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  • 特開-印刷物の製造方法 図1
  • 特開-印刷物の製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141587
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】印刷物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/00 20060101AFI20241003BHJP
   C09D 11/30 20140101ALI20241003BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B41M5/00 120
B41M5/00 100
B41M5/00 134
C09D11/30
B41J2/01 501
B41J2/01 123
B41J2/01 129
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053321
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田口 禄人
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2C056EE17
2C056FC01
2C056HA44
2H186AB09
2H186AB11
2H186AB23
2H186AB51
2H186DA12
2H186FB04
2H186FB07
2H186FB36
2H186FB38
2H186FB44
2H186FB46
2H186FB54
4J039AD10
4J039BC16
4J039BC19
4J039CA02
4J039CA04
4J039EA43
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】活性光線硬化型インク中の成分が搬送手段に付着し難い印刷物の製造方法を提供すること。
【解決手段】上記印刷物の製造方法は、活性光線硬化型インクを記録媒体の第1面に塗付し、第1の塗膜を形成する工程と、前記記録媒体の第1の塗膜に活性光線を照射し、前記第1の塗膜を硬化させる工程と、前記記録媒体を搬送する工程と、を含む印刷物の製造方法であり、前記活性光線硬化型インクが、活性光線硬化型化合物と、特定の構造を有するゲル化剤と、色材と、を含む。前記記録媒体を搬送する工程では、前記第1の塗膜の硬化物と、画像形成装置の搬送手段とが接触する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性光線硬化型インクを記録媒体の第1面に塗付し、硬化させて第1画像を形成する工程と、
前記第1画像を形成した前記記録媒体を搬送する工程と、
を含む印刷物の製造方法であり、
前記活性光線硬化型インクが、
一種以上の活性光線硬化型化合物と、
一般式(1)で表されるケトン系化合物、および/または一般式(2)で表されるエステル系化合物を含むゲル化剤と、
-C(=O)-R (1)
(RおよびRは、それぞれ独立に、炭素数10以上16以下の直鎖状構造を含む炭化水素基を表す)
-COO-R (2)
(RおよびRは、それぞれ独立に、炭素数12以上18以下の直鎖状構造を含む炭化水素基を表す)
色材と、
を含み、
前記記録媒体を搬送する工程では、前記第1画像が、画像形成装置の搬送手段に接触する、
印刷物の製造方法。
【請求項2】
前記記録媒体の第2面に、前記活性光線硬化型インクを塗付し、硬化させて第2画像を得る工程をさらに含む、
請求項1に記載の印刷物の製造方法。
【請求項3】
前記第1画像を得る工程および前記第2画像を得る工程においてそれぞれ、前記活性光線硬化型インクの塗膜に対して活性光線の照射を行い
前記第2面に照射する活性光線の積算光量を、前記第1面に照射する活性光線の積算光量に対して80%以上120%以下とする、
請求項2に記載の印刷物の製造方法。
【請求項4】
前記ゲル化剤が、前記一般式(2)で表されるエステル系化合物を含み、
前記一般式(2)におけるRおよびRが、それぞれ独立に炭素数15以上18以下の直鎖状構造を含む炭化水素基を表す、
請求項1に記載の印刷物の製造方法。
【請求項5】
前記活性光線硬化型インク中の前記ゲル化剤の量が、2質量%以上10質量%以下である、
請求項1に記載の印刷物の製造方法。
【請求項6】
前記活性光線硬化型化合物全体のSP値が16.8以上18.5以下である、
請求項1に記載の印刷物の製造方法。
【請求項7】
下記式(1)で表される、前記活性光線硬化型化合物全体のSP値と、前記ゲル化剤のSP値とのSP値距離Rが2以上5.5以下である、
請求項1に記載の印刷物の製造方法。
R={4*(dDm-dDg)+(dPm-dPg)+(dHm-dHg)0.5・・・式(1)
(上記式(1)において、
dDmは、前記活性光線硬化型化合物全体の蒸発エネルギーの分散項を表し、
dPmは、前記活性光線硬化型化合物全体の蒸発エネルギーの分極項を表し、
dHmは、前記活性光線硬化型化合物全体の蒸発エネルギーの水素結合項を表し、
dDgは、前記ゲル化剤の蒸発エネルギーの分散項を表し、
dPgは、前記ゲル化剤の蒸発エネルギーの分極項を表し、
dHgは、前記ゲル化剤の蒸発エネルギーの水素結合項を表す)
【請求項8】
前記ゲル化剤がステアリン酸ステアリルであり、
前記SP値距離Rが4以上5.5以下である、
請求項7に記載の印刷物の製造方法。
【請求項9】
前記ゲル化剤がパルミチン酸セチルであり、
前記SP値距離Rが3.5以上5以下である、
請求項7に記載の印刷物の製造方法。
【請求項10】
前記第1画像上、および/または前記第2画像上に、オーバーコート層を形成する工程をさらに含む、
請求項2に記載の印刷物の製造方法。
【請求項11】
前記オーバーコート層を形成する工程が、
活性光線硬化型オーバーコートインクを塗付し、硬化させる工程である、
請求項10に記載の印刷物の製造方法。
【請求項12】
前記活性光線硬化型オーバーコートインク中のゲル化剤の量が、5質量%以下である、
請求項11に記載の印刷物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種記録媒体に画像を形成する方法として、様々な印刷方式が知られている。中でも、インクジェット印刷は、オンデマンド印刷が可能であること等から、広く普及している。インクジェット印刷の一つに、活性光線の照射によって硬化する活性線硬化型インクを塗付する印刷方式がある。
【0003】
当該活性光線硬化型インクは、活性光線硬化型化合物および光開始剤を含むことが一般的であり、当該活性光線硬化型インクは、活性光線の照射によって硬化する。そのため、インク吸収性を有さない記録媒体にも画像形成が可能であり、短時間で硬化させることが可能である。そのため、形成後の画像と、搬送手段とが接触する構成の画像形成装置等も知られている(例えば引用文献1)。また特に、記録媒体の両面に画像形成を行う場合には、記録媒体の一方の面に画像を形成した後、記録媒体を反転させ、さらに画像形成を行う必要がある。したがって、両面印刷を行う画像形成装置では、画像と搬送手段との接触機会が多くなりやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-138654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者らが鋭意検討したところ、活性光線硬化型インクの種類によっては、形成後の画像と、画像形成装置の搬送手段とが接触すると、一部の成分が搬送手段に付着してしまうことが確認された。
【0006】
ここで近年、活性光線硬化型化合物と、ゲル化剤とを含み、温度により可逆的にゾルゲル相転移する活性光線硬化型インクが知られている。当該活性光線硬化型インクは、高温環境下ではインクがゾルとなり、十分な流動性を有する。一方、低温環境下では、インクがゲルとなり、流動性が低くなる。したがって、記録媒体上でのピニング性が良好であり、高解像度の画像が得られやすい。ただし、活性硬化線硬化型インク中のゲル化剤の種類によっては、ゲル化剤が硬化物の表面に析出することがある。その結果、形成後の画像(活性光線硬化型インクの硬化物)と搬送手段とが接触すると、ゲル化剤が搬送手段に付着してしまうことがあった。
【0007】
搬送手段にインク中の成分が付着すると、印刷物の汚損につながったり、印刷物の搬送不良が生じたりすることがある。また、インク中の成分(例えばゲル化剤)が搬送手段に付着してしまうと、印刷物(画像)において、所望の質感が得られなくなったり、所望の印刷物が得られなくなったりすることがある。
【0008】
本発明は、このような課題を鑑みてなされたものである。活性光線硬化型インク中の成分が搬送手段に付着し難く、高品質な印刷物を製造可能な方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態は、活性光線硬化型インクを記録媒体の第1面に塗付し、硬化させて第1画像を形成する工程と、前記第1画像を形成した前記記録媒体を搬送する工程と、を含む印刷物の製造方法であり、前記活性光線硬化型インクが、一種以上の活性光線硬化型化合物と、一般式(1)で表されるケトン系化合物、および/または一般式(2)で表されるエステル系化合物を含むゲル化剤と、色材と、を含み、前記記録媒体を搬送する工程では、前記第1画像が、画像形成装置の搬送手段に接触する、印刷物の製造方法を提供する。
-C(=O)-R (1)
(RおよびRは、それぞれ独立に、炭素数10以上16以下の直鎖状構造を含む炭化水素基を表す)
-COO-R (2)
(RおよびRは、それぞれ独立に、炭素数12以上18以下の直鎖状構造を含む炭化水素基を表す)
【発明の効果】
【0010】
本発明の印刷物の製造方法によれば、活性光線硬化型インク中の成分が搬送手段に付着し難く、高品質な印刷物を製造可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、一実施形態に係る印刷物の製造方法に使用する画像形成装置の内部構造の正面図である。
図2図2は、一実施形態に係る印刷物の製造方法に使用する画像形成装置の内部構造の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。ただし、本発明は当該実施の形態に限定されない。
【0013】
本発明の一実施形態に係る印刷物の製造方法は、活性光線硬化型インク(以下、単に「インク」とも称する)を記録媒体の第1面に塗付し、硬化させて第1画像を形成する工程と、第1画像を形成した記録媒体を搬送する工程と、を含む。当該印刷物の製造方法は、記録媒体の一方の面のみに画像を形成する方法であってもよく、記録媒体の両面に画像を形成する方法であってもよい。
【0014】
図1および図2に、当該印刷物の製造方法を行う画像形成装置100の内部構造の正面図を示す。ただし、画像形成装置100の構成は一例であり、本実施形態の印刷物の製造方法を行うための画像形成装置は、当該構成に限定されない。
【0015】
図1には、記録媒体1の一方の面のみに画像を形成する場合(片面印刷)の、記録媒体1の移動経路を、矢印で示す。当該画像形成装置100では、まず、記録媒体供給手段10から供給された記録媒体1を、第1の搬送手段110(給紙ローラ111および支持ローラ112)によって塗布手段20の近傍に移動させる。そして、塗布手段20によって、記録媒体1の第1面の所望の領域に、インクを塗付する。塗布手段20では、複数種類(例えば複数色)のインクの塗布を行ってもよい。その後、第1の搬送手段110(支持ローラ112の回転等)によって、記録媒体1を硬化手段30近傍に移動させる。そして、塗布手段20で塗布したインクを硬化(ここでは、活性光線を照射してインクを硬化)させ、第1画像を形成する。当該記録媒体1を第2の搬送手段120(搬送ローラ121および122)によって搬送し、画像形成装置100の外部に排出する。なお、当該方法では、第1画像が、第2の搬送手段(搬送ローラ121)に接触する。
【0016】
図2には、記録媒体1の両方の面に画像を形成する場合(両面印刷)の、記録媒体1の移動経路を、矢印で示す。なお、図2では、第1面に画像(第1画像)を形成してから、記録媒体1を反転させるまでの記録媒体1の移動経路を実線で示す。また、記録媒体1を反転させた後の記録媒体1の移動経路を破線で示す。当該画像形成装置100では、まず、記録媒体供給手段10から供給された記録媒体1を、第1の搬送手段110(ここでは、給紙ローラ111および支持ローラ112)によって、塗布手段20の近傍に移動させる。そして、塗布手段20によって、記録媒体1の第1面の所望の領域に、インクを塗付する。塗布手段20では、複数種類(複数色)のインクの塗布を行ってもよい。その後、第1の搬送手段110(支持ローラ112の回転等)によって、記録媒体1を硬化手段30近傍に移動させる。そして、塗布手段20で塗布したインクを硬化(ここでは、活性光線を照射してインクを硬化)させ、第1画像を形成する。
【0017】
その後、当該記録媒体1を第3の搬送手段(反転ローラ)130によって搬送し、記録媒体1の向きを反転させる。そして、再度、第1の搬送手段110(ここでは、支持ローラ102)によって記録媒体1を搬送し、塗布手段20および硬化手段120によって、第2画像を形成する。そして、記録媒体1を第2の搬送手段120(搬送ローラ121および122)によって搬送し、画像形成装置100の外部に排出する。当該方法では、形成した第1画像が、第1の搬送手段110(支持ローラ112)、第2の搬送手段120(搬送ローラ122)、および第3の搬送手段(反転ローラ)130にそれぞれ接触する。さらに、第2画像は、第2の搬送手段120(搬送ローラ121)に接触する。
【0018】
このように、記録媒体に形成した第1画像や第2画像(以下、これらを区別する必要がない場合には、これらをまとめて「画像」とも称する)が搬送手段に接触する場合、画像の表面に未硬化の成分や表面に析出したゲル化剤が存在すると、当該未硬化の成分や表面に析出したゲル化剤が搬送手段に付着しやすい。その結果、連続印刷を行うときに、後続の記録媒体を汚損する原因となったり、記録媒体を搬送し難くなったりすることがある。さらに、画像中の成分が搬送手段に付着することで、画像の表面状態が変化してしまい、所望の質感が得られなくなったり、高品質な印刷物が得られ難くなったりすることもある。
【0019】
これに対し、本実施形態の印刷物の製造方法では、活性光線硬化型化合物と、直鎖状構造を有するケトン系化合物または直鎖状構造を有するエステル系化合物を含むゲル化剤と、色材とを含み、温度により可逆的にゾルゲル相転移するインクを使用する。上記ゲル化剤の直鎖状構造は、従来のインクに含まれるゲル化剤の直鎖状構造より短い。そのため、インクがゲル化する際、インク内でゲル化剤が動きやすく、短時間で集合する。その結果、遊離のゲル化剤の量が非常に少なく、塗膜の表面にゲル化剤が析出し難い。よって、当該インクを使用した印刷物の製造方法では、記録媒体の第1画像や第2画像と、画像形成装置の搬送手段とが接触しても、搬送手段側にゲル化剤が付着し難く、高品質な印刷物が得られる。また、連続印刷を行っても、後続の記録媒体や印刷物が汚れにくく、さらに画像形成装置内での搬送不良等も生じ難い。
【0020】
また、印刷物を製造する際、画像表面の質感を調整したり、画像を保護したりするため、画像上にオーバーコート層を形成することがある。ただし、画像の表面にゲル化剤成分が多量に析出したりしていると、インクとオーバーコート層との密着性が低くなりやすかった。これに対し、本実施形態の印刷物の製造方法では、画像の表面にゲル化剤が析出し難いことから、オーバーコート層を形成した際に、その密着性が良好になるという利点もある。
【0021】
さらに、一般的に、活性光線硬化型インクを用いて両面印刷を行うと、記録媒体の種類によっては、得られる印刷物に反りが生じることがある。これは、記録媒体が活性光線に対して透過性を有する場合、記録媒体の第1面側に第1画像を形成してから、第2面側に第2画像を形成すると、第1画像に2回(第1面側および第2面側の両方から)活性光線が照射されることに起因すると考えられる。例えば、第1画像と第2画像との硬化状態に差が生じると、第1画像の硬化収縮等によって、印刷物が反ると考えられる。これに対し、本実施形態の印刷物の製造方法では、第1画像や第2画像の内側にゲル化剤の結晶が含まれる。そのため、当該結晶が、上記応力を緩和し、印刷物の反りを抑制する。
【0022】
以下、本実施形態に使用するインクについて先に説明し、その後、画像の形成方法および画像形成装置について説明する。
【0023】
(1)活性光線硬化型インク
上述のように、本実施形態で使用するインクは、活性光線硬化型化合物と、ゲル化剤と、色材とを含んでいればよく、通常、光開始剤をさらに含む。また、当該インクは必要に応じてその他の成分をさらに含んでいてもよい。
【0024】
(活性光線硬化型化合物)
活性光線硬化型化合物は、活性光線の照射によって架橋または重合する化合物であればよい。本明細書における活性光線の例には、電子線、紫外線、α線、γ線、およびエックス線等が含まれる。ここで、活性光線硬化型化合物は、ラジカル重合性化合物およびカチオン重合性化合物のいずれであってもよいが、ラジカル重合性化合物がより好ましい。
【0025】
ラジカル重合性化合物は、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物であればよく、モノマー、オリゴマー、およびポリマーのいずれであってもよく、これらの混合物であってもよい。インクは、ラジカル重合性化合物を一種のみ含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。
【0026】
ラジカル重合性化合物の例には、不飽和カルボン酸やその塩、不飽和カルボン酸エステル化合物、不飽和カルボン酸ウレタン化合物、不飽和カルボン酸アミド化合物およびその無水物、アクリロニトリル、スチレン、不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ウレタン等が含まれる。これらの中でも、反応性や汎用性等の観点で、不飽和カルボン酸エステル化合物が好ましく、(メタ)アクリレート化合物がより好ましい。本明細書における「(メタ)アクリレート」との記載は、「アクリレート」または「メタクリレート」いずれか一方、もしくはこれらの両方を指し、「(メタ)アクリル」との記載は「アクリル」または「メタクリル」のいずれか一方、もしくは両方を指す。
【0027】
(メタ)アクリレート化合物の例には、オクタデシル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソミルスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル-ジグリコール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチル-フタル酸、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、(5-エチル-1,3-ジオキサン-5-イル)アクリル酸メチル等の単官能モノマー;
トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールプロポキシレートジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジアクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのPO付加物ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレンジグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレンジ(メタ)アクリレート等の二官能モノマー;
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート等の三官能以上の多官能モノマー等が含まれる。
【0028】
(メタ)アクリレート化合物は、感光性等の観点から、(5-エチル-1,3-ジオキサン-5-イル)アクリル酸メチル、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコール(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールプロポキシレートジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート等が好ましい。
【0029】
(メタ)アクリレート化合物は、変性物であってもよい。変性物の例には、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート等のエチレンオキサイド変性またはプロピレンオキサイド変性(メタ)アクリレート化合物;カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等のカプロラトン変性(メタ)アクリレート化合物;およびカプロラクタム変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のカプロラクタム変性(メタ)アクリレート化合物等が含まれる。
【0030】
(メタ)アクリレート化合物は、重合性オリゴマーであってもよい。重合性オリゴマーの例には、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、芳香族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、および直鎖(メタ)アクリルオリゴマー等が含まれる。
【0031】
一方、カチオン重合性化合物の例には、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、およびオキセタン化合物等が含まれる。インクはカチオン重合性化合物を一種のみ含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。
【0032】
エポキシ化合物は、芳香族エポキシド、脂環式エポキシド、または脂肪族エポキシドのいずれであってもよく、硬化性を高めるためには、芳香族エポキシドおよび脂環式エポキシドが好ましい。
【0033】
芳香族エポキシドの例には、多価フェノールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体と、エピクロルヒドリンとを反応させて得られるジまたはポリグリシジルエーテルが含まれる。反応させる多価フェノールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体の例には、ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体等が含まれる。アルキレンオキサイド付加体におけるアルキレンオキサイドの例には、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドが含まれる。
【0034】
脂環式エポキシドの例には、シクロアルカン含有化合物を、過酸化水素や過酸等の酸化剤でエポキシ化して得られるシクロアルカンオキサイド含有化合物が含まれる。シクロアルカンオキサイド含有化合物におけるシクロアルカンの例には、シクロヘキセンまたはシクロペンテンが含まれる。
【0035】
脂肪族エポキシドの例には、脂肪族多価アルコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体と、エピクロルヒドリンとを反応させて得られるジまたはポリグリシジルエーテルが含まれる。脂肪族多価アルコールの例には、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,6-ヘキサンジオール等のアルキレングリコール等が含まれる。アルキレンオキサイド付加体におけるアルキレンオキサイドの例には、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドが含まれる。
【0036】
ビニルエーテル化合物の例には、エチルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル-o-プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物;
エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジまたはトリビニルエーテル化合物等が含まれる。これらのビニルエーテル化合物のうち、硬化性や密着性などを考慮すると、ジまたはトリビニルエーテル化合物が好ましい。
【0037】
オキセタン化合物は、オキセタン環を有する化合物であればよく、その例には、特開2001-220526号公報、特開2001-310937号公報、特開2005-255821号公報に記載のオキセタン化合物等が含まれる。
【0038】
ここで、上記活性光線硬化型化合物全体のSP値は、16.8以上18.5以下が好ましく、17.3以上17.8以下がより好ましい。活性光線硬化型化合物全体のSP値とは、インクが活性光線硬化型化合物を1種のみ含む場合には、当該活性光線硬化型化合物のSP値をいう。一方で、インクが活性光線硬化型化合物を複数種類含む場合には、これらをインク中と同様の比率で混合した組成物のSP値をいう。活性光線硬化型化合物全体のSP値が当該範囲であると、後述のゲル化剤と活性光線硬化型組成物との相溶性が良好になる。また、活性光線硬化型化合物全体のSP値が当該範囲であると、画像上にオーバーコート層を形成する場合に、画像表面の成分(活性光線硬化型化合物の硬化物)とオーバーコート層との親和性がより良好になりやすく、これらの密着性が高まりやすい。
【0039】
活性光線硬化型化合物のSP値は、ソフトフェア(ソフト名:Hansen Solubility Parameter in Practice(HSPiPに、それぞれの化合物の構造を代入して算出される値を採用できる。活性光線硬化型化合物が2種以上(n種)の化合物の組み合わせである場合、活性光線硬化型化合物全体のSP値は、n種の活性光線硬化型化合物それぞれの体積分率φおよび各SP値δを下記式に代入し、算出できる。
【数1】
【0040】
なお、インク中の、活性光線硬化型化合物の総量は、1質量%以上97質量%以下が好ましく、30質量%以上95質量%以下がより好ましい。活性光線硬化型化合物の含有量が当該範囲であると、記録媒体と画像との密着性が高まりやすい。また、相対的に色材やゲル化剤の量が十分になるため、所望の色や質感を有する画像が得られやすくなる。
【0041】
(ゲル化剤)
ゲル化剤は、一般式(1)で表されるケトン系化合物、および一般式(2)で表されるエステル系化合物のいずれか一方、もしくは両方を含んでいればよく、特に一般式(2)で表されるエステル系化合物を含むことが好ましい。インクは、ゲル化剤を一種のみ含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。
【0042】
-C(=O)-R (1)
上記一般式(1)において、RおよびRは、それぞれ独立に、炭素数10以上16以下の直鎖状構造を含む炭化水素基を表す。RおよびRは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0043】
一般式(1)で表されるケトン系化合物の例には、12-トリコサノン(炭素数:11-11)、14-ヘプタコサノン(炭素数:13-13)、ヘントリアコンタン-16-オン(炭素数:15-15)、13-ヘプタコサノン(炭素数:12-14)、13-ノナコサノン(炭素数:12-16)、15-ヘントリアコンタノン(炭素数:14-16)、等が含まれる。なお、上記括弧内の炭素数は、カルボニル基で分断される2つのR、Rのそれぞれの直鎖部分の炭素数を表す。
【0044】
-COO-R (2)
一般式(2)において、RおよびRは、それぞれ独立に、炭素数12以上18以下の直鎖状構造を含む炭化水素基を表し、直鎖構造の炭素数は15以上18以下がより好ましい。
【0045】
一般式(2)で表されるエステル系化合物の例には、ステアリン酸ステアリル(炭素数:17-18)、ステアリン酸パルミチル(炭素原子数:17-16)、ステアリン酸ラウリル(炭素原子数:17-12)、パルミチン酸セチル(炭素原子数:15-16)、パルミチン酸ステアリル(炭素原子数:15-18)、ミリスチン酸ミリスチル(炭素原子数:13-14)、ミリスチン酸セチル(炭素原子数:13-16)、オレイン酸ステアリル(炭素原子数:17-18)、リノール酸ステアリル(炭素原子数:17-18)、パルミチン酸イソステアリル(炭素原子数:15-18)等が含まれる。なお、上記括弧内の炭素数は、エステル基で分断される2つのR、Rのそれぞれの直鎖部分の炭素原子数を表す。
【0046】
また、下記式(1)で表される、活性光線硬化型化合物全体のSP値と、上記ゲル化剤のSP値とのSP値距離Rが2以上5.5以下であることが好ましい。
R={4*(dDm-dDg)+(dPm-dPg)+(dHm-dHg)0.5・・・式(1)
(式(1)において、
dDmは、活性光線硬化型化合物全体の蒸発エネルギーの分散項を表し、
dPmは、活性光線硬化型化合物全体の蒸発エネルギーの分極項を表し、
dHmは、活性光線硬化型化合物全体の蒸発エネルギーの水素結合項を表し、
dDgは、ゲル化剤の蒸発エネルギーの分散項を表し、
dPgは、ゲル化剤の蒸発エネルギーの分極項を表し、
dHgは、ゲル化剤の蒸発エネルギーの水素結合項を表す)
【0047】
上記蒸発エネルギーの分散項dD、分極項dP、および水素結合項dHは材料特有の値であり、公知文献1(HANSEN SOLUBILITY PARAMETERS A User’s Handbook Second Edition CRC Press Taylor & Francis Groopの第345頁-第510頁)やソフト(Hansen Solubility Parameter in Practice(HSPiP v5.4.01))に既に多くの具体的な数値が記載されている。また、上記公知文献1の第18頁に記載されている温度依存性等に基づけば、活性光線硬化物やゲル化剤の分散項dD、分極項dP、および水素結合項dHは、それぞれ容易に算出される。
【0048】
上記SP値距離は、ゲル化剤の種類によって、より好ましい値が異なる。例えばゲル化剤がステアリン酸ステアリルである場合には、上記SP値距離Rが4以上5.5以下であることが好ましい。また、上記ゲル化剤がパルミチン酸セチルである場合には、上記SP値距離Rが3.5以上5以下であることが好ましい。
【0049】
インク中の、ゲル化剤の総量は、1質量%以上10質量%以下が好ましく、2質量%以上8質量%以下がより好ましい。ゲル化剤の総量が当該範囲であると、インクがゾルゲル相転移しやすくなったり、硬化時に画像に生じる応力を緩和したりしやすくなる。一方で、画像表面にゲル化剤が析出し難くなる。なお、本実施形態の印刷物の製造方法では、ゲル化剤が、画像表面に析出し難いことから、比較的多くのゲル化剤をインク中に含め、インクをゲル化させやすくすることも可能である。
【0050】
(色材)
色材の種類は特に制限されず、インクの用途や記録媒体の種類等に応じて適宜選択される。インクは色材を一種のみ含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。色材の例には、染料および顔料が含まれる。インクの構成成分に対して良好な分散性を有し、かつ耐候性に優れることから、顔料がより好ましい。
【0051】
染料の例には、油溶性染料等が含まれる。油溶性染料は、市販品等から選択できる。
【0052】
一方、顔料も特に限定されず、例えばカラーインデックスに記載される下記番号の有機顔料または無機顔料を選択可能である。
【0053】
赤あるいはマゼンタ顔料の例には、Pigment Red 3、5、19、22、31、38、43、48:1、48:2、48:3、48:4、48:5、49:1、53:1、57:1、57:2、58:4、63:1、81、81:1、81:2、81:3、81:4、88、104、108、112、122、123、144、146、149、166、168、169、170、177、178、179、184、185、208、216、226、257、Pigment Violet 3、19、23、29、30、37、50、88、Pigment Orange 13、16、20、36等が含まれる。
【0054】
青またはシアン顔料の例には、Pigment Blue 1、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17-1、22、27、28、29、36、60等が含まれる。
【0055】
緑顔料の例には、Pigment Green 7、26、36、50が含まれる。黄顔料の例には、Pigment Yellow 1、3、12、13、14、17、34、35、37、55、74、81、83、93、94,95、97、108、109、110、137、138、139、153、154、155、157、166、167、168、180、185、193等が含まれる。
【0056】
黒顔料の例には、Pigment Black 7、28、26等が含まれる。また、白色顔料として、酸化チタン(特にルチル型の二酸化チタン)を用いることもできる。
【0057】
顔料の動的散乱法、またはレーザー回析法で測定される体積平均粒子径は0.08~0.5μmが好ましい。顔料の最大粒子径は0.3~10μmが好ましく、0.3~3μmがより好ましい。顔料の粒子径が当該範囲であると、インクを塗付しやすくなる。また、インクの保存安定性が良好になりやすい。
【0058】
インク中の色材の量は、0.1質量%以上20質量%以下が好ましく、0.4質量%以上10質量%以下がより好ましい。色材の量が当該範囲であると、所望の色の画像が得られやすくなる。一方で、インクの粘度が過度に高まり過ぎず、塗布手段からインクを塗付しやすくなる。
【0059】
なお、上記色材が顔料である場合には、インクは、顔料と共に、顔料分散剤を含んでいてもよい。顔料分散剤の例には、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキル燐酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、およびステアリルアミンアセテート等が含まれる。顔料分散剤の市販品の例には、Avecia社のSolsperseシリーズや、味の素ファインテクノ社のPBシリーズ等が含まれる。
【0060】
インクは、必要に応じて分散助剤をさらに含んでいてもよい。分散助剤は、顔料に応じて定義選択される。
顔料分散剤および分散助剤の合計量は、顔料に対して1~50質量%が好ましい。
【0061】
(光開始剤)
インクは、通常、光開始剤(光重合開始剤)を含む。インクは光開始剤を一種のみ含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。上述の活性光線硬化型化合物が、ラジカル重合性化合物であるときは光開始剤として、ラジカル重合開始剤を含むことが好ましく、活性光線硬化型化合物がカチオン重合性化合物であるときは、光開始剤として光酸発生剤を含むことが好ましい。
【0062】
ラジカル重合開始剤には、分子内結合開裂型と分子内水素引き抜き型とがあり、いずれであってもよい。
【0063】
分子内結合開裂型の光開始剤の例には、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン等のアセトフェノン系;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾイン類;2,4,6-トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキシド等のアシルホスフィンオキシド系;ベンジルおよびメチルフェニルグリオキシエステル等が含まれる。
【0064】
分子内水素引き抜き型の光開始剤の例には、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル-4-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチル-ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系;2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系;ミヒラーケトン、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノン等のアミノベンゾフェノン系;10-ブチル-2-クロロアクリドン、2-エチルアンスラキノン、9,10-フェナンスレンキノン、カンファーキノン等が含まれる。
【0065】
一方、光酸発生剤の例には、化学増幅型フォトレジストや光カチオン重合に利用される化合物が用いられる(有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメージング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)、187~192ページ参照)。
【0066】
インクにおける光開始剤の量は、活性光線や光重合性化合物の種類などにもよるが、0.01質量%以上10質量%以下が好ましく、0.1質量%以上8質量%以下がより好ましい。光開始剤の量が当該範囲であると、インクの硬化性が良好になり、効率よく印刷物を製造可能となる。
【0067】
(その他の化合物)
インクは、必要に応じて光重合開始助剤や重合禁止剤等をさらに含んでいてもよい。
光重合開始助剤の例には、第3級アミン化合物が含まれ、芳香族第3級アミン化合物が好ましい。
【0068】
芳香族第3級アミン化合物の例には、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ジメチルアミノ-p-安息香酸エチルエステル、N,N-ジメチルアミノ-p-安息香酸イソアミルエチルエステル、N,N-ジヒドロキシエチルアニリン、トリエチルアミンおよびN,N-ジメチルヘキシルアミン等が含まれる。なかでも、N,N-ジメチルアミノ-p-安息香酸エチルエステル、N,N-ジメチルアミノ-p-安息香酸イソアミルエチルエステルが好ましい。インクは、これらを一種のみ含んでいてもよく、二種類以上含んでいてもよい。
【0069】
重合禁止剤の例には、(アルキル)フェノール、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、p-メトキシフェノール、t-ブチルカテコール、t-ブチルハイドロキノン、ピロガロール、1,1-ピクリルヒドラジル、フェノチアジン、p-ベンゾキノン、ニトロソベンゼン、2,5-ジ-t-ブチル-p-ベンゾキノン、ジチオベンゾイルジスルフィド、ピクリン酸、クペロン、アルミニウムN-ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、トリ-p-ニトロフェニルメチル、N-(3-オキシアニリノ-1,3-ジメチルブチリデン)アニリンオキシド、ジブチルクレゾール、シクロヘキサノンオキシムクレゾール、グアヤコール、o-イソプロピルフェノール、ブチラルドキシム、メチルエチルケトキシム、シクロヘキサノンオキシム等が含まれる。
【0070】
また、インクは、各種添加剤や他の樹脂等をさらに含んでいてもよい。添加剤の例には、界面活性剤、増感助剤、レベリング添加剤、マット剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、抗菌剤、インクの保存安定性を高めるための塩基性化合物等が含まれる。塩基性化合物の例には、塩基性アルカリ金属化合物、塩基性アルカリ土類金属化合物、アミン等の塩基性有機化合物等が含まれる。他の樹脂の例には、硬化膜の物性を調整するための樹脂などが含まれ、例えばポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、およびワックス類等が含まれる。
【0071】
(インクの調製方法)
上述のインクの調製方法は特に制限されず、活性光線硬化型化合物、色材、ゲル化剤、および光開始剤に、必要に応じてその他の成分を、混合して調製する。このとき、必要に応じて加熱してもよい。また、これらは全てを一度に混合してもよいが、一部の活性光線硬化型化合物に色材(特に顔料)を分散させた顔料分散剤を用意し、顔料分散材と、他の成分と混合してもよい。得られたインクは、所定のフィルターで濾過することが好ましい。
【0072】
なお、色材として顔料を使用する場合、その分散は、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、およびペイントシェーカー等により行うことが好ましい。顔料の分散は、顔料、分散剤、および分散媒体の選定、分散条件、およびろ過条件等によって、調整される。
【0073】
(2)印刷物の製造方法および画像形成装置
上述のように、本実施形態の印刷物の製造方法は、上述のインクを記録媒体の第1面に塗付し、硬化させて第1画像を形成する工程(第1画像形成工程)と、第1画像を形成した記録媒体を搬送する工程(搬送工程)と、を含んでいればよい。必要に応じて、上述のインクを記録媒体の第2面に塗付し、硬化させて第2画像を形成する工程(第2画像形成工程)や、第1画像および/または第2画像上にオーバーコート層を形成する工程(オーバーコート層形成工程)をさらに含んでいてもよい。
【0074】
なお、これらの各工程の順序は画像形成装置の構成に応じて適宜選択される。片面印刷の場合には、(i)第1画像形成工程/搬送工程をこの順に行ってもよく、または(ii)第1画像形成工程/搬送工程/オーバーコート層をこの順に行ってもよい。
【0075】
一方、両面印刷の場合には、様々な順序がある。例えば以下の順に行うことができるが、これらに限定されない。
(a)第1画像形成工程/搬送工程/第2画像形成工程/搬送工程
(b)第1画像形成工程/搬送工程/第2画像形成工程/搬送工程/オーバーコート層形成工程
(c)第1画像形成工程/搬送工程/オーバーコート層形成工程/搬送工程/第2画像形成工程/搬送工程/オーバーコート層形成工程
以下、各工程について説明する。
【0076】
(第1画像形成工程および第2画像形成工程)
第1画像形成工程は記録媒体の第1面側に第1画像を形成する工程であり、第2画像形成工程は、記録媒体の第2面側に第2画像を形成する工程である。これらは、記録媒体のいずれの面に画像を形成するか、という点以外は略同一の工程である。
【0077】
第1画像形成工程および第2画像形成工程では、それぞれ、記録媒体の所望の領域に、上述のインクを塗付手段によって塗布し、硬化手段によって硬化させる。
【0078】
本実施形態の印刷物の製造方法に使用可能な記録媒体の種類は特に制限されず、その例には、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレートおよびポリブタジエンテレフタレート等を含むプラスチックで構成される非吸収性の記録媒体、金属類およびガラス等の非吸収性の無機記録媒体、ならびに紙類等(例えば印刷用コート紙および印刷用コート紙B等)が含まれる。
【0079】
また、上述のインクを塗布する方法は特に制限されない。一例としてインクジェット法によるインクの塗布が挙げられる。インクジェット法で、上記インクを塗付する場合、インクジェット記録ヘッド内のインクの温度を、インクのゲル化温度+10℃以上とすることが好ましい。これにより、インクジェット記録ヘッド内やインクジェットノズル表面でインクがゲル化し難く、インク液滴が安定して吐出される。一方、インクジェット記録ヘッド内でのインクの温度は、ゲル化温度+30℃以下が好ましい。これにより、インク中の各成分の劣化を抑制できる。
【0080】
また、インクジェット記録ヘッドの各インクジェットノズルから吐出する1滴あたりの液滴量は、画像の解像度にもよるが、0.5~10plが好ましく、高精細の画像を形成するためには、0.5~2.5plがより好ましい。このような液滴量でインクを塗付することで、高精細な画像を安定して形成できる
【0081】
一方、上記インクの硬化方法は、インクの種類や組成に応じて適宜選択されるが、活性光線の照射が好ましい。照射する活性光線の種類や波長は、光開始剤の種類等に応じて適宜選択されるが、例えば波長365nm以上405nm以下の紫外光が好ましい。
【0082】
さらに、各画像に照射する活性光線の量は、インクの組成等に応じて適宜選択されるが、100mJ/cm以上2000mJ/cm以下が好ましく、200mJ/cm以上1000mJ/cm以下がより好ましい。このような活性光線の照射量とすると、素早くインクを硬化させて、効率よく印刷物を製造できる。また、当該照射量とすることで、未硬化成分の量を低減でき、形成したが画像と画像形成装置の搬送手段とが接触しても、各種成分が搬送手段に付着し難くなる。
【0083】
なお、第1画像形成工程にて、記録媒体の第1面に照射する活性光線の積算光量に対する、第2画像形成工程にて、記録媒体の第2面に照射する活性光線の積算光量、すなわち(第2面に照射する活性光線の積算光量/第2面に照射する活性光線の積算光量)×100は、80%以上120%以下が好ましく、90%以上110%以下がより好ましく、同一であることが特に好ましい。このような範囲であると、第1画像形成工程および第2画像形成工程を行う際に、活性光線照射手段の設定を大きく変更する必要がなく、効率よく印刷物を製造できる。
【0084】
(オーバーコート層形成工程)
オーバーコート層形成工程は、オーバーコートインクを、上述の第1画像または第2画像上に塗布し、硬化させる工程であればよく、いずれか一方の面にのみオーバーコート層を形成してもよく、両方の面にオーバーコート層を形成してもよい。上述のように、オーバーコート層形成工程を行うタイミングは、画像形成装置の構成等に応じて適宜選択される。
【0085】
ここで、オーバーコート層形成工程で塗布するオーバーコートインクは、その用途に応じて適宜選択される。オーバーコートインクは、クリアインクであってもよく、着色インクであってもよい。オーバーコートインクの例には、上述の活性構成硬化型インクと同様の活性光線硬化型化合物や光開始剤を含むインクが含まれる。ただし、このとき、オーバーコートインク中のゲル化剤の量は、5質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましい。ゲル化剤の量が当該範囲であると、オーバーコートインクの塗布時にレベリングしやすくなり、散乱により光沢性が良好なオーバーコート層が得られる。一方、オーバーコートインクは、市販のニスであってもよい。
【0086】
オーバーコートインクの塗布方法は、オーバーコートインクの種類や、塗布面積等に応じて適宜選択される。例えばインクジェット法であってもよいが、バーコート法、スプレーコート法、カーテンコート法、ロールコート法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法等であってもよい。
【0087】
また、オーバーコートインクの硬化方法は、オーバーコートインクの種類に応じて適宜選択される。オーバーコートインクが活性光線硬化型化合物を含む場合には、活性光線の照射が好ましい。一方、オーバーコートインクが、溶剤等を含む溶剤インクや水を含む水系インクである場合等には、自然乾燥または加熱によって硬化させることができる。
【0088】
(搬送工程)
搬送工程は、第1記録媒体形成工程の後に、記録媒体を搬送する工程であって、記録媒体と画像形成装置の搬送手段とが接触する工程である。上述のように、搬送工程は、第1画像形成工程後、複数回に亘って行ってもよい。
【0089】
記録媒体を搬送する方法は特に制限されず、記録媒体を支持しながら、搬送可能な方法であれば特に制限されず、図1図2に示すように、各種ローラ(支持ローラ112、搬送ローラ121および122、ならびに反転ローラ130等)であってもよく、ベルトコンベヤ等であってもよい。
【0090】
(3)画像形成装置
画像形成装置の構成は特に制限されず、例えば図1に示すように、記録媒体を供給するための記録媒体供給手段10、上述のインクを塗布するための塗布手段20、インクを硬化させるための硬化手段30、記録媒体を搬送するための第1の搬送手段110(給紙ローラ111、支持ローラ112)、第2の搬送手段(搬送ローラ121、122)および第3の搬送手段(反転ローラ)130等を有していればよい。さらに、オーバーコート層を形成するための塗布手段(図示せず)や硬化手段(図示せず)をさらに有していてもよい。
【0091】
上記インクを塗付するための塗布手段20は、公知のインクジェット装置と同様の構成とすることができる。例えば、インクを貯留するインクタンクと、各色インクを塗布するための複数のインクジェット記録ヘッドを収容するヘッドキャリッジと、インクタンクおよびヘッドキャリッジを繋ぐインク流路と、を有する構成とすることができる。
【0092】
また、硬化手段30は、記録媒体の所望の位置に活性光線を照射可能な構成であれば特に制限されず、例えば記録媒体の幅方向全てに活性光線を照射できるように、1つまたは複数の光源を配置した手段とすることができる。光源の種類は、所望の活性光線の種類に応じて選択されるが、インクの塗膜に熱をかけないように、熱を発生させ難い光源、例えばLED光源等が好ましい。
【0093】
また、各搬送手段110、120、130は特に制限されず、例えば公知の画像形成装置が有する各種ローラやコンベヤ等と同様にすることができる。
【実施例0094】
以下、本発明の具体的な実施例を比較例とともに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例中において「部」および「%」は、特に断りのない限り「質量部」および「質量%」を意味する。
【0095】
1.活性光線硬化型インクの調製
(1)材料の準備
実施例および比較例には、以下の成分を使用した。
【0096】
(活性光線硬化型化合物)
活性光線硬化型化合物としては、下記表1に示すように、複数の活性硬化型モノマーを組み合わせた組成物(モノマー組成物)を使用した。表1には、各モノマー組成物のSP値を併せて示す。また、表1における各成分の量は、質量部である。
【0097】
【表1】
【0098】
(ゲル化剤)
ゲル化剤としては、下記表2に示す化合物を使用した。表2には、各化合物の直鎖状構造中の炭素数、および各化合物のSP値を併せて示す。
【表2】
【0099】
(色材)
シアン顔料Pigment Blue 15:4(大日精化社製、クロモファインブルー6332JC)
【0100】
(その他)
光開始剤(フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(BASF社製「IRGACURE 819」))
重合禁止剤(Irgastab UV10(チバスペシャリティケミカル社製)
【0101】
(2)活性光線硬化型インクの調製
下記表3に示す組成比で各化合物を混合し、混合液を80℃で加熱攪拌しゾルゲル相転移する39種の活性光線硬化型インクを調製した。得られた活性光線硬化型インクを加熱下、ADVANTEC社製テフロン(登録商標)3μmメンブランフィルターで濾過した。なお、表3には、下記式(1)で求められる活性光線硬化型化合物全体のSP値と、ゲル化剤のSP値とのSP値距離Rも記載した。
R={4*(dDm-dDg)+(dPm-dPg)+(dHm-dHg)0.5・・・式(1)
活性光線硬化物全体の分散項dDm、ゲル化剤の分散項dDg、活性光線硬化物全体の分極項dPm、ゲル化剤の分極項dPg、活性光線硬化物全体の水素結合項dHm、およびゲル化剤の水素結合項dHgは、それぞれ公知文献1(HANSEN SOLUBILITY PARAMETERS A User’s Handbook Second Edition CRC Press Taylor & Francis Groopの第345頁-第510頁)やソフト(Hansen Solubility Parameter in Practice(HSPiP v5.4.01))から算出した。
【0102】
(3)オーバーコートインクの準備
オーバーコートインクとして、東洋インキ社製FDクリアコートTDPを準備した。
【0103】
2.印刷物の製造
(実施例1)
表3に示す組成の活性光線硬化型インクを、図2に示すインクジェット記録装置の塗布手段20のインクタンクに装填した。
そして、記録媒体1(A4サイズのコート紙(OKトップコート;王子製紙社製))の第1面に塗布手段20のピエゾ型インクジェットノズルからインクを塗付し、第1の塗膜を形成した。その後、硬化手段30から波長395nmの光を、第1の塗膜(第1面)に対する積算光量が400mJ/cmとなるように照射した。そして、当該記録媒体1を反転ローラ130により反転させた。そして、当該記録媒体1の第2面に、塗布手段20からインクを塗付し硬化手段30から波長395nmの光を、第2の塗膜(第2面)に対する積算光量が400mJ/cmとなるように照射した。そして、第2の塗膜形成後の記録媒体1を搬送ローラ121、122で挟持し、排出した。第1の塗膜および第2の塗膜は、それぞれべた画像とした。このとき、搬送ローラ121、122がそれぞれ第2画像および第1画像と接触した。また、印刷スピード(記録媒体の移動速度)は、600mm/sとした。
【0104】
その後、第1面および第2面にそれぞれ画像を形成した記録媒体の、第1面および第2面に、それぞれ上述のオーバーコートインクを塗布し、硬化(固化)させた。
【0105】
(実施例2~33、および比較例1~6)
活性光線硬化型インクの組成や、印刷条件(第1面および第2面の積算光量差)を表3に示すように変更した以外は、実施例1と同様に印刷物を製造した。
【0106】
3.評価
上記印刷物の製造により得られた印刷物の光沢度およびオーバーコート層の密着性を、以下の基準で評価した。結果を表3に示す。さらに、実施例5および20~24の印刷物について、それぞれカール評価を行った。その結果を表4に示す。
【0107】
(光沢度評価)
光沢度は、オーバーコート層形成前の第1画像および第2画像について、日本電色工業社製 PG-2Mで60°評価した。評価基準は以下の通りである。
光沢度差:第1画像面の光沢度/第2画像面の光沢度
◎:光沢度差0.96以上1.04以下
〇:光沢度差0.90以上0.95以下、1.05以上1.10以下
△:光沢度差0.85以上0.89以下、1.11以上1.15以下
×:光沢度差0.80以上0.84以下、または1.16以上1.20以下
××::光沢度差0.79以下、または1.21以上
【0108】
(オーバーコート層密着評価)
オーバーコート層形成後の第1画像および第2画像の表面を1mm幅で25マスの格子状にクロスカットした。そして、格子状のクロスカット部分の上にセロハン製粘着テープ(ニチバン社製LP-24)を粘着させ、直ちにテープを垂直に引き剥がした。テープの貼着によって剥離した面積を特定し、評価した。評価基準は以下の通りである。
◎:剥離枚数0枚
〇:剥離枚数1~3枚
△:剥離枚数4~6枚
×:剥離枚数7枚以上
【0109】
(カール評価(反り評価))
210mm(長さ方向)×105mm(幅方向)の王子製紙社製OKトップコート(128g)に対し、つき量100%にて印字し、平面視したときの幅方向の端部から端部までの距離を測定した。カールした場合には平面視したときの上記距離が短くなる。評価基準は以下の通りである。
〇:端部から端部までの距離が104mm以上
△:端部から端部までの距離が103mm以上104mm未満
×:端部から端部までの距離が103mm未満
【0110】
【表3】
【0111】
【表4】
【0112】
上記表3に示すように、活性光線硬化型化合物と、比較的短い(ケトン系化合物の場合は10以上16以下、エステル系化合物の場合は12以上18以下の)直鎖状構造を含むゲル化剤との組み合わせたインクを用いる場合、第1画像および第2画像と搬送手段とが接触しても、光沢度差が生じ難かった(実施例1~33)。上記ゲル化剤を使用することで、ゲル化剤がインクの硬化物各画像と搬送手段とが接触したとしても、ゲル化剤が表面に析出し難く、搬送手段に付着し難かったと考えられる。さらに、表面にゲル化剤が析出し難いことから、オーバーコート層の接着性が良好になったと考えられる(実施例1~33)。なお、インク中のゲル化剤の量を多くしても、光沢度差やオーバーコート層の密着性低下が生じ難かった。
【0113】
これに対し、比較的長い直鎖状構造を含むゲル化剤を含むインクを用いた印刷物では、光沢度差が生じやすかった(例えば比較例4)。一部が搬送手段に付着してしまったと考えられる。さらに、ゲル化剤と活性光線硬化性化合物との組み合わせによっては、オーバーコート層の密着性が非常に低かった(比較例1~3、5、および6)。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明の印刷物の製造方法によれば、活性光線硬化型インクの硬化物が印刷装置の搬送手段と接触しても、当該硬化物中の成分が、搬送手段に付着し難い。したがって、高品質な印刷物を製造可能である。本発明によれば、活性光線硬化型インクを用いた画像形成方法のさらなる普及に寄与することが期待される。
【符号の説明】
【0115】
1 記録媒体
100 画像形成装置
10 記録媒体供給手段
20 塗布手段
30 硬化手段
110 第1の搬送手段
111 給紙ローラ
112 支持ローラ
120第2の搬送手段
121、122 搬送ローラ
130 第3の搬送手段(反転ローラ)
図1
図2