(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141552
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/20 20060101AFI20241003BHJP
E02F 9/26 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
E02F9/20 Q
E02F9/26 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053275
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇治 克将
【テーマコード(参考)】
2D003
2D015
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB04
2D003BA01
2D003BA06
2D003BB02
2D003CA02
2D003DA04
2D003DB02
2D003DB03
2D015HA03
(57)【要約】
【課題】アタッチメントを識別するための専用装置を搭載することなく、アタッチメントを精度良く識別することが可能な作業機械を提供する。
【解決手段】交換可能なアタッチメントが着脱可能に取り付けられた作業装置13を備えた油圧ショベル1において、GNSSアンテナ52と、IMU51と、アーム32に取り付けられているアタッチメントを識別するコントローラ6と、を有し、コントローラ6は、GNSSアンテナ52で検出された位置情報と、IMU51で検出された油圧ショベル1の姿勢と、に基づいて、アタッチメント取り付け位置を演算し、アタッチメントがアーム32から取り外されたときのアタッチメント取り付け位置とアタッチメント情報とを関係付けて記憶し、アタッチメントがアーム32に取り付けられると、アタッチメント取り付け位置に関係付けられたアタッチメント情報に基づいて、アーム32に取り付けられているアタッチメントを識別する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体と、
前記機体に取り付けられ、交換可能なアタッチメントおよび前記アタッチメントが先端部に着脱可能に取り付けられたアーム部材を有する作業装置と、
を備えた作業機械において、
複数の測位衛星から発信された信号を受信して自己の位置の情報を検出する衛星受信機と、
前記機体の姿勢および前記作業装置の姿勢をそれぞれ検出する姿勢センサと、
前記アーム部材に取り付けられている前記アタッチメントを識別するコントローラと、
を有し、
前記コントローラは、
前記衛星受信機で検出された位置情報と、前記姿勢センサで検出された前記機体の姿勢および前記作業装置の姿勢と、に基づいて、前記アーム部材に取り付けられた前記アタッチメントの取り付け位置を演算し、
前記アタッチメントが前記アーム部材から取り外されたときの前記アタッチメントの前記取り付け位置と前記アタッチメントの情報とを関係付けて記憶し、
前記アタッチメントが前記アーム部材に取り付けられると、前記衛星受信機で検出された位置情報と、前記姿勢センサで検出された前記機体の姿勢および前記作業装置の姿勢と、に基づいて、前記アタッチメントの前記取り付け位置に関係付けられた前記アタッチメントの情報を選択し、選択した前記アタッチメントの情報に基づいて、前記アーム部材に取り付けられている前記アタッチメントを識別する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械において、
前記コントローラから出力された情報を表示すると共に、入力した情報を前記コントローラに出力することが可能な入出力装置をさらに有し、
前記コントローラは、
前記アタッチメントが前記アーム部材に取り付けられたときの前記アタッチメントの前記取り付け位置が、前記アタッチメントの情報に関係付けられていない場合に、前記アタッチメントの情報を設定するための情報を前記入出力装置に表示させ、
前記入出力装置に入力された前記アタッチメントの情報を前記アタッチメントの前記取り付け位置に関係付けて設定する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項1に記載の作業機械において、
前記コントローラから出力された情報を表示すると共に、入力した情報を前記コントローラに出力することが可能な入出力装置をさらに有し、
前記コントローラは、
前記アタッチメントが前記アーム部材に取り付けられたときに、前記アタッチメントの前記取り付け位置に関係付けられた前記アタッチメントの情報を選択し、
選択した前記アタッチメントの情報の正誤を確認するための情報を前記入出力装置に表示させ、
選択した前記アタッチメントの情報が正しいとの情報を前記入出力装置から取得した場合には、選択した前記アタッチメントの情報に基づいて、前記アーム部材に取り付けられている前記アタッチメントを識別し、
選択した前記アタッチメントの情報が誤っているとの情報を前記入出力装置から取得した場合には、選択された前記アタッチメントの情報とは別の記憶している前記アタッチメントの情報を前記入出力装置に表示させ、前記入出力装置に表示された前記アタッチメントの情報に基づいて、前記アーム部材に取り付けられている前記アタッチメントを識別する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項4】
請求項1に記載の作業機械において、
前記アーム部材を駆動する油圧シリンダにかかる圧力を検出する圧力センサをさらに有し、
前記コントローラは、
前記圧力センサで検出された圧力値に基づいて、前記アタッチメントの前記アーム部材への取り付けおよび前記アーム部材からの取り外しを判定する
ことを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交換可能なアタッチメントが取り付けられた作業装置を備えた作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルなどの作業機械では、作業内容に応じてアタッチメントを交換することがある。例えば、土砂などを掘削する掘削作業を行う場合にはバケットを、岩盤や鉱物などを粉砕する粉砕作業を行う場合にはブレーカを、地面を叩いて締め固める締固め作業を行う場合にはコンパクターを、それぞれ用いる。
【0003】
アタッチメントを交換した場合には、オペレータは、アタッチメントの各部の寸法および各センサとの位置関係などのアタッチメント情報を設定変更する必要がある。アタッチメントの設定変更はアタッチメントを交換する度に行われることから、オペレータの操作が煩雑となり、オペレータは、操作ミスにより実際に取り付けているアタッチメントのアタッチメント情報とは異なるアタッチメント情報を設定してしまう可能性がある。そのため、従来から、アタッチメントを交換した場合には、自動でアタッチメント情報が設定変更される技術が知られている。
【0004】
例えば、特許文献1および特許文献2には、アタッチメントおよび機体に通信装置をそれぞれ配置し、機体側の通信装置がアタッチメント側の通信装置から受信したアタッチメントの高さ情報や方向情報などに基づいて、当該アタッチメント情報の送信元アタッチメントと作業装置に装着されているアタッチメントとの異同を判定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-161709号公報
【特許文献2】特開2022-15040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載の技術では、アタッチメントおよび機体の両方に、アタッチメントを識別するための専用の通信装置を搭載する必要がある。さらに、この場合、使用するアタッチメントの数が増えるほど専用の通信装置の数も増えるため、使用するアタッチメントの数に比例してコストが増えていってしまう。
【0007】
そこで、本発明の目的は、アタッチメントを識別するための専用装置を搭載することなく、アタッチメントを精度良く識別することが可能な作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、機体と、前記機体に取り付けられ、交換可能なアタッチメントおよび前記アタッチメントが先端部に着脱可能に取り付けられたアーム部材を有する作業装置と、を備えた作業機械において、複数の測位衛星から発信された信号を受信して自己の位置の情報を検出する衛星受信機と、前記機体の姿勢および前記作業装置の姿勢をそれぞれ検出する姿勢センサと、前記アーム部材に取り付けられている前記アタッチメントを識別するコントローラと、を有し、前記コントローラは、前記衛星受信機で検出された位置情報と、前記姿勢センサで検出された前記機体の姿勢および前記作業装置の姿勢と、に基づいて、前記アーム部材に取り付けられた前記アタッチメントの取り付け位置を演算し、前記アタッチメントが前記アーム部材から取り外されたときの前記アタッチメントの前記取り付け位置と前記アタッチメントの情報とを関係付けて記憶し、前記アタッチメントが前記アーム部材に取り付けられると、前記衛星受信機で検出された位置情報と、前記姿勢センサで検出された前記機体の姿勢および前記作業装置の姿勢と、に基づいて、前記アタッチメントの前記取り付け位置に関係付けられた前記アタッチメントの情報を選択し、選択した前記アタッチメントの情報に基づいて、前記アーム部材に取り付けられている前記アタッチメントを識別することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、アタッチメントを識別するための専用装置を搭載することなく、アタッチメントを精度良く識別することができる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る油圧ショベルの一構成例を示す外観側面図である。
【
図2】コントローラが有する機能を示す機能ブロック図である。
【
図3】モニタにおけるアタッチメント設定情報の表示例を示す図である。
【
図4】モニタにおけるアタッチメント確認情報の表示例を示す図である。
【
図5】アタッチメントの取り外し時におけるコントローラで実行される処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】アタッチメントの取り付け時におけるコントローラで実行される処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下では、本発明の実施形態に係る作業機械の一態様として、クローラ式の油圧ショベルを例に挙げて説明する。
【0012】
[油圧ショベル1の構成]
まず、油圧ショベル1の構成について
図1を参照して説明する。
【0013】
油圧ショベル1は、機体の下部となるクローラ式の下部走行体11と、下部走行体11の上方に旋回可能に設けられて機体の上部となる上部旋回体12と、上部旋回体12(機体)に取り付けられて各種作業を行う油圧駆動式の作業装置13と、を備えている。
【0014】
下部走行体11は、一対のクローラ111と、クローラフレーム112(
図1では片側のみを示す)と、一対の走行用油圧モータ113と、を備え、一対の走行用油圧モータ113の駆動力により一対のクローラ111を地面に接触させた状態で回転させることで機体を移動させる。
【0015】
一対の走行用油圧モータ113は、一対のクローラ111のそれぞれに対応して下部走行体11に搭載され、互いに独立して駆動することで一対のクローラ111をそれぞれ独立して正逆回転させることが可能である。なお、
図1では、一対のクローラ111および一対の走行用油圧モータ113のうち、一方のクローラ111および走行用油圧モータ113のみを示している。
【0016】
上部旋回体12は、旋回装置201の旋回用油圧モータ202の駆動力により、下部走行体11に対して旋回駆動する。上部旋回体12は、ベースフレームである旋回フレーム21と、オペレータが搭乗して各種操作が行われるキャブ22と、油圧ショベル1が傾倒しないように作業装置13とのバランスを保つカウンタウェイト23と、原動機としてのエンジン41やエンジン41により駆動されて各油圧アクチュエータに作動油を供給する油圧ポンプ42などの各種機器類を内部に収容する機械室24と、を備える。
【0017】
キャブ22は旋回フレーム21の前部に、カウンタウェイト23は旋回フレーム21の後端部に、機械室24はキャブ22とカウンタウェイト23との間に、それぞれ配置されている。また、旋回フレーム21の前部におけるキャブ22の一側には、作業装置13が取り付けられている。
【0018】
作業装置13は、基端部が旋回フレーム21に回動可能に取り付けられたブーム31と、ブーム31の先端部に回動可能に取り付けられたアーム32と、アーム32の先端部に回動可能に取り付けられたバケット33と、を備えている。なお、油圧ショベル1では、ブーム31およびアーム32がアーム部材に相当する。
【0019】
ブーム31は、ブームシリンダ31Aにより駆動される。具体的には、ブームシリンダ31Aは、一端側が旋回フレーム21に、他端側がブーム31に、それぞれ接続され、作動油の流出入によりロッドが伸縮することでブーム31を上部旋回体12に対して上下方向に回動(俯仰)させる。
【0020】
アーム32は、アームシリンダ32Aにより駆動される。具体的には、アームシリンダ32Aは、一端側がブーム31に、他端側がアーム32に、それぞれ接続され、作動油の流出入によりロッドが伸縮することでアーム32をブーム31に対して前後方向に回動させる。
【0021】
バケット33は、バケットシリンダ33Aにより駆動される。具体的には、バケットシリンダ33Aは、一端側がアーム32に、他端側がバケット33に、それぞれ接続され、作動油の流出入によりロッドが伸縮することでバケット33をアーム32に対して前後方向に回動させる。
【0022】
バケット33は、土砂や鉱物などの荷を掬い上げて所定の位置に荷を下ろしたり、地面を平らに均したりする作業具である。なお、このバケット33は、例えば、木材や岩石、廃棄物などを掴むグラップルや、岩盤を破砕するブレーカといった各種のアタッチメント(以下、「ATT」と略す場合がある)に交換することが可能である。
【0023】
これにより、油圧ショベル1は、作業現場において、適宜、作業内容に適したアタッチメントに交換することにより、複数の異なる作業を行うことが可能である。例えば、油圧ショベル1が、土管を移動させて地中に埋める作業を行う場合について説明する。まず、油圧ショベル1は、グラップルを用いて土管を掴んで所定の場所に移動させる。次に、油圧ショベル1は、アタッチメントをグラップルからバケット33に交換する。そして、油圧ショベル1は、交換されたバケット33を用いて土を掘削して土管の上に放土する。
【0024】
ブームシリンダ31Aには、ボトム側にかかる圧力を検出する圧力センサ50(
図1では不図示)が設けられている。圧力センサ50は、アーム部材を駆動する油圧シリンダにかかる圧力を検出するセンサに相当する。圧力センサ50で検出された圧力値(ボトム圧)は、アーム32の先端部にアタッチメントが取り付けられているか否かの判定に用いられる。
【0025】
なお、アーム32の先端部にアタッチメントが取り付けられている状態で油圧ショベル1が作業を行っているときは、アーム32とアタッチメントとは、ATTロック装置34によりロックされた状態となっている。したがって、アーム32からアタッチメントを取り外す際には、このATTロック装置34を解除状態にする必要がある。
【0026】
作業装置13の各部(ブーム31、アーム32、およびバケット33)にはそれぞれ、各部の加速度および角速度を検出するIMU(Inertial Measurement Unit;慣性計測装置)51が設けられている。各IMU51で検出された加速度および角速度は、後述するコントローラ6に送信されて作業装置13の姿勢の演算に用いられる。したがって、作業装置13に設けられた各IMU51は、作業装置13の姿勢を検出するための姿勢センサに相当する。
【0027】
同様にして、上部旋回体12(
図1では旋回フレーム21)には、上部旋回体12の加速度および角速度を検出するIMU51が設けられている。このIMU51で検出された加速度および角速度は、コントローラ6に送信されて上部旋回体12(機体)の姿勢の演算に用いられる。したがって、上部旋回体12に設けられたIMU51は、上部旋回体12(機体)の姿勢を検出するための姿勢センサに相当する。
【0028】
また、上部旋回体12には、地球上空に位置する複数の測位衛星から発信された信号(電波)を受信するための一対のGNSS(Global Navigation Satellite System;全地球航法衛星システム)アンテナ52(
図1では一方のみを示す)が設けられている。ここで、GNSSとは、複数の衛星から発信された信号を受信して地球上(グローバル座標系)の自己位置を検知する衛星測位システムをいう。
【0029】
各GNSSアンテナ52で受信された信号は、コントローラ6に送信されて各GNSSアンテナ52の位置の演算に用いられる。したがって、各GNSSアンテナ52は、複数の測位衛星から発信された信号を受信して地球上(グローバル座標系)における自己位置を検出する衛星受信機に相当する。
【0030】
なお、この衛星測位の方法には様々な種類が存在し、例えば、作業現場に設置したGNSSアンテナ52を含む基準局から補正情報を受信し、より高精度に自己位置を検出することが可能なRTK-GNSS(Real Time Kinematic-GNSS)がある。このRTK-GNSSの場合には、油圧ショベル1は、基準局からの補正情報を受信するための受信機を備える必要があるが、より精度良くGNSSアンテナ52の自己位置を測定することができる。
【0031】
ここで、GNSSアンテナ52は、上部旋回体12に一対設けられていることから、上部旋回体12の方位(ブーム31、アーム32、およびバケット33がそれぞれどの方向を向いているか)についても検知することが可能である。
【0032】
また、各GNSSアンテナ52が上部旋回体12のどの位置に配置されているかという情報が既知である場合には、各GNSSアンテナ52で受信した信号に基づいた各GNSSアンテナ52の位置から逆算することにより、油圧ショベル1(機体および作業装置13)の地球上の位置を求めることも可能である。
【0033】
油圧ショベル1の姿勢情報および位置情報は、キャブ22内に設けられたモニタ220(
図1では不図示)などに表示される。油圧ショベル1の姿勢情報には、油圧ショベル1の側面図および正面図に係る情報、油圧ショベル1を構成する各部の角度(姿勢)情報、ならびに、油圧ショベル1の前後左右の傾き情報などが含まれる。
【0034】
モニタ220には、予め作成されて取り込まれた設計面や簡易的に作成された施工目標面、および、バケット33の爪先の先端と設計面や施工目標面との距離などの情報についても、数値やインジケータ、図などによって表示される。油圧ショベル1を操作するオペレータは、モニタ220に表示されたこれらの情報を基に施工を行うことで、例えば、目印として使用する丁張や水糸などを施工時に設置することなく施工を進めることができる。
【0035】
[コントローラ6の構成]
次に、コントローラ6の構成について、
図2を参照して説明する。
【0036】
図2は、コントローラ6が有する機能を示す機能ブロック図である。
【0037】
コントローラ6は、CPU、RAM、ROM、HDD、入力I/F、および出力I/Fがバスを介して互いに接続されて構成される。そして、ATTロック装置34といった各種の装置、ならびに、圧力センサ50、IMU51、およびGNSSアンテナ52といった各種のセンサが入力I/Fに接続され、モニタ220などが出力I/Fに接続されている。
【0038】
このようなハードウェア構成において、ROMやHDD若しくは光学ディスクなどの記録媒体に格納された制御プログラム(ソフトウェア)をCPUが読み出してRAM上に展開し、展開された制御プログラムを実行することにより、制御プログラムとハードウェアとが協働して、コントローラ6の機能を実現する。
【0039】
なお、本実施形態では、コントローラ6の構成をソフトウェアとハードウェアとの組み合わせにより説明しているが、これに限らず、油圧ショベル1の側で実行される制御プログラムの機能を実現する集積回路を用いて構成してもよい。
【0040】
コントローラ6は、データ取得部60と、第1演算部61と、第2演算部62と、第3演算部63と、ATT着脱判定部64と、ATT情報記憶部65と、ATT取付位置記憶部66と、信号出力部67と、を含む。
【0041】
データ取得部60は、各IMU51で検出された加速度および角速度に係るデータと、各GNSSアンテナ52で受信された測位衛星からの信号と、圧力センサ50で検出されたボトム圧Pに係るデータと、ATTロック装置34から出力された状態信号と、を取得する。
【0042】
第1演算部61は、データ取得部60で取得された測位衛星からの信号と、予め記憶されている一対のGNSSアンテナ52の上部旋回体12における搭載位置情報と、に基づいて、油圧ショベル1の機体の地球上の位置を演算する。
【0043】
第2演算部62は、データ取得部60で取得された加速度および角速度と、予め記憶されている作業装置13の各部の寸法と、に基づいて、上部旋回体12の前後左右の傾斜姿勢、ブーム31の回動姿勢、アーム32の回動姿勢、およびアタッチメントの回動姿勢を含む油圧ショベル1の姿勢を演算する。
【0044】
第3演算部63は、第1演算部61で演算された油圧ショベル1の機体の地球上の位置と、第2演算部62で演算された油圧ショベル1の姿勢と、に基づいて、作業装置13を含む油圧ショベル1全体の地球上の位置および姿勢を演算する。
【0045】
この「作業装置13を含む油圧ショベル1全体の地球上の位置および姿勢」には、油圧ショベル1全体の地球上の位置(絶対座標)と、油圧ショベル1が向いている方向と、油圧ショベル1全体の姿勢と、ブーム31の先端部、アーム32の先端部、およびアタッチメントの先端部などの地球上の位置(絶対座標)と、が含まれる。
【0046】
ATT着脱判定部64は、データ取得部60で取得されたブームシリンダ31Aのボトム圧Pと、ATTロック装置34の状態信号と、に基づいて、アタッチメントがアーム32から取り外されたか否か(アタッチメントがアーム32に取り付けられたか否か)を判定する。
【0047】
ATT情報記憶部65には、アタッチメントの名称と、第2演算部62での演算に必要な作業装置13の各部の寸法と、を含むアタッチメント情報(ATT情報)が記憶されている。ATT情報記憶部65に記憶されているアタッチメント情報は、適宜、第2演算部62およびATT取付位置記憶部66のそれぞれに出力される。
【0048】
ATT取付位置記憶部66は、ATT着脱判定部64にてアタッチメントがアーム32から取り外されたと判定されたときに、ATT情報記憶部65から出力された取り外されたアタッチメントの情報および第3演算部63で演算されたアーム32の先端部の位置に係るデータ(ATT取り付け位置)を取得し、これら両情報を関係付けて記憶する。
【0049】
信号出力部67は、第3演算部63で演算された作業装置13を含む油圧ショベル1全体の地球上の位置および姿勢に係るデータ、および、ATT取付位置記憶部66に記憶されているアタッチメント情報をモニタ220に対して出力する。
【0050】
本実施形態では、信号出力部67は、ATT着脱判定部64にてアタッチメントがアーム32から取り付けられたと判定されときに第3演算部63で演算されたATT取り付け位置に対し、アタッチメント情報が関係付けされていなかった場合には、新規にアタッチメント情報を設定するためのATT設定情報をモニタ220に対して出力する。
【0051】
図3は、モニタ220におけるアタッチメント設定情報の表示例を示す図である。モニタ220は、信号出力部67から出力されたATT設定情報を取得すると、例えば、「未設定のアタッチメントです。アタッチメント設定を実施して下さい。」との表示を行い、オペレータにアタッチメントの設定を促す。オペレータは、モニタ220に表示された「アタッチメント設定」のボタンを押して、アタッチメント情報を入力する。
【0052】
また、本実施形態では、信号出力部67は、ATT着脱判定部64にてアタッチメントがアーム32から取り付けられたと判定され、第3演算部63で演算されたATT取り付け位置に関係付けられたアタッチメント情報が選択された場合には、選択されたアタッチメント情報の正誤を確認するためのATT確認情報をモニタ220に対して出力する。
【0053】
図4は、モニタ220におけるアタッチメント確認情報の表示例を示す図である。モニタ220は、信号出力部67から出力されたATT確認情報を取得すると、例えば、「取り付けられたアタッチメントは[バケットX]と判定されました。設定してよろしいですか。」との表示を行い、オペレータに正しいアタッチメントが選択されているか否かの確認を促す。オペレータは、モニタ220に表示された「はい」または「いいえ」のボタンを押して、選択されたアタッチメントの正誤を回答する。
【0054】
そして、コントローラ6にて選択されたアタッチメント情報が誤っており、オペレータが「いいえ」のボタンを押した場合には、信号出力部67は、モニタ220から出力された誤り(「いいえ」)との情報に基づいて、ATT情報記憶部65に記憶されているその他のアタッチメント情報(コントローラ6にて選択されたアタッチメント情報、すなわちバケットXの情報とは別のアタッチメント情報)をATT候補情報としてモニタ220に出力する。
【0055】
モニタ220は、信号出力部67から出力されたATT候補情報を取得すると、「バケットX」以外のアタッチメント情報を表示し、オペレータに正しいアタッチメント情報を選択するように促す。オペレータは、モニタ220に表示された「バケットX」以外のアタッチメント情報の中から、実際にアーム32に取り付けられているアタッチメントの情報を選択する。
【0056】
このように、本実施形態では、モニタ220は、信号出力部67から出力された情報を表示するだけでなく、オペレータによって入力された情報をコントローラ6に出力することが可能な入出力装置に相当する。
【0057】
[コントローラ6における処理の流れ]
次に、コントローラ6で実行される処理の流れについて、
図5および
図6を参照して説明する。
【0058】
図5は、アタッチメントの取り外し時におけるコントローラ6で実行される処理の流れを示すフローチャートである。
図6は、アタッチメントの取り付け時におけるコントローラ6で実行される処理の流れを示すフローチャートである。
【0059】
図5に示すように、アタッチメントがアーム32から取り外されるときには、まず、ATT着脱判定部64が、データ取得部60にてATTロック装置34から出力された解除信号が取得されたか否か、すなわちATTロック装置34のロックが解除されたか否かを判定する(ステップS601)。
【0060】
ステップS601においてATTロック装置34のロックが解除されたと判定された場合には(ステップS601/YES)、続いて、データ取得部60は、圧力センサ50で検出されたブームシリンダ31Aのボトム圧Pを取得する(ステップS602)。
【0061】
他方、ステップS601においてATTロック装置34のロックが解除されていない、すなわちATTロック装置34がロック状態であると判定された場合には(ステップS601/NO)、ATTロック装置34のロックが解除されるまでコントローラ6は待機状態となり、次のステップに進まない。
【0062】
次に、ATT着脱判定部64は、ステップS602において取得されたボトム圧Pに基づいて、アタッチメントがアーム32から取り外されたか否かを判定する(ステップS603)。具体的には、ATT着脱判定部64は、ステップS602において取得されたボトム圧Pが所定の圧力閾値Pth以下であるか否かを判定する。この「所定の圧力閾値Pth」とは、作業装置13がアタッチメントを備えていないときのブームシリンダ31Aのボトム側にかかる圧力に相当する値である。
【0063】
ステップS603においてアタッチメントがアーム32から取り外された(P≦Pth)と判定された場合には(ステップS603/YES)、第3演算部63は、データ取得部60にて取得された各IMU51の検出データおよび各GNSSアンテナ52の受信信号に基づいて、ATT取り付け位置を演算する(ステップS604)。
【0064】
他方、ステップS603においてアタッチメントがアーム32から取り外されていない(P>Pth)と判定された場合には(ステップS603/NO)、ステップS602に戻り、データ取得部60にて取得されるボトム圧Pが所定の圧力閾値Pth以下になるまで(P≦Pth)コントローラ6は待機状態となり、次のステップに進まない。
【0065】
そして、コントローラ6は、ステップS604において演算されたATT取り付け位置をATT情報記憶部65に記憶されている設定済みのATT情報に関係付けた上でATT取付位置記憶部66に記憶し、処理を終了する。
【0066】
図6に示すように、アタッチメントがアーム32に取り付けられるときには、まず、データ取得部60が、圧力センサ50で検出されたブームシリンダ31Aのボトム圧Pを取得する(ステップS611)。
【0067】
続いて、ATT着脱判定部64は、ステップS611において取得されたボトム圧Pに基づいて、アタッチメントがアーム32に取り付けられたか否かを判定する(ステップS612)。具体的には、ATT着脱判定部64は、ステップS611において取得されたボトム圧Pが所定の圧力閾値Pthよりも大きいか否かを判定する。
【0068】
ステップS612においてアタッチメントがアーム32に取り付けられた(P>Pth)と判定された場合には(ステップS612/YES)、第3演算部63は、データ取得部60にて取得された各IMU51の検出データおよび各GNSSアンテナ52の受信信号に基づいて、ATT取り付け位置を演算する(ステップS613)。
【0069】
他方、ステップS612においてアタッチメントがアーム32に取り付けられていない(P≦Pth)と判定された場合には(ステップS612/NO)、ステップS611に戻り、データ取得部60にて取得されるボトム圧Pが所定の圧力閾値Pthより大きくなるまで(P>Pth)コントローラ6は待機状態となり、次のステップに進まない。
【0070】
次に、コントローラ6は、ステップS613で演算されたATT取り付け位置にATT情報が関係付けられているか否か、すなわちステップS613で演算されたATT取り付け位置がATT情報に関係付けられてATT取付位置記憶部66に記憶されているか否かを判定する(ステップS614)。
【0071】
ステップS614においてATT取り付け位置にATT情報が関係付けられていると判定された場合(ステップS614/YES)、信号出力部67は、ATT確認情報をモニタ220に対して出力する(ステップS615)。
【0072】
続いて、データ取得部60が、ATT情報が正しいとの情報をモニタ220から取得すると(ステップS616/YES)、コントローラ6は、当該ATT情報をアーム32に取り付けられているアタッチメントの情報として設定し(ステップS617)、処理を終了する。
【0073】
このように、コントローラ6は、アタッチメントがアーム32に取り付けられると、各IMU51の検出データおよび各GNSSアンテナ52の受信信号に基づいて、アタッチメント取り付け位置に関係付けられたアタッチメント情報を選択し、選択したアタッチメント情報に基づいて、アーム32に取り付けられているアタッチメントを識別する。
【0074】
他方、データ取得部60が、ATT情報が誤っているとの情報をモニタ220から取得した場合には(ステップS616/NO)、信号出力部67は、ATT候補情報をモニタ220に対して出力する(ステップS618)。
【0075】
そして、データ取得部60が、ATT候補情報の中から選択された一のATT情報をモニタ220から取得すると、コントローラ6は、当該一のATT情報をアーム32に取り付けられているアタッチメントの情報として設定し(ステップS617)、処理を終了する。
【0076】
また、ステップS614においてATT取り付け位置にATT情報が関係付けられていないと判定された場合には(ステップS614/NO)、信号出力部67は、ATT設定情報をモニタ220に対して出力する(ステップS619)。
【0077】
そして、データ取得部60が、新規に設定されたATT情報をモニタ220から取得すると、コントローラ6は、当該新規のATT情報をアーム32に取り付けられているアタッチメントの情報として設定し(ステップS617)、処理を終了する。
【0078】
以上のように、アタッチメントがアーム32から取り外されたときのアーム32の先端部の位置に係るデータ(ATT取り付け位置)をアタッチメント情報に関係付けてコントローラ6に記憶しておくことで、アタッチメントが交換された際におけるアタッチメントの識別を、例えば、専用の通信装置などを用いずに、コントローラ6が、アーム32の先端部の位置に係るデータ(ATT取り付け位置)に基づいて容易かつ精度良く行うことができる。
【0079】
また、本実施形態では、コントローラ6は、ATT取り付け位置に関係付けられたアタッチメント情報を選択した場合に、選択したアタッチメント情報の正誤を確認するためのATT確認情報情報をモニタ220に表示させ、オペレータに確認を促した上でアタッチメント情報を設定するため、例えば、測位衛星の測定誤差などによるアタッチメント情報の誤設定を回避することができる。
【0080】
また、本実施形態では、コントローラ6は、アタッチメントがアーム32から取り外されたか否かについて、ATTロック装置34の状態およびブームシリンダ31Aのボトム圧Pの大きさの両方に基づいて判定するため、ATTロック装置34が解除されているがアタッチメントがアーム32から取り外されていないような状況に対しても誤判定を回避することができ、アーム32に対するアタッチメントの着脱をより精度よく判定することが可能である。
【0081】
以上、本発明の実施形態について説明した。なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、本実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、本実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。またさらに、本実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0082】
例えば、上記実施形態では、作業機械の一態様として油圧ショベル1を例に挙げて説明したが、これに限られず、交換可能なアタッチメントが取り付けられた作業装置を備えた作業機械であれば特に制限はない。
【0083】
また、上記実施形態では、アタッチメントの取り付け位置(ATT取り付け位置)としてアーム32の先端部の位置情報を挙げたが、これに限られず、例えば、アタッチメントがクイックヒッチなどの着脱装置を介してアーム32の先端部に着脱される場合には、着脱装置の先端部の位置情報(絶対座標)がATT取り付け位置となる。
【0084】
また、上記実施形態では、コントローラ6は、アタッチメントがアーム32から取り外されたか否かについて、ATTロック装置34の状態およびブームシリンダ31Aのボトム圧Pの大きさの両方に基づいて判定していたが、これに限られず、少なくともATTロック装置34の状態またはブームシリンダ31Aのボトム圧Pの大きさに基づいて判定されればよい。
【0085】
また、上記実施形態では、作業装置13の姿勢および機体の姿勢を検出する姿勢センサとしてIMU51を例に挙げて説明したが、これに限られず、傾斜センサやストロークセンサ、ポテンショメータなどを用いてもよい。
【0086】
また、アタッチメント情報には、エンジン41の回転速度の増減、油圧ポンプ42の流量の増減、およびコントロールバルブの切り換え状態に係る情報が含まれていてもよい。この場合には、コントローラ6は、アタッチメント交換時におけるアタッチメント情報の設定をより簡易かつ高精度に行うことができる。
【0087】
またさらに、アタッチメント情報には、アタッチメントの重量に係る情報が含まれていてもよい。この場合、コントローラ6が、アタッチメントの重量とATT取り付け位置とに基づいてアタッチメントを識別することにより、高精度にアタッチメントを識別することができる。
【符号の説明】
【0088】
1:油圧ショベル(作業機械)
6:コントローラ
11:下部走行体(機体)
12:上部旋回体(機体)
13:作業装置
31:ブーム(アーム部材)
32:アーム(アーム部材)
33:バケット(アタッチメント)
50:圧力センサ
51:IMU(姿勢センサ)
52:GNSSアンテナ(衛星受信機)
220:モニタ(入出力装置)