(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141570
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】半導体装置、半導体モジュール、及びシステム
(51)【国際特許分類】
H01L 23/34 20060101AFI20241003BHJP
H01L 25/04 20230101ALI20241003BHJP
H01L 21/822 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H01L23/34 A
H01L25/04 Z
H01L27/04 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053300
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105887
【弁理士】
【氏名又は名称】来山 幹雄
(74)【代理人】
【識別番号】100145023
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 学
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 健次
(72)【発明者】
【氏名】後藤 聡
(72)【発明者】
【氏名】青池 将之
【テーマコード(参考)】
5F038
5F136
【Fターム(参考)】
5F038BH16
5F038EZ01
5F038EZ02
5F038EZ07
5F038EZ20
5F136BB13
5F136DA17
5F136EA13
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高周波増幅回路のトランジスタからの放熱性を向上させる半導体装置等を提供する。
【解決手段】半導体装置60において、複合基板65は、第1部材10及び第1部材の第1面10Aに設けられた第2部材20を含み、第1導体突起51及び第2導体突起52が、複合基板から第1面の向く方向に突出する。第1部材は第1半導体基板11を含み、第2部材は、第1半導体基板より熱伝導率が低い第2半導体基板21を含む。第2部材には、複数の第1トランジスタ31を含む高周波増幅回路が設けられている。第1導体突起は、複数の第1トランジスタと電気的に接続され、第1面を平面視したとき、複数の第1トランジスタと少なくとも部分的に重なりを持つ。複合基板は、第2導体突起から第1半導体基板又は第2半導体基板まで達する接続部分23を含む。第2導体突起は、第1導体突起から第1面の面内方向に55μm以上離れて配置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材及び前記第1部材の1つの面である第1面に設けられた第2部材を含む複合基板と、
前記第2部材から前記第1面の向く方向に突出する第1導体突起と、
前記複合基板から前記第1面の向く方向に突出する第2導体突起と
を備え、
前記第1部材は第1半導体基板を含み、
前記第2部材は、前記第1半導体基板より熱伝導率が低い第2半導体基板を含み、
前記第2部材に、複数の第1トランジスタを含む高周波増幅回路が設けられており、
前記第1導体突起は、前記複数の第1トランジスタと電気的に接続され、前記第1面を平面視したとき、前記複数の第1トランジスタと少なくとも部分的に重なりを持ち、
前記複合基板は、前記第2導体突起から前記第1半導体基板または前記第2半導体基板まで達する接続部分を含み、
前記接続部分は、前記第1面を平面視したとき、前記第2導体突起と少なくとも部分的に重なる領域において前記第2導体突起から前記第1半導体基板または前記第2半導体基板まで達し、半導体材料、導電材料、または半導体材料と導電材料との積層で構成されており、
前記第2導体突起は、前記第1導体突起から前記第1面の面内方向に55μm以上離れて配置されている半導体装置。
【請求項2】
前記複数の第1トランジスタは、1本の仮想直線に沿って配置されており、前記第2導体突起は、前記第1導体突起から、前記仮想直線に直交する方向に55μm以上離れて配置されている請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第2導体突起は、前記仮想直線に平行な方向に関して、前記複数の第1トランジスタが分布する範囲内に配置されている請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記複数の第1トランジスタは複数のブロックのいずれかに属し、複数のブロックのそれぞれに属する前記複数の第1トランジスタは、1本の仮想直線に沿って配置されており、
前記第1導体突起は、前記複数のブロックに対して1つずつ配置されている請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第2導体突起は、前記接続部分、前記第1半導体基板、及び前記第2半導体基板を介して前記複数の第1トランジスタに熱的に結合している請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第2部材に、さらにドライブ段増幅回路が設けられており、前記ドライブ段増幅回路から出力された高周波信号が前記高周波増幅回路に入力され、
前記ドライブ段増幅回路は、1つまたは相互に並列接続された複数の第2トランジスタを含み、
前記第2部材から、前記第1面の向く方向に突出する第3導体突起をさらに備え、
前記第3導体突起は、前記第2トランジスタと電気的に接続され、前記第1面を平面視したとき、前記第2トランジスタと少なくとも部分的に重なりを持ち、
前記第2導体突起は、前記第3導体突起から前記第1面の面内方向に55μm以上離れて配置されている請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体装置と、
前記半導体装置が搭載されたモジュール基板と
を備え、
前記モジュール基板は、
内層に配置されたグランド導体と、
表面に配置された複数のグランド用ランドと
を含み、
前記第1導体突起及び前記第2導体突起は、それぞれ前記グランド用ランドに接続されている半導体モジュール。
【請求項8】
請求項7に記載の半導体モジュールと、
前記半導体モジュールが搭載されたシステム基板と
を備え、
前記モジュール基板は、
前記グランド用ランドが配置された面とは反対側の面に配置された裏面グランド導体と、
前記グランド用ランドと前記裏面グランド導体とを電気的に接続する複数のビアと
を有し、
前記システム基板は、表面に配置されたシステムグランド導体を有し、
前記半導体モジュールは、前記裏面グランド導体が前記システムグランド導体に電気的に接続されることにより、前記システム基板に実装されているシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置、半導体モジュール、及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
高放熱性、高出力、高集積化に適した半導体装置として、回路素子が形成された第2基材と、第2基材より熱伝導率が高い第1基材とを含む半導体装置が公知である(特許文献1)。第2基材は第1基材に接合されている。回路素子に接続される電極または回路素子に接して電気的に接続された導体ピラーバンプ(導体突起)が設けられている。この導体ピラーバンプが回路素子からの放熱経路として機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高周波増幅回路のトランジスタは、熱暴走しない範囲で使用する必要がある。トランジスタからの放熱性が十分でない場合、高周波増幅回路の出力電力が制限を受ける。高周波増幅回路の出力電力を高めるために、トランジスタからの放熱性の向上が望まれる。本発明の目的は、高周波増幅回路のトランジスタからの放熱性を向上させることが可能な半導体装置を提供することである。本発明の他の目的は、この半導体装置を搭載した半導体モジュール及びシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一観点によると、
第1部材及び前記第1部材の1つの面である第1面に設けられた第2部材を含む複合基板と、
前記第2部材から前記第1面の向く方向に突出する第1導体突起と、
前記複合基板から前記第1面の向く方向に突出する第2導体突起と
を備え、
前記第1部材は第1半導体基板を含み、
前記第2部材は、前記第1半導体基板より熱伝導率が低い第2半導体基板を含み、
前記第2部材に、複数の第1トランジスタを含む高周波増幅回路が設けられており、
前記第1導体突起は、前記複数の第1トランジスタと電気的に接続され、前記第1面を平面視したとき、前記複数の第1トランジスタと少なくとも部分的に重なりを持ち、
前記複合基板は、前記第2導体突起から前記第1半導体基板または前記第2半導体基板まで達する接続部分を含み、
前記接続部分は、前記第1面を平面視したとき、前記第2導体突起と少なくとも部分的に重なる領域において前記第2導体突起から前記第1半導体基板または前記第2半導体基板まで達し、半導体材料、導電材料、または半導体材料と導電材料との積層で構成されており、
前記第2導体突起は、前記第1導体突起から前記第1面の面内方向に55μm以上離れて配置されている半導体装置が提供される。
【0006】
本発明の他の観点によると、
前記半導体装置と、
前記半導体装置が搭載されたモジュール基板と
を備え、
前記モジュール基板は、
内層に配置されたグランド導体と、
表面に配置された複数のグランド用ランドと
を含み、
前記第1導体突起及び前記第2導体突起は、それぞれ前記グランド用ランドに接続されている半導体モジュールが提供される。
【0007】
本発明のさらに他の観点によると、
前記半導体モジュールと、
前記半導体モジュールが搭載されたシステム基板と
を備え、
前記モジュール基板は、
前記グランド用ランドが配置された面とは反対側の面に配置された裏面グランド導体と、
前記グランド用ランドと前記裏面グランド導体とを電気的に接続する複数のビアと
を有し、
前記システム基板は、表面に配置されたシステムグランド導体を有し、
前記半導体モジュールは、前記裏面グランド導体が前記システムグランド導体に電気的に接続されることにより、前記システム基板に実装されているシステムが提供される。
【発明の効果】
【0008】
第1トランジスタで発生した熱が、第1導体突起及び第2導体突起を経由して、モジュール基板に伝導する。第1導体突起から第1面の面内方向に55μm以上離れて第2導体突起を配置すると、第1トランジスタから第1導体突起及び第2導体突起を放熱経路とする放熱性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1実施例による半導体装置の概略断面図である。
【
図2】
図2は、第1実施例による半導体装置の第1導体突起、第2導体突起、及び第1トランジスタの平面視における位置関係を示す図である。
【
図3】
図3Aは、1つのブロックに含まれる複数の第1トランジスタ、及び第1トランジスタに接続された配線や受動素子の平面視における位置関係を示す図であり、
図3Bは、1つの第1トランジスタ及びそれに接続された受動素子の等価回路図である。
【
図4】
図4Aは、1つの第1トランジスタの概略平面図であり、
図4Bは、
図4Aの一点鎖線4B-4Bにおける断面図である。
【
図5】
図5Aは、第2導体突起及び第2導体突起に接続されている複数の構成要素の平面視における位置関係を示す図であり、
図5Bは、
図5Aの一点鎖線5B-5Bにおける断面図である。
【
図6】
図6A及び
図6Bは、それぞれ半導体装置を含む半導体モジュールの平面図及び断面図である。
【
図7】
図7は、中心間距離Dyがゼロのときの熱抵抗を基準としたときの熱抵抗の変化率のシミュレーション結果を示すグラフである。
【
図8】
図8A、
図8B、及び
図8Cは、発熱箇所からの放熱経路を説明するための半導体装置、モジュール基板、及びシステム基板を含む評価モデルの概略断面図である。
【
図9】
図9は、第1実施例による半導体装置の第1導体突起及び出力用導体突起を含む一部分の断面図である。
【
図10】
図10A及び
図10Bは、第1実施例の変形例による半導体装置の第2導体突起、接続部分、第2半導体基板、及び第1部材の断面図である。
【
図11】
図11は、第1実施例の他の変形例による半導体装置及びモジュール基板の一部分の断面図である。
【
図12】
図12Aは、第2実施例によるシステムの複数の構成要素の平面視における位置関係を示す図であり、
図12Bは、第2実施例によるシステムの概略断面図である。
【
図13】
図13は、第2実施例によるシステムにおいて、中心間距離Dyがゼロのときの熱抵抗を基準としたときの熱抵抗の変化率のシミュレーション結果を示すグラフである。
【
図14】
図14Aから
図14Fまでの図面は、第3実施例による半導体装置の複数の第1トランジスタ及び2つの第1導体突起の平面視における位置関係を示す図である。
【
図15】
図15は、第3実施例による半導体装置において、中心間距離Dyがゼロのときの熱抵抗を基準としたときの熱抵抗の変化率のシミュレーション結果を示すグラフである。
【
図16】
図16は、第4実施例による半導体装置の第1導体突起と、第2導体突起が配置される位置との平面視における位置関係を示す図である。
【
図17】
図17は、第4実施例による半導体装置において、中心間距離Dyがゼロのときの熱抵抗を基準としたときの熱抵抗の変化率のシミュレーション結果を示すグラフである。
【
図18】
図18は、第5実施例による半導体装置の機能を示すブロック図である。
【
図19】
図19は、パワー段増幅回路の複数の第1トランジスタ、ドライブ段増幅回路の複数の第2トランジスタ、第1導体突起、第2導体突起、及び第3導体突起の平面視における位置関係を示す図である。
【
図20】
図20は、第6実施例による半導体装置の複数の第1トランジスタ、複数の第1導体突起、及び第2導体突起の平面視における位置関係を示す図である。
【
図21】
図21は、第7実施例による半導体装置の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1実施例]
図1から
図9までの図面を参照して、第1実施例による半導体装置について説明する。
図1は、第1実施例による半導体装置の概略断面図である。本明細書において「断面図」は、部材や装置の特定の断面を表す図面を意味しているわけではなく、種々の断面の特徴的な構造を示す図面を意味する。
【0011】
第1実施例による半導体装置60は、複合基板65、第1導体突起51、及び第2導体突起52を含む。複合基板65は、第1部材10、及び第1部材10の第1面10Aに設けられた第2部材20を含む。第2部材20は、例えば第1部材10の上に第2部材20を接合することにより、第1部材10に設けられる。第1部材10と第2部材20との接合は、例えば、ファンデルワールス結合または水素結合により接合される。その他に、静電気力、共有結合、共晶合金結合等によって両者を接合してもよい。第1面10AにAu膜を形成し、第2部材20をAu膜に密着させて加圧することにより、両者を接合してもよい。
【0012】
第1導体突起51及び第2導体突起52は、複合基板65から、第1面10Aの向く方向と同一方向に突出している。より具体的には、第1導体突起51及び第2導体突起52は、第2部材20から、第1面10Aの向く方向と同一方向に突出している。言い換えると、第2部材20は、第1導体突起51及び第2導体突起52と、複合基板65の第1部材10とによって挟まれており、第1導体突起51及び第2導体突起52は、第2部材20から見て第1部材10の側とは反対側に突出している。第1導体突起51及び第2導体突起52として、例えばCuピラーバンプ等が用いられる。以下、半導体装置の種々の構成要素の、第1面10Aと同一方向を向く面を「上面」ということとする。
【0013】
第1部材10は、第1半導体基板11を含む。第2部材20は、第2半導体基板21を含む。第2半導体基板21は第1半導体基板11より薄い。第2半導体基板21の熱伝導率は、第1半導体基板11の熱伝導率より低い。また、第2半導体基板21の半導体材料の電子移動度は、第1半導体基板11の半導体材料の電子移動度より高い。第1半導体基板11には、例えばSi等の単体半導体が用いられる。第2半導体基板21には、例えばGaAs等の化合物半導体が用いられる。第2半導体基板21は、電気的に半絶縁性である。
【0014】
第2部材20は、さらに、第2半導体基板21の上面に配置された複数の第1トランジスタ31、第1トランジスタ31のエミッタに接続されたエミッタ配線34E、及び接続部分23を含む。第2部材20は、第2半導体基板21の上面に複数の第1トランジスタ31等を形成した後、第1部材10に接合する前に、第2半導体基板21を裏面から研磨または研削して薄層化することにより作製される。第2半導体基板21は、それ自体で一定の形状を維持することができない程度の薄さであり、第1部材10に接合されることによって、その形状が一定に維持される。第1面10Aを平面視したとき(以下、単に「平面視において」という場合がある。)、第2部材20は第1部材10より小さく、第1部材10に包含される。
【0015】
複数の第1トランジスタ31は、例えばヘテロ接合型バイポーラトランジスタであり、相互に並列接続されて高周波増幅回路を構成する。第1導体突起51は、第1トランジスタ31に電気的に接続されている。より具体的には、第1導体突起51は第1トランジスタ31のエミッタに電気的に接続されている。また、平面視において、第1導体突起51は、複数の第1トランジスタ31と少なくとも部分的に重なりを持つ。
【0016】
第2導体突起52は、接続部分23の上面に接触しており、接続部分23は第2半導体基板21の上面に接触している。すなわち、接続部分23は、第2導体突起52から第2半導体基板21まで達する。接続部分23は、平面視において第2導体突起52と少なくとも部分的に重なる位置に配置されており、半導体材料、導電材料、または半導体材料と導電材料との積層で構成されている。すなわち、平面視において第2導体突起52の外周線で囲まれた領域内に、第1半導体基板11から第2導体突起52まで達し、絶縁材料を含まず、半導体材料のみ、導電材料のみ、または半導体材料と導電材料のみで構成された伝熱経路が形成される。
【0017】
なお、接続部分23は、伝熱経路を構成する箇所以外の箇所に絶縁材料を含んでいてもよい。例えば、接続部分23を、伝熱経路となる複数のビア導体の集合体であるワッフル状ビア導体で構成してもよい。ビア導体の各々は、半導体部材、導電部材、または半導体材料と導電材料との積層部材で構成される。この場合、接続部分23は、複数のビア導体に加えて、複数のビア導体を相互に絶縁する絶縁部材を含む。しかしながら、この場合においても、主として伝熱経路となるのは複数のビア導体であり、絶縁部材は実質的に伝熱経路として機能しない。したがって、接続部分23がワッフル状ビアで構成される場合においても、絶縁材料を含まず、半導体材料のみ、導電材料のみ、または半導体材料と導電材料のみで構成された伝熱経路が形成されるといえる。
【0018】
図2は、第1導体突起51、第2導体突起52、及び第1トランジスタ31の平面視における位置関係を示す図である。
図2では、第1トランジスタ31を、後述するコレクタメサ31BCの平面視における形状で表している。第1部材10の第1面10A(
図1)に平行な平面をxy面とするxy直交座標系を定義する。26個の第1トランジスタ31(コレクタメサ31BC)が、x軸に平行な仮想直線25に沿って配置されている。26個の第1トランジスタ31は、それぞれ13個の第1トランジスタ31で構成される2つのブロックに区分されている。2つのブロックのそれぞれに属する複数の第1トランジスタ31は、等間隔に配置されている。一方のブロックの複数の第1トランジスタ31と他方のブロックの複数の第1トランジスタ31との間の最短距離は、ブロック内の複数の第1トランジスタ31の配列ピッチより長い。
【0019】
第1導体突起51は、第1トランジスタ31のブロックごとに1つずつ配置されている。第1導体突起51のそれぞれは、対応するブロックの複数の第1トランジスタ31に電気的に接続されている。第1導体突起51のそれぞれは、平面視において、x方向に長い形状を有しており、接続先の複数の第1トランジスタ31を包含している。
【0020】
第2導体突起52は、第1導体突起51からy軸方向にずれた位置に配置されており、x方向に関しては、2つの第1導体突起51の間に配置されている。例えば、2つの第1導体突起51の平面視における幾何中心C1と、第2導体突起52の平面視における幾何中心とのx方向の位置は一致する。第1導体突起51と第2導体突起52との中心間のy方向の距離をDyと標記し、第1導体突起51と第2導体突起52とのy方向の間隔をGpと標記する。
【0021】
図3Aは、1つのブロックに含まれる複数の第1トランジスタ31、及び第1トランジスタ31に接続された配線や受動素子の平面視における位置関係を示す図である。
図3Bは、1つの第1トランジスタ31及びそれに接続された受動素子の等価回路図である。
【0022】
図3Bに示すように、第1トランジスタ31のコレクタが電源電圧Vccに接続され、エミッタが接地されている。高周波信号が、入力キャパシタCを介して第1トランジスタ31のベースに入力される。ベースバイアスが、ベースバラスト抵抗素子Rを介して第1トランジスタ31のベースに印加される。
【0023】
図3Aに示すように、x方向に13個の第1トランジスタ31が配列している。
図3Aにおいて、1層目の配線層に含まれる配線に右下がりのハッチングを付している。
【0024】
第1トランジスタ31のそれぞれに包含されるように、1層目のエミッタ配線33Eが配置されている。エミッタ配線33Eは、第1トランジスタ31のエミッタに電気的に接続されている。平面視において1層目の複数のエミッタ配線を包含するように、2層目のエミッタ配線34Eが配置されている。2層目のエミッタ配線34Eは複数の1層目のエミッタ配線33Eに接続されており、複数の第1トランジスタ31のエミッタ同士を電気的に接続する。
【0025】
櫛歯型の1層目のコレクタ配線33Cの複数の櫛歯部分がx方向に並んでおり、隣り合う2つの櫛歯部分の間に第1トランジスタ31が配置されている。コレクタ配線33Cは、第1トランジスタ31のコレクタに電気的に接続されている。
【0026】
第1トランジスタ31のそれぞれから、y方向に1層目のベース配線33Bが延びている。ベース配線33Bは、第1トランジスタ31のベースに電気的に接続されている。ベース配線33Bのそれぞれは、2層目のエミッタ配線34Eの外側において拡幅されている。複数のベース配線33Bの拡幅部が、平面視において2層目の入力配線34RFと重なっている。両者の重なり箇所が、入力キャパシタCとして動作する。複数のベース配線33Bのそれぞれの先端に、ベースバラスト抵抗素子Rの一端が接続されている。ベースバラスト抵抗素子Rの他端が、共通の1層目のベースバイアス配線33BBに接続されている。
【0027】
平面視において2層目のエミッタ配線34Eに重なるように、第1導体突起51が配置されている。第1導体突起51は、2層目のエミッタ配線34Eに電気的に接続されている。また、第1導体突起51は、平面視において、第1導体突起51の接続先の複数の第1トランジスタ31を包含している。
【0028】
2層目のコレクタ配線34Cの一部が1層目のコレクタ配線33Cの一部に重なり、重なり部分において1層目のコレクタ配線33Cに電気的に接続されている。2層目のコレクタ配線34Cに包含されるように、2つの出力用導体突起55が配置されている。出力用導体突起55は、2層目のコレクタ配線34Cに電気的に接続されている。
【0029】
図4Aは、1つの第1トランジスタ31の概略平面図であり、
図4Bは、
図4Aの一点鎖線4B-4Bにおける断面図である。
図4Aにおいて、半導体層に直接接触する電極に右上がりの相対的に濃いハッチングを付し、1層目の配線層に含まれる配線に右下がりの相対的に淡いハッチングを付している。
図4Bにおいて、層間絶縁膜の記載を省略している。
【0030】
図4Bに示すように、第1部材10の第1面10Aに第2半導体基板21が接合されている。第2半導体基板21の上面に、サブコレクタ層22が配置されている。第2半導体基板21は化合物半導体からなる基板であり、サブコレクタ層22は、例えば第2半導体基板21の上面の上に、第2半導体基板21と同一の化合物半導体からなる層をエピタキシャル成長させることにより形成される。すなわち、第2部材20は、第2半導体基板21及びサブコレクタ層22の双方を含んでいる。
【0031】
サブコレクタ層22の上面に第1トランジスタ31が配置されている。第1トランジスタ31は、サブコレクタ層22側から順番に積層されたコレクタ層31C、ベース層31B、及びエミッタ層31Eを含む。エミッタ層31Eは、例えばベース層31Bの上面に、x方向に間隔を隔てて2個配置されている。本明細書において、コレクタ層31C及びベース層31Bからなるメサ構造体を、コレクタメサ31BCという。また、平面視において第1トランジスタ31と重なるとは、コレクタメサ31BCと重なることを意味する。コレクタメサ31BCの各々は、平面視においてy方向に長い形状を有する。
【0032】
2つのエミッタ層31Eの上に、それぞれエミッタ電極32Eが配置されている。ベース層31Bの上面のうち2つのエミッタ層31Eの間の領域にベース電極32Bが配置されている。サブコレクタ層22の上面のうちコレクタメサ31BCをx方向に挟むように、2つのコレクタ電極32Cが配置されている。コレクタ電極32Cは、サブコレクタ層22を介してコレクタ層31Cに電気的に接続されている。なお、コレクタ電極32Cは、x方向に並ぶ2つの第1トランジスタ31の間に配置されており、2つの第1トランジスタ31で共用される。
【0033】
2つのエミッタ電極32Eの上に1層目のエミッタ配線33Eが配置されている。エミッタ配線33Eは、ベース電極32Bの上方を通過して2つのエミッタ電極32E同士を電気的に接続する。コレクタ電極32Cの上に、1層目のコレクタ配線33Cが配置されている。
【0034】
2層目のエミッタ配線34Eが1層目のエミッタ配線33Eに電気的に接続されている。2層目のエミッタ配線34Eの上に、第1導体突起51が配置されている。第1導体突起51は、ピラー部51aと、その上面に配置されたハンダ層51bとを含む。なお、必要に応じて、ピラー部51aと2層目のエミッタ配線34Eとの間に、アンダーバンプメタル層を配置してもよい。
【0035】
図4Aに示すように、平面視において、サブコレクタ層22内にコレクタ層31C及びベース層31Bからなるコレクタメサ31BCが配置されている。コレクタメサ31BCをx方向に挟むように、2つのコレクタ電極32Cが配置されている。コレクタ電極32Cのそれぞれに、1層目のコレクタ配線33Cの櫛歯部分が重なる。1層目のコレクタ配線33Cの櫛歯部分は、y軸の負の向きにサブコレクタ層22の外側まで延びている。
【0036】
コレクタメサ31BCの内部にy方向に長い2つのエミッタ電極32Eがx方向に間隔を隔てて配置されており、2つのエミッタ電極32Eの間に、y方向に長いベース電極32Bが配置されている。2つのエミッタ電極32Eと重なるように1つの1層目のエミッタ配線33Eが配置されている。1層目のエミッタ配線33Eは、一方のエミッタ電極32Eから、ベース電極32Bと交差して他方のエミッタ電極32Eまで達する。ベース電極32Bの端部に1層目のベース配線33Bが重なるように配置されている。1層目のベース配線33Bは、y軸の正の方向に、サブコレクタ層22の外側まで延びている。
【0037】
1層目のエミッタ配線33Eと重なるように、2層目のエミッタ配線34Eが配置されている。2層目のエミッタ配線34Eは、x方向に延びており、第1トランジスタ31ごとに配置された1層目のエミッタ配線33E同士を接続する。
【0038】
図5Aは、第2導体突起52及び第2導体突起52に接続されている複数の構成要素の平面視における位置関係を示す図であり、
図5Bは、
図5Aの一点鎖線5B-5Bにおける断面図である。
図5Aにおいて、半導体層に直接接触している金属膜に右上がりの相対的に濃いハッチングを付し、1層目の配線層に配置された配線に右下がりの相対的に淡いハッチングを付している。
図5Bにおいて、層間絶縁膜の記載を省略している。
【0039】
図5Bに示すように、第1部材10の第1半導体基板11の第1面10Aに第2半導体基板21が接合されており、その上にサブコレクタ層22が配置されている。サブコレクタ層22の上に、半導体層35T、36T、及び金属層32Tがこの順番に積層されている。半導体層35T、36Tは、それぞれ第1トランジスタ31(
図4B)のコレクタ層31C及びベース層31Bと同一の成膜工程で成膜される。金属層32Tは、ベース電極32Bの形成と同一の工程で形成される。
【0040】
金属層32Tの上に、1層目の配線層に配置された金属層33T、及び2層目の配線層に配置された金属層34Tが積層されており、その上に第2導体突起52が配置されている。第2導体突起52は、第1導体突起51(
図4B)と同様に、ピラー部52aと、その上に配置されたハンダ層52bとを含む。
【0041】
図5Aに示すように、サブコレクタ層22、半導体層35T、36T、金属層32T、1層目の金属層33T、2層目の金属層34T、及び第2導体突起52が、平面視において相互に重なっている。サブコレクタ層22、半導体層35T、36T、金属層32T、1層目の金属層33T、2層目の金属層34T、及び第2導体突起52からなる積層構造体が、接続部分23(
図1、
図5B)を構成する。
【0042】
接続部分23は、第2導体突起52から第1半導体基板11まで達し、平面視において第2導体突起52と重なる位置に配置される。すなわち、接続部分23は、第1半導体基板11から第2導体突起52まで、第1面10Aの法線方向に伝熱させる伝熱経路を構成する。
【0043】
図6A及び
図6Bは、それぞれ半導体装置60を含む半導体モジュールの平面図及び断面図である。半導体装置60がモジュール基板70に実装されている。モジュール基板70には、例えばプリント配線基板、低温同時焼成セラミックス(LTCC)基板等が用いられる。モジュール基板70は、内層に配置された複数の内層グランド導体71、裏面に配置された裏面グランド導体72、実装面に配置されたグランド用ランド73、その他の複数のランド74、及び複数のビア75を含む。
【0044】
グランド用ランド73は、複数のビア75及び内層グランド導体71を介して裏面グランド導体72に電気的かつ熱的に接続されている。半導体装置60の第1導体突起51及び第2導体突起52がグランド用ランド73に接続されることにより、半導体装置60がモジュール基板70にフェイスダウン実装されている。複数のランド74に複数の表面実装デバイス61が接続されている。裏面グランド導体72の表面にハンダ層76が配置されている。
【0045】
次に、
図6A及び
図6Bに示した半導体モジュールの放熱特性をシミュレーションした結果について説明する。モジュール基板70の実装面から約1mm上方に位置する仮想的な平面90、及びハンダ層76の表面を含む仮想的な平面91を、理想的な放熱性を持つ無限大放熱面とし、平面視において半導体装置60及び複数の表面実装デバイス61が配置された領域を取り囲む仮想的な平面92を断熱面とした。仮想的な平面90、91、92に囲まれた空間の空洞部分は空気で満たされている。複数の第1トランジスタ31のコレクタメサ31BC(
図4A、
図4B)を発熱源とした。
【0046】
半導体装置60の第1部材10(
図1)の熱伝導率を、Siを想定して148W/K・mに設定した。第2部材20の第2半導体基板21、第1トランジスタ31、接続部分23(
図1)の熱伝導率を、GaAsを想定して30W/K・mに設定した。第1導体突起51、第2導体突起52(
図1)のピラー部51a、52aの熱伝導率を、Cuを想定して390W/K・mに設定した。モジュール基板70の絶縁層部分の熱伝導率を、エポキシ樹脂を想定して0.8W/K・mに設定した。モジュール基板70の金属部分の熱伝導率を、Cuを想定して390W/K・mに設定した。第1導体突起51のハンダ層51b、第2導体突起52のハンダ層52b、及びハンダ層76の熱伝導率を、ハンダを想定して62.8W/K・mに設定した。空気の熱伝導率を0.025W/K・mに設定した。
【0047】
図7は、中心間距離Dy(
図2)がゼロのときの熱抵抗を基準としたときの熱抵抗の変化率のシミュレーション結果を示すグラフである。ここで、熱抵抗は、コレクタメサ31BCの温度上昇分を消費電力で除した値である。
図7に示したグラフの横軸は、第1導体突起51と第2導体突起52とのy方向の中心間距離Dy(
図2)を単位[μm]で表し、縦軸は、熱抵抗変化率を単位[%]で表す。なお、上横軸に、第1導体突起51と第2導体突起52とのy方向の間隔Gp(
図2)の値を示す。
【0048】
中心間距離Dyが0μmより大きい範囲で、熱抵抗変化率が負になっている。すなわち、中心間距離Dyがゼロのときと比べて、コレクタメサ31BCからの放熱性が向上する。特に、中心間距離Dyが135μm以上のとき、すなわち間隔Gpが55μm以上のとき、放熱性の向上の程度が大きい。高い放熱性を確保するために、間隔Gpを55μm、以上にすることが好ましい。また、間隔Gpが55μm以上575μm以下の範囲で、放熱性の向上が確認された。
【0049】
次に、
図8A、
図8B、及び
図8Cを参照して、放熱性が向上する理由について説明する。
図8A、
図8B、及び
図8Cは、発熱箇所からの放熱経路を説明するための半導体装置60、モジュール基板70、及びシステム基板80を含む評価モデルの概略断面図である。半導体装置60がモジュール基板70に実装され、モジュール基板70がシステム基板80に実装されている。
図8A、
図8B、及び
図8Cにおいて、主な伝熱経路を矢印で示している。伝熱量の大きさを、矢印の太さで表している。
【0050】
図8A、
図8B、及び
図8Cのいずれの半導体装置60においても、発熱源となる第1トランジスタ31と重なる位置に第1導体突起51が配置されており、第1導体突起51から離れた位置に第2導体突起52が配置されている。
図8Cの評価モデルにおいては、
図8A及び
図8Bの評価モデルと比べて第1導体突起51から第2導体突起52までの距離が長い。
【0051】
図8Aの半導体装置60の基板には、例えばGaAsが用いられ、
図8B及び
図8Cの半導体装置60の基板には、例えばSiが用いられている。
図8B及び
図8Cの半導体装置60の基板の熱伝導率は、
図8Aの半導体装置60の基板の熱伝導率より高い。
【0052】
図8Bの評価モデルでは、
図8Aの評価モデルに比べて、第1トランジスタ31で発生した熱が半導体装置60内の横方向に拡散しやすい。このため、第2導体突起52を経由してモジュール基板70に伝導される熱量が多くなる。その結果、第2導体突起52が接続されている箇所からモジュール基板70内を横方向に拡散する熱量が多くなる。第2導体突起52を経由してモジュール基板70まで達した熱がモジュール基板70内を横方向に拡散することにより、モジュール基板70とシステム基板80との接続領域のうち、モジュール基板70からシステム基板80に熱が伝導される実質的な面積が広くなる。このため、
図8Bの評価モデルにおいては
図8Aの評価モデルと比べて放熱性が向上する。
【0053】
図8Bの評価モデルにおいては、第1導体突起51及び第2導体突起52の、モジュール基板70への接続箇所が近いため、モジュール基板70内の第1導体突起51との接続箇所から第2導体突起52との接続箇所に向かう熱流が形成される。その結果、モジュール基板70内に、第2導体突起52との接続箇所から第1導体突起51との接続箇所に向って温度が高くなるような温度勾配が発生する。このため、第2導体突起52を経由してモジュール基板70まで達した熱は、第1導体突起51の接続箇所の方には伝熱されず、第1導体突起51の接続箇所から遠ざかる方向にのみ拡散する。
【0054】
図8Cの評価モデルにおいては、第1トランジスタ31から第2導体突起52までの半導体装置60を経由する熱経路の熱抵抗は、
図8Bの評価モデルの場合より高くなる。ところが、第1導体突起51の接続箇所から第2導体突起52の接続箇所までの距離が遠いため、モジュール基板70内の、第1導体突起51との接続箇所まで達した熱のうち大部分は、第2導体突起52の接続箇所まで達する前にシステム基板80に伝導される。このため、第2導体突起52との接続箇所に与える熱的影響は小さい。
【0055】
第2導体突起52を経由してモジュール基板70まで達した熱は、モジュール基板70内の、第2導体突起52との接続箇所から、第1導体突起51との接続箇所に近づく向きにも拡散する。その結果、モジュール基板70とシステム基板80との接続領域のうち、モジュール基板70からシステム基板80に熱が伝導される実質的な面積がさらに広くなる。これにより、第1トランジスタ31からシステム基板80までの放熱性が向上する。
図7に示したように、第1導体突起51と第2導体突起52との間隔Gpが55μm以上のとき、放熱性が向上する顕著な効果が得られる。
【0056】
次に、
図9を参照して、第2導体突起52と出力用導体突起55(
図3A)との相違点について説明する。
図9は、第1実施例による半導体装置の第1導体突起51及び出力用導体突起55を含む一部分の断面図である。出力用導体突起55は、2層目のコレクタ配線34C、1層目のコレクタ配線33C、コレクタ電極32C、及びサブコレクタ層22を介して、第2半導体基板21に熱的に接続されている。なお、平面視において1層目のコレクタ配線33Cが出力用導体突起55の外側まで延び、出力用導体突起55の外側でコレクタ電極32Cに接続されている。
【0057】
平面視において、出力用導体突起55が占める範囲の全域に、第2半導体基板21と1層目のコレクタ配線33Cとの間に配置された絶縁層が広がっている。したがって、出力用導体突起55に対しては、第2導体突起52と第2半導体基板21との間に配置された接続部分23(
図5B)に相当するものが存在しない。この点で、第2導体突起52は出力用導体突起55と区別される。
【0058】
第1トランジスタ31で発生した熱の一部は、コレクタ電極32C、コレクタ配線33C、34Cを経由して出力用導体突起55まで伝導される。第1実施例では、出力用導体突起55(
図3A)の他に、放熱用の第2導体突起52が設けられているため、放熱性の向上を図ることができる。なお、熱的な対称性を考慮して、第2導体突起52は、複数の第1トランジスタ31が沿う仮想直線25(
図2)から見て出力用導体突起55とは反対側に配置することが好ましい。
【0059】
次に、
図10A及び
図10Bを参照して、第1実施例の変形例による半導体装置について説明する。
図10A及び
図10Bは、第1実施例の変形例による半導体装置の第2導体突起52、接続部分23、第2半導体基板21、及び第1部材10の断面図である。第1実施例(
図5B)では、ベース層31B(
図4B)と同一工程で成膜された半導体層36Tの上面に、ベース電極32B(
図4B)と同一工程で成膜された金属層32Tが接触している。
【0060】
これに対して
図10Aに示した変形例では、ベース層31Bと同一工程で成膜された半導体層36Tの上に、エミッタ層31E(
図4B)と同一工程で成膜された半導体層37Tが配置されている。半導体層37Tの上面に、エミッタ電極32E(
図4B)と同一工程で成膜された金属層32Tが接触している。この構成では、接続部分23が、サブコレクタ層22、半導体層35T、36T、37T、金属層32T、33T、34Tで構成される。
【0061】
図10Bに示した変形例による接続部分23は、第1実施例(
図5B)による接続部分23に含まれている半導体層35T、36Tを含んでいない。すなわち、サブコレクタ層22の上面に、金属層32Tが接触している。金属層32Tは、コレクタ電極32C、ベース電極32B、またはエミッタ電極32Eと同一工程で成膜される。
【0062】
このように、接続部分23は、半導体層または金属層を含み、絶縁層を含まない種々の積層構造を有するようにするとよい。
【0063】
次に、
図11を参照して第1実施例の他の変形例による半導体装置について説明する。
図11は、本変形例による半導体装置60及びモジュール基板70の一部分の断面図である。第1実施例(
図6B)では、第2導体突起52とモジュール基板70内のビア75との位置関係について特に規定していない。本変形例では、両者の好ましい位置関係が規定される。
【0064】
半導体装置60の第2導体突起52が、モジュール基板70のグランド用ランド73に接続されている。グランド用ランド73は、複数のビア75及び複数の内層グランド導体71を経由して裏面グランド導体72に電気的にかつ熱的に接続されている。
図11に破線77で示したように、第2導体突起52からモジュール基板70の厚さ方向にグランド用ランド73、ビア75、及び内層グランド導体71のみを辿って裏面グランド導体72まで到達できるように、複数のビア75及び内層グランド導体71が配置されている。
【0065】
図11に示した変形例においては、破線77で示した領域内のグランド用ランド73、ビア75、及び内層グランド導体71が、第2導体突起52から裏面グランド導体72までの最短の伝熱経路として機能するため、第2導体突起52から裏面グランド導体72までの熱抵抗が低下する。このため、半導体装置60の第1トランジスタ31から第2導体突起52を経由した放熱性を向上させることができる。
【0066】
次に、第1実施例のさらに他の変形例について説明する。
第1実施例では、複数の第1トランジスタ31が2つのブロックに区分され、ブロックごとに第1導体突起51が配置されている。その他の構成として、複数の第1トランジスタ31を2つのブロックに区分することなく、すべての第1トランジスタ31をx方向に等間隔に配列させてもよい。この場合は、すべての第1トランジスタ31を平面視において包含する1個の第1導体突起51を配置すればよい。
【0067】
第1実施例では、2つのブロックに属する合計26個の第1トランジスタ31が相互に並列接続されて高周波増幅回路を構成している。その他の構成として、複数の第1トランジスタ31が差動増幅回路を構成するようにしてもよい。この場合、例えば、一方のブロックに属する複数の第1トランジスタ31が相互に並列接続されて非反転信号の高周波増幅回路を構成し、他方のブロックに属する複数の第1トランジスタ31が相互に並列接続されて反転信号の高周波増幅回路を構成するようにするとよい。
【0068】
このように、1つの第2導体突起52を放熱経路として利用する第1トランジスタ31がすべて相互に並列接続されている必要はない。1つの第2導体突起52を放熱経路として利用する複数の第1トランジスタ31の一部が相互に並列接続され、他の一部が相互に並列接続されていてもよい。
【0069】
[第2実施例]
次に、
図12A、
図12B、及び
図13を参照して第2実施例によるシステムについて説明する。第2実施例によるシステムは、第1実施例による半導体装置60及びモジュール基板70を含んでいる。
【0070】
図12Aは、第2実施例によるシステムの複数の構成要素の平面視における位置関係を示す図であり、
図12Bは、
図12Aの一点鎖線12B-12Bにおける概略断面図である。モジュール基板70に半導体装置60がフェイスダウン実装されている。半導体装置60及びモジュール基板70を含む半導体モジュールが、システム基板80に実装されている。
【0071】
システム基板80は、実装面に配置されたシステムグランド導体81、内層に配置された複数の内層グランド導体83、実装面とは反対側の裏面に配置された裏面グランド導体84、及び複数のビア82を含む。モジュール基板70の裏面グランド導体72がハンダ層76を介してシステム基板80のシステムグランド導体81に、電気的かつ熱的に接続されている。半導体装置60の第1トランジスタ31で発生した熱は、第1導体突起51または第2導体突起52を経由してモジュール基板70まで伝導され、さらにシステム基板80まで伝導される。
【0072】
次に、第2実施例によるシステムの放熱特性をシミュレーションした結果について説明する。モジュール基板70の実装面から約1mm上方に位置する仮想的な平面90、及びシステム基板80の裏面から約1mm下方に位置する仮想的な平面93を、理想的な放熱性を持つ無限大放熱面とし、平面視においてシステム基板80を取り囲む仮想的な平面94を断熱面とした。仮想的な平面90、93、94に囲まれた空間の空洞部分は空気で満たされている。複数の第1トランジスタ31のコレクタメサ31BC(
図4A、
図4B)を発熱源とした。
【0073】
半導体装置60及びモジュール基板70の各構成要素の熱伝導率の条件は、
図7に結果を示したシミュレーションの場合の条件と同一である。システム基板80の絶縁層部分の熱伝導率を、FR4と呼ばれるガラスエポキシ樹脂を想定して0.4W/K・mに設定した。システム基板80の導体部分の熱伝導率は、Cuを想定して390W/K・mに設定した。
【0074】
図13は、中心間距離Dy(
図2)がゼロのときの熱抵抗を基準としたときの熱抵抗の変化率のシミュレーション結果を示すグラフである。
図13に示したグラフの横軸及び縦軸が表す物理量は、
図7に示したグラフの横軸及び縦軸が表す物理量と同一である
【0075】
図13に示したグラフ中の実線は、モジュール基板70がシステム基板80に実装されていない状態での熱抵抗変化率を示しており、
図7に示したグラフと同一である。
図13に示したグラフ中の破線は、モジュール基板70をシステム基板80に実装した状態での熱抵抗変化率を示す。
【0076】
図7に示した場合と同様に、第1導体突起51と第2導体突起52との間隔Gpを大きくすると、熱抵抗が低下する。半導体装置60及びモジュール基板70を含む半導体モジュールがシステム基板80に実装されていない状態では、間隔Gpが約225μmを超えると、熱抵抗が上昇に転ずるが、半導体モジュールがシステム基板80に実装された状態では、間隔Gpが225μmを超えても、間隔Gpが広くなるにしたがって熱抵抗が低下する傾向を示す。
【0077】
次に、第2実施例の優れた効果について説明する。
第2実施例のように半導体モジュールをシステム基板80に実装することにより、システム基板80がヒートシンクとして機能し、半導体装置60からの放熱性を向上させることができる。また、半導体モジュールをシステム基板80に実装することを前提とすると、第1導体突起51と第2導体突起52との間隔Gpを55μm以上にすることが好ましく、第2導体突起52を第2部材20(
図1)の端部に配置しても、放熱性を向上させる効果が得られる。
【0078】
[第3実施例]
次に、
図14Aから
図15までの図面を参照して第3実施例による半導体モジュールについて説明する。以下、
図1から
図9までの図面を参照して説明した第1実施例による半導体装置と共通の構成については説明を省略する。第1実施例(
図2)では、26個の第1トランジスタ31が、それぞれ13個の第1トランジスタ31で構成される2つのブロックに区分されている。これに対して第3実施例では、第1トランジスタ31の個数が26個に限られない。
【0079】
図14Aから
図14Fまでの図面は、第3実施例による半導体装置の複数の第1トランジスタ31及び2つの第1導体突起51の平面視における位置関係を示す図である。
【0080】
図14Fは、第1実施例による半導体装置と同様に、26個の第1トランジスタ31がx方向に1列に配置されており、2つのブロックに区分されている。
図14Aから
図14Eまでのいずれの図面に示した例においても、第1実施例(
図14F)と同様に2つの第1導体突起51が配置されている。
【0081】
図14Aに示した例では、第1トランジスタ31の個数が1個である。1個の第1トランジスタ31は、
図14Fに示した一方のブロックに属する13個の第1トランジスタ31のうち、他方のブロックの側の端に位置する第1トランジスタ31に相当する。
図14Bに示した例では、第1トランジスタ31の個数が2個である。2個の第1トランジスタ31は、
図14Fに示した2つのブロックのそれぞれに含まれる13個の第1トランジスタ31のうち、他方のブロックの側の端に位置する第1トランジスタ31に相当する。
図14Cに示した例では、第1トランジスタ31の個数が4個である。4個の第1トランジスタ31は、
図14Fに示した2つのブロックのそれぞれの13個の第1トランジスタ31のうち、両端に位置する2つの第1トランジスタ31に相当する。
【0082】
図14Dに示した例では、第1トランジスタ31の個数が8個である。8個の第1トランジスタ31は、
図14Fに示した2つのブロックのそれぞれに属する13個の第1トランジスタ31から3つおきに抽出した4個の第1トランジスタ31に相当する。
図14Eに示した例では、第1トランジスタ31の個数が14個である。14個の第1トランジスタ31は、
図14Fに示した2つのブロックのそれぞれに含まれる13個の第1トランジスタ31から1つおきに抽出した第1トランジスタ31に相当する。
【0083】
図15は、中心間距離Dy(
図2)がゼロのときの熱抵抗を基準としたときの熱抵抗の変化率のシミュレーション結果を示すグラフである。
図15に示したグラフの横軸及び縦軸が表す物理量は、
図7に示したグラフの横軸及び縦軸の物理量と同一である。
図15のグラフ中の各実線の右端に付された数字は、第1トランジスタ31の個数を表す。第1導体突起51と第2導体突起52との間隔Gpを55μm以上にすることにより熱抵抗を低減させる効果が得られる。また、第1トランジスタ31の個数が多いほど、熱抵抗低減の効果が大きくなる。
【0084】
次に、第3実施例の優れた効果について説明する。
第3実施例のように、例えば、第1トランジスタ31の個数が4個以上の構成において、第1導体突起51と第2導体突起52との間隔Gpを55μm以上にすることにより、熱抵抗が低減され、放熱性を向上させることができる。
【0085】
[第4実施例]
次に、
図16及び
図17を参照して第4実施例による半導体装置について説明する。以下、
図1から
図9までの図面を参照して説明した第1実施例による半導体装置と共通の構成については説明を省略する。
【0086】
図16は、第4実施例による半導体装置の第1導体突起51と、第2導体突起52が配置される位置52A、52B、52Cとの平面視における位置関係を示す図である。2つの第1導体突起51及び複数の第1トランジスタ31の配置は、第1実施例(
図2)の場合と同一である。第1実施例では、第2導体突起52が位置52Aに配置される。すなわち、2つの第1導体突起51の平面視における幾何中心C1のx方向の位置と、第2導体突起52の平面視における幾何中心C2のx方向の位置とが一致している。以下、「平面視における幾何中心」を、単に「幾何中心」という場合がある。
【0087】
第4実施例では、第2導体突起52が位置52B、52C等に配置される。すなわち、第2導体突起52の幾何中心C2の位置が、2つの第1導体突起51の幾何中心C1の位置からx方向にずれている。位置52Cに配置された第2導体突起52の幾何中心C2は、位置52Bに配置された第2導体突起52の幾何中心C2よりもx方向へのずれ量が大きい。
【0088】
例えば、x方向に関して、位置52Bに配置された第2導体突起52が占める範囲は、一方の第1導体突起51が占める範囲に包含される。x方向に関して、位置52Cに配置された第2導体突起52が占める範囲の一部が、一方の第1導体突起51が占める範囲の一部に重なる。より具体的には、一方の第1導体突起51の、幾何中心C1から最も遠い側の端部を通過し、仮想直線25に直交する仮想平面が、位置52Cの第2導体突起52と交差する。
【0089】
図17は、中心間距離Dy(
図2)がゼロのときの熱抵抗を基準としたときの熱抵抗の変化率のシミュレーション結果を示すグラフである。
図17に示したグラフの横軸及び縦軸が表す物理量は、
図7に示したグラフの横軸及び縦軸の物理量と同一である。
図17のグラフ中の各実線の右端に付された符号は、
図16に示した第2導体突起52の位置52A、52B、52Cを示している。x方向に関して、第2導体突起52の幾何中心C2が、2つの第1導体突起51の幾何中心C1からx方向にずれていても、熱抵抗低減の効果が得られることがわかる。なお、第2導体突起52の幾何中心C2のx方向の位置が、2つの第1導体突起51の幾何中心C1のx方向の位置と一致する場合に、熱抵抗低減の効果が最も大きい。
【0090】
次に、第4実施例の優れた効果について説明する。
第4実施例のように、第2導体突起52の幾何中心C2が、2つの第1導体突起51の幾何中心C1からx方向にずれていても、熱抵抗低減の効果が得られる。ただし、x方向へのずれ量が大きくなりすぎると、熱抵抗低減の効果が小さくなると考えられる。十分な熱抵抗低減効果を得るために、第2導体突起52は、第2導体突起52の少なくとも一部分が、x方向に関して第1導体突起51が分布する範囲内に位置するように配置することが好ましい。「x方向に関して第1導体突起51が分布する範囲」とは、平面視における第1導体突起51の最小包含凸多角形(凸包)が占める範囲を意味する。
【0091】
図17に示したグラフから、第2導体突起52の幾何中心C2が、第1導体突起51の幾何中心C1からy方向に650μmずれていても、熱抵抗低減の十分な効果が得られると考えられる。したがって、2つの第1導体突起51の幾何中心C1から第2導体突起52の幾何中心C2までのx方向のずれ量が650μm以下であれば、熱抵抗低減の十分な効果が得られると考えられる。
【0092】
次に、第4実施例の変形例による半導体装置について説明する。
第4実施例では、第2導体突起52の幾何中心C2を、2つの第1導体突起51の幾何中心C1に対してy方向及びx方向にずらしている。その他の構成として、より一般的に、第2導体突起52の幾何中心C2を、1つまたは複数の第1導体突起51の最小包含凸多角形の幾何中心C1に対して第1面10Aの面内方向のいずれの方向にずらしてもよい。この場合、1つまたは複数の第1導体突起51の最小包含凸多角形と第2導体突起52との面内方向の間隔を55μm以上にするとよい。
【0093】
[第5実施例]
次に、
図18及び
図19を参照して第5実施例による半導体装置について説明する。以下、
図1から
図9までの図面を参照して説明した第1実施例による半導体装置と共通の構成については説明を省略する。第1実施例では、1段の高周波増幅回路について説明したが、第5実施例による高周波増幅回路は2段構成を有する。
【0094】
図18は、第5実施例による半導体装置の機能を示すブロック図である。第5実施例による半導体装置60は、ドライブ段増幅回路40、パワー段増幅回路30、入力整合回路45、段間整合回路46、ドライブ段バイアス回路47、及びパワー段バイアス回路48を含む。さらに、第5実施例による半導体装置は、導体突起(例えばバンプ)で構成される外部接続端子として、高周波信号入力端子RFin、高周波信号出力端子RFout、ドライブ段バイアス制御端子Vbias1、パワー段バイアス制御端子Vbias2、電源端子Vcc1、Vcc2、バイアス電源端子Vbatt、及びグランド端子GNDを含む。なお、
図18のブロック図ではグランド端子GNDを1個のみ示しているが、実際にはグランド端子GNDは複数個配置されている。
【0095】
高周波信号入力端子RFinから入力された高周波信号が、入力整合回路45を介してドライブ段増幅回路40に入力される。ドライブ段増幅回路40で増幅された高周波信号が段間整合回路46を介してパワー段増幅回路30に入力される。パワー段増幅回路30で増幅された高周波信号が高周波信号出力端子RFoutから出力される。グランド端子GNDには、例えば第1導体突起51(
図1)が含まれる。高周波信号出力端子RFoutは、出力用導体突起55(
図3A)に相当する。
【0096】
電源端子Vcc1及びVcc2から、それぞれドライブ段増幅回路40及びパワー段増幅回路30に電源電圧が印加される。バイアス電源端子Vbattからドライブ段バイアス回路47及びパワー段バイアス回路48にバイアス電源が供給される。ドライブ段バイアス回路47が、ドライブ段バイアス制御端子Vbias1に入力されたバイアス制御信号に基づいて、ドライブ段増幅回路40にバイアスを供給する。パワー段バイアス回路48が、パワー段バイアス制御端子Vbias2に入力されたバイアス制御信号に基づいて、パワー段増幅回路30にバイアスを供給する。
【0097】
図19は、パワー段増幅回路30の複数の第1トランジスタ31、ドライブ段増幅回路40の複数の第2トランジスタ41、第1導体突起51、第2導体突起52、及び第3導体突起53の平面視における位置関係を示す図である。複数の第1トランジスタ31、2つの第1導体突起51、及び第2導体突起52の位置関係は、第1実施例(
図2)における半導体装置のこれらの位置関係と同一である。
【0098】
ドライブ段増幅回路40の複数の第2トランジスタ41が、例えばx方向に平行な仮想直線26に沿って配置されている。
図19において、第2トランジスタ41は、
図2の場合と同様に、第2トランジスタ41のコレクタメサの平面視における形状を示している。複数の第2トランジスタ41を平面視において包含するように、第3導体突起53が配置されている。第2トランジスタ41のそれぞれの基本構成は、第1トランジスタ31のそれぞれの基本構成と同一である。第3導体突起53は、複数の第2トランジスタ41のエミッタに電気的に接続されている。
【0099】
複数の第1トランジスタ31が沿う仮想直線25と、複数の第2トランジスタ41が沿う仮想直線26との間に、第2導体突起52が配置されている。第3導体突起53と第2導体突起52とのy方向の間隔をGdと標記する。間隔Gdは、間隔Gpと同様に55μm以上に設定されている。
【0100】
次に、第5実施例の優れた効果について説明する。間隔Gdを55μm以上にすることにより、第2導体突起52が第2トランジスタ41からの放熱経路として機能し、放熱性を向上させることができる。このように、パワー段増幅回路30の複数の第1トランジスタ31及びドライブ段増幅回路40の複数の第2トランジスタ41からの放熱性を向上させることができる。
【0101】
次に、第5実施例の変形例による半導体装置について説明する。
第5実施例では、1つの第2導体突起52(
図19)を、パワー段増幅回路30の複数の第1トランジスタ31からの放熱経路、及びドライブ段増幅回路40の複数の第2トランジスタ41からの放熱経路として利用している。その他の構成として、パワー段増幅回路30の複数の第1トランジスタ31からの放熱経路として利用する第2導体突起52とは別に、ドライブ段増幅回路40の複数の第2トランジスタ41からの放熱経路として利用する他の第2導体突起52を設けてもよい。
【0102】
[第6実施例]
次に、
図20を参照して第6実施例による半導体装置について説明する。以下、
図1から
図9までの図面を参照して説明した第1実施例による半導体装置と共通の構成については説明を省略する。
【0103】
図20は、第6実施例による半導体装置の複数の第1トランジスタ31、複数の第1導体突起51、及び第2導体突起52の平面視における位置関係を示す図である。第1実施例(
図2)では、複数の第1トランジスタ31が1本の仮想直線25に沿って配列しており、第1トランジスタ31の各々のコレクタメサ31BCは、平面視において仮想直線25と直交する方向に長い。これに対して第6実施例では、複数、例えば4本の相互に平行な仮想直線25のそれぞれに沿って、複数の第1トランジスタ31が配列している。第1トランジスタ31の各々のコレクタメサ31BCは、平面視において仮想直線25と直交する方向に長い。
【0104】
仮想直線25と平行な方向をy方向とし、第1部材10の第1面10A(
図1)に平行な面をxy面とするxy直交座標系を定義する。4本の仮想直線25のそれぞれに沿う複数の第1トランジスタ31を平面視において包含するように、4つの第1導体突起51が配置されている。第1導体突起51のそれぞれは、平面視においてy方向に長い形状を有する。
【0105】
4つの第1導体突起51のy軸の負の側の端部のy方向の位置は一致しており、y軸の正の側の端部のy方向の位置も一致している。4つの第1導体突起51が分布する領域(4つの第1導体突起51の最小包含凸多角形の内部領域)からy方向に間隔を隔てて第2導体突起52が配置されている。4つの第1導体突起51と第2導体突起52とのy方向の間隔Gpは、第1実施例と同様に55μm以上である。
【0106】
4つの第1導体突起51の幾何中心C1と第2導体突起52の幾何中心C2とのx方向の位置は一致している。なお、
図16及び
図17を参照して説明したように、幾何中心C2の位置が幾何中心C1の位置からx方向にずれていてもよい。
【0107】
次に、第6実施例の優れた効果について説明する。
第6実施例のように、複数の第1トランジスタ31が必ずしも1本の仮想直線25に沿って配列している必要はなく、複数の仮想直線25のそれぞれに沿って配列していてもよい。この場合でも、間隔Gpを55μm以上にすることにより、放熱性の向上を図ることが可能である。
【0108】
[第7実施例]
次に、
図21、
図22A、及び
図22Bを参照して第7実施例による半導体装置について説明する。以下、
図1から
図9までの図面を参照して説明した第1実施例による半導体装置と共通の構成については説明を省略する。
【0109】
図21は、第7実施例による半導体装置の概略断面図である。第1実施例(
図1)では、第2導体突起52が、平面視において第2部材20に包含される位置に配置されている。これに対して第7実施例では、第2導体突起52が、平面視において第2部材20の外側であって、第1部材10に包含される位置に配置されている。
【0110】
第2導体突起52は、半導体層、金属層、または半導体層と金属層との積層で構成された接続部分23を介して第1部材10の第1半導体基板11に接続されている。例えば、接続部分23は、第1半導体基板11に接触する金属層12と、金属層12及び第2導体突起52に接触する金属層13とで構成される。金属層12、13は、第1部材10に第2部材20を接合する前に形成しておいてもよく、接合後に形成してもよい。
【0111】
第1トランジスタ31で発生した熱は、第1導体突起51を経由して放熱されるとともに、サブコレクタ層22、第2半導体基板21、第1半導体基板11、接続部分23、及び第2導体突起52を経由して放熱される。
【0112】
次に、
図22A及び
図22Bを参照して、放熱用としての利用に適さない導体突起の例について説明する。
図22A及び
図22Bは、放熱用としての利用に適さない導体突起の断面図である。
【0113】
図22Aに示した例では、導体突起54と第1部材10の第1半導体基板11との間に絶縁層14が配置されている。
図22Bに示した例では、導体突起54と第1部材10の第1半導体基板11との間に、絶縁層14、金属パターン16、及び絶縁層15が配置されている。いずれの構成においても、平面視において、導体突起54の内部の全域に亘って絶縁層が配置されている。このため、導体突起54から第1半導体基板11までの最短の伝熱経路(第1部材10の第1面10Aに対して垂直な伝熱経路)は、必ず絶縁層を通過することになる。一般的に絶縁層の熱伝導率は、半導体や金属の熱伝導率より低い。このため、導体突起54は、放熱用としての利用に適さない。
【0114】
図21に示した構成では、第2導体突起52と第1半導体基板11との間の最短の伝熱経路が、絶縁材料を通過しない。このため、第1半導体基板11から第2導体突起52までの熱抵抗を低減させ、第1トランジスタ31から第2導体突起52を経由する放熱経路による放熱性の向上を図ることができる。
【0115】
上述の各実施例は例示であり、異なる実施例で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。複数の実施例の同様の構成による同様の作用効果については実施例ごとには逐次言及しない。さらに、本発明は上述の実施例に制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【0116】
本明細書に記載した上記実施例に基づき、以下の発明を開示する。
<1>
第1部材及び前記第1部材の1つの面である第1面に設けられた第2部材を含む複合基板と、
前記第2部材から前記第1面の向く方向に突出する第1導体突起と、
前記複合基板から前記第1面の向く方向に突出する第2導体突起と
を備え、
前記第1部材は第1半導体基板を含み、
前記第2部材は、前記第1半導体基板より熱伝導率が低い第2半導体基板を含み、
前記第2部材に、複数の第1トランジスタを含む高周波増幅回路が設けられており、
前記第1導体突起は、前記複数の第1トランジスタと電気的に接続され、前記第1面を平面視したとき、前記複数の第1トランジスタと少なくとも部分的に重なりを持ち、
前記複合基板は、前記第2導体突起から前記第1半導体基板または前記第2半導体基板まで達する接続部分を含み、
前記接続部分は、前記第1面を平面視したとき、前記第2導体突起と少なくとも部分的に重なる領域において前記第2導体突起から前記第1半導体基板または前記第2半導体基板まで達し、半導体材料、導電材料、または半導体材料と導電材料との積層で構成されており、
前記第2導体突起は、前記第1導体突起から前記第1面の面内方向に55μm以上離れて配置されている半導体装置。
【0117】
<2>
前記複数の第1トランジスタは、1本の仮想直線に沿って配置されており、前記第2導体突起は、前記第1導体突起から、前記仮想直線に直交する方向に55μm以上離れて配置されている<1>に記載の半導体装置。
【0118】
<3>
前記第2導体突起は、前記仮想直線に平行な方向に関して、前記複数の第1トランジスタが分布する範囲内に配置されている<2>に記載の半導体装置。
【0119】
<4>
前記複数の第1トランジスタは複数のブロックのいずれかに属し、複数のブロックのそれぞれに属する前記複数の第1トランジスタは、1本の仮想直線に沿って配置されており、
前記第1導体突起は、前記複数のブロックに対して1つずつ配置されている<1>に記載の半導体装置。
【0120】
<5>
前記第2導体突起は、前記接続部分、前記第1半導体基板、及び前記第2半導体基板を介して前記複数の第1トランジスタに熱的に結合している<1>乃至<4>のいずれか1つに記載の半導体装置。
【0121】
<6>
前記第2部材に、さらにドライブ段増幅回路が設けられており、前記ドライブ段増幅回路から出力された高周波信号が前記高周波増幅回路に入力され、
前記ドライブ段増幅回路は、1つまたは相互に並列接続された複数の第2トランジスタを含み、
前記第2部材から、前記第1面の向く方向に突出する第3導体突起をさらに備え、
前記第3導体突起は、前記第2トランジスタと電気的に接続され、前記第1面を平面視したとき、前記第2トランジスタと少なくとも部分的に重なりを持ち、
前記第2導体突起は、前記第3導体突起から前記第1面の面内方向に55μm以上離れて配置されている<1>乃至<5>のいずれか1つに記載の半導体装置。
【0122】
<7>
<1>乃至<6>のいずれか1つに記載の半導体装置と、
前記半導体装置が搭載されたモジュール基板と
を備え、
前記モジュール基板は、
内層に配置されたグランド導体と、
表面に配置された複数のグランド用ランドと
を含み、
前記第1導体突起及び前記第2導体突起は、それぞれ前記グランド用ランドに接続されている半導体モジュール。
【0123】
<8>
<7>に記載の半導体モジュールと、
前記半導体モジュールが搭載されたシステム基板と
を備え、
前記モジュール基板は、
前記グランド用ランドが配置された面とは反対側の面に配置された裏面グランド導体と、
前記グランド用ランドと前記裏面グランド導体とを電気的に接続する複数のビアと
を有し、
前記システム基板は、表面に配置されたシステムグランド導体を有し、
前記半導体モジュールは、前記裏面グランド導体が前記システムグランド導体に電気的に接続されることにより、前記システム基板に実装されているシステム。
【符号の説明】
【0124】
10 第1部材
10A 第1面
11 第1半導体基板
12、13 金属層
14、15 絶縁層
16 金属パターン
20 第2部材
21 第2半導体基板
22 サブコレクタ層
23 接続部分
25、26 仮想直線
30 パワー段増幅回路
31 第1トランジスタ
31B ベース層
31BC コレクタメサ
31C コレクタ層
31E エミッタ層
32B ベース電極
32C コレクタ電極
32E エミッタ電極
32T 金属層
33B 1層目のベース配線
33BB ベースバイアス配線
33C 1層目のコレクタ配線
33E 1層目のエミッタ配線
33T 金属層
34C 2層目のコレクタ配線
34E 2層目のエミッタ配線
34RF 入力配線
34T 金属層
35T、36T、37T 半導体層
40 ドライブ段増幅回路
41 第2トランジスタ
45 入力整合回路
46 段間整合回路
47 ドライブ段バイアス回路
48 パワー段バイアス回路
51 第1導体突起
51a 第1導体突起のピラー部
51b 第1導体突起のハンダ層
52 第2導体突起
52a 第2導体突起のピラー部
52b 第2導体突起のハンダ層
53 第3導体突起
54 導体突起
55 出力用導体突起
60 半導体装置
61 表面実装デバイス
65 複合基板
70 モジュール基板
71 内層グランド導体
72 裏面グランド導体
73 グランド用ランド
74 ランド
75 ビア
76 ハンダ層
77 破線
80 システム基板
81 システムグランド導体
82 ビア
83 内層グランド導体
84 裏面グランド導体
90、91、92、93、94 シミュレーション範囲を画定する仮想的な平面