(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141558
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】熱交換器及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
F28F 1/40 20060101AFI20241003BHJP
F28D 1/03 20060101ALI20241003BHJP
F28D 1/053 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
F28F1/40 M
F28D1/03
F28D1/053
F28F1/40 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053285
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 佑太
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 恒雄
【テーマコード(参考)】
3L103
【Fターム(参考)】
3L103BB39
3L103CC02
3L103CC22
3L103DD36
(57)【要約】
【課題】熱交換効率が向上した熱交換器及びその製造方法を提供する。
【解決手段】ラジエター1は、コア部3と、コア部3に設けられ、冷却水が流れる第1冷媒流路5と、コア部3に設けられ、空気が流れる第2冷媒流路7と、を備え、コア部3において、第1冷媒流路5を流れる冷却水と第2冷媒流路7を流れる空気とが熱交換を行う。第1冷媒流路5は、上下方向に延在する第1主流路51を備える。第2冷媒流路7は、上下方向に延在する第2主流路71を備える。コア部3において、第1主流路51と第2主流路71とは、上下方向に延在する隔壁54によって区画されている。空気は、第2主流路71を下方側から上方側へと流れる。第2主流路71には、上下方向から見て隔壁54から第2主流路71の中心に向かって延在する複数のフィン8が、上下方向に所定間隔で上下方向を軸にして螺旋状に設けられている。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア部と、
前記コア部に設けられ、第1流体が流れる第1冷媒流路と、
前記コア部に設けられ、第2流体が流れる第2冷媒流路と、を備え、
前記コア部において、前記第1冷媒流路を流れる前記第1流体と前記第2冷媒流路を流れる前記第2流体とが熱交換を行う、熱交換器であって、
前記第1冷媒流路は、第1方向に延在する第1主流路を備え、
前記第2冷媒流路は、前記第1方向に延在する第2主流路を備え、
前記コア部において、前記第1主流路と前記第2主流路とは、前記第1方向に延在する隔壁によって区画されており、
前記第2流体は、前記第2主流路を前記第1方向の一方側から他方側へと流れ、
前記第2主流路には、前記第1方向から見て前記隔壁から前記第2主流路の中心に向かって延在する複数のフィンが、前記第1方向に所定間隔で前記第1方向を軸にして螺旋状に設けられている、
熱交換器。
【請求項2】
請求項1に記載の熱交換器であって、
複数の前記フィンは、前記第1方向から見て、前記第1方向を軸として周方向に30度以上180度以下の角度間隔で螺旋状に設けられている、
熱交換器。
【請求項3】
請求項1に記載の熱交換器であって、
前記フィンは、前記隔壁と接続する基端部を有し、
前記基端部は、前記複数のフィンの螺旋方向に沿って、前記第1方向と垂直な面に対して所定角度傾斜して前記隔壁に接続している、
熱交換器。
【請求項4】
請求項3に記載の熱交換器であって、
前記第1方向で隣り合う前記フィンにおいて、前記第1方向の前記他方側に位置する前記フィンの前記第1方向の前記一方側の端部は、前記第1方向の前記一方側に位置する前記フィンの前記第1方向の前記他方側の端部よりも、前記第1方向の前記他方側に位置するように設けられている、
熱交換器。
【請求項5】
請求項1に記載の熱交換器であって、
前記フィンは、前記隔壁と接続する基端部を有し、
前記基端部から、前記第1方向と垂直な面に対して、前記第1方向の前記他方側に傾斜して、前記第1方向から見た前記第2主流路の中心に向かって延在している、
熱交換器。
【請求項6】
請求項1に記載の熱交換器であって、
前記第2主流路は、前記第1方向から見て、前記フィンが配置されない貫通領域を有する、
熱交換器。
【請求項7】
請求項1に記載の熱交換器の製造方法であって、
材料を積層造形することによって、前記第1冷媒流路、及び、前記フィンが設けられた前記第2冷媒流路を備える前記コア部を一体に成形する、
熱交換器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、温度の異なる二流体の間で熱を受け渡す装置として、種々の伝熱方式を用いた熱交換器が普及している。
【0003】
近年においては、より多くの人々が手ごろで信頼でき、持続可能且つ先進的なエネルギーへのアクセスを確保できるようにするため、エネルギーの効率化に貢献する研究開発が盛んに行われている。熱交換器では、エネルギーの効率化に貢献すべく、熱交換効率の向上が求められている。
【0004】
さらに、最近では、材料を積層造形することによって成形する積層造形法に関する技術が進展し、積層造形法を用いることで、従来の切削、鍛造、打ち抜き加工などでは成形が困難な複雑な三次元形状を有する製品の製造が可能になっている。熱交換器においても、積層造形法で製造することによって、複雑な三次元形状を有する熱交換器の製造が可能となっている。そして、特許文献1には、積層造形法で製造することによって、軽量化やコスト削減だけでなく、新たな機能を有することが可能となった熱交換器が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された熱交換器では、第1流体である排ガスが流れる第1冷媒流路において、第1流体の流れ方向から見て第1冷媒流路の中心近傍を流れ続ける第1冷媒が生じてしまうため、熱交換効率に改善の余地があった。
【0007】
本発明は、熱交換効率が向上した熱交換器及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
コア部と、
前記コア部に設けられ、第1流体が流れる第1冷媒流路と、
前記コア部に設けられ、第2流体が流れる第2冷媒流路と、を備え、
前記コア部において、前記第1冷媒流路を流れる前記第1流体と前記第2冷媒流路を流れる前記第2流体とが熱交換を行う、熱交換器であって、
前記第1冷媒流路は、第1方向に延在する第1主流路を備え、
前記第2冷媒流路は、前記第1方向に延在する第2主流路を備え、
前記コア部において、前記第1主流路と前記第2主流路とは、前記第1方向に延在する隔壁によって区画されており、
前記第2流体は、前記第2主流路を前記第1方向の一方側から他方側へと流れ、
前記第2主流路には、前記第1方向から見て前記隔壁から前記第2主流路の中心に向かって延在する複数のフィンが、前記第1方向に所定間隔で前記第1方向を軸にして螺旋状に設けられている。
【0009】
また、本発明は、
上記した熱交換器の製造方法であって、
材料を積層造形することによって、前記第1冷媒流路、及び、前記フィンが設けられた前記第2冷媒流路を備える前記コア部を一体に成形する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、第2主流路に設けられた複数のフィンによって、第2主流路を流れる第2流体が撹拌されるので、第1主流路を流れる第1流体と、第2主流路を流れる第2流体との隔壁を介した熱交換効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】
図1のA-A線に沿った断面を露出させた部分斜視図である。
【
図3】
図1のB-B線に沿った断面の一部である部分断面図である。
【
図5】
図4のD領域の上下方向位置H1における断面斜視図の部分拡大図である。
【
図6】
図4のD領域の上下方向位置H2における断面斜視図の部分拡大図である。
【
図7】
図4のD領域の上下方向位置H3における断面斜視図の部分拡大図である。
【
図8】
図4のD領域の上下方向位置H1、H2、H3における断面斜視図をまとめた図である。
【
図9】
図1のラジエター1における1つの第2主流路を示した透過斜視図である。
【
図10】
図3のE-E線に沿った断面の一部である部分断面図である。
【
図11】複数のフィン8が、上下方向を軸として、周方向に45度間隔で第2主流路71に螺旋状に設けられている例における、
図1のB-B線に沿った断面の一部である部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の熱交換器の一実施形態を、添付図面に基づいて説明する。なお、図面は、符号の向きに見るものとする。熱交換器は、冷却対象である第1流体と、第1流体を冷却する第2流体とが隔壁を介して熱交換を行うための機器である。第1流体と第2流体の性状は、特に限定されず、気体同士、液体同士、気体と液体など、全ての組合せを含む。第1流体及び第2流体は、例えば、水、オイル、有機媒体、空気、ヘリウムガスである。また、熱交換器が搭載される機器は、特に限定されるものではなく、車両、汎用機器、航空機、家電製品などあらゆる製品を含む。なお、以下の実施形態では、本発明の熱交換器の一例として、車両に搭載されるラジエターを例示して説明する。即ち、以下の実施形態において、第1流体は、車両の駆動源を冷却する冷却水であり、第2流体は、空気(走行風)である。
【0013】
図1は、本発明における一実施形態のラジエター1の斜視図である。
図2は、
図1のラジエター1について、
図1のA-A線に沿った断面を露出させた部分斜視図である。
図3の(A)は、
図1のB-B線に沿った断面の一部である部分断面図である。なお、本明細書においては、説明を簡潔且つ明確にするために、
図1に示すように、前後方向、左右方向、上下方向の3方向の直交座標系を用いてラジエター1を説明する。ただし、この方向は、機器にラジエター1が搭載された状態における方向とは無関係あることに留意されたい。図中、上方をU、下方をD、左方をL、右方をR、前方をFr、後方をRrと記載する。
【0014】
ラジエター1は、コア部3と、コア部3に設けられ、冷却水が流れる第1冷媒流路5と、コア部3に設けられ、空気が流れる第2冷媒流路7と、を備えている。ラジエター1では、コア部3において、第1冷媒流路5を流れる冷却水と第2冷媒流路7を流れる空気とが後述する隔壁54を介して熱交換を行う。したがって、従来のプレート式のように平板で流体を分離するもの(伝熱フィンを追加する場合もある)や、フィンチューブ式の様に円管の廻りの平板フィンにより熱伝導を介して熱交換するもの等とは異なる。コア部3には、後面の上部に導入パイプ11が設けられ、前面の下部に排出パイプ13が設けられる。導入パイプ11及び排出パイプ13は、コア部3の第1冷媒流路5に連通する。
【0015】
冷却水は、矢印Pで示すように、コア部3に設けられた導入パイプ11を介して外部からコア部3に導入され、コア部3内の第1冷媒流路5を上方から下方に流れた後、コア部3に設けられた排出パイプ13を介して外部に排出される。一方、空気は、矢印Qで示すように、コア部3の下面からコア部3に導入され、コア部3内の第2冷媒流路7を下方から上方に流れた後、コア部3の上面から排出される。第1冷媒流路5及び第2冷媒流路7は、規則的に並んだ管状流路である。ここで、管状流路とは、円弧又は多角形による閉じた断面形状を持つ配管状の流路を示す。
【0016】
第1冷媒流路5は、
図2に示すように、上下方向に延在し、前後方向に並ぶように位置する複数の第1主流路51と、前後方向に配置された複数の第1主流路51に連通して前後方向に延在する導入チャンバ52と、前後方向に配置された複数の第1主流路51に連通して前後方向に延在する排出チャンバ53と、を備える。第1冷媒流路5は、前後方向に並べて配置された複数の第1主流路51と、この第1主流路51に連通する導入チャンバ52及び排出チャンバ53を1組とした場合、この組が左右方向に複数列設けられる。したがって、
図3の(A)に示すように、上下方向から見た断面において、第1主流路51が碁盤の目状に規則的に配置される。
【0017】
第1主流路51は、
図3の(A)に示す本実施形態では、前後方向に延びる空間と左右方向に延びる空間が十字状に交差した十字形状の流路断面を有する。なお、第1主流路51の形状は、これに限らず、正方形、長方形、ひし形、台形、円形、楕円形、星形、三角形、五角形以上の多角形、その他の幾何学模様など任意の形状をとり得る。
【0018】
導入チャンバ52は、導入パイプ11に連通し、排出チャンバ53は排出パイプ13に連通する。
【0019】
第1主流路51には、
図2に示すように、導入チャンバ52に向かって流路断面の形状が徐々に変化して隣り合う第1主流路51と直線状に接続される導入側形状変化区間55が上端部に設けられ、排出チャンバ53に向かって流路断面の形状が徐々に変化して隣り合う第1主流路51と直線状に接続される排出側形状変化区間56が下端部に設けられる。導入側形状変化区間55及び排出側形状変化区間56については後述する。
【0020】
第2冷媒流路7は、
図3の(A)に示すように、第1主流路51を区画形成する隔壁54によって囲まれることで形成される複数の第2主流路71を有する。第2主流路71は、上下方向に延在し、第1冷媒流路5の第1主流路51に囲まれ、前後方向及び左右方向に複数存在する。したがって、複数の第2主流路71は、上下方向から見た断面において、前後方向及び左右方向に碁盤の目状に規則的に配置される。すなわち、第2主流路71は、上下方向に延在し、前後方向に並ぶように位置する複数の第2主流路71を1組とした場合、この組が左右方向に複数列設けられる。
【0021】
このようにして、コア部3において、第1冷媒流路5の複数の第1主流路51と、第2冷媒流路7の複数の第2主流路71とは、隔壁54によって区画されている。
【0022】
コア部3の下端面には、前後方向及び左右方向に碁盤の目状に配列された各第2主流路71に空気を導入する導入口72が形成されている。コア部3の上端面には、前後方向及び左右方向に碁盤の目状に配列された各第2主流路71を流れ空気を排出する排出口73が形成されている。
【0023】
コア部3の下方から導入口72に導入された空気は、左右方向に複数配列された排出チャンバ53の間の空間を通って、下方から第2冷媒流路7の第2主流路71の下端部に導入される。
【0024】
第2冷媒流路7の第2主流路71に導入された空気は、下方から上方へと向かって流れ、第2主流路71の上端部から左右方向に複数配列された導入チャンバ52の間の空間を通って、排出口73からコア部3の上方に排出される。
【0025】
以下、
図4~
図7を参照しながら、第1冷媒流路5の第1主流路51の上端部に設けられる導入側形状変化区間55について詳細に説明する。第1冷媒流路5の第1主流路51の下端部に設けられる排出側形状変化区間56は、導入側形状変化区間55と同様の構造を有するため、詳細な説明を省略する。
【0026】
第1主流路51の導入側形状変化区間55は、導入チャンバ52に向かって流路断面の形状が徐々に変化して隣り合う第1主流路51と直線状に接続される。
【0027】
図4は、
図2のD領域をC方向から見た図である。D領域は、第1冷媒流路5及び第2冷媒流路7の上端部に相当する領域である。また、
図5は、
図4の上下方向位置H1における断面斜視図の部分拡大図を示している。同様に、
図6は、
図4の上下方向位置H2における断面斜視図の部分拡大図を示しており、
図7は、
図4の上下方向位置H3における断面斜視図の部分拡大図を示しており、
図8は、
図4のD領域の上下方向位置H1、H2、H3における断面斜視図をまとめた図である。なお、
図5~8においては、後述するフィン8を省略している。
【0028】
図5に示した部分拡大
図H1は、3つの拡大図のうち、最も下方の上下方向位置H1における拡大図を示しており、導入側形状変化区間55の始点である。上下方向位置H1においては、第1冷媒流路5は、
図3の(A)で示した形状を呈している。即ち、第1冷媒流路5の第1主流路51は、十字形状の流路断面を有している。前後方向及び左右方向で隣り合う第1主流路51とは独立している。
【0029】
図6に示した部分拡大
図H2は、3つの拡大図のうち、中間位置の上下方向位置H2における拡大図を示しており、導入側形状変化区間55の中間部である。上下方向位置H2における流路断面は、上下方向位置H1における十字形状の流路断面(
図5)から、導入チャンバ52(上方)に向かうに従って、前後方向に延在する流路の長さが長くなるとともに幅が広がり、左右方向に延在する流路の長さが短くなるとともに幅が狭くなっている。そして、前後方向で隣り合う第1主流路51との間に次第に連通路Sが設けられる。上下方向位置H2における流路断面は、さらに導入チャンバ52(上方)に向かうに従って、前後方向に延在する流路の長さが長くなるとともに幅が広がり、左右方向に延在する流路の長さが短くなるとともに幅が狭くなる。
【0030】
ここで、第1主流路51の流路断面の断面積は、導入側形状変化区間55において同一である。即ち、導入側形状変化区間55において流路断面の形状は徐々に変化するものの流路断面の断面積は変化しない。そのため、冷却水をさらにスムーズに流すことができ、圧力損失を低減できる。
【0031】
図7に示した部分拡大
図H3は、3つの拡大図のうち、最も上方の上下方向位置H3における拡大図を示しており、導入側形状変化区間55の終点である。上下方向位置H3における流路断面は、隣り合う第1主流路51と接続され、前後方向に一直線となる。即ち、連通路Sが前後方向に延在する流路と区別不能になるとともに、左右方向に延在する流路が消失する。
図7に示す一直線状の流路は、さらに上方に位置する導入チャンバ52と連通する。
【0032】
このように、導入側形状変化区間55により第1主流路51の流路断面が徐々に変化して隣り合う第1主流路51と直線状に接続され、導入チャンバ52と連通することで、左右方向で隣り合う導入チャンバ52の間には、前後方向に並ぶように位置する複数の第2主流路71と連通する左右方向所定幅の空間が前後方向に延在する。そして、第2冷媒流路7の第2主流路71から排出された空気は、この空間を通って排出口73から外部に排出されるので、第2冷媒流路7の第2主流路71から排出された空気の流れを阻害しない。したがって、排出口73から第2主流路71への空気の流路空間に導入チャンバ52が配置されていても、空気の流れが妨げられることがない。
【0033】
詳しい説明は省略するが、第1主流路51の排出側形状変化区間56も同様に、排出チャンバ53に向かって流路断面の形状が徐々に変化して隣り合う第1主流路51と直線状に接続される。このように、排出側形状変化区間56により第1主流路51の流路断面が徐々に変化して隣り合う第1主流路51と直線状に接続され、排出チャンバ53と連通することで、左右方向で隣り合う排出チャンバ53の間には、前後方向に並ぶように位置する複数の第2主流路71と連通する左右方向所定幅の空間が前後方向に延在する。そして、導入口72から導入された空気は、この空間を通って第2冷媒流路7の第2主流路71に導入されるので、導入口72から導入された空気の流れを阻害しない。したがって、導入口72から第2主流路71への空気の流路空間に排出チャンバ53が配置されていても、空気の流れが妨げられることがない。
【0034】
また、導入側形状変化区間55及び排出側形状変化区間56で、流路断面の断面積を同一に維持したまま形状のみを変化させることで、コア部3内を流れる冷却水の圧力損失が上昇することも回避される。
【0035】
図3及び
図9に示すように、各第2主流路71には、上下方向から見て隔壁54から第2主流路71の中心に向かって延在する複数のフィン8が、上下方向に所定間隔で上下方向を軸にして螺旋状に設けられている。
【0036】
第2主流路71に設けられた複数のフィン8によって、第2主流路71を流れる空気の流れに、流れ方向に沿って竜巻状(トルネード状)の渦流が発生する。これにより、第2主流路71を流れる空気が撹拌されるので、第1主流路51を流れる冷却水と、第2主流路71を流れる空気との隔壁54を介した熱交換効率が向上する。
【0037】
複数のフィン8は、上下方向を軸として、周方向に30度以上180度以下の角度間隔で螺旋状に設けられている。複数のフィン8の周方向の角度間隔は、第2主流路71を流れる空気の圧力損失と撹拌度合いとのバランスから、適宜設定されてよい。
図3及び
図9では、複数のフィン8が、上下方向を軸として、周方向に90度間隔で螺旋状に設けられているものを一例として示している。
【0038】
これにより、第2主流路71を流れる空気の流れが、流れ方向に沿った竜巻状(トルネード状)の渦流によりなりやすくなり、第1主流路51を流れる冷却水と、第2主流路71を流れる空気との隔壁54を介した熱交換効率がより向上する。
【0039】
各フィン8は、基端部81で隔壁54に接続する。各フィン8の基端部81は、螺旋方向に沿って、上下方向と垂直な面に対して所定角度傾斜して隔壁54に接続している。
【0040】
これにより、空気が第2主流路71を流れる際に生じる圧力損失の上昇を抑制しつつ、第2主流路71を流れる空気を撹拌させることができる。さらに、第2主流路71に空気とともに異物が混入した場合でも、異物がフィン8に滞積することが防止されるので、第2主流路71が目詰まりすることを抑制しつつ、第2主流路71を流れる空気を撹拌させることができる。
【0041】
さらに、上下方向で隣り合うフィン8において、上方のフィン8の下端部は、下方のフィンの上端部より上方に位置するように設けられている。
【0042】
これにより、空気が第2主流路71を流れる際の圧力損失の上昇を抑制しつつ、第2主流路71を流れる空気を撹拌させることができる。さらに、第2主流路71に空気とともに異物が混入した場合でも、異物が隣り合うフィン8の間で目詰まりすることを抑制しつつ、第2主流路71を流れる空気を撹拌させることができる。
【0043】
また、
図10に示すように、各フィン8は、基端部81から、上下方向と垂直な面に対して空気の流れ方向(本実施形態では上方)に傾斜して、上下方向から見た第1主流路51の中心に向かって延在している。
【0044】
これにより、空気が第2主流路71を流れる際の圧力損失の上昇を抑制しつつ、第2主流路71を流れる空気を撹拌させることができる。さらに、第2主流路71に空気とともに異物が混入した場合でも、異物がフィン8に滞積することが防止されるので、第2主流路71が目詰まりすることを抑制しつつ、第2主流路71を流れる空気を撹拌させることができる。
【0045】
図3に戻って、第2主流路71は、上下方向から見て、フィン8が配置されない貫通領域71aを有する。本実施形態では、上下方向から見て、第2主流路71の中心を含む領域が貫通領域71aとなっている。
【0046】
これにより、空気が第2主流路71を流れる際の圧力損失の上昇を抑制することができる。さらに、第2主流路71に空気とともに異物が混入した場合でも、異物が第2主流路71に目詰まりすることをより抑制することができる。また、貫通領域71aを流れる空気の一部は、フィン8によって隔壁54に近づくように流れるので、第2主流路71を流れる空気をより撹拌させることができる。
【0047】
なお、
図11では、複数のフィン8が、上下方向を軸として、周方向に45度間隔で第2主流路71に螺旋状に設けられているものを他の一例として示している。図示は省略するが、本例においても同様に、各フィン8の基端部81は、螺旋方向に沿って、上下方向と垂直な面に対して所定角度傾斜して隔壁54に接続している。さらに、上下方向で隣り合うフィン8において、上方のフィン8の下端部は、下方のフィン8の上端部より上方に位置するように設けられている。また、各フィン8は、基端部81から、上下方向と垂直な面に対して空気の流れ方向(本実施形態では上方)に傾斜して、上下方向から見た第2主流路71の中心に向かって延在している。また、
図11に示すように、第2主流路71は、上下方向から見て、フィン8が配置されない貫通領域71aを有する。本実施形態では、上下方向から見て、第2主流路71の中心を含む領域が貫通領域71aとなっている。
【0048】
なお、図示は省略するが、複数のフィン8は、上下方向を軸として、周方向に30度以上180度以下の角度間隔で第2主流路71に螺旋状に設けられていればよく、例えば、周方向に60度間隔で第2主流路71に螺旋状に設けられていてもよいし、周方向に135度間隔で第2主流路71に螺旋状に設けられていてもよい。
【0049】
本実施形態のラジエター1は、材料を積層造形することによってコア部3を成形する。より詳細には、コア部3の下端面から材料を積層造形することによって、第1冷媒流路5、及び、フィン8が設けられた第2冷媒流路7を備えるコア部3を一体に成形する。材料を積層造形することによって成形する積層造形法は、三次元形状を造形する方法の1つである。積層造形法は、三次元モデルに基づいて、三次元モデルの連続する断面にそれぞれ対応する材料の層を1層ずつ積層して、三次元形状の部材を作成する製造方法である。積層造形法は、3Dプリンティング技術としても知られている。材料のブロックから削り出して最終製品を作成する従来の切削加工とは異なり、積層造形法は、材料を積層していくことで最終製品を形成するので、複雑な三次元形状を成形することができる。なお、積層造形法は、付加製造法、アディティブマニュファクチャリング、AM技術(additive manufacturing)とも呼ばれている。
【0050】
積層造形法において、積層する材料には、金属、セラミック、樹脂等を用いることができる。本実施形態では、コア部3は、金属で形成されている。なお、コア部3は、セラミック、樹脂等で形成されていてもよい。
【0051】
材料を積層造形することによってコア部3を成形することで、フィン8が設けられた第2冷媒流路7が複雑な形状を有していても、第1冷媒流路5、及び、フィン8が設けられた第2冷媒流路7を備えるコア部3を一体に成形することが容易となる。
【0052】
また、各フィン8は、基端部81から、上下方向と垂直な面に対して空気の流れ方向(本実施形態では上方)に傾斜して延在しているので、第2主流路71における空気の流れ方向に沿って(すなわち、本実施形態では下端面から上端面に向かって)材料を積層造形することによって、サポートを形成することなく各フィン8を隔壁54と一体に成形できる。
【0053】
このとき、各フィン8において、基端部81における隔壁54とフィン8とのなす角は、75度以内であり、より好ましくは、45度以内である(
図10参照)。これにより、材料を積層造形する際、サポートを形成することなく、より容易に各フィン8を隔壁54と一体に成形できる。
【0054】
なお、コア部3だけでなく、積層造形法で導入パイプ11及び排出パイプ13をコア部3と一体に製造してもよい。コア部3と、導入パイプ11及び排出パイプ13とを別々に製造した場合には、コア部3に対し導入パイプ11及び排出パイプ13を組み付ける工程が必要であったが、積層造形法で一体に製造することで、この工程が省略される。なお、所定の粉末材料は、樹脂であってもよく、金属であってもよい。
【0055】
以上、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しながら説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0056】
例えば、上記実施形態では、箱型形状のコア部3を有するラジエター1を例示したが、コア部3は、積層造形法により3次元的に湾曲したような複雑な形状を有していてもよい。
【0057】
例えば、複数のフィン8は、上下方向を軸として、周方向に一定間隔で第2主流路71に螺旋状に設けられていなくてもよく、周方向に所定の変則間隔で第2主流路71に螺旋状に設けられていてもよい。
【0058】
例えば、複数のフィン8は、平板状であってもよいし、湾曲板状であってもよいし、任意の三次元形状を有していてもよい。
【0059】
本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。括弧内には、上記した実施形態において対応する構成要素等を一例として示しているが、これに限定されるものではない。
【0060】
(1) コア部(コア部3)と、
前記コア部に設けられ、第1流体(冷却水)が流れる第1冷媒流路(第1冷媒流路5)と、
前記コア部に設けられ、第2流体(空気)が流れる第2冷媒流路(第2冷媒流路7)と、を備え、
前記コア部において、前記第1冷媒流路を流れる前記第1流体と前記第2冷媒流路を流れる前記第2流体とが熱交換を行う、熱交換器(ラジエター1)であって、
前記第1冷媒流路は、第1方向(上下方向)に延在する第1主流路(第1主流路51)を備え、
前記第2冷媒流路は、前記第1方向に延在する第2主流路(第2主流路71)を備え、
前記コア部において、前記第1主流路と前記第2主流路とは、前記第1方向に延在する隔壁(隔壁54)によって区画されており、
前記第2流体は、前記第2主流路を前記第1方向の一方側(下方側)から他方側(上方側)へと流れ、
前記第2主流路には、前記第1方向から見て前記隔壁から前記第2主流路の中心に向かって延在する複数のフィン(フィン8)が、前記第1方向に所定間隔で前記第1方向を軸にして螺旋状に設けられている、
熱交換器。
【0061】
(1)によれば、第2主流路に設けられた複数のフィンによって、第2主流路を流れる第2流体に、流れ方向に沿って竜巻状(トルネード状)の渦流が発生する。これにより、第2主流路を流れる第1流体が撹拌されるので、第1主流路を流れる第1流体と、第2主流路を流れる第2流体との隔壁を介した熱交換効率が向上する。
【0062】
(2) (1)に記載の熱交換器であって、
複数の前記フィンは、前記第1方向から見て、前記第1方向を軸として周方向に30度以上180度以下の角度間隔で螺旋状に設けられている、
熱交換器。
【0063】
(2)によれば、第2主流路を流れる第2流体の流れが、流れ方向に沿った竜巻状(トルネード状)の渦流によりなりやすくなり、第1主流路を流れる第1流体と、第2主流路を流れる第2流体との隔壁を介した熱交換効率がより向上する。
【0064】
(3) (1)に記載の熱交換器であって、
前記フィンは、前記隔壁と接続する基端部(基端部81)を有し、
前記基端部は、前記複数のフィンの螺旋方向に沿って、前記第1方向と垂直な面に対して所定角度傾斜して前記隔壁に接続している、
熱交換器。
【0065】
(3)によれば、第2流体が第2主流路を流れる際に生じる圧力損失の上昇を抑制しつつ、第2主流路を流れる第2流体を撹拌させることができる。さらに、第2主流路に第2流体とともに異物が混入した場合でも、異物がフィンに滞積することが防止されるので、第2主流路が目詰まりすることを抑制しつつ、第2主流路を流れる第2流体を撹拌させることができる。
【0066】
(4) (3)に記載の熱交換器であって、
前記第1方向で隣り合う前記フィンにおいて、前記第1方向の前記他方側に位置する前記フィンの前記第1方向の前記一方側の端部は、前記第1方向の前記一方側に位置する前記フィンの前記第1方向の前記他方側の端部よりも、前記第1方向の前記他方側に位置するように設けられている、
熱交換器。
【0067】
(4)によれば、第2流体が第2主流路を流れる際に生じる圧力損失の上昇を抑制しつつ、第2主流路を流れる第2流体を撹拌させることができる。さらに、第2主流路に第2流体とともに異物が混入した場合でも、異物が隣り合うフィンの間で目詰まりすることを抑制しつつ、第2主流路を流れる第2流体を撹拌させることができる。
【0068】
(5) (1)に記載の熱交換器であって、
前記フィンは、前記隔壁と接続する基端部(基端部81)を有し、
前記基端部から、前記第1方向と垂直な面に対して、前記第1方向の前記他方側に傾斜して、前記第1方向から見た前記第2主流路の中心に向かって延在している、
熱交換器。
【0069】
(5)によれば、第2流体が第1主流路を流れる際に生じる圧力損失の上昇を抑制しつつ、第2主流路を流れる第2流体を撹拌させることができる。さらに、第2主流路に第2流体とともに異物が混入した場合でも、異物がフィンに滞積することが防止されるので、第2主流路が目詰まりすることを抑制しつつ、第2主流路を流れる第2流体を撹拌させることができる。
【0070】
(6) (1)に記載の熱交換器であって、
前記第2主流路は、前記第1方向から見て、前記フィンが配置されない貫通領域(貫通領域71a)を有する、
熱交換器。
【0071】
(6)によれば、第2流体が第1主流路を流れる際に生じる圧力損失の上昇を抑制することができる。さらに、第2主流路に第2流体とともに異物が混入した場合でも、異物が第2主流路に目詰まりすることをより抑制することができる。また、貫通領域を流れる第2流体の一部は、フィンによって隔壁に近づくように流れるので、第2主流路を流れる第2流体をより撹拌させることができる。
【0072】
(7) (1)に記載の熱交換器の製造方法であって、
材料を積層造形することによって、前記第1冷媒流路、及び、前記フィンが設けられた前記第2冷媒流路を備える前記コア部を一体に成形する、
熱交換器の製造方法。
【0073】
(7)によれば、材料を積層造形することによってコア部を成形することで、フィンが設けられた第2冷媒流路が複雑な形状を有していても、第1冷媒流路、及び、フィンが設けられた第2冷媒流路を備えるコア部を一体に成形することが容易となる。
【符号の説明】
【0074】
1 ラジエター(熱交換器)
3 コア部
5 第1冷媒流路
51 第1主流路
54 隔壁
7 第2冷媒流路
71 第2主流路
71a 貫通領域
8 フィン
81 基端部