IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アイコム株式会社の特許一覧

特開2024-141556高周波信号切り替え回路及びそれを備えた切り替え装置
<>
  • 特開-高周波信号切り替え回路及びそれを備えた切り替え装置 図1
  • 特開-高周波信号切り替え回路及びそれを備えた切り替え装置 図2
  • 特開-高周波信号切り替え回路及びそれを備えた切り替え装置 図3
  • 特開-高周波信号切り替え回路及びそれを備えた切り替え装置 図4
  • 特開-高周波信号切り替え回路及びそれを備えた切り替え装置 図5
  • 特開-高周波信号切り替え回路及びそれを備えた切り替え装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141556
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】高周波信号切り替え回路及びそれを備えた切り替え装置
(51)【国際特許分類】
   H01P 1/12 20060101AFI20241003BHJP
   H01P 5/08 20060101ALI20241003BHJP
   H01P 5/04 20060101ALI20241003BHJP
   H04B 1/40 20150101ALI20241003BHJP
【FI】
H01P1/12
H01P5/08
H01P5/04 603E
H04B1/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053282
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000100746
【氏名又は名称】アイコム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084375
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 康夫
(74)【代理人】
【識別番号】100142077
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 真之
(72)【発明者】
【氏名】難波 正憲
【テーマコード(参考)】
5K011
【Fターム(参考)】
5K011DA02
5K011DA21
5K011KA05
5K011KA18
(57)【要約】
【課題】プリント基板上でパターンが交差しない構成を実現し、信号ラインでのアイソレーションを格段に向上することが可能な高周波信号切り替え回路及びそれを備えた切り替え装置を提供する。
【解決手段】プリント基板上に配置された高周波信号切り替え回路100において、第1の信号が入力される端子1、第2の信号が入力される端子2、第1または第2の信号が出力される端子3、及び、第2または第1の信号が出力される端子4と、4個の端子にそれぞれ対応する第1リレーRL1~第4リレーRL4と、前記4個のリレー間を繋ぐ、プリント基板上にて交差しないパターンの信号ラインP1~P4と、を備え、4個のリレーの動作に応じて、端子1と端子3、端子2と端子4がそれぞれ接続される第1の接続状態と、端子1と端子4、端子2と端子3がそれぞれ接続される第2の接続状態とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント基板上に配置され、複数の高周波信号が入力される端子と複数の高周波信号が出力される端子との間の接続を相互に切り替える高周波信号切り替え回路において、
第1の信号が入力される第1端子、第2の信号が入力される第2端子、第1または第2の信号が出力される第3端子、及び、第2または第1の信号が出力される第4端子と、
前記4個の端子にそれぞれ対応する第1リレー、第2リレー、第3リレー、及び、第4リレーと、
前記4個のリレー間を繋ぐ、前記プリント基板上にて交差しないパターンとされた信号ラインと、を備え、
前記4個のリレーの動作に応じて、前記第1端子と前記第3端子、前記第2端子と前記第4端子が前記それぞれの信号ラインを通して接続される第1の接続状態と、前記第1端子と前記第4端子、前記第2端子と前記第3端子が前記それぞれの信号ラインを通して接続される第2の接続状態とを有することを特徴とする高周波信号切り替え回路。
【請求項2】
前記第1端子と前記第2端子は、プリント基板上に平面視で上下方向に離間して配置され、前記第3端子と前記第4端子は、前記第1端子と前記第2端子の配置方向に直交する左右方向に離間して配置され、
前記4個の端子は、前記4個のリレーの各コモン端子にそれぞれ接続され、
前記信号ラインは、前記4個のリレーのそれぞれ互いに隣り合う切り替え端子間を繋いでいることを特徴とする請求項1に記載の高周波信号切り替え回路。
【請求項3】
前記第1リレー及び第2リレーがオン、前記第3リレー及び第4リレーがオフのとき、前記第1の接続状態となり、
前記第1リレー及び第2リレーがオフ、前記第3リレー及び第4リレーがオンのとき、前記第2の接続状態となることを特徴とする請求項2に記載の高周波信号切り替え回路。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の高周波信号切り替え回路と、
複数の互いに異なる送受信経路と、を備え、
前記第1端子及び前記第2端子は、複数の無線機の高周波信号出力を伝搬する同軸ケーブルをそれぞれ接続可能とされ、
前記第3端子及び前記第4端子は、前記複数の送受信経路の各々に接続されていることを特徴とする切り替え装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の高周波信号を切り替え出力する回路及びそれを備えた切り替え装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波信号切り替え回路は、複数の高周波信号が入力される入力端子と、それら入力信号を出力する出力端子との間の接続を相互に切り替えるものである。
【0003】
従来の2つのリレーS1,S2を用いた切り替え回路を図5に示す。この切り替え回路は、2つの入力端子Port1、Port2と2つの出力端子Port3、Port4との接続を相互に切り替える回路である。この回路がプリント基板上に設けられると、プリント基板上で信号ライン(パターン)は交差部Eを持つので、ラインに高周波信号が流れると、交差部Eにおいてそれぞれのラインを通る信号の結合が生じてアイソレーション(信号の漏れ度合い)が悪化する。
【0004】
また、4つのリレーS1、S2、S3、S4を用いた切り替え回路を図6に示す。この場合においても、プリント基板上でラインは交差部Eを持つので、上記と同様の問題がある。
【0005】
この種の高周波信号切り替え回路において、上記のような、信号ラインが交差することによる問題を解消するために、交差する2つのライン間に接地層を配置することが知られている(特許文献1参照)。また、2つのラインの交差部と切り替え回路との間のラインに減衰器を設けることも知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6-204715号公報
【特許文献2】特開2000-341164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した、いずれの高周波信号切り替え回路においても、プリント基板上で信号ラインの交差部を持つことから、アイソレーション低減の効果を十分に達成することは難しい。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みて、プリント基板上で信号ラインのパターンが交差しない構成を実現し、信号ラインでのアイソレーションを格段に向上することが可能な高周波信号切り替え回路及びそれを備えた切り替え装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、プリント基板上に配置され、複数の高周波信号が入力される端子と複数の高周波信号が出力される端子との間の接続を相互に切り替える高周波信号切り替え回路において、
第1の信号が入力される第1端子、第2の信号が入力される第2端子、第1または第2の信号が出力される第3端子、及び、第2または第1の信号が出力される第4端子と、
前記4個の端子にそれぞれ対応する第1リレー、第2リレー、第3リレー、及び、第4リレーと、
前記4個のリレー間を繋ぐ、前記プリント基板上にて交差しないパターンとされた信号ラインと、を備え、
前記4個のリレーの動作に応じて、前記第1端子と前記第3端子、前記第2端子と前記第4端子が前記それぞれの信号ラインを通して接続される第1の接続状態と、前記第1端子と前記第4端子、前記第2端子と前記第3端子が前記それぞれの信号ラインを通して接続される第2の接続状態とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、プリント基板上で信号ラインのパターンが交差しない構成を実現でき、信号ラインでのアイソレーションを格段に向上させることができ、また、非導通ポート間に2つのリレーが入ることにより、リレー内でのアイソレーションも向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る高周波信号切り替え回路の回路図。
図2】(a)は上記高周波信号切り替え回路にリレー制御信号線を加えた回路図、(b)はリレー制御信号と切り替え回路の態様を示す図。
図3】上記高周波信号切り替え回路に同軸ケーブル等を装備した形態の斜視図。
図4】上記高周波信号切り替え回路を備えたリニアアンプの構成図。
図5】従来の高周波信号切り替え回路の回路図。
図6】従来の他の高周波信号切り替え回路の回路図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係る高周波信号切り替え回路について図面を参照して説明する。図1は高周波信号切り替え回路100を示す。高周波信号切り替え回路100は、プリント基板上に配置され、複数の高周波信号が入力される端子と複数の高周波信号が出力される端子との間の接続を相互に切り替えるものである。
【0013】
図1において、高周波信号切り替え回路100は、プリント基板上に配置された少なくとも2個の信号入力端となる端子1,2(第1端子、第2端子)と、少なくとも2個の信号出力端となる端子3,4(第3端子、第4端子)と、これら各端子1~4に対応して設けられたリレーRL1~RL4(第1リレー~第4リレー)と、これら各リレー間を繋ぎ、プリント基板上にて交差しないパターンとされた信号ラインP1~P4と、を備えている。
【0014】
ここに、4個の端子1~4は、プリント基板上で矩形の頂点位置に分散配置され、端子1と端子2は、平面視で上下方向に配置され、端子3と端子4は、端子1と端子2の配置方向に直交する左右方向に配置されることが望ましい。各リレーRL1~RL4は、各端子1~4に隣接して各端子1~4の位置より矩形内方に配置されることが望ましい。信号ラインP1~P4の各々は、相互に隣り合うリレーRL1~RL4間を繋ぐように設けられればよい。
【0015】
そして、各端子1~4の接続状態は、4個のリレーRL1~RL4へのリレー制御信号によるリレー接点の切り替え状態に応じて切り替わる。第1の接続状態として、端子1が信号ラインP4を通して端子3と接続され、端子2が信号ラインP2を通して端子4と接続される。第2の接続状態として、端子1が信号ラインP1を通して端子4と接続され、端子2が信号ラインP3を通して端子3と接続される。
【0016】
その結果、端子1に第1の信号が入力され、端子2に第2の信号が入力されると、第1の接続状態では、端子3には第1の信号が出力され、端子4には第2の信号が出力される。第2の接続状態では、端子3には第2の信号が出力され、端子4には第1の信号が出力される。こうして、信号ラインP1~P4が交差することなく、出力側の信号を切り替えることができる。
【0017】
より詳細には、各端子1~4は、各リレーRL1~RL4のコモン端子cにそれぞれ接続される。信号ラインP1~P4の各々は、互いに隣り合うリレーRL1~RL4の切り替え端子b,a間を繋いでいる。端子bは、リレーコイル通電により開く常閉接点、端子aは、リレーコイル通電により閉じる常開接点である。
【0018】
このような高周波信号切り替え回路100によれば、プリント基板上で信号ラインのパターンが交差しない構成を実現でき、信号ラインでのアイソレーションを格段に向上させることができる。また、信号ラインのパターンの交差する箇所がないだけでなく、非導通ポート間に2つのリレーが入ることにより、リレー内でのアイソレーションも2つ分となり、さらにアイソレーションが向上する。
【0019】
図2(a)は高周波信号切り替え回路100にリレー制御信号線を加えたもので、(b)はリレー制御信号と切り替え回路の態様を示す。リレーRL1及びリレーRL2の各コイルには、リレー制御信号(CTRL)が反転して与えられ、リレーRL4及びリリレーRL3の各コイルには、リレー制御信号(CTRL)がそのまま与えられる。
【0020】
リレー制御信号(CTRL)がロー(L)のとき、リレーRL1及びリレーRL2に対する信号は反転し、リレーRL1及びリレーRL2はオン(ON)となり、リレーRL3及びリレーRL4はオフ(OFF)となり、それにより、端子1と端子3、端子2と端子4がそれぞれ接続された第1の接続状態となる。これは、上述の図1に示した状態である。
【0021】
リレー制御信号(CTRL)がハイ(H)のとき、リレーRL1及びリレーRL2はオフ(OFF)となり、リレーRL3及びリレーRL4はオン(ON)となり、それにより、端子1と端子4、端子2と端子3がそれぞれ接続された第2の接続状態となる。リレーの接点が図2(a)に示す状態は、いずれの端子も他の端子に接続されていない、オフ(OFF)状態である。リレーRL1~RL4は、上記構成に限られず、リレー通電方向を変えることで、いずかの回路が閉路する形態のものを用いても構わない。
【0022】
図3は、高周波信号切り替え回路100に同軸ケーブル11,12等を装備した形態を示す。高周波信号切り替え回路100は、プリント基板10に実装され、4個の端子1~4は、平面視で四角形の頂点位置に、右回りに順に、端子1、端子4、端子2、端子3が配置されている。回路の入力端となる端子1,2には、同軸ケーブル11,12がそれぞれ接続される。同軸ケーブル11,12は、プリント基板10の平面からは立体的に離れて配置され、入力Port1、入力Port2となる。
【0023】
リレーRL1~リレーRL4の各々は、プリント基板10上に端子1~端子4の各々に対応して平面視で中心寄りに配置されている。これら4個のリレーRL1~RL4間を接続するパターンP1~P4は、図では見えていないが、それらの中心側はパターンなしの空間となっている。出力端となる端子3には、四角形の頂点位置配置の端子1の外側を迂回して、出力Port3を形成するパターンP5が設けられている。端子4には、出力Port4を形成するパターンP6が設けられている。出力Port3及び出力Port4は、入力Port1及び入力Port2が設けられる側とは反対側に配置されることが望ましい。
【0024】
図4は、高周波信号切り替え回路100を備え、複数の異なる送受信経路を切り替える切り替え装置の機能を有したリニアアンプ50の構成を示す。リニアアンプ50は、高周波信号切り替え回路100と、複数の互いに異なる送受信経路51,52と、を備えている。高周波信号切り替え回路100の入力側の端子1及び端子2は、複数台の無線機101,102(エキサイター)の高周波信号出力を伝搬する同軸ケーブル11,12をそれぞれ接続可能とされている。出力側の端子3及び端子4は、複数の送受信経路51,52の各々に接続されている。
【0025】
送受信経路51,52の出力側には出力切り替え回路53と、アンテナ出力54とを備える。送受信経路51には、パワーアンプ511、LPF512、チューナ513等が介在されている。送受信経路52は、入出力をストレートに接続する。
【0026】
このように、高周波信号切り替え回路100がリニアアンプ50内において用いられ、無線機101,102が高周波信号切り替え回路100の入力端に接続されることにより、複数の高周波信号入力をリニアアンプ50内の複数の系統に対して切り替え可能となり、送信に使用する無線機101,102を切り替え運用することができる。また、リニアアンプ50の出力切り替え回路53として、上記と同等の高周波信号切り替え回路を用いれば、アンテナ出力54の切り替えも可能となる。
【0027】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限られず、種々の変形が可能である。例えば、端子1~4やリレーRL1~RL4の配置位置は、上記構成に限られず、相互に隣り合うリレーRL1~RL4を繋ぐ信号ラインP1~P4が交差することなく構成できれば、任意に設定可能である。
【符号の説明】
【0028】
100 高周波信号切り替え回路
101,102 無線機
1,2,3,4 端子(第1端子~第4端子)
RL1,RL2,RL3,RL4 リレー(第1リレー~第4リレー)
P1,P2,P3,P4 信号ライン
P5、P6 パターン
c コモン端子
b,a 切り替え端子
11,12 同軸ケーブル
50 切り替え装置の機能を有したリニアアンプ
51,52 送受信経路
53 出力切り替え回路
54 アンテナ出力
511 パワーアンプ
512 LPF
513 チューナ
図1
図2
図3
図4
図5
図6