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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141569
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】光モジュール
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/42 20060101AFI20241003BHJP
   G02B 6/12 20060101ALI20241003BHJP
   G02B 6/30 20060101ALI20241003BHJP
   G02B 6/32 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G02B6/42
G02B6/12 301
G02B6/12 361
G02B6/30
G02B6/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053299
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】上村 浩
(72)【発明者】
【氏名】田中 啓二
【テーマコード(参考)】
2H137
2H147
【Fターム(参考)】
2H137AA05
2H137AB01
2H137AB09
2H137AB12
2H137AC01
2H137BA03
2H137BA15
2H137BA45
2H137BA52
2H137BA55
2H137BB02
2H137BB12
2H137BB26
2H137BB27
2H137BC12
2H137BC76
2H137CA12F
2H137CA13A
2H137CA15A
2H137CA25A
2H137CA49
2H137CB23
2H137CC01
2H137CC02
2H137CC03
2H137CC05
2H137DA11
2H137DA21
2H137DA32
2H137DA34
2H137DA39
2H137DB08
2H137DB09
2H137DB11
2H137DB13
2H137EA02
2H137EA04
2H137GA08
2H137HA01
2H137HA05
2H147AB02
2H147AB04
2H147AB05
2H147BD02
2H147BD10
2H147BE15
2H147CA05
2H147CA08
2H147CA27
2H147CA30
2H147CB01
2H147CB03
2H147CC02
2H147CC05
2H147CC12
2H147CC13
2H147CC14
2H147CD02
2H147CD12
2H147DA02
2H147DA05
2H147DA07
2H147DA08
2H147DA10
2H147DA15
2H147EA10D
2H147EA14A
2H147EA14B
2H147EA14C
2H147EA16A
2H147EA16B
2H147EA25B
2H147FB13
2H147FC01
2H147FC08
2H147FD08
2H147FE04
2H147GA06
2H147GA19
2H147GA26
2H147GA30
(57)【要約】
【課題】光素子の放熱、および光信号の入出力を適切に行える光モジュールを提供する。
【解決手段】一実施形態に係る光モジュールは、第1面と、第1面と反対の第2面と、第1面と第2面との間を貫通するビアと、第1面と第2面との間に設けられた第1導波路とを有するガラス製の基板と、第1面に実装され、光信号を入出力する光素子と、第2面に実装され、ビアを介して光素子に熱的に接続される熱伝導部材と、第1面に設けられた第2導波路と、を備える。光信号は、第2導波路および第1導波路を介して外部と入出力される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と、前記第1面と反対の第2面と、前記第1面と前記第2面との間を貫通するビアと、前記第1面と前記第2面との間に設けられた第1導波路とを有するガラス製の基板と、
前記第1面に実装され、光信号を入出力する光素子と、
前記第2面に実装され、前記ビアを介して前記光素子に熱的に接続される熱伝導部材と、
前記第1面に設けられた第2導波路と、
を備え、
前記光信号は、前記第2導波路および前記第1導波路を介して外部と入出力される、
光モジュール。
【請求項2】
前記基板の前記第1面は、凹部を有し、
前記光素子は、前記凹部の中に実装されており、
前記第2導波路は、前記凹部の中に設けられている、
請求項1に記載の光モジュール。
【請求項3】
前記基板は、第1方向、および前記第1方向に交差する第2方向に延在するとともに、前記第1方向および前記第2方向の双方に交差する第3方向に厚みを有し、
前記第2導波路は、前記凹部の内面を介して前記第1導波路に光結合されており、
前記内面は、前記第2方向に対して傾斜している、
請求項2に記載の光モジュール。
【請求項4】
前記基板は、第1方向、および前記第1方向に交差する第2方向に延在するとともに、前記第1方向および前記第2方向の双方に交差する第3方向に厚みを有し、
前記第2導波路は、前記凹部の内面を介して前記第1導波路に光結合されており、
前記内面は、前記第3方向に対して傾斜している、
請求項2に記載の光モジュール。
【請求項5】
前記第2導波路は、前記凹部の内面を介して前記第1導波路に光結合されており、
前記内面に反射防止膜が設けられている、
請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の光モジュール。
【請求項6】
前記第2導波路は、前記第1導波路とエバネッセント結合されている、
請求項1または請求項2に記載の光モジュール。
【請求項7】
光ファイバをさらに有し、
前記第1導波路は、前記第2導波路と前記光ファイバとの間に光結合されている、
請求項1または請求項2に記載の光モジュール。
【請求項8】
前記第1導波路は、前記第1面と前記第2面との間を貫通する、
請求項1または請求項2に記載の光モジュール。
【請求項9】
第1面と、前記第1面と反対の第2面と、前記第1面と前記第2面との間を貫通するビアと、前記第1面と前記第2面との間に設けられた第1導波路とを有するガラス製の基板と、
前記第1面に実装され、光信号を入出力する光素子と、
前記第2面に実装され、前記ビアを介して前記光素子に熱的に接続される熱伝導部材と、
を備え、
前記基板は、第1方向、および前記第1方向に交差する第2方向に延在するとともに、前記第1方向および前記第2方向の双方に交差する第3方向に厚みを有し、
前記光素子は、前記第1方向に平行な光軸を有する第1レンズを有し、
前記基板は、前記第1レンズと光結合する第2レンズを有し、
前記光信号は、前記第1レンズ、前記第2レンズおよび前記第1導波路を介して外部と入出力される、
光モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、光モジュールが記載されている。光モジュールは、内部空間を有する筐体と、筐体の内部空間に収容される光部品と、筐体の内部空間を封止する蓋とを備える。筐体は、その開口が蓋で閉塞されることによって気密封止される。光部品は、光源と、光送信回路と、光受信回路と、高速LSI(Large-Scale Integration)と、ヒートシンクブロックと、ペルチェ素子とを含む。ヒートシンクブロックは、高速LSIを冷却する冷却部品である。ペルチェ素子は、光源、光送信回路、および光受信回路を冷却する冷却部品である。ペルチェ素子は、光送信回路および光受信回路と共に筐体の内部において気密封止されている。
【0003】
特許文献2には、光部品が記載されている。光部品は、筐体と、筐体に形成された配線と、筐体の内部に配置された光回路素子と、光回路素子を搭載するマウントと、配線基板と、蓋とを有する。光部品は、外部の配線基板にフリップチップ実装されている。光回路素子は、光導波路で形成された光回路を有する。光回路のうち、光電気変換と電気光変換を担う部分は、ボンディングワイヤ等の接続手段によって配線に接続されている。筐体は、蓋によって密封されるので、筐体の内部への水分等の侵入が防止される。マウントに代えて温度制御素子が配置される場合があり、この場合、温度制御素子は光回路と共に密封される。
【0004】
非特許文献1には、BGA(Ball Grid Array)基板と、BGA基板に搭載されたチップと、チップに搭載されたTEC(Thermo Electric Cooler)と、チップおよびTECを収容する筐体とを備える。チップの上面(回路面)は、BGA基板上にフリップチップ実装されている。チップの下面(基板面)は、TECを介してIHS(Integrated Heat Spreader)に接続されている。チップは、BGA基板およびTECによって上下から押さえられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-173875号公報
【特許文献2】特開2020-086389号公報
【特許文献3】米国特許出願公開第2021/0389532号明細書
【特許文献4】米国特許第6320257号明細書
【特許文献5】米国特許第6502999号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】“A thermoelectric cooler integrated with IHS on a FC-PBGA package”,Chih-Kuang Yu,Chun-Kai Liu, Ming-Ji Dai, Sheng-Liang Kuo, and Chung-Yen Hsu,2007 26thInternational Conference on Thermoelectrics.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、配線基板に実装される光素子は、狭い空間の内部に配置されることがある。また、光素子は、熱による影響を受けることがあるため、放熱が求められる。したがって、狭い空間の内部に配置されても、放熱とともに光信号の入出力を適切に行えることが求められうる。
【0008】
本開示は、光素子の放熱、および光信号の入出力を適切に行える光モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係る光モジュールは、第1面と、第1面と反対の第2面と、第1面と第2面との間を貫通するビアと、第1面と第2面との間に設けられた第1導波路とを有するガラス製の基板と、第1面に実装され、光信号を入出力する光素子と、第2面に実装され、ビアを介して光素子に熱的に接続される熱伝導部材と、第1面に設けられた第2導波路と、を備える。光信号は、第2導波路および第1導波路を介して外部と入出力される。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、光素子の放熱、および光信号の入出力を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態に係る光モジュールを示す断面図である。
図2図2は、図1の光モジュールを模式的に示す平面図である。
図3図3は、第1導波路および第2導波路を示す図である。
図4図4は、第1導波路および第2導波路を示す図である。
図5図5は、第1導波路および光ファイバを示す図である。
図6図6は、第1変形例に係る光モジュールを示す断面図である。
図7図7は、第2変形例に係る第1導波路および第2導波路を示す図である。
図8図8は、第3変形例に係る第1導波路および第2導波路を示す図である。
図9図9は、第4変形例に係る第1導波路および第2導波路を示す図である。
図10図10は、第5変形例に係る第1導波路および第2導波路を示す図である。
図11図11は、第6変形例に係る第1導波路および第2導波路を示す図である。
図12図12は、第7変形例に係る光モジュールを示す断面図である。
図13図13は、第8変形例に係る光モジュールを示す断面図である。
図14図14は、第9変形例に係る光モジュールを示す断面図である。
図15図15は、第10変形例に係る光モジュールを示す断面図である。
図16図16は、図15の光モジュールの第2レンズを示す図である。
図17図17は、第11変形例に係る光モジュールを示す断面図である。
図18図18は、図17の光モジュールの部分拡大図である。
図19図19は、第12変形例に係る光モジュールを示す断面図である。
図20図20は、第13変形例に係る光モジュールを示す断面図である。
図21図21は、第14変形例に係る光モジュールを示す断面図である。
図22図22は、第15変形例に係る光モジュールを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[本開示の実施形態の説明]
最初に、本開示に係る光モジュールの実施形態を列記して説明する。一実施形態に係る光モジュールは、第1面と、第1面と反対の第2面と、第1面と第2面との間を貫通するビアと、第1面と第2面との間に設けられた第1導波路とを有するガラス製の基板と、第1面に実装され、光信号を入出力する光素子と、第2面に実装され、ビアを介して光素子に熱的に接続される熱伝導部材と、第1面に設けられた第2導波路と、を備える。光信号は、第2導波路および第1導波路を介して外部と入出力される。
【0013】
この光モジュールは、第1面、第2面およびビアを有するガラス製の基板と、光素子と、熱伝導部材とを備える。光素子は基板の第1面に実装されており、第1面とは反対の第2面には熱伝導部材が設けられている。第2面に設けられた熱伝導部材はビアを介して光素子と熱的に接続される。したがって、光素子から生じる熱はビアおよび熱伝導部材を介して基板から放出されるので、光素子を放熱させることができる。基板の第1面と第2面との間には第1導波路が設けられており、基板の第1面には第2導波路が設けられている。光信号は、第2導波路および第1導波路を介して光モジュールの外部と入出力される。したがって、光素子は、第2導波路および第1導波路を介して光モジュールの外部と光結合するので、光信号の入出力を適切に行うことができる。
【0014】
(2)上記(1)において、基板の第1面は、凹部を有してもよい。光素子は、凹部の中に実装されていてもよく、第2導波路は、凹部の中に設けられていてもよい。この場合、凹部に光素子が実装され、第2導波路が凹部の中に設けられることにより、光モジュールの厚みを抑えることができる。
【0015】
(3)上記(2)において、基板は、第1方向、および第1方向に交差する第2方向に延在するとともに、第1方向および第2方向の双方に交差する第3方向に厚みを有してもよい。第2導波路は、凹部の内面を介して第1導波路に光結合されていてもよく、内面は、第2方向に対して傾斜していてもよい。この場合、内面における光信号の反射を抑制できる。
【0016】
(4)上記(2)において、基板は、第1方向、および第1方向に交差する第2方向に延在するとともに、第1方向および第2方向の双方に交差する第3方向に厚みを有してもよい。第2導波路は、凹部の内面を介して第1導波路に光結合されていてもよく、内面は、第3方向に対して傾斜していてもよい。この場合、内面における光信号の反射を抑制できる。
【0017】
(5)上記(2)から(4)のいずれかにおいて、第2導波路は、凹部の内面を介して第1導波路に光結合されていてもよく、内面に反射防止膜が設けられていてもよい。この場合、内面における光信号の反射を抑制できる。
【0018】
(6)上記(1)から(5)のいずれかにおいて、第2導波路は、第1導波路とエバネッセント結合されていてもよい。
【0019】
(7)上記(1)から(6)のいずれかにおいて、光モジュールは、光ファイバをさらに有してもよく、第1導波路は、第2導波路と光ファイバとの間に光結合されていてもよい。
【0020】
(8)上記(1)から(7)のいずれかにおいて、第1導波路は、第1面と第2面との間を貫通してもよい。
【0021】
別の実施形態に係る光モジュールは、(9)第1面と、第1面と反対の第2面と、第1面と第2面との間を貫通するビアと、第1面と第2面との間に設けられた第1導波路とを有するガラス製の基板と、第1面に実装され、光信号を入出力する光素子と、第2面に実装され、ビアを介して光素子に熱的に接続される熱伝導部材と、を備える。基板は、第1方向、および第1方向に交差する第2方向に延在するとともに、第1方向および第2方向の双方に交差する第3方向に厚みを有する。光素子は、第1方向に平行な光軸を有する第1レンズを有する。基板は、第1レンズと光結合する第2レンズを有する。光信号は、第1レンズ、第2レンズおよび第1導波路を介して外部と入出力される。
【0022】
この光モジュールは、第1面、第2面およびビアを有するガラス製の基板と、光素子と、熱伝導部材とを備え、光素子は基板の第1面に実装されている。第2面に設けられた熱伝導部材はビアを介して光素子と熱的に接続される。したがって、光素子から生じる熱はビアおよび熱伝導部材を介して基板から放出されるので、光素子を放熱させることができる。基板には第2レンズが設けられており、光素子には第2レンズと光結合する第1レンズが設けられている。光信号は、第1レンズ、第2レンズおよび第1導波路を介して光モジュールの外部と入出力される。したがって、光素子は、第1レンズ、第2レンズおよび第1導波路を介して光モジュールの外部と光結合するので、光信号の入出力を適切に行うことができる。
【0023】
[本開示の実施形態の詳細]
実施形態に係る光モジュールの種々の例を以下で図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、以下の例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示され、特許請求の範囲と均等の範囲における全ての変更が含まれることが意図される。図面の説明において、同一または相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。図面は、理解の容易化のため、一部を簡略化または誇張して描いている場合があり、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
【0024】
図1は、本実施形態に係る光モジュール1を示す断面図である。図2は、光モジュール1を模式的に示す平面図である。図1および図2に示されるように、光モジュール1は、基板2と、光素子5とを備える。光モジュール1は、例えば、電気信号を光信号に変換して外部に送信する光送信モジュールである。例えば、光モジュール1は、デジタルコヒーレント光伝送に用いられるコヒーレント光送信モジュールである。
【0025】
基板2は、ガラス製である。例えば、基板2はガラスインターポーザーである。基板2は、第1方向D1、および第1方向D1に交差する第2方向D2に延在している。基板2は、第1方向D1および第2方向D2の双方に交差する第3方向D3に厚みを有する。一例として、基板2の第1方向D1の長さL1は5mmであり、基板2の第2方向D2の長さW1は5mmである。基板2の第3方向D3の長さ(基板2の厚さ)T1は、例えば、0.5mmである。
【0026】
基板2は、例えば、ソーダ石灰ガラス(ソーダライムガラス)、ホウケイ酸ガラス、結晶化ガラス、および、石英ガラスのいずれかによって構成されている。例えば、基板2を構成するガラスの主成分は二酸化ケイ素(SiO)である。基板2は、ナトリウム(Na)およびカルシウム(Ca)の少なくともいずれかを含む組成物であってもよい。基板2の線膨張係数は、例えば、3~5[ppm/K]である。しかしながら、基板2の線膨張係数は、ガラスを構成する材料の組成を調整することにより、1[ppm/K]以下、または10[ppm/K]程度にすることができる。基板2の線膨張係数は、後述する光素子5の線膨張係数との差が小さいことが望ましい。この線膨張係数の差が小さいことにより、温度変化による膨張・収縮に起因する応力を低減し、光素子5の信頼性を向上することができる。
【0027】
基板2は、第1面2bと、第1面2bと反対の第2面2cと、第1面2bおよび第2面2cの間を貫通するビア2dとを有する。ビア2dは、第1面2bおよび第2面2cの間を貫通するように基板2に形成されているため、TGV(Through Glass Via)とも称される。ビア2dは、例えば第3方向D3に沿って延在する円柱状の形状を有する。
【0028】
第3方向D3に沿って見たとき(平面視)におけるビア2dの直径は、例えば、100μmである。ビア2dの第3方向D3の長さ(厚さ)は、例えば、300μmである。ビア2dの第3方向D3に沿った断面において、ビア2dとビア2dの周囲のガラス(基板2のビア2d以外の部分)との境界線の角度は第1面2bに対して垂直とは限らず、第1面2bに対して傾斜していてもよい。このように、ビア2dは、第1面2bに対して第1方向D1または第2方向D2に傾斜して延在していてもよい。ビア2dの第1面2bに垂直な断面での形状は、第1面2bから第2面2cに向かって細くなっていてもよいし、太くなっていてもよい。また、第1面2bから基板2の第3方向D3の中心に向かって細くなり、その後、当該中心から第2面2cに向かって太くなっていてもよい。ビア2dの直径は、ビア2dの断面形状が円形となる断面における直径の最大値を表すものとする。ビア2dの断面形状が楕円状の場合、ビア2dの直径は、長軸の長さ(長径)を表すものとする。
【0029】
基板2は、複数のビア2dを有する。複数のビア2dは、例えば、第1方向D1および第2方向D2のそれぞれに沿って並んでいる。例えば、基板2の平面視において、ビア2dは、一定のピッチで2次元に配列されている。ビア2dのピッチ(1つのビア2dの中心軸から当該ビア2dに隣接するビア2dの中心軸までの距離)は、例えば、250μmである。
【0030】
第1面2bは光素子5が実装される面である。第1面2bは、第1方向D1および第2方向D2の双方に延在している。第2面2cは、第1面2bとは反対側を向いており、第1方向D1および第2方向D2の双方に延在している。ビア2dは、第1面2bから第2面2cまで第3方向D3に沿って延在している。ビア2dには、例えば、金属が充填されている(フィルドビアとも称される)。
【0031】
ビア2dは、基板2の熱伝導率(基板2のビア2d以外のガラス部分の熱伝導率)より大きい熱伝導率を有し、光素子5に熱的に接続されている。ビア2dは、熱伝導経路として機能し、例えば光素子5から生じる熱を、基板2を構成するガラス材料よりも効率よく伝達する。ビア2dは、熱伝導を目的として使用されるため、サーマルビアとも称される。なお、ビア2dは、電気伝導を目的として使用することも可能である。
【0032】
具体例として、ビア2dには銅(Cu)が充填されている。ビア2dに充填された銅が周囲のガラス部分(基板2のビア2d以外の部分)に密着することにより、第1面2bと第2面2cとの間で基板2の気密性が確保される。例えば、ビア2dが形成された基板2のファインリーク試験によるリーク量は1.0×10-9[Pa・m/s]未満である。銅は熱伝導性が良好であるため、ビア2dに銅が充填されている場合、ビア2dをサーマルビアとして機能させることができる。
【0033】
銅(Cu)の熱伝導率は約400[W/(m・K)]である。よって、ビア2dの面内密度(第3方向D3に沿って見たときにおける基板2のガラス部分に対する複数のビア2dの銅の割合)が10%となるようにビア2dの個々の面積および密度が調整される場合、当該ガラス部分の熱伝導率をほぼゼロと実際より小さく見積もっても、ビア2dの部分(後述するサーマルパッドに相当する)の熱伝導率は平均で約40[W/(m・K)]となる。
【0034】
上記では、ビア2dが銅によって構成されている例について説明した。しかしながら、ビア2dには、半導体が充填されていてもよい。具体例として、ビア2dにシリコン(Si)が充填されていてもよい。Siの線膨張係数は約3~4[ppm/K]、Cuの線膨張係数は約18[ppm/K]、ガラスの線膨張係数は例えば約3~5[ppm/K]であるため、ビア2dをSiで充填した場合、ビア2dをCuで充填した場合に比べてビア2dの周囲のガラス部分との線膨張係数差が小さい。このため、例えば温度変化によって生じる応力を低減することができる。応力を低減することにより、Cuで充填した場合に比べてビア2dの直径を大きくすることが可能となる。Siの熱伝導率は、約160[W/(m・K)]であり、Cuの熱伝導率よりも小さい。しかしながら、ビア2dの面積を大きくすることで基板2のガラス部分の面積に対するビア2dの総面積の割合を大きくし、ビア2dの部分の熱伝導率を向上することができる。
【0035】
なお、ビア2dは、後述のサーマルパッドとして機能する電極2g,2fと同様の形状と同程度の面積を有する単一のビアとして形成されてもよい。当該単一のビアの内部は、Siで充填されていてもよい。基板2の平面視において当該単一のビアの形状は長方形状であってもよい。応力集中を抑制するため、長方形状のビアの四隅の角は丸められていてもよい。
【0036】
例えば、電極2f,2gは、銅によって構成された薄膜である。電極2f,2gの厚さは、例えば、1μm以上かつ10μm以下であり、一例として5μmである。電極2f,2gの表面は、例えば、金(Au)によってメッキされている。例えば、電極2f,2gは、金メッキと銅との間にニッケル(Ni)またはパラジウム(Pd)がメッキされて形成されていてもよい。例えば、電極2f,2gは、複数のビア2dを覆うパッド(サーマルパッド)である。電極2f,2gは、ビア2dを介して光素子5に熱的に接続される熱伝導部材である。例えば、光モジュール1を伝送装置に組み込んだ後、熱伝導部材である電極2f,2g上には、ヒートシンクまたはヒートスプレッダを搭載することができる。
【0037】
光素子5は、例えば、電気信号の送受信、および光信号Lの送受信を行う。光信号Lの波長帯域は、一例として、1.2μm以上かつ1.7μm以下である。例えば、光素子5は光変調器である。一例として、光素子5は、IQ光変調器である。しかしながら、光素子5はIQ光変調器以外の光学素子であってもよい。例えば、光素子5は、半導体レーザまたは受光素子であってもよい。一例として、半導体レーザはレーザダイオードによって構成されており、受光素子はフォトダイオードによって構成されている。光素子5は、例えば、リン化インジウム(InP)によって構成されている。この場合、光素子5の線膨張係数は約4.6[ppm/K]である。一例として、光素子5の第1方向D1の長さL2は3mmであり、光素子5の第2方向D2の長さW2は3mmである。光素子5の厚さ(第3方向D3の長さ)は、例えば、0.1mmである。
【0038】
光素子5は、基板2の反対を向く第1面5b(回路面)、および基板2に対向する第2面5c(基板面)を有する。光素子5は、基板2に対して基板面(第2面)5cが基板2を向くように実装される。第1面5b(回路面)が基板2と反対を向くため、フェイスアップ実装と称される。回路面は、光導波路、光スプリッタまたは光カプラ等の光回路の構成要素が形成されている面である。回路面にはエピタキシャル層が形成されていてもよいし、アクティブ素子が形成されていてもよい。基板面には、通常は光回路の構成要素は形成されていない。ただし、基板面に電極またはレンズ等のパッシブ素子が形成されていてもよい。
【0039】
基板2の第1面2bは、凹部2hを有する。光素子5は、凹部2hの中に実装されている。これにより、第1面2bに対する光素子5の第3方向D3の突出量を抑えることができる。凹部2hは、キャビティとも称される。一例として、凹部2hの第1方向D1の長さは3.5mmであり、凹部2hの第2方向D2の長さは3.5mmである。凹部2hの第3方向D3の長さ(深さ)は、例えば、200μmである。
【0040】
凹部2hの底面2jと光素子5の第2面5c(基板面)とが互いに対向している。例えば、光素子5の第2面5cには金(Au)で構成された電極が形成されており、凹部2hの底面2jに形成された電極2fおよびビア2dに電気的および熱的に接続される。光素子5は、例えば、ダイボンディングによって実装されている。第2面5cに形成された電極と電極2fおよびビア2dとの電気的および熱的な接続には、錫銀銅(SnAgCu)、金錫(AuSn)等の合金半田、焼結金、銀、銅、または銀ペースト等の導電性接着剤が用いられる。第2面5cと電極2fとの電気的接続が不要な場合、第2面5cに形成された電極は省略されてもよく、熱的な接続に樹脂等の非導電性接着剤が用いられてもよい。
【0041】
凹部2hの底面2jから第2面2cまでビア2dが第3方向D3に沿って延在している。凹部2hは、例えば、切削加工またはエッチングによって第1面2bに形成されているが、その他の方法で形成されていてもよい。凹部2hは、第1面2bにおいて第3方向D3に窪んでいる。
【0042】
例えば、光モジュール1は、外部接続用の端子12を有する。端子12は、基板2の第1面2bに設けられた表面実装用の端子である。表面実装用の端子12が設けられる基板2の面を実装面ともいう。一例として、端子12は、球状を呈する半田ボールである。端子12の直径は、一例として、400μmである。端子12は、例えば、Sn-Ag-Cu合金系の半田である。
【0043】
端子12は、基板2の第1面2bに形成された電気配線2qに接続されている。電気配線2qの表面はパッシベーション膜により保護されていてもよい。その場合、電気配線2qの端子12と接続される部分には、金属が露出した電極(パッド)が形成されている。当該電極は表面がアンダーバンプメタルでメッキ処理されてもよい。電気配線2qは、ボンディングワイヤ14を介して光素子5の第1面5bに形成された電極に電気的に接続されている。光モジュール1は複数の端子12を有し、複数の端子12は、例えば、第1方向D1および第2方向D2に沿って並んでいる。なお、端子12は、アレイ状に配列されていてもよい。例えば、複数の端子12はBGA(Ball Grid Array)を構成する。端子12の配置間隔(ピッチ)は、例えば、0.8mmである。
【0044】
光モジュール1は、例えば、外部の配線基板13上に表面実装されている。端子12は、基板2と配線基板13との間に介在している。端子12は、電気配線2qと配線基板13の電気配線13bとを互いに電気的に接続する。電気配線13bの表面は、パッシベーション膜によって保護されていてもよい。その場合、電気配線13bの端子12が搭載される部分には、金属がパッシベーション膜から露出して電極が形成されている。この電極の表面は、例えば、Auによりメッキ処理されている。
【0045】
光モジュール1は、基板2の凹部2hに樹脂層7を有する。光モジュール1は、樹脂層7において光素子5から基板2まで延在する第2導波路8と、基板2の第1面2bと第2面2cとの間に設けられた第1導波路9とを有する。例えば、第2導波路8の直径は5μmであり、第2導波路8の長さは200μmである。光モジュール1は複数の第2導波路8を有し、複数の第2導波路8は第2方向D2に沿って並んでいる。第2導波路8は樹脂によって構成されている。
【0046】
樹脂層7は、第2導波路8を覆うように凹部2h内に形成されている。すなわち、基板2の平面視において、第2導波路8は樹脂層7に内包されている。本実施形態では、樹脂層7は、凹部2hの内部において第2導波路8の周辺のみに形成されている。しかしながら、樹脂層7は、凹部2hの内部の全体に充填されて形成されていてもよい。例えば、樹脂層7は、感光性樹脂によって構成されている。例えば、樹脂層7は、塗布、露光、および現像を経て形成される。
【0047】
凹部2hは、樹脂層7を構成する樹脂の流れ止めとして機能する。ただし、樹脂層7を構成する樹脂とは別の感光性または熱硬化性を有する樹脂を用いて流れ止めが形成された後に、樹脂層7を構成する樹脂が塗布されてもよい。樹脂層7の線膨張係数は、第2導波路8の線膨張係数より小さいことが望ましい。この場合、樹脂層7の熱膨張または熱収縮が、第2導波路8による光素子5と基板2の光結合に与える影響(例えば光結合効率の低下)を低減できる。
【0048】
一例として、光モジュール1は、12本の第2導波路8を有する。第2方向D2に沿って並ぶ複数の第2導波路8の配置間隔(ピッチ)は、例えば、100μmである。第2方向D2の端部に位置する第2導波路8の中心から、第2方向D2における当該第2導波路8とは反対の端部に位置する第2導波路8の中心までの距離は、例えば、1.1mmである。しかしながら、第2導波路8の数は、1本以上かつ11本以下、または13本以上であってもよい。このように、第2導波路8の数は適宜変更可能である。第2導波路8のピッチも適宜変更可能である。
【0049】
第2導波路8は、光素子5から基板2まで延在する樹脂導波路である。光素子5は、例えば、第2導波路8および基板2を介して光モジュール1の外部と光信号Lの送受信を行う。第2導波路8は光信号Lが通るコアとして機能し、樹脂層7は第2導波路8の周囲に位置するクラッドとして機能する。例えば、樹脂層7の屈折率、および第2導波路8の屈折率は、1.3以上かつ1.7以下である。
【0050】
樹脂層7の屈折率は第2導波路8の屈折率よりも小さい。これにより、第2導波路8の内部に光信号Lを閉じ込めることができる。第2導波路8および樹脂層7は光モジュール1が使用する波長帯域(光信号Lの波長帯域)において透過性を有することが望ましい。例えば、第2導波路8および樹脂層7は、光信号Lの波長帯域において80%以上の透過率を有してもよい。なお、クラッドとして屈折率が約1の空気を使用できる場合、樹脂層7は省略可能である。
【0051】
第2導波路8は、例えば、二光子吸収による光重合反応を用いた三次元微細形状加工によって形成される。第2導波路8は、例えば、第2導波路8の原材料となる樹脂の塗布、レーザの照射、および現像を経て形成される。第2導波路8は、例えば、光素子5および第1導波路9のそれぞれの端面の位置に合わせて三次元的に後から形成される。この場合、第2導波路8を介した低損失での光結合が可能である。さらに、光素子5を基板2に実装するときにおける高精度な位置合わせが不要となる。
【0052】
第2導波路8の一端は光素子5に形成された光導波路と光素子5の端面において光結合している。この光結合はエッジ結合とも称される。エッジ結合において、当該光導波路の第1端面、および、第1端面とは反対の第2端面は互いに対向かつ近接して配置されている。当該第1端面から出力された光は、当該第2端面に入力する。これにより、エッジ結合では、後述するエバネッセント結合と比較して小型の光結合が可能である。基板2の平面視において、第2導波路8と光素子5の光導波路との光結合面は、第2導波路8の光軸、および当該光導波路の光軸に対して傾斜していてもよい。当該傾斜の傾斜角度は、例えば、4°以上であり、8°以上であってもよい。光素子5の当該光導波路の端面には、反射防止膜(AR(Anti-Reflection)膜)が形成されていてもよい。上記の傾斜および反射防止膜のいずれかにより、第2導波路8と光素子5の当該光導波路との光結合部における光信号Lの反射戻り光を低減することが可能となる。
【0053】
第2導波路8の光素子5とは反対の端部は、第1導波路9とエッジ結合によって光結合している。すなわち、第2導波路8を介して、光素子5の光導波路が第1導波路9に光結合している。第2導波路8の延在方向に直交する平面に沿って第2導波路8を切断したときの断面の大きさおよび形状は、光素子5から基板2に至る途中で変化してもよい。また、第2導波路8は、光素子5から基板2まで直線状に延在していてもよいし、湾曲部を有してもよい。例えば、第2導波路8は、樹脂によって構成されており、かつ、弾性を有する。このため、例えば、第2導波路8の熱膨張もしくは熱収縮、または、基板2の反りによる変形に耐えることが可能である。第2導波路8が上記の湾曲部を有する場合、熱膨張または熱収縮に伴う応力の発生を抑制でき、第2導波路8における光結合の安定性を向上させることができる。
【0054】
基板2は、凹部2hの内面2kから基板2の外側面2mまで延在する第1導波路9を有する。第1導波路9は、ガラス導波路である。外側面2mは、第2方向D2および第3方向D3の双方に延在している。例えば、第1導波路9の延在方向に直交する平面に沿って第1導波路9を切断したときにおける第1導波路9の断面は、矩形状を呈する。第1導波路9の幅は、例えば、10μmである。第1導波路9の長さは、例えば、2mmである。第1導波路9は、第1導波路9の周囲に位置する基板2のガラス部分よりも高い屈折率を有する。これにより、基板2のガラス部分がクラッドとして機能し、第1導波路9がコアとして機能する。そして、コアとして機能する第1導波路9の内部に光信号Lを閉じ込めることができる。例えば、第1導波路9の屈折率、および基板2のガラス部分の屈折率は、1.4以上かつ1.5以下である。
【0055】
第1導波路9、および基板2のガラス部分は、光モジュール1が使用する光信号Lの波長帯域において透過性を有する。例えば、第1導波路9は後述する光ファイバF1のコアと同程度の屈折率を有し、基板2のガラス部分は光ファイバF1のクラッドと同程度の屈折率を有する。コアとして機能する第1導波路9と、クラッドとして機能する基板2のガラス部分との比屈折率差は、例えば、0.2%以上かつ0.5%以下(一例として0.35%)である。
【0056】
光モジュール1は複数の第1導波路9を有し、複数の第1導波路9は第2方向D2に沿って並んでいる。例えば、第1導波路9は、第2導波路8に光接続されており第1方向D1に沿って延在する第1部分9bと、後述する光ファイバアレイ11に保持された光ファイバF1に光接続されており第1方向D1に沿って延在する第3部分9dと、第1部分9bと第3部分9dを滑らかに接続する第2部分9cとを有する。第2方向D2に沿って並ぶ2つの第2部分9cの間隔(ピッチ)は、第1部分9bから離隔するにしたがって広がっている。第1部分9bにおいて第2方向D2に沿って並ぶ2つの第1導波路9の間隔は、例えば、100μmである。第3部分9dにおいて第2方向D2に沿って並ぶ2つの第1導波路9の間隔は、例えば、250μmである。一例として、光モジュール1は、12本の第1導波路9を有する。しかしながら、第1導波路9の数は、12本に限られず適宜変更可能である。第1導波路9のピッチも適宜変更可能である。
【0057】
例えば、光モジュール1は、複数の光ファイバF1を保持する光ファイバアレイ11を有する。例えば、光ファイバアレイ11は、各光ファイバF1が載せられる複数のV溝が形成されたV溝基板と、当該V溝基板を覆う蓋とを有していてもよい。光ファイバF1は、当該V溝基板と当該蓋との間において接着固定されている。光ファイバアレイ11における光ファイバF1の端面は、光学研磨されている。また、光ファイバアレイ11は、各光ファイバF1が通される複数の光ファイバ保持孔を有するフェルールであってもよい。
【0058】
一例として、光ファイバF1は、シングルコアのシングルモードファイバである。光ファイバF1は、例えば偏波保持ファイバであってもよい。しかしながら、光ファイバF1は、マルチコアファイバであってもよいし、マルチモードファイバであってもよい。光ファイバアレイ11において、複数の光ファイバF1は第2方向D2に沿って並んでいる。第2方向D2に沿って並ぶ2つの光ファイバF1の間隔(ピッチ)は、例えば、250μmである。第2方向D2の端部に位置する光ファイバF1の中心から、第2方向D2における当該光ファイバF1とは反対の端部に位置する光ファイバF1の中心までの距離は、例えば、2.75mmである。例えば、光ファイバF1の直径は125μmであり、光ファイバF1のコア径は10μmである。例えば、光ファイバF1の本数は12である。しかしながら、光ファイバF1の本数は適宜変更可能である。光ファイバF1の大きさおよび配置態様についても、上記の例に限られず、適宜変更可能である。
【0059】
基板2の光ファイバアレイ11寄りの位置(例えば、基板2における第1導波路9が形成された領域)では、光ファイバF1の曲げまたは引っ張り等による応力が集中することがあるため、例えば、歪みによって基板2にクラックが発生し、光損失が増大する懸念がある。しかしながら、本実施形態では、第1導波路9が基板2の内部に形成されているため、基板2の平面視において、第1導波路9の周辺、および第1導波路9と重なる部分にも端子12を形成することができる。基板2の光ファイバアレイ11の周辺に形成された端子12により、第1導波路9の形成領域を配線基板13に固定することが可能となるため、上記の応力による歪みを抑制し、光モジュール1の信頼性を向上させることができる。
【0060】
基板2の外側面2mにおいて、第1導波路9は、光ファイバアレイ11に保持された光ファイバF1と光結合している。凹部2hの内面2kにおいて第1導波路9は第2導波路8と光結合している。図3は、第1導波路9が第2導波路8に接続する変形例としての光結合部P1を示す図であり、光結合部P1を拡大して示している平面図である。図3に示されるように、第2導波路8の端面は、それと第1方向D1に沿って対向する第1導波路9の端面にエッジ結合している。平面視において、基板2の凹部2hの内面2kは、第2導波路8の光軸、および第1導波路9の光軸に対して傾斜している。例えば、第2方向D2に対する内面2kの傾斜角度θは、4°以上であり、8°以上であってもよい。これにより、第2導波路8と第1導波路9との光結合部P1における結合損失を増加させることなく反射損失を低減させることができる。
【0061】
図4は、第1方向D1および第3方向D3の双方に沿って延びる平面に沿って基板2、光素子5、樹脂層7、第2導波路8および第1導波路9を切断した断面図である。図4に示されるように、凹部2hの内面2kには反射防止膜2pが形成されている。しかしながら、反射損失が小さい場合等には反射防止膜2pを省略することも可能である。
【0062】
第1導波路9は、例えば、フェムト秒レーザの多光子吸収によって基板2の内部に屈折率変化を誘起することによって形成されている。例えば、銀(Ag)またはカリウム(K)を熱または電界によってガラス中に移入するイオン交換法によって第1導波路9が形成されていてもよい。第1導波路9の延在方向に直交する平面に沿って第1導波路9を切断したときの断面の形状および大きさは、凹部2hの内面2kから基板2の外側面2mに至る途中で変化してもよい。また、第1導波路9は、凹部2hの内面2kから基板2の外側面2mに至るまで直線状に延在していてもよいし、湾曲部を有してもよい。
【0063】
図5は、第1導波路9、および光ファイバアレイ11に保持された光ファイバF1を模式的に示す図である。図5に示されるように、第1導波路9および光ファイバアレイ11は、接着剤Gを介して互いに光結合されている。例えば、接着剤Gは、感光性および熱硬化性を有する。接着剤Gの厚み(基板2の外側面2mから光ファイバアレイ11の端面11bまでの距離)は、例えば、10μmである。例えば、接着剤Gは、光モジュール1が使用する光信号Lの波長帯域において透明性を有する。例えば、接着剤Gは、第1導波路9、および光ファイバF1のコア、と同程度の屈折率を有する。この場合、基板2の外側面2m、または光ファイバF1の端面等に僅かな傷があっても光信号Lの反射および散乱を抑制し、低損失の光結合が可能となる。なお、基板2の外側面2mに反射防止膜が形成されていてもよい。
【0064】
第1導波路9と光ファイバアレイ11との位置合わせは、例えば、アクティブアライメントによって行われる。例えば、接着剤Gが未硬化の状態で光ファイバアレイ11を移動させて第1導波路9との光結合損失が最小となる光ファイバアレイ11の位置を見つける。そして、紫外線を接着剤Gに照射して接着剤Gを硬化させ、第1導波路9に対する光ファイバアレイ11の位置を確定させる。しかしながら、第1導波路9と光ファイバアレイ11の位置合わせは、パッシブアライメントによって行われてもよい。この場合、基板2の外側面2m、および光ファイバアレイ11の端面11bに第1導波路9および光ファイバF1と位置合わせされたガイド穴を設け、ガイドピンを当該ガイド穴に挿入することによって位置合わせが行われる。さらに、基板2および光ファイバアレイ11の固定を補強する構造体が設けられてもよい。当該構造体は、例えば、基板2および光ファイバアレイ11に跨がる補強板である。
【0065】
例えば、光ファイバアレイ11からは光ファイバF1が第1方向D1に沿って延在している。光ファイバF1における基板2とは反対の端部には、例えば、光コネクタが接続されている。光モジュール1は、当該光コネクタを介して光モジュール1の外部の光ケーブルに接続可能とされていてもよい。すなわち、光モジュール1は、光モジュール1から引き出された光ファイバF1の先端に光コネクタを有するピグテール型のモジュールであってもよい。また、例えば、基板2に光レセプタクルが搭載されていてもよく、基板2において外部の光ケーブルと着脱する構造が設けられていてもよい。
【0066】
以上、光モジュール1では、第2導波路8および第1導波路9を介して光素子5と光モジュール1の外部(例えば光ファイバF1)とが光結合され、光モジュール1による光信号Lの送受信が可能となる。光モジュール1は、配線基板13に表面実装され、応力の抑制と、効率的な温度制御とを実現させるため、配線基板13と対向する第1面2b(凹部2h)に光素子5が搭載されている。その結果、配線基板13と第1面2bとの間には、光素子5から光信号Lを取り出すための光学系(例えばミラー)を配置するための十分な空間がない。しかしながら、光モジュール1は、第2導波路8および第1導波路9を有することにより、基板2の外側面2mに低損失で光信号Lを取り出すことができる。
【0067】
次に、本実施形態に係る光モジュール1から得られる作用効果について説明する。光モジュール1は、第1面2b、第2面2cおよびビア2dを有するガラス製の基板2と、光素子5と、電極2gとを備える。光素子5は基板2の第1面2bに実装されており、第1面2bとは反対の第2面2cには電極2gが設けられている。第2面2cに設けられた電極2gはビア2dを介して光素子5と熱的に接続される。したがって、光素子5から生じる熱はビア2dおよび電極2gを介して基板2から放出されるので、光素子5を放熱させることができる。基板2の第1面2bと第2面2cとの間には第1導波路9が設けられており、基板2の第1面2bには第2導波路8が設けられている。光信号Lは、第2導波路8および第1導波路9を介して光モジュール1の外部と入出力される。したがって、光素子5は、第2導波路8および第1導波路9を介して光モジュール1の外部と光結合するので、光信号Lの入出力を適切に行うことができる。
【0068】
前述したように、基板2の第1面2bは、凹部2hを有してもよい。光素子5は、凹部2hの中に実装されていてもよく、第2導波路8は、凹部2hの中に設けられていてもよい。この場合、凹部2hに光素子5が実装され、第2導波路8が凹部2hの中に設けられることにより、光モジュール1の厚みを抑えることができる。
【0069】
前述したように、基板2は、第1方向D1、および第1方向D1に交差する第2方向D2に延在するとともに、第1方向D1および第2方向D2の双方に交差する第3方向D3に厚みを有してもよい。第2導波路8は、凹部2hの内面2kを介して第1導波路9に光結合されていてもよく、内面2kは、第2方向D2に対して傾斜していてもよい。この場合、内面2kにおける光信号Lの反射を抑制できる。
【0070】
前述したように、第2導波路8は、凹部2hの内面2kを介して第1導波路9に光結合されていてもよく、内面2kに反射防止膜2pが設けられていてもよい。この場合、内面2kにおける光信号Lの反射を抑制できる。
【0071】
光モジュール1は、第2導波路8および第1導波路9を介して外部の光ファイバF1と光結合される。第2導波路8の一端は光素子5と光結合され、第2導波路8の光素子5とは反対の端部は第1導波路9と光結合される。第2導波路8は、光素子5および第1導波路9に位置合わせされて三次元的に形成されているため、低損失での光結合が可能である。さらに、第2導波路8は、樹脂材料によって構成されており、かつ弾性を有するため、第2導波路8、および第2導波路8の周囲の部品の熱膨張、熱収縮、および反りによる変形に対する耐性が高い。したがって、光モジュール1の安定動作を実現させることができる。
【0072】
第1導波路9の一端は第2導波路8と光結合され、第1導波路9の第2導波路8とは反対の端部は光ファイバアレイ11と光結合される。第1導波路9は、基板2の内部に三次元的に形成されるため、第2導波路8、および光ファイバアレイ11に保持された光ファイバF1のピッチに合わせて低損失な光結合が可能であり、さらに、熱膨張、熱収縮および反りによる変形に対する耐性が高いので、光モジュール1の安定動作を実現させることができる。
【0073】
次に、本開示に係る光モジュールの種々の変形例について説明する。後述する種々の変形例に係る光モジュールの一部の構成は、前述した光モジュール1の一部の構成と同一である。したがって、以下では、光モジュール1の説明と重複する説明を同一の符号を付して適宜省略する。
【0074】
図6は、第1変形例に係る光モジュール1Aの断面図である。光モジュール1Aは、第1封止部材3と、第2封止部材4と、温調素子6とを有する。第1封止部材3は、例えば、凹部3bを有する。凹部3bに対向する位置には、基板2の第1面2bに実装された光素子5が収容されている。第1封止部材3は、例えば、ガラス製である。この場合、第1封止部材3の材料が基板2のガラス部分の材料と同一であるため、熱膨張または熱収縮による光素子5への応力を低減させることができる。しかしながら、第1封止部材3は、ガラス以外の材料によって構成されていてもよい。ただし、第1封止部材3の材料は、気密性および断熱性を有する材料であることが好ましい。
【0075】
第1封止部材3の凹部3bは第3方向D3に窪んでいる。第1封止部材3は、凹部3bとしてガラス板にザグリが形成されたものであってもよい。凹部3bは、キャビティとも称される。基板2の平面視(第3方向D3に沿って見た場合)において凹部3bを取り囲む接続面3cが基板2の第1面2bに接続されることによって、第1封止部材3の凹部3bと基板2の第1面2bとによって画成される第1気密空間K1が形成される。
【0076】
第1気密空間K1には、第1面2bに実装された光素子5、および第2導波路8が収容されている。これにより、例えば、水分による光素子5および第2導波路8の劣化を抑制でき、光モジュール1の高信頼化が可能となる。例えば、光素子5は、その全体が凹部2hに収容されている。この場合、第1封止部材3の凹部3bを省略することも可能である。第1封止部材3の線膨張係数は、基板2の線膨張係数との差が小さいことが望ましい。この線膨張係数の差が小さいことにより、光モジュール1の温度変化に伴い発生する応力を低減することが可能となる。第1封止部材3の第1方向D1の長さは、基板2の第1方向D1の長さ以下である。第1封止部材3の第2方向D2の長さは、基板2の第2方向D2の長さ以下である。
【0077】
光モジュール1Aでは、第1封止部材3は第1リッドである。しかしながら、第1封止部材3は、リッド以外のものであってもよい。例えば、第1封止部材3を用いる代わりに、光素子5および第2導波路8を覆うように保護膜を形成してもよい。当該保護膜によっても光素子5および第2導波路8を水分や他の部品から発生する微量のガス等から保護することができる。当該保護膜は、例えば、SiOまたはSiN等の無機材料によって構成されている。なお、当該保護膜による応力を緩和するため、光素子5および第2導波路8の上に犠牲層を形成した後に当該保護膜を形成し、その後、当該犠牲層を除去してもよい。例えば、当該犠牲層の除去のためには当該保護膜に開口を形成する必要があるが、この開口は犠牲層の除去後にさらに保護膜を形成することによって塞ぐことができる。
【0078】
例えば、第1封止部材3は、第1方向D1および第2方向D2の双方に延在する底部3dと、底部3dから第3方向D3に延びる側壁部3fとを有する。一例として、第1封止部材3の第1方向D1の長さは4mmであり、第1封止部材3の第2方向D2の長さは4mmである。第1封止部材3の高さ(第3方向D3の長さ)は、例えば、0.3mmである。例えば、底部3dおよび側壁部3fは一体とされている。しかしながら、底部3dおよび側壁部3fは別体であってもよく、平板の底部3dに空洞を有する枠状の側壁部3fが接合されて第1封止部材3が構成されてもよい。基板2の平面視において、側壁部3fは、凹部3bの周囲を取り囲む形状を有する。
【0079】
第1封止部材3は、例えば、接着剤(封止剤ともいう)を介して基板2に接合(シール)されている。この接着剤は、例えば、金属によって構成されている。具体例として、当該接着剤は金錫(AuSn)によって構成されている。この場合、第1封止部材3は、接続面3cに塗布された金錫が加熱溶融されて基板2に接合される。このとき、第1封止部材3の接続面3c、および接続面3cと接続される基板2の接続部分は、例えば、金属によってメタライズされている。例えば、接続面3c、および基板2の当該接続部分のガラス表面は、金(Au)によってメタライズされている。金属接合により、高気密な第1気密空間K1が形成される。例えば、第1気密空間K1のファインリーク試験によるリーク量は、1.0×10-9[Pa・m/s]未満である。これにより、光素子5の信頼性をより高めることが可能である。加熱溶融は、例えばレーザ照射またはヒータ加熱によって行われる。
【0080】
第1封止部材3と基板2の接合に用いられる接着剤は、例えば、半田、ガラスフリット、またはエポキシ樹脂によって構成されていてもよい。また、接着剤を使用せず、例えば、第1封止部材3の表面酸化膜(SiO)と基板2の表面酸化膜とが直接接合されてもよい。また、酸化膜および金属が形成された表面同士が直接接合されてもよい(ハイブリッドボンディングとも称される)。接着剤として絶縁体が使用された場合、および、ハイブリッドボンディングで接合が行われる場合、第1気密空間K1の気密封止を行うとともに、第1気密空間K1と第1封止部材3の外部とを接続する電気配線(フィードスルー)を形成することができる。以上、第1封止部材3について説明した。しかしながら、水分や他の部品から発生する微量のガス等による光素子5の劣化、および第2導波路8の劣化が問題とならない場合等には、第1封止部材3を省略することも可能である。
【0081】
第2封止部材4は基板2の第2面2cに接続される。第2封止部材4は、基板2の第2面2cに実装された温調素子6を収容する。第2封止部材4は、第2面2cに接続されて温調素子6を気密封止する。第2封止部材4は、例えば、第1方向D1および第2方向D2の双方に延在する放熱部材4bと、放熱部材4bから第3方向D3に延びる側壁部4cとを有する。
【0082】
放熱部材4bは、基板2の熱伝導率よりも大きい熱伝導率を有する。放熱部材4bは板状を呈する。放熱部材4bは、例えば、シリコン(Si)によって構成されている。側壁部4cは、例えば、ガラスによって構成されている。しかしながら、放熱部材4bの材料、および側壁部4cの材料は、上記の例に限られない。例えば、放熱部材4bは金属製であってもよい。また、側壁部4cはセラミック製であってもよい。
【0083】
放熱部材4bは、温調素子6と光モジュール1の外部との間に位置する熱伝達経路として機能する。例えば、放熱部材4bは、接着剤を介して側壁部4cに接合されている。例えば、第2封止部材4では、シリコン(Si)製の放熱部材4bとガラス製の側壁部4cとが接着剤を介して一体化されている。放熱部材4bの線膨張係数は、基板2の線膨張係数との差が小さいことが望ましい。この線膨張係数の差が小さいことにより、光モジュール1の温度変化に伴う応力を低減することができる。
【0084】
例えば、第2封止部材4の第1方向D1の長さは、基板2の第1方向D1の長さ以下である。第2封止部材4の第2方向D2の長さは、基板2の第2方向D2の長さ以下である。一例として、第2封止部材4の第1方向D1の長さは第1封止部材3の第1方向D1の長さと同一であり、第2封止部材4の第2方向D2の長さは第1封止部材3の第2方向D2の長さと同一である。この場合、第2封止部材4の第1方向D1の長さは4mmであり、第2封止部材4の第2方向D2の長さは4mmである。例えば、第2封止部材4の高さ(第3方向D3の長さ)は、第1封止部材3の高さよりも大きい。一例として、第2封止部材4の高さは1.5mmである。
【0085】
基板2および第2封止部材4の間には第2気密空間K2が形成される。基板2の第2面2cと、第2封止部材4の側壁部4cおよび放熱部材4bとが第2気密空間K2を画成する。例えば、第1封止部材3の第1気密空間K1の容積は、第2封止部材4の第2気密空間K2の容積よりも小さい。例えば、第1気密空間K1は第2気密空間K2よりも高気密である。例えば、第1封止部材3からのリーク量は、第2封止部材4からのリーク量より小さい。
【0086】
光モジュール1Aでは、光素子5が収容される第1封止部材3の内部の空間の容積が第2封止部材4の内部の空間の容積よりも小さい。したがって、光素子5の気密封止部分である第1気密空間K1の容積が第2封止部材4の第2気密空間K2の容積より小さいので、温度変化による応力の影響等から光素子5をより確実に保護できる。さらに、光モジュール1は、第1気密空間K1に温調素子6を含まない。すなわち、光モジュール1は、第1気密空間K1において光素子5を温調素子6とは別に気密封止している。よって、第1気密空間K1における温調素子6からの気体の流出が生じないので、光素子5の信頼性がさらに向上する。なお、光モジュール1Aでは、第1気密空間K1に光素子5のみが収容される。しかしながら、第1気密空間K1には、例えば、光素子5を駆動するIC等の回路チップが収容されてもよい。
【0087】
第2封止部材4は、例えば、接着剤を介して基板2に接合されている。一例として、第1封止部材3は金錫(AuSn)を介して基板2に接合され、第2封止部材4は樹脂接着剤を介して基板2に接合される。例えば、第2封止部材4は紫外線硬化樹脂を介して基板2に接合される。この場合、第2気密空間K2は、第1気密空間K1よりも低気密になりうる。しかしながら、第2気密空間K2の気密度は第1気密空間K1の気密度より低くてもよい。一例として、第2気密空間K2のファインリーク試験によるリーク量は、1.0×10-9[Pa・m/s]未満であってもよい。この場合、第2気密空間K2に収容される温調素子6での結露の発生を抑制でき、温調素子6の信頼性を向上できる。
【0088】
第2封止部材4と基板2の接合には、接着剤として半田、ガラスフリット、またはエポキシ樹脂が用いられてもよい。また、接着剤を使用せず、例えば側壁部4cの接合面の表面酸化膜(SiO)と基板2の第2面2cの表面酸化膜とが直接接合されてもよいし、酸化膜および金属が形成された表面同士がハイブリッドボンディングで接合されてもよい。接着剤として絶縁体が用いられた場合、および、ハイブリッドボンディングで接合された場合、第2気密空間K2を気密封止するとともに、第2気密空間K2と第2封止部材4の外とを接続する電気配線を形成できる。なお、第2気密空間K2に水分を吸着する吸湿材、または水分を分解する分解剤が配置されてもよい。第2気密空間K2において基板2、第2封止部材4、および温調素子6の表面は、第2気密空間K2が低気密の場合に結露してもそれぞれの内部に水分が浸透しないように、樹脂等の絶縁膜で保護(被覆)されていてもよい。
【0089】
光モジュール1Aでは、第2封止部材4は第2リッドである。しかしながら、第2封止部材4は、リッド以外のものであってもよい。例えば、第2封止部材4は、温調素子6上に形成された保護膜であってもよい。この保護膜は、前述した第1封止部材3を構成する保護膜と同様である。なお、光モジュール1の使用環境において、温調素子6の結露の心配がない場合には、第2封止部材4の気密性は不要である。さらに、第2封止部材4を省略することも可能である。
【0090】
温調素子6は、例えば、放熱部材4bと基板2との間に挟まれている。放熱部材4bには温調素子6が熱的に接続されている。温調素子6は、例えば、熱電クーラーである。例えば、温調素子6は、複数のペルチェ素子6bと、複数のペルチェ素子6bを第3方向D3に挟む第1基板6cおよび第2基板6dとを有する。第1基板6cおよび第2基板6dは、例えば、窒化アルミ(AlN)等のセラミック基板である。第1基板6cは放熱部材4bに接触する。第2基板6dは、基板2の第2面2cに形成された電極2gを介してビア2dに接続される。一例として、温調素子6の第1方向D1の長さは3mmであり、温調素子6の第2方向D2の長さは3mmである。例えば、温調素子6の高さ(第3方向D3の長さ)は1mmである。
【0091】
温調素子6は、例えば、光モジュール1の外部のペルチェコントローラによる制御を受けて基板2を介して光素子5の温度を一定に保つ。そして、温調素子6は、放熱部材4bを介して吸熱または放熱を行う。熱的接続のため、第1基板6cと放熱部材4bとの間、および、第2基板6dと電極2gとの間には、熱伝導材(TIM:Thermal Interface Material)が介在していてもよい。当該熱伝導材は、例えば、金属ペースト、半田、または樹脂によって構成されている。樹脂には熱伝導性の良いフィラー(充填剤)が含まれていてもよい。
【0092】
なお、基板2の第2面2cに電極2gとは別の電極が形成され、当該電極に例えばワイヤボンディングで温調素子6の電気端子が電気接続されることにより、温調素子6に電力を供給することが可能である。また、基板2の第2面2cまたは第1面2bに例えばサーミスタが配置され、このサーミスタが温度測定用のモニタとして用いられてもよい。光素子5の基板面(第2面5c)は、基板2に固定され、基板2を介して温調素子6に接続されている。これに対し、光素子5の回路面(第1面5b)は他の構成要素(固体)に接触していない。よって、回路面および基板面の両方が固定された構成と比較して、温度変化による光素子5に対する応力の影響等を抑えることができる。
【0093】
より具体的には、仮に、光素子5が第2気密空間K2の中で温調素子6と基板2の間に挟まれる場合(回路面が基板2の第2面2cを向くように光素子5が基板2に搭載され、光素子5の基板面に温調素子6が搭載される場合)、温度変化に伴って、第2封止部材4、温調素子6、光素子5および基板2がそれぞれの線膨張係数にしたがって膨張または収縮するため、光素子5に大きな応力が加わる可能性がある。しかしながら、光モジュール1Aでは、光素子5の基板面のみが固定されるため、光素子5に加わる熱応力を低減することができる。これにより光素子5の信頼性が向上する。また、応力により光素子5が有する光学特性(例えば波長特性)が変化することを抑制し、光モジュール1の安定動作が可能となる。
【0094】
光素子5は、基板2の電極2fおよびビア2dを介して温調素子6に熱的に接続されている。一方、電極2fおよびビア2d以外の光素子5の周辺の部品は、気体、樹脂またはガラス基板といった熱伝導率が低い材料によって構成されている。光素子5は、前述したように、ボンディングワイヤ14を介して電気配線2qに接続される。例えば、電気配線2qは、5μm程度と薄いため、熱抵抗が高い。このため、光素子5は、ビア2d以外は、熱的にフローティングになっており(断熱されており)、温調素子6によって効率的に温度制御される。例えば、光素子5と温調素子6との間の熱抵抗は、光素子5と光モジュール1Aの外部との間の熱抵抗よりも1桁以上低い。
【0095】
例えば、第1気密空間K1の内部と外部とは、後述する図20の電気配線66,67のように第2気密空間K2を介して電気接続されてもよいし、後述する図21の電気配線71のように直接電気接続されてもよい。ただし、いずれの場合も、第1気密空間K1と基板2の第2面2cとが電気接続されるため、第2面2cと第1面2bの端子12を電気接続する電気配線(ビア)がさらに必要となる。さらに、光モジュール1Aでは、第1封止部材3が光素子5および第2導波路8を気密封止している。したがって、水分による光素子5および第2導波路8の劣化を抑制でき、光モジュール1のさらなる高信頼化が可能となる。
【0096】
以上、第1変形例に係る光モジュール1Aは、第1面2b、第2面2cおよびビア2dを有するガラス製の基板2と、光素子5と、温調素子6とを備える。光素子5は、基板2の第1面2bに実装される。光モジュール1は、第1面2bに接続され、光素子5を気密封止する第1封止部材3を備える。したがって、基板2の第1面2bに実装された光素子5が第1封止部材3によって気密封止されるので、光素子5を保護することができる。基板2は、第1面2bと第2面2cとの間を貫通するビア2dを有する。ビア2dを介して、光素子5および温調素子6を互いに熱的に接続することができる。
【0097】
光モジュール1Aは、基板2の第1面2bが光モジュール1Aの外部の配線基板13と対向するように表面実装される。光素子5は、基板2の第1面2bに形成された凹部2hに、第2面5c(基板面)が基板2と対向するように実装される。温調素子6は、第1面2bと反対の第2面2cに実装される。基板2は、底面2jと第2面2cとの間を貫通するビア2dを有する。よって、ビア2dを介して光素子5および温調素子6を互いに熱的に接続できる。
【0098】
基板2はガラスによって構成されていることにより断熱性がよく、光素子5の第1面5b(回路面)は光モジュール1の外部とは断熱されているため、光モジュール1の外部の温度によらず光素子5の温度を一定に保つことができる。また、光素子5では、基板2に対し第2面5cのみが固定されるため、温度変化による応力から光素子5を保護できる。安定した温度制御、および応力からの保護により、光モジュール1において安定した光出力を得ることが可能である。
【0099】
図7は、第2変形例に係る光モジュールの第2導波路8および第1導波路19を示す図である。図7は、第1方向D1および第3方向D3の双方に延びる平面に沿って基板2、光素子5、第2導波路8および第1導波路19を切断したときにおける断面を示している。第2導波路8および第1導波路19の光結合部P2では、第1導波路19の端部と、凹部2hの内面2kとの間に基板2のガラス材料が介在している。すなわち、第1導波路19の端面は内面2kから離隔している。
【0100】
第1導波路19は、凹部2hの内面2kに露出していない。これにより、第1導波路19を基板2の外部から保護することができる。例えば、基板2の加工時、または光モジュール1の組み立て時における第1導波路19の損傷および汚染を抑制できる。その結果、第1導波路19における光損失の増大を抑制できる。第1導波路19の端部と凹部2hの内面2kとの間に介在する基板2のガラス部分の厚さ(第1方向D1の長さ)は、例えば、20μm以下であり、10μm以下であってもよい。この場合、第2導波路8と第1導波路19との間における低損失の光結合を実現可能である。
【0101】
図8は、第3変形例に係る光モジュールの第2導波路8および第1導波路9の光結合部P3を示している。第3変形例において、凹部2hの内面2kは、第2導波路8の光軸、および第1導波路9の光軸に対して傾斜している。すなわち、内面2kは、第3方向D3に対して傾斜している。なお、図8の例では、内面2kは、第3方向D3に対し、凹部2hの底面2jから第1面2bに至るまで傾斜している。しかしながら、内面2kは、第3方向D3に対し、少なくとも光結合部P3の部分において傾斜していればよい。図8の例では、第1方向D1および第3方向D3の双方に延びる平面に沿って切断したときにおける内面2kの断面は直線状である。しかしながら、内面2kの当該断面は湾曲していてもよい。
【0102】
以上のように、凹部2hの内面2kが第3方向D3に対して傾斜している場合、内面2kにおける光信号Lの反射を抑制できる。第3方向D3に対する内面2kの傾斜角度は、例えば、4°以上であり、8°以上であってもよい。これにより、光結合部P3における結合損失を増加させることなく反射損失を低減させることができる。反射損失をさらに低減させるため、内面2kに反射防止膜2pが形成されていてもよい。ただし、反射が小さい場合、または第1導波路9に入射した光信号Lの強度が許容できる程度である場合には、反射防止膜2pを省略することが可能である。本例のように、内面2kが第3方向D3に対して傾斜している場合、内面2kは第2方向D2に対しては平行であってもよい。
【0103】
図9は、第4変形例に係る第2導波路28および第1導波路29の光結合部P4を示している。光結合部P4では、基板2の底面2jにおいて第2導波路28が第1導波路29と光結合している。第2導波路28の光素子5とは反対の端部は、底面2j上に位置する。より詳細には、第2導波路28は、光素子5から第1方向D1に沿って延び出す第1延在部28bと、第1延在部28bから底面2jに向かって曲がるとともに第1方向D1および第3方向D3の双方に対して斜めに延在する第2延在部28cと、第2延在部28cの第1延在部28bとは反対の端部から底面2jに沿って延在する第3延在部28dとを有する。
【0104】
第1導波路29は、基板2の内部において底面2jに沿って延在している。第1導波路29と基板2の凹部2hの底面2jとの距離は、例えば、1μmである。平面視において、第2導波路28および第1導波路29は互いに重なる部分を有しており、当該重なる部分によって光結合部P4が構成されている。光結合部P4における第2導波路28の長さ、および光結合部P4における第1導波路29の長さは、例えば、500μmである。これらの長さが光結合部P4の長さに相当する。以上の構成により、第1導波路29は、第2導波路28とエバネッセント結合(断熱結合とも称される)される。エバネッセント結合により、第2導波路28および第1導波路29は低損失で互いに光結合することが可能である。
【0105】
図10は、第5変形例に係る第2導波路38および第1導波路39の光結合部P5を示している。光結合部P5では、基板2の第1面2bにおいて第2導波路38が第1導波路39と光結合している。第2導波路38の光素子5とは反対の端部は、第1面2b上に位置する。より詳細には、第2導波路38は、光素子5から第1方向D1に沿って延び出す第1延在部38bと、第1延在部38bから第1面2bに向かって曲がるとともに第1方向D1および第3方向D3の双方に傾斜して延在する第2延在部38cと、第2延在部38cの第1延在部38bとは反対の端部から第1方向D1に沿って第1面2bまで延在する第3延在部38dとを有する。
【0106】
第1導波路39は、基板2の内部において第1面2bに沿って延在している。第5変形例が第4変形例と異なる点は、エバネッセント結合の場所が第1面2bである点である。すなわち、第1導波路39は、第1面2bにおいて第2導波路38とエバネッセント結合される。但し、第5変形例では、第2導波路38を覆う樹脂層7が凹部2hの外部にまで形成されている。例えば、樹脂層7を構成する樹脂を塗布するときに、当該樹脂が凹部2hから漏れて広がらないように当該樹脂とは別の樹脂にて流れ止めが形成されてもよい。例えば、当該別の樹脂は、感光性または熱硬化性を有する。
【0107】
図11は、第6変形例に係る基板22、第2導波路48および第1導波路49を示している。基板22は、凹部2hが段差部2sを有する点が基板2とは異なっている。段差部2sは、底面2jから延びるとともに第2方向D2および第3方向D3の双方に延在する第1側面2rと、第1側面2rから延びるとともに第1方向D1および第2方向D2の双方に延在する段差面2tと、段差面2tから延びるとともに第2方向D2および第3方向D3の双方に延在する第2側面2vとを有する。
【0108】
第6変形例では、第1導波路49は、段差面2tにおいて第2導波路48とエバネッセント結合される。例えば、第2導波路48は、第1方向D1に沿って延在している。第1導波路49は、基板2の内部において段差面2tに沿って延在している。第6変形例の場合、樹脂層7を凹部2hの内部にとどめることができる。したがって、上記の流れ止めを形成する必要がない。さらに、底面2jからの樹脂層7の高さ(第3方向D3の長さ)を底面2jから第1面2bの高さよりも低くすることができる。
【0109】
図12は、第7変形例に係る光モジュール1Bを示す断面図である。図12は、第1方向D1および第3方向D3の双方に延びる平面に沿って切断したときにおける光モジュール1Bの断面図である。光モジュール1Bは、凹部2hを有しない基板32を備える点が光モジュール1Aと異なっている。
【0110】
光モジュール1Bでは、回路面である第1面5bが基板32のビア2dとは反対を向くように、光素子5が基板32に対しフェイスアップ実装されている。光モジュール1Bは、基板32の第1面2bにおいてエバネッセント結合する第2導波路28および第1導波路29を有する。光モジュール1Bでは、凹部2hを有しない基板32を備えることにより、基板32の強度を向上させることができ、基板32における反り等の発生を抑制できる。したがって、第2導波路28および第1導波路29の安定した光結合が可能となる。
【0111】
図13は、第8変形例に係る光モジュール1Cを示す断面図である。光モジュール1Cにおいて、光素子5は、基板32に対して回路面である第1面5bが基板32を向くようにフリップチップ実装(フェイスダウン実装)される。このフリップチップ実装では、例えば、熱圧着または超音波接合が用いられる。
【0112】
例えば、光素子5は、第1面5bに形成された電極(パッド)を有する。例えば、当該電極は、バンプ10を介して基板32の第1面2bに形成された電極2fおよびビア2dに熱的に接続されるとともに、電気配線2qに電気的に接続される。例えば、バンプ10は、第3方向D3に沿った平面視においてアレイ状に配置されている。例えば、第1面5bに形成された電極は、金(Au)によって構成されたパッドであってもよい。例えば、バンプ10は、半田バンプ、Auスタッドバンプ、または銅(Cu)製のピラー上に半田キャップが載せられたマイクロバンプである。基板32と光素子5との間にアンダーフィル樹脂が充填されていてもよい。
【0113】
光モジュール1Cのように、光素子5がフェイスダウン実装された場合でも、光素子5の第1面5b(回路面)のみが基板32に固定され、第2面5c(基板面)は固定されない。したがって、光素子5に加わる熱応力を低減できる。なお、基板32の第1面2bに凹部を設け、当該凹部の底面に対し光素子5がフェイスダウン実装されてもよい。
【0114】
図14は、第9変形例に係る光モジュール1Dを示す断面図である。光モジュール1Dは、光ファイバF2、光ファイバアレイ51、第2導波路58および第1導波路59の構成が光モジュール1Aと異なっている。光モジュール1Dでは、基板2の凹部2hの底面2jにおいて、第2導波路58と第1導波路59がエッジ結合によって光結合している。第2導波路58は、光素子5の端面から第1方向D1に沿って延びる延在部58bと、延在部58bの光素子5とは反対の端部から底面2jに向かって曲がる湾曲部58cとを有する。湾曲部58cでは、第1方向D1から第3方向D3に第2導波路58が約90°曲げられている。第2導波路58は、第1導波路59と比較してコアとクラッドの比屈折率差を大きくするとともにコア径を小さくすることが容易であるため、第2導波路58が湾曲部58cを有することにより低損失の光結合が可能である。なお、湾曲部58cの曲げ角度は90°でなくてもよい。
【0115】
第1導波路59は、第1面2bと第2面2cとの間を貫通する。すなわち、第1導波路59は、凹部2hの底面2jから基板2の第2面2cまで延在している。なお、第1導波路59の端面と底面2jとの間、および第1導波路59の端面と第2面2cとの間、には基板2のガラス部分が介在していてもよい。第1導波路59の光軸は、凹部2hの底面2jに対して垂直に(第3方向D3に沿って)延在していてもよいし、第3方向D3に対して斜めに延在していてもよい。第1導波路59の光軸が第3方向D3に対して斜めに延在している場合、第2導波路58および光ファイバアレイ51との光結合における反射損失をさらに低減させることができる。凹部2hの底面2jには反射防止膜が形成されてもよい。
【0116】
光ファイバアレイ51は、基板2の第2面2cにおいて第1導波路59と光結合している。なお、基板2の第2面2cと光ファイバアレイ51との間には接着剤が介在していてもよい。光ファイバF2は、光ファイバアレイ51において約90°曲げられている。光ファイバF2は、第1導波路59から延びるとともに第3方向D3から第1方向D1に曲がる湾曲部F21と、湾曲部F21の第1導波路59とは反対の端部から第1方向D1に沿って延在する延在部F22とを有する。光ファイバF2は、湾曲部F21において約90°曲げられている。しかしながら、湾曲部F21における曲げの角度は90°でなくてもよい。さらに、光ファイバF2は曲がっていなくてもよい。
【0117】
光モジュール1Dでは、基板2の第2面2c上で第1導波路59および光ファイバアレイ51が互いに光結合されている。この場合、基板2の外側面2mでの光結合と比較して、より広い面積での光結合が可能となる。その結果、光結合の信頼性を向上させることができる。なお、基板2の第2面2c上に光ファイバアレイ51とは別の光学部品(例えば、レンズ、ミラー、アイソレータ、合分波器またはフィルタ等)を搭載し、当該光学部品を第1導波路59および光ファイバアレイ51と光結合させてもよい。
【0118】
図15は、第10変形例に係る光モジュール1Eを示す断面図である。光モジュール1Eは、第2導波路8に代えて、第1レンズ8bおよび第2レンズ8cを有する点が光モジュール1Aと異なっている。第1レンズ8bは光素子5の端面に形成され、第2レンズ8cは凹部2hの内面2kに形成されている。例えば、第1レンズ8bはコリメートレンズである。第1レンズ8bは、光素子5の光導波路の端面から出力される光信号Lをコリメート光に変換する。例えば、第2レンズ8cは集光レンズである。第2レンズ8cは、第1レンズ8bから出力されたコリメート光を第1導波路9の端面に集光して第1導波路9に入射する。
【0119】
図16は、第2レンズ8cを拡大した図である。図15および図16に示されるように、第2レンズ8cは、一例として、凹部2hの内面2kから突出するU字状を呈する。第1レンズ8bは、光素子5の端面から突出するU字状を呈する。光モジュール1Eでは、基板2に第2レンズ8cが設けられており、光素子5に第2レンズ8cと光結合する第1レンズ8bが設けられている。光信号Lは、第1レンズ8b、第2レンズ8cおよび第1導波路9を介して光モジュール1Eの外部と入出力される。したがって、光素子5は、第1レンズ8b、第2レンズ8cおよび第1導波路9を介して光モジュール1Eの外部と光結合するので、光信号Lの入出力を適切に行うことができる。
【0120】
光モジュール1Eでは、光素子5と第1導波路9との間がコリメート光で光結合されることにより、光素子5を基板2に実装するときにおける高精度なアライメントを不要にでき、温度変化に伴う基板2の変形に対して低損失な光結合を維持できる。また、第1レンズ8bおよび第2レンズ8cを有する光モジュール1Eの場合、光素子5の端面と凹部2hの内面2kとを物理的に接続する必要がないため、光結合の信頼性を向上できる。さらに、前述した樹脂層7を不要とすることができる。例えば、第1レンズ8bおよび第2レンズ8cは、前述した第2導波路8と同様に形成することが可能である。
【0121】
図17は、第11変形例に係る光モジュール1Fを示す断面図である。光モジュール1Fは、基板2の第1面2b(凹部2h内)に設けられた電気素子17と、基板2の第2面2cに設けられた熱伝導部材18とを有する点が光モジュール1Aと異なる。例えば、電気素子17は、SiGe BiCMOSプロセスによって形成された半導体回路部品である。電気素子17は、例えば、光素子5を駆動するドライバICである。電気素子17は、例えば、フォトダイオードである光素子5から出力された電気信号を電圧変換して増幅するトランスインピーダンスアンプ(レシーバIC)であってもよい。また、電気素子17は、ドライバIC、およびトランスインピーダンスアンプの両方を含んでいてもよい。一例として、電気素子17の第1方向D1の長さは2mmであり、電気素子17の第2方向D2の長さは4mmである。電気素子17の第3方向D3の長さ(厚さ)は、例えば、0.1mmである。
【0122】
電気素子17は、例えば、電気回路が形成された第1面(回路面)17bと、第1面17bと反対を向く第2面(基板面)17cとを有する。第1面17bには、例えば、トランジスタ等のアクティブ素子、電気配線、またはパッドが形成されている。電気素子17のパッドは、例えば、アルミニウム(Al)によって構成されている。第2面17cには、例えば、電極等のパッシブ素子が形成されていてもよい。電気素子17は、基板2と対向するように凹部2hの内部においてフェイスアップ実装されている。電気素子17の第2面17cは、凹部2hの底面2jに形成された電極2fおよびビア2dに熱的に接続される。第2面17cと電極2fおよびビア2dとの熱的な接続は、例えば、銀ペーストによって行われる。
【0123】
熱伝導部材18は、例えば、放熱ブロックである。熱伝導部材18は、放熱部材4bと基板2との間に挟まれている。放熱部材4bには熱伝導部材18が熱的に接続されている。熱伝導部材18は、例えば、窒化アルミニウム(AlN)によって構成されている。熱伝導部材18は、例えば、基板2の電極2gに接触する第1面18b、および放熱部材4bに接触する第2面18cを有する。第1面18bと電極2gとの間、および第2面18cと放熱部材4bとの間、の少なくともいずれかに熱伝導材が介在していてもよい。例えば、熱伝導部材18の第1方向D1の長さは2mmであり、熱伝導部材18の第2方向D2の長さは4mmである。熱伝導部材18の第3方向D3の長さ(厚さ)は、例えば1mmである。
【0124】
電気素子17は、基板2の電極2f、ビア2d、および電極2gを介して熱伝導部材18に熱的に接続されている。電気素子17の周辺における電極2fおよび電極2g以外の材料は、気体、樹脂およびガラスといった熱伝導率が低い材料である。電気素子17は、後述するように電気配線21と接続されるが、電気配線21は、厚みが3μm程度と薄いため熱抵抗が高い。電気素子17は、ビア2d以外では、熱的にフローティングになっており(断熱されており)、熱伝導部材18によって効率的に放熱される。例えば、電気素子17と熱伝導部材18との間の熱抵抗は、電気素子17と光モジュール1Fの外部との間の熱抵抗より1桁以上低い。
【0125】
電気素子17の第2面17c(基板面)は、基板2に固定されており熱伝導部材18に物理的に接続されている。電気素子17の第1面17b(回路面)は、樹脂等、弾性が高い構成要素にしか接触していない。よって、電気素子17は、光素子5と同様、回路面および基板面の両方が固定された構成と比較して、温度変化による電気素子17に対する応力の影響等を抑えることができる。その結果、電気素子17および光モジュール1Fの信頼性が向上する。
【0126】
光モジュール1Fは、電気素子17を光素子5に電気的に接続する電気配線21を備える。電気配線21は、例えば、電気素子17と光素子5との間において高速(例えば変調レートが200GBd)で変調された電気信号(高速信号)を伝送する。電気配線21は、高速信号を伝送するため、伝送線路を構成し、特性インピーダンスが適切に設計されている。電気配線21によって伝送線路が構成されることにより、光素子5から電気素子17までの距離を長くする(例えば1mm離す)ことが可能となる。この場合、電気配線21の熱抵抗を大きくして電気素子17から光素子5への熱流入を低減させることができる。さらに、電気配線21を備える場合、ワイヤボンディングに比べて電気配線の寄生インダクタンスの影響を低減できる。
【0127】
図18は、図17の光素子5および電気素子17の周辺の構造を拡大した図である。図17および図18に示されるように、光モジュール1Fは、基板2の第1面2bに形成された電気配線23を有する。電気配線23は、例えば、銅(Cu)または金(Au)によって構成されている。電気配線23が銅によって構成されている場合、電気配線23の表面が金(Au)メッキされていてもよい。電気配線23と基板2との間には絶縁層が形成されていてもよい。また、電気配線23は絶縁膜(保護膜)に覆われていてもよい。例えば、電気配線23は、パッド24を有する。上記のように電気配線23が絶縁膜(保護膜)に覆われている場合、パッド24の部分において当該絶縁膜は除去されている。
【0128】
光モジュール1Fは、光素子5および電気素子17を埋め込む樹脂層7を有する。樹脂層7は、例えば、凹部2hの底面2jに接触する第1樹脂層7bと、第1樹脂層7bの底面2jとは反対に位置する第2樹脂層7cと、第2樹脂層7cから見て第1樹脂層7bとは反対に位置する第3樹脂層7dとを含む。
【0129】
第1樹脂層7bは、凹部2hを埋めるために形成される。第1樹脂層7bは、凹部2hにおいて光素子5および電気素子17を埋め込んでいる。ただし、第1樹脂層7bは、後述するビア25bにおいて開口している。第1樹脂層7bを構成する樹脂は、例えば、感光性ポリマーである。当該樹脂は、一例として、液体の状態で凹部2hに配置された光素子5および電気素子17を埋めるように凹部2hに充填される。その後、当該樹脂は、露光、現像、およびベーク(キュア)される。第1樹脂層7bの厚さ(第3方向D3の長さ)は、例えば、凹部2hの深さ(第3方向D3の長さ)と略同一である。この場合、第1樹脂層7bの表面(凹部2hの底面2jとは反対の面)は第1面2bと面一になる。しかしながら、第1樹脂層7bの厚さは、凹部2hの深さより、厚くてもよいし薄くてもよい。
【0130】
第2樹脂層7cは、第1樹脂層7b上に形成されている。第2樹脂層7cは、電気配線23のパッド24、電気素子17の電極、および光素子5の電極を覆っており、ビア25bおよびビア25cにおいて開口している。第2樹脂層7cを構成する樹脂は、例えば、感光性ポリマーである。当該樹脂は、液体の状態で第1樹脂層7bに塗布されてもよいし、フィルムの状態で第1樹脂層7bにラミネートされてもよい。その後、当該樹脂が露光、現像、およびベークされることによって第2樹脂層7cが形成される。なお、第2樹脂層7cは、省略されてもよい。この場合、第1樹脂層7bが、第2樹脂層7cと一体化されて電気配線23のパッド24、電気素子17の電極、および光素子5の電極を覆ってもよい。そして、第1樹脂層7b上に電気配線21が形成されてもよい。
【0131】
電気配線21は、例えば、第2樹脂層7c上に形成された金属膜であり、例えば、銅(Cu)によって構成されている。電気配線21は、例えば、セミアディティブ法等のメッキプロセスによって形成されており、再配線層(RDL:Redistribution Layer)とも称される。複数の電気配線21は、電気配線23のパッド24と電気素子17の電極とを互いに電気的に接続する電気配線27と、電気素子17の電極と光素子5の電極とを互いに電気的に接続する電気配線26とを含む。
【0132】
電気素子17は、例えば、光モジュール1Fの外部から端子12に入力された電気信号を電気配線27を介して受信し、電気信号に応じて生成した駆動信号を電気配線26を介して光素子5に出力する。第1方向D1において、電気素子17は、端子12と光素子5との間に配置されている。また、電気素子17は、例えば、光信号Lに応じて生成された受信信号を光素子5から電気配線26を介して受信し、当該受信信号に応じて生成した電気信号を電気配線27を介して端子12に出力する。
【0133】
光モジュール1Fは、例えば、光素子5の電極、および電気素子17の電極にアクセスするためのビア25bと、電気配線23にアクセスするためのビア25cとを有する。ビア25bおよびビア25cのそれぞれは、例えば、レーザ光の照射によって形成されたビアホールと、当該ビアホールの中に形成された電気配線とによって構成されている。ビア25bの電気配線は、電気配線21とは別に形成されてもよいし、電気配線21とともに(一括して)形成されてもよい。ビア25bは、その内部に導電性材料が充填されたフィルドビアであってもよいし、その内部に導電性材料が充填されないコンフォーマルビアであってもよい。ビア25cについても同様である。
【0134】
第3樹脂層7dは、電気配線21を覆って電気配線21を保護している。したがって、電気配線21は、第2樹脂層7cと第3樹脂層7dとの間に形成されている。第3樹脂層7dを構成する樹脂は、例えば、感光性ポリマーである。当該樹脂は、液体の状態で第2樹脂層7cに塗布されてもよいし、フィルムの状態で第2樹脂層7cにラミネートされてもよい。その後、当該樹脂が露光、現像、およびベークされることによって第3樹脂層7dが形成される。なお、第3樹脂層7dは省略されてもよい。
【0135】
例えば、光モジュール1Fは、第1樹脂層7bにおいて光素子5から基板2の第1導波路9まで延在する第2導波路8を備える。第2導波路8は、例えば、第1樹脂層7bを凹部2hに充填する前に形成されてもよい。第2導波路8および第1樹脂層7bの屈折率は、光信号Lの波長帯域において、例えば、1.3以上かつ1.7以下である。第2導波路8は、第1樹脂層7bの屈折率よりも大きい屈折率を有する。この場合、第1樹脂層7bは、光素子5に入出力する光信号Lの光導波路におけるクラッドとして機能し、コア層として機能する第2導波路8の内部に光信号Lが閉じ込められる。例えば、第2導波路8および第1樹脂層7bは、光モジュール1Fが使用する光信号Lの波長帯域において透過性を有する。
【0136】
例えば、第1樹脂層7bを構成する樹脂の線膨張係数は、第2導波路8を構成する樹脂の線膨張係数より小さい。この場合、第2導波路8よりも体積が大きい第1樹脂層7bの熱膨張または熱収縮が、第2導波路8による光素子5と第1導波路9との光結合に与える影響(例えば光結合効率の低下)を低減できる。このような構成により、光素子5は、第2導波路8および第1導波路9を介して光モジュール1Fの外部と光信号Lの送受信を行うことができる。
【0137】
例えば、第2樹脂層7cは、第2導波路8から離隔している。すなわち、第2樹脂層7cの第1方向D1の位置は、第2導波路8の第1方向D1の位置とは異なっている。この場合、第2樹脂層7cの熱膨張または熱収縮が第2導波路8による光素子5と第1導波路9との光結合に与える影響を低減できる。
【0138】
上記では、第2導波路8のクラッドとして第1樹脂層7bが用いられる例について説明した。しかしながら、第2導波路8のクラッドとしては、第1樹脂層7bとは別の樹脂が用いられてもよい。例えば、光素子5と第1導波路9との光結合部が含まれる領域を、第1樹脂層7bとは別の樹脂によって充填し、当該樹脂が第2導波路8のクラッドとして機能してもよい。また、クラッドとして屈折率が約1の空気を使用できる場合、第2導波路8の周囲は樹脂で覆われなくてもよい。
【0139】
例えば、電気配線26は、高速信号(高周波信号)を伝送するための信号配線を含み、当該信号配線は伝送線路を構成する。光素子5がIQ変調器である場合、電気配線26の特性インピーダンスは、インピーダンス整合のために、光素子5に形成された高周波配線(伝送線路)、および終端抵抗の抵抗値と略等しいことが好ましく、例えば、差動インピーダンスは50Ω~60Ωである。「略等しい」とは、実用上許容できる範囲内で相互の値が異なっていてもよいことを示している。
【0140】
例えば、電気配線27は、高速信号(高周波信号)を伝送するための信号配線を含み、当該信号配線は伝送線路を構成する。電気配線27の特性インピーダンスは、インピーダンス整合のために電気配線27に接続された電気素子17に形成された終端抵抗の抵抗値と略等しいことが好ましく、例えば、差動インピーダンスは100Ωである。電気配線27の特性インピーダンスは、電気配線26の特性インピーダンスと異なっていてもよい。
【0141】
例えば、電気配線26は、基板2の平面視において第2方向D2に沿って並んでいる。第2方向D2に沿って並ぶ2本の電気配線26の間隔(ピッチ)は、例えば、100μmである。電気配線26の幅は、例えば、95μmである。第2方向D2に沿って互いに隣接する2本の電気配線26の間の距離は、例えば、5μmである。このように、複数の電気配線26が高密度に形成されている。よって、光素子5と電気素子17との電気的接続を高密度に行うことができる。例えば、樹脂層7の比誘電率は、セラミックの比誘電率よりも低い。一例として、樹脂層7の比誘電率は3.3である。この場合、電気配線26において安定した信号伝送が可能な遮断周波数をセラミックパッケージよりも高くすることが可能となる。よって、光モジュール1Fでは、より高い周波数帯域(例えば100GHz以上)まで使用することが可能である。
【0142】
電気配線26を伝送する信号は、例えば、差動信号によって構成されている。一例として、電気配線26を伝送する信号は、4chの差動信号によって構成されている。電気配線26の数は、例えば、4chの合計で16本である。電気配線26は、例えば、GSSG(グランド・シグナル・グランド・シグナル)線路である。しかしながら、電気配線26は、GSGSG(グランド・シグナル・グランド・シグナル・グランド)線路であってもよい。電気配線26は、例えば、1層のCu配線として設計されたコプレーナ線路である。1層であることにより、電気配線26の熱抵抗を大きくすることが可能である。コプレーナ線路の特性インピーダンスは、例えば、インピーダンス整合のために光素子5の終端抵抗に合わせることが好ましい。この特性インピーダンスは、例えば、50Ω~60Ωである。
【0143】
前述した電気配線26のCu配線の厚さは、例えば、3μmである。銅(Cu)の熱伝導率が約400[W/(m・K)]であり、電気配線26の断面積が285μm(幅95μm×厚さ3μm)、光素子5から電気素子17までの距離が1mmであるとすると、16本の電気配線26の合計の熱抵抗は約550[K/W]と大きい。また、光素子5から電気素子17までの樹脂層7の熱抵抗は、樹脂の熱伝導率が1[W/(m・K)]以下であるため、大きい。よって、光素子5から電気素子17までの並列熱抵抗も大きい。この並列熱抵抗は、発熱体である電気素子17に熱的に接続された基板2のサーマルビア(ビア2d)の熱抵抗(電気素子17の面積4mm×2mm、基板2の厚さ0.5mm、ビア2dの部分の熱伝導率40[W/(m・K)])から約1.6[K/W])よりも、例えば、100倍以上大きい。したがって、電気素子17および光素子5の間の熱の流出入を効果的に低減できる。
【0144】
なお、電気配線26の構成は、上記の例に限られない。例えば、電気配線26は、2層のCu配線として設計されたマイクロストリップ線路またはグランデッドコプレーナ線路であってもよい。光モジュール1Fは、光素子5及び電気素子17の間に、電気配線26以外の電源線または制御線(比較的低速度の電気信号)を有していてもよい。さらに、光モジュール1Fは、EMI対策のため、例えば、第1封止部材3の外側にシールド(接地電位に接続された金属製の覆い)を備えていてもよい。
【0145】
光モジュール1Fは、基板2の第1面2bに形成された電気配線23、および、電気配線23に電気的に接続された外部接続用の端子12とを有する。端子12および電気配線23は、例えば、高速信号を電気素子17に入出力するために設けられる。端子12および電気配線23を伝送する信号は、例えば、差動信号によって構成されている。一例として、端子12および電気配線23を伝送する信号は、4chの差動信号によって構成されている。電気配線23の数は、例えば、4ch合計で16本である。電気配線23は、例えば、GSSG(グランド・シグナル・シグナル・グランド)線路である。電気配線23は、例えば、1層のCu配線として設計された伝送線路(例えば、コプレーナ線路)である。伝送線路の特性インピーダンスは、例えば、インピーダンス整合のために電気配線23が接続された電気素子17の終端抵抗に合わせることが好ましく、例えば、差動インピーダンスは100Ωである。
【0146】
電気配線23の間隔(ピッチ)は、例えば、100μmである。電気配線23の幅は、例えば、80μmである。第2方向D2に沿って互いに隣接する2本の電気配線23の間の距離は、例えば、20μmである。このように、基板2には複数の電気配線23が高密度に形成されている。よって、電気素子17と光モジュール1Fの外部との電気的な接続を高密度に行うことが可能である。例えば、基板2の比誘電率は、セラミックの比誘電率よりも低い。一例として、基板2の比誘電率は5.5である。この場合、電気配線23において安定した信号伝送が可能な遮断周波数をセラミックパッケージよりも高くすることが可能となる。よって、光モジュール1Fでは、より高い周波数帯域(例えば100GHz以上)まで用いることが可能である。
【0147】
端子12はマイクロバンプであってもよい。例えば、端子12としては、半田によって構成されたC4(Controlled collapse chip connection)バンプ、または、先端部に半田が形成された銅(Cu)ピラーを用いることができる。例えば、C4バンプの直径は、100μmである。例えば、Cuピラーの直径は40μmであり、Cuピラーの高さは50μmである。
【0148】
端子12がC4バンプまたはCuピラーといったマイクロバンプである場合、端子12がBGA用の半田ボールである場合と比較して、サイズが小さくなるため、寄生容量および寄生インダクタンスも小さくなり、高周波信号の伝送が可能となる。しかしながら、端子12がマイクロバンプである場合、端子12の高さ(第3方向D3の長さ)が第1封止部材3の高さよりも小さくなる。したがって、光モジュール1を別の基板に実装するときに、第1封止部材3が対向する位置に凹部または貫通穴を設けてもよい。以上、光モジュール1Fについて説明した。光モジュール1Fにおいては、第1封止部材3、第2封止部材4および温調素子6の少なくともいずれかを省略することが可能である。例えば、樹脂層7によって、あるいは樹脂層7を覆うようにさらに保護膜を形成することによって光素子5および第2導波路8を水分や他の部品から発生する微量のガスから保護できる場合には、第1封止部材3は省略されてもよい。また、温調素子6に結露の虞が無い場合には、第2封止部材4は省略されてもよい。その場合に、放熱部材4bの代わりに外部の放熱部材を熱伝導部材18および温調素子6に接続して放熱させてもよい。光モジュール1Fでは、光素子5と電気素子17が樹脂層7に埋め込まれ、光素子5と電気素子17、および、電気素子17と基板2の電気配線23が電気配線21で互いに電気接続されている。しかし、樹脂層7を使用せず、光素子5と電気素子17、および、電気素子17と基板2の電気配線23を例えば伝送線路が形成された配線基板(ブリッジチップ)を用いて互いに電気接続してもよい。このように、光素子5と電気素子17の集積方法は適宜変更可能である。
【0149】
図19は、第12変形例に係る光モジュール1Gを示す断面図である。光モジュール1Gは、基板42と、光素子5および電気素子17が基板42に対してフェイスダウン実装される点が光モジュール1Aと異なっている。光モジュール1Gにおいて、電気素子17は、基板42に形成された凹部42hにおいて第1面17b(回路面)が基板42を向くように基板42に実装されている。
【0150】
例えば、電気素子17は、第1面17bに形成された電極を有し、当該電極はバンプ34を介して基板2の第1面2bに形成された電極2fおよびビア2dに熱的に接続されるとともに、電気配線31および電気配線33に電気的に接続される。電気素子17と基板2との間にはアンダーフィル樹脂が充填されていてもよい。電気素子17は、基板42の電極2fおよびビア2dを介して熱伝導部材18に熱的に接続されている。電気素子17は、上記の熱的な接続以外では、熱的にフローティングになっており(断熱されており)、熱伝導部材18によって効率的に放熱される。
【0151】
電気素子17の第1面17bは、基板42に固定され、かつ熱伝導部材18に物理的に接続されている。これに対し、電気素子17の第2面17cは固定されていない。よって、光素子5と同様、第1面および第2面の両方が固定された構成と比較して、温度変化による電気素子17に対する応力の影響等を抑えることができる。これにより、電気素子17および光モジュール1Gの信頼性が向上する。
【0152】
光モジュール1Gは、光素子5および電気素子17を互いに電気的に接続する電気配線33を有する。電気配線33は、電気素子17と光素子5との間において高速信号を伝送るための伝送線路を構成する。光モジュール1Gは、凹部42hにおいてバンプ34から第1封止部材3の外部まで延在する電気配線31を有する。電気配線31は、凹部42hの底面から凹部42hの外方に延在している。
【0153】
電気配線31における第1封止部材3の外部に位置する部分には、端子12が接続されている。電気配線31は、電気素子17と光モジュール1Gの外部との間において高速信号を伝送するための伝送線路を構成する。例えば、凹部42hの内面のうち、電気配線31が形成されている部分は、第3方向D3に対して傾斜している。この場合、反射またはクロストークによる高周波信号の損失を低減できる。なお、光モジュール1Gにおいて、基板42の凹部42hを省略することも可能である。この場合、光素子5および電気素子17は、基板42の第1面2bに搭載される。
【0154】
図20は、第13変形例に係る光モジュール1Hを示す断面図である。光モジュール1Hは、光素子5および電気素子17に加えて、第2電気素子61を備える点が光モジュール1Aと異なっている。第2電気素子61は、例えば、基板2の第2面2cにフリップチップ実装されている。第2電気素子61は、例えば、DSP(Digital Signal Processor)である。この場合、第2電気素子61は、パラレル信号とシリアル信号の相互変換を行うSERDES機能、エラー訂正機能、イコライザ機能、およびアナログデジタル変換機能を有する。
【0155】
第2電気素子61は、基板2に対向する第1面61bと、第1面61bとは反対を向く第2面61cとを有する。光モジュール1Hは、第2電気素子61を基板2に電気的に接続する電極62を有する。電極62は、例えば、前述したマイクロバンプである。第2電気素子61は、電極62を介してパラレル信号(一例として100chの8GBd変調信号)を基板2の外部と送受信する。
【0156】
光モジュール1Hは、外部接続用の端子63と、端子63が固定された第1基板部64と、第1基板部64および基板2の間に介在する第2基板部65とを有する。光モジュール1Hは、第1基板部64および第2基板部65を有する多層基板を構成している。例えば、第1基板部64および第2基板部65は、第1基板部64および第2基板部65のそれぞれの面内方向に沿って延在する電気配線と、第3方向D3に沿って延びるビアを有する絶縁層とによって構成されている。基板2、第1基板部64、および、第2基板部65に形成された電気配線によって、第2電気素子61の電極62と端子63が電気接続されている。
【0157】
なお、光モジュール1Hにおいて、基板部の構成は、上記の第1基板部64および第2基板部65に限られず適宜変更可能である。すなわち、光モジュール1Hは、第1基板部64および第2基板部65のいずれかを有しなくてもよいし、第1基板部64および第2基板部65の他にさらに別の基板部を有していてもよい。第1基板部64および第2基板部65は、例えば、ガラス基板である。しかしながら、光モジュール1Hは、第1基板部64および第2基板部65に代えて、ポリマー等によって構成された有機絶縁膜を有していてもよい。
【0158】
第2電気素子61は、例えば、電極62、基板2の第2面2c上に形成された電気配線66、基板2の第2面2cと第1面2bとを互いに接続する電気配線(ビア)67、および、基板2の第1面2b上に形成された電気配線68を介してシリアル信号(一例として4chの200GBd変調信号)を電気素子17と送受信する。例えば、第2電気素子61は、基板2の外部から受信したパラレル信号をシリアル信号に変換して電気素子17に送信する。
【0159】
また、第2電気素子61は、例えば、電気素子17から受信したシリアル信号をパラレル信号に変換して基板2の外部に送信する。第2電気素子61が光モジュール1Hの外部との信号の送受信を、シリアル信号よりも遅いパラレル信号によって行うことにより、第2電気素子61と端子63との間の電気配線を伝達する信号の速度を低く抑えることができる。その結果、半田ボールである端子63等によるインピーダンスの不整合の影響を低減できるので、光モジュール1Hの性能を容易に向上させることができる。端子63には、マイクロバンプではなく、例えばBGA用の半田ボールを用いることが可能である。
【0160】
図21は、第14変形例に係る光モジュール1Jを示す断面図である。光モジュール1Jは、第1封止部材73、及び配線の構成が光モジュール1Hと異なっている。光モジュール1Jはビアである電気配線71を有し、電気配線71は第1気密空間K1の内部から第1気密空間K1の外部まで延在している。第3方向D3に沿って見たときにおける第1封止部材73の面積は、第3方向D3に沿って見たときにおける第2封止部材4の面積よりも広い。
【0161】
第1封止部材73の第1方向D1の端部は、第2封止部材4の第1方向D1の端部よりも第2電気素子61に向かって張り出している。すなわち、第3方向D3に沿って見たときに、第1封止部材73の側壁部は、第2封止部材4の側壁部と第2電気素子61との間に位置する。光モジュール1Jは、第1封止部材73の内部に位置する電気配線72と、電気配線72から基板2を第3方向D3に貫通する電気配線71とを有する。
【0162】
図22は、第15変形例に係る光モジュール1Kを示す断面図である。光モジュール1Kは、光素子5および電気素子17が基板82に対しフェイスダウン実装される点が光モジュール1Hと異なっている。光モジュール1Kは、凹部82hが形成された基板82を有する。光モジュール1Kは、電気素子17に電気的に接続されるとともに凹部82hの底面に沿って延在する電気配線83と、電気配線83から基板82を第3方向D3に貫通するTGVである電気配線84と、電気配線84から第2封止部材4の外部に延在する電気配線85とを有する。
【0163】
電気配線85は、第2気密空間K2から、第2電気素子61に電気的に接続された電極62まで延在している。凹部82hの底面に沿って延びる電気配線83から電気配線84が延在することにより、電気配線84の長さを基板82の厚さ(第3方向D3の長さ)よりも短くできる。その結果、光モジュール1Kでは、高周波特性をさらに良好にすることができる。
【0164】
以上、本開示に係る実施形態および種々の変形例について説明した。しかしながら、本発明は、前述の実施形態または種々の変形例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した要旨の範囲内において適宜変更可能である。例えば、光モジュール1B,1C,1D,1E,1F,1G,1H,1J,1Kにおいて、第1封止部材3および第2封止部材4の少なくといずれかは、それらの内部に封止される部品の実装状態あるいは使用環境に応じて省略することが可能である。例えば、光素子5および第2導波路8を覆うように保護膜を形成してそれらを水分や他の部品から発生する微量のガスから保護できる場合には、第1封止部材3は省略されてもよい。また、例えば、水分や他の部品から発生する微量のガス等による光素子5の劣化、および第2導波路8の劣化が問題とならない場合等には、第1封止部材3は省略されてもよい。あるいは、温調素子6に結露の虞が無い場合には、第2封止部材4は省略されてもよい。また、本開示に係る光モジュールは、前述の実施形態、および第1変形例から第15変形例のうちの複数の例が組み合われたものであってもよい。例えば、本開示に係る光モジュールの各部の構成、形状、大きさ、材料、数および配置態様は、前述した実施形態または変形例に限られず適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0165】
1,1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G,1H,1J,1K…光モジュール
2…基板
2b…第1面
2c…第2面
2d…ビア
2f,2g…電極
2h…凹部
2j…底面
2k…内面
2m…外側面
2p…反射防止膜
2q…電気配線
2r…第1側面
2s…段差部
2t…段差面
2v…第2側面
3…第1封止部材
3b…凹部
3c…接続面
3d…底部
3f…側壁部
4…第2封止部材
4b…放熱部材
4c…側壁部
5…光素子
5b…第1面(回路面)
5c…第2面(基板面)
6…温調素子
6b…ペルチェ素子
6c…第1基板
6d…第2基板
7…樹脂層
7b…第1樹脂層
7c…第2樹脂層
7d…第3樹脂層
8…第2導波路
8b…第1レンズ
8c…第2レンズ
9…第1導波路
9b…第1部分
9c…第2部分
10…バンプ
11…光ファイバアレイ
11b…端面
12…端子
13…配線基板
13b…電気配線
14…ボンディングワイヤ
17…電気素子
17b…第1面(回路面)
17c…第2面(基板面)
18…熱伝導部材
18b…第1面
18c…第2面
19…第1導波路
21…電気配線
22…基板
23…電気配線
24…パッド
25b,25c…ビア
26,27…電気配線
28…第2導波路
28b…第1延在部
28c…第2延在部
28d…第3延在部
29…第1導波路
31…電気配線
32…基板
33…電気配線
34…バンプ
38…第2導波路
38b…第1延在部
38c…第2延在部
38d…第3延在部
39…第1導波路
42…基板
42h…凹部
48…第2導波路
49…第1導波路
51…光ファイバアレイ
58…第2導波路
58b…延在部
58c…湾曲部
59…第1導波路
61…第2電気素子
61b…第1面
61c…第2面
62…電極
63…端子
64…第1基板部
65…第2基板部
66,67,68,71,72…電気配線
73…第1封止部材
82…基板
82h…凹部
83,84,85…電気配線
D1…第1方向
D2…第2方向
D3…第3方向
F1,F2…光ファイバ
F21…湾曲部
F22…延在部
G…接着剤
K1…第1気密空間
K2…第2気密空間
L…光信号
P1,P2,P3,P4,P5…光結合部
θ…傾斜角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22