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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141567
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】センサー材料およびセンサー
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/12 20060101AFI20241003BHJP
   B01J 20/10 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G01N27/12 C
B01J20/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053297
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】千葉 彩香
(72)【発明者】
【氏名】末松 諒一
(72)【発明者】
【氏名】石田 弘徳
【テーマコード(参考)】
2G046
4G066
【Fターム(参考)】
2G046AA04
2G046AA10
2G046BA01
2G046BA03
2G046BA09
2G046BB03
2G046EA02
2G046FB01
2G046FE07
2G046FE38
4G066AA30B
4G066AA66B
4G066BA20
4G066BA23
4G066BA26
4G066BA36
4G066CA02
4G066CA24
4G066CA29
4G066DA03
4G066EA20
(57)【要約】
【課題】新たなセンサー材料を提供すること。
【解決手段】ケイ酸カルシウム水和物およびその加熱物からなる群から選択される1種以上を含むセンサー材料。上記センサー材料を含む検知素子を有するセンサー。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ酸カルシウム水和物およびその加熱物からなる群から選択される1種以上を含むセンサー材料。
【請求項2】
前記ケイ酸カルシウム水和物はトバモライトである、請求項1に記載のセンサー材料。
【請求項3】
軽量気泡コンクリート粉末を含み、該軽量気泡コンクリート粉末がトバモライトを含む、請求項2に記載のセンサー材料。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のセンサー材料を含む検知素子を有するセンサー。
【請求項5】
ガスセンサーである、請求項4に記載のセンサー。
【請求項6】
においセンサーである、請求項4に記載のセンサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサー材料およびセンサーに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1~3には、検体の検知が可能なセンサーとして、検知素子にゼオライトを含むセンサーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2021-508063号公報
【特許文献2】特開2009-300430号公報
【特許文献3】特開2006-071480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、におい、大気汚染等の原因になる検体、人の健康に影響を及ぼし得る検体等を検知することが求められている。そのため、そのような検体を検知可能な新たなセンサーを提供することができれば、各種分野において有用である。
【0005】
本発明の一態様は、新たなセンサー材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、以下の通りである。
[1]ケイ酸カルシウム水和物およびその加熱物からなる群から選択される1種以上を含むセンサー材料。
[2]上記ケイ酸カルシウム水和物はトバモライトである、[1]に記載のセンサー材料。
[3]軽量気泡コンクリート粉末を含み、この軽量気泡コンクリート粉末がトバモライトを含む、[2]に記載のセンサー材料。
[4][1]~[3]のいずれかに記載のセンサー材料を含む検知素子を有するセンサー。
[5]ガスセンサーである、[4]に記載のセンサー。
[6]においセンサーである、[4]に記載のセンサー。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、ケイ酸カルシウム水和物およびその加熱物からなる群から選択される1種以上を含む検知素子を有する、新たなセンサーを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[センサー材料]
本発明の一態様は、ケイ酸カルシウム水和物およびその加熱物からなる群から選択される1種以上を含むセンサー材料に関する。本発明および本明細書において、「センサー材料」とは、センサーの検知素子を作製するために使用される材料をいうものとする。センサー材料は、例えば、検体を吸着することによってセンサーが検体を検知することに寄与することができる。
以下、上記センサー材料について、更に詳細に説明する。以下において、ケイ酸カルシウム水和物およびその加熱物を「ケイ酸系材料」とも呼ぶ。上記センサー材料は、ケイ酸系材料を、例えば粉末等の任意の形態で含むことができる。
【0009】
ケイ酸カルシウム水和物としては、トバモライト、ゾノトライト等の結晶性のケイ酸カルシウム水和物を挙げることができ、天然鉱物であってもよく、合成品であってもよい。
【0010】
トバモライトは、例えば、Ca・(Si18)・4HO(板状の形態:11Åトバモライト)、Ca・(Si18)(板状の形態:9Åトバモライト)、Ca・(Si18)・8HO(繊維状の形態:14Åトバモライト)等の化学組成を有することができる。
【0011】
トバモライトの合成方法としては、水熱合成法等の公知の方法を挙げることができる。例えば、水熱合成法によるトバモライトの合成は、以下のように行うことができる。原料を混合して型枠に入れて成形した後、水熱反応(例えばオートクレーブ養生)を行う。その後、反応生成物を粉砕して粒度を調整することによって、トバモライト粉末を得ることができる。原料のケイ酸源としては、珪石粉末、シリカゲル、シリカフューム、フライアッシュ、火山灰(シラス)等を挙げることができ、結晶性のケイ酸源および非晶質のケイ酸源のどちらも使用可能である。原料のカルシウム源としては、生石灰粉末、消石灰粉末、セメント等を挙げることができる。水としては、水道水、蒸留水、イオン交換水等を使用することができる。更に、必要に応じて、発泡材(例えばアルミニウム粉末)を添加してもよい。水熱反応は、例えば110℃~250℃の範囲の温度で行うことができる。
【0012】
一形態では、上記センサー材料は、軽量気泡コンクリート粉末を含むことができる。軽量気泡コンクリート粉末は、一般にAutoclaved Lightweight aerated Concreate(ALC)と呼ばれる軽量気泡コンクリートを粉砕して得られる粉末であって、トバモライトおよび石英(未反応の珪石)を含む混合物である。軽量気泡コンクリート中のトバモライトの割合は、軽量気泡コンクリートの内部の空隙部分を除く固相の全体を100体積%として、一般に50~80体積%程度である。
【0013】
軽量気泡コンクリートの合成は、例えば以下のように行うことができる。珪石粉末、セメント、生石灰粉末、発泡剤(例えばアルミニウム粉末)および水を含む原料を混合して型枠に入れて成形した後、水熱反応(例えばオートクレーブ養生)によって合成する。水熱反応は、例えば180℃程度の温度で行うことができる。その後、反応生成物を粉砕して粒度を調整することによって、軽量気泡コンクリート粉末を得ることができる。または、廃材の利用促進の観点から、軽量気泡コンクリートの製造工程、建設現場等で発生する軽量気泡コンクリートの端材、廃材等から軽量気泡コンクリート粉末を作製することもできる。
【0014】
一方、ゾノトライトは、例えばCa・(Si17)・(OH)(繊維状の形態)等の化学組成を有することができる。上記センサー材料は、ゾノトライトを含む保湿材等の端材、廃材等を粉砕した粉末を含むこともできる。
【0015】
ケイ酸カルシウム水和物の加熱物としては、例えば、ウォラストナイト等を挙げることができる。ウォラストナイトは、珪石灰とも呼ばれ、例えばCaO・SiO(繊維状又は柱状の形態)等の化学組成を有することができる。ウォラストナイトは、ケイ酸カルシウム水和物の加熱物である。
【0016】
上記センサー材料は、ケイ酸カルシウム水和物およびその加熱物からなる群から選択されるケイ酸系材料を1種のみ含むことができ、または2種以上を含むこともできる。上記センサー材料がケイ酸系材料を2種以上含む場合、それらの混合比は特に限定されるものではない。また、上記センサー材料は、ケイ酸系材料のみからなってもよく、ケイ酸系材料に加えてセンサー材料に一般に含まれ得る1種以上の他の成分を含んでもよい。
【0017】
上記ケイ酸系材料の比表面積は、例えば30m/g以上200m/g以下、好ましくは50m/g以上180m/g以下、より好ましくは100m/g以上150m/g以下であることができる。上記ケイ酸系材料の平均細孔径は、例えば0.005μm以上0.30μm以下、好ましくは0.01μm以上0.10μm以下、より好ましくは0.02μm以上0.05μm以下であることができる。比表面積および平均細孔径は、ポロシメーター(水銀圧入法)によって測定することができる。
【0018】
上記センサー材料は、例えば、ガスセンサー、においセンサー等の各種検体の検知が可能なセンサーの検知素子を作製するために使用することができる。
【0019】
[センサー]
本発明の一態様は、上記センサー材料を含む検知素子を有するセンサーに関する。
【0020】
本発明の一態様にかかるセンサーについては、ガスセンサー、においセンサー、ウイルス粒子センサー等の各種センサーに関する公知技術を適用することができる。一般的なセンサーの構成要素としては、感応膜を含む検知素子、検知素子で取得された電気伝導度変化、温度変化、抵抗値変化、共振周波数変化等を電気信号に変換する信号変換素子(電極)、電気信号を読み取るための増幅器、基準点、プロセッサー、プロセッサーで処理されたデータを表示するディスプレー等を挙げることができる。上記センサーは、公知の構成要素を含むことができる。
【0021】
上記センサーは、例えば、上記センサー材料を含む感応膜を検知素子に有することができる。検知素子は検体を検知するための素子であり、感応膜は検体を検知するための膜である。検体の検知方式について、固体式センサーは、電流を流すことで高温に保った検知素子とガスとの反応による電気伝導度変化やガス接触による素子温度変化を測定することによって、検体(ガス)を検知することができる。電気伝導度変化を測定することによってガスを検知する固体式センサーとしては、半導体式センサーを挙げることができる。半導体式センサーの具体例としては、熱線型半導体式センサー、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)熱線型半導体式センサー、基板型半導体式センサー等を挙げることができる。素子温度変化を測定することによってガスを検知する固体式センサーとしては、接触燃焼式センサー、気体熱伝導式センサー等の熱伝導式センサー等を挙げることができる。一方、においセンサーについては、検体(におい成分)の検知方式として、半導体式および水晶振動式が知られている。におい成分とは、においをもたらす成分であって、例えばタバコの煙等を挙げることができる。半導体式においセンサーでは、半導体表面におけるにおい成分の吸着と表面反応によって半導体の抵抗値が変化することを利用して検体を検知する。水晶振動式においセンサーでは、におい成分が感応膜に吸着すると膜の質量が増加し、感応膜が貼り付けられた水晶振動子の共振周波数が低下することを利用して検体を検知する。ケイ酸カルシウム水和物およびその加熱物からなる群から選択されるケイ酸系材料は、各種検体を吸着可能であるため、上記いずれの検知方式のセンサーにも適用できる。
【0022】
上記感応膜は、上記センサー材料を、必要に応じて1種以上の他の成分と混合した後、公知の方法で成膜することによって作製することができる。成膜工程では、例えば、上記センサー材料の粉末をスラリー化したものを刷毛、スクリーン印刷等により素子基材に塗布することができる。上記スラリーには、必要に応じて公知の分散剤を添加してもよい。上記センサー材料の焼結体等のバルク体を作製し、バルク体を薄く切断して薄膜を作製し、この薄膜を素子基材に貼り付けてもよい。上記センサー材料の粉末を素子基材に吹き付けることによって成膜してもよい。または、ヘリコンスパッタ、原子層体積法、自己組織化単分子膜等により、素子基材が有する細孔に成膜して素子の細孔径を制御することも可能である。上記センサー材料を用いて接触燃焼式ガスセンサーの感応膜を作製する場合、ケイ酸カルシウム水和物およびその加熱物からなる群から選択されるケイ酸系材料に活性成分(例えば、Ru、Pd、Pt等の貴金属)を担持または複合化してもよい。活性成分の担持は、含浸担持法、吸水担持法等の公知の触媒担持方法によって行うことができる。複合化の方法としては、ケイ酸カルシウム水和物およびその加熱物からなる群から選択されるケイ酸系材料の粉末と活性成分とを混合してスラリー化して塗布する方法、上記ケイ酸系材料の合成時に原料に活性成分を配合する方法等を挙げることができる。
【0023】
成膜工程では、必要に応じて、上記センサー材料を焼成するために熱処理を行うことができる。なお、上記センサー材料が検知素子の作製工程(例えば成膜工程)等において加熱されることによって、水和水の一部または全部が脱水すること、結晶構造が変化すること、および/または、相転移すること、もあり得る。そのような形態で上記センサー材料を検知素子に含むセンサーも、本発明の一態様にかかるセンサーに包含されるものとする。
【0024】
ケイ酸カルシウム水和物およびその加熱物からなる群から選択されるケイ酸系材料は、一般に化学的耐久性(例えば耐酸性、耐アルカリ性等)に優れる。したがって、上記センサー材料を含む検知素子を有するセンサーは、例えば、アルカリ性、酸性等の検体の検知を行った後、検知素子に捕捉された検体を熱処理等で脱離または分解させた後に再び検体の検知に使用することができる。また、ケイ酸カルシウム水和物およびその加熱物からなる群から選択されるケイ酸系材料は、一般に耐熱性に優れる。したがって、検知素子に捕捉された検体を脱離または分解するための熱処理を行った後、再び検体の検知に使用することができる。
【0025】
上記ケイ酸系材料の孔径サイズは、通常、一般的なガスセンサーの検知対象のガスの吸着が可能な孔径サイズであり、かつ、におい成分(例えばタバコの煙の粒子(一般に直径0.001~0.01μm程度))、ウイルス粒子(一般に直径0.1~2μm程度)等の吸着も可能な孔径サイズである。したがって、上記ケイ酸系材料は、各種検体を吸着して捕捉することができる。また、トバモライトは、一般に耐熱性に加えて圧力への耐久性も高いため、高温・高圧ガスの検知にも好適である。更に、例えば特表2021-508063号公報(特許文献1)、特開2009-300430号公報(特許文献2)および特開2006-071480号公報(特許文献3)の各文献において検知素子に使用されているゼオライトと比べて、トバモライトは比表面積が大きいため、単位質量あたりのガス吸着量が多い。したがって、トバモライトによれば、ゼオライトより高感度での検体検知が可能であり、センサーを小型化することもできる。
【実施例0026】
以下、本発明を実施例に基づき更に説明する。ただし、本発明は実施例に示す実施形態に限定されるものではない。
【0027】
[トバモライト粉末]
<原料>
ケイ酸源粉末:FengchenGroup社製アエロジル「W-200」
カルシウム源粉末:関東化学社製「水酸化カルシウム」、特級試薬
水:蒸留水
<作製方法>
Ca/Si(モル比)=5/6となるように原料粉末および蒸留水をPP(ポリプロピレン)容器に入れて、ハンドミキサーで混合してスラリーを調製した。調製したスラリーを型枠(SUS製バッド)に入れ、180℃、10気圧条件でオートクレーブにて5時間養生してトバモライトを合成した。合成により得られた生成物のXRD(X-Ray Diffraction)測定を行い、トバモライトのピークのみが検出される(詳しくはCa(OH)のピークが検出されない)ことを確認した。合成したトバモライトをハンマーで粗砕した後、ディスクミルで粉砕し、JIS Z 8801-1:2019に規定されている1mm篩(以下、「JIS 1mm篩」と記載する。)で0-1mmの粒度に調整した。
【0028】
[軽量気泡コンクリート粉末]
軽量気泡コンクリートブロックをハンマーで粗砕した後、ディスクミルで粉砕し、JIS 1mm篩で0-1mmの粒度に調整した。トバモライト量を、「ISO 5985:2002(Animal feedeing stuffs- Determination of ash insoluble in hydrochloric acid)」に準拠して測定した、詳しくは、残分をトバモライト量として算出したところ、60体積%であった。
【0029】
[ゼオライト粉末]
ジークライト社製「スーパーZ」をJIS 1mm篩で0-1mmの粒度に調整した。
【0030】
上記の各粉末は、内部温度105℃の乾燥器内に24時間静置して絶乾状態にしてから以下の各種試験に供試した。
【0031】
[試験方法]
<比表面積、細孔径分布>
ポロシメーター(水銀圧入法)で比表面積および平均細孔径を測定した(n=3)。
【0032】
【表1】
【0033】
<アンモニアガス吸着量>
(1)2Lテドラーバッグに各材料1gを入れて真空ポンプでバッグ内を脱気した後、市販の400mg/Lアンモニアガスを注入して静置した。5分経過した後のテドラーバッグ内のアンモニアガス濃度をガステック社製アンモニアガス検知管で測定し、各材料1gあたりのアンモニアガス吸着量および吸着率を算出した。
【0034】
【表2】
【0035】
上記(1)でのアンモニアガス吸着量試験後、各材料をアンモニアガスが分解する温度である450℃で30分間加熱してアンモニアガスを除去した後に上記(1)と同じ手法でアンモニアガス吸着量試験を実施することを合計5回繰り返して、アンモニアガス吸着率の推移を評価した。
【0036】
【表3】
【0037】
<硫化水素ガス吸着量>
2Lテドラーバッグに各材料1gを入れて真空ポンプでバッグ内を脱気した後、市販の5mg/L硫化水素ガスを注入して静置した。5分経過した後のテドラーバッグ内の硫化水素ガス濃度をガステック社製硫化水素ガス検知管で測定し、各材料1gあたりの硫化水素ガス吸着量および吸着率を算出した。表4には、ガステック社製硫化水素ガス検知管の検知限界値以下の場合、「<0.05」と表記し、試験終了時のガス濃度を0mg/Lとしてガス吸着量および吸着率を算出した。
【0038】
【表4】
【0039】
<におい成分(タバコの煙の粒子)吸着量>
各材料1gを入れた1Lガラス瓶中でタバコ1本を燃焼させて静置した。5分経過した後のガラス瓶内のにおい成分の強度値を神栄テクノロジー社製においセンサーで測定し、各材料1gあたりのにおい成分強度値および吸着率を算出した。
【0040】
【表5】
【0041】
以上の結果から、上記ケイ酸系材料が、ゼオライト粉末と比べて、上記の各種ガスおよびにおい成分を高吸着率で吸着可能であることを確認できる。このような材料は、各種センサーのためのセンサー材料として好適である。
更に、表3に示す結果から、上記ケイ酸系材料が、検体の吸着と除去を繰り返しても検体を高感度に検知可能であることを確認できる。
【0042】
<センサー機能の評価>
1.上記トバモライト粉末0.5gに蒸留水0.75mLを加え、乳鉢で混合してペーストを作製した。
2.長さ20mmに切断した外径6mmのアルミナ製チューブ(ハギテック社製)に等間隔となるように白金線(ケニス社製、直径0.3mm)を1重ずつ、2カ所に巻き付けた。
3.ミクロスパーテルを用いて、上記2に上記1のペーストを均一となるように(詳しくは白金線や白金線間に隙間がないように)塗布した。その後、炉内温度600℃の電気炉で2時間焼成した。こうして、上記ペーストが焼成した感応膜を有する検知素子を作製した。検知素子の内部に、発熱体としてニクロム線(アーテック社製、直径0.2mm)を巻き付けた直径2mmのアルミナ丸棒20mm(アズワン社製)を差し込んだ。
4.アルミナ丸棒に巻き付けたニクロム線とヒーター(ボルトスライダー)をリード線で繋ぎ、検知素子の白金線と測定器(デジタルマルチメータ)をリード線で繋いだ。その後、検知素子を50mL三口フラスコの中央の口から入れてゴム栓で蓋をした。
5.三口フラスコの残りの二口に外径6mmのアルミナ製チューブを通したゴム栓で蓋をした後、アルミナ製チューブにコック付きの1Lテドラーバッグを取り付けた。(ガス導入用およびガス排気用)
6.ガス導入用のテドラーバッグにアンモニアガスまたはタバコの煙を封入した。詳しくは、アンモニアガスについては、真空ポンプでテドラーバッグ内を脱気した後、市販の400mg/Lアンモニアガスを500mL封入した。タバコの煙については、500mLの空気を封入したテドラーバッグ内でタバコ1本を燃焼し、タバコの煙を発生させた。
7.検知素子を250℃に加熱した後、上記6でガスを封入したガス導入用テドラーバッグを手で押して、フラスコ内へアンモニアガスまたはタバコの煙を導入した。
7.アンモニアガスまたはタバコの煙導入時のデジタルマルチメータの電圧変化(抵抗)の有無を確認した。電圧変化があることは、感応膜にアンモニアガスまたはタバコの粒子が吸着しセンサーとして機能していることを示す。上記検知素子では、アンモニアガス導入時およびタバコの煙導入時のいずれにおいても、デジタルマルチメータの電圧変化(抵抗値変化)が確認された。以上の結果から、上記検知素子が、センサーの検知素子として機能することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の一態様は、各種検体検知用のセンサーの技術分野において有用である。