(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141588
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】金属配線と無機酸化物配線との接合構造
(51)【国際特許分類】
H05K 1/02 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
H05K1/02 J
H05K1/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053322
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 順一
(72)【発明者】
【氏名】大澤 崇泰
【テーマコード(参考)】
5E338
【Fターム(参考)】
5E338CD12
5E338EE01
5E338EE27
(57)【要約】
【課題】高温に加熱された場合にも、無機酸化物配線が断線しにくい金属配線と無機酸化物配線との接合構造を提供すること。
【解決手段】接着剤層20上に配置された金属配線30とこの金属配線上の一部及びその周囲の前記接着剤層上の一部に跨って配置された無機酸化物配線40との接合構造であって、前記金属配線30が長手方向と短手方向とを有する細長い平面形状を有しており、この金属配線と前記無機酸化物配線とが複数の接合位置40
0で接合されており、かつ、これら複数の接合位置を、前記金属配線の長手方向に沿って並べる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着剤層上に配置された金属配線とこの金属配線上の一部及びその周囲の前記接着剤層上の一部に跨って配置された無機酸化物配線との接合構造であって、
前記金属配線が長手方向と短手方向とを有する細長い平面形状を有しており、
この金属配線と前記無機酸化物配線とが複数の接合位置で接合されており、かつ、これら複数の接合位置が、前記金属配線の長手方向に沿って並んでいることを特徴とする金属配線と無機酸化物配線との接合構造。
【請求項2】
接着剤層上に配置された金属配線とこの金属配線上の一部及びその周囲の前記接着剤層上の一部に跨って配置された無機酸化物配線との接合構造であって、
前記金属配線が長手方向と短手方向とを有する細長い平面形状を有しており、
この金属配線と前記無機酸化物配線との接合位置が、前記金属配線の長手方向に沿って幅広に構成されていることを特徴とする金属配線と無機酸化物配線との接合構造。
【請求項3】
前記接合位置の両端の間に、前記金属配線を加熱したときこの金属配線にかかる応力が極小となる位置が含まれることを特徴とする請求項1又は2に記載の接合構造。
【請求項4】
前記接合位置が、前記金属配線の長手方向の端部から、500μm以上離れていることを特徴とする請求項1又は2に記載の接合構造。
【請求項5】
前記接合位置の両端の間の長さが20μm以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の接合構造。
【請求項6】
前記金属配線の厚みが1~10μmであり、一方、前記無機酸化物配線の厚みがこれより薄く、10~1000nmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属配線と無機酸化物配線との接合構造に関する。より詳しくは、走査アンテナの金属配線と無機酸化物配線との接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ビームの放射方向を変える機能を有するアンテナ(走査アンテナ)として、アンテナ単位を備えるフェイズドアレイアンテナが知られている
フェイズドアレイアンテナには、位相器(フェイズシフター)が必要である。フェイズドアレイアンテナを低コストで製造可能とするために、液晶を用いた位相器が実用化されつつある。
【0003】
特許文献1には、低抵抗の金属配線及び高抵抗の無機酸化物配線を備える、液晶表示装置の技術を利用した走査アンテナが記載されている。低抵抗の金属配線は周囲を比較的軟らかい接着剤層に囲まれており、高抵抗の無機酸化物配線はこの金属配線上の一部及び接着剤層上の一部に跨って設けられており、位相器は、異方性導電膜を介して、接着剤層上に配置された高抵抗の前記無機酸化物配線に物理的かつ電気的に接続される。
【0004】
図3はこのような金属配線と無機酸化物配線との位置関係を示すもので、
図3(a)はその説明用平面図、
図3(b)はその要部説明用断面図である。
【0005】
これらの図から分るように、基材10の片面に接着剤層20が積層され、金属配線30は、この接着剤層20上に配置され、この接着剤層20によって基材10に固定されている。
図3(a)から分るように、金属配線30は長手方向と短手方向とを有する細長い平面形状を有しており、このため、表面に露出した接着剤層20によりその周囲を囲まれている。なお、金属配線30は低抵抗であることが必要であり、このため、例えば、電解鍍金法やスパッタリングによって形成された厚み1~10μmの金属箔を用いることが多い。
【0006】
次に、無機酸化物配線40は、この金属配線30上の一部及びその周囲の前記接着剤層20上の一部に跨って配置されており、金属配線30の上に位置する部分を接合位置として、これら金属配線30と無機酸化物配線40とが物理的かつ電気的に接続されている。無機酸化物配線40は高抵抗であることが必要であり、このため、通常、ITO等の無機酸化物の蒸着膜等が使用されている。また、その厚みも金属配線30の厚みより薄く、10~1000nm程度である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、走査アンテナの製造工程の中には、これら金属配線30と無機酸化物配線40の両方を形成した後に、これらを加熱する工程を要することがある。例えば、ネガ型フォトレジストを使用してフォトスペーサを形成する工程では、パターニングされたフォトレジストを230℃程度の高温で焼成して完全硬化させる工程がある。また、これら金属配線30と無機酸化物配線40とを保護するため、これらの上にSiN等の無機シリコーン化合物を成膜してその保護膜を形成する場合でも、その成膜時に200~250℃の高温に加熱することがある。
【0009】
このように高温に加熱すると、
図4(a)及び
図4(b)に示すように、金属配線30と接着剤層20との境界位置で、無機酸化物配線40が断線してしまうことが少なくなかった。なお、
図4(a)及び
図4(b)において、40xは無機酸化物配線40の断線位置を示している。その原因は、接着剤層20、金属配線30及び無機酸化物配線40の熱膨張係数やヤング率の差異に起因して、金属配線30と接着剤層20との境界位置で熱応力が生じることにあると推測できる。また、金属配線30の厚みが1~10μmであるのに対し、無機酸化物配線40の厚みはこれより薄く、10~1000nm程度であること、無機酸化物配線40の材質が脆いこと、無機酸化物配線40の幅が細いこと等も断線に関連していると推測できる。
【0010】
本発明は以上のような事情の下でなされたもので、高温に加熱された場合にも、無機酸化物配線が断線しにくい金属配線と無機酸化物配線との接合構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような技術的背景の下で、本発明の発明者等は、
図3のように接着剤層上に配置された細長い平面形状の金属配線に熱を加えた場合の応力についてシミュレーションした。この結果、まず、金属配線の長手方向に沿って延びる側辺の端部30
0では、その近辺で応力が大きくなり、このため、この位置に無機酸化物配線を配置すると断線し易いことが分った。
【0012】
一方、端部300から離れると応力は小さくなり、この位置に無機酸化物配線を配置しても断線は生じにくい。もっとも、端部300から離れるほど応力が小さくなるのではなく、一定の距離に応力が極小となる部位があるが、その位置は、金属配線の形状や寸法、金属配線の熱膨張係数、接着剤層の熱膨張係数、熱負荷のかかり具合等によって変動する。一般に、極小となる部位は、端部300から500μm以上離れた位置にある。
【0013】
本発明はこのような研究成果をもとになされたもので、本発明の第一の態様は、接着剤層上に配置された金属配線とこの金属配線上の一部及びその周囲の前記接着剤層上の一部に跨って配置された無機酸化物配線との接合構造であって、
前記金属配線が長手方向と短手方向とを有する細長い平面形状を有しており、
この金属配線と前記無機酸化物配線とが複数の接合位置で接合されており、かつ、これら複数の接合位置が、前記金属配線の長手方向に沿って並んでいることを特徴とする金属配線と無機酸化物配線との接合構造である。
【0014】
この複数の接合位置は、その両端の接合位置の間に、前記金属配線を加熱したときこの金属配線にかかる応力が極小となる位置が含まれることが望ましい。前記接合位置が、前記金属配線の長手方向の端部から、500μm以上離れていればよい。また、両端の前記接合位置の間の長さは20μm以上であることが望ましい。
【0015】
なお、複数のこれら接合位置の代わりに、これら複数のこれら接合位置のすべてを網羅して含むような幅広の接合位置を設けてもよい。
【0016】
本発明の第二の態様は、このような幅広の接合位置を設けたもので、接着剤層上に配置された金属配線とこの金属配線上の一部及びその周囲の前記接着剤層上の一部に跨って配置された無機酸化物配線との接合構造であって、
前記金属配線が長手方向と短手方向とを有する細長い平面形状を有しており、
この金属配線と前記無機酸化物配線との接合位置が、前記金属配線の長手方向に沿って
幅広に構成されていることを特徴とする金属配線と無機酸化物配線との接合構造である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、高温に加熱された場合にも、無機酸化物配線が断線しにくい金属配線と無機酸化物配線との接合構造を得ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は本発明の第1の実施形態に係る金属配線と無機酸化物配線との位置関係を説明するための説明用平面図である。
【
図2】
図2は本発明の第2の実施形態に係る金属配線と無機酸化物配線との位置関係を説明するための説明用平面図である。
【
図3】
図3は従来の走査アンテナに係り、金属配線と無機酸化物配線との位置関係を示すもので、
図3(a)はその説明用平面図、
図3(b)はその要部説明用断面図である。
【
図4】
図4は従来の走査アンテナに係り、無機酸化物配線が断線した場合の金属配線と無機酸化物配線との位置関係を示すもので、
図4(a)はその説明用平面図、
図4(b)はその要部説明用断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態に係る走査アンテナAにおいては、従来の走査アンテナと同様に、基材10の片面に接着剤層20が積層され、低抵抗の金属配線30が、この接着剤層20上に配置され、この接着剤層20によって基材10に固定されている。金属配線30は長手方向と短手方向とを有する細長い平面形状を有しており、このため、表面に露出した接着剤層20によりその周囲を囲まれている。また、無機酸化物配線40も、従来の走査アンテナと同様に、この金属配線30上の一部及びその周囲の前記接着剤層20上の一部に跨って配置されており、金属配線30の上に位置する部分を接合位置として、これら金属配線30と無機酸化物配線40とが物理的かつ電気的に接続されている。本発明の第1の実施形態に係る走査アンテナAと従来の走査アンテナとの相違は、金属配線と無機酸化物配線との接合構造にあり、そのほかの点においては、両者は同様である。
【0020】
そこで、本発明の第1の実施形態に係る金属配線30と無機酸化物配線40との位置関係を説明するため、
図1にその説明用平面図を示す。
【0021】
この
図1から分るように、無機酸化物配線40は、その先端が枝状に分岐しており、その分枝41の先端を接合位置40
0として、物理的かつ電気的に金属配線30に接続されている。このため、その分枝41の数と接合位置40
0の数は同一である。なお、これら分枝41及び接合位置40
0の数は2以上であればよいが、10本あるいはそれ以上の本数であってもよい。
【0022】
複数のこれら接合位置400は、金属配線30の長手方向に沿って並んでいる。このため、無機酸化物配線40は、金属配線30の長手方向に直交する方向、言い換えると、短手方向に平行に延びている。
【0023】
ところで、複数のこれら接合位置400の両端の間に、前記金属配線30を加熱したときこの金属配線30にかかる応力が極小となる位置が含まれることが望ましい。このように熱応力が極小となる位置に接合位置400が存在する場合、ここの熱応力が極小となる接合位置400では無機酸化物配線40がもっとも断線し難いものとなる。そして、複数の接合位置400の両端の間に熱応力が極小となる位置が含まれる場合、これら複数の接合位置400の中に、このように断線し難い接合位置400が存在するからである。そし
て、すべての接合位置400は無機酸化物配線40につながっているから、金属配線30と無機酸化物配線40とは、高温に加熱された場合にも断線しにくいのである。
【0024】
なお、金属配線30を加熱したときこの金属配線30にかかる応力が極小となる位置は、実験によって求めることもできるが、シミュレーションによって算出したものであってもよい。一般に、その位置は、金属配線30の長手方向の端部300から、500μm以上離れた位置である。このため、前記複数の接合位置400のうち、金属配線30の長手方向の端部300にもっとも近い接合位置400を、前記金属配線30の長手方向の端部300から、500μm以上離れた位置に配置することが望ましい。図中、αは、金属配線30の長手方向端部300とこれにもっとも近い接合位置400との距離を示している。
【0025】
また、同じ理由から、金属配線30の長手方向端部300にもっとも近い接合位置400ともっとも遠い接合位置400との間の長さβは20μm以上であることが望ましい。
【0026】
(基材10)
基材10は絶縁性の材料から成る。基材10の典型的な材質はガラスであるが、各種のプラスチックフィルムを使用することにより、基材10に可撓性を付与することもできる。本実施形態において、基材10の材質はガラスである。
【0027】
接着剤層20は、基材10上に設けられる。接着剤層20は、公知の接着剤で形成された層である。この接着剤層20は、一般に、HB~2Hの鉛筆硬度を有する比較的軟らかいものである。接着剤層20を金属配線30との接着するため接着剤層20として比較的軟らかいものを使用する必要があり、硬度の高い接着剤層20を使用することは難しい。
【0028】
金属配線30は、接着剤層20上の一部に設けられる。
【0029】
金属配線30は、長手方向と短手方向とを有する細長い平面形状に形成されている。この第1の実施形態においては、途中で折り返した直線状である。
【0030】
金属配線30は、接着剤層20を介して基材10に貼り合わされている。走査アンテナAにおいて、金属配線30は、低抵抗配線の役割を担う。
【0031】
この第1の実施形態において、金属配線30は銅製である。金属配線30は、銀、アルミニウム等の比抵抗が小さい金属によって構成されても良い。
【0032】
低抵抗化の観点から、金属配線30は、厚膜であることが望ましく、金属配線30の厚さは例えば1~10μmとすることができる。
【0033】
無機酸化物配線40は、金属配線30上の一部及びその周囲の前記接着剤層20上の一部に跨って設けられる。これにより、金属配線30の上に位置する部分を接合位置400として、金属配線30と無機酸化物配線40とが接続される。走査アンテナAにおいて、無機酸化物配線40は、高抵抗配線の役割を担う。
【0034】
無機酸化物配線40は無機酸化物製である。例えば、比抵抗が大きい酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)などの比抵抗が大きい無機酸化物によって構成することができる。高抵抗化の観点から、無機酸化物配線40は薄膜であることが望ましく、その厚さは、例えば、10nm~1000nmとすることができる。
【0035】
上述の構成を有する本実施形態の走査アンテナAの製造方法の一例について説明する。
【0036】
本実施形態の走査アンテナ1の製造方法は、サブ第1工程と、第1工程と、第2工程と、第3工程と、第4工程とを有する。
【0037】
サブ第1工程は、金属箔の一方側を向く面全体に、液状の接着剤を塗布して接着剤層20を形成する工程である。接着剤層20は、金属箔の一方側を向く面上にロールコート法を用いて形成される。
【0038】
金属箔はシート状に形成された銅箔である。金属箔は、スパッタリング又は電解鍍金法によって形成できる。
【0039】
第1工程は、基材10上に接着剤層20を介して金属箔を貼り合わせる工程である。第1工程では、まず、金属箔の一方側を向く面全体に形成された接着剤層20と基材10とを接触させる。次に、金属箔と基材10とを所定の圧力で圧着させつつ、接着剤層20を乾燥させる。これにより、接着剤層20を介して、金属箔と基材10とを貼り合わせることができる。
【0040】
上述のように、サブ第1工程において金属箔の一方側を向く面全体に接着剤層20を形成した後に、第1工程において、金属箔と基材10とを貼り合わせているが、金属箔と基材10とを貼り合わせる手順はこれに限定されない。例えば、サブ第1工程において、基材10の他方側を向く面全体に接着剤を塗布して接着剤層20を形成し、第1工程において、金属箔を接着剤層20と接触させた後に、上述の圧着及び乾燥を行って、金属箔と基材10とを貼り合わせても良い。この場合、接着剤層20は、基材10の他方側を向く面上にダイコート法及びスリット&スピンコート法等の塗布方法によって形成される。
【0041】
第2工程は、金属箔にパターンニングを行い、接着剤層20上の一部に金属配線30を形成する工程である。金属箔のパターンニングは、フォトリソグラフィによって行われる。
【0042】
第2工程では、まず、金属箔上にフォトレジスト層を形成する。フォトレジストは、一般的なスピンコーターによって金属箔上に塗布され、フォトレジスト層が形成される。
【0043】
次に、フォトレジスト層のプレベークを行う。例えば、チャンバー内において減圧下でプレベークを行って、フォトレジスト層を乾燥させる。これにより、フォトレジスト層の乾燥時間を短縮できる。
【0044】
次に、金属配線30に対応したパターン形状が描画されたフォトマスクを介して、フォトレジスト層に紫外光を照射して、フォトレジスト層を露光する。
【0045】
次に、露光後のフォトレジスト層の現像を行う。現像液はポジ現像液を用いることができる。現像方法としてはスプレー現像法でよい。
【0046】
次に、金属箔のエッチングを行い、金属箔のうちフォトレジスト層が除去された部分を除去し、金属箔を金属配線30に対応したパターン形状にパターンニングする。エッチング液は、過酸化水素水、硫酸及び水を混合した混合水溶液等を用いることができる。
【0047】
次に、金属配線30上に残存するフォトレジスト層の剥膜を行う。剥膜液は、ケイ酸塩水溶液を用いことができる。そして、この金属配線30のポストベークを行う。本実施形態では、窒素雰囲気のチャンバー内においてポストベークを行う。ベーク温度は、250℃とした。ベーク時間は、90分とした。金属配線30のポストベークが終了すると、第2工程が終了し、接着剤層20上の一部に前記パターン形状の金属配線30が形成される。
【0048】
第3工程は、金属配線30上及び接着剤層20上に無機酸化物層を形成する工程である。無機酸化物層は、スパッタリングによって、金属配線30上及び接着剤層20上に、前記無機酸化物を積層させることにより形成される。第3工程が終了すると、金属配線30上及び接着剤層20上に無機酸化物層が形成される。
【0049】
第4工程は、無機酸化物層にパターンニングを行い、無機酸化物配線40を形成する工程である。無機酸化物配線40のパターンニングは、フォトリソグラフィによって行なうことができる。
【0050】
第4工程では、まず、無機酸化物層上にフォトレジスト層を形成する。フォトレジストとしては、ポジ型フォトレジストであるノボラック樹脂を用いることが可能である。
【0051】
次に、フォトレジスト層のプレベークを行い、無機酸化物配線40に対応したパターン形状が描画されたフォトマスクを介して、フォトレジスト層に紫外光を照射して、フォトレジスト層を露光する。
【0052】
次に、露光後のフォトレジスト層の現像を行う。現像液はポジ現像液を用いることができ、現像方法としてはスプレー現像法を用いることができる。
【0053】
次に、無機酸化物層のエッチングを行い、無機酸化物層のうちフォトレジスト層が除去された部分を除去し、無機酸化物層を無機酸化物配線40に対応したパターン形状にパターンニングする。エッチング液としてはシュウ酸水溶液を用いることができる。
【0054】
次に、無機酸化物配線40上に残存するフォトレジスト層の剥膜を行う。剥膜液は、ケイ酸塩水溶液を用いることができる。フォトレジスト層の剥膜が終了すると、第4工程が終了し、第1の実施形態に係る走査アンテナAが得られる。
【0055】
<第2の実施形態>
第1の実施形態に係る前記走査アンテナAでは、先端が枝状に分岐した無機酸化物配線40を使用し、その先端を接合位置40
0としたが、本発明の第2の実施形態に係る走査アンテナBでは、その代わりに金属配線30と前記無機酸化物配線40との接合位置が、前記走査アンテナAの複数の接合位置40
0を網羅して含むような幅広に構成したもので、その他の点は前記走査アンテナAと同様である。
図2は、その金属配線30と無機酸化物配線40との位置関係を説明するための説明用平面図である。
【0056】
この
図2から分るように、この走査アンテナBにおいては、無機酸化物配線40の先端に扇状に広がる扇状部位42を設け、その扇状部位42の先端部位を線状の接合位置40
0として、物理的かつ電気的に金属配線30に接続されている。
【0057】
この線状の接合位置400は、前記走査アンテナAの複数の接合位置400と同様に、金属配線30の長手方向に沿って並んでいる。このため、無機酸化物配線40は、金属配線30の長手方向に直交する方向、言い換えると、短手方向に平行に延びている。
【0058】
そして、線状の接合位置400の内部に、金属配線30を加熱したときこの金属配線30にかかる応力が極小となる位置が含まれることが望ましく、この熱応力が極小となる位置では無機酸化物配線40がもっとも断線し難いものとなる。このため、金属配線30と無機酸化物配線40とは、高温に加熱された場合にも断線しにくいものとなる。
【0059】
そして、このため、前記線状の接合位置400のうち、金属配線30の長手方向の端部300にもっとも近い位置を、前記金属配線30の長手方向の端部300から、500μm以上離れた位置に配置することが望ましい。図中、αは、金属配線30の長手方向端部300と線状の接合位置400のうち長手方向端部300にもっとも近い位置との距離を示している。
【0060】
また、同じ理由から、線状の接合位置400のうち金属配線30の長手方向端部300にもっとも近い位置ともっとも遠い位置との間の長さβ、すなわち、線状の接合位置400の幅βは20μm以上であることが望ましい。
【符号の説明】
【0061】
A,B:走査アンテナA
10:基材
20:接着剤層
30金属配線 300:金属配線の長手方向に沿って延びる側辺の端部
40:無機酸化物配線 400:接合位置 41:分枝 42:扇状部位 40x:断線位置
α:金属配線の長手方向端部とこれにもっとも近い接合位置との距離
β:接合位置の両端の間の長さ