(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141562
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】制御装置、制御方法、及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
B60Q 1/04 20060101AFI20241003BHJP
B60Q 1/08 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B60Q1/04 Z
B60Q1/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053290
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】連 孟
【テーマコード(参考)】
3K339
【Fターム(参考)】
3K339AA02
3K339BA01
3K339BA02
3K339BA09
3K339BA21
3K339BA22
3K339BA25
3K339CA01
3K339CA02
3K339GB01
3K339KA01
3K339KA06
3K339LA06
3K339LA33
3K339MA02
3K339MA03
3K339MA04
3K339MA07
3K339MA10
3K339MB01
3K339MB02
3K339MB04
3K339MB05
3K339MC02
3K339MC05
3K339MC14
3K339MC17
3K339MC36
3K339MC43
3K339MC48
3K339MC77
3K339MC82
3K339MC83
3K339MC90
(57)【要約】
【課題】運転支援制御の誤動作を抑制することが可能な制御装置、制御方法、及び制御プログラムを提供する。
【解決手段】車両10の運転支援制御を行う制御装置は、車両10の周辺を撮像して得られる画像データに基づいて車両10の周辺における先行車両70を認識する対象物認識部55と、先行車両70の認識に基づいて車両10の運転支援制御を行う移動制御部56と、車両10の灯火部60の照射状態の制御を行う灯火制御部57と、を備える。灯火制御部57は、運転支援制御の実行時と、運転支援制御の非実行時と、で灯火部60の照射状態を切り替える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の運転支援制御を行う制御装置において、
前記移動体の周辺を撮像して得られる画像データに基づいて前記移動体の周辺における対象物を認識する対象物認識部と、
前記対象物の認識に基づいて前記移動体の運転支援制御を行う移動制御部と、
前記移動体の灯火部の照射状態の制御を行う灯火制御部と、を備え、
前記灯火制御部は、前記運転支援制御の実行時と、前記運転支援制御の非実行時と、で前記灯火部の照射状態を切り替える、
制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置であって、
前記灯火制御部は、前記運転支援制御の実行時に、前記運転支援制御の非実行時と比べて、前記灯火部による前記対象物の特定部位への照射強度を高める、
制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の制御装置であって、
前記特定部位は、前記対象物の下部である、
制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の制御装置であって、
前記対象物は、前記移動体の先行車両であり、
前記特定部位は、前記先行車両のタイヤである、
制御装置。
【請求項5】
請求項2に記載の制御装置であって、
前記灯火制御部は、前記運転支援制御の実行時かつ前記対象物の認識精度が第1所定値未満の場合は、前記運転支援制御の非実行時又は前記認識精度が前記第1所定値以上である場合と比べて、前記灯火部による前記特定部位への照射強度を高める、
制御装置。
【請求項6】
請求項2に記載の制御装置であって、
前記灯火制御部は、前記運転支援制御の実行時かつ前記画像データが示す画像の特定領域の輝度が第2所定値未満の場合は、前記運転支援制御の非実行時又は前記特定領域の輝度が前記第2所定値以上である場合と比べて、前記灯火部による前記特定部位への照射強度を高める、
制御装置。
【請求項7】
請求項2に記載の制御装置であって、
前記対象物は、前記移動体の先行車両であり、
前記灯火制御部は、前記運転支援制御の実行時かつ前記先行車両が存在する場合は、前記運転支援制御の非実行時又は前記先行車両が存在しない場合と比べて、前記灯火部による前記特定部位への照射強度を高める、
制御装置。
【請求項8】
請求項1に記載の制御装置であって、
前記対象物は、前記移動体の先行車両であり、
前記移動制御部は、前記先行車両の認識に基づいて前記移動体と前記先行車両との間の距離を導出し、導出した前記距離に基づいて前記運転支援制御を行う、
制御装置。
【請求項9】
請求項8に記載の制御装置であって、
前記移動制御部は、前記画像データが示す画像における前記先行車両が写った領域を判定し、判定した前記領域に基づいて前記距離を導出する、
制御装置。
【請求項10】
請求項8に記載の制御装置であって、
前記移動制御部は、前記運転支援制御として、導出した前記距離が所定距離より大きい場合は前記移動体の加速制御を行い、導出した前記距離が前記所定距離より小さい場合は前記移動体の減速制御を行う、
制御装置。
【請求項11】
請求項10に記載の制御装置であって、
前記所定距離は、前記移動体のユーザによる指示と、前記移動制御部が取得可能な情報に応じた前記移動制御部による設定と、の少なくともいずれかに基づく距離である、
制御装置。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の制御装置であって、
前記灯火制御部は、前記運転支援制御の実行時と、前記運転支援制御の非実行時と、に応じた前記灯火部の照射状態の切り替えに基づく前記移動体のユーザへの通知を行う、
制御装置。
【請求項13】
移動体の運転支援制御を行う制御装置による制御方法において、
前記制御装置のプロセッサが、
前記移動体の周辺を撮像して得られる画像データに基づいて前記移動体の周辺における対象物を認識し、
前記対象物の認識に基づいて前記移動体の運転支援制御を行い、
前記運転支援制御の実行時と、前記運転支援制御の非実行時と、で前記移動体の灯火部の照射状態を切り替える、
制御方法。
【請求項14】
移動体の運転支援制御を行う制御装置の制御プログラムにおいて、
前記制御装置のプロセッサに、
前記移動体の周辺を撮像して得られる画像データに基づいて前記移動体の周辺における対象物を認識し、
前記対象物の認識に基づいて前記移動体の運転支援制御を行い、
前記運転支援制御の実行時と、前記運転支援制御の非実行時と、で前記移動体の灯火部の照射状態を切り替える、
処理を実行させるための制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、制御方法、及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、交通参加者の中でも脆弱な立場にある人々にも配慮した持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する取り組みが活発化している。この実現に向けて運転支援技術に関する研究開発を通して交通の安全性や利便性をより一層改善する研究開発に注力している。
【0003】
従来、アクセル操作とブレーキ操作の両方を自動的に行い、運転を支援するACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)が知られている。特許文献1には、先行車両の減速状態をブレーキランプの点灯状態から判定して自車両の目標加速度を制御する車両の運転支援装置が記載されている。また、前照灯の照射範囲を制御する技術として、特許文献2には、先行車両のナンバープレートの位置に基づいて、先行車両に対する自車両の前照灯の配光パターンを設定する前照灯制御装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6642886号公報
【特許文献2】特許第7094448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、運転支援技術においては、例えば夜間にACCを実行する場合、先行車両のテールランプの位置を基準にして先行車両の位置を検出することがある。この場合、例えば先行車両がブレーキを踏んだときに、ブレーキによるピッチングが発生し、先行車両のテールランプの位置が変化することで、先行車両の位置の誤認識が生じ得る。そのため、先行車両がブレーキを踏んでいるにも関わらず加速してしまう等の、運転支援制御の誤動作が発生する場合がある。このため、夜間でのACCの実行時においては、これらの点に関する改善が求められる。しかしながら、上記特許文献1及び特許文献2には、これらの点については開示されていない。
【0006】
本発明は、運転支援制御の誤動作を抑制することが可能な制御装置、制御方法、及び制御プログラムを提供することを目的とする。そして、延いては持続可能な輸送システムの発展に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
移動体の運転支援制御を行う制御装置において、
前記移動体の周辺を撮像して得られる画像データに基づいて前記移動体の周辺における対象物を認識する対象物認識部と、
前記対象物の認識に基づいて前記移動体の運転支援制御を行う移動制御部と、
前記移動体の灯火部の照射状態の制御を行う灯火制御部と、を備え、
前記灯火制御部は、前記運転支援制御の実行時と、前記運転支援制御の非実行時と、で前記灯火部の照射状態を切り替える、
制御装置である。
【0008】
本発明は、
移動体の運転支援制御を行う制御装置による制御方法において、
前記制御装置のプロセッサが、
前記移動体の周辺を撮像して得られる画像データに基づいて前記移動体の周辺における対象物を認識し、
前記対象物の認識に基づいて前記移動体の運転支援制御を行い、
前記運転支援制御の実行時と、前記運転支援制御の非実行時と、で前記移動体の灯火部の照射状態を切り替える、
制御方法である。
【0009】
本発明は、
移動体の運転支援制御を行う制御装置の制御プログラムにおいて、
前記制御装置のプロセッサに、
前記移動体の周辺を撮像して得られる画像データに基づいて前記移動体の周辺における対象物を認識し、
前記対象物の認識に基づいて前記移動体の運転支援制御を行い、
前記運転支援制御の実行時と、前記運転支援制御の非実行時と、で前記移動体の灯火部の照射状態を切り替える、
処理を実行させるための制御プログラムである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、運転支援制御の誤動作を抑制することが可能な制御装置、制御方法、及び制御プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態の制御装置を搭載した車両の一例を示す側面図である。
【
図3】
図1に示す車両の内部構成を示すブロック図である。
【
図4】ACCの非実行時における灯火部の照射範囲の一例を示す図である。
【
図5】ACCの実行時における灯火部の照射範囲の一例を示す図である。
【
図6】昼間に、通常走行している先行車両に設定されたバウンディングボックスの一例を示す図である。
【
図7】昼間に、急ブレーキを掛けた先行車両に設定されたバウンディングボックスの一例を示す図である。
【
図8】従来において、夜間に、通常走行している先行車両に設定されるバウンディングボックスの一例を示す図である。
【
図9】従来において、夜間に、急ブレーキを掛けた先行車両に設定されるバウンディングボックスの一例を示す図である。
【
図10】灯火部の作動時における演算部の処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の制御装置、制御方法、及び制御プログラムの一実施形態を、添付図面に基づいて説明する。なお、図面は、符号の向きに見るものとする。また、本明細書等では説明を簡単かつ明確にするために、前後、左右、上下の各方向は、
図1及び
図2に示す車両10の運転者から見た方向に従って記載し、図面には、車両10の前方をFr、後方をRr、左方をL、右方をR、上方をU、下方をD、として示す。
【0013】
<本発明の制御装置を搭載した車両10>
図1は、本発明の制御装置を搭載した車両10の側面図である。
図2は、
図1に示した車両10の上面図である。車両10は、本発明の移動体の一例である。
【0014】
車両10は、駆動源(図示略)と、駆動源の動力によって駆動される駆動輪及び転舵可能な転舵輪を含む車輪と、を有する自動車である。本実施形態では、車両10は、左右一対の前輪及び後輪を有する四輪の自動車である。車両10の駆動源は、例えば電動機である。なお、車両10の駆動源は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関であってもよいし、電動機と内燃機関との組み合わせであってもよい。また、車両10の駆動源は、左右一対の前輪を駆動してもよいし、左右一対の後輪を駆動してもよいし、左右一対の前輪及び後輪の四輪を駆動してもよい。前輪及び後輪は、双方が転舵可能な転舵輪であってもよいし、いずれか一方が転舵可能な転舵輪であってもよい。
【0015】
車両10は、さらにサイドミラー11L,11Rを備える。サイドミラー11L,11Rは、車両10の前席ドアの外側に設けられた、運転者が後方及び後側方を確認するためのミラー(バックミラー)である。サイドミラー11L,11Rは、それぞれ垂直方向に延びる回転軸によって車両10の本体に固定されており、この回転軸を中心に回転することにより開閉可能である。
【0016】
車両10は、さらに前方カメラ12Fr、後方カメラ12Rr、左側方カメラ12L、及び右側方カメラ12Rを備える。前方カメラ12Frは、車両10の前方に設けられ、車両10の前方を撮像するデジタルカメラである。後方カメラ12Rrは、車両10の後方に設けられ、車両10の後方を撮像するデジタルカメラである。左側方カメラ12Lは、車両10の左のサイドミラー11Lに設けられ、車両10の左側方を撮像するデジタルカメラである。右側方カメラ12Rは、車両10の右のサイドミラー11Rに設けられ、車両10の右側方を撮像するデジタルカメラである。
【0017】
<車両10の内部構成>
図3は、
図1に示した車両10の内部構成の一例を示すブロック図である。
図3に示すように、車両10は、センサ群16と、ナビゲーション装置18と、制御ECU(Electronic Control Unit)20と、EPS(Electric Power Steering)システム22と、通信部24と、を有する。車両10は、さらに駆動力制御システム26と、制動力制御システム28と、を有する。
【0018】
センサ群16は、制御ECU20による制御に用いられる各種の検出値を取得する。センサ群16には、前方カメラ12Frと、後方カメラ12Rrと、左側方カメラ12Lと、右側方カメラ12Rとが含まれる。また、センサ群16には、前方ソナー群32aと、後方ソナー群32bと、左側方ソナー群32cと、右側方ソナー群32dとが含まれる。また、センサ群16には、車輪センサ34a,34bと、車速センサ36と、操作検出部38とが含まれる。なお、センサ群16には赤外線レーザーレーダやミリ波レーダ等レーダを含めてもよい。
【0019】
前方カメラ12Fr、後方カメラ12Rr、左側方カメラ12L、及び右側方カメラ12Rは、車両10の周辺を撮像することにより、車両10の周辺における対象物を認識するための画像データを取得する。前方カメラ12Fr、後方カメラ12Rr、左側方カメラ12L、及び右側方カメラ12Rによってそれぞれ撮像される車両周辺の画像は、前方画像、後方画像、左側方画像、及び右側方画像と称される。左側方画像と右側方画像とによって構成される画像を側方画像と称してもよい。前方カメラ12Fr、後方カメラ12Rr、左側方カメラ12L、右側方カメラ12Rの各撮像データを合成することにより生成される車両周辺の認識画像を車両10の俯瞰画像と称してもよい。
【0020】
前方ソナー群32aと、後方ソナー群32bと、左側方ソナー群32cと、右側方ソナー群32dとは、車両10の周辺に音波を発射すると共に、他物体からの反射音を受信する。前方ソナー群32aは、例えば4つのソナーを含む。前方ソナー群32aを構成するソナーは、車両10の左斜め前方、前方左側、前方右側及び右斜め前方にそれぞれ設けられている。後方ソナー群32bは、例えば4つのソナーを含む。後方ソナー群32bを構成するソナーは、車両10の左斜め後方、後方左側、後方右側及び右斜め後方にそれぞれ設けられている。左側方ソナー群32cは、例えば2つのソナーを含む。左側方ソナー群32cを構成するソナーは、車両10の左側部前方及び左側部後方にそれぞれ設けられている。右側方ソナー群32dは、例えば2つのソナーを含む。右側方ソナー群32dを構成するソナーは、車両10の右側部前方及び右側部後方にそれぞれ設けられている。
【0021】
車輪センサ34a,34bは、車両10の車輪の回転角度を検出する。車輪センサ34a,34bは、角度センサによって構成されていてもよいし、変位センサによって構成されていてもよい。車輪センサ34a,34bは、車輪が所定角度回転する毎に検出パルスを出力する。車輪センサ34a,34bから出力される検出パルスは、車輪の回転角度及び車輪の回転速度の算出に用いられる。車輪の回転角度に基づいて、車両10の移動距離が算出される。車輪センサ34aは、例えば、左後輪の回転角度θaを検出する。車輪センサ34bは、例えば、右後輪の回転角度θbを検出する。
【0022】
車速センサ36は、車両10の車体の速度、すなわち車速Vを検出し、検出した車速Vを制御ECU20に出力する。車速センサ36は、例えば、トランスミッションのカウンタシャフトの回転に基づいて車速Vを検出する。
【0023】
操作検出部38は、操作入力部14を用いて行われるユーザによる操作内容を検出し、検出した操作内容を制御ECU20に出力する。操作入力部14には、例えばサイドミラー11L,11Rの開閉状態を切り替えるサイドミラースイッチや、シフトレバー(セレクトレバーやセレクタ)など各種のユーザインタフェースが含まれる。
【0024】
ナビゲーション装置18は、例えばGPS(Global Positioning System)を用いて車両10の現在位置を検出すると共に、目的地までの経路をユーザに案内する。ナビゲーション装置18は、地図情報データベースが備えられた不図示の記憶装置を有する。
【0025】
ナビゲーション装置18には、タッチパネル42と、スピーカ44とが備えられている。タッチパネル42は、制御ECU20の入力装置及び表示装置として機能する。スピーカ44は、車両10の搭乗者に対して各種の案内情報を音声で出力する。
【0026】
タッチパネル42は、制御ECU20に対する各種の指令を入力することができるように構成されている。例えば、ユーザは、タッチパネル42を介して、車両10の運転支援に関する指令を入力することが可能である。また、タッチパネル42は、制御ECU20の制御内容に関する各種の画面を表示するように構成されている。例えば、タッチパネル42には、車両10の運転支援制御に関する画面が表示される。具体的には、タッチパネル42には、車両10の運転支援を要求する運転支援ボタンが表示される。また、タッチパネル42には、車両周辺の前方画像、後方画像、左側方画像、右側方画像、及び俯瞰画像が表示される。さらに、タッチパネル42には、車両10の周辺画像と車両10の画像とを重ねた3次元画像が表示される。なお、タッチパネル42以外の構成要素、例えばHUD(Head-Up Display)、スマートフォン、タブレット端末等を入力装置又は表示装置として用いるようにしてもよい。
【0027】
制御ECU20は、入出力部50と、演算部52と、記憶部54とを有する。演算部52は、例えばCPU(Central Processing Unit)によって構成される。演算部52は、記憶部54に記憶されているプログラムに基づいて各部を制御することにより各種の制御を行う。また、演算部52は、入出力部50を介して、制御ECU20に接続される各部との間で信号を入出力する。演算部52は、本発明の制御装置の一例である。
【0028】
演算部52は、車両10の周囲の対象物を認識する対象物認識部55と、車両10の運転支援の制御を行う移動制御部56と、車両10の灯火部60の制御を行う灯火制御部57と、を有する。
【0029】
対象物認識部55は、前方カメラ12Fr、後方カメラ12Rr、左側方カメラ12L、右側方カメラ12Rによって撮像された車両10の周辺の認識結果を表す画像データを各カメラから取得する。また、対象物認識部55は、これらの撮像カメラやセンサ群16、又は、撮像カメラとセンサ群16との併用によって取得される画像データに基づいて、車両10の周辺の対象物を認識する。周辺の対象物には、例えば車両10(自車両)の前方に位置する他の車両である先行車両が含まれる。先行車両の認識には、先行車両の動きの検知、先行車両のブレーキランプやテールランプや方向指示器等の灯体の点灯状態の検知などが含まれる。また、周辺の対象物には、例えば歩行者や看板・標識などが含まれてもよい。
【0030】
移動制御部56は、ステアリング110の操作を移動制御部56の制御によって自動で行う自動操舵による車両10の運転支援を行う。自動操舵の支援では、アクセルペダル(図示せず)、ブレーキペダル(図示せず)及び操作入力部14の操作が自動で行われる。運転支援の制御には、例えば自動ブレーキの制御や自動回避操舵の制御を含めてもよい。また、移動制御部56は、アクセルペダル、ブレーキペダル及び操作入力部14の操作を運転者が行って車両10を手動運転する際の車両10の補助支援を行う。
【0031】
移動制御部56は、いわゆるアダプティブ・クルーズ・コントロール(Adaptive Cruise Control)を行って、車両10の運転支援を制御する。運転支援の制御には、定速走行制御と車間距離制御が含まれる。移動制御部56は、対象物認識部55が認識した車両10の外部状況に応じて、定速走行制御と車間距離制御のいずれか一方を選択的に切り替えて実行する。例えば先行車両がない場合、移動制御部56は定速走行制御を行う。定速走行制御により車両10は目標速度での定速走行を行う。一方、先行車両がある場合、移動制御部56は車間距離制御を行う。車間距離制御により車両10は一定の車間距離を維持しながらの追従走行を行う。以下の説明では、移動制御部56が行う定速走行制御と車間距離制御の双方を合わせて「ACC」という。移動制御部56は、運転支援ボタンがオン操作されると、ACCを有効化して、運転者によるアクセルペダル操作がなくても、移動制御部56によるACCの制御内容に従って、モータジェネレータの運転制御及びブレーキの制御等を行う。
【0032】
なお、上述の説明における「先行車両」とは、対象物認識部55が認識する自車両の前方に位置し、自車両との相対位置が所定の位置関係を有する他の車両、又は、所定の位置関係を有すると予測される他の車両のことである。自車両との相対位置が所定の位置関係を有する他の車両とは、自車両が走行する車線と同一又は隣接する車線を、自他車両の車間距離が略一定の状態で走行する車両を含む。その結果、自車両と他の車両との相対位置は「所定の位置関係」となる。
【0033】
灯火制御部57は、車両10の灯火部60における照射状態の制御を行う。灯火部60は、例えば車両10の前照灯のことである。灯火部60には、例えばフォグランプやその他に設けた運転支援制御用のライトを含めてもよい。
【0034】
例えば、灯火制御部57は、車両10における運転支援制御(例えば、ACC)の実行時と、運転支援制御の非実行時と、で灯火部60の照射状態を切り替える制御を行う。灯火制御部57は、車両10における運転支援制御の実行時に、運転支援制御の非実行時と比べて、灯火部60による対象物の特定部位への照射強度を高める制御を行う。照射強度を高めるとは、灯火部60のビームの中心(照射強度が最も高くなる向き)を照射する対象物の特定部位に向けること、あるいは対象物全体へ照射する照射強度を高めることなどが含まれる。対象物の「特定部位」とは、車両10から見て対象物における陰になりやすい部位、例えば対象物における下部のことである。具体的には、対象物が先行車両の場合、特定部位は先行車両における陰になりやすい部位であって、黒色で認識しにくいタイヤのことである。
【0035】
灯火制御部57は、車両10における運転支援制御の実行時であって、かつ対象物の認識精度が第1所定値未満である場合には、運転支援制御の非実行時の場合と比べて、灯火部60による特定部位への照射強度を高める制御を行う。あるいは、灯火制御部57は、車両10における運転支援制御の実行時であって、かつ対象物の認識精度が第1所定値未満である場合には、対象物の認識精度が第1所定値以上である場合と比べて、灯火部60による特定部位への照射強度を高める制御を行う。換言すると、灯火制御部57は、対象物を精度よく認識できる場合には、運転支援制御の実行時であっても特定部位への照射強度を高めない。対象物の「認識精度」とは、対象物である例えば先行車両の全体が画像データに基づいて対象物認識部55によりどの程度認識できているかである。例えば先行車両の全体が認識できるときは認識精度が高い。先行車両の一部が認識できないときは認識精度が低い。
【0036】
灯火制御部57は、車両10における運転支援制御の実行時であって、かつ車両10の周辺を撮像して得られた画像データが示す画像の特定領域の輝度が第2所定値未満である場合は、運転支援制御の非実行時である場合と比べて、灯火部60による特定部位への照射強度を高める制御を行う。あるいは、灯火制御部57は、車両10における運転支援制御の実行時であって、かつ車両10の周辺を撮像して得られた画像データにおける特定領域の画像の輝度が第2所定値未満である場合は、特定領域の輝度が第2所定値以上である場合と比べて、灯火部60による特定部位への照射強度を高める制御を行う。換言すると、灯火制御部57は、画像の特定領域の輝度が高い場合には、運転支援制御の実行時であっても特定部位への照射強度を高めない。「特定領域」とは、画像データが示す画像の中で、対象物(先行車両)が現在存在している領域、又は将来存在するであろうと予想される領域のことである。「特定領域の輝度」とは、例えば特定領域の輝度の代表値のことであり、輝度の平均値であってもよい。
【0037】
灯火制御部57は、車両10における運転支援制御の実行時であって、かつ車両10の先行車両が存在する場合は、運転支援制御の非実行時である場合と比べて、灯火部60による特定部位への照射強度を高める制御を行う。あるいは、灯火制御部57は、車両10における運転支援制御の実行時であって、かつ車両10の先行車両が存在する場合は、先行車両が存在しない場合と比べて、灯火部60による特定部位への照射強度を高める制御を行う。換言すると、灯火制御部57は、先行車両が存在しない場合(衝突する危険性が少ない場合)には、運転支援制御の実行時であっても特定部位への照射強度を高めない。先行車両は、車両10(自車両)の進行方向に位置する他の車両、あるいは車両10と同一の区画線に位置する他の車両を含む。
【0038】
灯火制御部57は、車両10における運転支援制御の実行時と、運転支援制御の非実行時と、に応じた灯火部60の照射状態の切り替えに基づいて、その旨を車両10のユーザへ通知する。ユーザへの「通知」は、例えばアイコン表示等による通知であってもよいし、音声等による通知であってもよい。
【0039】
移動制御部56は、例えば先行車両の認識に基づいて車両10と先行車両との間の距離を導出し、導出した距離に基づいて運転支援制御を行う。移動制御部56は、車両10の周辺を撮像して得られた画像データが示す画像の先行車両が写った領域を判定し、判定した領域に基づいて距離を導出する制御を行う。先行車両が写った「領域」とは、先行車両を囲んだ部分領域を示すバウンディングボックスのことである。「領域」の判定は、先行車両の輪郭の抽出結果やテールランプの位置の検出結果等に基づく総合的な処理により行われる。
【0040】
移動制御部56は、車両10の運転支援制御として、導出した車両10と先行車両との間の距離が所定距離より大きい場合は、車両10の加速制御を行い、導出した距離が所定距離より小さい場合は車両10の減速制御を行う。「所定距離」は、車両10のユーザによる指示に基づいて設定される距離であってもよいし、移動制御部56が取得可能な情報に応じて移動制御部56により設定される距離であってもよい。
【0041】
EPSシステム22は、舵角センサ100と、トルクセンサ102と、EPSモータ104と、レゾルバ106と、EPS ECU108と、を有する。舵角センサ100は、ステアリング110の舵角θstを検出する。トルクセンサ102は、ステアリング110に加わるトルクTQを検出する。
【0042】
EPSモータ104は、ステアリング110に連結されたステアリングコラム112に対して駆動力又は反力を付与することにより、乗員によるステアリング110の操作支援や駐車支援時の自動操舵を可能とする。レゾルバ106は、EPSモータ104の回転角度θmを検出する。EPS ECU108は、EPSシステム22の全体の制御を司る。EPS ECU108には、入出力部(図示せず)と、演算部(図示せず)と、記憶部(図示せず)とが備えられている。
【0043】
通信部24は、他の通信装置120との間で無線通信を行うことを可能とするものである。他の通信装置120とは、基地局や、他車両の通信装置や、車両10の搭乗者が所持するスマートフォン等の情報端末などである。
【0044】
駆動力制御システム26には、駆動ECU130が備えられている。駆動力制御システム26は、車両10の駆動力制御を実行する。駆動ECU130は、不図示のアクセルペダルに対するユーザによる操作に基づいて、不図示のエンジン等を制御することによって、車両10の駆動力を制御する。
【0045】
制動力制御システム28には、制動ECU132が備えられている。制動力制御システム28は、車両10の制動力制御を実行する。制動ECU132は、不図示のブレーキペダルに対するユーザによる操作に基づいて、不図示のブレーキ機構等を制御することによって、車両10の制動力を制御する。
【0046】
<灯火部60による照射範囲>
次に、車両10が灯火部60によって照射する照射範囲について説明する。
図4は、ACCの非実行時における灯火部60の照射範囲の一例を示す図である。灯火制御部57は、いわゆるアダプティブドライビングビームを作動させることにより、灯火部60の照射範囲を制御する。灯火制御部57は、先行車両や対向車両や歩行者などを検知し、眩しさを与えない照射範囲を自動でコントロールする。以下の説明では、灯火制御部57が行う照射範囲の自動コントロールのことを「ADB」という。なお、ADBは、例えば夜間にライトスイッチが「AUTO」状態であって、ライトスイッチのレバーがいわゆるロービームの位置にある状態で作動する。
【0047】
灯火制御部57は、ACCの非実行時においてADBが作動された場合、
図4に示すような照射範囲S1で先行車両70を照射する。照射範囲S1は、車両10の灯火部60からの照射であって、先行車両70の運転者に眩しさを与えない照射として設定される範囲である。また、照射範囲S1は、灯火部60のビームの中心を含む照射の範囲である。
【0048】
例えば、灯火制御部57は、車両10がACCの非実行時である場合には、ADBによる照射範囲S1は、車両10の前方かつ先行車両70が含まれない範囲となるように設定する。
【0049】
これに対して、車両10のACCが実行されると、灯火制御部57は、先行車両70の特定部位に対する照射強度が高くなるように、ADBの照射強度を変化させる。
図5は、ACCの実行時における灯火部60の照射範囲の一例を示す図である。
【0050】
灯火制御部57は、ACCの実行時においてADBが作動された場合、
図5に示すような照射範囲S2で先行車両70を照射する。照射範囲S2は、上記照射範囲S1と同様に、車両10の灯火部60からの照射であって、先行車両70の運転者に眩しさを与えない照射として設定される範囲である。また、照射範囲S2は、特定部位(タイヤ73)に対する照射強度を高めるために、灯火部60のビームの中心の向きが特定部位に近づくように設定される範囲である。
【0051】
例えば、灯火制御部57は、車両10がACCの実行時である場合には、ADBによる照射範囲S2が、先行車両70の後部上方側におけるテールランプ71の位置から後部下方側におけるタイヤ73の位置までの範囲となるように設定する。すなわち、灯火制御部57は、ACCの実行時には、車両10から見て先行車両70における認識しにくい部位のタイヤ73に対して照射強度が高まるように照射範囲S2を設定する。タイヤ73は、先行車両70における下部領域にあって陰になりやすい部位であり、地面80に接する部位である。このように照射することで、例えばACCの実行時において車両10から先行車両70を見たときに、先行車両70全体の特徴点を漏れなく認識することが可能となる。
【0052】
<ACC実行時における先行車両70の認識>
次に、車両10のACCの実行時において、認識した先行車両70を示す領域として設定されるバウンディングボックスについて
図6から
図9を参照して説明する。
図6は、昼間に、通常走行している先行車両70に設定されたバウンディングボックス74aの一例を示す図である。
【0053】
図6に示すように、先行車両70の走行時が昼間であるために、対象物認識部55は、撮像された車両10の前方画像61において、先行車両70全体における輪郭の特徴点を正確に認識することができる。このため、移動制御部56は、先行車両70の領域を示すバウンディングボックス74aを正確に設定することができる。したがって、移動制御部56は、バウンディングボックス74aに基づいて、車両10と先行車両70の距離を正確に導出することができ正しいACCを行うことができる。
【0054】
図7は、昼間に、急ブレーキを掛けた先行車両70に設定されるバウンディングボックス74bの一例を示す図である。急ブレーキを掛けた場合、上述したようにピッチングが起きるために、先行車両70は所定の期間においてそのピッチングによる影響分だけ、後方の車高が高くなる。また、ピッチングが起きることにより、先行車両70のテールランプの位置がその所定の期間において高くなる。
【0055】
しかしながら、
図7に示すように、先行車両70の走行時が昼間であるため、対象物認識部55は、撮像された車両10の前方画像61において、先行車両70全体における輪郭の特徴点を正確に認識することができる。したがって、移動制御部56は、先行車両70の領域を示すバウンディングボックス74bを正確に設定することができる。よって、移動制御部56は、バウンディングボックス74bに基づいて、車両10と先行車両70の距離を正確に導出することができ正しいACCを行うことができる。
【0056】
図8は、従来において、夜間に、通常走行している先行車両70に設定されるバウンディングボックス174aの一例を示す図である。先行車両70の走行時が夜間であるため、
図8に示す撮像された車両10の前方画像61において、対象物認識部55は、先行車両70全体の輪郭の特徴点を正確に認識することができない。例えば対象物認識部55は、先行車両70の周囲が暗いため、先行車両70における下部領域のタイヤ73を認識することができない。
【0057】
この場合、対象物認識部55は、先行車両70の認識可能な特徴点を含めつつ、例えば先行車両70の点灯されたテールランプ71の位置を基準として先行車両70の輪郭を認識する。このため、移動制御部56は、
図8に示すバウンディングボックス174aのように、タイヤ73の部分が含まれない領域を先行車両70の領域として設定してしまう。
【0058】
図9は、従来において、夜間に、急ブレーキを掛けた先行車両70に設定されるバウンディングボックス174bの一例を示す図である。上述したように、対象物認識部55は、先行車両70の走行時が夜間であるため、前方画像61において先行車両70全体の輪郭の特徴点を正確に認識することができず、先行車両70のテールランプ71の位置を基準として先行車両70の輪郭を認識する。また、先行車両70は、急ブレーキが掛かると、ピッチングを起こし、その分だけ後方の車高が高くなり、それに応じてテールランプ71の位置が高くなる。
【0059】
このため、移動制御部56は、高くなったテールランプ71の位置を基準として先行車両70を示す領域を算出し、その領域を
図9に示すバウンディングボックス174bのように設定する。バウンディングボックス174bは、テールランプ71の地面80からの高さHbが
図8に示すテールランプ71の高さHaよりも高くなっているため、前方画像61において、
図8に示すバウンディングボックス174aよりも上に移動した位置に設定される。
【0060】
また、バウンディングボックス174bの場合も
図8のバウンディングボックス174aと同様にタイヤ73の部分が含まれない領域として設定される。その結果、移動制御部56は、上に移動したバウンディングボックス174bに基づいて、車両10と先行車両70との車間距離が大きくなったと誤判定し、減速すべきところを誤加速してしまう。
【0061】
これに対して、灯火制御部57は、車両10がACCの実行時には、車両10から見て先行車両70における認識しにくい部位のタイヤ73に対して照射強度が高まるように照射範囲を設定する。これにより、
図7に示した状況と同様に、対象物認識部55は、タイヤ73も含めた先行車両70の全体における輪郭の特徴点を正確に認識することができ、移動制御部56は、先行車両70の領域を示すバウンディングボックス174bを正確に設定することができる。よって、移動制御部56は、バウンディングボックス174bに基づいて、車両10と先行車両70の距離を正確に導出することができ正しいACCを行うことができる。
【0062】
<車両10における演算部52の処理>
次に、車両10の灯火部60が作動されたときの演算部52の処理について説明する。
図10は、灯火部60の作動時における演算部52の処理の一例を示すフローチャートである。車両10の前照灯が点灯されると、演算部52は
図10に示す処理を開始する。
【0063】
まず演算部52は、車両10のACCが実行中であるか否かを判定する(ステップS11)。演算部52は、ACCが実行中ではない場合(ステップS11:No)、車両10の前照灯の照射を通常の照射状態に設定する(ステップS12)。演算部52は、ACCが実行中である場合(ステップS11:Yes)、車両10の前方を走行する先行車両70の認識精度が第1所定値未満であるか否かを判定する(ステップS13)。例えば、演算部52は先行車両70のタイヤ73を認識できない場合に、先行車両70の認識精度が第1所定値未満であると判定する。
【0064】
演算部52は、認識精度が第1所定値未満ではない場合(ステップS13:No)、前照灯の照射を通常の照射状態に設定する(ステップS12)。演算部52は、認識精度が第1所定値未満である場合(ステップS13:Yes)、車両10の周辺を撮像して得られた画像の特定領域の輝度が第2所定値未満であるか否かを判定する(ステップS14)。
【0065】
演算部52は、特定領域の輝度が第2所定値未満ではない場合(ステップS14:No)、前照灯の照射を通常の照射状態に設定する(ステップS12)。演算部52は、特定領域の輝度が第2所定値未満である場合(ステップS14:Yes)、車両10の前方に先行車両70が存在するか否かを判定する(ステップS15)。
【0066】
演算部52は、先行車両70が存在しない場合(ステップS15:No)、前照灯の照射を通常の照射状態に設定する(ステップS12)。演算部52は、先行車両70が存在する場合(ステップS15:Yes)、車両10の前照灯の照射状態を先行車両70における下方領域に対する照射強度が高い照射状態に設定する(ステップS16)。例えば演算部52は、先行車両70の下方領域にあるタイヤ73に対する照射強度が高まるように前照灯の照射範囲S2(
図5参照)を設定する。演算部52は前照灯が点灯されている間、本処理を繰り返し実行する。なお、上記処理では先行車両70が存在するか否かの判定を、特定領域の輝度の判定の後(ステップS15)で行っているが、例えば、ACCの実行中か否かの判定(ステップS11)の後で行うようにしてもよい。
【0067】
以上説明したように、本実施形態の制御装置(演算部52)は、車両10(自車両)のACCの実行時において、ADBによる灯火部60から先行車両70への照射を、先行車両70における陰となりやすく認識しにくいタイヤ73(特定部位)に対しての照射強度が高まるような照射範囲S2(
図4参照)とする。この構成によれば、夜間におけるACCの実行時においても、地面80に接するタイヤ73を含む先行車両70全体の特徴点を漏れなく認識することが可能になり、先行車両70の認識精度を向上させることができる。これにより、例えば先行車両70が急ブレーキを掛けてピッチングを起こしテールランプ71の位置が一時的に高くなった場合でも、先行車両70全体を認識できるため、先行車両70の領域を特定するためのバウンディングボックスを正確に設定することが可能になる。このため、先行車両70が急ブレーキを掛けた場合に、車両10が誤って加速する、あるいは必要な減速をしない、などの誤動作が発生する事態を防止できる。
【0068】
また、本実施形態の制御装置は、ACCの実行時におけるADBの照射範囲S2を、先行車両70における認識しにくい下部(タイヤ73)に対して照射強度を高めるように設定するので、先行車両70あるいは周囲の歩行者に眩しさを感じさせることがないような照射範囲とすることができる。
【0069】
また、本実施形態の制御装置は、先行車両70の認識精度が低い場合にはACCの実行時においてタイヤ73への照射強度を高めるが、先行車両70の認識精度が高い場合にはACCの実行時であってもタイヤ73への照射強度を高めない。同様に、制御装置は、先行車両70が存在する領域の輝度が低い場合にはACCの実行時においてタイヤ73への照射強度を高めるが、先行車両70が存在する領域の輝度が高い場合にはACCの実行時であってもタイヤ73への照射強度を高めない。これにより、車両10の周辺車両や歩行者が眩しく感じてしまう事態を未然に防ぐことができる。
【0070】
また、本実施形態の制御装置は、先行車両70のタイヤ73への照射強度を高めることにより、先行車両70全体を認識でき、先行車両70の領域を特定するバウンディングボックスを正確に設定できるため、車両10から先行車両70までの距離を正確に導出することができる。
【0071】
なお、前述した実施形態で説明した制御方法は、予め用意された制御プログラムをコンピュータで実行することにより実現できる。本制御プログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記録され、記憶媒体から読み出されることによって実行される。また、本制御プログラムは、フラッシュメモリ等の非一過性の記憶媒体に記憶された形で提供されてもよいし、インターネット等のネットワークを介して提供されてもよい。本制御プログラムを実行するコンピュータは、制御装置に含まれるものであってもよいし、制御装置と通信可能なスマートフォン、タブレット端末、又はパーソナルコンピュータ等の電子機器に含まれるものでもあってもよいし、これら制御装置及び電子機器と通信可能なサーバ装置に含まれるものであってもよい。
【0072】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。
【0073】
例えば、上記実施形態では、取得された画像データが示す画像に基づいて対象物の認識精度や特定領域の輝度を判定する場合について説明したが、これに限定されない。例えば、地図情報と車両10の現在位置情報とに基づいて車両10が高架下やトンネルなどの暗い場所に位置していると判定された場合に、灯火制御部57は、車両10の灯火部60による照射強度を高めるようにしてもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、ACCの非実行時におけるADBの照射範囲S1を、ACCの実行時におけるADBの照射範囲S2に切り替えるために、前照灯のビームの中心が特定部位に近づくように向きを変える場合について説明したが、これに限定されない。例えば、ACCの実行時には、ACCの非実行時におけるADBの照射範囲S1に、前照灯とは別に設けたACC用のライトによる照射範囲を加算することで照射範囲S2と同様の照射範囲を設定するようにしてもよい。
【0075】
また、本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。なお、括弧内には、上記した実施形態において対応する構成要素等を示しているが、これに限定されるものではない。
【0076】
(1) 移動体(車両10)の運転支援制御を行う制御装置において、
前記移動体の周辺を撮像して得られる画像データに基づいて前記移動体の周辺における対象物を認識する対象物認識部(対象物認識部55)と、
前記対象物の認識に基づいて前記移動体の運転支援制御を行う移動制御部(移動制御部56)と、
前記移動体の灯火部(灯火部60)の照射状態の制御を行う灯火制御部(灯火制御部57)と、を備え、
前記灯火制御部は、前記運転支援制御の実行時と、前記運転支援制御の非実行時と、で前記灯火部の照射状態を切り替える、
制御装置。
【0077】
(1)によれば、運転支援制御の実行時に、灯火部の照射状態を切り替えることで対象物の認識精度を向上させることができる。これにより、運転支援制御における誤加速度や必要な減速をしないなどの誤動作を防止することができる。
【0078】
(2) (1)に記載の制御装置であって、
前記灯火制御部は、前記運転支援制御の実行時に、前記運転支援制御の非実行時と比べて、前記灯火部による前記対象物の特定部位への照射強度を高める、
制御装置。
【0079】
(2)によれば、運転支援制御の実行時に、対象物の特定部位に対する照射強度を高めることで対象物の認識精度を向上させることができる。
【0080】
(3) (2)に記載の制御装置であって、
前記特定部位は、前記対象物の下部である、
制御装置。
【0081】
(3)によれば、対象物における認識しにくい下部に対しての照射強度を高めることで対象物の認識精度を向上させることができる。
【0082】
(4) (3)に記載の制御装置であって、
前記対象物は、前記移動体の先行車両(先行車両70)であり、
前記特定部位は、前記先行車両のタイヤである、
制御装置。
【0083】
(4)によれば、先行車両における認識しにくいタイヤに対しての照射強度を高めることで対象物の認識精度を向上させることができる。
【0084】
(5) (2)から(4)のいずれかに記載の制御装置であって、
前記灯火制御部は、前記運転支援制御の実行時かつ前記対象物の認識精度が第1所定値未満の場合は、前記運転支援制御の非実行時又は前記認識精度が前記第1所定値以上である場合と比べて、前記灯火部による前記特定部位への照射強度を高める、
制御装置。
【0085】
(5)によれば、対象物の認識精度が低い場合に運転支援制御の実行時において特定部位への照射強度を高め、対象物の認識精度が高い場合には運転支援制御の実行時でも特定部位への照射強度を高めない。これにより、周辺車両や歩行者が眩しく感じてしまう事態を未然に防げる。
【0086】
(6) (2)から(5)のいずれかに記載の制御装置であって、
前記灯火制御部は、前記運転支援制御の実行時かつ前記画像データが示す画像の特定領域の輝度が第2所定値未満の場合は、前記運転支援制御の非実行時又は前記特定領域の輝度が前記第2所定値以上である場合と比べて、前記灯火部による前記特定部位への照射強度を高める、
制御装置。
【0087】
(6)によれば、画像の特定領域の輝度が低い場合に運転支援制御の実行時において特定部位への照射強度を高め、画像の特定領域の輝度が高い場合には運転支援制御の実行時でも特定部位への照射強度を高めない。これにより、周辺車両や歩行者が眩しく感じてしまう事態を未然に防げる。
【0088】
(7) (2)から(6)のいずれかに記載の制御装置であって、
前記対象物は、前記移動体の先行車両であり、
前記灯火制御部は、前記運転支援制御の実行時かつ前記先行車両が存在する場合は、前記運転支援制御の非実行時又は前記先行車両が存在しない場合と比べて、前記灯火部による前記特定部位への照射強度を高める、
制御装置。
【0089】
(7)によれば、先行車両が存在する場合に運転支援制御の実行時において特定部位への照射強度を高め、先行車両が存在しない場合には運転支援制御の実行時でも特定部位への照射強度を高めない。これにより、周辺車両や歩行者が眩しく感じてしまう事態を未然に防げる。
【0090】
(8) (1)から(7)のいずれかに記載の制御装置であって、
前記対象物は、前記移動体の先行車両であり、
前記移動制御部は、前記先行車両の認識に基づいて前記移動体と前記先行車両との間の距離を導出し、導出した前記距離に基づいて前記運転支援制御を行う、
制御装置。
【0091】
(8)によれば、移動体と先行車両との間の距離に基づいて運転支援制御を適切に行うことができる。
【0092】
(9) (8)に記載の制御装置であって、
前記移動制御部は、前記画像データが示す画像における前記先行車両が写った領域を判定し、判定した前記領域に基づいて前記距離を導出する、
制御装置。
【0093】
(9)によれば、画像における先行車両が写った領域に基づいて移動体から先行車両までの距離を正確に導出することができる。
【0094】
(10) (8)又は(9)に記載の制御装置であって、
前記移動制御部は、前記運転支援制御として、導出した前記距離が所定距離より大きい場合は前記移動体の加速制御を行い、導出した前記距離が前記所定距離より小さい場合は前記移動体の減速制御を行う、
制御装置。
【0095】
(10)によれば、導出した移動体と先行車両との間の距離に応じて、移動体の加速制御と減速制御を適切に行うことができる。
【0096】
(11) (10)に記載の制御装置であって、
前記所定距離は、前記移動体のユーザによる指示と、前記移動制御部が取得可能な情報に応じた前記移動制御部による設定と、の少なくともいずれかに基づく距離である、
制御装置。
【0097】
(10)によれば、ユーザの指示による所定距離又は移動制御部の設定による所定距離に基づいて移動体の加速制御と減速制御を適切に行うことができる。
【0098】
(12) (1)から(11)のいずれかに記載の制御装置であって、
前記灯火制御部は、前記運転支援制御の実行時と、前記運転支援制御の非実行時と、に応じた前記灯火部の照射状態の切り替えに基づく前記移動体のユーザへの通知を行う、
制御装置。
【0099】
(12)によれば、移動体の運転制御状態及び灯火部の照射状態をユーザに容易に認識させることができる。
【0100】
(13) 移動体の運転支援制御を行う制御装置による制御方法において、
前記制御装置のプロセッサが、
前記移動体の周辺を撮像して得られる画像データに基づいて前記移動体の周辺における対象物を認識し、
前記対象物の認識に基づいて前記移動体の運転支援制御を行い、
前記運転支援制御の実行時と、前記運転支援制御の非実行時と、で前記移動体の灯火部の照射状態を切り替える、
制御方法。
【0101】
(13)によれば、運転支援制御の実行時に、灯火部の照射状態を切り替えることで対象物の認識精度を向上させることができる。これにより、運転支援制御における誤加速度や必要な減速をしないなどの誤動作を防止することができる。
【0102】
(14) 移動体の運転支援制御を行う制御装置の制御プログラムにおいて、
前記制御装置のプロセッサに、
前記移動体の周辺を撮像して得られる画像データに基づいて前記移動体の周辺における対象物を認識し、
前記対象物の認識に基づいて前記移動体の運転支援制御を行い、
前記運転支援制御の実行時と、前記運転支援制御の非実行時と、で前記移動体の灯火部の照射状態を切り替える、
処理を実行させるための制御プログラム。
【0103】
(14)によれば、運転支援制御の実行時に、灯火部の照射状態を切り替えることで対象物の認識精度を向上させることができる。これにより、運転支援制御における誤加速度や必要な減速をしないなどの誤動作を防止することができる。
【符号の説明】
【0104】
10 車両(移動体)
52 演算部(制御装置)
55 対象物認識部
56 移動制御部
57 灯火制御部
60 灯火部
70 先行車両