(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141535
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】ポリエチレン系樹脂発泡シート
(51)【国際特許分類】
C08J 9/04 20060101AFI20241003BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20241003BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20241003BHJP
B32B 5/18 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C08J9/04 103
C08J9/04 CES
B32B27/32 E
B32B27/18 D
B32B5/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053249
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】大森 智史
(72)【発明者】
【氏名】落合 哲也
【テーマコード(参考)】
4F074
4F100
【Fターム(参考)】
4F074AA17A
4F074AA17L
4F074AA20
4F074AA47A
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4F100AH03
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4F100JG04
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4F100JK11
4F100JL16
4F100YY00A
(57)【要約】
【課題】引き裂かれにくく柔軟であり、塵埃の吸着を低減可能な程度の帯電防止性を有する、ポリエチレン系樹脂発泡シートを提供する。
【解決手段】発泡層(11)を備え、ポリエチレン樹脂を含んでなるポリエチレン系樹脂組成物でシート表面(15a,16a)が構成されたポリエチレン系樹脂発泡シート(10a)であって、前記ポリエチレン系樹脂組成物は、100質量部の前記ポリエチレン樹脂に対して1.0質量部以上5.0質量部以下のアイオノマー型帯電防止剤を含み、前記発泡層(11)の見掛け密度は40mg/cm
3以下であり、前記シート表面(15a,16a)における表面固有抵抗率が5×10
14Ω以上9×10
16Ω以下である、ポリエチレン系樹脂発泡シート(10a)である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡層を備え、ポリエチレン樹脂を含んでなるポリエチレン系樹脂組成物でシート表面が構成されたポリエチレン系樹脂発泡シートであって、
前記ポリエチレン系樹脂組成物は、100質量部の前記ポリエチレン樹脂に対して1.0質量部以上5.0質量部以下のアイオノマー型帯電防止剤を含み、
前記発泡層の見掛け密度は40mg/cm3以下であり、
前記シート表面における表面固有抵抗率が5×1014Ω以上9×1016Ω以下である、ポリエチレン系樹脂発泡シート。
【請求項2】
積層構造を有し、最表層に前記ポリエチレン系樹脂組成物で構成された非発泡層が設けられている、請求項1に記載されたポリエチレン系樹脂発泡シート。
【請求項3】
前記発泡層の厚さが0.6mm以上3.0mm以下である、請求項1又は請求項2に記載されたポリエチレン系樹脂発泡シート。
【請求項4】
前記ポリエチレン系樹脂組成物の少なくとも一部は、前記ポリエチレン樹脂及び前記アイオノマー型帯電防止剤を含んでなる再生された樹脂組成物である、請求項1又は請求項2に記載されたポリエチレン系樹脂発泡シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレン系樹脂発泡シートに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ポリエチレン系樹脂とアイオノマー樹脂系帯電防止剤とを含む樹脂組成物からなる、ポリエチレン系樹脂押出発泡シートが開示されている。このポリエチレン系樹脂押出発泡シートは、ガラス板用の間紙等としての使用に所望される帯電防止性を安定して発現させる観点から、見掛け密度が15~200kg/m3(15~200mg/cm3)であり、体積抵抗率が1×1013Ω・cm以下であることを必須とするものである。このポリエチレン系樹脂押出発泡シートでは、アイオノマー樹脂系帯電防止剤の含有割合が、ポリエチレン系樹脂とアイオノマー樹脂系帯電防止剤との合計100重量%に対して5~50重量%である場合に、柔軟性に優れ、帯電防止性を安定して発現できて好ましい旨、特許文献1で説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、ポリエチレン系樹脂発泡シートでは、特許文献1で説明されているような高い帯電防止性までは求められておらず、静電気の蓄積による塵埃の吸着を低減可能な程度の帯電防止性を有すれば、十分な場合もあると考えられる。帯電防止性よりも、むしろ、引き裂かれにくく柔軟な物性を有するものが、望ましい場合もあると考えられる。
【0005】
そこで、本発明の課題は、引き裂かれにくく柔軟であり、塵埃の吸着を低減可能な程度の帯電防止性を有する、ポリエチレン系樹脂発泡シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するために、一実施形態に係るポリエチレン系樹脂発泡シートは、発泡層を備え、ポリエチレン樹脂を含んでなるポリエチレン系樹脂組成物でシート表面が構成されたポリエチレン系樹脂発泡シートであって、前記ポリエチレン系樹脂組成物は、100質量部の前記ポリエチレン樹脂に対して1.0質量部以上5.0質量部以下のアイオノマー型帯電防止剤を含み、前記発泡層の見掛け密度は40mg/cm3以下であり、前記シート表面における表面固有抵抗率が5.0×1014Ω以上9.0×1016Ω以下であるように構成されている。
【0007】
斯かるポリエチレン系樹脂発泡シートによれば、ポリエチレン樹脂とアイオノマー型帯電防止剤とを上述した質量部の割合で含むポリエチレン系樹脂組成物でシート表面が構成されてことにより、シート表面が、比較的高い引き裂き強度を有し、表面固有抵抗率が5.0×1014Ω以上9.0×1016Ω以下の範囲内という塵埃の吸着を低減可能な程度の帯電防止性を有するものになりやすい。また、発泡層は、見掛け密度が40mg/cm3以下であることにより、柔軟なものになりやすい。
【発明の効果】
【0008】
以上に説明したように本発明によれば、引き裂かれにくく柔軟であり、塵埃の吸着を低減可能な程度の帯電防止性を有する、ポリエチレン系樹脂発泡シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るポリエチレン系樹脂発泡シートの構造を示す概略断面図である。
【
図2】
図2は、他の実施形態に係るポリエチレン系樹脂発泡シートの構造を示す概略断面図である。
【
図3】
図3は、さらに他の実施形態に係るポリエチレン系樹脂発泡シートの構造を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1に示す一実施形態は、ポリエチレン系樹脂組成物(以下「前記樹脂組成物」ともいう)で構成された発泡層11のみを備える、樹脂発泡シート10aである。発泡層11のみの単層構造であるため、樹脂発泡シート10aにおける両側のシート表面(15a、16a)は、それぞれ前記樹脂組成物で構成されている。このような単層構造は、例えば、押出発泡法により形成可能である。例えば、樹脂発泡シート10aは、原料となる前記樹脂組成物を押出機の内部で発泡剤と共に溶融混練させて、得られる溶融混練物を、押出機に取付けられたダイスからシート状に押出して発泡させるような方法により、製造可能である。
【0011】
最表層の強度を高めて裂けにくくする観点では、他の実施形態として
図2に示す樹脂発泡シート10bのように、発泡層11と、この発泡層11の一方側の表面に積層された第一の非発泡層21と、を備える二層構造の形態でもよい。この樹脂発泡シート10bでは、第一の非発泡層21が最表層として一方側のシート表面15bを構成し、発泡層11が他方側のシート表面16aを構成している。発泡層11及び第一の非発泡層21の各々は前記樹脂組成物で構成されているため、各シート表面(15b、16a)は前記樹脂組成物で構成されている。同様に最表層の強度を高めて裂けにくくする観点では、他の実施形態として
図3に示す樹脂発泡シート10cのように、順に、第一の非発泡層21と、発泡層11と、前記樹脂組成物で構成された第二の非発泡層22と、を備える三層構造の形態でもよい。樹脂発泡シート10cでは、一方側のシート表面15bが第一の非発泡層21における前記樹脂組成物で構成され、シート厚さ方向の中央部に発泡層11が配され、他方側のシート表面16bが第二の非発泡層22における前記樹脂組成物で構成されている。各非発泡層(21、22)は、実質的に気泡を有していない層である。
図2及び
図3に示すように積層構造を有する場合の各樹脂発泡シート(10b、10c)は、例えば、発泡層11のみの樹脂発泡シート10aを一旦作製した後に非発泡層(21、22)となるポリエチレン系樹脂フィルムをラミネートする方法や、押出機のダイスから発泡層と非発泡層とを共押出する方法等により、製造可能である。このように、本発明に係る樹脂発泡シートは、単層構造の形態に限定されるものではない。
【0012】
以下、主に、
図1に示す樹脂発泡シート10aに基づいて、一実施の形態を説明する。樹脂発泡シート10aの発泡層11は、ポリエチレン樹脂と、アイオノマー型帯電防止剤と、を含む前記樹脂組成物(ポリエチレン系樹脂組成物)で構成されている。
【0013】
前記樹脂組成物に含まれるポリエチレン樹脂は、例えば、触媒法(中低圧重合法)によって作製されて、分子構造中に分岐がほとんど存在せずに942kg/m3以上の高い密度を有する高密度ポリエチレン樹脂(PE-HD)でもよい。前記樹脂組成物に含まれるポリエチレン樹脂は、触媒法(中低圧重合法)によって作製され、且つ、コモノマーの導入によって910kg/m3以上925kg/m3以下の密度となるように作製される直鎖低密度ポリエチレン樹脂(PE-LLD)でもよい。前記樹脂組成物に含まれるポリエチレン樹脂は、直鎖低密度ポリエチレン樹脂(PE-LLD)と高密度ポリエチレン樹脂(PE-HD)との間の密度となるように作製される中密度ポリエチレン樹脂(PE-MD)等でもよい。前記樹脂組成物は、ポリエチレン樹脂として、極低密度ポリエチレン樹脂(PE-VLD)を含んでいてもよい。前記樹脂組成物に含まれるポリエチレン樹脂は、例えば、高圧重合法によって作製され分子構造中に長鎖分岐を有する状態となっている低密度ポリエチレン樹脂(PE-LD)でもよい。前記樹脂組成物に含まれるポリエチレン樹脂は、原料調達が容易な観点では、化石燃料に由来するポリエチレン樹脂でもよく、環境負荷を低減させる観点では、植物に由来するポリエチレン樹脂でもよい。
【0014】
ポリエチレン樹脂は、分子量が同じでも分岐が多いほど分子末端の数が増える。このため、平均分子量が同じであるポリエチレン樹脂どうしでも、分岐が多い(メルトマスフローレイトの値が低い)ポリエチレン樹脂の方が、ある程度嵩高い分子構造を有しやすく、メルトマスフローレイトが適度な低さを有しやすい。ポリエチレン樹脂のメルトマスフローレイト(MFR)は、好ましくは7.0g/10min以下、更に好ましくは6.0g/10min以下、更により好ましくは5.0g/10min以下である。樹脂発泡シート10a(発泡層11)を押出発泡法で製造する際の設備負荷を軽減する観点では、ポリエチレン樹脂のメルトマスフローレイト(MFR)は、好ましくは0.1g/10min以上、更に好ましくは0.2g/10min以上、更により好ましくは0.3g/10min以上である。
【0015】
メルトマスフローレイト(MFR)はJIS K7210:1999「プラスチック―熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」により測定することができる。メルトマスフローレイト(MFR)は、同規格のB法記載の「b)ピストンが所定の距離を移動する時間を測定する方法」により測定することができる。具体的には、メルトマスフローレイト(MFR)は、例えば、(株)東洋精機製作所製「セミオートメルトインデックサ2A」を用いて、測定することができる。
【0016】
メルトマスフローレイト(MFR)の測定条件は次の通りとすることができる。
(メルトマスフローレイトの測定方法)
試料:3~8g
予熱:270秒
ロードホールド:30秒
試験温度:190℃
試験荷重:21.18N
ピストン移動距離(インターバル):25mm
試料の試験回数は3回とし、その平均をメルトマスフローレイト(g/10min)の値とすることができる。
【0017】
発泡させやすい観点では、発泡層11を構成する前記樹脂組成物は、バージンのポリエチレン樹脂とアイオノマー型帯電防止剤とが混合されてなる樹脂組成物(以下「第1の樹脂組成物」ともいう)でもよい。マテリアルリサイクル促進の観点では、発泡層11を構成する前記樹脂組成物は、第1の樹脂組成物と、再生されたポリエチレン樹脂と、が混合されてなる樹脂組成物であることが好ましい。換言すれば、この場合、発泡層11を構成する前記樹脂組成物に含まれるポリエチレン樹脂の一部が、再生されたポリエチレン樹脂であるともいえる。この場合、第1の樹脂組成物の量に対して再生されたポリエチレン樹脂の混合量が増すほど、アイオノマー型帯電防止剤の含有率が低下する。アイオノマー型帯電防止剤が後述する含有量で前記樹脂組成物に含まれるように、混合する。
【0018】
マテリアルリサイクル促進の観点では、発泡層を構成する前記樹脂組成物は、ポリエチレン樹脂及びアイオノマー樹脂を含んでなる再生された樹脂組成物(第2の樹脂組成物:以下「再生樹脂組成物」ともいう)であることも好ましい。同様の観点から、発泡層を構成する前記樹脂組成物は、バージンのポリエチレン樹脂と、再生樹脂組成物と、が混合されてなる樹脂組成物であることも、好ましい。換言すれば、これらの場合、発泡層11を構成する前記樹脂組成物に含まれるポリエチレン樹脂の一部又は全部が、再生されたポリエチレン樹脂であるともいえる。なお、一般的に、カチオン系界面活性剤やアニオン系界面活性剤等の所謂低分子型帯電防止剤と比べて、アイオノマー型帯電防止剤は、分子量が大きいため、樹脂組成物中で分散されにくい。一方、第1の樹脂組成物と比べて再生樹脂組成物は、含まれているポリエチレン樹脂が繰り返し溶融混練されたものであり、分子量が比較的小さい分子鎖を多く含んでいるため、樹脂組成物中でアイオノマー型帯電防止剤が均質に分散されやすいと考えられ、アイオノマー型帯電防止剤の含有量が少なくても帯電防止性を発現しやすい観点からも、好ましい。
【0019】
再生樹脂組成物は、好ましくは、ポリエチレン樹脂及びアイオノマー型帯電防止剤を含む樹脂組成物製の樹脂製品(樹脂成形品)に由来するものである。再生樹脂組成物の出発材料となる樹脂製品としては、例えば、用済みとなった樹脂発泡シート(使用される見込みがなくなった樹脂発泡シート、包装材として使用された後の樹脂発泡シート等)が挙げられる。例えば、このような樹脂製品を溶融混練させて、再生樹脂組成物を調製可能である。
【0020】
マテリアルリサイクル促進の観点と、高い引裂き強度を得やすい観点と、次に説明する分散性の観点とでは、発泡層11を構成する前記樹脂組成物は、第1の樹脂組成物と、再生樹脂組成物(第2樹脂組成物)と、が混合されてなる樹脂組成物であることが更に好ましい。分散性について説明すると、再生樹脂組成物は、出発材料となった樹脂製品の使用期間中に生じた紫外線劣化や、樹脂製品の製造時及び再生時における熱劣化等により、樹脂製品の製造に使用される前の状態と比べて、ポリマーの平均分子量が低くなっている。そのため、再生樹脂組成物は、使用前よりも、融点が下がり、メルトマスフローレイトの値が上がっている。第1の樹脂組成物に比べて融点が低く、メルトマスフローレイトの値が高い再生樹脂組成物は、第1の樹脂組成物に対して良好な分散性を示す。
【0021】
再生樹脂組成物(第2の樹脂組成物)の融点は、第1の樹脂組成物の融点よりも1℃以上低温であっても、2℃以上低温であってもよく、5℃以上低温であってもよい。再生樹脂組成物のメルトマスフローレイトの値は、第1の樹脂組成物の融点よりも0.1g/10min以上高くてもよく、0.2g/10min以上高くてもよく、0.5g/10min以上高くてもよい。樹脂製品から回収されて再生されたポリエチレン系再生樹脂組成物ともいえる再生樹脂組成物(第2の樹脂組成物)は、アイオノマー型帯電防止剤のメルトマスフローレイトの値とポリエチレン樹脂のメルトマスフローレイトの値とに大きな開きがある場合に特に有効である。アイオノマー型帯電防止剤のメルトマスフローレイトの値との差は、3g/10min以上、5g/10min以上又は7g/10min以上でもよい。アイオノマー型帯電防止剤のメルトマスフローレイトの値との差は、20g/10min以下であることが好ましい。
【0022】
第1の樹脂組成物と再生樹脂組成物(第2樹脂組成物)とを混合して前記樹脂組成物を調製する場合、再生樹脂組成物は、第1の樹脂組成物と比べて、アイオノマー型帯電防止剤の含有率が低いものでもよく又は高いものでもよい。バージンのポリエチレン又は第1の樹脂組成物と、再生樹脂組成物(第2の樹脂組成物)と、を混合して前記樹脂組成物を調製する場合には、再生樹脂組成物の出発材料となる樹脂製品として、アイオノマー型帯電防止剤の含有率が比較的高い樹脂製品を再生利用することができる。そのような樹脂製品として、例えば、帯電防止剤としてアイオノマー型帯電防止剤を含有する場合の、ガラス基板の間紙用のポリエチレン系樹脂発泡シートが挙げられる。例えば、ガラス基板の間紙として使用済み樹脂発泡シートを出発材料として再生樹脂組成物(第2の樹脂組成物)を調製し、さらに、この再生樹脂組成物と第1の樹脂組成物とを混合して前記樹脂組成物を調製し、押出発泡法により樹脂発泡シート10a(発泡層11)を製造可能である。この際、再生樹脂組成物(第2の樹脂組成物)と混合させる第1の樹脂組成物として、アイオノマー型帯電防止剤の含有率が低いものを使用することにより、出発材料となった樹脂発泡シートよりもアイオノマー型帯電防止剤の含有率が低くなった樹脂発泡シート10a(発泡層11)を製造可能である。このようにして製造することは、所謂低分子型帯電防止剤と比べて高価なアイオノマー型帯電防止剤を有効に再生利用することにより、樹脂発泡シート10aを低コストで製造可能な観点からも、好ましい。
【0023】
前記樹脂組成物に含まれるアイオノマー型帯電防止剤は、高分子型帯電防止剤の一種であり、カルボン酸塩及び/又はスルホン酸塩を分子中に有する高分子量化合物である。所謂低分子型帯電防止剤と比べて、アイオノマー型帯電防止剤では、低分子量の界面活性剤の分子がシート表面(15a、16a)へと移行するブリードアウトを避けることができる。このため、樹脂発泡シート10aを物品の梱包に使用する場合、梱包された物品(以下「被梱包物」ともいう)にブリードアウトした界面活性剤が付着して汚損する事態を、避けやすいという利点がある。また、他種の高分子型帯電防止剤(例えば、オレフィン系ブロックとエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等の親水性ブロックとの共重合体であるポリアルキレンオキサイド型帯電防止剤)と比べると、アイオノマー型帯電防止剤には、前記樹脂組成物にリチウムイオンやナトリウムイオンが含まれている場合、これらのイオンがシート表面(15a、16a)へと移行することを阻止する上で、有効に作用し、比較的少量でも帯電防止性を発揮しやすいと考えられる。
【0024】
アイオノマー型帯電防止剤が分子構造中に有する塩は、カルボン酸塩でもよく又はスルホン酸塩でもよい。アイオノマー型帯電防止剤は、エチレンと不飽和カルボン酸とを構成単位に含む共重合体であることが好ましい。該共重合体は、ランダム共重合体でもよく、ブロック共重合体でもよく又はグラフト共重合体でもよい。
【0025】
エチレン・不飽和カルボン酸共重合体としては、例えば、カルボキシ基の一部若しくは全部がアルカリ金属等で中和された構造のものが採用できる。該不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノメチル又はマレイン酸モノエチル等が挙げられる。該不飽和カルボン酸としては、アクリル酸又はメタクリル酸が好ましい。エチレン・不飽和カルボン酸共重合体において、エチレンや不飽和カルボン酸とは別に構成単位となり得る他の単量体としては、酢酸ビニルのようなビニルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸nブチル、アクリル酸イソオクチル、メタクリル酸メチルのような不飽和カルボン酸エステル、又は、一酸化炭素等が挙げられる。
【0026】
上記したエチレン・不飽和カルボン酸ランダム共重合体は、例えば、エチレン成分を60質量%以上90質量%以下の割合で含むものでもよい。エチレン成分の割合は、70質量%以上88質量%以下でもよい。エチレン・不飽和カルボン酸ランダム共重合体は、例えば、不飽和カルボン酸成分を10質量%以上40質量%以下の割合で含むものでもよい。不飽和カルボン酸成分の割合は、12質量%以上30質量%以下でもよい。エチレン・不飽和カルボン酸ランダム共重合体は、例えば、他の不飽和単量体成分の含有量が30質量%以下でもよい。他の不飽和単量体成分の含有量は、20質量%以下であることが好ましい。エチレン・不飽和カルボン酸ランダム共重合体は、エチレン・メタクリル酸ランダム共重合体であることが好ましい。
【0027】
アイオノマーのイオン源としては、アルカリ金属(すなわち、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム又はセシウム)が好ましく、更に好ましくはカリウムである。アイオノマー中のアルカリ金属カチオン含有量は、アイオノマー型帯電防止剤1.0kg当たり0.4mol以上4.0mol以下、好ましくは0.6mol以上2.0mol以下の範囲内にあることが望ましい。
【0028】
アイオノマー型帯電防止剤が前記樹脂組成物中で均質に分散しやすい観点では、アイオノマー型帯電防止剤のメルトマスフローレイトは、好ましくは10g/10min以上、更に好ましくは11g/10min以上である。アイオノマー型帯電防止剤のメルトマスフローレイトは、例えば、25g/10min以下、20g/10min以下又は15g/10min以下でもよい。
【0029】
前記樹脂組成物の溶融粘度を高めて発泡層11の表層部での気泡の膨らみのバラツキを抑制しやすくする観点では、メルトマスフローレイトの値が小さなアイオノマー型帯電防止剤を採用してもよい。そのような目的で使用されるアイオノマー型帯電防止剤は、例えば、メルトマスフローレイトが10g/10min未満、8.0g/10min以下、6.0g/10min以下又は5.0g/10min以下でもよく、例えば1.0g/10min以上とすることができる。
【0030】
アイオノマー型帯電防止剤が前記樹脂組成物中で均質に分散しやすい観点と、気泡の膨らみのバラツキが大きくなりすぎないように留める観点とでは、アイオノマー型帯電防止剤のメルトマスフローレイトは、好ましくは25g/10min以下又は20g/10min以下、更に好ましくは15g/10min以下である。アイオノマー型帯電防止剤のメルトマスフローレイトは、発泡層11の表層部での気泡の膨らみのバラツキを抑制し易くする観点からは、好ましくは1.0g/10min以上又は2.0g/10min以上、更に好ましくは3.0g/10min以上である。
【0031】
前記樹脂組成物に含まれる樹脂としては、ベース樹脂であるポリエチレン樹脂と、アイオノマー型帯電防止剤とが挙げられる。前記樹脂組成物は、これら以外の樹脂を含んでいてもよい。前記樹脂組成物に含まれる樹脂のうち、ポリエチレン樹脂とアイオノマー型帯電防止剤との合計量が占める割合は、例えば、85質量%以上とすることができ、90質量%以上、95質量%以上又は98質量%以上でもよい。
【0032】
前記樹脂組成物に含まれる樹脂は、ポリエチレン樹脂及びアイオノマー型帯電防止剤のみでもよい。または、前記樹脂組成物に含まれる樹脂のうち、ポリエチレン樹脂及びアイオノマー型帯電防止剤とは異なる樹脂の含有量は、例えば、15質量%未満とすることができ、10質量%未満、5質量%未満又は2質量%未満でもよく、実質的にゼロでもよい。また、前記樹脂組成物におけるポリエチレン樹脂の含有量は、例えば、75質量%以上とすることができ、80質量%以上又は85質量%以上でもよい。
【0033】
前記樹脂組成物におけるアイオノマー型帯電防止剤の含有量は、静電気の蓄積による塵埃の吸着等を低減させる観点では、前記樹脂組成物に含まれるポリエチレン樹脂の含有量を100質量部とした場合に、1.0質量部以上であり、好ましくは1.5質量部以上であり、2.5質量部以上でもよい。同様の観点から、前記樹脂組成物におけるアイオノマー型帯電防止剤の含有量は、例えば1.0質量%以上でもよく、好ましくは1.5質量%以上であり、2.4質量%以上でもよい。仮に、前記樹脂組成物におけるアイオノマー型帯電防止剤の含有量が、100質量部のポリエチレン樹脂に対して1.0質量部未満である場合には、静電気が蓄積され得ることに起因し、例えば塵埃を吸着して清浄性や美観を損なう等の問題が顕在化しやすい。
【0034】
一方、発泡層11を構成している前記樹脂組成物において、仮に、アイオノマー型帯電防止剤の含有量が多すぎる場合には、ポリエチレン樹脂が不足して、ポリエチレン樹脂ならではの柔軟性が損なわれたり、前記樹脂組成物が発泡しにくくなって発泡層11の厚さが不足したりする等の理由により、樹脂発泡シート10a(発泡層11)の引き裂き強度が低下しやすい。また、樹脂発泡シート10aを、例えば自動車用バンパー等の大型で硬い物品(被梱包物)を梱包し輸送するための緩衝材として使用する場合、仮に、発泡層の引き裂き強度が不足していれば、輸送中に発泡層が裂けて緩衝作用を十分に発揮できず、被梱包物が傷つくおそれがある。このため、発泡層11に十分な引き裂き強度を付与する観点では、前記樹脂組成物におけるポリエチレン樹脂の含有量を100質量部とした場合に、前記樹脂組成物におけるアイオノマー型帯電防止剤の含有量は、5.0質量部以下であり、好ましくは4.5質量部以下、更に好ましくは4.0質量部以下又は3.5質量部以下、更により好ましくは3.0質量部以下であり、2.0質量部以下でもよい。同様の観点から、前記樹脂組成物におけるアイオノマー型帯電防止剤の含有量は、例えば4.8質量%以下でもよく、好ましくは4.3質量%以下、更に好ましくは3.8質量%以下又は3.4質量%以下、更により好ましくは2.9質量%以下であり、2.0質量%以下でもよい。
【0035】
バージンのポリエチレン樹脂又は前述した第1の樹脂組成物と、前述した再生樹脂組成物(第2の樹脂組成物)と、が混合された前記樹脂組成物を使用して樹脂発泡シート10a(発泡層11)を製造する場合、再生樹脂組成物におけるアイオノマー型帯電防止剤の含有率がある程度の範囲内にあると、その後に前記樹脂組成物においてアイオノマー型帯電防止剤の含有率が適度な範囲内となるように調整しやすく、好ましい。この観点から、再生樹脂組成物(第2の樹脂組成物)又はその出発材料となる樹脂製品を構成しているポリエチレン系樹脂組成物では、100質量部のポリエチレン樹脂に対するアイオノマー型帯電防止剤の含有量が、好ましくは2.0質量部以上15質量部以下、更に好ましくは3.0質量部以上10質量部以下である。
【0036】
前記樹脂組成物の少なくとも一部が前述した再生樹脂組成物(第2の樹脂組成物)である場合、マテリアルリサイクル促進の観点と、樹脂発泡シート10a(発泡層11)に強度及び柔軟性を付与しやすい観点とでは、再生樹脂組成物の前記樹脂組成物に対する質量比(再生樹脂組成物の質量/ポリエチレン系樹脂組成物の質量)が、例えば0.10以上でもよく、好ましくは0.20以上、更に好ましくは0.30以上であり、0.40以上又は0.50以上又は0.60以上でもよい。また、前記樹脂組成物の少なくとも一部が再生樹脂組成物である場合、アイオノマー型帯電防止剤の含有率が適度な前記樹脂組成物を調製しやすい観点では、再生樹脂組成物の前記樹脂組成物に対する質量比(再生樹脂組成物の質量/ポリエチレン系樹脂組成物の質量)が、例えば0.90以下でもよく、好ましくは0.80以下又は0.70以下、更に好ましくは0.60以下であり、0.50以下又は0.40以下でもよい。
【0037】
前記樹脂組成物は、ポリエチレン樹脂と、アイオノマー型帯電防止剤とだけでなく、必要に応じて、他の添加剤を含んでいてもよい。他の添加剤としては、例えば、滑材、耐候性安定剤、光安定剤、酸化防止剤、抗菌剤、消臭剤、顔料、無機充填剤などがあげられる。前記樹脂組成物における他の添加剤の含有量は、例えば5.0質量%以下であり、2.0質量%以下又は1.0質量%以下でもよく、実質的にゼロでもよい。
【0038】
図1又は
図2に示す樹脂発泡シート(10a、10b)では、発泡層11の少なくとも片面がシート表面(15a、16a)を構成するように露出している。発泡層11が不図示の被包装物と直に接触するように樹脂発泡シート(10a、10b)を使用する場合、発泡層11を構成している前記樹脂組成物は、シート表面(15a、16a)への成分移行による被包装物の汚損を防止する観点では、滑剤又は界面活性剤として使用されている脂肪酸化合物を、含んでいないことが好ましい。含んでいないことが好ましい脂肪酸化合物としては、例えば、脂肪酸、脂肪酸金属塩、脂肪酸アミド又は脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0039】
脂肪酸の具体例としては、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸等の飽和脂肪酸、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸、リノレン酸等の不飽和脂肪酸、さらにこのようなモノカルボン酸の他に、ダイマー酸等のジカルボン酸等が挙げられる。脂肪酸金属塩を構成する金属としては、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛等が挙げられる。
【0040】
脂肪酸アミドとは、脂肪酸から誘導される酸アミドである。脂肪酸アミドとしては、例えば、脂肪族アミン由来のものが挙げられる。脂肪酸アミドの具体例としては、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド又はエチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド等が挙げられる。
【0041】
脂肪酸エステルの具体例としては、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸モノグリセリド、オレイン酸モノグリセリド、ベヘニン酸モノグリセリド、リノール酸モノグリセリド、リシノール酸モノグリセリド、ヒドロキシステアリン酸トリグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン(5)グリセリンモノステアレート、ポリオキシエチレン(20)グリセリンモノステアレート、ポリオキシエチレン(5)モノオレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ポリアジピン酸ペンタエリストールステアレート、ステアリン酸ステアリル、1,2-オキシステアリン酸又は硬化ひまし油等が挙げられる。
【0042】
被包装物の汚損を避ける観点では、発泡層11を構成している前記樹脂組成物における脂肪酸化合物の合計含有量は、好ましくは10,000ppm以下、更に好ましくは1,000ppm以下、更により好ましくは100ppm以下、更により一層好ましくは10ppm以下である。この脂肪酸化合物の合計含有量は、例えば、7ppm以下又は5ppm以下でもよい。発泡層11を構成している前記樹脂組成物における脂肪酸化合物の合計含有量は、例えば、1ppm以上又は3ppm以上でもよく、要すれば必要に応じて、5ppm以上、10ppm以上又は100ppm以上でもよい。
【0043】
樹脂発泡シート10aを、例えば自動車用バンパー等の比較的大型な物品(被梱包物)を梱包し輸送する緩衝材として使用する場合、このような大型の被梱包物を効率よく梱包するには、樹脂発泡シート10aが柔軟なものであることが望ましい。そのような柔軟性を樹脂発泡シート10aに付与する観点では、樹脂発泡シート10a(発泡層11)の厚さは、例えば5.0mm以下又は4.0mm以下でもよく、好ましくは3.0mm以下、更に好ましくは2.5mm以下である。樹脂発泡シート10aにある程度の機械的強度を付与する観点では、樹脂発泡シート10a(発泡層11)の厚さは、例えば0.40mm以上でもよく、好ましくは0.60mm以上、更に好ましくは1.0mm以上である。
【0044】
上記した樹脂発泡シート10a(発泡層11)の厚さは、次の測定方法により求めることができる。
測定には、定圧厚さ測定器(スタンドタイプ、Teclock社製、デジタルインジケータPCシリーズ型番「PC-440J」)を用い、円筒状の重りを用いて測定する。
測定は、直径3.0cmの円形状の面(面積:7.1cm
2)に、95gの荷重(自重を含む)を発泡層にかけた状態で実施する。
そして、幅方向に5cmごとに50点測定し、その測定値の算術平均値を樹脂発泡シート(発泡層)の厚さとする。
また、50点分の測定箇所を得ることが出来ない場合には、可能な限り測定し、その測定値の算術平均値を厚さとする。
図2、
図3に示す樹脂発泡シート(10b、10c)で、非発泡層(21、22)のみの厚さを求める場合は発泡層11を除去した試験片を使用し、発泡層11のみの厚さを求める場合は非発泡層(21、22)を除去した試験片を使用すればよい。
【0045】
前述した柔軟性を樹脂発泡シート10aに付与する観点では、発泡層11の見掛け密度は、40mg/cm3以下であり、例えば35mg/cm3以下でもよく、好ましくは30mg/cm3以下、更に好ましくは25mg/cm3以下である。樹脂発泡シート10aにある程度の機械的強度を付与しやすい観点では、発泡層11の見掛け密度は、例えば1.0mg/cm3以上でもよく、好ましくは5.0mg/cm3以上、更に好ましくは10mg/cm3以上である。
【0046】
樹脂発泡シート(発泡層)の見掛け密度は、次の方法により求めることができる。
(見掛け密度の測定方法)
樹脂発泡シート(発泡層)の見掛け密度は、前述のようにして求められる樹脂発泡シート(発泡層)の厚さ(T:mm)と、後述する坪量(Y:g/m
2)とから、次の式を使って求めることができる。
見掛け密度(mg/cm
3)=Y/T
図2、
図3に示す樹脂発泡シート(10b、10c)で、非発泡層(21、22)のみの見掛け密度を求める場合は発泡層11を除去した試験片を使用し、発泡層11のみの見掛け密度を求める場合は非発泡層(21、22)を除去した試験片を使用すればよい。
【0047】
樹脂発泡シート(発泡層)の坪量は、以下の方法によって求めることができる。
(坪量の測定方法)
樹脂発泡シート(発泡層)から、幅20cmの帯状の試験片を採取する。
試験片は、例えば、押出方向に直交する方向が長さ方向となるように採取する。
試験片の質量W(g)と面積S(cm
2)とを求め、下記式にて坪量を求める。
坪量(g/m
2)=W/S×10000
なお、試験片が20cmの幅で押出方向と直交方向に切取ることが難しい場合には、可能な大きさに矩形状に切取り、その質量W(g)と面積S(cm
2)から上記式にて坪量を求める。
図2、
図3に示す樹脂発泡シート(10b、10c)で、非発泡層(21、22)のみの坪量を求める場合は発泡層11を除去した試験片を使用し、発泡層11のみの坪量を求める場合は非発泡層(21、22)を除去した試験片を使用すればよい。
【0048】
樹脂発泡シート10aの少なくとも片側のシート表面(15a、16a)における表面固有抵抗率は、静電気が蓄積しにくく埃の吸着を低減させる観点では、9.0×1016Ω以下であり、好ましくは5.0×1016Ω以下、更に好ましくは1.0×1016Ω以下である。仮に、表面固有抵抗率が9.0×1016Ωよりも大きい場合、静電気が蓄積し得ることに起因し、塵埃の吸着等の問題が顕在化しやすい。
【0049】
一方、被梱包物を梱包する緩衝材として樹脂発泡シート10aを使用する場合、被梱包物が有する帯電防止性と比べて、仮に、樹脂発泡シート(発泡層)が有する帯電防止性が必要以上に高すぎると、却って、緩衝材(樹脂発泡シート)を避けるようにして塵埃が被梱包物に吸着しやすい問題が生じ得る。この問題は、被梱包物が帯電防止性を実質的に有していない樹脂成形品(例えば自動車用バンパー等)である等、被梱包物の表面固有抵抗率が高い(例えば1.0×1017Ω以上)場合に顕在化しやすい。また、樹脂発泡シート(発泡層)が有する帯電防止性が必要以上に高くなるように前記樹脂組成物において帯電防止剤の含有率を高くし過ぎた場合、形成される樹脂発泡シート(発泡層)においてポリエチレン樹脂の含有率が不足し、ポリエチレン樹脂ならではの柔軟性、発泡性及び強度が損なわれる問題が生じ得る。これらの問題を避ける観点から、樹脂発泡シート10aの少なくとも片側のシート表面(15a、16a)における表面固有抵抗率は、5.0×1014Ω以上であり、好ましくは8.0×1014Ω以上、更により好ましくは1.0×1015Ω以上である。
【0050】
樹脂発泡シート10aを緩衝材として使用する場合、樹脂発泡シート10aの両側のシート表面(15a及び16a)が、上記した表面固有抵抗率を有するものであってもよい。樹脂発泡シート10aの片側のシート表面(15a又は16a)しか被梱包物に接触しない場合、接触する側のシート表面(15a又は16a)のみが上記した表面固有抵抗率を有するものであってもよい。
図2に示す樹脂発泡シート10bでは、発泡層11で構成されたシート表面16aが被梱包物に接触する場合には発泡層11の表層部のみが上記した表面固有抵抗率を有するものでもよく、又は、第一の非発泡層21で構成されたシート表面15bのみが被梱包物に接触する場合には第一の非発泡層21の表層部のみが上記した表面固有抵抗率を有するものでもよく、又は、発泡層11及び第一の非発泡層21の各表層部が上記した表面固有抵抗率を有するものでもよい。
図3に示す樹脂発泡シート10cでは、第一の非発泡層21で構成されたシート表面15bが被梱包物に接触する場合には第一の非発泡層21の表層部が上記した表面固有抵抗率を有するものでもよく、又は、第二の非発泡層22で構成されたシート表面16bが被梱包物に接触する場合には第二の非発泡層22の表層部が上記した表面固有抵抗率を有するものでもよく又は、第一の非発泡層21及び第二の非発泡層22の各表層部が上記した表面固有抵抗率を有するものでもよい。樹脂発泡シート10cにおいて、発泡層11はシート表面(15b、16b)を構成していないが、非発泡層(21、22)との接着面において上記した表面固有抵抗率を有するものであってもよい。
【0051】
樹脂発泡シートの表面固有抵抗率は、以下のようにして測定することができる。
(表面固有抵抗率の測定方法)
表面固有抵抗率は、JIS K6911:1995「熱硬化性プラスチック一般試験方法」記載の方法により測定することができる。
試験装置は、(株)アドバンテスト製デジタル超高抵抗/微少電流計、型名「R3840」及びレジスティビティ・チェンバ、型名「R12702A」を使用することができる。
表面固有抵抗率は、樹脂発泡シートから採取した試験片に、約30Nの荷重にて電極を圧着させ500Vで1分間充電後の抵抗値を測定し、次式により算出することができる。
ρs=(π(D+d)/(D-d))×Rs
ρs:表面固有抵抗率(MΩ)
D:表面の環状電極の内径(cm)
d:表面電極の内円の外径(cm)
Rs:表面抵抗(MΩ)
試験片は、幅100mm×長さ100mm×厚さT(樹脂発泡シートそのままの厚さ)とする。
測定は、温度20±2℃、相対湿度65±5%RHの環境下で試験片を24時間以上状態調節した後に実施する。
試験環境は、温度20±2℃、相対湿度65±5%RHとする。
試験片の数(n数)は5個とし、原則的に、それぞれ表裏両面を測定することとする。
【0052】
被梱包物を梱包し輸送するための緩衝材として樹脂発泡シート10aを使用する場合、樹脂発泡シート10a(発泡層11)の流れ方向(MD方向)における引裂き強度は、輸送中に樹脂発泡シート10aが裂ける事態を防ぎやすい観点では、例えば20N/cm以上でもよく、好ましくは22N/cm以上、更に好ましくは24N/cm以上である。樹脂発泡シート10aを使用して被梱包物を梱包する際、使用者が被梱包物のサイズに応じて樹脂発泡シート10aを梱包に適した寸法へと裁断しやすい観点では、樹脂発泡シート10a(発泡層11)のMD方向における引裂強度は、例えば40N/cm以下でもよく、好ましくは35N/cm以下、更に好ましくは30N/cm以下である。
【0053】
樹脂発泡シートの引裂き強度は、次の方法により求められる。
(引裂き強度の測定方法)
樹脂発泡シートの引裂き強度は、JIS K6772:1994「ビニルレザークロス」記載の方法に準拠して測定する。
具体的には、試験片を温度23±2℃、相対湿度50±5%の環境下に24時間以上に亘って保持した後、温度23±2℃、相対湿度50±5%の環境下にて測定を行う。
試験にはテンシロン万能試験機(オリエンテック社製 商品名「UCT-10T」)及び万能試験機データ処理ソフト(ソフトブレーン社製 商品名「UTPS-237S」)を用いる。
試験片は、樹脂発泡シートの流れ方向(MD)および幅方向(TD)から、それぞれ短辺寸法40mm及び長辺寸法150mmの長方形に裁断し、2つの短辺の内の一方の短辺中心部(角から20mmの位置)から長辺に平行な切込みを長さ75mmに亘って設けたものを各3個用意する。
即ち、試験片は、長手方向中央部において二股に分かれたものを用いる。
つかみ具間隔が50mmとなるように引張試験機をセットし、二股に分かれた部分の端部をそれぞれつかみ具に固定する。
この状態で、つかみ具が200mm/分の速度で離間する条件下にて試験片を引き裂き、試験片が破断するまでの最大荷重を測定する。
各試験片の最大点荷重の相加平均値を樹脂発泡シートの引裂き強度として求める。
図2、
図3に示す樹脂発泡シート(10b、10c)で、非発泡層(21、22)のみの引裂き強度を求める場合は発泡層11を除去した試験片を使用し、発泡層11のみの引裂き強度を求める場合は非発泡層(21、22)を除去した試験片を使用すればよい。
【0054】
本明細書により開示される事項には、以下のものが含まれる。
(1)
発泡層を備え、ポリエチレン樹脂を含んでなるポリエチレン系樹脂組成物でシート表面が構成されたポリエチレン系樹脂発泡シートであって、
前記ポリエチレン系樹脂組成物は、100質量部の前記ポリエチレン樹脂に対して1.0質量部以上5.0質量部以下のアイオノマー型帯電防止剤を含み、
前記発泡層の見掛け密度は40mg/cm3以下であり、
前記シート表面における表面固有抵抗率が5×1014Ω以上9×1016Ω以下である、ポリエチレン系樹脂発泡シート。
(2)
積層構造を有し、最表層に前記ポリエチレン系樹脂組成物で構成された非発泡層が設けられている、上記(1)に記載されたポリエチレン系樹脂発泡シート。
(3)
前記発泡層の厚さが0.6mm以上3.0mm以下である、上記(1)又は(2)に記載されたポリエチレン系樹脂発泡シート。
(4)
前記ポリエチレン系樹脂組成物の少なくとも一部は、前記ポリエチレン樹脂及び前記アイオノマー型帯電防止剤を含んでなる再生された樹脂組成物である、上記(1)乃至(3)のいずれかに記載されたポリエチレン系樹脂発泡シート。
【0055】
本発明では、以上に説明した実施形態などに限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々なる改良、修正又は変形を加えた態様でも実施することができる。本発明では、同一の作用又は効果を生じる範囲内で、いずれかの特定事項を他の技術に置換した形態で実施してもよい。例えば、
図2又は
図3に示す樹脂発泡シート(10b、10c)では、ポリエチレン樹脂及びアイオノマー型帯電防止剤を含んでなる前記樹脂組成物で構成された非発泡層(21、22)によりシート表面(15b、16b)で帯電防止性が発揮されるため、発泡層11を構成しているポリエチレン系樹脂組成物にアイオノマー型帯電防止剤が含まれない場合があってもよい。
【実施例0056】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は実施例に限定されない。
【0057】
(再生ペレットR1の試作)
化石燃料由来であるバージンのポリエチレン樹脂として、日本ポリエチレン株式会社製の型番「LD400」(樹脂密度919kg/m3、MFR2.0g/10min、溶融張力5.2cN)を準備した。
アイオノマー型帯電防止剤として、三井・ダウポリケミカル株式会社製の型番「SD100」(イオン源としてカリウムを含有するエチレン・メタクリル酸ランダム共重合体、融点92℃、MFR12g/10min)を準備した。
気泡調整剤マスターバッチとして、三洋化成工業株式会社製の表品名「セルマイクMB1023」(アゾジカルボンアミド含有マスターバッチ)を準備した。
押出方向へ向けて第一押出機、第二押出機の順に2台の押出機が連結されたタンデム式押出機において、第二押出機の先端部に、出口直径が222mm(スリット幅0.04mm)のサーキュラーダイAを装着した。
【0058】
100質量部のバージンのポリエチレン樹脂「LD400」と、6質量部のアイオノマー型帯電防止剤「SD100」と、0.15質量部の気泡調整剤マスターバッジ「セルマイクMB1023」と、をブレンドした混和物を調製した。
この混和物を、タンデム式押出機の第一押出機(シリンダー径:φ90mm)内に供給し、該第一押出機で最高到達温度が210℃となるように溶融混練しつつ該第一押出機の途中から発泡剤として混合ブタン(イソブタン/ノルマルブタン=70/30(mol比))を圧入して、さらに溶融混練を実施した。
混合ブタンの圧入量はポリエチレン樹脂100質量部に対する割合が18質量部となるように調製した。
この第一押出機での溶融混練後は、該第一押出機に連結された第二押出機(シリンダー径:φ150mm)で発泡に適する温度域(111℃)まで溶融混練物を冷却し、前述したサーキュラーダイAから大気中へと押出発泡した。
その時の樹脂温度は112℃であった。
押出発泡された筒状発泡体を、エアーを吹き付けて冷却した後、直径770mm、長さ650mmの冷却マンドレル上を添わせて冷却し、冷却マンドレルの後部側に設けたカッターで押出方向に沿って筒状発泡体を切断し、速度40m/minで巻き取ることにより、長尺帯状の樹脂発泡シートを試作した。
【0059】
また、前述したタンデム式押出機とは別に、ストランド製造用ダイB(孔数16、各孔の径:φ2mm)を先端に装着した押出機を準備した。
この押出機(シリンダー径:φ150mm)内に、上記した樹脂発泡シートを投入して溶融させ、樹脂温度が250℃となった溶融樹脂を、吐出量80kg/hourとなるように、前述したストランド製造用ダイBの各孔から大気中へと押出して、ストランド樹脂を形成させた。このストランド樹脂を冷却水中に浸漬させて急冷した後、ペレット状(φ2mm×長さ3mm)となるようにペレタイザーで切断した。これにより、アイオノマー型帯電防止剤を含む、再生されたポリエチレン系樹脂組成物で構成された再生ペレットR1を試作した。
【0060】
(実施例1)
前述したタンデム式押出機において、第二押出機の先端部から前述のサーキュラーダイAを取り外し、その代わりに第二押出機の先端部に、出口直径が145mm(スリット幅0.15mm)のサーキュラーダイCを装着した。
化石燃料由来であるバージンの低密度ポリエチレン樹脂として、宇部丸善ポリエチレン株式会社製の型番「B128」(樹脂密度928kg/m3、MFR1.0g/10min、溶融張力6.2cN)を準備した。
50質量部のバージンのポリエチレン樹脂「B128」と、50質量部の再生ペレットR1と、0.3質量部の気泡調整剤「セルマイクMB1023」と、をブレンドした混和物を調製した。
この混和物を、タンデム式押出機の第一押出機(シリンダー径:φ90mm)内に供給し、該第一押出機で最高到達温度が210℃となるように溶融混練しつつ該第一押出機の途中から発泡剤として混合ブタン(イソブタン/ノルマルブタン=70/30(mol比))を圧入して、さらに溶融混練を実施した。
混合ブタンの圧入量はポリエチレン樹脂100質量部に対する割合が18質量部となるように調製した。
この第一押出機での溶融混練後は、該第一押出機に連結された第二押出機(シリンダー径:φ150mm)で発泡に適する温度域(111℃)まで溶融混練物を冷却し、前述したサーキュラーダイCから大気中へと押出発泡した。
その時の樹脂温度は112℃であった。
押出発泡された筒状発泡体を、エアーを吹き付けて冷却した後、直径515mm、長さ650mmの冷却マンドレル上を添わせて冷却し、冷却マンドレルの後部側に設けたカッターで押出方向に沿って筒状発泡体を切断し、速度25m/minで巻き取ることにより、長尺帯状であり発泡層のみの単層構造を有する樹脂発泡シート(実施例1に係る樹脂発泡シート)を試作した。
【0061】
上記した実施例1や、後述する他の例について、試作時の配合を次の表1にまとめて示す。
【表1】
【0062】
(実施例2乃至6)
実施例2乃至6の各々では、前述した実施例1と比べて、バージンのポリエチレン樹脂「B128」と、再生ペレットR1と、の配合割合を上記した表1のように変更した他は、実施例1と同様にして、発泡層のみの単層構造を有する樹脂発泡シートを試作した。
【0063】
(実施例7)
実施例7では、前述した実施例1と比べて、再生ペレットR1を配合せず、バージンのポリエチレン樹脂「B128」と、アイオノマー型帯電防止剤「SD100」と、の配合割合を前述した表1のように変更した他は、実施例1と同様にして、発泡層のみの単層構造を有する樹脂発泡シートを試作した。
【0064】
(比較例1及び2)
比較例1及び2の各々では、前述した実施例1と比べて、バージンのポリエチレン樹脂「B128」と、再生ペレットR1と、アイオノマー型帯電防止剤「SD100」と、の配合割合を前述した表1のように変更した他は、実施例1と同様にして、発泡層のみの単層構造を有する樹脂発泡シートを試作した。
【0065】
(再生ペレットR2の試作)
前述した再生ペレットR1の試作と比べて、次に説明する2つの点を変更した。
1つ目の変更点として、ポリアルキレンオキサイド型帯電防止剤として、三洋化成工業株式会社製の商品名「ペレクトロンLMP」(ポリエーテルとポリオレフィンとのブロック共重合体、融点115℃、MFR30g/10min)を準備した。
2つ目の変更点として、100質量部のバージンのポリエチレン樹脂「LD400」と、6質量部のポリアルキレンオキサイド型帯電防止剤「ペレクトロンLMP」と、0.15質量部の気泡調整剤マスターバッジ「セルマイクMB1023」と、をブレンドした混和物を調製し、この混和物を、タンデム式押出機の第一押出機内に供給した。
上記した2つの変更点の他は、前述した再生ペレットR1の試作と同様にすることにより、ポリアルキレンオキサイド型帯電防止剤を含む、再生されたポリエチレン系樹脂組成物で構成された再生ペレットR2を試作した。
【0066】
(比較例3及び4)
比較例3及び4の各々では、前述した実施例1と比べて、再生ペレットR1の代わりに上記した再生ペレットR2を配合し、且つ、バージンのポリエチレン樹脂「B128」と、再生ペレットR2と、の配合割合を前述した表1のように変更した他は、実施例1と同様にして、発泡層のみの単層構造を有する樹脂発泡シートを試作した。
【0067】
(比較例5)
比較例5では、前述した実施例1と比べて、次の2つの点を変更した。
1つ目の変更点として、アイオノマー型帯電防止剤として、三井・ダウポリケミカル株式会社製の商品名「エンティラMK400」(イオン源としてカリウムを含む、融点93℃、MFR1.5g/10min)を準備した。
2つ目の変更点として、比較例5では再生ペレットR1を配合せず、100質量部のバージンのポリエチレン樹脂「B128」と、5質量部のアイオノマー型帯電防止剤「エンティラMK400」と、0.3質量部の気泡調整剤マスターバッチ「セルマイクMB1023」と、をブレンドした混和物を調製し、この混和物を、タンデム式押出機の第一押出機内に供給した。
上記した2つの変更点の他は、実施例1と同様にして、発泡層のみの単層構造を有する樹脂発泡シートを試作した。
【0068】
上述したように試作した各樹脂発泡シートについて、前述した方法により、シートの厚さ、坪量、見掛け密度、MD方向での引裂き強度、及び、シート表面での表面固有抵抗率を測定した。これらの測定値に基づき、各樹脂発泡シートの機能性を、以下に説明する基準で評価した。
【0069】
(樹脂発泡シートの強度に関する評価基準)
評価◎:引裂き強度が24N/cm以上であり、自動車用バンパーを梱包して輸送するための緩衝材として2回使用した後に肉眼で観察した場合に、樹脂発泡シートに裂け目が特に見当たらない。
評価〇:引裂き強度が22N/cm以上24N/cm未満であり、自動車用バンパーを梱包する緩衝材として1回使用した後に肉眼で観察した場合に、樹脂発泡シートに裂け目が特に見当たらない。
評価△:引裂き強度が20N/cm以上22N/cm未満であり、自動車用バンパーを梱包する緩衝材として1回使用した後に肉眼で観察した場合に、樹脂発泡シートに目立たないが小さな裂け目が生じている場合がある。
評価×:引裂き強度が20N/cm未満であり、自動車用バンパーを梱包する緩衝材として1回使用した後に肉眼で観察した場合に、樹脂発泡シートに目立つ大きな裂け目が生じている場合が非常に多い。
【0070】
(樹脂発泡シートの柔軟性に関する評価基準)
評価◎:見掛け密度が30mg/cm3以下であり柔軟性が高いため、樹脂発泡シートを使用して自動車用バンパーを梱包する際、樹脂発泡シートに折れ目や裂け目が生じることなく梱包しやすい。
評価〇:見掛け密度が30mg/cm3以上40mg/cm3以下であり柔軟性が幾らかあるため、樹脂発泡シートを使用して自動車用バンパーを梱包する際、樹脂発泡シートに割れ目(シートを貫通する割れ)は生じないが、折れ目が生じる場合がある。
評価×:見掛け密度が40mg/cm3よりも高く柔軟性に劣るため、樹脂発泡シートを使用して自動車用バンパーを梱包する際、樹脂発泡シートに折れ目や割れ目(シートを貫通する割れ)が頻繁に生じやすい。
【0071】
(樹脂発泡シートの帯電防止性に関する評価基準)
評価◎:表面固有抵抗率が1.0×1016Ω以下という範囲内の帯電防止性があり、自動車用バンパーを梱包し輸送する緩衝材として樹脂発泡シートを使用する場合、シート表面を肉眼でよく観察しても細かな埃は特に見当たらず、清浄な外見である。
評価〇:表面固有抵抗率が1.0×1016Ωよりも高く5.0×1016Ω以下という範囲内の帯電防止性があり、自動車用バンパーを梱包し輸送する緩衝材として樹脂発泡シートを使用する場合、シート表面を一見しただけで分かるような埃はないが、シート表面を肉眼でよく観察すると細かな埃が見つかる。
評価△:表面固有抵抗率が5.0×1016Ωよりも高く9.0×1016Ω以下という範囲内の低い帯電防止性があり、自動車用バンパーを梱包し輸送する緩衝材として樹脂発泡シートを使用する場合、シート表面を一見しただけで分かる埃があるものの、その埃を指先で摘んでシート表面から簡単に取り除くことができる。
評価×:表面固有抵抗率が9.0×1016よりも高いため、帯電防止性はほとんど発揮されておらず、自動車用バンパーを梱包し輸送する緩衝材として樹脂発泡シートを使用する場合、シート表面を一見しただけで分かる埃があり、その埃はシート表面に吸着しており指先で摘んでシート表面から取り除くことが難しい。
【0072】
(樹脂発泡シートの機能性に関する総合評価の基準)
総合評価◎:強度、柔軟性及び帯電防止性の3項目全てで、評価が◎のみであるもの。
総合評価〇:強度、柔軟性及び帯電防止性の3項目全てで、評価が◎又は〇であるもの。
総合評価△:強度、柔軟性及び帯電防止性の3項目において、評価×が1つも含まれてないもの。
総合評価×:強度、柔軟性及び帯電防止性の3項目において、評価×が少なくとも1つは含まれているもの(実用性に欠ける)。
【0073】
試作した各樹脂発泡シート(発泡層)について、前述した表1に記載の配合量から計算されたポリエチレン系樹脂組成物の組成と、シートの厚さ、坪量、見掛け密度、MD方向の引裂き強度及び表面固有抵抗率の測定値と、機能性の評価結果と、を次の表2に示す。
【0074】
【0075】
表2から明らかなように、ポリアルキレンオキサイド型帯電防止剤(再生ペレットR2)を配合した比較例3及び4よりも、アイオノマー型帯電防止剤(再生ペレットR1)を配合した実施例1及び5の方が、樹脂発泡シート(発泡層)の引裂き強度が高くなり且つ表面固有抵抗率が低くなること(強度と帯電防止性とを両立させやすいこと)が示唆された。
【0076】
100質量部のポリエチレン樹脂に対するアイオノマー型帯電防止剤の含有量が5.0質量部よりも多い範囲内にある、比較例1、比較例2及び比較例5では、20N/cm以上の引裂き強度と、40mg/cm3以下の見掛け密度と、を両立させることができなかった(強度と柔軟性との両立が不可能であった)。つまり、比較例1及び2では、発泡倍率を若干高めにして見掛け密度31mg/cm3に調整すると、その代わりに引裂き強度が20N/cmを下回り、強度に劣るものになった。また、比較例5では、発泡倍率を低くして引裂き強度が高値となるように調整すると、その代わりに見掛け密度が50mg/cm3という柔軟性を欠いたものになった。
【0077】
一方、実施例1乃至7では、100質量部のポリエチレン樹脂に対するアイオノマー型帯電防止剤の含有量が1.0質量部以上5.0質量部以下の範囲内にあるものであり、20N/cm以上の引裂き強度と、40mg/cm3以下の見掛け密度と、を両立可能なこと(強度と柔軟性とを両立可能なこと)が示唆された。また、前述の表1と表2とを合わせて考慮すると、バージンのポリエチレン樹脂とアイオノマー型帯電防止剤との混合物から試作した実施例7と比べて、バージンのポリエチレン樹脂と再生ペレットR1との混合物から試作した実施例1の方が、意外にも、引裂き強度が高く且つ表面固有抵抗率が低くなった(強度と帯電防止性との両方に優れる)ことが示唆された。
10a,10b,10c:樹脂発泡シート、11:発泡層、15a,15b:一方側のシート表面、16a,16b:他方側のシート表面、21:第一の非発泡層、22:第二の非発泡層