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特開2024-141584二酸化炭素処理装置、二酸化炭素処理方法およびエチレンの製造方法
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  • 特開-二酸化炭素処理装置、二酸化炭素処理方法およびエチレンの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141584
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】二酸化炭素処理装置、二酸化炭素処理方法およびエチレンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C25B 9/00 20210101AFI20241003BHJP
   C25B 3/03 20210101ALI20241003BHJP
   C25B 9/23 20210101ALI20241003BHJP
   C25B 15/08 20060101ALI20241003BHJP
   C25B 3/26 20210101ALI20241003BHJP
   C25B 9/77 20210101ALI20241003BHJP
   C25B 1/23 20210101ALI20241003BHJP
   B01D 53/18 20060101ALI20241003BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20241003BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C25B9/00 G
C25B9/00 Z
C25B3/03
C25B9/23
C25B15/08 302
C25B3/26
C25B9/77
C25B1/23
B01D53/18 ZAB
B01D53/62
B01D53/78
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053318
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】及川 博
【テーマコード(参考)】
4D002
4D020
4K021
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002AC10
4D002BA02
4D002CA06
4D002DA02
4D002DA03
4D002DA12
4D020AA03
4D020BA01
4D020BA08
4D020BB03
4D020CB01
4K021AB25
4K021AC02
4K021BA02
4K021BA17
4K021BC09
4K021CA08
4K021CA15
4K021DB53
(57)【要約】
【課題】強アルカリ下においても二酸化炭素の還元に用いられる電解セルの抵抗を低くし、電解効率を高くすることを目的とする。
【解決手段】二酸化炭素を回収する回収装置1と、回収装置1で回収された二酸化炭素を電気化学的に一酸化炭素に還元する第1電解セル21を有する第1電気化学反応部2と、第1電気化学反応部2で生成された一酸化炭素を電気化学的にエチレンに還元する第2電解セル31を有する第2電気化学反応部3と、第1電気化学反応部2で生成された一酸化炭素をマイクロバブルとして第2電気化学反応部3に供給するマイクロバブル発生部6と、を備える、二酸化炭素処理装置100。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素を回収する回収装置と、前記回収装置で回収された二酸化炭素を電気化学的に一酸化炭素に還元する第1電解セルを有する第1電気化学反応部と、前記第1電気化学反応部で生成された一酸化炭素を電気化学的にエチレンに還元する第2電解セルを有する第2電気化学反応部と、前記第1電気化学反応部で生成された一酸化炭素をマイクロバブルとして前記第2電気化学反応部に供給するマイクロバブル発生部と、を備える、二酸化炭素処理装置。
【請求項2】
前記回収装置は、二酸化炭素を強アルカリの電解液に溶解させて吸収する二酸化炭素吸収部を備え、
前記第1電気化学反応部には、前記二酸化炭素吸収部で電解液に溶解された二酸化炭素が供給される、請求項1に記載の二酸化炭素処理装置。
【請求項3】
前記第1電解セルは、カソードと、アノードと、前記カソードと前記アノードの間に設けられたイオン交換膜と、前記カソードに隣接して設けられ、二酸化炭素が溶解した電解液が流れるカソード側液流路と、前記アノードに隣接して設けられ、電解液が流れるアノード側液流路と、を備え、
前記第2電解セルは、カソードと、アノードと、前記カソードと前記アノードの間に設けられたイオン交換膜と、前記カソードに隣接して設けられ、ガスが流れるカソード側ガス流路と、前記カソードに隣接して設けられ、電解液が流れるカソード側液流路と、前記アノードに隣接して設けられ、電解液が流れるアノード側液流路と、を備える、請求項1に記載の二酸化炭素処理装置。
【請求項4】
二酸化炭素を電気化学的に還元する二酸化炭素処理方法であって、
第1電解セルにより二酸化炭素を電気化学的に一酸化炭素に還元する第1工程と、
前記第1工程で生成された一酸化炭素をマイクロバブルとして、第2電解セルに供給する第2工程と、
前記第2工程で生成された一酸化炭素のマイクロバブルを、第2電解セルにより電気化学的にエチレンに還元する第3工程と、を含む、二酸化炭素処理方法。
【請求項5】
請求項4に記載の二酸化炭素処理方法により、二酸化炭素を還元してエチレンを製造する、エチレンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素処理装置、二酸化炭素処理方法およびエチレンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、排ガスや大気中の二酸化炭素を回収し、電気化学的に還元して有価物を得る技術が知られている。この技術は、カーボンニュートラルを達成し得る有望な技術であるが、経済性が最大の課題である。経済性を改善するためには、二酸化炭素の回収および還元において、エネルギー効率を高め、二酸化炭素の損失を低減することが重要である。
【0003】
二酸化炭素を回収する技術としては、ガス中の二酸化炭素を固体又は液体の吸着剤に物理的又は化学的に吸着させた後、熱等のエネルギーによって脱離させて利用する技術が知られている。また、二酸化炭素を電気化学的に還元する技術としては、ガス拡散層の電解液と接する側に二酸化炭素還元触媒を用いて触媒層を形成したカソードに対し、ガス拡散層の触媒層とは反対側から二酸化炭素ガスを供給して電気化学的に還元する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
従来、二酸化炭素を回収する技術と二酸化炭素を電気化学的に還元する技術は別々に研究開発が行われている。そのため、それぞれの技術を組み合わせた場合の総合的なエネルギー効率や二酸化炭素の損失低減効果は、各技術の効率から乗数的に決定できるものの、さらなる向上の余地がある。このように、二酸化炭素を回収する技術と二酸化炭素を電気化学的に還元する技術とを組み合わせた総合的な観点で、エネルギー効率や二酸化炭素の損失低減効果を高めることは意義深いと言える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2018/232515号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、二酸化炭素を電気化学的に還元する技術では、エチレンを選択生成しようとすると電解液が強アルカリ下の条件で有利ではあるが電解液への二酸化炭素の溶解を防ぐために気液分離機能を有するカソード電極を挟んだ形で二酸化炭素を導入する気体流路と強アルカリ電解液を導入する液流路を設置するとカソードとアノードの間に液流路分の距離が発生するため二酸化炭素の還元に用いられる電解セルの抵抗が高くなり、電解効率が下がるという課題がある。
【0007】
本願は上記課題の解決のため、強アルカリ下においても二酸化炭素の還元に用いられる電解セルの抵抗を低くし、電解効率を高くすることを目的としたものである。そして、延いてはエネルギーの効率化に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1]二酸化炭素を回収する回収装置と、前記回収装置で回収された二酸化炭素を電気化学的に一酸化炭素に還元する第1電解セルを有する第1電気化学反応部と、前記第1電気化学反応部で生成された一酸化炭素を電気化学的にエチレンに還元する第2電解セルを有する第2電気化学反応部と、前記第1電気化学反応部で生成された一酸化炭素をマイクロバブルとして前記第2電気化学反応部に供給するマイクロバブル発生部と、を備える、二酸化炭素処理装置。
【0009】
本発明の二酸化炭素処理装置は、第1電気化学反応部で生成された一酸化炭素をマイクロバブルとして第2電気化学反応部に供給するマイクロバブル発生部を備えるため、一酸化炭素のマイクロバブルは表面積が大きくなり、水との接触機会が増えることから、一酸化炭素と水の反応効率が向上する。その結果、強アルカリ下においても、第2電解セルの抵抗を低くし、電解効率を高くすることができる。
【0010】
[2]前記回収装置は、二酸化炭素を強アルカリの電解液に溶解させて吸収する二酸化炭素吸収部を備え、
前記第1電気化学反応部には、前記二酸化炭素吸収部で電解液に溶解された二酸化炭素が供給される、[1]に記載の二酸化炭素処理装置。
【0011】
本発明の二酸化炭素処理装置は、二酸化炭素吸収部を備え、第1電気化学反応部には、二酸化炭素吸収部で電解液に溶解された二酸化炭素が供給されるため、二酸化炭素の濃縮を促進できる。
【0012】
[3]前記第1電解セルは、カソードと、アノードと、前記カソードと前記アノードの間に設けられたイオン交換膜と、前記カソードに隣接して設けられ、二酸化炭素が溶解した電解液が流れるカソード側液流路と、前記アノードに隣接して設けられ、電解液が流れるアノード側液流路と、を備え、
前記第2電解セルは、カソードと、アノードと、前記カソードと前記アノードの間に設けられたイオン交換膜と、前記カソードに隣接して設けられ、ガスが流れるカソード側ガス流路と、前記カソードに隣接して設けられ、電解液が流れるカソード側液流路と、前記アノードに隣接して設けられ、電解液が流れるアノード側液流路と、を備える、[1]または[2]に記載の二酸化炭素処理装置。
【0013】
本発明の二酸化炭素処理装置は、第1電解セルにより二酸化炭素を電気化学的に一酸化炭素に還元した後、第1電解セルで生成される一酸化炭素を第2電解セルにより電気化学的にエチレンに還元する。すなわち、供給される二酸化炭素が溶解して電解液のアルカリが比較的弱くなる第1電解セルでは、あえて一酸化炭素の生成を狙う。そして、一酸化炭素は電解液に溶解せず電解液が弱アルカリ化することがないため、第1電解セルで生成した一酸化炭素を第2電解セルに供給する。これにより、第2電解セルにて電解液の弱アルカリ化を回避しつつ一酸化炭素の電気化学的還元反応を促進させることができる。そのため、本発明の二酸化炭素処理装置によればエチレンを選択的に且つ効率良く生成することができる。
【0014】
[4]二酸化炭素を電気化学的に還元する二酸化炭素処理方法であって、
第1電解セルにより二酸化炭素を電気化学的に一酸化炭素に還元する第1工程と、
前記第1工程で生成された一酸化炭素をマイクロバブルとして、第2電解セルに供給する第2工程と、
前記第2工程で生成された一酸化炭素のマイクロバブルを、第2電解セルにより電気化学的にエチレンに還元する第3工程と、を含む、二酸化炭素処理方法。
【0015】
本発明の二酸化炭素処理方法は、第1電解セルにより二酸化炭素を電気化学的に一酸化炭素に還元する第1工程と、前記第1工程で生成された一酸化炭素をマイクロバブルとして、第2電解セルに供給する第2工程と、前記第2工程で生成された一酸化炭素のマイクロバブルを、第2電解セルにより電気化学的にエチレンに還元する第3工程と、を含むため、一酸化炭素のマイクロバブルは表面積が大きくなり、水との接触機会が増えることから、一酸化炭素と水の反応効率が向上する。その結果、強アルカリ下においても、第2電解セルの抵抗を低くし、電解効率を高くすることができる。
【0016】
[5][4]に記載の二酸化炭素処理方法により、二酸化炭素を還元してエチレンを製造する、エチレンの製造方法。
【0017】
本発明のエチレンの製造方法は、本発明の二酸化炭素処理方法により、二酸化炭素を還元してエチレンを製造するため、効率的にエチレンを製造することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、強アルカリ下では二酸化炭素の還元に用いられる電解セルの抵抗を低くし、電解効率を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る二酸化炭素処理装置を示す模式図である。
図2】本発明の実施形態に係る二酸化炭素処理装置における第1電気化学反応部の電解セルの一例を示す概略断面図である。
図3】本発明の実施形態に係る二酸化炭素処理装置における第2電気化学反応部の電解セルの一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0021】
[二酸化炭素処理装置]
図1は、本発明の実施形態に係る二酸化炭素処理装置100を示す模式図である。図1に示すように、本実施形態に係る二酸化炭素処理装置100は、回収装置1と、第1電気化学反応部2と、第2電気化学反応部3と、第1気液分離部4と、第2気液分離部5と、マイクロバブル発生部6と、を備える。また、本実施形態に係る二酸化炭素処理装置100は、第1酸素分離部7と、第2酸素分離部8と、を備えていてもよい。
【0022】
回収装置1は、CO吸収部11を備える。
第1電気化学反応部2は、第1電解セル21を備える。
第2電気化学反応部3は、第2電解セル31を備える。
【0023】
二酸化炭素処理装置100では、CO吸収部11と第1電解セル21は、液流路101で接続されている。第1電解セル21と第1気液分離部4は、液流路102で接続されている。第1気液分離部4とCO吸収部11は、液流路103で接続されている。第1気液分離部4とマイクロバブル発生部6は、ガス流路104で接続されている。マイクロバブル発生部6と第2電解セル31は、液流路105で接続されている。第2電解セル31と第2気液分離部5は、液流路106で接続されている。第2気液分離部5とマイクロバブル発生部6は、液流路107で接続されている。第1電解セル21と第1酸素分離部7は、液流路108,109で接続されている。第2電解セル31と第2酸素分離部8は、液流路110,111で接続されている。
【0024】
上述の各流路は特に限定されず、公知の配管等を適宜使用できる。ガス流路104には、コンプレッサー等の送気手段や弁、流量計等の計測機器等を適宜設置することができる。また、液流路101,102,103,105,106,107には、ポンプ等の送液手段や弁、流量計等の計測機器等を適宜設置することができる。
【0025】
回収装置1は、二酸化炭素を回収する。CO吸収部11には、大気、排ガス等の二酸化炭素を含むガスが供給される。CO吸収部11では、ガス中の二酸化炭素ガスが電解液と接触し、二酸化炭素が電解液に溶解されて吸収される。二酸化炭素ガスと電解液とを接触させる手法としては、特に限定されず、例えば、電解液中にガスを吹き込んでバブリングする手法を例示できる。
【0026】
CO吸収部11では、二酸化炭素を吸収する吸収液として、強アルカリ水溶液からなる電解液を用いる。二酸化炭素は、酸素原子が電子を強く引きつけるために炭素原子が正の電荷(δ+)を帯びる。そのため、水酸化物イオンが多量に存在する強アルカリ水溶液では、二酸化炭素は水和状態からHCO を経てCO 2-まで溶解反応が進行しやすく、CO 2-の存在比率が高い平衡状態となる。このことから、二酸化炭素は窒素、水素、酸素といった他のガスに比べて強アルカリ水溶液に溶解しやすく、CO吸収部11ではガス中の二酸化炭素が選択的に電解液に吸収される。このように、CO吸収部11で電解液を用いることで、二酸化炭素の濃縮を促進できる。
【0027】
CO吸収部11で二酸化炭素が吸収された電解液は、液流路101を通じて第1電気化学反応部2へと送られる。
【0028】
電解液に用いる強アルカリ水溶液としては、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液を例示できる。中でも、CO吸収部11における二酸化炭素の溶解性に優れ、第1電気化学反応部2における二酸化炭素の還元が促進される観点から、水酸化カリウム水溶液が好ましく使用される。
【0029】
図2は、第1電気化学反応部2の電解セルの一例を示す概略断面図である。第1電気化学反応部2は、電解セルとして、第1電解セル21を備える。第1電気化学反応部2は、第1電解セル21により、二酸化炭素を電気化学的に還元する。より詳しくは、第1電気化学反応部2は、二酸化炭素の電気化学的還元反応によりエチレンを目的生成物とする反応パスにおいて、二酸化炭素から一酸化炭素への還元反応を実行する。なお、図2では、1つの電解セルを示しているが、第1電気化学反応部2は、第1電解セル21を備える電解セルを、複数積層して構成される電解セルスタックを備えることが好ましい。
【0030】
図1に示すように、第1電解セル21は、後述する第2電気化学反応部3の第2電解セル31の上流側に配置される。
図2に示すように、第1電解セル21は、カソード211と、アノード212と、イオン交換膜213と、カソード側液流路214aを形成するカソード側液流路構造体214と、アノード側液流路216aを形成するアノード側液流路構造体216と、給電体217と、給電体218と、を備える。
【0031】
第1電解セル21では、給電体217、カソード側液流路構造体214、カソード211、イオン交換膜213、アノード212、アノード側液流路構造体216、給電体218が、この順に積層されている。また、カソード211とカソード側液流路構造体214との間にカソード側液流路214aが形成され、アノード212とアノード側液流路構造体216との間にアノード側液流路216aが形成されている。これらカソード側液流路214aとアノード側液流路216aは、カソード211、イオン交換膜213およびアノード212を挟んで互いに対向する位置に設けられる。これらカソード側液流路214aとアノード側液流路216aは、それぞれ複数設けられることが好ましく、その形状は、直線状の他、ジグザグ状であってもよい。
【0032】
給電体217と給電体218は、図示しない電気エネルギー貯蔵部と電気的に接続されている。また、カソード側液流路構造体214とアノード側液流路構造体216はいずれも導電体であり、電気エネルギー貯蔵部から供給される電力によってカソード211とアノード212の間に電圧を印加できるようになっている。
【0033】
カソード211は、二酸化炭素を還元する電極である。より詳しくは、第1電解セル21のカソード211は、主として二酸化炭素を一酸化炭素に還元する。ただし、生成した一酸化炭素の一部は、エチレンにまで還元されてもよい。
【0034】
カソード211としては、例えば、ガス拡散層と、当該ガス拡散層のカソード側液流路214a側に形成されたカソード触媒層と、を備える電極を例示できる。カソード触媒層は、その一部がガス拡散層中に入り込んで配置されていてもよい。また、ガス拡散層とカソード触媒層の間には、ガス拡散層よりも緻密な多孔質層が配置されていてもよい。
【0035】
カソード触媒層を形成するカソード触媒としては、二酸化炭素の還元反応に用いられる公知の触媒を使用できる。カソード触媒の具体例としては、金、銀、銅、白金、パラジウム、ニッケル、コバルト、鉄、マンガン、チタン、カドミウム、亜鉛、インジウム、ガリウム、鉛、錫等の金属、それらの合金や金属間化合物、ルテニウム錯体、レニウム錯体等の金属錯体を例示できる。中でも、二酸化炭素から一酸化炭素への還元反応に好ましいカソード触媒として、銀、金、亜鉛が挙げられる。カソード触媒としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。カソード触媒としては、金属粒子が炭素材料(カーボン粒子、カーボンナノチューブ、グラフェン等)に担持された担持触媒を使用してもよい。
【0036】
カソード211のガス拡散層としては、特に限定されず、例えば、カーボンペーパー、カーボンクロスを例示できる。カソード211の製造方法は、特に限定されず、例えば、ガス拡散層のカソード側液流路214a側となる面に、カソード触媒を含む液状組成物のスラリーを塗布して乾燥する方法を例示できる。
【0037】
アノード212は、水酸化物イオンを酸化して酸素を生成する電極である。アノード212としては、例えば、ガス拡散層と、当該ガス拡散層のアノード側液流路216a側に形成されたアノード触媒層と、を備える電極を例示できる。アノード触媒層は、その一部がガス拡散層中に入り込んで配置されていてもよい。また、ガス拡散層とアノード触媒層の間には、ガス拡散層よりも緻密な多孔質層が配置されていてもよい。
【0038】
アノード触媒層を形成するアノード触媒としては、特に限定されず、公知のアノード触媒を使用できる。具体的には、例えば、白金、パラジウム、ニッケル等の金属、それらの合金や金属間化合物、酸化マンガン、酸化イリジウム、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化鉄、酸化スズ、酸化インジウム、酸化ルテニウム、酸化リチウム、酸化ランタン等の金属酸化物、ルテニウム錯体、レニウム錯体等の金属錯体を例示できる。アノード触媒としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0039】
アノード212のガス拡散層としては、例えば、カーボンペーパー、カーボンクロスを例示できる。また、ガス拡散層としては、メッシュ材、パンチング材、多孔体、金属繊維焼結体等の多孔質体を用いてもよい。多孔質体の材質としては、例えば、チタン、ニッケル、鉄等の金属、これらの合金(例えばSUS)を例示できる。
【0040】
カソード側液流路構造体214およびアノード側液流路構造体216の材質としては、例えば、チタン、SUS等の金属、カーボンを例示できる。
【0041】
給電体217および給電体218の材質としては、例えば、銅、金、チタン、SUS等の金属、カーボンを例示できる。給電体217および給電体218としては、銅基材の表面に金メッキ等のメッキ処理を施したものを使用してもよい。
【0042】
また、図1に示すように、第2電気化学反応部3の第2電解セル31は、第1電解セル21の下流側に配置される。
図3に示すように、第2電解セル31は、カソード311と、アノード312と、イオン交換膜313と、カソード側液流路314aを形成するカソード側液流路構造体314と、アノード側液流路316aを形成するアノード側液流路構造体316と、給電体317と、給電体318と、を備える。
【0043】
第2電解セル31では、給電体317、カソード側液流路構造体314、カソード311、イオン交換膜313、アノード312、アノード側液流路構造体316、給電体318が、この順に積層されている。また、カソード311とカソード側液流路構造体314との間にカソード側液流路314aが形成され、アノード312とアノード側液流路構造体316との間にアノード側液流路316aが形成されている。これらカソード側液流路314aとアノード側液流路316aは、カソード311、イオン交換膜313およびアノード312を挟んで互いに対向する位置に設けられる。これらカソード側液流路314aとアノード側液流路316aは、それぞれ複数設けられることが好ましく、その形状は、直線状の他、ジグザグ状であってもよい。
【0044】
給電体317と給電体318は、図示しない電気エネルギー貯蔵部と電気的に接続されている。また、カソード側液流路構造体314とアノード側液流路構造体316はいずれも導電体であり、電気エネルギー貯蔵部から供給される電力によってカソード311とアノード312の間に電圧を印加できるようになっている。
【0045】
カソード311は、後述するように、第1電解セル21にて二酸化炭素が還元されて生成した一酸化炭素を主体とするガスを還元する。より詳しくは、第2電解セル31のカソード311は、一酸化炭素をエチレンに還元する電極である。また、カソード311は、第1電解セル21にて一酸化炭素に還元されなかった未反応の二酸化炭素をエチレンに還元することもできる。
【0046】
カソード311としては、例えば、ガス拡散層と、当該ガス拡散層のカソード側液流路314a側に形成されたカソード触媒層と、を備える電極を例示できる。カソード触媒層は、その一部がガス拡散層中に入り込んで配置されていてもよい。また、ガス拡散層とカソード触媒層の間には、ガス拡散層よりも緻密な多孔質層が配置されていてもよい。
【0047】
カソード触媒層を形成するカソード触媒としては、二酸化炭素の還元反応に用いられる公知の触媒を使用できる。カソード触媒の具体例としては、金、銀、銅、白金、パラジウム、ニッケル、コバルト、鉄、マンガン、チタン、カドミウム、亜鉛、インジウム、ガリウム、鉛、錫等の金属、それらの合金や金属間化合物、ルテニウム錯体、レニウム錯体等の金属錯体を例示できる。中でも、二酸化炭素から一酸化炭素への還元反応に好ましいカソード触媒として、銀、金、亜鉛が挙げられる。カソード触媒としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。カソード触媒としては、金属粒子が炭素材料(カーボン粒子、カーボンナノチューブ、グラフェン等)に担持された担持触媒を使用してもよい。
【0048】
カソード311のガス拡散層としては、特に限定されず、例えば、カーボンペーパー、カーボンクロスを例示できる。カソード311の製造方法は、特に限定されず、例えば、ガス拡散層のカソード側液流路314a側となる面に、カソード触媒を含む液状組成物のスラリーを塗布して乾燥する方法を例示できる。
【0049】
アノード312は、水酸化物イオンを酸化して酸素を生成する電極である。アノード312としては、例えば、ガス拡散層と、当該ガス拡散層のアノード側液流路316a側に形成されたアノード触媒層と、を備える電極を例示できる。アノード触媒層は、その一部がガス拡散層中に入り込んで配置されていてもよい。また、ガス拡散層とアノード触媒層の間には、ガス拡散層よりも緻密な多孔質層が配置されていてもよい。
【0050】
アノード触媒層を形成するアノード触媒としては、特に限定されず、公知のアノード触媒を使用できる。具体的には、例えば、白金、パラジウム、ニッケル等の金属、それらの合金や金属間化合物、酸化マンガン、酸化イリジウム、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化鉄、酸化スズ、酸化インジウム、酸化ルテニウム、酸化リチウム、酸化ランタン等の金属酸化物、ルテニウム錯体、レニウム錯体等の金属錯体を例示できる。アノード触媒としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
アノード312のガス拡散層としては、例えば、カーボンペーパー、カーボンクロスを例示できる。また、ガス拡散層としては、メッシュ材、パンチング材、多孔体、金属繊維焼結体等の多孔質体を用いてもよい。多孔質体の材質としては、例えば、チタン、ニッケル、鉄等の金属、これらの合金(例えばSUS)を例示できる。
【0052】
カソード側液流路構造体314およびアノード側液流路構造体316の材質としては、例えば、チタン、SUS等の金属、カーボンを例示できる。
【0053】
給電体317および給電体318の材質としては、例えば、銅、金、チタン、SUS等の金属、カーボンを例示できる。給電体317および給電体318としては、銅基材の表面に金メッキ等のメッキ処理を施したものを使用してもよい。
【0054】
第1気液分離部4は、第1電気化学反応部2の第1電解セル21で発生した一酸化炭素を含む電解液から、一酸化炭素を分離して、一酸化炭素を回収する。
【0055】
第2気液分離部5は、第2電気化学反応部3の第2電解セル31で発生したエチレンを含む電解液から、エチレンを分離して、エチレンを回収する。
【0056】
マイクロバブル発生部6は、第1気液分離部4で回収した一酸化炭素をマイクロバブルとして、第2電気化学反応部3の第2電解セル31に供給する。
【0057】
第1酸素分離部7は、第1電気化学反応部2の第1電解セル21で発生した酸素を含む電解液から、酸素を分離して、酸素を回収する。
【0058】
第2酸素分離部8は、第2電気化学反応部3の第2電解セル31で発生した酸素を含む電解液から、酸素を分離して、酸素を回収する。
【0059】
第1電解セル21および第2電解セル31による二酸化炭素の還元反応について説明する。
【0060】
第1電解セル21は、CO吸収部11から供給されて液流路101を通じて送られてくる電解液が、カソード側液流路214aに流入するフローセルである。カソード211とアノード212に電圧が印加されることで、カソード側液流路214aを流れる電解液中の溶存二酸化炭素がカソード211で電気化学的に還元される。カソード側液流路214aの入口における電解液は、二酸化炭素が溶解されているためCO 2-の存在比率が高い比較的弱いアルカリ状態になっている。一方、カソード側液流路214aを流れて還元が進行するにつれて溶存二酸化炭素量、すなわち電解液中のCO 2-量が低下することで、カソード側液流路214aの出口ではアルカリが強い状態の電解液に復帰する。
【0061】
上述したように第1電解セル21のカソード211では、電解液が比較的弱いアルカリ下であるため、二酸化炭素が還元されて生成する生成物は、主として一酸化炭素である。具体的には、カソード211では、以下のカソード半反応式で示される反応が進行することにより、ガス状生成物として一酸化炭素が生成する。生成したガス状の一酸化炭素は、カソード側液流路214aの出口から流出する。
[カソード半反応式]2CO 2-+4HO→2CO+8OH
【0062】
第1電解セル21のカソード211で生じた水酸化物イオンは、イオン交換膜213を透過してアノード212へと移動し、以下のアノード半反応式で示される反応で酸化されて酸素が生成する。生成した酸素は、アノード212のガス拡散層を透過してアノード側液流路216aに流れ込み、アノード側液流路216aの出口から流出する。
[アノード半反応式]4OH→O+2H
【0063】
従って、第1電解セル21では、全体として、以下の全反応式で示される反応が進行する。
[全反応式]2CO 2-+2HO→2CO+O+4OH
【0064】
このように、本実施形態の二酸化炭素処理装置100では、第1電気化学反応部2に用いる電解液をCO吸収部11の吸収液として共用し、電解液に溶解させたまま二酸化炭素を第1電気化学反応部2に供給して電気化学的に還元する。これにより、例えば、二酸化炭素を吸着剤に吸着させ、加熱によって脱離させて還元する場合に比べて、二酸化炭素の脱離に要するエネルギーが低減され、エネルギー効率を高くできる。
【0065】
ここで、上述したようにカソード側液流路214aの入口における電解液は、二酸化炭素が溶解されているためCO 2-の存在比率が高い弱アルカリ状態になっている。これに対して二酸化炭素の還元反応では、弱アルカリ下では還元反応が進行し難いため、目的とするエチレンの生成効率が悪いという課題がある。このため、上述したように第1電解セル21のカソード側液流路214aの出口から流出するガスは、一酸化炭素が主体である。
【0066】
これに対して、本実施形態の二酸化炭素処理装置100では、第1電解セル21のカソード側液流路214aの出口から流出する一酸化炭素を主体とするガスを、第1気液分離部4で回収し、ガス流路104を通じてマイクロバブル発生部6に供給し、マイクロバブル発生部6で一酸化炭素をマイクロバブルにするとともに、第2電気化学反応部3の第2電解セル31から排出された電解液にマイクロバブルとした一酸化炭素を分散させて、電解液とし、電解液を、液流路105を通じて第2電気化学反応部3の第2電解セル31に供給する。
【0067】
第2電解セル31は、マイクロバブル発生部6から液流路105を介して供給されてくるマイクロバブルとした一酸化炭素が、カソード側液流路314aに流入するフローセルである。カソード311とアノード312に電圧が印加されることで、カソード側液流路314aを流れる一酸化炭素がカソード311で電気化学的に還元されてエチレンが生成される。
【0068】
具体的には、第2電解セル31のカソード311では、以下のカソード半反応式で示される反応が進行することにより、ガス状生成物としてエチレンが生成する。マイクロバブル発生部6から液流路105を介して供給されるマイクロバブルとした一酸化炭素は、電解液に溶解せず電解液が弱アルカリ化することがない。このため、第2電解セル31のカソード311では、一酸化炭素の還元反応が効率良く進行する結果、エチレンが効率良く生成される。
[カソード半反応式]2CO+4HO→C+4OH
【0069】
第2電解セル31のカソード311で生じた水酸化物イオンは、イオン交換膜313を透過してアノード312へと移動し、以下のアノード半反応式で示される反応で酸化されて酸素が生成する。生成した酸素は、アノード312のガス拡散層を透過してアノード側液流路316aに流れ込み、アノード側液流路316aの出口から流出する。
[アノード半反応式]4OH→O+2H
【0070】
従って、第2電解セル31では、全体として、以下の全反応式で示される反応が進行する。
[全反応式]2CO+2HO→C+2O
【0071】
本実施形態の二酸化炭素処理装置によれば、第1電気化学反応部2で生成された一酸化炭素をマイクロバブルとして第2電気化学反応部3に供給するマイクロバブル発生部6を備えるため、一酸化炭素のマイクロバブルは表面積が大きくなり、水との接触機会が増えることから、一酸化炭素と水の反応効率が向上する。その結果、強アルカリ下においても、第2電解セル31の抵抗を低くし、電解効率を高くすることができる。
【0072】
[二酸化炭素処理方法]
本発明の実施形態に係る二酸化炭素処理方法は、例えば、上述の二酸化炭素処理装置100を用いることにより実行される。具体的には、本実施形態の二酸化炭素処理方法は、CO吸収部11で強アルカリ水溶液からなる電解液に二酸化炭素ガスを接触させ、二酸化炭素を電解液に溶解させて吸収させる工程(a)と、第1電解セル21で電解液中の溶存二酸化炭素を電気化学的に一酸化炭素に還元する工程(b)と、前記工程(b)で生成された一酸化炭素をマイクロバブル発生部6によりマイクロバブルとして、第2電解セル31に供給する工程(c)と、前記工程(c)で生成された一酸化炭素のマイクロバブルを、第2電解セル31により電気化学的にエチレンに還元する工程(d)と、を含むことが好ましい。本実施形態の二酸化炭素処理方法は、エチレンの製造方法に利用できる。
【0073】
また、本実施形態の二酸化炭素処理方法は、上述の工程(b)で生成された一酸化炭素をマイクロバブル発生部6によりマイクロバブルとして、第2電解セル31に供給する工程(c)を含むことを特徴とする。
【0074】
なお、本発明は上記の各態様に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良は本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0075】
1 回収装置
2 第1電気化学反応部
3 第2電気化学反応部
4 第1気液分離部
5 第2気液分離部
6 マイクロバブル発生部
7 第1酸素分離部
8 第2酸素分離部
11 CO吸収部
21 第1電解セル
31 第2電解セル
100 二酸化炭素処理装置
211,311 カソード
212,312 アノード
213,313 イオン交換膜
214,314 カソード側液流路構造体
214a,314a カソード側液流路
216,316 アノード側液流路構造体
216a,316a アノード側液流路
217,218,317,318 給電体
図1
図2
図3