(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141532
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】口座取引管理システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 40/02 20230101AFI20241003BHJP
【FI】
G06Q40/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053244
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】302064762
【氏名又は名称】株式会社日本総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100125645
【弁理士】
【氏名又は名称】是枝 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100145609
【弁理士】
【氏名又は名称】楠屋 宏行
(74)【代理人】
【識別番号】100149490
【弁理士】
【氏名又は名称】羽柴 拓司
(72)【発明者】
【氏名】小此木 崇志
【テーマコード(参考)】
5L040
5L055
【Fターム(参考)】
5L040BB03
5L040BB24
5L055BB03
5L055BB24
(57)【要約】
【課題】口座における取引のうち、詳細を確認すべきものを特定して利用者に提示することができる口座取引管理システム及びプログラムを提供する。
【解決手段】
口座取引管理システム1は、複数の利用料金の合計額を口座から引き落とす合算引き落とし取引が定期的に発生する場合において、今回の合算引き落とし取引と過去の合算引き落とし取引とで取引内容に変化があるか否かを判定する判定部と、取引内容に変化があると判定された場合、今回の合算引き落とし取引の取引明細情報を、当該変化があることが前記口座の利用者に識別可能となるように、当該利用者に係る利用者端末2に対して出力する出力部とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の利用料金の合計額を口座から引き落とす合算引き落とし取引が定期的に発生する場合において、今回の合算引き落とし取引と過去の合算引き落とし取引とで取引内容に変化があるか否かを判定する判定部と、
取引内容に変化があると判定された場合、今回の合算引き落とし取引の取引明細情報を、当該変化があることが前記口座の利用者に識別可能となるように、当該利用者に係る利用者端末に対して出力する出力部と
を備える、口座取引管理システム
【請求項2】
前記判定部は、今回の合算引き落とし取引の引き落とし額と過去の合算引き落とし取引の引き落とし額の差が所定値以上の場合に、取引内容に変化があると判定する、
請求項1に記載の口座取引管理システム。
【請求項3】
前記判定部は、今回の合算引き落とし取引と過去の合算引き落とし取引とで取引内容の内訳が異なる場合に、取引内容に変化があると判定する、
請求項1に記載の口座取引管理システム。
【請求項4】
前記判定部は、今回の合算引き落とし取引の発生期間において、当該今回の合算引き落とし取引とは異なる他の合算引き落とし取引が発生している場合、当該異なる合算引き落とし取引の取引内容に基づいて、前記取引内容に変化があるか否かを判定する、
請求項1に記載の口座取引管理システム。
【請求項5】
前記判定部が判定可能な取引内容の変化は複数種類あり、
前記出力部は、前記種類毎に前記変化があることが前記利用者に識別可能となるように、前記取引明細情報を前記利用者端末に対して出力する、
請求項1乃至4の何れかに記載の口座取引管理システム。
【請求項6】
前記出力部は、前記変化の原因を示す情報を含む前記取引明細情報を前記利用者端末に対して出力する、
請求項1乃至4の何れかに記載の口座取引管理システム。
【請求項7】
表示部を備え、口座の利用者によって操作されるコンピュータを、
請求項1に記載の口座取引管理システムから出力される前記取引明細情報を取得する取得部、
及び、前記変化の有無を識別可能な態様で前記取引明細情報を前記表示部に表示させる表示制御部
として機能させる、プログラム。
【請求項8】
前記取得部は、請求項6に記載の口座取引管理システムから出力される前記取引明細情報を取得し、
前記表示制御部は、前記変化の原因を含む前記取引明細情報を前記表示部に表示させる、
請求項7に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金融機関の口座における取引を管理する口座取引管理システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、口座における取引の内訳を利用者が期間及びカテゴリーを設定して確認することができる金融取引内訳統合管理システムが開示されている。このシステムによれば、各取引の内訳を確認することができるため、例えば、当該口座と複数のクレジットカードが連携されている場合に各カードに関する取引状況等を容易に把握することができ、便宜である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した金融取引内訳統合管理システムの場合、期間等に基づいて利用者が指定した取引の内訳を確認することになるため、その利用者自身がどの取引の内訳を確認すべきかを判断する必要がある。しかしながら、確認する必要性が高い取引を利用者が指定することは必ずしも容易ではないため、確認すべき取引の内容を確認し損なうおそれがある。また、そのような事態の発生を防止するために可能な限り多くの取引を指定してその内訳を確認することも想定されるが、その場合利用者が参照すべき事項の数が増大し、確認の負荷が高くなるという問題が生じる。
【0005】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、詳細を確認する必要性が高い取引を自動的に特定して利用者に提示することができる口座取引管理システム及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一の態様の口座取引管理システムは、複数の利用料金の合計額を口座から引き落とす合算引き落とし取引が定期的に発生する場合において、今回の合算引き落とし取引と過去の合算引き落とし取引とで取引内容に変化があるか否かを判定する判定部と、取引内容に変化があると判定された場合、今回の合算引き落とし取引の取引明細情報を、当該変化があることが前記口座の利用者に識別可能となるように、当該利用者に係る利用者端末に対して出力する出力部とを備える。
【0007】
前記態様において、前記判定部は、今回の合算引き落とし取引の引き落とし額と過去の合算引き落とし取引の引き落とし額の差が所定値以上の場合に、取引内容に変化があると判定してもよい。
【0008】
また、前記態様において、前記判定部は、今回の合算引き落とし取引と過去の合算引き落とし取引とで取引内容の内訳が異なる場合に、取引内容に変化があると判定してもよい。
【0009】
また、前記態様において、前記判定部は、今回の合算引き落とし取引の発生期間において、当該今回の合算引き落とし取引とは異なる他の合算引き落とし取引が発生している場合、当該異なる合算引き落とし取引の取引内容に基づいて、前記取引内容に変化があるか否かを判定してもよい。
【0010】
また、前記態様において、前記判定部が判定可能な取引内容の変化は複数種類あり、前記出力部は、前記種類毎に前記変化があることが前記利用者に識別可能となるように、前記取引明細情報を前記利用者端末に対して出力してもよい。
【0011】
また、前記態様において、前記出力部は、前記変化の原因を示す情報を含む前記取引明細情報を前記利用者端末に対して出力してもよい。
【0012】
本発明の一の態様のプログラムは、表示部を備え、口座の利用者によって操作されるコンピュータを、上記態様の口座取引管理システムから出力される前記取引明細情報を取得する取得部、及び、前記変化の有無を識別可能な態様で前記取引明細情報を前記表示部に表示させる表示制御部として機能させるものである。
【0013】
前記態様において、前記取得部は、上記態様の口座取引管理システムから出力される前記取引明細情報を取得し、前記表示制御部は、前記変化の原因を含む前記取引明細情報を前記表示部に表示させてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、口座における取引のうち、詳細を確認すべきものを特定して利用者に提示することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】口座取引管理システム及びその通信先の構成を示すブロック図。
【
図2】取引内容データベースのレイアウトの一例を示す図。
【
図3】取引明細生成処理の手順の一例を示すフローチャート。
【
図4】変化判定処理の手順の一例を示すフローチャート。
【
図6A】注意喚起情報を含む取引明細画面の一例を示す図。
【
図6B】注意喚起情報を含む取引明細画面の一例を示す図。
【
図7】注意喚起情報を含む取引明細画面の他の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に示す各実施の形態は、本発明の技術的思想を具体化するための方法及び装置を例示するものであって、本発明の技術的思想は下記のものに限定されるわけではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において種々の変更を加えることができる。
【0017】
(システムの構成)
図1は、本実施の形態の口座取引管理システム及びその通信先の構成を示すブロック図である。本実施の形態の口座取引管理システム(以下、単に「管理システム」という)1は、銀行等の金融機関の口座における各種取引の管理を行うコンピュータシステムである。管理システム1は、インターネット101を介して利用者端末2と通信し、さらに、専用線等の通信ネットワークを介して金融機関システム3と通信する。
【0018】
利用者端末2は、金融機関に口座を有する利用者によって用いられる、表示部を備えた情報端末であり、その例として、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット端末、及びスマートウォッチ等を挙げることができる。利用者端末2は、インターネットブラウザ又は専用のアプリケーションなどを用いて、管理システム1から提供された情報を取得し、その表示部に表示する。
【0019】
金融機関システム3は、金融機関が運用するコンピュータシステムであり、各口座の取引に関する情報を管理システム1に提供する。また、金融機関システム3は、専用線等の通信ネットワークを介して、口座と連携される各取引の取引先側で運用される取引先システム4と通信する。
【0020】
取引先システム4の例としては種々のものが挙げられる。例えば、利用者がクレジットカードを利用している場合において、そのカードの利用料金の引き落とし先として当該金融機関の口座が指定されているときは、そのカードのカード会社のコンピュータシステムが取引先システム4となる。また、利用者が携帯電話を利用している場合において、その携帯電話の利用料金の引き落とし先として当該口座が指定されているときは、その携帯電話の電話会社のコンピュータシステムが取引先システム4となる。
【0021】
金融機関システム3は、各取引先システム4から、利用者の利用料金に関する情報を取得し、その利用料金を所定の日時に当該利用者の口座から引き落とす。この引き落とし取引には、後述する合算引き落とし取引が含まれる。
【0022】
以下、管理システム1の詳細な構成について説明する。管理システム1は、CPU、RAM、及びROMを含む制御部並びに記憶部を備えるコンピュータで構成されており、この制御部によって後述する各処理が実行される。管理システム1の記憶部には、取引履歴データベース(DB)11、取引明細データベース(DB)12、及び取引内容データベース(DB)13の各データベースが設けられている。以下、これらのデータベースの詳細について説明する。
【0023】
(A)取引履歴DB11
取引履歴DB11は、各口座の取引履歴を格納するデータベースである。この取引履歴は、金融機関システム3によって管理システム1に提供される。金融機関システム3は、口座における各取引が完了する都度、その取引に関する情報を取引履歴として管理システム1に提供する。管理システム1は、そのようにして金融機関システム3から取得した取引履歴を取引履歴DB11に格納する。
【0024】
(B)取引明細DB12
取引明細DB12は、利用者に提供される取引明細情報を格納するデータベースである。管理システム1は、取引履歴DB11に格納されている取引履歴に基づいて取引明細情報を生成し、これを取引明細DB12に格納する。この取引明細情報は、利用者からの要求にしたがって当該利用者に提供される。
【0025】
(C)取引内容DB13
取引内容DB13は、合算引き落とし取引の内容に関する情報を格納するデータベースである。ここで、合算引き落とし取引とは、複数の利用料金の合計額を口座から引き落とす取引をいう。その例として、クレジットカードの利用料金の引き落とし取引が挙げられる。クレジットカードの利用料金の場合、所定期間において発生した複数の取引の利用料金の合計額が一括して口座から引き落とされる。このような合算引き落とし取引で引き落とされる合計額の他、その合算引き落とし取引の取引内容の内訳、すなわち当該合計額を構成する各利用料金の取引(以下「利用取引」という)の詳細(発生日、利用先及び利用額等)を含む情報が、取引内容DB13に格納される。
【0026】
上記のクレジットカードの他、携帯電話についても複数の利用料金が合算されて引き落とされる。例えば、本人及びその家族の利用料金の合計額、又は電話代及びデータ通信料の合計額などが一括して口座から引き落とされる。また、光熱費についても、例えば電気代及びガス代が同一の事業者から一括して請求される場合があり、その合計額が口座から引き落とされる。したがって、これらの携帯電話の利用料金及び光熱費の引き落としも合算引き落とし取引に該当する。
【0027】
図2は、取引内容DB13のレイアウトの一例を示す図である。
図2に示すとおり、取引内容DB13には、合算引き落とし取引の取引日である引き落とし日、その引き落とし額である複数の利用料金の合計額、その取引の摘要文言、及び各利用取引の詳細を示す情報が格納されている。各利用取引の詳細には、発生日、利用先、利用額及び備考が含まれる。ここで、備考は、発生日、利用先及び利用額以外の情報であって、例えば、上記の携帯電話の例における電話代及びデータ通信量、並びに光熱費の例における電気代及びガス代を示す情報が該当する。
【0028】
金融機関システム3は、取引内容DB13における各利用取引の詳細を示す情報を各取引先システム4から取得し、それを管理システム1に提供する。管理システム1は、金融機関システム3から当該情報を取得した場合、取引履歴DB11を参照して、対応する合算引き落とし取引が存在することを確認した上で、その情報を取引内容DB13に格納する。
【0029】
(システムの動作)
管理システム1は、上述したように、利用者に提供される取引明細情報を取引履歴に基づいて生成し、これを取引明細DB12に格納している。ここで、管理システム1は、取引履歴に加えて、取引内容DB13に格納されている合算引き落とし取引の取引内容を参照することにより、同種の合算引き落とし取引が定期的に発生することを確認した場合、その合算引き落とし取引について特別に下記の取引明細生成処理を実行する。なお、同種の合算引き落とし取引が定期的に発生しているか否かは、その取引の引き落としが毎月同日に行われているか否か、摘要文言が同一であるか否かなどによって判定される。例えば、同一の摘要文言でクレジットカードの利用料金の引き落としが毎月同日に行われている場合、そのクレジットカードの利用料金に関する合算引き落とし取引が定期的に発生していることが確認できる。
【0030】
図3は、上記の取引明細生成処理の手順の一例を示すフローチャートである。管理システム1はまず、上記のようにして定期的に繰り返していることが確認されている合算引き落としの中から最新のもの(今回の合算引き落とし取引)を抽出し、それを取引明細生成処理の対象として特定する(S101)。
【0031】
次に、管理システム1は、処理対象となった合算引き落とし取引の比較対象となる過去の同種の合算引き落とし取引を特定する(S102)。この比較対象となる合算引き落とし取引は1つであっても複数であってもよい。例えば、前月又は前年同月の合算引き落とし取引を比較対象としてもよく、所定期間(直近の6か月間など)の合算引き落とし取引のすべてを比較対象としてもよい。
【0032】
上記のようにして、処理対象の合算引き落とし取引(以下「処理対象取引」という)と比較対象の合算引き落とし取引(以下「比較対象取引」という)とが特定された後、管理システム1は、それらの取引間で取引内容に変化があるか否かを判定する変化判定処理を実行する(S103)。
【0033】
図4は、上記の変化判定処理の手順の一例を示すフローチャートである。管理システム1はまず、処理対象取引の引き落とし額と比較対象取引の引き落とし額との差を算出する(S201)。なお、比較対象取引が過去の複数の合算引き落とし取引を含むものである場合は、それらの取引の引き落とし額の平均値を比較対象取引の引き落とし額とする。
【0034】
次に、管理システム1は、処理対象取引及び比較対象取引の取引内容の内訳の差を特定する(S202)。より具体的に説明すると、管理システム1は、処理対象取引及び比較対象取引の各利用取引の取引先又は備考を比較し、処理対象取引に含まれている取引先又は備考が比較対象取引に含まれていなかったり、その反対に処理対象取引には含まれていない取引先又は備考が比較対象取引に含まれていたりする場合に、その差異を内訳の差として特定する。また、両取引に同じ取引先又は備考が含まれているものの、その利用額が所定額以上異なる場合には、その差異が内訳の差として特定される。
【0035】
次に、管理システム1は、処理対象取引とは異なる他の合算引き落とし取引が同月(処理対象取引の発生期間)に発生している場合、当該他の合算引き落とし取引を、参考対象の合算引き落とし取引(以下「参考取引」という)として特定する(S203)。例えば、処理対象取引がクレジットカードAの利用料金に係るものである場合において、それとは異なる他のクレジットカードBの利用料金に係る合算引き落とし取引が同月に存在する場合、その合算引き落とし取引が参考取引として特定される。
【0036】
次に、管理システム1は、参考取引自体または参考取引の各利用取引が、ステップS201及びS202で特定された差を埋めるような代替取引であるか否かを判定する(S204)。この判定処理について、クレジットカードAの利用料金に係る合算引き落とし取引が処理対象取引であって、クレジットカードBの利用料金に係る合算引き落とし取引が参考取引である場合を例に挙げて説明する。
【0037】
例えば、クレジットカードAにおいて今回の引き落とし額が過去の引き落とし額よりも多かった場合、管理システム1は、クレジットカードBについて今回の引き落とし額と過去の引き落とし額との差を算出する。ここで、クレジットカードBにおいては今回の引き落とし額が過去の引き落とし額よりも少なく、しかもその差がクレジットカードAにおける差と同程度(例えば、プラスマイナス1万円程度など)の場合、管理システム1は、この参考取引はステップS101で特定された差を埋める代替取引であると判定する。これは、クレジットカードAの利用金額はこれまでよりも増えたものの、その分クレジットカードBの利用金額が減ったことを意味している。
【0038】
また、ステップS202にて、比較対象取引には含まれている取引先が処理対象取引には含まれていないことが取引内容の内訳の差として特定されている場合において、参考取引の中に当該取引先に係る利用取引が含まれているとき、管理システム1は、参考取引の当該利用取引はステップS202で特定された差を埋める代替取引であると判定する。これは、当該利用先がこれまでクレジットカードAを用いて利用されていたところ、今回はクレジットカードBを用いて利用されたことを意味している。
【0039】
次に、管理システム1は、ステップS201、S202及びS204の処理結果を用いて、処理対象取引及び比較対象取引間で取引内容に変化があるか否かを判定する(S205)。例えば、処理対象取引の引き落とし額と比較対象取引の引き落とし額との差が所定額以上であり、しかもその差を埋めるような代替取引が存在しない場合、管理システム1は、両取引間の取引内容に変化があると判定する。同様にして、両取引間で取引内容の内訳の差が特定されており、しかもその差を埋めるような代替取引が存在しない場合、管理システム1は、両取引間の取引内容に変化があると判定する。
【0040】
他方、処理対象取引の引き落とし額と比較対象取引の引き落とし額との差が所定額以上である場合であっても、その差を埋めるような代替取引が存在するとき、管理システム1は、両取引間の取引内容に変化はないと判定する。同様にして、両取引間で取引内容の内訳の差が特定されている場合であっても、その差を埋めるような代替取引が存在するとき、管理システム1は、両取引間の取引内容に変化はないと判定する。
【0041】
その他にも、処理対象取引の引き落とし額と比較対象取引の引き落とし額との差が所定額よりも小さい場合、及び両取引間で取引内容の内訳の差が認められない場合、管理システム1は、両取引間の取引内容に変化はないと判定する。
【0042】
図3に戻り、管理システム1は、変化判定処理で取引内容に変化なしと判定した場合(S104でNO)は処理を終了する。これに対し、管理システム1は、変化判定処理において取引内容に変化ありと判定した場合(S104でYES)、当該変化があることを示す情報を含む取引明細情報を、処理対象取引の取引明細情報として生成し(S105)、これを取引明細DB12に格納する(S106)。
【0043】
なお、上記の取引内容の変化は、例えば次のように種別される。
(1)処理対象取引の引き落とし額が比較対象取引のそれよりも所定額以上増えている
(2)処理対象取引の引き落とし額が比較対象取引のそれよりも所定額以上減っている
(3)処理対象取引に含まれている取引先が比較対象取引に含まれていない
(4)処理対象取引に含まれていない取引先が比較対象取引に含まれている
(5)処理対象取引及び比較対象取引で共通する取引先・備考の利用額が所定額以上増えている
(6)処理対象取引及び比較対象取引で共通する取引先・備考の利用額が所定額以上減っている
このように、取引内容の変化は複数種類存在している。管理システム1は、上記のステップS105において、これらの変化の種類を示す情報を含む取引明細情報を生成する。
【0044】
上記の取引明細情報には、取引内容の変化の原因を示す情報も含まれている。例えば、取引内容の変化が上記(1)に該当する場合において、処理対象取引に含まれる複数の利用取引のうちの特定の利用取引の利用額が比較対象取引よりも高くなっているとき、その利用取引の利用額が、変化の原因を示す情報として取引明細情報に含められる。また、取引内容の変化が上記(3)及び(4)に該当する場合は、両取引間で共通しない取引先が、変化の原因を示す情報として取引明細情報に含められる。さらに、取引内容の変化が上記(5)及び(6)に該当する場合は、所定額以上増えている(又は減っている)利用額が、変化の原因を示す情報として取引明細情報に含められる。
【0045】
上述した取引明細生成処理によって生成された取引明細情報は、口座の利用者の要求に応じてその利用者に提供され、取引内容に変化があることが当該利用者に識別可能な態様で示される。取引内容に変化があるということは、利用者がその内容について確認する必要性が高いことを意味している。そのため、本実施の形態では、利用者に注意喚起する目的で、取引内容に変化があることが当該利用者に識別可能な態様で取引明細情報が表示される。その具体例について以下説明する。
【0046】
口座の利用者は、利用者端末2にインストールされているインターネットブラウザ又は専用のアプリケーションを操作して管理システム1にアクセスし、取引明細情報の提供を要求する。この要求を受けた管理システム1は、その利用者に係る取引明細情報を取引明細DB12から抽出し、利用者端末2に対して送信(出力)する。このとき、上記の取引明細生成処理によって取引内容に変化ありと判定された合算引き落とし取引の取引明細情報は、その変化の種類及び/又は原因を示す情報が付与された上で、利用者端末2に提供される。管理システム1から取引明細情報を受信した利用者端末2は、その取引明細情報の内容を示す取引明細画面を表示部に表示する。
【0047】
図5乃至
図7は、利用者端末2の表示部21に表示される取引明細画面の一例を示す図である。
図5には、所定期間中に「○○カード引き落とし」、「××カード引き落とし」及び「△△電話」の3つの合算引き落とし取引が発生しているものの、上述した取引明細生成処理においてそれらの取引の内容には変化なしと判定されたため、特別な情報が付与されずに表示されている例が示されている。
【0048】
これに対し、
図6A及び
図6B並びに
図7は、取引明細生成処理において取引の内容に変化ありと判定された場合の取引明細画面の例を示している。これらの図に示す取引明細画面には、通常の取引明細情報に加えて、利用者に注意喚起するための注意喚起情報が表示されている。
【0049】
図6A及び
図6Bに示す例では、取引明細生成処理において「○○カード引き落とし」及び「△△電話」の2つの合算引き落とし取引について取引の内容に変化ありと判定されたため、出金額が太字で表され、且つその出金額に下線が付与されている。この太字及び下線が注意喚起情報に相当し、これにより利用者は取引内容に変化があったことを識別することができる。そのため、利用者は、詳細を確認する必要性が高い取引を容易に特定することが可能になる。
【0050】
この場合、利用者端末2の表示部21にはまず
図6Aに示す取引明細画面が表示され、そこで注意喚起情報が付与されている出金額の表示部分がクリックされると、
図6Bに示すように、取引内容の変化の原因を示す情報がポップアップで表示される。この例では、比較対象取引には含まれていない車検代15万円が発生している旨が表示されている。これにより、利用者は、取引内容の変化の原因を容易に把握することができる。
【0051】
また、
図7に示す例では、取引内容の変化の種類が表示されている。この例の場合、取引明細生成処理において「○○カード引き落とし」及び「××カード引き落とし」の2つの合算引き落とし取引について取引の内容に変化ありと判定されたため、注意喚起情報として、それぞれの出金額の右横に星印が表示されている。ここで、2つの星印はそれぞれ黒塗り及び白抜きで表示されており、この色の違いによって、取引内容の変化の種類が示されている。例えば、黒塗りの星印は引き落とし額が比較対象取引よりも所定額以上減っていることを意味し、白抜きの星印は引き落とし額が比較対象取引よりも所定額以上増えていることを意味する、などである。これにより、利用者は、引き落とし額が増えているものを優先的に確認するなど、確認すべき事項の判別を容易に行うことが可能になる。
【0052】
上記のとおり、本実施の形態の場合、合算引き落とし取引について取引内容の変化を自動的に検出する。ここで、この変化を可能な限り検出するために、比較対象取引を複数設定するようにしてもよい。具体的に説明すると、比較対象取引として、例えば前月、前年同月、及び所定の6カ月間の各月の3種類の合算引き落とし取引を特定し、それぞれについて処理対象取引と比較した上で、取引内容の変化を検出するようにしてもよい。ここで、複数の比較対象取引との関係で処理対象取引の取引内容の変化が検出された場合、それらの複数の変化のすべてを利用者に知らせてもよく、そのうちで最も変化が大きいもののみを利用者に知らせてもよい。
【0053】
(その他の実施の形態)
上記の実施の形態では、処理対象取引及び比較対象取引について、引き落とし額の差及び取引内容の内訳の差の両方を用いているが、何れか一方のみであってもよい。また、それ以外の差を用いるようにしてもよい。例えば、特定の利用取引がこれまで毎月1日に発生していたところ、今回は当月の月末に発生しているなど、発生日の違いを差として特定して用いてもよい。
【0054】
また、上記の実施の形態では、管理システム1が代替取引の有無を確認し、代替取引が存在する場合はそれを考慮した上で取引内容の変化の有無を判定しているが、代替取引については考慮しなくてもよい。また、代替取引が存在する場合に、管理システム1がその旨を利用者に通知するようにしてもよい。
【0055】
また、上記の実施の形態では、管理システム1が金融機関システム3とは別のシステムとして説明したが、金融機関システム3が管理システム1として機能してもよい。また、金融機関システム3は取引先システム4として機能してもよく、その場合にさらに管理システム1として機能してもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 口座取引管理システム
11 取引履歴データベース
12 取引明細データベース
13 取引内容データベース
2 利用者端末
21 表示部
3 金融機関システム
4 取引先システム
101 インターネット