(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141528
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】ゲル状組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/44 20060101AFI20241003BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20241003BHJP
A61K 8/39 20060101ALI20241003BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
A61K8/44
A61K8/34
A61K8/39
A61Q19/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053237
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】593106918
【氏名又は名称】株式会社ファンケル
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】鬼束 理映
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB032
4C083AC022
4C083AC062
4C083AC071
4C083AC072
4C083AC082
4C083AC111
4C083AC112
4C083AC121
4C083AC122
4C083AC132
4C083AC172
4C083AC352
4C083AC422
4C083AC441
4C083AC661
4C083AC662
4C083AD111
4C083AD112
4C083AD492
4C083AD662
4C083CC23
4C083DD23
4C083DD41
4C083EE01
4C083EE06
4C083EE07
(57)【要約】
【課題】新規なゲル状組成物を提供すること。
【解決手段】(A)アシルグルタミン酸塩と、(B)炭素数16~22の高級アルコールと、(C)グリセリン、ジグリセリン、BG、マルチトール、DPG及びペンチレングリコールペンタンジオールからなる群から選ばれる1以上を含有する多価アルコールを含み、
全量に対して、前記(C)多価アルコールを32~95質量%含有するゲル状組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アシルグルタミン酸塩と、(B)炭素数16~22の高級アルコールと、(C)グリセリン、ジグリセリン、BG、マルチトール、DPG及びペンチレングリコールからなる群から選ばれる1以上を含有する多価アルコールを含み、
全量に対して、前記(C)多価アルコールを32~95質量%含有するゲル状組成物。
【請求項2】
(A)アシルグルタミン酸塩と、(B)炭素数16~22の高級アルコールを(A):(B)=1:2~1:5の質量比で含有する請求項1に記載のゲル状組成物。
【請求項3】
水溶性増粘剤を実質的に含有しない請求項1又は2に記載のゲル状組成物。
【請求項4】
調製して7日後の粘度(測定条件:B型粘度計(型式TV)、4号ローター、6rpm、30秒、25℃)が、16Pa・s以上である請求項1又は2に記載のゲル状組成物。
【請求項5】
αゲルを形成している請求項1又は2に記載のゲル状組成物。
【請求項6】
さらに(D)(A)アシルグルタミン酸塩以外の界面活性剤を含有する請求項1又は2に記載のゲル状組成物。
【請求項7】
洗顔料である請求項1又は2に記載のゲル状組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲル状組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
グリセリンを高配合した連続相を、水溶性高分子等の増粘剤やノニオン性界面活性剤を配合して増粘した温感パックやクレンジング製品が上市されている。例えば、特許文献1には、(A)油剤45~80質量%と、(B)グリセリン及び/又はジグリセリン7~17質量%と、(C)PEG/PPG/ポリブチレングリコール-8/5/3グリセリン、PPG-9ジグリセリル、トリプロピレングリコール、イソプレングリコール及びPPG-10メチルグルコースから選ばれる1以上の多価アルコールと、(D)HLB10~12のポリグリセリン脂肪酸エステル10~30質量%、とを含有し、水を実質的に含まず、(B)/(C)の質量比が2を超える、メイクアップ化粧料に対する洗浄効果が高く、洗浄に際し皮膚に悪影響を及ぼさず、好ましい温感を与えるクレンジング化粧料が提案されている。
このようなグリセリンを高配合した連続相を増粘した製品は、グリセリンによる温感や保湿感が好まれる一方で、洗い流す際に増粘剤やノニオン性界面活性剤によるぬるつきが不快に感じられる問題点があった。また、水溶性高分子で増粘できる多価アルコールは限られており処方のバリエーション化が困難であった。
【0003】
高級アルコールと界面活性剤が水中で形成する層状分子集合体による増粘組成物は、「αゲル」と呼ばれ、白色で滑らかな表面性状で粘性を有する。αゲルは、増粘や油や他の分散相を保持・安定化する目的で、O/W乳化物やヘアトリートメントの製剤に応用され広く用いられている。例えば、特許文献2では、高級アルコールと界面活性剤として少なくともアシルメチルタウリン塩と水と水溶性高分子から構成されるαゲルを含み、高温での経時安定性が良好で、安全性が高く、肌の上で伸びが良く使用感についても満足できる組成物が提案されている。
αゲルは、水を連続相としており、粘性を有するもののその粘度は数Pa・s(数千mPa・s)程度であった。そのため、ワセリン様の高い粘度の製剤とすることはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-189584号公報
【特許文献2】特開2010-6716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、新規なゲル状組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、αゲルの外相(連続相)における水の少なくとも一部をグリセリン等の多価アルコールに置き換えることにより、高粘度のゲル状組成物を得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の課題を解決するための手段は以下のとおりである。
(1)(A)アシルグルタミン酸塩と、(B)炭素数16~22の高級アルコールと、(C)グリセリン、ジグリセリン、BG、マルチトール、DPG及びペンチレングリコールからなる群から選ばれる1以上を含有する多価アルコールを含み、
全量に対して、前記(C)多価アルコールを32~95質量%含有するゲル状組成物。
(2)(A)アシルグルタミン酸塩と、(B)炭素数16~22の高級アルコールを(A):(B)=1:2~1:5の質量比で含有する(1)に記載のゲル状組成物。
(3)水溶性増粘剤を実質的に含有しない(1)又は(2)に記載のゲル状組成物。
(4)調製して7日後の粘度(測定条件:B型粘度計(型式TV)、4号ローター、6rpm、30秒、25℃)が、16Pa・s以上である(1)~(3)のいずれかに記載のゲル状組成物。
(5)αゲルを形成している(1)~(4)のいずれかに記載のゲル状組成物。
(6)さらに(D)(A)アシルグルタミン酸塩以外の界面活性剤を含有する(1)~(5)のいずれかに記載のゲル状組成物
(7)洗顔料である(1)~(6)のいずれかに記載のゲル状組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、増粘効果の高いゲル状組成物が得られた。本発明のゲル状組成物は、肌に塗布した際に垂れ落ちることが無い点は従来の水溶性高分子を用いたゲル状組成物と同様であるが、肌への密着感は従来のゲル状組成物と比べて高く、なめらかな油のようなリッチな塗布感触と密着感を付与することができた。更に、本発明のゲル状組成物は、密着感が高いにも関わらず、水での洗い流しの際は、従来のゲル状組成物よりも、素早くすっきりと洗い流すことができ、洗い流し後の肌がぬるつくことは無くさっぱりとしており、なめらかで好ましい感触を付与することができた。(C)多価アルコールとしてグリセリンを高配合し水を5質量%以下とした本発明のゲル状組成物は、水和熱により温感が感じられるので温感化粧料として最適であった。(A)アシルグルタミン酸塩はアニオン性界面活性剤であり、これを含む本発明のゲル状組成物はそのままでも洗浄効果が期待できるが、さらに(D)(A)アシルグルタミン酸塩以外の界面活性剤を含有する本発明のゲル状組成物により、パック兼マイルドな洗顔料として新規な製剤を得ることができた。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のゲル状組成物は、(A)アシルグルタミン酸塩と、(B)炭素数16~22の高級アルコールと、(C)グリセリン、ジグリセリン、BG、マルチトール、DPG及びペンチレングリコールからなる群から選ばれる1以上を含有する多価アルコールを含み、全量に対して、前記(C)多価アルコールを32~95質量%含有する。
なお、本明細書において「X~Y」との表記は、その両端を含む数値範囲を意味する。
【0009】
(A)アシルグルタミン酸塩(以下、(A)成分、(A)ともいう)
本発明において、(A)アシルグルタミン酸塩としては、従来の水を連続相とするαゲルに用いられているものを特に制限することなく使用することができる。
アシルグルタミン酸塩のアシル基としては、炭素数10~22の飽和または不飽和脂肪酸より誘導されるアシル基が好ましく、例えばカプリン酸(C10:0)、ラウリン酸(C12:0)、ミリスチン酸(C14:0)、パルミチン酸(C16:0)、ステアリン酸(C18:0)、オレイン酸(C18:1)、リノール酸(C18:2)、アラキジン酸(C20:0)、ベヘン酸(C22:0)等の単一組成の脂肪酸またはこれらの混合物のほかに、パーム油脂肪酸、パーム核油脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、ヒマワリ油脂肪酸、大豆油脂肪酸、牛脂脂肪酸、硬化牛脂脂肪酸、オリーブ油脂肪酸等の天然より得られる炭素数10~22の飽和または不飽和脂肪酸を含む混合脂肪酸を精製したもの、合成により得られた脂肪酸またはその混合物に由来するアシル基を挙げることができる。これらの中で、ラウロイルグルタミン酸塩、ミリストイルグルタミン酸塩、ステアロイルグルタミン酸塩が好ましく、ステアロイルグルタミン酸塩がより好ましい。
アシルグルタミン酸塩の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩などの金属塩、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン塩、リジン、アルギニン等の塩基性アミノ酸塩等を使用することができ、金属塩が好ましく、ナトリウム塩がより好ましい。
【0010】
ゲル状組成物全体に対する(A)の含有量は、0.5質量%以上5質量%以下が好ましく、1質量%以上がより好ましく、1.3質量%以上がさらに好ましく、また、4質量%以下がより好ましく、2.6質量%以下がさらに好ましい。
【0011】
(B)炭素数16~22の高級アルコール(以下、(B)成分、(B)ともいう)
本発明において、(B)炭素数16~22の高級アルコールとしては、従来の水を連続相とするαゲルに用いられているものを特に制限することなく使用することができる。
例えば、セタノール、ステアリルアルコール、アラキジルアルコール、ベヘニルアルコール等が挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。混合物としては、炭素数16~22の高級アルコールを含むものを用いることができ、例えば、水添ナタネ油アルコール、セテアリルアルコール等を用いることもできる。これらの中で、ベヘニルアルコール、アラキジルアルコール、ステアリルアルコール、セタノール、水添ナタネ油アルコールが好ましい。
【0012】
本発明のゲル状組成物は、(A)と(B)とを(A):(B)=1:2~1:5の質量比で含むと好ましい。
ゲル状組成物全体に対する(B)の含有量は、前記(A)と(B)との質量比率から計算して含有すると好ましい。使用感や経済面を考慮する場合は、(B)の含有量は、ゲル状組成物全体に対し1質量%以上12質量%以下が好ましく、3質量%以上がより好ましく、また、7質量%以下がより好ましい。
【0013】
(C)多価アルコール(以下、(C)成分、(C)ともいう)
本発明のゲル状組成物は、(C)多価アルコールとして、グリセリン、ジグリセリン、BG(1,3-ブチレングリコール)、マルチトール、DPG(ジプロピレングリコール)、及びペンチレングリコールからなる群から選ばれる1以上を含む。
(C)としては、使用感を特に重視する場合は、上記した群の中で、グリセリン、ジグリセリン、BG、マルチトール、DPGが好ましく、グリセリン、ジグリセリンがより好ましく、グリセリンがさらに好ましい。(C)が2種以上の多価アルコールを含む場合は、(C)全体に対する、グリセリン、ジグリセリン、マルチトール、BG、DPG、ペンチレングリコールの合計割合が60質量%以上であることが好ましく、グリセリン、ジグリセリンの合計割合が60質量%以上であることがより好ましく、グリセリンの割合が60質量%以上であることがさらに好ましく、グリセリンの割合が70質量%以上であることがよりさらに好ましく、グリセリンの割合が80質量%以上であることがよりさらに好ましい。
【0014】
本発明のゲル状組成物は、ゲル状組成物全体に対して(C)を32~95質量%含む。ゲル状組成物全体に対する(C)の含有量は、46質量%以上がより好ましく、77質量%以上がより好ましい。(C)は、グリセリン、ジグリセリン、BG(1,3-ブチレングリコール)、マルチトール、DPG(ジプロピレングリコール)、及びペンチレングリコールからなる群から選ばれる1以上の多価アルコール(Zとする)を含む多価アルコール(Yとする)のことであるが、多価アルコールYとは多価アルコールZのみの場合も、多価アルコールZに任意のZ以外の多価アルコールを含めたものも本発明である。したがって任意で含有するグリセリン、ジグリセリン、BG、マルチトール、DPG、及びペンチレングリコール以外の多価アルコールは(C)の含有量に含める。
【0015】
本発明のゲル状組成物は、本発明の効果を妨げない限り、(C)で列挙した特定の多価アルコールZ(グリセリン、ジグリセリン、BG、マルチトール、DPG、及びペンチレングリコール)以外の多価アルコールを含むことができる。(C)で列挙した特定の多価アルコールZ以外の多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチルエチルプロパンジオール、トリメチロールプロパン、エリスリトール、グルコース、マルトース、ショ糖、キシリトール、ソルビトール、トレハロース、グリコシルトレハロース、エチルヘキシルグリセリン、ポリオキシエチレンエチルグルコシド、ポリオキシエチレンプロピレングルコシド、グリセリルグルコシド等が挙げられる。
【0016】
(D)(A)アシルグルタミン酸塩以外の界面活性剤(以下、(D)成分、(D)ともいう)
本発明のゲル状組成物は、(A)、(B)、(C)成分を必須の構成成分とする。この構成で密着感のあるリッチな塗布時の感触を有しながら、すっきりと洗い流すことができ、洗い流し後の肌になめらかな感触を付与する、嗜好性に優れたゲル状化粧料となる。(A)アシルグルタミン酸塩はアニオン性界面活性剤であり、これを含む本発明のゲル状組成物はそのままでも洗浄効果が期待できるものであるが、さらに洗浄効果を高めたい場合には、任意でさらに(D)アシルグルタミン酸塩以外の界面活性剤を含有することができる。
(D)アシルグルタミン酸塩以外の界面活性剤としては特に制限されないが、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤が好ましい。皮膚への安全性を考慮すると、非イオン性界面活性剤としては、ラウリン酸ポリグリセリル-10が好ましく、アニオン性界面活性剤としては、アシルアスパラギン酸塩、アシルグリシン塩が好ましい。
ゲル状組成物全体に対する(D)の配合量は、0.05~0.5質量%が好ましく、0.1~0.3質量%がより好ましい。0.5質量%を超えると安定性が損なわれる恐れが高まる。
【0017】
本発明のゲル状組成物は、本発明の効果を妨げない範囲内において、(A)~(D)以外の成分を含有することができ、水、油、防腐剤、金属イオン封鎖剤、香料等を含有させることができる。また、その他の薬効成分、生理活性成分を含有させることができる。
本発明のゲル状組成物において、水は任意である。本発明のゲル状組成物は、水の少なくとも一部を(C)多価アルコールに置き換えることにより、従来のゲル状組成物と比較して粘度を高くすることができる。本発明のゲル状組成物においてたとえば(C)グリセリンを含有する多価アルコールと水の合計に対するグリセリンの割合(グリセリン/(多価アルコール+水)は、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上がさらに好ましく、35質量%以上がよりさらに好ましく、40質量%以上がよりさらに好ましく、45質量%以上がよりさらに好ましい。このことはグリセリン以外の特定の多価アルコール(ジグリセリン、BG、マルチトール、DPG、及びペンチレングリコール)の場合も同様に成り立つ。
【0018】
本発明のゲル状組成物は、粘度が高いため、増粘を目的としたカルボマー等の水溶性増粘剤の配合は基本的に不要であり、水溶性増粘剤を実質的に含まないことが好ましい。なお、本明細書において、実質的に含まないとは全体に対して0.05質量%未満(0の時も含む)を意味する。ただし、増粘以外、例えば、感触改良等を目的として水溶性高分子を少量配合することは可能である。水溶性高分子としては、たとえば、塩化[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]デキストランなどのカチオン性ポリマーや、ヒアルロン酸ナトリウム、プルランなどが挙げられ、これらの水溶性高分子を、ゲル状組成物全体に対して合計量で0.05質量%未満、より好ましくは0.01質量%以下であれば配合することもできる。
【0019】
本発明のゲル状組成物は、調製して7日後の粘度(測定条件:B型粘度計(型式TV)、4号ローター、6rpm、30秒、25℃)が、16Pa・s以上であることが好ましい。この粘度は20Pa・s以上がより好ましく、23Pa・s以上がさらに好ましい。
【0020】
本発明のゲル状組成物は、ゲルを肌に塗布してなじませた後、水で洗い流し、その後の肌状態を改善するパック剤やマッサージ用化粧料に最適である。温感化粧料、パック兼マイルドな洗顔料として有用である。
【実施例0021】
以下に試験例を示し、本発明をさらに説明する。組成表中の数字は質量%である。
「試料」
使用した原料を表1に示す。
【表1】
【0022】
「ゲル状組成物組成物の調製方法」
水相(連続相)として、(C)多価アルコールと必要に応じて精製水を混合し、(A)アシルグルタミン酸塩を攪拌・加熱し溶解させた。他に水溶性成分を配合している処方は水相に混合した。
油相として、(B)高級アルコールと任意成分である油を80~85℃に加熱し溶解させた。
水相と油相を80~85℃で攪拌混合した。攪拌はスリーワンモータ十字羽350rpmまたはホモミキサー1000rpmにて5分HOLDした。水浴中、手攪拌しながら35℃まで冷却した。その後、減圧脱泡を行い、ゲル状組成物を得た。
【0023】
「粘度測定」
調製してから1日後、7日後の粘度(25±2℃)を測定した。
粘度は、B型粘度計(型式TV)4号ローター、6rpm、30秒で測定した。測定上限を超えた場合、測定レンジを広げて測定した。測定レンジを最大にしても測定上限を超えた場合、4号ローター、3rpm、30秒、最大レンジで測定した。それでも測定上限を超えたものは>1150と記載した。
なお、本発明のゲル状組成物は、経時で粘度が上昇する場合がある。そのため、下記表に記載の粘度は特に明記しない限り、1日後の粘度であり、1日後の粘度が十分に高いものは7日後の粘度測定は行っていない。また本試験の比較例は、いずれも7日後の測定で粘度はほとんど変化せず低いままであった。
【0024】
「官能評価」
ゲル状組成物のバルク5g程度を手に取り、手の甲もしくは顔全体に塗り広げた。指をくるくると回転させながら十分になじませた後、水道水で洗い流した。塗布したときの肌への密着感、洗い流し後の肌の保湿感(感触)、洗い流しの早さ(さっぱり感)を評価した。「洗い流しの早さ(さっぱり感)」は、水道水で洗い流した際に肌がいつまでもぬるぬるとし続けることが無く、速やかに洗い流せることを指す。
評価基準
(密着感)
◎:密着感がとても感じられる
○:密着感が感じられる
△:密着感がほとんど感じられない
×:密着感が全く感じられない
(保湿感)
◎:しっとりした感じがとても感じられる
○:しっとりした感じが感じられる
△:しっとりした感じがほとんど感じられない
×:しっとりした感じが全く感じられない
(洗い流しの早さ(さっぱり感))
◎:とても良い
○:良い
△:やや悪い
×:悪い(いつまでもぬるつく)
【0025】
<試験1:増粘確認試験>
表2に示す組成のゲル状組成物を調製し、粘度を測定した。結果を表2に示す。
【0026】
【0027】
水溶性増粘剤で増粘した比較例1、(C)多価アルコールを含まない比較例2及び3で得られたゲル状組成物は、調製1日後の粘度が3~12Pa・s程度であり、増粘の程度が低かった。また、比較例2及び3はバルクの状態がなめらかではなく、安定性が不良であった。
これに対して、本発明である実施例1~9で得られたゲル状組成物は、著しく増粘し、調製1日後の粘度が25Pa・s以上であり、特に、(C)としてグリセリン、ジグリセリン、ブチレングリコールを用いた実施例1~8で得られたゲル状組成物は、調製1日後の粘度が100Pa・sを超えていた。グリセリンと比較して、BGは同等の増粘性、DPGは増粘性が低く、ジグリセリンは増粘性が高かった。BGは、増粘させることが難しいことが知られているが(例えば特許第6605940号第9ページ表2の比較例2参照)、本発明の構成をとることで増粘することができた。
【0028】
<試験2>
(A)アシルグルタミン酸塩と(B)高級アルコールの配合量を一定とし、(C)多価アルコール濃度について検討した。表3に示す組成のゲル状組成物を調製し、粘度測定と官能評価を行った。結果を表3に示す。
【0029】
【0030】
実施例、比較例ともに半透明ゲル状組成物を得ることができた。
実施例10~16のゲル状組成物は、全体に対して(C)多価アルコールを32~95質量%含有し、調製1日後の粘度が16Pa・s以上となり、目的とする塗布時に垂れ落ちにくいゲル状組成物を得ることができた。そしていずれも塗布時の肌への密着感が良い(評価◎,〇)ものとなった。また、素早くすっきりと洗い流すことができ、洗い流し後の肌がぬるつくことは無く、なめらかで好ましい感触を付与することができた。また、実施例1(表2)の結果と合わせて、水を(C)で挙げた特定の多価アルコールで置き換える割合(C/(多価アルコール+水))が高いほど、調製1日後の粘度が高くなる傾向が見られた。
比較例4、5はグリセリンの含有量が少なく、調製1日後の粘度は2Pa・s程度であり、従来技術である比較例1(表2)の2.8Pa・sと大差ない増粘の程度であり本発明の目的を達成できなかった(尚、7日後も低粘度のままだった)。
【0031】
<試験3>
(A)と(B)との質量比、任意成分である油の配合の検討を行った。表4に示す組成のゲル状組成物を調製し、粘度測定と官能評価を行った。結果を表4に示す。
【表4】
【0032】
(A)アシルグルタミン酸塩と(B)高級アルコールとの質量比を1:2.3や1:3.8としても、高粘度ゲルを形成できることが確かめられた。(実施例17、18)。
エステル油(エチルヘキサン酸セチル)や炭化水素油(スクワラン)を任意で配合しても高粘度ゲルを形成できること、油の配合により、洗い流し後の保湿感がアップすることが確かめられた(実施例19~22)。
【0033】
<試験4>
(B)高級アルコールとして水添ナタネ油アルコールを用いる検討を行った。表5に示す組成のゲル状組成物を調製し、粘度測定と官能評価を行った。結果を表5に示す。
【0034】
【0035】
(B)高級アルコールとして水添ナタネ油アルコールを用いても、使用感が良好であり塗布時に垂れ落ちにくいゲル状組成物を得られることが確かめられた。また、その評価結果は、(B)としてベヘニルアルコールを用いた場合とほぼ同等であった。
【0036】
<試験5>
(B)高級アルコールとしてステアリルアルコールを用いる検討を行った。表6に示す組成のゲル状組成物を調製し、粘度測定と官能評価を行った。結果を表6に示す。
【0037】
【0038】
(B)高級アルコールとしてステアリルアルコールを用いても、使用感が良好であり塗布時に垂れ落ちにくいゲル状組成物を得られることが確かめられた。また、エステル油(エチルヘキサン酸セチル)を配合することにより、保湿感が向上することが確かめられた。
【0039】
<試験6>
表7、8に示す組成のゲル状組成物を調製し、粘度測定と官能評価を行った。結果を表7、8に示す。
【表7】
【0040】
【0041】
(A)アシルグルタミン酸塩と(B)高級アルコールの質量比を1:2.9とし、(A)アシルグルタミン酸塩の濃度を2.25%(表5に示した実施例の1.25倍)、1.35%(同0.75倍)としても同様のゲルを形成することを確認した(実施例34、35)。
(C)多価アルコールに糖アルコール(マルチトール)を配合してもゲルを形成することを確認した。糖アルコールの配合により、保湿感がアップした。(実施例38)
エステル油(エチルヘキサン酸セチル、イソノナン酸イソトリデシル)や炭化水素油(スクワラン)を配合してもゲルを形成することを確認した。また、複数種類の油を混合して配合してもゲルを形成することを確認した。油の配合により、保湿感がアップした。(実施例39~53)
(A)アシルグルタミン酸塩として、アシル基の鎖長が異なる2種以上を混合してもゲルを形成することを確認した。(実施例46~49)
本発明の構成(A+B+C)に、さらにD成分としてA以外の界面活性剤Dを含有させたゲル状組成物は、洗浄力が高められており、また、洗い流した後のすっきり感、ツルツル感も向上し、洗顔料として最適であった(実施例54)。
【0042】
(A)成分と(B)成分の含有量を変えて質量比(B/A)を3.0~5.0となるように組成を調整した実施例55~63、(B)成分としてアラキジルアルコール、セタノールを含有し質量比(B/A)が2.7、2.8である実施例64、65、(B)成分として高純度のベヘニルアルコールを含有した実施例66、67はいずれも高い粘度と優れた使用感であった。
本発明の構成をとらない比較例8、9は目的の粘度が低く、7日経過後の粘度も低いままであった。