】 スライス時における終点検出窓の変形や破損によるスライス不良の発生が抑制され、研磨の際の終点検出窓によるスクラッチの発生が抑制される研磨パッド及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 研磨層と、研磨層の一部に一体に形成された終点検出窓とを有する研磨パッドであって、終点検出窓がポリイソシアネート化合物及び硬化剤を含む硬化性樹脂組成物の硬化物であり、硬化剤が低分子量ポリオール及び3官能以上のポリエステルポリオール及びを含み、下記式(1)から得られる数値が0.65以上である、研磨パッド。
(終点検出窓の80℃におけるD硬度)/(終点検出窓の20℃におけるD硬度)・・・式(1)
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨層と、前記研磨層の一部に一体に形成された終点検出窓とを有する研磨パッドであって、
前記終点検出窓がポリイソシアネート化合物及び硬化剤を含む硬化性樹脂組成物の硬化物であり、
前記硬化剤が低分子量ポリオール及び3官能基以上のポリエステルポリオールを含み、
下記式(1)から得られる数値が0.65以上である、研磨パッド。
(終点検出窓の80℃におけるD硬度)/(終点検出窓の20℃におけるD硬度)・・・式(1)
【請求項2】
前記ポリエステルポリオールの数平均分子量が1000~2000である、請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項3】
前記ポリエステルポリオールの官能基数が3である、請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項4】
前記ポリエステルポリオールと前記低分子量ポリオールの重量比(ポリエステルポリオール:低分子量ポリオール)が80:20~98:2である、請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項5】
前記低分子量ポリオールの分子量が80~150である、請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項6】
前記硬化剤がポリエーテルポリオールを含む、請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項7】
前記ポリエーテルポリオールの数平均分子量が500~2000である、請求項6に記載の研磨パッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は研磨パッドに関する。詳細には、本発明は、光学材料、半導体ウエハ、半導体デバイス、ハードディスク用基板等の研磨に好適に用いることができる研磨パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
光学材料、半導体ウエハ、半導体デバイス、ハードディスク用基板の表面を平坦化するための研磨法として、化学機械研磨(chemical mechanical polishing,CMP)法が一般的に用いられている。
【0003】
CMP法について、
図1を用いて説明する。
図1のように、CMP法を実施する研磨装置1には、研磨パッド3が備えられ、当該研磨パッド3は、保持定盤16に保持された被研磨物8に当接し、研磨を行う層である研磨層4と研磨層4を支持するクッション層6を含む。研磨パッド3は、被研磨物8が押圧された状態で回転駆動され、被研磨物8を研磨する。その際、研磨パッド3と被研磨物8との間には、スラリー9が供給される。スラリー9は、水と各種化学成分や硬質の微細な砥粒の混合物(分散液)であり、その中の化学成分や砥粒が流されながら、被研磨物8との相対運動により、研磨効果を増大させるものである。スラリー9は溝又は孔を介して研磨面に供給され、排出される。
【0004】
CMP法では、被研磨物8が所望の位置まで研磨されたかについて、光学的手法により確認することができる。例えば、
図1で示す研磨装置1は、終点を確認するための光学式センサ14等を備える。具体的には、研磨層4の一部に透光性を有する終点検出窓5、さらに、研磨定盤10の下に光源13及び光学式センサ14が設けられている。
【0005】
光学的手法により終点検出を行う原理について
図2を用いて説明する。光源13により照射された光2は、被研磨物8である基板11上に形成された薄膜(例えば絶縁膜)12に入射したとき、一部の光2aは薄膜12の表面に反射し、一方、別の光2bは薄膜12を通過して被研磨物8の表面で反射する。反射光2a及び2bは終点検出窓5を通して、光学式センサ14に検出され、薄膜12の厚さに応じて反射光の位相差及び強度の強弱が生じ、その位相差及び反射強度変化が検知されることにより、薄膜12の研磨状況を確認することができる。
【0006】
このような光学式終点検出を利用した化学機械研磨法に用いる研磨パッドとしては、例えば、特許文献1が挙げられる。特許文献1には、パッド本体の開口に窓用部材をはめ込んだ場合に窓用部材とパッド本体を継ぎ合わせてできた溝内にスラリーが溜まるのを抑えて、研磨レートの検出精度を上げることができる研磨パッドを提供することを目的として、パッド本体と該パッド本体の一部に一体に形成された透明な窓用部材とを有する研磨パッドにおいて、窓用部材がパッド本体の表面から突出しないように、窓用部材の材質がパッド本体の材質に比べて研削性が高く、窓用部材の表面をパッド本体の表面から凹んだ状態とすることが開示されている。
しかしながら、この窓用部材はパッド本体の材質と異なっているため、パッド本体と窓用部材を温めてスライスする場合に、パッド本体と窓用部材の物性(特に硬度)が異なってしまい、窓用部材の変形や破損が発生し、スライス不良が発生するおそれがある。また、研磨時はパッド本体と窓用部材が接するが、パッド本体と窓用部材の材質と異なっているため、窓用部材の研磨特性によりスクラッチが発生し結果的に悪影響を及ぼす可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、スライス時における終点検出窓の変形や破損によるスライス不良の発生が抑制され、研磨の際の終点検出窓によるスクラッチの発生が抑制される研磨パッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、終点検出窓を構成する硬化性樹脂組成物に含まれる硬化剤として、少なくとも低分子量ポリオール及び3官能以上のポリエステルポリオールを含む硬化剤を用いることにより上記問題点を解決しうることを見出して、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下を包含する。
[1] 研磨層と、前記研磨層の一部に一体に形成された終点検出窓とを有する研磨パッドであって、
前記終点検出窓がポリイソシアネート化合物及び硬化剤を含む硬化性樹脂組成物の硬化物であり、
前記硬化剤が低分子量ポリオール及び3官能基以上のポリエステルポリオールを含み、
下記式(1)から得られる数値が0.65以上である、研磨パッド。
(終点検出窓の80℃におけるD硬度)/(終点検出窓の20℃におけるD硬度)・・・式(1)
[2] 前記ポリエステルポリオールの数平均分子量が1000~2000である、[1]に記載の研磨パッド。
[3] 前記ポリエステルポリオールの官能基数が3である、[1]に記載の研磨パッド。
[4] 前記ポリエステルポリオールと前記低分子量ポリオールの重量比(ポリエステルポリオール:低分子量ポリオール)が80:20~98:2である、[1]に記載の研磨パッド。
[5] 前記低分子量ポリオールの分子量が80~150である、[1]に記載の研磨パッド。
[6] 前記硬化剤がポリエーテルポリオールを含む、[1]に記載の研磨パッド。
[7] 前記ポリエーテルポリオールの数平均分子量が500~2000である、[6]に記載の研磨パッド。
【発明の効果】
【0010】
研磨パッドは、スライス時における終点検出窓の変形や破損によるスライス不良の発生を抑制することができ、研磨の際の終点検出窓によるスクラッチの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】
図2は、入射光及び反射光の経路を示す概略図である。
【
図3】
図3は、本発明の研磨パッド3の斜視図である。
【
図4】
図4は、本発明の研磨パッド3の断面図(A-A’断面図)である。
【
図5】
図5は、研磨層4を形成する一態様を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、発明を実施するための形態について説明するが、本発明は、発明を実施するための形態に限定されるものではない。
なお、本明細書に記載の数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography:GPC)により測定することができる。ポリウレタン樹脂からポリオール化合物の数平均分子量を測定する場合は、アミン分解等の常法により各成分を分解した後、GPCによって推定することもできる。
【0013】
<<研磨パッド>>
研磨パッド3は、研磨層4と、研磨層4の一部に一体に形成された終点検出窓5とを有する研磨パッド3であって、終点検出窓5がポリイソシアネート化合物及び硬化剤を含む硬化性樹脂組成物の硬化物であり、硬化剤が低分子量ポリオール及び3官能以上のポリエステルポリオールを含み、終点検出窓5の20℃におけるD硬度に対する終点検出窓5の80℃におけるD硬度の比0.65以上である。
これにより、スライス時における終点検出窓5の変形や破損によるスライス不良の発生が抑制され、研磨の際の終点検出窓5によるスクラッチの発生が抑制される。
研磨層4の一部に一体に形成された終点検出窓5とは、研磨層4の材料の注型前に、型17に終点検出窓用の硬化物を配置し、そこに研磨層4の材料を注型し、硬化物を形成することで、研磨層4の一部に、研磨層4との間に継ぎ目のなく形成された終点検出窓5を意味する。
一般的に終点検出窓5は、研磨層4の研磨面にむき出しの状態で設けられ、被研磨物8にも接することになる。
【0014】
研磨パッド3の構造について
図3を用いて説明する。研磨装置1に備えられる研磨パッド3は、
図3のように、少なくとも一つの終点検出窓5(
図3では、2つの終点検出窓5を備える)を有する研磨層4と、終点検出窓5に通じる穴18を有するクッション層6とを含む。研磨パッド3は、終点検出窓5を有するため、光源13、光学式センサ14を用いて被研磨物8の研磨状況の確認を光学的に実施できる。
研磨パッド3の形状は円盤状が好ましいが、特に限定されるものではなく、また、大きさ(径)も、研磨パッド3を備える研磨装置1のサイズ等に応じて適宜決定することができ、例えば、直径10cm~2m程度とすることができる。
なお、本発明の研磨パッド3は、研磨層4がクッション層6に接着層7を介して接着されていることが好ましいが、研磨層4のみから構成されていてもよい。
研磨パッド3は、クッション層6に配設された両面テープ等によって研磨装置の研磨定盤10に貼付される。研磨パッド3は、研磨装置1によって被研磨物8を押圧した状態で回転駆動され、被研磨物8を研磨する。
【0015】
終点検出窓5を備える研磨層4を有する研磨パッド3の製造方法について
図5を用いて説明する。終点検出窓5用の材料を成形型に充填し、硬化させ、硬化物を得る。終点検出窓5用の硬化物を研磨層4の型17に配置する(
図5(a))。研磨層4用の材料を型17に充填して、硬化させ(
図5(b))、終点検出窓5を備える研磨層4用の硬化物を得る(
図5(c))。終点検出窓5を備える研磨層4用の硬化物を研磨層4及び終点検出窓5の厚さ方向に垂直な方向に切断し(例えば、厚さは0.5mm~5.0mm程度)し(
図5(d))、研磨層4を得る。研磨層4にクッション層6を貼り合わせる。このとき、クッション層6は、窓を塞いだ状態になっているため、終点検出窓5の部分に終点検出窓5を塞がないように穴18をあける。最後に、研磨パッド3として使用できるように、円形に切断する。
さらに、本発明の研磨パッド3は、必要に応じて、研磨層4及び終点検出窓5の表面及び/又は裏面を研削処理してもよく、溝加工やエンボス加工を表面に施してもよい
【0016】
本発明の研磨パッド3を使用するときは、研磨パッド3を研磨層4の研磨面が被研磨物8と向き合うようにして研磨装置1の研磨定盤10に取り付ける。そして、スラリーを供給しつつ、研磨定盤10を回転させて、被研磨物8の加工表面を研磨する。
【0017】
<終点検出窓>
終点検出窓5は、光学的手段により、研磨の終点を確認するためのものであるため透光性を有し、研磨層4と同様の働き、すなわち、被研磨物8を研磨する働きも要求される場合もあるため、主成分は研磨層4と同様の成分が好ましい。
終点検出窓5はポリイソシアネート化合物及び硬化剤を含む硬化性樹脂組成物の硬化物である。
ポリイソシアネート化合物及び硬化剤を含む硬化性樹脂組成物は、ポリイソシアネート化合物及び硬化剤を含む硬化性樹脂組成物であれば、特に限定されるものではないが、ポリウレタン樹脂組成物、ポリウレア樹脂組成物、及びポリウレタンポリウレア樹脂組成物を好適に用いることが出来る。本明細書ではポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂及びポリウレタンポリウレア樹脂を「ポリウレタン樹脂」と称する。
【0018】
(ポリイソシアネート化合物)
本明細書において、ポリイソシアネート化合物とは、分子内に2つ以上のイソシアネート基を有する化合物を意味する。
ポリイソシアネート化合物としては、脂環族イソシアネート化合物、脂肪族イソシアネート化合物、及び芳香族イソシアネート化合物が挙げられる。このなかでも、脂環族イソシアネート化合物及び/又は脂肪族イソシアネート化合物を含むことが好ましい。これにより、透明性がより向上するほか、窓の耐黄変性がより向上する傾向にある。
ポリイソシアネート化合物は、分子内に2つ以上のイソシアネート基を有していれば特に制限されるものではない。具体例としては、分子内に2つのイソシアネート基を有するジイソシアネート化合物としては、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート(2,6-TDI)、2,4-トリレンジイソシアネート(2,4-TDI)、ナフタレン-1,4-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネー卜(MDI)、4,4’-メチレン-ビス(シクロヘキシルイソシアネート)(水添MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ビフェニルジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、キシリレン-1、4-ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルプロパンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、プロピレン-1,2-ジイソシアネート、ブチレン-1,2-ジイソシアネート、シクロヘキシレン-1,2-ジイソシアネート、シクロヘキシレン-1,4-ジイソシアネート、p-フェニレンジイソチオシアネート、キシリレン-1,4-ジイソチオシアネート、エチリジンジイソチオシアネート等を挙げることができる。これらのポリイソシアネート化合物は、単独で用いてもよく、複数のポリイソシアネート化合物を組み合わせて用いてもよい。中もでも、D硬度の調整のしやすさや透明性の観点で、4,4’-メチレン-ビス(シクロヘキシルイソシアネート)が好ましい。また、イソホロンジイソシアネート(IPDI)も好ましい。
【0019】
(ウレタン結合含有ポリイソシアネート化合物)
ポリイソシアネート化合物として、ウレタン結合含有ポリイソシアネート化合物(ウレタンプレポリマー)を用いることができる。ウレタン結合含有ポリイソシアネート化合物は、市販されているものを用いてもよく、また、上記ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを、通常用いられる条件で反応させることにより得られる化合物を用いてもよい。なお、ウレタン結合含有ポリイソシアネート化合物とは、ウレタン結合とイソシアネート基を分子内に含むものである。
また、本発明の効果を損なわない範囲内で、微量の他の成分がウレタン結合含有ポリイソシアネート化合物とともに含まれている混合物をウレタン結合含有ポリイソシアネート化合物として使用してもよい。
【0020】
ウレタン結合含有ポリイソシアネート化合物としては、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させて合成したものを用いてもよい。前記反応に特に制限はなく、ポリウレタン樹脂の製造において公知の方法及び条件を用いて付加重合反応すればよい。例えば、40℃に加温したポリオール化合物に、窒素雰囲気にて撹拌しながら50℃に加温したポリイソシアネート化合物を添加し、30分後に80℃まで昇温させ更に80℃にて60分間反応させるといった方法で製造することができる。
【0021】
(硬化剤)
硬化剤は、低分子量ポリオール及び3官能以上のポリエステルポリオールを含んでいる。
3官能以上のポリエステルポリオールとは、3つ以上の官能基を有するポリエステルポリオールを意味し、これを用いることにより、高温時でも硬度低下を抑制することができるため、スライス時に終点検出窓5の硬度が低下しすぎることなく、スライス不良が抑制できる。また、低分子量ポリオールを用いることにより、20℃におけるD硬度を調整しやすくすることができるため、研磨時の終点検出窓5の物性(D硬度)を研磨層4と同程度の物性に調整することができ、終点検出窓5に起因するスクラッチの発生を抑制することができる。
【0022】
なお、本明細書において、ポリオールとは、分子内に2つ以上の水酸基(OH)を有する化合物を意味し、低分子量ポリオールとは、分子量300未満のポリオールを意味する。
ポリエステルポリオールとしては、エステル結合を有するポリオールであれば特に限定されないが、脂肪族ポリエステルポリオール、芳香族ポリエステルポリオールが挙げられる。ポリエステルポリオールとしては、例えば、二塩基酸と多価アルコールを縮重合し、末端に水酸基を付与して製造することができ、二塩基酸としては、例えばコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、フタル酸、ダイマー酸等が挙げられ、多価アルコールとしては、エチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ジエチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール等が挙げられる。
ポリエステルポリオールとしては、他にも、ヒドロキシカルボン酸の縮合重合によって合成されるポリエステルポリオール、ラクトンの開環重合(ラクトン化合物と低分子量のポリオールとの反応)によって合成されるポリエステルポリオール、またはグリコールとジカルボン酸の縮合重合によって合成されるポリエステルポリオールが挙げられ、耐熱性に優れるためラクトンの開環重合によって合成されるポリエステルポリオールが好ましい。
【0023】
このラクトンの具体例としては、β-プロピオラクトン、β-ブチロラクトン、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、γ-カプロラクトン、γ-ヘプタラクトン、γ-オクタラクトン、γ-ノナラクトン、γ-デカノラクトン、δ-バレロラクトン、β-メチル-δ-バレロラクトン、δ-ヘキサノラクトン、δ-オクタノラクトン、δ-デカノラクトン、δ-ノナラクトン、ε-カプロラクトンなどを挙げることができ、耐熱性に優れ、温度上昇による終点検出窓5のD硬度の低下を抑制するためε-カプロラクトンが好ましい。
【0024】
ラクトンを開環重合してポリエステルポリオールを製造するには、公知の重合方法を適用することができるが、末端の官能基を水酸基にするために、通常、2~6価のポリヒドロキシ化合物が添加される。
【0025】
ポリヒドロキシ化合物(低分子量のポリオール)の具体例としては、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,8-オクタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノールなどのグリコール、あるいはトリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、イソシアヌル酸トリス(2-ヒドロキシエチル)などのポリオールを挙げることができ、終点検出窓5のD硬度を調整しやすいためトリメチロールプロパンが好ましい。これらのポリヒドロキシ化合物の添加量は、ラクトンに対して通常、0.01~50モル%、好ましくは0.1~20モル%である。ポリエステルポリオールとしては市販されているものを用いてもよく、ラクトンの開環重合によって合成したものを用いてもよい。
【0026】
ポリエステルポリオールの官能基数は、3以上であり、好ましくは3である。ポリエステルポリオールの官能基数が、3であると架橋反応により三次元網目構造を形成し、20℃のD硬度に対する80℃のD硬度の比を調整しやすくなる。官能基とは有機化合物の化学的性質を決める原子団をいい、本明細書のポリエステルポリオールにおいては水酸基が好ましい。
ポリエステルポリオールの数平均分子量は、好ましくは1000~2000である。数平均分子量が、1000~2000であるとD硬度を所望の範囲に調整しやすくなる。
ポリエステルポリオールの含有量は、ポリイソシアネート化合物100部に対して、好ましくは50.0~250.0部であり、より好ましくは60.0~220.0部である。ポリエステルポリオールの含有量が上記範囲内であることにより、温度上昇に伴うD硬度の低下を抑制することができる。
【0027】
低分子量ポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、2,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサングリコール、2,5-ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、トリシクロデカンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等の水酸基を2つ有する低分子量ポリオール;グリセリン、ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン(TMP)、イソシアヌル酸、エリスリトール等の水酸基を3つ以上有する低分子量ポリオールが挙げられる。低分子量ポリオールは1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
このなかでも、水酸基を3つ以上有する低分子量ポリオールが好ましく、グリセリンがより好ましい。このような低分子量ポリオールを用いることにより、透明性がより向上するほか、窓の耐黄変性がより向上する傾向にある。
低分子量ポリオールの分子量は、好ましくは80~150である。分子量が、80~150であるとD硬度を調整しやすくなる。
低分子量ポリオールの含有量は、ポリイソシアネート化合物100部に対して、好ましくは5.0~19.0部であり、より好ましくは7.0~17.0部である。低分子量ポリオールの含有量が上記範囲内であることにより、20℃のD硬度に対する80℃のD硬度の比を調整しやすくなる。
【0028】
ポリエステルポリオールと低分子量ポリオールの重量比(ポリエステルポリオール:低分子量ポリオール)が好ましくは80:20~98:2であり、より好ましくは90:10~98:2である。ポリエステルポリオールと低分子量ポリオールの重量比(ポリエステルポリオール:低分子量ポリオール)が80:20~98:2であると、20℃のD硬度に対する80℃のD硬度の比を調整しやすくなり、スクラッチの発生の抑制やスライス不良を抑制しやすい傾向にある。
【0029】
硬化剤は、ポリエステルポリオールと低分子量ポリオール以外の硬化剤を含んでもよい。ポリエステルポリオールと低分子量ポリオール以外の硬化剤としては、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基と反応する水酸基をもつ化合物が挙げられ、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール、エポキシポリオール、植物油ポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、および、ビニルモノマー変性ポリオールが挙げられる。
なかでも、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)に代表されるポリエーテルポリオールが含まれていることが好ましい。ポリエーテルポリオールが含まれていると、20℃のD硬度を調整しやすくなる。ポリエーテルポリオールの数平均分子量は、好ましくは500~2000である。ポリエーテルポリオールの数平均分子量が、500~2000であると脆さを解消して適度な弾性を与えることができる。
【0030】
ポリエーテルポリオールの含有量は、ポリイソシアネート化合物100部に対して、好ましくは50.0~100.0部であり、より好ましくは65.0~90.0部である。ポリエーテルポリオールの含有量が上記範囲内であることにより、適度な弾性を与えD硬度を調整しやすくなる。
【0031】
(添加剤)
終点検出窓5の材料である硬化性樹脂組成物は、添加剤を含んでもよい。例えば、スズ含有触媒、アミン触媒等の触媒や鎖延長剤等を用いることができる。
【0032】
(D硬度)
本明細書において、D硬度とは、日本工業規格(JIS K6253)に準じて測定した値を意味する。
終点検出窓5の20℃におけるD硬度に対する80℃におけるD硬度の比(終点検出窓の80℃におけるD硬度)/(終点検出窓の20℃におけるD硬度)・・・式(1))が0.65以上であり、好ましくは0.70以上であり、より好ましくは、0.75以上である。終点検出窓5の20℃におけるD硬度に対する80℃におけるD硬度の比が0.65以上であると、温度が上昇しても終点検出窓の硬度が低下しにくくなる。
終点検出窓5の20℃におけるD硬度に対する80℃におけるD硬度の比(式(1))は、高温時の終点検出窓5の硬度の低下の程度を示しているものであり、この値が高ければ、高温の硬度が低下しにくいことを示している。
終点検出窓5を備える研磨層4用の硬化物のスライスは硬化物が温かい状態で行うため、高温時において終点検出窓5の硬度が低下しすぎると、終点検出窓5の変形や破損によるスライス不良が発生する。したがって、高温時において終点検出窓5の硬度が低下しすぎないことが好ましい。
終点検出窓5の20℃におけるD硬度は、好ましくは20~50であり、より好ましくは30~40である。終点検出窓5の20℃におけるD硬度が20~50であると、研磨の際にスクラッチの発生を抑制する傾向にある。
20℃におけるD硬度は、研磨加工の際の初期の硬度を意味し、終点検出窓5に起因するスクラッチの発生を抑制するため、研磨層4と同程度の物性(硬度)に調整されることが好ましい。
【0033】
(透過率)
終点検出窓5は、光を通過させるため、使用頻度が高い300~800nmにおける透過率が高いことが好ましい。例えば、660nmの光の透過率が、好ましくは、50%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上、より一層好ましくは80%以上である。透過率が高ければ、エラーが生じにくく、高い精度で測定することができる。透過率の測定は、分光光度計(日立製作所製、U-3210 Spectro Photometer)を用いて測定することができ、このときの試料厚さは10mmである。
【0034】
終点検出窓5の数は、通常は1つ又はそれ以上あればよい。終点検出窓5の直径は、1cm~15cm程度が好ましく、厚みは研磨層4と同様で、通常0.8~5mm程度である。
また、
図4に示すように(
図3のA-A’断面図)、研磨層4の表面4aと、終点検出窓5の表面5aは高さが同じようになるように、調整する。
終点検出窓5は、研磨層4の上面及び下面を通貫している円柱状の形状を有することが一般的であるが、研磨層4の上面及び下面を通貫していれば特に限定されるものではなく、楕円柱型、多角柱型等適宜選択できる。
い。
【0035】
<研磨層>
研磨パッド3は、被研磨物8を研磨するための層である研磨層4を備える。研磨層4を構成する材料は、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、及びポリウレタンポリウレア樹脂を好適に用いることができる。本明細書ではポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂及びポリウレタンポリウレア樹脂を「ポリウレタン樹脂」と称する。
研磨層4の大きさ(径)は、研磨パッド3と同様であり、直径10cm~2m程度とすることができ、研磨層4の厚みは、0.8~5mm程度とすることができる。
研磨層4は、研磨装置1の研磨定盤10と共に回転され、その上にスラリー9を流しながら、スラリーの中に含まれる化学成分や砥粒を、被研磨物8と一緒に相対運動させることにより、被研磨物8を研磨する。研磨層4の表面に同心円状、格子状、放射状などの溝加工が施されることにより、スラリー9の保持や排出を調整することができ、研磨特性を変えることが可能である。
研磨層4には、研磨層4の材料の注型前に、型17に終点検出窓用の硬化物を配置し、そこに研磨層4の材料を注型し、硬化物を形成することで、その一部に終点検出窓5が一体に形成されている。
【0036】
研磨層4は、気泡を有するポリウレタン樹脂発泡体を用いることが好ましい。また、ポリウレタン樹脂発泡体の気泡は、その態様によって、複数の気泡が独立して存在する独立気泡と、複数の気泡が連通孔でつながっている連続気泡に分類される。このなかでも、本発明に用いられるポリウレタン樹脂発泡体は独立気泡を有することが好ましく、ポリウレタン樹脂と、該ポリウレタン樹脂中に分散した中空微小球体とを含むポリウレタン樹脂発泡体であることがより好ましい。
【0037】
独立気泡を有するポリウレタン樹脂発泡体は、外殻を有し、内部が中空状である中空微小球体を用いることにより気泡を生じさせることができる。中空微小球体は、既に膨張しているもの(既膨張)でも、未膨張のものでもよいが、未膨張のものを使用する場合は、硬化における温度で膨張することができる。
【0038】
中空微小球体は、市販のものを使用してもよく、常法により合成することにより得られたものを使用してもよい。中空微小球体の外殻の材質としては、特に制限されないが、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシエーテルアクリライト、マレイン酸共重合体、ポリエチレンオキシド、ポリウレタン、ポリ(メタ)アクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル及び有機シリコーン系樹脂、並びにそれらの樹脂を構成する単量体を2種以上組み合わせた共重合体が挙げられる。また、市販品の中空微小球体としては、以下に限定されないが、例えば、エクスパンセルシリーズ(アクゾ・ノーベル社製商品名)、マツモトマイクロスフェア(松本油脂(株)社製商品名)などが挙げられる。
【0039】
ポリウレタン樹脂発泡体における中空微小球体の形状は特に限定されず、例えば、球状及び略球状であってもよい。中空微小球体の平均粒径は、特に制限されないが、好ましくは5~200μmであり、より好ましくは5~80μmであり、さらに好ましくは5~50μmであり、特に好ましくは5~35μmである。なお、平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えばスペクトリス(株)製、マスターサイザ-2000)により測定することができる。
【0040】
中空微小球体の膨張開始温度は、85℃以上150℃以下であることが好ましく、より好ましくは90℃以上140℃以下が好ましい。中空微小球体の膨張開始温度が上記範囲内にあると、研磨層の材料の温度との差が小さく、中空微小球体の膨張具合を均一に制御することができる。
【0041】
中空微小球体は、ウレタンプレポリマー100重量部に対して、好ましくは0.1~10重量部、より好ましくは1~5重量部、さらにより好ましくは1~4重量部となるように添加する。
なお、あくまでも一例であるが、終点検出窓5周辺領域と終点検出窓5周辺以外の領域での開孔率の差が15以下であることが好ましく、10以下であればさらに好ましい。
ここで、研磨層4の研磨面における終点検出窓5周辺領域とは、終点検出窓5の縁から10mm離れた範囲を指す。また、研磨層4の研磨面における終点検出窓5周辺以外の領域とは、終点検出窓5の縁から10mmより外側の範囲を指す。
【0042】
また、上記の成分以外に、本発明の効果を損なわない範囲において、従来使用されている発泡剤を、中空微小球体と併用してもよい。
【0043】
研磨層4のD硬度は、特に限定されるものではないが、例えば、20~100であり、好ましくは30~80であり、さらに好ましくは30~70である。D硬度が小さい場合には、低圧研磨加工で微細な凹凸を平坦化することが難しくなる。D硬度が高すぎると、被研磨物8に強く擦りつけられ被研磨物8の加工面にスクラッチが発生する可能性がある。
【0044】
<クッション層>
クッション層6は、樹脂を含浸させた含浸不織布、合成樹脂等の可撓性を有する材料、気泡構造を有する発泡体等から構成されるため、研磨層4の被研磨物8への当接をより均一にすることができる。本発明において、研磨パット3は、研磨層4のみから構成されてもよいが、クッション層6に接着させることが好ましい。
また、クッション層6においては、光検知を行うための光を通過させることができるように、終点検出窓5の設置位置に対応する部分に、終点検出窓5と同じ数の穴18を形成することが必要である。
【0045】
<接着層>
接着層7は、クッション層6と研磨層4を接着させるための層であり、通常、両面テープ又は接着剤から構成される。両面テープ又は接着剤は、当技術分野において公知のものを使用することができる。
【0046】
<研磨装置>
本発明の研磨パッド3を備えた研磨装置1は、すでに説明したように、光学的手段により研磨状態を確認できる。例えば
図1に示すように、研磨装置1を有する研磨定盤10は、光源13、光学式センサ14を備える。光源13から出された光が、研磨定盤10の下から上へ向けて通過し、さらにクッション層6の穴18、さらには、研磨層4の終点検出窓5を通過して、被研磨物8に到着し、被研磨物8に反射して戻ってきた光を光学式センサ14が感知する。このように光源13と光学式センサ14は、研磨定盤10と一緒に回転することにより、研磨しながら、研磨状況を確認できる。
【実施例0047】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0048】
各実施例及び比較例において、特段の指定のない限り、「部」とは「重量部」を意味するものとする。また、「R値」とは、ポリイソシアネート化合物又はウレタン結合含有ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に対する、硬化剤に存在する活性水素基の当量比を意味する。
【0049】
<実施例1>
(終点検出窓5の製造)
4,4’-メチレン-ビス(シクロヘキシルイソシアネート)(水添MDI)、ε-カプロラクトンとトリメチロールプロパンとの反応により得られた数平均分子量1257の3官能のポリエステルポリオール、グリセリンの各原料を80℃で予め保温した。次に、4,4’-メチレン-ビス(シクロヘキシルイソシアネート)(水添MDI)100部と、上記の3官能のポリエステルポリオール178.5部と、グリセリン9.2部と、を室温条件下で4分間真空攪拌脱泡を行うことにより混合することで反応混合物を得た。その後、反応混合物を予熱した型枠へ注入した後、型締めをし、120℃で30分間加熱した後、硬化した反応混合物(硬化性樹脂組成物A)を型枠から取り出した。これを、120℃、6時間でポストキュアした後、25℃で24時間冷却した。次に、硬化性樹脂組成物Aを研磨層製造工程で用いる前に120℃で1時間加熱し、その硬化性樹脂組成物Aを研磨層製造工程に用いた。なお、硬化剤の原料の(ポリエステルポリオール:低分子量ポリオール)は、95.1:4.9であった。また、R値は0.95であった。
【0050】
(研磨層4の製造)
2,4-トリレンジイソシアネート(2,4-TDI)、数平均分子量1000のポリプロピレングリコール(PPG)及びジエチレングリコール(DEG)を反応させてなるNCO当量560のウレタンプレポリマーと、2,4-トリレンジイソシアネート(2,4-TDI)、アジピン酸とブタンジオールと反応させて得られた数平均分子量2000のポリエステルジオール及びジエチレングリコール(DEG)を反応させてなるNCO当量600のウレタンプレポリマーとを重量比1:1で混合したウレタンプレポリマー100部に、殻部分がアクリロニトリル-塩化ビニリデン共重合体からなり、未膨張の中空微小球体(平均粒径:8.5μm)3.5部を添加混合し、ウレタンプレポリマー混合液を得た。得られたウレタンプレポリマー混合液を第1液タンクに仕込み、60℃で保温した。また、第1液タンクとは別に、硬化剤として3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(メチレンビス-o-クロロアニリン)(MOCA)20.2部を第2液タンクに入れ、120℃で加熱溶融させて混合し、更に減圧脱泡して得た硬化剤溶融液を得た。
【0051】
次に、第1液タンク、第2液タンクの夫々の液体を、注入口を2つ具備した混合機の夫々の注入口から注入し、攪拌混合して混合液を得た。混合機に注入された混合液の温度は90℃だった。このとき、予め120℃に温めておいた硬化性樹脂組成物Aを型枠に設置してある。混合液を混合攪拌しながら80℃に予熱した研磨層用の型枠へ注入した後、型締めをし、30分間、80℃で加熱し一次硬化させた。一次硬化させた成型物を脱型後、オーブンにて120℃で4時間二次硬化し、樹脂成型物を得た。得られた樹脂成型物を25℃まで放冷した後に、再度オーブンにて120℃で5時間加熱してから、1.3mmの厚みにスライスして終点検出窓が一体に形成された研磨層Aを得た。得られた研磨層の裏面に両面テープを貼り付け、クッション層を貼り合わせて、さらにクッション層表面に両面テープを貼り付けることで研磨パッドを得た。
【0052】
<実施例2>
4,4’-メチレン-ビス(シクロヘキシルイソシアネート)(水添MDI)100部と、実施例1と同じ3官能のポリエステルポリオール168.6部と、グリセリン9.9部と、を用いて、実施例1と同じ条件で製造し、硬化性樹脂組成物Bを得た。硬化性樹脂組成物Bを用いること以外は実施例1と同じ方法で研磨層B及び研磨パッドを得た。なお、硬化剤の原料の(ポリエステルポリオール:低分子量ポリオール)は、94.5:5.5であった。また、R値は0.95であった。
【0053】
<実施例3>
4,4’-メチレン-ビス(シクロヘキシルイソシアネート)(水添MDI)100部と、実施例1と同じ3官能のポリエステルポリオール112.4部と、グリセリン5.8部と、数平均分子量650のポリ(オキシテトラメチレン)グリコール(PTMG)87.2部と、を用いて、実施例1と同じ条件で製造し、硬化性樹脂組成物Cを得た。また、硬化性樹脂組成物Cを用いること以外は実施例1と同じ方法で研磨層C及び研磨パッドを得た。なお、硬化剤の原料の(ポリエステルポリオール:低分子量ポリオール)は、95.1:4.9であった。また、R値は0.95であった。
【0054】
<実施例4>
4,4’-メチレン-ビス(シクロヘキシルイソシアネート)(水添MDI)100部と、実施例1と同じ3官能のポリエステルポリオール108.4部と、グリセリン6.4部と、数平均分子量650のポリ(オキシテトラメチレン)グリコール(PTMG)84.1部と、を用いて、実施例1と同じ条件で製造し、硬化性樹脂組成物Dを得た。硬化性樹脂組成物Dを用いること以外は実施例1と同じ方法で研磨層D及び研磨パッドを得た。なお、硬化剤の原料の(ポリエステルポリオール:低分子量ポリオール)は、94.5:5.5であった。また、R値は0.95であった。
【0055】
<実施例5>
4,4’-メチレン-ビス(シクロヘキシルイソシアネート)(水添MDI)100部と、実施例1と同じ3官能のポリエステルポリオール104.6部と、グリセリン6.9部と、数平均分子量650のポリ(オキシテトラメチレン)グリコール(PTMG)81.2部と、を用いて、実施例1と同じ条件で製造し、硬化性樹脂組成物Eを得た。硬化性樹脂組成物Eを用いること以外は実施例1と同じ方法で研磨層E及び研磨パッドを得た。なお、硬化剤の原料の(ポリエステルポリオール:低分子量ポリオール)は、93.8:6.2であった。また、R値は0.95であった。
【0056】
<実施例6>
4,4’-メチレン-ビス(シクロヘキシルイソシアネート)(水添MDI)100部と、実施例1と同じ3官能のポリエステルポリオール173.4部と、トリメチロールプロパン(TMP)13.9部と、を用いて、実施例1と同じ条件で製造し、硬化性樹脂組成物Fを得た。硬化性樹脂組成物Fを用いること以外は実施例1と同じ方法で研磨層F及び研磨パッドを得た。なお、硬化剤の原料の(ポリエステルポリオール:低分子量ポリオール)は、92.6:7.4であった。また、R値は0.95であった。
【0057】
<実施例7>
4,4’-メチレン-ビス(シクロヘキシルイソシアネート)(水添MDI)100部と、実施例1と同じ3官能のポリエステルポリオール151.7部と、トリメチロールプロパン(TMP)16.2部と、を用いて、実施例1と同じ条件で製造し、硬化性樹脂組成物Gを得た。硬化性樹脂組成物Gを用いること以外は実施例1と同じ方法で研磨層G及び研磨パッドを得た。なお、硬化剤の原料の(ポリエステルポリオール:低分子量ポリオール)は、90.4:9.6であった。また、R値は0.95であった。
【0058】
<実施例8>
4,4’-メチレン-ビス(シクロヘキシルイソシアネート)(水添MDI)100部と、実施例1と同じ3官能のポリエステルポリオール86.7部と、トリメチロールプロパン(TMP)13.9部と、数平均分子量650のポリ(オキシテトラメチレン)グリコール(PTMG)67.2部と、を用いて、実施例1と同じ条件で製造し、硬化性樹脂組成物Hを得た。硬化性樹脂組成物Hを用いること以外は実施例1と同じ方法で研磨層H及び研磨パッドを得た。なお、硬化剤の原料の(ポリエステルポリオール:低分子量ポリオール)は、86.2:13.8であった。また、R値は0.95であった。
【0059】
<実施例9>
4,4’-メチレン-ビス(シクロヘキシルイソシアネート)(水添MDI)100部と、実施例1と同じ3官能のポリエステルポリオール75.9部と、トリメチロールプロパン(TMP)16.2部と、数平均分子量650のポリ(オキシテトラメチレン)グリコール(PTMG)58.8部と、を用いて、実施例1と同じ条件で製造し、硬化性樹脂組成物Iを得た。硬化性樹脂組成物Iを用いること以外は実施例1と同じ方法で研磨層I及び研磨パッドを得た。なお、硬化剤の原料の(ポリエステルポリオール:低分子量ポリオール)は、82.4:17.6であった。また、R値は0.95であった。
【0060】
<比較例1>
4,4’-メチレン-ビス(シクロヘキシルイソシアネート)(水添MDI)100部と、実施例1と同じ3官能のポリエステルポリオール303.4部と、を用いて、実施例1と同じ条件で製造し、硬化性樹脂組成物Jを得た。硬化性樹脂組成物Jを用いること以外は実施例1と同じ方法で研磨層J及び研磨パッドを得た。また、R値は0.95であった。
【0061】
<比較例2>
4,4’-メチレン-ビス(シクロヘキシルイソシアネート)(水添MDI)100部と、グリセリン9.9部と、数平均分子量1000のポリ(オキシテトラメチレン)グリコール(PTMG)201.2部と、を用いて、実施例1と同じ条件で製造し、硬化性樹脂組成物Kを得た。硬化性樹脂組成物Kを用いること以外は実施例1と同じ方法で研磨パッドを得た。また、R値は0.95であった。
【0062】
<比較例3>
4,4’-メチレン-ビス(シクロヘキシルイソシアネート)(水添MDI)100部と、グリセリン8.6部と、数平均分子量1000のポリ(オキシテトラメチレン)グリコール(PTMG)222.8部と、を用いて、実施例1と同じ条件で製造し、硬化性樹脂組成物Lを得た。硬化性樹脂組成物Lを用いること以外は実施例1と同じ方法で研磨層L及び研磨パッドを得た。また、R値は0.95であった。
【0063】
<比較例4>
4,4’-メチレン-ビス(シクロヘキシルイソシアネート)(水添MDI)100部と、実施例1と同じ3官能のポリエステルポリオール121.4部と、トリメチロールプロパン(TMP)19.4部と、を用いて、実施例1と同じ条件で製造し、硬化性樹脂組成物Mを得た。硬化性樹脂組成物Mを用いること以外は実施例1と同じ方法で研磨層M及び研磨パッドを得た。また、R値は0.95であった。
【0064】
(研磨層4及び終点検出窓5のD硬度の測定)
研磨層4及び終点検出窓5のD硬度は、日本工業規格(JIS-K-6253)に準拠して、ショアD型硬度計を用いて測定した。ここで、測定試料は、少なくとも総厚さ4.5mm以上になるように、必要に応じて複数枚の研磨層4及び終点検出窓5を重ねることで得た。
研磨層4及び終点検出窓5のD硬度の測定結果を表1及び表2に記載した。
【0065】
(スライス時の終点検出窓5の変形や破損評価)
上記のようにして得られた各研磨層の終点検出窓について、歪み、ひび、割れ、欠け等の変形や破損を目視で確認し、変形及び破損がないものを○と表記し、変形及び/又は破損があるものを×と表記し、評価結果を表1及び表2に記載した。
【0066】
(ディフェクト性能評価)
実施例1-9、比較例1-4の終点検出窓5を備えた研磨層4の裏面にウレタンを含侵させた不織布をクッション層6として貼り合わせて研磨パッド3を作製した。得られた研磨パッド3を用いて下記の研磨条件による研磨試験を行い、ディフェクト性能を評価した。
(研磨条件)
使用研磨装置:F-REX300X(荏原製作所社製)
Disk:A188(3M社製)
研磨剤温度:20℃
研磨定盤回転数:85rpm
研磨ヘッド回転数:86rpm
研磨圧力:3.5psi
研磨スラリー(金属膜):CSL-9044C(CSL-9044C原液:純水=重量比1:9の混合液を使用) (フジミコーポレーション社製)
研磨スラリー流量:200ml/min
研磨時間:60秒
被研磨物(金属膜):Cu膜基板
パッドブレーク:35N 10分
コンディショニング:Ex-situ、35N、4スキャン
【0067】
研磨処理枚数が16枚目、26枚目、51枚目までの基板を、表面検査装置(KLAテンコール社製、Surfscan SP2XP)の高感度測定モードを用いて、大きさが155nm以上の表面欠陥を検出した。検出された表面欠陥についてレビューSEMを用いた撮影したSEM画像の解析を行い、スクラッチの個数を計測した。実務上、要求されると考えられる10個以下のスクラッチ数を○と表記し、10個を超えるスクラッチ数を×と表記し、評価結果を表1及び表2に記載した。
【0068】
【0069】
【0070】
実施例及び比較例で使用した材料とその分子量は下記の通りであった。
イソシアネート:水添MDI(分子量262.35,当量:131.2)
3官能のポリエステルポリオール:トリメチロールプロパン及びε-カプロラクトンを反応させて得られたもの(数平均分子量1257,当量:419)
グリセリン:分子量92.09(当量:30.7)
TMP:トリメチロールプロパン(分子量134.17,当量:44.7)
ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール(数平均分子量1000,当量:500)
ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール(数平均分子量6500,当量:325)