(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141568
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】表示装置および電子機器
(51)【国際特許分類】
G09F 9/00 20060101AFI20241003BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20241003BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20241003BHJP
H10K 59/35 20230101ALI20241003BHJP
H10K 50/85 20230101ALI20241003BHJP
H04N 9/30 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G09F9/00 313
G09F9/30 365
H10K59/10
H10K59/35
H10K50/85
H04N9/30
G09F9/00 358
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053298
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】色部 潤
【テーマコード(参考)】
3K107
5C060
5C094
5G435
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC06
3K107CC37
3K107EE21
3K107FF06
3K107FF13
5C060JA14
5C060JA19
5C060JB06
5C094AA08
5C094BA03
5C094BA27
5C094CA19
5C094EB05
5C094ED20
5C094FB14
5G435AA04
5G435BB05
5G435BB17
5G435CC09
5G435DD04
5G435FF08
5G435HH13
(57)【要約】
【課題】ユーザーが感じる白色を維持して、表示の色ムラを抑える。
【解決手段】カラーの画像光を出射する表示パネル10と、画像光を導光する導光部20と、を有し、表示パネル10から出射する画像光が白色である場合に、当該白色である画像光の色座標と、当該白色である画像光を前記導光部により導光した画像光の色座標と、が異なる。具体的には、表示パネル10が、赤、緑および青の加法混色によってカラーの画像光を出射し、表示パネル10における表示ムラが赤に起因している場合に、導光部20において、赤に対して補色の関係にあるシアンの分光透過率が、赤の分光透過率よりも小さく調整される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラーの画像光を出射する表示パネルと、
前記画像光を導光する導光部と、
を有し、
前記表示パネルから出射する画像光が白色である場合に、当該白色である画像光の色座標と、当該白色である画像光を前記導光部により導光した画像光の色座標と、
が異なる
ことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記表示パネルから出射する画像光の白色と、前記導光部により導光した画像光の色と、の色差が0.02よりも大きい
請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記表示パネルは、第1色、第2色および第3色の加法混色によってカラーの画像光を出射し、
前記表示パネルにおける表示ムラが第1色に起因している場合に、
前記導光部において、前記第1色に対する補色の分光透過率が、前記第1色の分光透過率よりも小さい、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記表示パネルにおける表示ムラが第1色に起因している場合とは、
観察角度が変化したときに、前記第1色の放射輝度変化が、前記第2色の放射輝度変化および前記第3色の放射輝度変化が大きい場合である、
請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の表示装置を有する電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL(electro luminescent)素子等の発光素子を含む電気光学装置では、カラー表示のために、例えばRGBのサブ画素から1つのカラー画素が構成される。また、発光素子に対して観察側に、所望の波長領域の光を透過するカラーフィルターが設けられた構成が知られている。このようなカラー画素を有する電気光学装置において、視野角(観察角度)による色変化のばらつきを抑制する技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
具体的には、各サブ副画素の形状と隣り合うサブ画素との距離が等しく、サブ画素のコンタクト位置が発光領域を区分けする境界線の交点に配置される。これにより、全てのサブ画素において発光領域同士の間隔が均等になるので、傾斜がついた方向から観察した際に、サブ画素から発光された光が隣り合うカラーフィルターに達するまでの角度がどのサブ画素でも等しくなる。したがって、サブ画素毎の色変化のばらつきが抑えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、実際には、配光特性、すなわち視野角に対する放射輝度変化の特性は、サブ画素毎に異なってしまう。具体的には、色毎に発光スペクトルが異なり、または、色毎に光共振構造おける光路長が異なるので、サブ画素毎に配光特性に差が生じる。このため、上記特許文献1のような技術を採用しても、サブ画素毎に配光特性に差が生じて、視野角によって色変化(色ムラ)が生じてしまう、という課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る表示装置は、カラーの画像光を出射する表示パネルと、前記画像光を導光する導光部と、を有し、前記表示パネルから出射する画像光が白色である場合に、当該白色である画像光の色座標と、当該白色である画像光を前記導光部により導光した画像光の色座標と、が異なる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態に係る表示装置の光路を示す図である。
【
図2】表示装置に適用される表示パネルを示す斜視図である。
【
図3】表示パネルの電気的な構成を示すブロック図である。
【
図4】表示パネルにおける画素回路の構成を示す図である。
【
図5】表示パネルの動作を説明するための図である。
【
図6】比較例に係る表示装置の白色座標を説明するための図である。
【
図7】比較例における導光部の分光透過率等を示す図である。
【
図8】実施形態の対策1に係る表示装置の白色座標等を説明するための図である。
【
図9】表示装置の観察角度に対する色差の変化特性を示す図である。
【
図10】表示装置の観察角度に対するxyz成分の変化特性を示す図である。
【
図11】表示装置の観察角度に対するRGB成分の変化特性を示す図である。
【
図12】R成分を弱めた場合の観察角度に対するRGB成分の変化特性を示す図である。
【
図13】観察角度に対するx成分の変化特性を示す図である。
【
図14】観察角度に対する色差の変化特性を示す図である。
【
図15】実施形態の対策1に係る表示装置の白色座標を説明するための図である。
【
図16】色ムラの原因およびその対策についてパターン化して示す図である。
【
図17】G成分を弱めた場合の観察角度に対するy成分の変化特性を示す図である。
【
図18】観察角度に対する色差の変化特性を示す図である。
【
図19】実施形態の対策2に係る表示装置の白色座標等を説明するための図である。
【
図20】実施形態の対策2に係る表示装置の白色座標を説明するための図である。
【
図21】B成分を弱めた場合の観察角度に対するz成分の変化特性を示す図である。
【
図22】観察角度に対する色差の変化特性を示す図である。
【
図23】実施形態の対策3に係る表示装置の白色座標等を説明するための図である。
【
図24】実施形態の対策3に係る表示装置の白色座標を説明するための図である。
【
図25】表示装置を適用したヘッドセットを示す図である。
【
図27】実施形態の第1変形例に係る表示装置の光路を示す図である。
【
図28】実施形態の第2変形例に係る表示装置の光路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図において、各部の寸法および縮尺は、実際のものと適宜に異ならせてある。また、以下に述べる実施の形態は、好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0009】
図1は、実施形態に係る表示装置1の構成を示す図であり、
図2は、表示装置1に適用される表示パネル10の外観を示す斜視図であり、
図3は、表示パネル10の電気的な構成を示す図である。
【0010】
表示装置1は、後述するようなヘッドセットに適用される。表示装置1は、
図1に示されるように、表示パネル10および導光部20を含む。表示パネル10は、画像光を生成するマイクロ・ディスプレイ・パネルである。表示パネル10は、複数のサブ画素や当該サブ画素を駆動する駆動回路などを含む。当該サブ画素および当該駆動回路は半導体基板に集積化される。半導体基板は、典型的にはシリコン基板であるが、他の半導体基板であってもよい。
【0011】
表示パネル10から画像光の出射方向は、
図1において3時の方向である。導光部20は、光経路部200、ミラー202およびハーフミラー204を含む。ミラー202は、表示パネル10から出射された画像光を図において6時の方向に反射させる。ハーフミラー204は、ミラー202によって反射された画像光を9時の方向に反射させる一方で、3時の方向から入射した外光を透過させる。
この構成によって、導光部20に対して9時の方向に位置するユーザーUは、表示パネル10による画像光を、外の様子と重ね合わせたシースルー状態で視認する。
なお、表示パネル100から出射後、導光部20に入射する前の画像光が観察される点を観察点Aとする。また、導光部20から出射して、ユーザーUに視認される画像光が観察される点を観察点Bとする。
【0012】
図2に示されるように、表示パネル10は、表示部100で開口する枠状のケース192に収納される。表示パネル10は、FPC基板194の一端に接続される。なお、FPCとは、Flexible Printed Circuitsの略称である。FPC基板194の他端は、図示省略された上位装置に接続される。
なお、図において上方向に表示パネル10から画像光が出射する。
【0013】
図3は、表示パネル10の電気的な構成を示す図である。表示パネル10は、制御回路30、データ信号出力回路50、表示部100および走査線駆動回路120に大別される。
表示部100では、m行の走査線12が図において横方向に沿って設けられ、(3n)列のデータ線14が、縦方向に沿って、かつ、各走査線12と互いに電気的に絶縁を保つように設けられる。なお、m、nは、2以上の整数である。
【0014】
走査線12における行(ロウ)を区別するために、図において上から順に1、2、…、(m-1)、m行と呼ぶことがある。なお、走査線12について、行を特定しないで一般的に説明するために、1以上m以下の整数iを用いて、i行目という表記することがある。
また、データ線14における列(カラム)を区別するために、図において左から順に1、2、3、…、(3n-2)、(3n-1)、(3n)列と呼ぶことがある。データ線14は、3列毎にグループ化される。グループを一般化して説明するために、1以上n以下の整数jを用いると、左から数えてj番目のグループには、(3j-2)列目、(3j-1)列目および(3j)列目の計3列のデータ線14が属している、ということになる。
【0015】
サブ画素11R、11Gおよび11Bは、m行で配列する走査線12と、(3n)列で配列するデータ線14とに対応して設けられる。具体的には、サブ画素11Rは、i行目の走査線12と(3j-2)列目のデータ線14との交差に対応して設けられる。サブ画素11Gは、i行目の走査線12と(3j-1)列目のデータ線14との交差に対応して設けられる。サブ画素11Bは、i行目の走査線12と(3j)列目のデータ線14との交差に対応して設けられる。
【0016】
サブ画素11Rは赤色成分の光を出射し、サブ画素11Gは緑色成分の光を出射し、サブ画素11Bは青色成分の光を出射する。サブ画素11R、11Bおよび11Gから出射する光の加法混色によって1つのカラー画素が表現される。なお、サブ画素11R、11Gおよび11Bにおける電気的な構成は同一である。このため、サブ画素について、特に区別する必要のない場合には、符号を11として説明する。
【0017】
表示パネル10には、上位装置から同期信号Syncおよび映像データDinが供給される。同期信号Syncには、映像データDinの垂直走査開始を指示する垂直同期信号や、水平走査開始を指示する水平同期信号、および、映像データの1画素分のタイミングを示すドットクロック信号が含まれる。映像データDinは、表示すべきサブ画素における階調を例えば赤、緑、青毎に8ビットで指定する。
制御回路30は、同期信号Syncに基づいて各部を制御する。具体的には、制御回路30は、各部を制御するために各種の制御信号を生成し、当該制御信号に合わせて、映像データDinを映像データDoutとして出力する。
なお、実施形態では、表示すべき画素と、表示部100において3つのサブ画素で表現される1つのカラー画素とが、一対一に対応する。
【0018】
走査線駆動回路120は、制御回路30による制御にしたがって、m行(3n)列で配列するサブ画素11を1行毎に駆動するための回路である。例えば、走査線駆動回路120は、1、2、3、…、(m-1)、m行目の走査線12に、順に走査信号/Gwr(1)、/Gwr(2)、…、/Gwr(m-1)、/Gwr(m)を供給する。一般的には、i行目の走査線12に供給される走査信号が/Gwr(i)と表記される。
【0019】
データ信号出力回路50は、走査線駆動回路120によって選択される行に位置するサブ画素11に、制御回路30による制御にしたがってデータ信号を、データ線14を介して出力する回路である。データ信号は、映像データDoutを、RGB毎にアナログに変換した信号である。すなわち、データ信号出力回路50は、選択される行における1~(3n)列のサブ画素11に対応する1行分の映像データDoutをアナログに変換し、この順で1~(3n)列目のデータ線14に出力する。
【0020】
図において1、2、3、…、(3n-2)、(3n-1)、(3n)列目のデータ線14に出力されるデータ信号が、順にVd(1)、Vd(2)、Vd(3)、…、Vd(3n-2)、Vd(3n-1)、Vd(3n)と表記される。一般的には、j列目におけるデータ線14に供給されるデータ信号がVd(j)と表記される。
【0021】
図4は、サブ画素11における電気的な構成を示す回路図である。図に示されるように、サブ画素11は、電気的にみれば、PチャネルMOS型のトランジスター121、122と、OLED130と、容量素子140とを含む。
【0022】
OLED130は、発光素子の一例であり、画素電極131と共通電極133とで発光層132を挟持する。画素電極131はアノードとして機能し、共通電極133はカソードとして機能する。OLED130では、アノードからカソードに向かって電流が流れると、アノードから注入された正孔とカソードから注入された電子とが発光層132で再結合して励起子が生成され、白色(無彩色)光が発生する。
発生した白色光は、図示省略された反射電極と半反射半透過層とで構成された光共振器にて共振し、サブ画素11Rであれば、赤色に対応して設定された共振波長で出射する。光共振器から光の出射側には当該赤色に対応した着色層(カラーフィルター)が設けられる。したがって、OLED130からの出射光は、光共振器および着色層を経て、ユーザーUに視認される。
なお、サブ画素11Gであれば、緑色に対応して設定された共振波長で出射し、緑色に対応した着色層を経て、ユーザーUに視認され、サブ画素11Bであれば、青色に対応して設定された共振波長で出射し、青色に対応した着色層を経て、ユーザーUに視認される。
【0023】
例えばi行(3j-2)列におけるサブ画素11のトランジスター121にあっては、ゲートノードgがトランジスター122のドレインノードに接続され、ソースノードが電圧Velの給電線116に接続され、ドレインノードがOLED130のアノードである画素電極131に接続される。
i行(3j-2)列におけるサブ画素11のトランジスター122にあっては、ゲートノードがi行目の走査線12に接続され、ソースノードが当該(3j-2)列目のデータ線14に接続される。OLED130のカソードとして機能する共通電極133は、電圧Vctの給電線118に接続される。
【0024】
図5は、表示パネル10の動作を説明するためのタイミングチャートである。
表示パネル10では、m行の走査線12がフレーム(V)の期間に1、2、3、…、m行目という順番で1行ずつ走査される。詳細には、図に示されるように、走査信号/Gwr(1)、/Gwr(2)、…、/Gwr(m-1)、/Gwr(m)が、走査線駆動回路120によって水平走査期間(H)毎に、順次排他的にLレベルになる。
なお、本実施形態では、走査信号/Gwr(1)~/Gwr(m)のうち、隣り合う走査信号においてLレベルになる期間が時間的に隔絶される。具体的には、走査信号/Gwr(i-1)がLレベルからHレベルに変化した後、次の走査信号/Gwr(i)が期間を置いてLレベルになる。この期間は水平帰線期間に相当する。
【0025】
本説明において1フレーム(V)の期間とは、映像データVidで指定される画像の1コマを表示するのに要する期間をいう。1フレーム(V)の期間の長さは、垂直同期期間と同じであれば、例えば同期信号Syncに含まれる垂直同期信号の周波数が60Hzであれば、当該垂直同期信号の1周期分に相当する16.7ミリ秒である。また、水平走査期間(H)とは、走査信号/Gwr(1)~/Gwr(m)が順にLレベルになるの時間の間隔であるが、図では便宜的に、水平走査期間(H)の開始タイミングを水平帰線期間のほぼ中心としている。
【0026】
走査信号/Gwr(1)~/Gwr(m)のうち、ある走査信号が、例えばi行目の走査線12に供給される走査信号/Gwr(i)がLレベルになると、(3j-2)列目でいえば、i行(3j-2)列のサブ画素11において、トランジスター122がオン状態になる。このため、当該サブ画素11におけるトランジスター121のゲートノードgには、(3j-2)列目のデータ線14に電気的に接続された状態になる。
【0027】
なお、本説明において、トランジスターまたはスイッチの「オン状態」とは、トランジスターにおけるソースノード・ドレインノードの間、または、スイッチの両端が電気的に閉じて低インピーダンス状態になることをいう。また、トランジスターまたはスイッチの「オフ状態」とは、ソースノード・ドレインノードの間、または、スイッチの両端が電気的に開いて高インピーダンス状態になることをいう。
また、本説明において「電気的に接続」される、または、単に「接続」される、とは、2以上の要素間の直接的または間接的な接続された、または、結合されている状態を意味する。「電気的に非接続」または、単に「非接続」とは、2以上の要素間が直接的または間接的な接続されていない、または、結合されていない状態を意味する。
【0028】
走査信号/Gwr(i)がLレベルになる水平走査期間(H)では、データ信号出力回路50が、映像データDoutで示されるi行1列~i行(3n)列のサブ画素に対応したR値、G値およびB値をアナログのデータ信号Vd(1)~Vd(n)に変換して、1~(3n)列目のデータ線14に出力する。(3j-2)列目でいえば、データ信号出力回路50は、映像データDoutにおいてi行(3j-2)列のサブ画素11Rに対応したR値のd(i,3j-2)をアナログのデータ信号Vd(j)に変換して、(3j-2)列目のデータ線14に出力する。
なお、走査信号/Gwr(i)より1行前の走査信号/Gwr(i-1)がLレベルになる水平走査期間(H)では、データ信号出力回路50は、(i-1)行(3j-2)列のサブ画素11RのR値d(i-1,3j-2)をアナログ信号のデータ信号Vd(3j-2)に変換して、(3j-2)列目のデータ線14に出力する。
【0029】
当該データ信号Vd(3j-2)は、(3j-2)列目のデータ線14を介して、i行(3j-2)列のサブ画素11Rにおけるトランジスター121のゲートノードgに供給され、容量素子140によって保持される。このため、当該トランジスター121がゲートノード・ソースノード間の電圧に応じた電流をOLED130に流す。
走査信号Gwr(i)がHレベルになり、トランジスター122がオフ状態になっても、データ信号Vd(3j-2)の電圧は、容量素子140の一端に保持されるので、OLED130には電流が流れ続ける。したがって、i行(3j-2)列のサブ画素11では、1フレーム(V)の期間が経過してトランジスター122が再度オンしてデータ信号の電圧が再度印加されるまで、OLED130は、容量素子140によって保持された電圧、すなわち階調に応じた明るさで発光し続ける。
【0030】
なお、ここではi行(3j-2)列のサブ画素11について説明したが、i行目において(3j-2)列以外のOLED130についても、映像データDoutで示される放射輝度で発光する。
また、i行目以外におけるサブ画素11の各OLED130についても、走査信号/Gwr(1)~/Gwr(m)が順にLレベルになることによって、映像データDoutで示される放射輝度で発光する。
【0031】
したがって、表示パネル10では、1フレーム(V)の期間において、1行1列からm行(3n)列までのすべてのサブ画素11における各OLED130が、映像データDoutで示される放射輝度で発光し、これにより、1コマの画像が表示される。
【0032】
上述したように、OLED130それ自体は白色で発光し、光共振器および着色層による着色を経て、サブ画素11Rでは赤色で、サブ画素11Gでは緑色で、サブ画素11Bでは青色で、それぞれユーザーUに視認される。
【0033】
従来の技術である比較例では、観察点Aでの白色光の色座標と、観察点Bでの白色点の色座標とが変わらないように、表示パネル10と導光部20とが設計される。
具体的には、白色点の色座標は、CIE色度図の色座標において、
図6の左欄および
図7に示されるように、観察点Aでの白色光の色座標(x、y)と、観察点Bでの白色点の色座標(x、y)とが、いずれも(0.31、0.32)となるように、表示パネル10と導光部20とが設計される。
【0034】
なお、比較例(および本実施形態)では、
図6の右欄に示されるように、表示パネル10において、サブ画素11Rから出射される赤色成分の波長は420~500nmであり、サブ画素11Gから出射される緑色成分の波長は500~580nmであり、サブ画素11Rから出射される青色成分の波長は580~680nmである。
また、上記のように設計された比較例の導光部20の分光透過率では、上記赤色成分の透過率がTrであり、上記緑色成分の透過率がTgであり、上記青色成分の透過率がTbであるとする。
【0035】
本実施形態では、
図8に示されるように、観察点Aにおける白色点の色座標と、観察点Bにおける白色点の色座標とが異なるように、表示パネル10の白色点と、導光部20の分光透過率とが設計される。このような設計について詳述する。
【0036】
図9は、表示パネル10が白色を発光する場合の配光特性を示す一例である。図において、横軸は表示パネル10に対して垂直方向を角度ゼロとした観察角度であり、縦軸は、Δu’v’である。Δu’v’は、ある2つの色を比較した場合に、UV色度図における当該2つの色座標の距離を示し、この説明における2つの色のうち、1つの色は、観察角度がゼロである場合に観察される色であり、他の1つは観察角度を変化させた場合に観察される色である。距離Δu’v’は、色変化量または色差とも呼ばれる。距離Δu’v’が0.02よりも大きい場合、その2つの色の違いを人間が知覚できるといわれている。換言すれば、ある2つの色を比較した場合に、距離Δu’v’が0.02よりも以下である場合、その2つの色の違いを人間が知覚できない。
図に示される配光特性では、観察角度がゼロ度から大きくなるにつれて、Δu’v’が増加する。
【0037】
図10は、上記配光特性において、色変化の原因を、XYZ表色系におけるx成分、y成分およびz成分で分けて示す図である。図において、横軸は、観察角度であり、縦軸は、光の相対強度であり、観察角度が0度の場合の強度を「1」として正規化している。
図10に示されるように、x成分の配光特性がy成分およびz成分に比べて弱い場合がある。すなわち、観察角度の変化に対してx成分では、y成分およびz成分に対して減衰が大きい。この場合、色変化の主因は、x成分の配光特性がy成分およびz成分に比べて弱いため、と考えられる。
【0038】
図11は、x成分を、R成分、G成分、B成分の強度に分解して示す図である。なお、縦軸は、強度を示す任意の単位である。
白色光のx成分は、サブ画素11R、11G、11Bからの強度を足し合わせた和になる。このため、
図11において、最も強度の高いものの、配光特性が悪いサブ画素11Rの配光特性が、白色光のx成分の配光特性において支配的であるということができる。
【0039】
したがって、
図12においてサブ画素11Rの強度を細実線から太実線で示されるように落として、サブ画素11Rの影響力を小さくするように調整することで、
図13において、白色光のx成分の配光特性が、細実線から太実線で示されるように向上する。これによって、
図14において白色光の色変化が、細実線から太実線で示されるように抑えられる。これが本実施形態における第1のポイントである。
【0040】
ただし、配光特性を向上させるため、表示パネル10においてサブ画素の強度を調節すると、白色座標がズレてしまう。そこで、このズレた座標を導光部20の分光透過率で再調整する。この再調整が本実施形態における第2のポイントである。なお、導光部20は、複数の光学素子、具体の組み合わせである。このため、導光部20を構成する全光学素子をまとめた総合的な透過率を、導光部20の分光透過率とする。
【0041】
例えば、上記のようにサブ画素11Rの強度を落とした場合、白色座標は、Rの補色であるシアン方向へズレてしまう。具体的には、
図15の左欄または
図8に示されるように、観察点Aにおける白色点の色座標(x、y)が(0.28、0.35)になって本来の白色点の色座標(0.31、0.32)からズレてしまう。
なお、補色とは、ある色に対して、色相環で正反対に位置する関係の色をいう。例えばRに対する補色はシアンであり、Gに対する補色はマゼンタであり、Bに対する補色はイエローである。
【0042】
本実施形態では、Rの波長成分が強くなるように、または、Gの波長成分とBの波長成分とが弱くなるように、導光部20の分光透過率が調整される。具体的には、導光部20の分光透過率が、
図15の右欄に示されるように、赤色成分の透過率がTrからαだけ強められて、(Tr+α)に調整され、緑色成分の透過率がTgからβだけ弱められて、(Tg-β)に調整され、青色成分の透過率がTbからγだけ弱められて、(Tb-γ)に調整される。
なお、α、β、γは、いずれも正値であり、個々の値は、導光部20を構成する全光学素子によって定められる。
【0043】
このような調整によって、
図8に示されるように観察点Bにおける白色点の色座標をシアン寄りから元の白色へ戻すことができる。
このようにすることで、本実施形態では、ユーザーUが感じる白色をそのままに、表示色ズレ(色ムラ)を抑えることができる。
【0044】
なお、観察点Aにおいて観察される色または観察点Bにおいて観察される色と、色座標(0.31、0.32)の白色との色差が0.02以下であれば、2つの色の違いをユーザーUが知覚できないので、表示パネル10における白色の調整、または/および、導光部20の分光透過率の調整が不要である。また、観察点Aにおいて観察される色と、観察点Bにおいて観察される色との色差が0.02以下であれば、同様に、表示パネル10における白色の調整、または/および、導光部20の分光透過率の調整が不要である。
【0045】
図16は、色ムラの原因およびその対策についてパターン化して示す図である。
まず、実施形態のように表示パネル10においてサブ画素11Rの配光特性が悪い場合について説明する。この場合、図において対策1に記載されているように、サブ画素11Rにおける発光強度が弱くなるように(
図12参照)、または/および、サブ画素11G、11Bにおける発光強度が強くなるように調整される。このように調整されると、白色光のx成分の配光特性が
図13において細実線から太実線に示されるように改善され、白色光の色変化が、
図14において細実線から太実線に示されるように抑えられる。
【0046】
ただし、観察点Aにおける白色座標は、
図15の左欄または
図8に示されるようにシアン寄りになる。すなわち、表示パネル10の表示ムラは、シアンになる。そこで、導光部20の分光透過率は、GとBとの波長成分が弱くなるように、または/および、Rの波長成分が強くなるように、調整される。この調整によって、観察点Bにおける白色座標がシアン寄りから白色に戻される(
図8参照)。
これによって、表示パネル10におけるシアン寄りの表示ムラが抑えられる。
【0047】
次に、表示パネル10においてサブ画素11Gの配光特性が悪い場合について説明する。この場合、
図16において対策2に記載されているように、サブ画素11Gにおける発光強度が弱くなるように、または/および、サブ画素11G、11Bにおける発光強度が強くなるように調整される。このように調整されると、白色光のy成分の配光特性が
図17において細実線から太実線に示されるよう向上し、白色光の色変化が、
図18において細実線から太実線に示されるように抑えられる。
【0048】
ただし、このように調整されると、例えば
図19の左欄または
図20に示されるように、観察点Aにおける白色点の座標(x、y)が(0.35、0.28)になって本来の白色座標(0.31、0.32)からズレてしまって、観察点Aにおける白色座標は、シアン寄りになる。すなわち、表示パネル10の表示ムラは、シアンになる。
そこで、導光部20の分光透過率は、BとRとの波長成分が弱くなるように、または/および、Gの波長成分が強くなるように、調整される。具体的には、導光部20の分光透過率が、
図19の右欄に示されるように、赤色成分の透過率がTrからαだけ弱められて、(Tr-α)に調整され、緑色成分の透過率がTgからβだけ強められて、(Tg+β)に調整され、青色成分の透過率がTbからγだけ弱められて、(Tb-γ)に調整される。
この調整によって、観察点Bにおける白色座標がマゼンタ寄りから白色に戻されるので(
図20参照)、表示パネル10におけるシアン寄りの表示ムラが抑えられる。
【0049】
続いて、表示パネル10においてサブ画素11Bの配光特性が悪い場合について説明する。この場合、
図16において対策3に記載されているように、サブ画素11Bにおける発光強度が弱くなるように、または/および、サブ画素11G、11Bにおける発光強度が強くなるように調整される。このように調整されると、白色光のz成分の配光特性が
図21において細実線から太実線に示されるよう向上し、白色光の色変化が、
図22において細実線から太実線に示されるように抑えられる。
【0050】
ただし、このように調整されると、例えば
図23の左欄または
図24に示されるように、観察点Aにおける白色点の座標(x、y)が(0.35、0.34)になって本来の白色座標(0.31、0.32)からズレてしまって、観察点Aにおける白色座標は、イエロー寄りになる。すなわち、表示パネル10の表示ムラは、イエローになる。
そこで、導光部20の分光透過率は、RとGとの波長成分が弱くなるように、または/および、Bの波長成分が強くなるように、調整される。具体的には、導光部20の分光透過率が、
図23の右欄に示されるように、赤色成分の透過率がTrからαだけ弱められて、(Tr-α)に調整され、緑色成分の透過率がTgからβだけ弱められて、(Tg-β)に調整され、青色成分の透過率がTbからγだけ強められて、(Tb+γ)に調整される。
この調整によって、観察点Bにおける白色座標がイエロー寄りから白色に戻されるので(
図24参照)、表示パネル10におけるイエロー寄りの表示ムラが抑えられる。
【0051】
次に、実施形態に係る表示装置1を適用した電子機器について説明する。
【0052】
図25は、表示装置1を適用したヘッドマウントディスプレイシステムのヘッドセット300の外観を示す図であり、
図26は、ヘッドセット300の光学的な構成を示す図である。
ヘッドセット300は、外観的には、一般的な眼鏡と同様にテンプル310や、ブリッジ320、レンズ301L、301Rを有する。また、ヘッドセット300は、
図26に示されるように、ブリッジ320近傍であってレンズ301L、301Rの奥側(図において下側)には、左眼用の表示装置1Lと右眼用の表示装置1Rとが設けられる。
【0053】
左眼用の表示装置1Lは、表示パネル10Lと導光部20Lとを含む。表示パネル10Lの画像光は、
図26において上方向に出射するように配置している。これによって表示パネル10Lによる画像光は、導光部20Lによって2回反射して、図において下方向に出射する。なお、導光部20Lは、外の様子をシースルー状態でユーザーに視認させる点については、
図1で説明した通りである。
右眼用の表示装置1Rは、表示パネル10Rと導光部20Rとを含み、ヘッドセット300における中心Cenを基準にして、表示装置1Lとは対称で配置する。
【0054】
この構成において、ヘッドセット300を装着したユーザーは、表示パネル10L、10Rによる画像光を、外の様子と重ね合わせたシースルー状態で観察することができる。
また、このヘッドセット300において、視差を伴う両眼画像のうち、左眼用の画像光を表示パネル10Lが出射し、右眼用の画像光を表示パネル10Rが出射すると、ユーザーに、出射された画像光があたかも奥行きや立体感を持つかのように知覚させることができる。
【0055】
なお、表示装置1を適用した電子機器については、ヘッドマウントディスプレイのヘッドセットのほかにも、ビデオカメラやレンズ交換式のデジタルカメラなどにおける電子式ビューファインダー、携帯情報端末、腕時計の表示部、投写式プロジェクターのライトバルブなどにも適用可能である。
【0056】
表示装置1は、
図1に示されるような構成に限られず、例えば
図27や
図28に示される構成でもよい。
図27は、実施形態の第1変形例に係る表示装置1の光路を示す図である。第1変形例に係る表示装置1は、導光部20がハーフミラー206と凹面鏡208で構成された例である。
詳細には、
図27において、表示パネル10から出射した画像光がハーフミラー206で反射して凹面鏡208に入射し、凹面鏡208で反射した画像光がハーフミラー206を透過する。また、外光は、凹面鏡208およびハーフミラー206を透過する。
【0057】
図28は、実施形態の第2変形例に係る表示装置1の光路を示す図である。第2変形例に係る表示装置1は、導光部20がミラー202と複数のハーフミラー204とで構成された例である。表示パネル10から導光部20を経てユーザーUに視認されるまでの光経路は、ハーフミラー206が複数である点以外、
図1に示した構成と同様である。
【0058】
以上に例示した形態から、例えば以下の態様が把握される。
【0059】
ひとつの態様(態様1)に係る表示装置は、カラーの画像光を出射する表示パネルと、前記画像光を導光する導光部と、を有し、前記表示パネルから出射する画像光が白色である場合に、当該白色である画像光の色座標と、当該白色である画像光を前記導光部により導光した画像光の色座標と、が異なる。態様1によれば、ユーザーが感じる白色を維持して、表示の色ムラを抑えることができる。
【0060】
態様1の具体的な態様(態様2)に係る表示装置は、前記表示パネルから出射する画像光の白色と、前記導光部により導光した画像光の色と、の色差が0.02よりも大きい。2つの色の色差が0.02以下であると、2つの色の違いを人間が知覚できないので、無視することができる。
【0061】
態様1の具体的な態様(態様3)に係る表示装置において、前記表示パネルは、第1色、第2色および第3色の加法混色によってカラーの画像光を出射し、前記表示パネルにおける表示ムラが第1色に起因している場合に、前記導光部において、前記第1色に対する補色の分光透過率が、前記第1色の分光透過率よりも小さい。
態様3に係る表示装置において、前記表示パネルにおける表示ムラが第1色に起因している場合とは、態様4に係る表示装置のように、表示パネルの観察角度が変化したときに、前記第1色の放射輝度変化が、前記第2色の放射輝度変化および前記第3色の放射輝度変化が大きい場合であり、前記第1色の放射輝度が、前記第2色の放射輝度および前記第3色の放射輝度に対して相対的に弱く調整された場合をいう。
例えば、赤が第1色の一例であり、緑が第2色の一例であり、青が第3色の一例である。
【0062】
態様5に係る電子機器は、態様1乃至4のいずれかに記載の表示装置を有する。態様5によれば、ユーザーが感じる白色を維持して、表示の色ムラを抑えた電子機器が提供される。
【符号の説明】
【0063】
1…表示装置、10…表示パネル、20…導光部、200…光経路部、202…ミラー、204…ハーフミラー、A、B…観察点。