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特開2024-141515流路切替システム、及び腹膜透析用医療装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141515
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】流路切替システム、及び腹膜透析用医療装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/28 20060101AFI20241003BHJP
   A61M 60/113 20210101ALI20241003BHJP
   A61M 60/268 20210101ALI20241003BHJP
【FI】
A61M1/28 110
A61M1/28 130
A61M60/113
A61M60/268
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053213
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】重田 勝美
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA06
4C077BB01
4C077CC08
4C077DD02
4C077DD12
4C077DD18
4C077DD27
4C077GG02
4C077HH02
4C077HH21
4C077JJ02
4C077JJ05
4C077JJ16
4C077JJ24
4C077KK25
(57)【要約】
【課題】腹膜透析液を注液するための注液カセット及び腹膜透析液を排液するための排液カセットを一度の使用で廃棄することなく複数回に亘って連続的に使用することを可能にする流路切替システム、及び腹膜透析用医療装置を提供する。
【解決手段】流路切替システム10は、腹膜透析液を腹腔B内に注入するための第1ポンプ112を備える注液カセット100と、腹腔内から腹膜透析液を排液するための第2ポンプ212を備える排液カセット200と、注液カセット及び排液カセットの各々と接続される流路切替カセット300と、流路切替カセットが備える流路の閉鎖及び開放を制御するための流路切替ユニット400と、を有し、流路切替カセットは、腹膜透析液を流通させることが可能な第1流路310を有し、流路切替ユニットは、第1流路の開放及び閉鎖を選択的に切替可能な切替部425を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腹膜透析液を腹腔内に注入するための第1ポンプを備える注液カセットと、
腹腔内から腹膜透析液を排液するための第2ポンプを備える排液カセットと、
前記注液カセット及び前記排液カセットの各々と接続される流路切替カセットと、
前記流路切替カセットが備える流路の閉鎖及び開放を制御するための流路切替ユニットと、を有し、
前記流路切替カセットは、
腹膜透析液を流通させることが可能な第1流路を有し、
前記流路切替ユニットは、
前記第1流路の開放及び閉鎖を選択的に切替可能な切替部を有する、流路切替システム。
【請求項2】
前記流路切替カセットは、
腹膜透析液を保持する透析液バッグから腹膜透析液を受け入れるための複数の第1ポートと、
前記注液カセットへ腹膜透析液を送液するための第2ポートと、を有し、
前記第1流路は、
前記複数の第1ポートの各々が配置された位置と対応した位置において分岐する複数の分岐流路と、
前記複数の分岐流路が合流するとともに、前記複数の第1ポートと前記第2ポートとの間を繋ぐ合流路と、を有し、
前記流路切替ユニットの前記切替部は、前記複数の分岐流路の各々と対応する位置に配置された複数のクランプ部を有し、
前記流路切替ユニットは、前記複数の分岐流路に配置された前記複数のクランプ部の各々による前記第1流路の閉鎖及び開放を個別に制御することができるように構成されている、請求項1に記載の流路切替システム。
【請求項3】
前記流路切替カセットは、
前記注液カセットから送液される腹膜透析液を受け入れるための第3ポートと、
腹腔内との間における腹膜透析液の流通を可能にする第4ポートと、
前記排液カセットへ腹膜透析液を送液するための第5ポートと、
前記排液カセットから送液される腹膜透析液を受け入れるための第6ポートと、
使用済みの腹膜透析液を排液バッグへ送液するための第7ポートと、を有し、
前記第1流路は、前記第3ポートから前記第6ポートとの間を連通するように形成されており、
前記流路切替カセットの前記切替部は、前記第1流路において前記第3ポートから前記第6ポートの各々に繋がる所定の位置に配置された複数のクランプ部をさらに有し、
前記流路切替ユニットは、前記複数のクランプ部の各々による前記第1流路の閉鎖及び開放を個別に制御することにより、前記注液カセット、前記排液カセット、及び前記排液バッグとの間における腹膜透析液の流通を制御することができるように構成されている、請求項2に記載の流路切替システム。
【請求項4】
前記注液カセットは、
腹膜透析液が流通可能な注液流路と、
前記流路切替カセットから腹膜透析液を受け入れるための注液側第1ポートと、
腹膜透析液を前記流路切替カセットへ送液するための注液側第2ポートと、を有し、
前記排液カセットは、
腹膜透析液が流通可能な排液流路と、
前記流路切替カセットから腹膜透析液を受け入れるための排液側第1ポートと、
腹膜透析液を前記流路切替カセットへ送液するための排液側第2ポートと、を有する、請求項3に記載の流路切替システム。
【請求項5】
前記流路切替カセットは、
前記流路切替カセット内に配置された前記第1流路を構成するチューブと、
前記チューブが設置された筐体と、を有し、
前記流路切替ユニットは、
前記筐体と機械的に接続可能に構成された本体部と、
前記本体部に配置され、前記流路切替カセット内に配置された前記チューブの押圧及び押圧の解除に伴って前記チューブの開放及び閉鎖を切り替えることが可能に構成された前記切替部と、を有する、請求項1に記載の流路切替システム。
【請求項6】
前記流路切替ユニットは、ユーザーから入力された指示に基づいて前記切替部の動作制御を行う制御部を有する、請求項1に記載の流路切替システム。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の流路切替システムと、
前記注液カセット及び前記排液カセットが装着可能に構成された腹膜透析装置と、を有する腹膜透析用医療装置であって、
前記腹膜透析装置は、前記注液カセット内に流入した腹膜透析液を加温するヒーターを有する、腹膜透析用医療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路切替システム、及び腹膜透析用医療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自宅等で患者自身が腹膜透析を行えるように構成された腹膜透析装置が知られている。例えば、特許文献1には、腹膜透析液を送液するためのポンプ及び腹膜透析液を所望の温度に加温するための加温部(加温チューブ)を備えるカセットと、カセットを装着可能な装置本体と、を備える腹膜透析装置が開示されている。
【0003】
上記のカセットは、腹膜透析液を流通させるための流路を備える。また、上記の装置本体は、流路の閉鎖及び開放を制御するためのクランプ部を備える。腹膜透析装置は、カセットが装置本体に装着された状態において、流路の各部に対応するように配置されたクランプ部を動作させることにより、使用前の未注入の腹膜透析液を患者の身体へ注液することを可能にするための流路の区画と、患者から排液された使用済みの腹膜透析を排液バッグへ排液するための流路の区画を切り替えることが可能な構成を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-182255号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の腹膜透析装置のように、1つのカセットの内部に未注入の腹膜透析液が流通可能な流路と使用済みの腹膜透析液が流通可能な流路を任意のタイミングで切り替えて区画することが可能な構成を備える場合、使用するカセットの個数を削減することができるため、腹膜透析に要するコストの削減等を図り得ると考えられる。
【0006】
しかしながら、カセットの内部に形成された流路中に、未注入の腹膜透析液と使用済みの腹膜透析液の各々が流れるような共用部分が存在すると、患者の身体への腹膜透析液の注入と患者の身体からの腹膜透析液の排液とを繰り返し行うような場合に、未注入の腹膜透析液中に使用済みの腹膜透析液が混入し、未注入の腹膜透析液の汚染が生じる可能性がある。そのため、特許文献1の腹膜透析装置を使用する場合、腹膜透析液の注液及び排液を実施する都度、カセットを廃棄することで細菌の感染リスクに備える等の対策が必要になる。ただし、前述たしように、カセットにはポンプ等の機械的な構成要素が備えられているため、使用の都度廃棄すると、腹膜透析に要するコストの削減が図り難くなる。
【0007】
本発明は上述した課題に鑑みてなされたものであり、腹膜透析液を注液するための注液カセット及び腹膜透析液を排液するための排液カセットを一度の使用で廃棄することなく複数回に亘って連続的に使用することを可能にする流路切替システム、及び腹膜透析用医療装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記(1)~(7)のいずれかの手段によって達成され得る。
【0009】
(1)腹膜透析液を腹腔内に注入するための第1ポンプを備える注液カセットと、腹腔内から腹膜透析液を排液するための第2ポンプを備える排液カセットと、前記注液カセット及び前記排液カセットの各々と接続される流路切替カセットと、前記流路切替カセットが備える流路の閉鎖及び開放を制御するための流路切替ユニットと、を有し、前記流路切替カセットは、腹膜透析液を流通させることが可能な第1流路を有し、前記流路切替ユニットは、前記第1流路の開放及び閉鎖を選択的に切替可能な切替部を有する、流路切替システム。
【0010】
(2)前記流路切替カセットは、腹膜透析液を保持する透析液バッグから腹膜透析液を受け入れるための複数の第1ポートと、前記注液カセットへ腹膜透析液を送液するための第2ポートと、を有し、前記第1流路は、前記複数の第1ポートの各々が配置された位置と対応した位置において分岐する複数の分岐流路と、前記複数の分岐流路が合流するとともに、前記複数の第1ポートと前記第2ポートとの間を繋ぐ合流路と、を有し、前記流路切替ユニットの前記切替部は、前記複数の分岐流路の各々と対応する位置に配置された複数のクランプ部を有し、前記流路切替ユニットは、前記複数の分岐流路に配置された前記複数のクランプ部の各々による前記複数の第1流路の閉鎖及び開放を個別に制御することができるように構成されている、上記(1)に記載の流路切替システム。
【0011】
(3)前記流路切替カセットは、前記注液カセットから送液される腹膜透析液を受け入れるための第3ポートと、腹腔内との間における腹膜透析液の流通を可能にする第4ポートと、前記排液カセットへ腹膜透析液を送液するための第5ポートと、前記排液カセットから送液される腹膜透析液を受け入れるための第6ポートと、使用済みの腹膜透析液を排液バッグへ送液するための第7ポートと、を有し、前記第1流路は、前記第3ポートから前記6ポートとの間を連通するように形成されており、前記流路切替カセットの前記切替部は、前記第1流路において前記第3ポートから前記第6ポートの各々に繋がる所定の位置に配置された複数のクランプ部をさらに有し、前記流路切替ユニットは、前記複数のクランプ部の各々による前記第1流路の閉鎖及び開放を個別に制御することにより、前記注液カセット、前記排液カセット、及び前記排液バッグとの間における腹膜透析液の流通を制御することができるように構成されている、上記(2)に記載の流路切替システム。
【0012】
(4)前記注液カセットは、腹膜透析液が流通可能な注液流路と、前記流路切替カセットから腹膜透析液を受け入れるための注液側第1ポートと、腹膜透析液を前記流路切替カセットへ送液するための注液側第2ポートと、を有し、前記排液カセットは、腹膜透析液が流通可能な排液流路と、前記流路切替カセットから腹膜透析液を受け入れるための排液側第1ポートと、腹膜透析液を前記流路切替カセットへ送液するための排液側第2ポートと、を有する、上記(1)~(3)のいずれか1つに記載の流路切替システム。
【0013】
(5)前記流路切替カセットは、前記流路切替カセット内に配置された前記第1流路を構成するチューブと、前記チューブが設置された筐体と、を有し、前記流路切替ユニットは、前記筐体と機械的に接続可能に構成された本体部と、前記本体部に配置され、前記流路切替カセット内に配置された前記チューブの押圧及び押圧の解除に伴って前記チューブの開放及び閉鎖を切り替えることが可能に構成された前記切替部と、を有する、上記(1)~(4)のいずれか1つに記載の流路切替システム。
【0014】
(6)前記流路切替ユニットは、ユーザーから入力された指示に基づいて前記切替部の動作制御を行う制御部を有する、上記(1)~(5)のいずれか1つに記載の流路切替システム。
【0015】
(7)上記(1)~(6)のいずれか1つに記載の流路切替システムと、前記注液カセット及び前記排液カセットが装着可能に構成された腹膜透析装置と、を有する腹膜透析用医療装置であって、前記腹膜透析装置は、前記注液カセット内に流入した腹膜透析液を加温するヒーターを有する、腹膜透析用医療装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る流路切替システム及び腹膜透析用医療装置によれば、腹膜透析液を注液するための注液カセット及び腹膜透析液を排液するための排液カセットを一度の使用で廃棄することなく複数回に亘って連続的に使用することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態に係る流路切替システム及び腹膜透析用医療装置の外観斜視図である。
図2】注液カセットを簡略的に示す図である。
図3】注液カセットの注液流路を示す図である。
図4】排液カセットを簡略的に示す図である。
図5】排液カセットの排液流路を示す図である。
図6】流路切替カセット及び流路切替ユニットを簡略化して示す斜視図である。
図7】流路切替カセットの第1流路及び流路切替ユニットの切替部の配置例を簡略化して示す図である。
図8】実施形態に係る腹膜透析用医療装置の使用例を簡略的に示す図である。
図9】実施形態に係る腹膜透析用医療装置の使用例を簡略的に示す図である。
図10】実施形態に係る腹膜透析用医療装置の使用例を簡略的に示す図である。
図11】実施形態に係る腹膜透析用医療装置の使用例を簡略的に示す図である。
図12】実施形態に係る腹膜透析用医療装置の使用例を簡略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、各図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0019】
(腹膜透析用医療装置1)
図1に示すように、本実施形態に係る腹膜透析用医療装置1は、流路切替システム10と、腹膜透析装置700と、を有する。
【0020】
(流路切替システム10)
流路切替システム10は、腹膜透析液を腹腔B内に注入するための第1ポンプ112を備える注液カセット100と、腹腔B内から腹膜透析液を排液するための第2ポンプ212を備える排液カセット200と、注液カセット100及び排液カセット200の各々と接続される流路切替カセット300と、流路切替カセット300が備える流路(第1流路310)の閉鎖及び開放を制御するための流路切替ユニット400と、を有する。
【0021】
(注液カセット100)
図2図3に示すように、注液カセット100は、腹腔B内に注入される前の未注入の腹膜透析液を流通させる注液流路110と、腹膜透析液を加温する加温部111と、注液流路110を介して腹膜透析液を加温部111及び腹腔B内へ送液する第1ポンプ112と、を有する。
【0022】
注液流路110は、注液カセット100の内部に配列されたチューブで構成することができる。図3に示すように、注液流路110は、第1部位110aと、第2部位110bと、第3部位110cと、を有する。
【0023】
第1部位110aは、加温部111に繋がる部分と注液側第2ポート113b(図2を参照)の間に延在している。第2部位110bは、加温部111に繋がる部分と第3部位110cとの間に延在している。第3部位110cは、第1ポンプ112に繋がる部分と注液側第1ポート113a(図2を参照)との間に延在している。
【0024】
図2図8に示すように、注液カセット100は、流路切替カセット300から腹膜透析液を受け入れるための注液側第1ポート113aと、腹膜透析液を流路切替カセット300へ送液するための注液側第2ポート113bと、を備える。
【0025】
注液側第1ポート113aは、第1チューブ510を介して流路切替カセット300の第2ポート323b(図6図7図8を参照)と接続させることができる。注液側第2ポート113bは、第2チューブ520を介して流路切替カセット300の第3ポート323c(図6図7図8を参照)と接続させることができる。なお、本実施形態に係る腹膜透析用医療装置1では、各構成部材及び装置の各ポート間は図示した複数のチューブ510、520、530、540、550や、各チューブや各ポート間を繋ぐための任意の中継チューブ570(図7を参照)を利用して液密に接続することができる。
【0026】
加温部111は、例えば、内部に未注入の腹膜透析液が流通可能に構成された加温チューブで構成することができる。
【0027】
第1ポンプ112は、例えば、公知のダイアフラムポンプで構成することができる。
【0028】
図2に示すように、注液カセット100は流路切替部115を有する。
【0029】
流路切替部115は、例えば、腹膜透析装置700の各クランプ部711、712、713に対応した箇所に形成された複数の開口部115a、115b、115cで構成することができる。各クランプ部711、712、713は、注液流路110の閉鎖を行う際、開口部115a、115b、115cを介して注液流路110側に突出し、注液流路110をなすチューブを押し潰すようにして閉鎖することができる。
【0030】
(排液カセット200)
図4図5に示すように、排液カセット200は、腹腔B内から排液された使用済みの腹膜透析液を流通させる排液流路210と、排液流路210を介して腹膜透析液を回収するための第2ポンプ212と、を有する。
【0031】
排液流路210は、排液カセット200の内部に配列されたチューブで構成することができる。図5に示すように、排液流路210は、第1部位210aと、第2部位210bと、第3部位210cと、を有する。
【0032】
第1部位210aは、排液側第1ポート213a(図4を参照)と第3部位210cとの間に延在している。第2部位210bは、排液側第2ポート213b(図2を参照)と第3部位210cとの間に延在している。第3部位210cは、第2ポンプ212に繋がる部分と第1部位210a及び第2部位210bとの間に延在している。
【0033】
図2図10に示すように、排液カセット200は、流路切替カセット300から腹膜透析液を受け入れるための排液側第1ポート213aと、腹膜透析液を流路切替カセット300へ送液するための排液側第2ポート213bと、を備える。
【0034】
排液側第1ポート213aは、第4チューブ540を介して流路切替カセット300の第5ポート323e(図6図7図10を参照)と接続させることができる。排液側第2ポート213bは、第5チューブ550を介して流路切替カセット300の第6ポート323fと接続(図6図7図10を参照)させることができる。
【0035】
第2ポンプ212は、例えば、公知のダイアフラムポンプで構成することができる。
【0036】
図4に示すように、排液カセット200は、流路切替部215を有する。
【0037】
流路切替部215は、例えば、腹膜透析装置700の各クランプ部714、715に対応した箇所に形成された複数の開口部215a、215bで構成することができる。各クランプ部714、715は、排液流路210の閉鎖を行う際、開口部215a、215bを介して排液流路210側に突出し、排液流路210をなすチューブを押し潰すようにして閉鎖することができる。
【0038】
(流路切替カセット300)
図6には、流路切替カセット300の外観斜視図を示している。図7には、流路切替カセット300の内部構成を簡略化して示している。
【0039】
図6図7に示すように、流路切替カセット300は、腹膜透析液を流通させることが可能な第1流路310を有する。
【0040】
第1流路310は、流路切替カセット300が備える筐体301の内部に配列されたチューブで構成することができる。
【0041】
図6図8に示すように、流路切替カセット300は、腹膜透析液を保持する透析液バッグ610から腹膜透析液を受け入れるための複数の第1ポート323aと、注液カセット100へ腹膜透析液を送液するための第2ポート323bと、を有する。
【0042】
図8に示すように、本実施形態の流路切替カセット300は、6つの第1ポート323aを備える。そのため、6つの第1ポート323aによって6つの透析液バッグ610を接続することができる。なお、第1ポート323aの個数は、2つ以上であれば特に限定されない。
【0043】
図6図7図12に示すように、流路切替カセット300は、注液カセット100から送液される腹膜透析液を受け入れるための第3ポート323cと、腹腔B内との間における腹膜透析液の流通を可能にする第4ポート323dと、排液カセット200へ腹膜透析液を送液するための第5ポート323eと、排液カセット200から送液される腹膜透析液を受け入れるための第6ポート323fと、使用済みの腹膜透析液を排液バッグ620へ送液するための第7ポート323gと、を有する。
【0044】
図2図4図6図10に示すように、流路切替カセット300の各第1ポート323aと透析液バッグ610は、所定の中継チューブ570を介して接続することができる。
【0045】
注液カセット100の注液側第1ポート113aと流路切替カセット300の第2ポート323bは、第1チューブ510を介して接続することができる。また、注液カセット100の注液側第2ポート113bと流路切替カセット300の第3ポート323cは、第2チューブ520を介して接続することができる。
【0046】
流路切替カセット300の第4ポート323dは、第3チューブ530を介して患者Hの腹腔B内と接続することができる。なお、第3チューブ530の流路切替カセット300と接続される端部と反対側の端部には、患者Hの腹腔B内に挿入される透析カテーテル530aを接続することができる。
【0047】
排液カセット200の排液側第1ポート213aと流路切替カセット300の第5ポート323eは、第4チューブ540を介して接続することができる。排液カセット200の排液側第2ポート213bと流路切替カセット300の第6ポート323fは、第5チューブ550を介して接続することができる。
【0048】
流路切替カセット300の第7ポート323gと排液バッグ620は、所定の中継チューブ570を介して接続することができる。
【0049】
図7に示すように、流路切替カセット300の第1流路310は、複数の第1ポート323aの各々が配置された位置と対応した位置において分岐する複数の分岐流路311と、複数の分岐流路311が合流するとともに、第1ポート323aと第2ポート323bとの間を繋ぐ合流路312と、を有する。
【0050】
本実施形態では、流路切替カセット300は、6つの第1ポート323aを備える。そのため、各第1ポート323aと合流路312との間には6つの分岐流路311が配置されている。
【0051】
また、図7に示すように、流路切替カセット300の第1流路310は、第1分岐流路313aと、第2分岐流路313bと、第3分岐流路313cと、第4分岐流路313dと、第5分岐流路313eと、第6分岐流路313fと、合流路314と、を有する。
【0052】
第1分岐流路313aは、第2ポート323bと合流路314の間に延在している。第2分岐流路313bは、第4ポート323dと合流路314の間に延在している。第3分岐流路313cは、第5ポート323eと合流路314の間に延在している。第4分岐流路313dは、各分岐流路313e、313fと合流路314の間に延在している。第5分岐流路313eは、第4分岐流路313dと第6ポート323fの間に延在している。第6分岐流路313fは、第4分岐流路313dと第7ポート323gの間に延在している。
【0053】
図6に示すように、流路切替カセット300は流路切替部325を有する。
【0054】
流路切替部325は、例えば、流路切替ユニット400の各クランプ部425a~425fに対応するように配置された複数の開口部325a~325fで構成することができる。流路切替ユニット400の各クランプ部425a~425fは、流路切替カセット300の第1流路310の各部の閉鎖を行う際、各開口部325a~325fを介して第1流路310側に突出し、第1流路310をなすチューブを押し潰すようにして閉鎖する。なお、図7には、第1流路310の各部の対応する位置に配置された各クランプ部425a~425fを簡略的に示している。
【0055】
(流路切替ユニット400)
図6に示すように、流路切替ユニット400は、本体部401を備える。本体部401は、流路切替カセット300の筐体301を機械的に接続することが可能な装着部402を備える。本実施形態では、本体部401が備える装着部402は、流路切替ユニット400の筐体301を収容可能な収容空間を備えるように構成されている。
【0056】
流路切替ユニット400は、流路切替カセット300の第1流路310の開放及び閉鎖を選択的に切替可能な切替部425を有する。
【0057】
図6図7に示すように、切替部425は、第1流路310の複数の分岐流路311の各々と対応するように配置された複数の第1クランプ部425aを有する。
【0058】
流路切替ユニット400は、複数の分岐流路311に配置された複数のクランプ部425aの各々による第1流路310の閉鎖及び開放を個別に制御することができるように構成されている。そのため、流路切替ユニット400は、複数の第1ポート323aに接続された複数の透析液バッグ610と注液カセット100に接続される第2ポート323bとの間における腹膜透析液の流通を選択的に制御することができる。
【0059】
また、図7に示すように、切替部425は、第1流路310において第3ポート323c~第7ポート323gの各々に繋がる所定の位置に配置された複数のクランプ部425b~425fをさらに有する。
【0060】
流路切替ユニット400は、複数のクランプ部425b~425fの各々による第1流路310の閉鎖及び開放を個別に制御することにより、注液カセット100、排液カセット200、及び排液バッグ620との間における腹膜透析液の流通を制御することができるように構成されている。
【0061】
流路切替ユニット400は、装着部402に流路切替カセット300が装着された状態において、図7に示す第1流路310の所定位置の各々に各クランプ部425a~425fを配置することができる。また、この状態において、流路切替ユニット400の各クランプ部425a~425fは流路切替カセット300の各開口部325a~325fと対応した位置に配置される。なお、流路切替ユニット400の本体部401には、各クランプ部425a~425fが流路切替ユニット400側に突出するように移動することを可能にする開口部(図示省略)が設けられている。
【0062】
複数のクランプ部425a~425fは、例えば、第1流路310をなすチューブに対する押圧及び押圧の解除に伴って第1流路310の閉鎖及び開放を切り替える押圧部材で構成することができる。
【0063】
図7に示すように、第1クランプ部425aは、分岐流路311の対応した位置に配置される。本実施形態では、第1流路310には6つの分岐流路311が形成されているため、第1クランプ部425aは分岐流路311の個数に対応して6つ配置されている。
【0064】
図7に示すように、第2クランプ部425bは、第1流路310の第1分岐流路313aと対応した位置に配置される。第3クランプ部425cは、第1流路310の第2分岐流路313bと対応した位置に配置される。第4クランプ部425dは、第1流路310の第3分岐流路313cと対応した位置に配置される。第5クランプ部425eは、第1流路310の第4分岐流路313dと対応した位置に配置される。第6クランプ部425fは、第1流路310の第5分岐流路313eと対応した位置に配置される。
【0065】
図6に示すように、流路切替ユニット400は、ユーザー(例えば、患者H自身)から入力された指示に基づいて切替部425の動作制御を行う制御部430を備える。
【0066】
制御部430は、CPU、RAM、ROM等でなる公知のマイクロコンピュータにより構成することができる。制御部430は、有線や無線通信による入力指示を受け付け可能な受付部を有するように構成することができる。制御部430は、入力指示を受け付けると、CPUがROMに予め格納されている各種プログラムをRAMに読み出して実行することにより、腹膜透析装置700と協働して、腹膜透析液の注液及び排液、クランプ動作を自動制御することができる。
【0067】
(腹膜透析装置700)
腹膜透析装置700は、カセット装着部701と、操作部703、704と、表示部705と、複数のクランプ部711~715(図3図5を参照)と、ヒーター720と、を有する。
【0068】
カセット装着部701は、開閉可能に構成されており、腹膜透析装置700の内部に注液カセット100及び排液カセット200を収容した状態で装着することができる。
【0069】
操作部703、704は、ユーザーが腹膜透析を開始する際の開始指示や、腹膜透析を終了する際の終了指示を入力するために使用される。
【0070】
表示部705は、ユーザーに腹膜透析装置700の動作状態等を報知する。「動作状態」は、例えば、腹腔Bに透析液を注入する注入処理や腹腔Bから透析液を排液する排液処理の実施中、終了などの状態である。
【0071】
複数のクランプ部711~715は、各カセット100、200の各流路110、210の閉鎖や開放を行うために使用される。各クランプ部711~715は、例えば、各流路110、210をなすチューブに対する押圧及び押圧の解除に伴って各流路110、210の閉鎖及び開放を切り替える押圧部材で構成することができる。
【0072】
図3に示すように、第1クランプ部711は、注液流路110の第1部位110aに対応した位置に配置される。第2クランプ部712は、注液流路110の第2部位110bに対応した位置に配置される。第3クランプ部713は、注液流路110の第3部位110cに対応した位置に配置される。
【0073】
図5に示すように、第4クランプ部714は、排液流路210の第1部位210aに対応した位置に配置される。第5クランプ部715は、排液流路210の第2部位210bに対応した位置に配置される。
【0074】
ヒーター720は、注液カセット100が備える加温部111(加温チューブ)を流れる未注入の腹膜透析液を加温するために使用される。ヒーター720は、例えば、腹膜透析装置700に注液カセット100が装着された状態において、加温部111を挟み込むような位置に配置することができる。
【0075】
次に、図7図12を参照して、腹膜透析用医療装置1の使用例を説明する。
【0076】
図7図12では、第1流路310を閉鎖している状態の各クランプ部425a~425fを実線で示し、第1流路310を開放している状態の各クランプ部425a~425fを破線で示している。
【0077】
腹膜透析を開始するにあたり、流路切替カセット300が流路切替ユニット400に装着される(図1を参照)。また、図7に示すように、流路切替ユニット400の各クランプ部425a~425fが閉じた状態で、複数の第1ポート323aに任意の個数の透析液バッグ610が接続される。
【0078】
(第1プライミング)
次に、第1プライミングを行う。第1プライミングは、流路切替カセット300の第1流路310をプライミングする処理である。
【0079】
図8に示すように、流路切替カセット300に排液バッグ620が接続される。また、腹膜透析装置700に注液カセット100が装着される。また、流路切替カセット300と注液カセット100が各チューブ510、520を介して接続される。
【0080】
流路切替ユニット400は、第1クランプ部425a、第2クランプ部425b、第5クランプ部425eを開く。この状態で注液カセット100の第1ポンプ112が動作し、注液カセット100の注液流路110内に未注入の腹膜透析液を流入する。第1ポンプ112は、加温部111を介して腹膜透析液を加温しつつ、流路切替カセット300へ加温された腹膜透析液を送液する。流路切替カセット300内に送液された腹膜透析液は、第1流路310を経由して排液バッグ620へ排液される。
【0081】
腹膜透析装置700は、注液流路110内に腹膜透析液を流入させる際、第3クランプ部713を開き、各クランプ部711、712を閉じる(図3を参照)。また、腹膜透析装置700は、腹膜透析液を加温部111で加温させつつ、流路切替カセット300へ送液する際、第3クランプ部713を閉じて、各クランプ部711、712を開く。
【0082】
(第2プライミング)
次に、第2プライミングを行う。第2プライミングは、透析カテーテル530aをプライミングする処理である。
【0083】
図9に示すように、流路切替ユニット400に第3チューブ530及び透析カテーテル530aが接続される。
【0084】
流路切替ユニット400は、第1クランプ部425a、第2クランプ部425b、第3クランプ部425cを開く。この状態で注液カセット100の第1ポンプ112が動作し、前述した第1プライミングを実施する際と同様に、腹膜透析液を加温し、さらに加温した腹膜透析液を流路切替カセット300へ送液する。透析カテーテル530aの内部は、流路切替カセット300に送液された腹膜透析液で満たされる。
【0085】
(腹膜透析液の注入)
第1プライミング及び第2プライミングを終えた後、腹腔B内への腹膜透析液の注入を開始する。図10に示すように、腹膜透析装置700に排液カセット200が装着される。また、流路切替カセット300に各チューブ540、550を介して排液カセット200が接続される。全てのクランプ部425a~425fが閉じられた状態で、透析カテーテル530aが腹腔B内に挿入される。
【0086】
次に、図11に示すように、腹腔B内への腹膜透析液の注入を開始する。流路切替ユニット400は、第1クランプ部425a、第2クランプ部425b、第3クランプ部425cを開く。この状態で注液カセット100の第1ポンプ112が動作し、前述した第1、第2プライミングを実施する際と同様に、腹膜透析液を加温し、さらに加温した腹膜透析液を流路切替カセット300へ送液する。流路切替カセット300内に送液された腹膜透析液は、第1流路310、第3チューブ530、透析カテーテル530aを経由して腹腔B内に注入される。
【0087】
(腹膜透析液の排液)
図12に示すように、腹腔B内に注液した腹膜透析液の排液を開始するに際し、流路切替ユニット400は、第3クランプ部425c、第4クランプ部425d、第6クランプ部425fを開く。なお、第1クランプ部425aは、排液後に注入を再開する予定の場合には、排液時においても開いた状態に維持することができる。
【0088】
排液カセット200の第2ポンプ212が動作し、排液カセット200の排液流路210内に腹腔B内に注入した使用済みの腹膜透析液を流入させる。また、第2ポンプ212は、排液流路210内に流入した腹膜透析液を流路切替ユニット400へ送液し、さらに流路切替ユニット400に接続された排液バッグ620へ送液する。
【0089】
腹膜透析装置700は、排液流路210内に腹膜透析液を流入させる際、第4クランプ部714を開き、第5クランプ部715を閉じる(図5を参照)。また、腹膜透析装置700は、排液流路210から流路切替カセット300へ腹膜透析液を送液する際、第4クランプ部714を閉じて、第5クランプ部715を開く。
【0090】
本実施形態に係る流路切替システム10は、上述した手順により腹腔B内への腹膜透析液の注入と腹腔B内に注入した腹膜透析液の排液を自動制御することができる。仮に、注入と排液とを交互に連続的に実施し、1つの透析液バッグ610に保持された未注入の腹膜透析液が全て使用された場合、流路切替ユニット400は、第1クランプ部425aによって第1流路310を選択的に開閉することによって複数の第1ポート323aに接続された透析液バッグ610の中から未使用の腹膜透析液を保持する他の透析液バッグ610を使用可能な状態に切り替えることができる(図7を参照)。したがって、流路切替ユニット400を使用することにより、長時間に亘る多量の腹膜透析液の注入及び排液を自動化することができる。
【0091】
また、流路切替システム10を使用する場合、腹膜透析液の注入及び排液を制御するための流路切替カセット300の第1流路310を切替部425によって開閉させることができる。そのため、注液カセット100の注液流路110には未注入の腹膜透析液のみが流通し、排液カセット200の排液流路210には使用済みの腹膜透析液のみが流通する。したがって、注液カセット100の注液流路110内に使用済みの腹膜透析液が混入することを未然に防止することができる。したがって、1度の使用で注液カセット100及び/又は排液カセット200を廃棄する必要がなく、各カセット100、200を複数回の注液及び排液に使い回すことができる。
【0092】
また、各クランプ部425a~425fを個別に制御することにより、複数の透析液バッグ610のうちの任意のバッグと流路切替カセット300の第1流路310の流体連通を制御することができる。そのため、例えば、種類の異なる透析液を保持する複数の透析液バッグ610を準備することで、様々な透析液を使い分けて注液することも可能になる。
【0093】
また、第1流路310を切り替えるための機能を流路切替ユニット400に備えさせることで、流路切替ユニット400を腹膜透析装置700から独立した装置として構成することができる。そのため、例えば、流路切替ユニット400を透析液バッグ610に近接した位置に配置することで、流路切替ユニット400と透析液バッグ610との間を繋ぐチューブの長さを短くすることができる。それにより、流路切替システム10の取り回しを容易に行うことが可能になる。
【0094】
以上、実施形態を通じて本発明に係る流路切替システム及び腹膜透析用医療装置を説明したが、本発明は明細書において説明した内容のみに限定されるものでなく、特許請求の範囲の記載に基づいて適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0095】
1 腹膜透析用医療装置
10 流路切替システム
100 注液カセット
110 注液流路
111 加温部
112 第1ポンプ
113a 注液側第1ポート
113b 注液側第2ポート
115 流路切替部
200 排液カセット
210 排液流路
212 第2ポンプ
213a 排液側第1ポート
213b 排液側第2ポート
215 流路切替部
300 流路切替カセット
301 筐体
310 第1流路
311 分岐流路
312 合流路
313a 第1分岐流路
313b 第2分岐流路
313c 第3分岐流路
313d 第4分岐流路
313e 第5分岐流路
313f 第6分岐流路
314 合流路
323a 第1ポート
323b 第2ポート
323c 第3ポート
323d 第4ポート
323e第5ポート
323e 第5ポート
323f 第6ポート
323g 第7ポート
325 流路切替部
400 流路切替ユニット
401 本体部
402 装着部
425 切替部
425a 第1クランプ部
425b 第2クランプ部
425c 第3クランプ部
425d 第4クランプ部
425e 第5クランプ部
425f 第6クランプ部
430 制御部
510 第1チューブ
520 第2チューブ
530 第3チューブ
530a 透析カテーテル
540 第4チューブ
550 第5チューブ
570 中継チューブ
610 透析液バッグ
620 排液バッグ
700 腹膜透析装置
701 カセット装着部
711 第1クランプ部
712 第2クランプ部
713 第3クランプ部
714 第4クランプ部
715 第5クランプ部
720 ヒーター
H 患者
B 腹腔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12