IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社カネカの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141598
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】多液型硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 71/02 20060101AFI20241003BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20241003BHJP
   C08K 5/17 20060101ALI20241003BHJP
   C08G 65/336 20060101ALI20241003BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C08L71/02
C08K5/09
C08K5/17
C08G65/336
C08L63/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053336
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮藤 聖
【テーマコード(参考)】
4J002
4J005
【Fターム(参考)】
4J002BG023
4J002CD052
4J002CD062
4J002CD092
4J002CD122
4J002CD132
4J002CD202
4J002CH051
4J002DE236
4J002ED037
4J002EF029
4J002EF039
4J002EF049
4J002EF059
4J002EF079
4J002EF119
4J002EH047
4J002EH077
4J002EH097
4J002EH107
4J002EH147
4J002EN018
4J002EN058
4J002GJ01
4J002GJ02
4J002GL00
4J002GN00
4J005AA04
4J005BC00
4J005BD08
(57)【要約】
【課題】反応性ケイ素基含有重合体を含むA剤と、B剤とを含む多液型硬化性組成物であって、A剤とB剤それぞれの安定性は良好でありながら、A剤とB剤を混合した後の硬化性は良好である多液型硬化性組成物の提供。
【解決手段】A剤が、反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)及び/または反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)を含有し、B剤が、エポキシ樹脂(D)、可塑剤(E)、及び、反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含有する。A剤が、1級アミノ基または2級アミノ基を有するアミン化合物(C-1)を含有し、かつ、B剤がカルボン酸(F)を含有するか、あるいは、A剤がカルボン酸(F)を含有し、かつ、B剤がアミン化合物(C-1)を含有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
A剤とB剤を含む多液型硬化性組成物であって、
A剤が、下記一般式(1)で表される反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)及び/または下記一般式(1)で表される反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)を含有し、
B剤が、エポキシ樹脂(D)、可塑剤(E)、及び、下記一般式(1)で表される反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含有し、
A剤が、1級アミノ基または2級アミノ基を有するアミン化合物(C-1)を含有し、かつ、B剤がカルボン酸(F)を含有するか、あるいは、
A剤がカルボン酸(F)を含有し、かつ、B剤が、1級アミノ基または2級アミノ基を有するアミン化合物(C-1)を含有する、多液型硬化性組成物。
-SiR 3-a (1)
(式中、Rは、置換又は非置換の炭素数1~20の炭化水素基を表す。Xは水酸基または加水分解性基を表す。aは2または3である。)
【請求項2】
A剤が、1級アミノ基または2級アミノ基を有するアミン化合物(C-1)を含有し、B剤が、エポキシ樹脂(D)及びカルボン酸(F)を含有する、請求項1に記載の多液型硬化性組成物。
【請求項3】
A剤が、3級アミノ基を有するアミン化合物(C-2)をさらに含有する、請求項2に記載の多液型硬化性組成物。
【請求項4】
B剤が、可塑剤(E)、及び、反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含有する、請求項1に記載の多液型硬化性組成物。
【請求項5】
A剤が、1級アミノ基または2級アミノ基を有するアミン化合物(C-1)を含有し、B剤が、カルボン酸(F)を含有する請求項1に記載の多液型硬化性組成物。
【請求項6】
B剤が、水(G)をさらに含有する、請求項1に記載の多液型硬化性組成物。
【請求項7】
水(G)の量が、反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)と反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)の合計100重量部に対して0.5重量部以上である、請求項6に記載の多液型硬化性組成物。
【請求項8】
A剤に含まれる脱水剤の量が、A剤に含まれる反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)と反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)の合計100重量部に対して0重量部以上1重量部以下である、請求項1に記載の多液型硬化性組成物。
【請求項9】
A剤とB剤からなる2液型の硬化性組成物である、請求項1~8のいずれか1項に記載の多液型硬化性組成物。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか1項に記載の多液型硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多液型硬化性組成物、及び、当該組成物を硬化させて得られる硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
車輌、航空機、鉄道では軽量化のため構造部材として鉄鋼以外のアルミ、マグネシウム、炭素繊維複合材料などの軽量材への置換が進んでおり、1つの車体に複数の材料が使われるマルチマテリアル化が増えてきている。異種材接合にはスポット溶接やレーザー溶接では困難なこともあることから、接着剤を用いる接着接合が注目されている。鋼板、アルミ合金、繊維強化複合材はそれぞれ線膨張係数が異なるため、当該接着剤には熱歪みに追従できる柔軟性が求められる。このため高剛性であるエポキシ樹脂は不利なことがあるため、新たな構造用接着剤として弾性率が高くかつ柔軟である材料が必要とされている。
【0003】
構造用接着剤として使用可能な、高強度、高剛性かつ柔軟性を有する硬化物を与える硬化性組成物として、特許文献1では、反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体と反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体とを含むA剤と、エポキシ樹脂及びシラノール縮合触媒を含むB剤から構成される多液型硬化性組成物が報告されている。
同文献の実施例では、シラノール縮合触媒として有機錫化合物を使用できることが記載されており、実施例でもジオクチル錫ジラウレートが使用されている。
【0004】
近年、有機錫化合物はその毒性が指摘されており、環境に対する安全の観点からその使用には注意が必要である。
そのため、有機錫化合物以外のシラノール縮合触媒の開発が進められている。非錫系のシラノール触媒の一例として、カルボン酸と有機アミンを併用することが知られている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2019/163804号
【特許文献1】特開平5-117519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されているような多液型硬化性組成物は、A剤とB剤を混合することで硬化性を発現することが望まれ、混合する前のA剤とB剤それぞれの状態では硬化しにくく、安定であることが望まれる。
【0007】
本発明は、上記現状に鑑み、反応性ケイ素基含有重合体を含むA剤と、B剤とを含む多液型硬化性組成物であって、A剤とB剤それぞれの安定性は良好でありながら、A剤とB剤を混合した後の硬化性は良好である多液型硬化性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)/または反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)を含むA剤と、エポキシ樹脂(D)、可塑剤(E)、及び、反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含むB剤とを含む多液型硬化性組成物において、A剤に、1級アミノ基または2級アミノ基を有するアミン化合物(C-1)を配合し、かつ、B剤にカルボン酸(F)を配合するか、あるいは、A剤にカルボン酸(F)を配合し、かつ、B剤に1級アミノ基または2級アミノ基を有するアミン化合物(C-1)を配合することで、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち本発明は、A剤とB剤を含む多液型硬化性組成物であって、
A剤が、下記一般式(1)で表される反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)及び/または下記一般式(1)で表される反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)を含有し、
B剤が、エポキシ樹脂(D)、可塑剤(E)、及び、下記一般式(1)で表される反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含有し、
A剤が、1級アミノ基または2級アミノ基を有するアミン化合物(C-1)を含有し、かつ、B剤がカルボン酸(F)を含有するか、あるいは、
A剤がカルボン酸(F)を含有し、かつ、B剤が、1級アミノ基または2級アミノ基を有するアミン化合物(C-1)を含有する、多液型硬化性組成物。
-SiR 3-a (1)
(式中、Rは、置換又は非置換の炭素数1~20の炭化水素基を表す。Xは水酸基または加水分解性基を表す。aは2または3である。)に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、反応性ケイ素基含有重合体を含むA剤と、B剤とを含む多液型硬化性組成物であって、A剤とB剤それぞれの安定性は良好でありながら、A剤とB剤を混合した後の硬化性は良好である多液型硬化性組成物を提供することができる。
本発明の好適な態様によると、有機錫化合物を実質的に含有しない多液型硬化性組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施形態を具体的に説明するが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではない。
【0012】
本実施形態は、少なくともA剤とB剤を含む多液型の硬化性組成物である。
A剤は、少なくとも、一般式(1)で表される反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)及び/または一般式(1)で表される反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)を含有する。
B剤は、少なくとも、エポキシ樹脂(D)、可塑剤(E)、及び、一般式(1)で表される反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含有する。
【0013】
<<反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)>>
反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)(以下、単に「ポリオキシアルキレン系重合体(A)」ともいう)は、少なくともA剤に配合される。ポリオキシアルキレン系重合体(A)は、A剤のみに配合されてもよいし、A剤とB剤それぞれに配合されてもよい。
B剤がポリオキシアルキレン系重合体(A)を含む場合、A剤に含まれるポリオキシアルキレン系重合体(A)と、B剤に含まれるポリオキシアルキレン系重合体(A)は同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。
【0014】
<反応性ケイ素基>
ポリオキシアルキレン系重合体(A)は、下記一般式(1)で表される反応性ケイ素基を有する。
-SiR 3-a (1)
(式中、Rは、置換又は非置換の炭素数1~20の炭化水素基を表す。Xは水酸基または加水分解性基を表す。aは2または3を示す。)
【0015】
は、炭素原子数1~20の炭化水素基である。Rとしての炭化水素基の炭素原子数としては、1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~4が特に好ましい。該炭化水素基は、無置換の炭化水素基であってもよいし、置換基を有する炭化水素基であってもよい。
【0016】
としての炭化水素基が置換基として有してもよいヘテロ含有基は、ヘテロ原子を含む基である。ここで、炭素原子および水素原子以外の原子をヘテロ原子とする。
【0017】
ヘテロ原子の好適な例としては、N、O、S、P、Si、およびハロゲン原子が挙げられる。ヘテロ含有基について、炭素原子数とヘテロ原子数との合計は、1~10が好ましく、1~6がより好ましく、1~4がさらに好ましい。
【0018】
ヘテロ含有基の好適な例としては、水酸基;メルカプト基;Cl、Br、I、およびFなどのハロゲン原子;ニトロ基;シアノ基;メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、およびイソプロピルオキシ基などのアルコキシ基;メチルチオ基、エチルチオ基、n-プロピルチオ基、およびイソプロピルチオ基などのアルキルチオ基;アセチル基、プロピオニル基、およびブタノイル基などのアシル基;アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、およびブタノイルオキシ基などのアシルオキシ基;アミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、およびジエチルアミノ基などの置換または非置換のアミノ基;アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、エチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、およびジエチルアミノカルボニル基などの置換または非置換のアミノカルボニル基;シアノ基などが挙げられる。
【0019】
がヘテロ含有基を有する炭化水素基である場合、Rにおける炭素原子数とヘテロ原子数との合計は、2~30が好ましく、2~18がより好ましく、2~10がさらに好ましく、2~6が特に好ましい。
【0020】
としての炭素原子数1~20の炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、2-エチル-n-ヘキシル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、およびn-イコシル基などのアルキル基;ビニル基、2-プロペニル基、3-ブテニル基、および4-ペンテニル基などのアルケニル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、およびシクロオクチル基などのシクロアルキル基;フェニル基、ナフタレン-1-イル基、ナフタレン-2-イル基、o-フェニルフェニル基、m-フェニルフェニル基、およびp-フェニルフェニル基などのアリール基;ベンジル基、フェネチル基、ナフタレン-1-イルメチル基、およびナフタレン-2-イルメチル基などのアラルキル基が挙げられる。
これらの炭化水素基が、前述のヘテロ含有基で置換された基も、Rとして好ましい。
【0021】
の好適な例としては、例えば、メチル基、およびエチル基などのアルキル基;クロロメチル基、およびメトキシメチル基などのヘテロ含有基を有するアルキル基;シクロヘキシル基などのシクロアルキル基;フェニル基などのアリール基;ベンジル基などのアラルキル基;などを挙げることができる。Rとしては、メチル基、メトキシメチル基、およびクロロメチル基が好ましく、メチル基、およびメトキシメチル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
【0022】
Xとしては、例えば、水酸基、水素、ハロゲン、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基などが挙げられる。これらの中では、加水分解性が穏やかで取扱いやすいことから、アルコキシ基がより好ましく、メトキシ基、エトキシ基が特に好ましい。
【0023】
一般式(1)中のaは、2または3を表す。硬化性の観点から、aは、3であることがより好ましい。
【0024】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)が有する反応性ケイ素基としては、具体的には、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリス(2-プロペニルオキシ)シリル基、トリアセトキシシリル基、ジメトキシメチルシリル基、ジエトキシメチルシリル基、ジメトキシエチルシリル基、(クロロメチル)ジメトキシシリル基、(クロロメチル)ジエトキシシリル基、(メトキシメチル)ジメトキシシリル基、(メトキシメチル)ジエトキシシリル基、(N,N-ジエチルアミノメチル)ジメトキシシリル基、(N,N-ジエチルアミノメチル)ジエトキシシリル基などが挙げられるが、これらに限定されない。これらの中では、メチルジメトキシシリル基、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、(クロロメチル)ジメトキシシリル基、(メトキシメチル)ジメトキシシリル基、(メトキシメチル)ジエトキシシリル基、(N,N-ジエチルアミノメチル)ジメトキシシリル基が高い活性を示し、良好な機械物性を有する硬化物が得られるため好ましく、高剛性の硬化物が得られることから、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基がより好ましく、トリメトキシシリル基がさらに好ましい。
【0025】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)は、1つの末端部位に平均して1個以下の反応性ケイ素基を有するものであってもよいし、1つの末端部位に平均して1個より多い反応性ケイ素基を有するものであってもよい。ここで、1つの末端部位に平均して1個より多い反応性ケイ素基を有するとは、ポリオキシアルキレン系重合体(A)に、1つの末端部位に2個以上の反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレンが含まれていることを示している。
【0026】
2個以上の反応性ケイ素基を有する末端部位は、例えば、下記一般式(2)で表すことができる。
【0027】
【化1】
【0028】
(式中、R,Rはそれぞれ独立に2価の炭素数1~6の結合基を表し、R,Rに隣接するそれぞれの炭素原子と結合する原子は、炭素、酸素、窒素のいずれかである。R,Rはそれぞれ独立に、水素、または炭素数1~10の炭化水素基を表す。nは1~10の整数である。R、X、aは前記式(1)について上述のとおりである。)
【0029】
、Rとしては、2価の炭素数1~6の有機基であってよく、酸素原子を含んでもよい炭化水素基であってもよい。該炭化水素基の炭素数は1~4が好ましく、1~3がより好ましく、1~2がさらに好ましい。Rの具体例としては、例えば、-CHOCH-、-CHO-、-CH-が挙げられるが、好ましくは、-CHOCH-である。Rの具体例としては、例えば、-CH-、-CHCH-が挙げられるが、好ましくは、-CH-である。
【0030】
、Rの炭化水素基の炭素数としては1~5が好ましく、1~3がより好ましく、1~2がさらに好ましい。R、Rの具体例としては、例えば、水素原子、メチル基、エチル基が挙げられるが、好ましくは、水素原子、メチル基であり、より好ましくは水素原子である。
【0031】
一般式(2)で表される末端部位は、特に好ましい態様によると、Rが-CHOCH-であり、Rが-CH-であり、R及びRがそれぞれ水素原子である。nは1~5の整数が好ましく、1~3の整数がより好ましく、1又は2がさらに好ましい。ただし、nは、1つの値に限定されるものではなく、複数の値が混在していてもよい。
【0032】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)は、反応性ケイ素基を、1つの末端部位に平均して1.0個以下有するものであってもよい。この場合、前記平均数は、0.4個以上であることが好ましく、0.5個以上がより好ましく、0.6個以上がさらに好ましい。
【0033】
また、ポリオキシアルキレン系重合体(A)は、反応性ケイ素基を、1つの末端部位に平均して1.0個より多く有するものであってもよい。この場合、前記平均数は、1.1個以上であることがより好ましく、1.5個以上が更に好ましく、2.0個以上がより更に好ましい。また、前記平均数は、5個以下であることが好ましく、3個以下がより好ましい。
【0034】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)は、末端部位以外に反応性ケイ素基を有しても良いが、末端部位にのみ有することが、高伸びで、低弾性率を示すゴム状硬化物が得られやすくなるため好ましい。
【0035】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)が有する反応性ケイ素基の1分子当たりの平均個数は、硬化物の強度の観点から、1.0個より多いことが好ましく、1.2個以上がより好ましく、1.3個以上がさらに好ましく、1.5個以上がより更に好ましく、1.7個以上が特に好ましい。前記平均個数は、2.0個以下であってもよいし、2.0個より多くてもよい。硬化物の伸びの観点から、6.0個以下が好ましく、5.5個以下がより好ましく、5.0個以下が最も好ましい。
【0036】
<主鎖構造>
ポリオキシアルキレン系重合体(A)の主鎖骨格には特に制限はなく、例えば、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン、ポリオキシテトラメチレン、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシプロピレン-ポリオキシブチレン共重合体などが挙げられる。その中でも、ポリオキシプロピレンが好ましい。
【0037】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)の主鎖構造は直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。初期の接着強度がより高くなるため、ポリオキシアルキレン系重合体(A)の主鎖構造は、分岐鎖状であることが好ましい。なお、分岐鎖状の主鎖構造は、1分子中に3個以上の水酸基を有する開始剤の存在下でエポキシ化合物を重合させることで形成できる。
【0038】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)の数平均分子量は、GPCにおけるポリスチレン換算分子量において、好ましくは3,000以上100,000以下、より好ましくは3,000以上50,000以下であり、特に好ましくは3,000以上30,000以下である。
【0039】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)の分子量分布(Mw/Mn)は特に限定されないが、狭いことが好ましく、具体的には、2.0未満が好ましく、1.6以下がより好ましく、1.5以下がさらに好ましく、1.4以下が特に好ましい。また、硬化物の耐久性や伸びを向上させる等、各種機械的物性を向上させる観点からは、1.2以下が好ましい。ポリオキシアルキレン系重合体(A)の分子量分布は、GPC測定により得られる数平均分子量と重量平均分子量から求めることができる。
【0040】
<ポリオキシアルキレン系重合体(A)の合成方法>
ポリオキシアルキレン系重合体(A)の合成方法は特に限定されない。一例を説明すると、まず、水酸基を有する開始剤にエポキシ化合物を重合させて水酸基末端重合体を得る。該重合体の水酸基にアルカリ金属塩(例えばナトリウムメトキシド)を作用させた後、炭素-炭素不飽和結合を有するハロゲン化炭化水素化合物(例えば塩化アリル)を反応させて、重合体末端に炭素-炭素不飽和結合を導入する。次いで、反応性ケイ素基含有ヒドロシラン化合物(例えば、ジメトキメチルシラン、トリメトキシシラン)を反応させることで、反応性ケイ素基含有ポリオキシアルキレン系重合体(A)を得ることができる。
【0041】
好適な一実施形態である1つの末端部位に平均して1.0個より多い反応性ケイ素基を有しているポリオキシアルキレン系重合体(A)は次のようにして得ることができる。上記と同様に前記水酸基末端重合体の水酸基に前記アルカリ金属塩を作用させた後、まず炭素-炭素不飽和結合を有するエポキシ化合物(例えば、アリルグリシジルエーテル)を反応させ、次いで前記炭素-炭素不飽和結合を有するハロゲン化炭化水素化合物(例えば塩化アリル)を反応させることで、1つの末端に2個以上の炭素-炭素不飽和結合を導入する。その後、反応性ケイ素基含有ヒドロシラン化合物を反応させればよい。
【0042】
また、前記反応性ケイ素基含有ヒドロシラン化合物の代わりに、反応性ケイ素基含有メルカプトシラン類を用いることで、重合体に反応性ケイ素基を導入することも可能である。
【0043】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)の主鎖は、エステル結合、または、一般式(3):
-NR-C(=O)- (3)
(式中、Rは炭素数1~10の有機基または水素原子を表す)で表されるアミドセグメントを含んでいてもよい。
【0044】
エステル結合またはアミドセグメントを含有するポリオキシアルキレン系重合体(A)を含む硬化性組成物から得られる硬化物は、水素結合の作用等により、高い硬度および強度を有する場合がある。しかし、アミドセグメント等を含有するポリオキシアルキレン系重合体(A)は、熱等により開裂する可能性がある。また、アミドセグメント等を含有するポリオキシアルキレン系重合体(A)を含む硬化性組成物は、粘度が高くなる傾向がある。以上のようなメリットおよびデメリットを考慮して、ポリオキシアルキレン系重合体(A)として、アミドセグメント等を含有するポリオキシアルキレンを使用してもよく、アミドセグメント等を含有しないポリオキシアルキレンを使用してもよい。
【0045】
前記一般式(3)で表されるアミドセグメントとしては、例えば、イソシアネート基と水酸基との反応、アミノ基とカーボネートとの反応、イソシアネート基とアミノ基との反応、イソシアネート基とメルカプト基との反応等により形成されるものが挙げられる。また、活性水素原子を含む前記アミドセグメントとイソシアネート基との反応により形成されるものも、一般式(3)で表されるアミドセグメントに含まれる。
【0046】
アミドセグメントを含有するポリオキシアルキレン系重合体(A)の製造方法の一例としては、末端に活性水素含有基を有するポリオキシアルキレンに、ポリイソシアネート化合物を反応させて、末端にイソシアネート基を有する重合体を合成した後、またはその合成と同時に、該イソシアネート基と反応し得る官能基(例えば、水酸基、カルボキシ基、メルカプト基、1級アミノ基または2級アミノ基)と反応性ケイ素基を併せ持つ化合物を反応させる方法が挙げられる。また、別の例として、末端に活性水素含有基を有するポリオキシアルキレンに、反応性ケイ素基含有イソシアネート化合物を反応させる方法が挙げられる。
【0047】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)がアミドセグメントを含む場合、ポリオキシアルキレン系重合体(A)1分子あたりのアミドセグメントの数(平均値)は、1~10が好ましく、1.5~5がより好ましく、2~3が特に好ましい。この数が1よりも少ない場合には、硬化性が十分ではない場合があり、逆に10よりも大きい場合には、ポリオキシアルキレン系重合体(A)が高粘度となり、取り扱い難くなる可能性がある。硬化性組成物の粘度を低くし、作業性を改善するためには、ポリオキシアルキレン系重合体(A)は、アミドセグメントを含まないことが好ましい。
【0048】
<<反応性ケイ素基含有(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)>>
A剤は、反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)(以下、「(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)」ともいう)を含有してもよい。A剤は、ポリオキシアルキレン系重合体(A)と共に、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)を含有することが好ましい。但し、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)は任意成分であり、含有しなくてもよい。
【0049】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)の主鎖を構成する(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとしては特に限定されず、各種のものを用いることができる。具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ヘプチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸3-メトキシブチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸(3-トリメトキシシリル)プロピル、(メタ)アクリル酸(3-ジメトキシメチルシリル)プロピル、(メタ)アクリル酸(2-トリメトキシシリル)エチル、(メタ)アクリル酸(2-ジメトキシメチルシリル)エチル、(メタ)アクリル酸トリメトキシシリルメチル、(メタ)アクリル酸(ジメトキシメチルシリル)メチル、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2-トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロエチル-2-パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ビス(トリフルオロメチル)メチル、(メタ)アクリル酸2-トリフルオロメチル-2-パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロヘキサデシルエチル等の(メタ)アクリル酸系モノマーが挙げられる。
【0050】
上記以外の単量体単位としては、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸等のアクリル酸;N-メチロールアクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド等の、アミド基を含む単量体、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等の、エポキシ基を含む単量体、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート等の、窒素含有基を含む単量体等が挙げられる。
【0051】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)は、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーと、これと共重合可能なビニル系モノマーを共重合して得られる重合体を使用することもできる。ビニル系モノマーとしては、特に限定されず、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、クロルスチレン、スチレンスルホン酸及びその塩などのスチレン系モノマー;パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデンなどのフッ素含有ビニル系モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのケイ素含有ビニル系モノマー;無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなどのマレイミド系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル基含有ビニル系モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミドなどのアミド基含有ビニル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニルなどのビニルエステル系モノマー;エチレン、プロピレンなどのアルケニル系モノマー;ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエン系モノマー;塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、アリルアルコールなどが挙げられ、これらは、複数を共重合成分として使用することも可能である。
【0052】
前記モノマー類から得られる(メタ)アクリル酸エステル系重合体のなかでも、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーと、場合によりスチレン系モノマーとからなる共重合体が、物性が優れることから好ましく、アクリル酸エステルモノマー及びメタクリル酸エステルモノマーからなる(メタ)アクリル酸エステル系重合体がより好ましく、アクリル酸エステルモノマーからなるアクリル酸エステル系重合体が特に好ましい。
【0053】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)は、上記で示した一般式(1)で表される反応性ケイ素基を有する。(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)が有する反応性ケイ素基は、ポリオキシアルキレン系重合体(A)が有する反応性ケイ素基と同一であってよいし、異なっていてもよい。
【0054】
重合体(B)が有する反応性ケイ素基において、Rの具体例としては、メチル基、エチル基、クロロメチル基、メトキシメチル基、N,N-ジエチルアミノメチル基を挙げることができるが、好ましくは、メチル基、エチル基である。
【0055】
重合体(B)が有する反応性ケイ素基において、Xとしては、例えば、水酸基、水素、ハロゲン、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基などが挙げられる。これらの中では、加水分解性が穏やかで取扱いやすいことからメトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基、エトキシ基が特に好ましい。
【0056】
重合体(B)が有する反応性ケイ素基において、一般式(1)中のaは、2または3を表す。硬化性の観点から、aは、3であることがより好ましい。
【0057】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)が有する反応性ケイ素基としては、具体的には、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリス(2-プロペニルオキシ)シリル基、トリアセトキシシリル基、ジメトキシメチルシリル基、ジエトキシメチルシリル基、ジメトキシエチルシリル基、(クロロメチル)ジメトキシシリル基、(クロロメチル)ジエトキシシリル基、(メトキシメチル)ジメトキシシリル基、(メトキシメチル)ジエトキシシリル基、(N,N-ジエチルアミノメチル)ジメトキシシリル基、(N,N-ジエチルアミノメチル)ジエトキシシリル基などが挙げられるが、これらに限定されない。これらの中では、メチルジメトキシシリル基、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、(クロロメチル)ジメトキシシリル基、(メトキシメチル)ジメトキシシリル基、(メトキシメチル)ジエトキシシリル基、(N,N-ジエチルアミノメチル)ジメトキシシリル基が高い活性を示し、良好な機械物性を有する硬化物が得られるため好ましい。塗布後の形状維持性に優れることからメチルジメトキシシリル基が好ましい。初期強度の発現が良好であること、また高剛性の硬化物が得られることからトリメトキシシリル基が好ましい。
【0058】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)における反応性ケイ素基の結合位置は、分子鎖末端および側鎖(非末端部位)のいずれか、又は双方であってよい。
【0059】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)の反応性ケイ素基当量は特に限定はないが、0.1mmol/g以上が好ましく、0.5mmol/g以上がより好ましく、0.6mmol/g以上がさらに好ましい。前記反応性ケイ素基当量は2.0mmol/g以下が好ましく、硬化物の伸びの低下を抑える点から、1.0mmol/g以下がより好ましい。また、ヤング率の高い高剛性の硬化物を得るためには、前記反応性ケイ素基当量は0.6mmol/g以上、1.0mmol/g以下であることが特に好ましい。
【0060】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体に反応性ケイ素基を導入する方法は特に限定されず、たとえば、以下の方法を用いることができる。
(i)重合性不飽和基と反応性ケイ素含有基を有する化合物を、上述のモノマーとともに共重合する方法。この方法を用いると反応性ケイ素基は重合体の主鎖中にランダムに導入される傾向がある。
(ii)連鎖移動剤として、反応性ケイ素含有基を有するメルカプトシラン化合物を使用して(メタ)アクリル酸エステル系重合体を重合する方法。この方法を用いると、反応性ケイ素基を重合体末端に導入することができる。
(iii)重合性不飽和基と反応性官能基(V基)を有する化合物を、共重合した後、反応性ケイ素基とV基に反応する官能基とを有する化合物を反応させる方法。具体的には、アクリル酸2-ヒドロキシエチルを共重合した後、反応性ケイ素含有基を有するイソシアネートシランを反応させる方法や、アクリル酸グリシジルを共重合した後、反応性ケイ素含有基を有するアミノシラン化合物を反応させる方法などが例示できる。
(iv)リビングラジカル重合法によって合成した(メタ)アクリル酸エステル系重合体の末端官能基を変性して、反応性ケイ素基を導入する方法。リビングラジカル重合法によって得られる(メタ)アクリル酸エステル系重合体は重合体末端に官能基を導入しやすく、これを変性することで重合体末端に反応性ケイ素基を導入することができる。
【0061】
上記の方法を用いて(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)の反応性ケイ素基を導入するために使用できるケイ素化合物としては、以下の化合物が例示できる。方法(i)で使用する重合性不飽和基と反応性ケイ素含有基を有する化合物としては、(メタ)アクリル酸3-(ジメトキシメチルシリル)プロピル、(メタ)アクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピル、(メタ)アクリル酸3-(トリエトキシシリル)プロピル、(メタ)アクリル酸(ジメトキシメチルシリル)メチル、(メタ)アクリル酸(トリメトキシシリル)メチル、(メタ)アクリル酸(トリエトキシシリル)メチル、(メタ)アクリル酸3-((メトキシメチル)ジメトキシシリル)プロピルなどが挙げられる。入手性の観点から、(メタ)アクリル酸3-(ジメトキシメチルシリル)プロピル、(メタ)アクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピルが特に好ましい。
【0062】
方法(ii)で使用する反応性ケイ素含有基を有するメルカプトシラン化合物としては、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、(メルカプトメチル)ジメトキシメチルシラン、(メルカプトメチル)トリメトキシシランなどが挙げられる。
【0063】
方法(iii)で使用する反応性ケイ素基とV基に反応する官能基とを有する化合物としては、3-イソシアネートプロピルジメトキシメチルシラン、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、イソシアネートメチルジメトキシメチルシラン、イソシアネートメチルトリメトキシシラン、イソシアネートメチルトリエトキシシランなどのイソシアネートシラン化合物;3-グリシドキシプロピルジメトキシメチルシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルジメトキシメチルシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシランなどのエポキシシラン化合物;3-アミノプロピルジメトキシメチルシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノメチルジメトキシメチルシラン、アミノメチルトリメトキシシラン、アミノメチルトリエトキシシラン、N-シクロヘキシルアミノメチルジメトキシメチルシラン、N-シクロヘキシルアミノメチルトリメトキシシラン、N-シクロヘキシルアミノメチルトリエトキシシランなどのアミノシラン化合物などが挙げられる。
【0064】
方法(iv)では、任意の変性反応を利用できるが、例えば、重合によって得られた末端反応性基と反応し得る官能基と反応性ケイ素基を有する化合物を用いる方法や、末端反応性基と反応し得る官能基と二重結合を有する化合物を用いて重合体末端に二重結合を導入し、これにヒドロシリル化等で反応性ケイ素基を導入する方法などが使用できる。
【0065】
なお、これらの方法は任意に組合せて用いてもよい。例えば方法(iii)と方法(ii)を組合わせると、分子鎖末端および/または側鎖の両方に反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)を得ることができる。
【0066】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)は、アルキルの炭素数が1~3である(メタ)アクリル酸アルキルを全単量体中40重量%以上含有することが、高強度となるため好ましい。
【0067】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)の単量体組成は、用途、目的により選択することができ、強度を必要とする用途では、ガラス転移温度(Tg)が比較的高いものが好ましく、0℃以上200℃以下が好ましく、20℃以上100℃以下のTgを有するものがより好ましい。なおTgは、Foxの式より求められる。
【0068】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)の数平均分子量は特に限定されないが、GPC測定によるポリスチレン換算分子量で、500以上50,000以下が好ましく、500以上30,000以下がより好ましく、1,000以上10,000以下が特に好ましい。
【0069】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)とポリオキシアルキレン系重合体(A)をブレンドする方法は、特開昭59-122541号公報、特開昭63-112642号公報、特開平6-172631号公報、特開平11-116763号公報等に提案されている。他にも、反応性ケイ素基を有するポリオキシプロピレン系重合体の存在下で(メタ)アクリル酸エステル系単量体の重合を行う方法が利用できる。
【0070】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)を使用する場合、ポリオキシアルキレン系重合体(A)と(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)の重量比(A):(B)は95:5~50:50であること、即ち(A)の割合が50重量%以上95重量%以下であることが好ましい。この範囲内であると、柔軟性と高いせん断接着強度を示す硬化物を得ることができる。さらに、高剛性と柔軟性を両立する点で、(A):(B)は80:20~50:50であることがより好ましく、70:30~50:50がさらに好ましい。
【0071】
<<アミン化合物(C-1)>>
1級アミノ基または2級アミノ基を有するアミン化合物(C-1)(以下、アミン化合物(C-1)ともいう)は、後述するカルボン酸(F)と共に、シラノール縮合触媒を構成し、カルボン酸(F)と混合されることでシラノール縮合反応を促進し、重合体(A)及び/または重合体(B)の硬化反応を促進することができる。
【0072】
アミン化合物(C-1)は、A剤又はB剤のいずれかに配合されるが、カルボン酸(F)を配合する剤とは異なる剤に配合される。アミン化合物(C-1)とカルボン酸(F)を同じ剤に配合すると、その剤の安定性を低下させる場合があるためである。
本実施形態の一態様によると、アミン化合物(C-1)はA剤のみに配合されてB剤には配合されず、かつ、カルボン酸(F)はB剤のみに配合されてA剤には配合されないことが好ましい。
別の態様では、アミン化合物(C-1)はB剤のみに配合されてA剤には配合されず、カルボン酸(F)はA剤のみに配合されてB剤には配合されないことが好ましい。
【0073】
B剤がエポキシ樹脂(D)を含有する場合には、アミン化合物(C-1)はA剤に配合され、カルボン酸(F)はB剤に配合されることが好ましい。これにより、エポキシ樹脂(D)を含むB剤の安定性をより良好にすることができる。
【0074】
アミン化合物(C-1)は、1級アミノ基のみを有する化合物であってもよいし、2級アミノ基のみを有する化合物であってもよいし、1級アミノ基と2級アミノ基の双方を有する化合物であってもよい。アミン化合物(C-1)は、3級アミノ基をさらに有してもよい。
【0075】
アミン化合物(C-1)は、例えば、一分子中に1個又は複数個(好ましくは1個又は2個)の1級又は2級アミノ基を有し、かつ1~30個(好ましくは3~20個、より好ましくは5~12個)の炭素原子を有する化合物であってよい。尚、後述するアミノ基含有シランカップリング剤(即ち、加水分解性ケイ素基とアミノ基を有する化合物)は、アミン化合物(C-1)に該当しない。
【0076】
アミン化合物(C-1)の具体例としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、アミルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、ペンタデシルアミン、セチルアミン、ステアリルアミン、シクロヘキシルアミンなどの脂肪族第一級アミン類;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミン、ジヘキシルアミン、ジオクチルアミン、ジ(2-エチルヘキシル)アミン、ジデシルアミン、ジラウリルアミン、ジセチルアミン、ジステアリルアミン、メチルステアリルアミン、エチルステアリルアミン、ブチルステアリルアミン、ピロリジン、ピペリジン、2-メチルピペリジン、4-メチルピペリジン、ヘキサメチルピペラジン、ヘキサメチレンイミンなどの脂肪族第二級アミン類;オレイルアミンなどの脂肪族不飽和アミン類;アニリン、ラウリルアニリン、ステアリルアニリンなどの芳香族アミン類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、3-ヒドロキシプロピルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、N-メチル-1,3-プロパンジアミン、N,N'-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール、ベンジルアミン、3-メトキシプロピルアミン、3-ラウリルオキシプロピルアミン、3-ジメチルアミノプロピルアミン、3-ジエチルアミノプロピルアミン、3-ジブチルアミノプロピルアミン、3-モルホリノプロピルアミン、2-(1-ピペラジニル)エチルアミン、キシリレンジアミンなどがあげられる。アミン化合物(C-1)としては1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0077】
アミン化合物(C-1)としては、入手性、重合体(A)及び/または重合体(B)との相溶性、硬化性の点から、3-ジメチルアミノプロピルアミン、3-ジエチルアミノプロピルアミン、4-メチルピぺリジンが好ましい。
【0078】
<<エポキシ樹脂(D)>>
エポキシ樹脂(D)は、任意の成分であるが、配合される場合には、B剤に配合されることが好ましい。但し、エポキシ樹脂(D)をB剤に配合せず、ポリオキシアルキレン系重合体(A)及び/又は可塑剤(E)をB剤に配合してもよい。
【0079】
エポキシ樹脂(D)としては、一般的に使用されているエポキシ樹脂を使用することができる。特に限定されないが、例えば、エピクロルヒドリン-ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エピクロルヒドリン-ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールAのグリシジルエーテルなどの難燃型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、p-オキシ安息香酸グリシジルエーテルエステル型エポキシ樹脂、m-アミノフェノール系エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン系エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、各種脂環式エポキシ樹脂、N,N-ジグリシジルアニリン、N,N-ジグリシジル-o-トルイジン、トリグリシジルイソシアヌレート、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンなどの多価アルコールのグリシジルエーテル、ヒダントイン型エポキシ樹脂、石油樹脂などの不飽和重合体のエポキシ化物等が挙げられる。
中でも、エポキシ基を1分子中に少なくとも2個有するエポキシ樹脂が、硬化に際し反応性が高く、また硬化物が3次元的網目をつくりやすいなどの点から好ましい。より好ましくは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂類またはノボラック型エポキシ樹脂である。
【0080】
エポキシ樹脂(D)の配合量は、多液型硬化性組成物全体に含まれるポリオキシアルキレン系重合体(A)と(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)の合計と、エポキシ樹脂(D)の重量比[(A+B):(D)]が、90:10~50:50であること、即ち(A+B)の割合が50重量%以上90重量%以下であることが好ましい。硬化物の柔軟性の観点から50重量%以上が好ましく、硬化物の強度の観点から90重量%以下が好ましい。さらに、80:20~60:40が柔軟性と強度のバランスの点でより好ましい。
【0081】
<<3級アミノ基を有するアミン化合物(C-2)>>
エポキシ樹脂(D)を使用する場合には、該エポキシ樹脂を硬化させるためのエポキシ樹脂硬化剤として、3級アミノ基を有するアミン化合物(C-2)(以下、アミン化合物(C-2)ともいう)を使用することが好ましい。アミン化合物(C-2)を用いることによって、高剛性、高強度、高伸びの硬化物を得ることができる。
【0082】
アミン化合物(C-2)は、剤の安定性の観点から、エポキシ樹脂(D)を配合する剤とは異なる剤に配合することが好ましい。具体的には、エポキシ樹脂(D)をB剤に配合し、アミン化合物(C-2)をA剤に配合することが好ましい。
【0083】
3級アミノ基を有するアミン化合物(C-2)としては、具体的には、例えば、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-ジアミノプロパン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,6-ジアミノヘキサン、N,N-ジメチルベンジルアミン、N-メチル-N-(ジメチルアミノプロピル)アミノエタノール、(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリプロピルアミン、DBU、DBN及び、これら三級アミン類の塩類を例示することができるが、これらに限定されるものではない。また、1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、アミン化合物(C-2)以外の公知のエポキシ樹脂硬化剤をさらに添加しても良い。
【0084】
アミン化合物(C-2)は、芳香族アミンであることが好ましく、3級アミノ基を3つ以上有することがさらに好ましい。具体的には、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールを例示することができる。
【0085】
アミン化合物(C-2)の配合量は、エポキシ樹脂(D)100重量部に対し、0.1重量部以上50重量部以下であることが好ましく、0.1重量部以上40重量部以下がより好ましく、0.5重量部以上30重量部以下がさらに好ましい。
【0086】
<<可塑剤(E)>>
可塑剤(E)は、任意の成分であるが、B剤に配合されることが好ましい。B剤のみに配合されてもよいし、A剤とB剤それぞれに配合されてもよい。また、可塑剤(E)は、B剤に配合されず、A剤のみに配合されてもよい。可塑剤(E)を配合すると硬化性組成物を低粘度化することができ、取り扱いが容易になる。特に、B剤に配合することによって、A剤とB剤の混合を容易に実現できる。
【0087】
可塑剤(E)をB剤に配合せず、代わりに、前述したポリオキシアルキレン系重合体(A)及び/又はエポキシ樹脂(D)をB剤に配合してもよい。また、可塑剤(E)と、ポリオキシアルキレン系重合体(A)及び/又はエポキシ樹脂(D)とをB剤に配合してもよい。
【0088】
可塑剤(E)としては特に限定されないが、例えば、ジブチルフタレート、ジイソノニルフタレート(DINP)、ジヘプチルフタレート、ジ(2-エチルヘキシル)フタレート、ジイソデシルフタレート(DIDP)、およびブチルベンジルフタレートなどのフタル酸エステル化合物;ビス(2-エチルヘキシル)-1,4-ベンゼンジカルボキシレートなどのテレフタル酸エステル化合物;1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステルなどの非フタル酸エステル化合物;アジピン酸ジオクチル、セバシン酸ジオクチル、セバシン酸ジブチル、コハク酸ジイソデシル、およびアセチルクエン酸トリブチルなどの脂肪族多価カルボン酸エステル化合物;オレイン酸ブチル、およびアセチルリシノール酸メチルなどの不飽和脂肪酸エステル化合物;リン酸エステル化合物;トリメリット酸エステル化合物;塩素化パラフィン;アルキルジフェニル、および部分水添ターフェニルなどの炭化水素系油;プロセスオイル;エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、ビス(2-エチルヘキシル)-4,5-エポキシシクロヘキサン-1,2-ジカーボキシレート(E-PS)、エポキシオクチルステアレート、エポキシブチルステアレートおよびエポキシステアリン酸ベンジルなどのエポキシ可塑剤;アルキルスルホン酸エステルなどが挙げられる。
【0089】
可塑剤(E)として、高分子可塑剤を使用することもできる。高分子可塑剤の具体例としては、ビニル系重合体;ポリエステル系可塑剤;数平均分子量500以上のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリエーテルポリオール、これらポリエーテルポリオールのヒドロキシ基をエステル基、エーテル基などに変換した誘導体などのポリエーテル系可塑剤;ポリスチレン類;ポリブタジエン、ポリブテン、ポリイソブチレン、ブタジエン-アクリロニトリル、ポリクロロプレン等が挙げられる。
中でも、高分子可塑剤が好ましく、ポリエーテル系可塑剤がより好ましく、ポリプロピレングリコールが特に好ましい。
可塑剤(E)としては1種類のみを使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0090】
可塑剤(E)の総配合量は、多液型硬化性組成物全体に含まれるポリオキシアルキレン系重合体(A)と(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)の合計100重量部に対して、5~150重量部であることが好ましく、10~120重量部がより好ましく、20~100重量部が特に好ましい。
【0091】
<<カルボン酸(F)>>
カルボン酸(F)は、前述した1級アミノ基または2級アミノ基を有するアミン化合物(C-1)と共に、シラノール縮合触媒を構成し、アミン化合物(C-1)と混合されることでシラノール縮合反応を促進し、重合体(A)及び/または重合体(B)の硬化反応を促進することができる。
【0092】
カルボン酸(F)は、A剤又はB剤のいずれかに配合されるが、上述したようにアミン化合物(C-1)を配合する剤とは異なる剤に配合される。これによりA剤とB剤それぞれの安定性を良好なものとすることができる。A剤の大気中での安定性を向上できることから、カルボン酸(F)はB剤に配合されることが好ましい。
【0093】
カルボン酸(F)は、遊離のカルボン酸であって、例えば、一分子中に1個又は複数個(好ましくは1個)のカルボキシル基(-COOH)を有し、かつ1~30個(好ましくは2~20個、より好ましくは6~12個)の炭素原子を有する化合物であってよい。
【0094】
カルボン酸(F)の具体例としては、特に限定されないが、脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデシル酸などの直鎖飽和脂肪酸類;アクリル酸、メタクリル酸などのモノエン不飽和脂肪酸類;ポリエン不飽和脂肪酸類;2-メチル酪酸、イソ酪酸、2-エチル酪酸、ピバル酸、2,2-ジメチル酪酸、2-エチル-2-メチル酪酸、2,2-ジエチル酪酸、2-フェニル酪酸、イソ吉草酸、2,2-ジメチル吉草酸、2-エチル-2-メチル吉草酸、2,2-ジエチル吉草酸、オクチル酸、2-エチルヘキサン酸、2,2-ジメチルヘキサン酸、ネオノナン酸、2,2-ジエチルヘキサン酸、2,2-ジメチルオクタン酸、2-エチル-2,5-ジメチルヘキサン酸、バーサチック酸、ネオデカン酸などの枝分れ脂肪酸類;三重結合をもつ脂肪酸類;脂環式カルボン酸類;含酸素脂肪酸類;モノカルボン酸のハロゲン置換体、
脂肪族ジカルボン酸としては、アジピン酸、セバシン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸などの鎖状ジカルボン酸、飽和ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、
脂肪族ポリカルボン酸としては、アコニット酸、クエン酸、イソクエン酸、3-メチルイソクエン酸、4,4-ジメチルアコニット酸などの鎖状トリカルボン酸などが挙げられる。
【0095】
芳香族カルボン酸としては、安息香酸、サリチル酸などの芳香族モノカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸などの芳香族ポリカルボン酸、クロロ安息香酸などの芳香族カルボン酸のハロゲン置換体などが挙げられる。また、カルボン酸無水物、エステル、アミド、ニトリル、塩化アシルなどの加水分解によってカルボン酸を生じるカルボン酸誘導体なども使用できる。
カルボン酸(F)は1種類の化合物を用いてもよいし、複数の化合物を併用してもよい。
【0096】
カルボン酸(F)としては、容易に入手でき、安価であること、重合体(A)及び/または重合体(B)との相溶性が良好であることなどから、2-エチルヘキサン酸、ネオノナン酸、又はネオデカン酸が好ましい。高い触媒活性が得られやすいことから、ネオデカン酸が特に好ましい。
【0097】
本実施形態に係る硬化性組成物において、アミン化合物(C-1)とカルボン酸(F)の合計配合量は、所望の硬化性や、硬化性組成物の作業性を考慮して適宜決定することができるが、例えば、多液型硬化性組成物全体に含まれる重合体(A)と重合体(B)の合計100重量部に対して、0.001~30重量部程度であって良く、0.01~20重量部が好ましく、0.1~15重量部がより好ましく、1~10重量部がさらに好ましい。
【0098】
アミン化合物(C-1)とカルボン酸(F)との比率は適宜設定することができるが、(C-1):(F)のモル比が、例えば、0.1:1~10:1程度であってよく、硬化性の観点から、1:0.2~1:8が好ましく、1:0.5~1:5がより好ましい。また、(C-1):(F)の重量比は、例えば、1:0.1~1:20程度であってよく、硬化性の観点から、1:0.5~1:15が好ましく、1:1~1:10がより好ましい。
【0099】
<<水(G)>>
水(G)は任意の成分であるが、配合することが好ましい。水(G)を配合することにより、A剤とB剤を混合した時にポリオキシアルキレン系重合体(A)及び/または(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)が有する反応性ケイ素基の加水分解反応が促進され、深部硬化性を改善することができる。
水(G)を配合する場合、水(G)は、B剤に配合されることが好ましい。これにより、ポリオキシアルキレン系重合体(A)及び/または(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)を含むA剤の貯蔵安定性の悪化を回避することができる。
【0100】
水(G)の配合量は、多液型硬化性組成物全体に含まれるポリオキシアルキレン系重合体(A)と(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)の合計100重量部に対して、0.1重量部以上10重量部以下であることが好ましく、0.1重量部以上5重量部以下がより好ましく、0.1重量部以上3重量部以下がさらに好ましい。特に深部硬化性改善の観点から、水(G)の配合量の下限は、0.5重量部以上であることが好ましく、1重量部以上がより好ましい。
【0101】
<<その他の添加剤>>
本実施形態に係る硬化性組成物には、ポリオキシアルキレン系重合体(A)、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)、アミン化合物(C-1)、エポキシ樹脂(D)、アミン化合物(C-2)、可塑剤(E)、カルボン酸(F)、及び、水(G)の他に、添加剤として、アミン化合物(C-1)及びカルボン酸(F)以外のシラノール縮合触媒、充填剤、接着性付与剤、脱水剤、レオロジーコントロール剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、粘着付与樹脂、その他の樹脂を添加しても良い。
【0102】
また、本実施形態に係る硬化性組成物には、硬化性組成物又は硬化物の諸物性の調整を目的として、必要に応じて各種添加剤を添加してもよい。このような添加物の例としては、たとえば、溶剤、希釈剤、光硬化性物質、酸素硬化性物質、表面性改良剤、シリケート、硬化性調整剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、オゾン劣化防止剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、防かび剤、難燃剤、発泡剤などが挙げられる。
【0103】
<<他のシラノール縮合触媒>>
アミン化合物(C-1)及びカルボン酸(F)以外のシラノール縮合触媒としては、例えば、有機錫化合物、カルボン酸金属塩、アルコキシ金属などが挙げられる。このようなシラノール縮合触媒は、A剤に配合されてもよいし、B剤に配合されてもよいが、B剤に配合されることが好ましい。
【0104】
有機錫化合物の具体例としては、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクタノエート、ジブチル錫ビス(ブチルマレエート)、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)、ジブチル錫オキサイドとシリケート化合物との反応物、ジブチル錫オキサイドとフタル酸エステルとの反応物、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ビス(エチルマレエート)、ジオクチル錫ビス(オクチルマレエート)、ジオクチル錫ビス(アセチルアセトナート)、ジオクチル錫ジステアレート、ジオクチル錫オキサイド、ジオクチル錫オキサイドとシリケート化合物との反応物との反応物などが挙げられる。
【0105】
カルボン酸金属塩の具体例としては、カルボン酸錫、カルボン酸ビスマス、カルボン酸チタン、カルボン酸ジルコニウム、カルボン酸鉄、カルボン酸カリウム、カルボン酸カルシウムなどが挙げられる。カルボン酸金属塩としては下記のカルボン酸と各種金属を組み合わせることができる。
【0106】
アルコキシ金属の具体例としては、テトラブチルチタネート、チタンテトラキス(アセチルアセトナート)、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトセテート)などのチタン化合物や、アルミニウムトリス(アセチルアセトナート)、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテートなどのアルミニウム化合物類、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトナート)などのジルコニウム化合物類が挙げられる。
【0107】
その他の硬化触媒として、フッ素アニオン含有化合物、光酸発生剤や光塩基発生剤も使用できる。
【0108】
アミン化合物(C-1)及びカルボン酸(F)以外のシラノール縮合触媒は使用しなくてよいが、使用する場合、その配合量は、ポリオキシアルキレン系重合体(A)と(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)の合計100重量部に対して、0.001重量部以上20重量部程度であってよく、0.01重量部以上15重量部以下であってよく、0.01重量部以上10重量部以下であってもよい。
【0109】
本実施形態に係る硬化性組成物は、有機錫化合物を実質的に含有しないものであってよい。具体的には、硬化性組成物に含まれる有機錫化合物の量は、ポリオキシアルキレン系重合体(A)と(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)の合計100重量部に対して、0.1重量部未満であってもよいし、0.01重量部未満であってもよいし、0.001重量部未満であってもよい。
【0110】
<充填剤>
硬化性組成物には、充填剤を配合することができる。A剤に配合されてもよいし、B剤に配合されてもよい。A剤とB剤それぞれに配合されてもよい。充填剤の配合によって硬化物の強度を向上させることができる。
【0111】
充填剤としては、重質炭酸カルシウム、膠質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイソウ土、クレー、タルク、酸化チタン、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、無水ケイ酸、含水ケイ酸、アルミナ、カーボンブラック、酸化第二鉄、アルミニウム微粉末、酸化亜鉛、活性亜鉛華、PVC粉末、PMMA粉末、ガラス繊維およびフィラメント等が挙げられる。組成物の軽量化(低比重化)の目的で、有機バルーン、無機バルーンを添加してもよい。充填剤としては1種類のみを使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0112】
充填剤の配合量は、ポリオキシアルキレン系重合体(A)と(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)の合計100重量部に対して、1~300重量部が好ましく、10~250重量部がより好ましい。
【0113】
<接着性付与剤>
硬化性組成物には、接着性付与剤を配合することができる。A剤に配合されてもよいし、B剤に配合されてもよいが、A剤に配合されることが好ましい。
接着性付与剤としては、シランカップリング剤、又は、シランカップリング剤の反応物を添加することができる。
【0114】
シランカップリング剤の具体例としては、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-β-アミノエチル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-アミノエチル-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、(2-アミノエチル)アミノメチルトリメトキシシランなどのアミノ基含有シラン類;γ-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、α-イソシアネートメチルトリメトキシシラン、α-イソシアネートメチルジメトキシメチルシラン等のイソシアネート基含有シラン類;γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等のメルカプト基含有シラン類;γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有シラン類、が挙げられる。また、アミノ基含有シランの縮合物、アミノ基含有シランと他のアルコキシシランとの縮合物、等の各種シランカップリング剤の縮合物;アミノ基含有シランとエポキシ基含有シランの反応物、アミノ基含有シランと(メタ)アクリル基含有シランの反応物、等の各種シランカップリング剤の反応物も使用できる。接着性付与剤は1種類のみで使用しても良いし、2種類以上混合使用しても良い。
【0115】
接着性付与剤の配合量は、ポリオキシアルキレン系重合体(A)と(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)の合計100重量部に対して、0.1~20重量部が好ましく、0.5~10重量部がより好ましい。
【0116】
<脱水剤>
硬化性組成物には、脱水剤を添加することができる。A剤の安定性改善のため、脱水剤をA剤に配合してもよい。
ここで、脱水剤とは、水と反応し得る化合物であることが好ましく、水と反応し得るケイ素化合物(但し接着性付与剤に該当する化合物は除く)がより好ましく、トリアルコキシシラン化合物が特に好ましい。
【0117】
前記脱水剤の具体例としては特に限定されないが、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン等のビニル基含有シラン類等が挙げられる。脱水剤は1種類のみで使用してもよいし、2種類以上使用してもよい。
【0118】
脱水剤の配合量は、ポリオキシアルキレン系重合体(A)と(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)の合計100重量部に対して、0.1~20重量部が好ましく、0.5~10重量部がより好ましく、1~5重量部がさらに好ましい。
【0119】
しかし、脱水剤を配合すると、硬化性組成物による初期の接着強度の発現が不十分になる場合がある。そのため、本実施形態に係る硬化性組成物は、脱水剤を含有しない、あるいは、脱水剤の配合量を低減することが好ましい。この観点から、A剤に含まれる脱水剤の配合量は、A剤に含まれるポリオキシアルキレン系重合体(A)と(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)の合計100重量部に対して0重量部以上1重量部以下であることが好ましい。より好ましくは0重量部以上0.5重量部以下であり、さらに好ましくは0重量部以上0.1重量部以下である。
【0120】
<レオロジーコントロール剤>
硬化性組成物には、必要に応じてタレを防止し、作業性を良くするためにレオロジーコントロール剤を添加しても良い。A剤に配合されてもよいし、B剤に配合されてもよいが、A剤に配合されることが好ましい。
【0121】
レオロジーコントロール剤としては特に限定されないが、例えば、脂肪酸アミドワックス類、水添ヒマシ油誘導体類;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸バリウム等の金属石鹸類;乾式シリカ、湿式シリカ等が挙げられる。これらレオロジーコントロール剤は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0122】
レオロジーコントロール剤の配合量は、ポリオキシアルキレン系重合体(A)と(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)の合計100重量部に対して、0.1~20重量部が好ましい。
【0123】
<酸化防止剤>
硬化性組成物には、酸化防止剤(老化防止剤)を使用することができる。酸化防止剤を使用すると硬化物の耐候性を高めることができる。
酸化防止剤としてはヒンダードフェノール系、モノフェノール系、ビスフェノール系、ポリフェノール系が例示できる。酸化防止剤の具体例は特開平4-283259号公報や特開平9-194731号公報にも記載されている。
酸化防止剤の配合量は、ポリオキシアルキレン系重合体(A)と(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)の合計100重量部に対して、0.1~10重量部が好ましく、0.2~5重量部がより好ましい。
【0124】
<光安定剤>
硬化性組成物には、光安定剤を使用することができる。光安定剤を使用すると硬化物の光酸化劣化を防止できる。
光安定剤としてベンゾトリアゾール系、ヒンダードアミン系、ベンゾエート系化合物等が例示できるが、特にヒンダードアミン系が好ましい。
光安定剤の配合量は、ポリオキシアルキレン系重合体(A)と(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)の合計100重量部に対して、0.1~10重量部が好ましく、0.2~5重量部がより好ましい。
【0125】
<紫外線吸収剤>
硬化性組成物には、紫外線吸収剤を使用することができる。紫外線吸収剤を使用すると硬化物の表面耐候性を高めることができる。
紫外線吸収剤としてはベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチレート系、置換アクリロニトリル系及び金属キレート系化合物等が例示できるが、特にベンゾトリアゾール系が好ましく、市販名チヌビンP、チヌビン213、チヌビン234、チヌビン326、チヌビン327、チヌビン328、チヌビン329、チヌビン571(以上、BASF製)が挙げられる。
紫外線吸収剤の配合量は、ポリオキシアルキレン系重合体(A)と(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)の合計100重量部に対して、0.1~10重量部が好ましく、0.2~5重量部がより好ましい。
【0126】
<物性調整剤>
硬化性組成物には、必要に応じて生成する硬化物の引張特性を調整する物性調整剤を添加しても良い。物性調整剤としては特に限定されないが、例えば、フェノキシトリメチルシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン等のアルキルアルコキシシラン類;ジフェニルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシランなどのアリールアルコキシシラン類;ジメチルジイソプロペノキシシラン、メチルトリイソプロペノキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジイソプロペノキシシラン等のアルキルイソプロペノキシシラン;トリス(トリメチルシリル)ボレート、トリス(トリエチルシリル)ボレートなどのトリアルキルシリルボレート類;シリコーンワニス類;ポリシロキサン類等が挙げられる。前記物性調整剤を用いることにより、本実施形態に係る硬化性組成物を硬化させた時の硬度を上げたり、逆に硬度を下げ、破断伸びを出したりし得る。上記物性調整剤は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0127】
特に、加水分解により、分子内に1価のシラノール基を有する化合物を生成する化合物は、硬化物の表面のべたつきを悪化させずに硬化物のモジュラスを低下させる作用を有する。特にトリメチルシラノールを生成する化合物が好ましい。加水分解により分子内に1価のシラノール基を有する化合物を生成する化合物としては、ヘキサノール、オクタノール、フェノール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなどのアルコールの誘導体であって加水分解によりシランモノオールを生成するシリコン化合物を挙げることができる。具体的には、フェノキシトリメチルシラン、トリス((トリメチルシロキシ)メチル)プロパン等が挙げられる。
【0128】
物性調整剤の配合量は、ポリオキシアルキレン系重合体(A)と(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)の合計100重量部に対して、0.1~10重量部が好ましく、0.5~5重量部がより好ましい。
【0129】
<粘着付与樹脂>
硬化性組成物には、基材への接着性や密着性を高める目的、あるいはその他必要に応じて粘着付与樹脂を添加できる。
粘着付与樹脂の具体例としては、テルペン系樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、水素添加テルペン樹脂、テルペン-フェノール樹脂、フェノール樹脂、変性フェノール樹脂、キシレン-フェノール樹脂、シクロペンタジエン-フェノール樹脂、クマロンインデン樹脂、ロジン系樹脂、ロジンエステル樹脂、水添ロジンエステル樹脂、キシレン樹脂、低分子量ポリスチレン系樹脂、スチレン共重合体樹脂、スチレン系ブロック共重合体及びその水素添加物、石油樹脂(例えば、C5炭化水素樹脂、C9炭化水素樹脂、C5C9炭化水素共重合樹脂等)、水添石油樹脂、DCPD樹脂等が挙げられる。これらは単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
粘着付与樹脂の配合量は、ポリオキシアルキレン系重合体(A)と(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)の合計100重量部に対して、2~100重量部が好ましく、5~50重量部がより好ましく、5~30重量部がさらに好ましい。
【0130】
<<硬化性組成物>>
本実施形態に係る硬化性組成物は、反応性ケイ素基含有ポリオキシアルキレン系重合体(A)及び/または反応性ケイ素基含有(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)、並びに、アミン化合物(C-1)又はカルボン酸(F)を含むA剤と、エポキシ樹脂(D)、可塑剤(E)、及び、反応性ケイ素基含有ポリオキシアルキレン系重合体(A)からなる群より選択される少なくとも1種の化合物、並びに、カルボン酸(F)又はアミン化合物(C-1)を含むB剤とから構成され、使用前(硬化させる前)にA剤とB剤を混合する多液型として調製することが好ましい。
本実施形態に係る硬化性組成物は、A剤とB剤のみからなる2液型の硬化性組成物であることが好ましい。
本実施形態に係る硬化性組成物は、A剤とB剤それぞれ単独では硬化しにくく、安定性が良好であるが、A剤とB剤を混合することで良好な硬化性を発現することができる。
【0131】
本実施形態に係る硬化性組成物は、室温で硬化させてもよいし、加熱硬化させてもよい。加熱温度は特に限定されないが、40℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、80℃以上が更に好ましい。しかし、100℃以上になるとB剤中の水(G)が蒸発してボイド発生の原因となり得るため、加熱温度は100℃未満が好ましい。
【0132】
本実施形態に係る硬化性組成物は、プラスチック、金属、複合材などの様々な被着体に対して良好な接着性を示すことができる。また、ポリプロピレンなどの非極性材料やポリフェニレンサルファイドなどの剛直な分子鎖を有するエンジニアリングプラスチックに対する接着剤として使用する場合には、これら被着体に対する接着性を高め、安定した接着強度を得るために、被着体を公知の方法で事前に表面処理することができる。例えば、サンディング処理、フレーム処理、コロナ放電、アーク放電、プラズマ処理などの表面処理技術を使うことができる。被着体へのダメージが少なく、安定した接着性が得られることから、プラズマ処理が好ましい。これらの表面処理は、成形時に使用され被着体表面に残存している離型剤を除去するためにも有効である。
【0133】
好適な態様に係る硬化性組成物は、被着体を接合した後、長時間の硬化(養生)工程を行うことで、目的の物性を発現する一方、長時間の硬化工程を実施する前の初期の接着強度が比較的高いという特性を有し得る。このため、前記硬化性組成物は、連続的に実施されるライン生産方式の中で被着体の接合を行うために好適に使用することができる。
【0134】
硬化性組成物が最終目的の物性を発現するための最終的な硬化(養生)工程の条件としては特に限定されないが、例えば、温度として5~90℃、時間として24時間~1週間などが挙げられる。
【0135】
<<用途>>
本実施形態に係る硬化性組成物は、建造物・船舶・自動車・道路などのシーリング材や、バス、トレーラー、電車などのパネルを接合するための接着剤、粘着剤、防水材などとして使用できる。本実施形態に係る硬化性組成物は、前記用途の中でも、接着剤、特に構造用接着剤として用いることが好ましい。
【0136】
本実施形態に係る硬化性組成物は、アルミニウム-スチール、スチール-複合材、アルミニウム-複合材などの異種材料を接合する用途にも適している。
異種材料の接合では腐食を防止するために接合部をシーラーで覆うことが好ましい。シーラーとしては、本願で示したような反応性ケイ素基を有する重合体を使用することが可能である。
【0137】
本実施形態に係る硬化性組成物は、車両パネルなどの自動車部品、トラック、バスなど大型車両部品、列車車両用部品、航空機部品、船舶用部品、電機部品、各種機械部品などにおいて使用される接着剤として使用されることが好ましい。
【0138】
以下の各項目では、本開示における好ましい態様を列挙するが、本発明は以下の項目に限定されるものではない。
[項目1]
A剤とB剤を含む多液型硬化性組成物であって、
A剤が、下記一般式(1)で表される反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)及び/または下記一般式(1)で表される反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)を含有し、
B剤が、エポキシ樹脂(D)、可塑剤(E)、及び、下記一般式(1)で表される反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含有し、
A剤が、1級アミノ基または2級アミノ基を有するアミン化合物(C-1)を含有し、かつ、B剤がカルボン酸(F)を含有するか、あるいは、
A剤がカルボン酸(F)を含有し、かつ、B剤が、1級アミノ基または2級アミノ基を有するアミン化合物(C-1)を含有する、多液型硬化性組成物。
-SiR 3-a (1)
(式中、Rは、置換又は非置換の炭素数1~20の炭化水素基を表す。Xは水酸基または加水分解性基を表す。aは2または3である。)
[項目2]
A剤が、1級アミノ基または2級アミノ基を有するアミン化合物(C-1)を含有し、B剤が、エポキシ樹脂(D)及びカルボン酸(F)を含有する、項目1に記載の多液型硬化性組成物。
[項目3]
A剤が、3級アミノ基を有するアミン化合物(C-2)をさらに含有する、項目2に記載の多液型硬化性組成物。
[項目4]
B剤が、可塑剤(E)、及び、反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含有する、項目1~3のいずれかに記載の多液型硬化性組成物。
[項目5]
A剤が、1級アミノ基または2級アミノ基を有するアミン化合物(C-1)を含有し、B剤が、カルボン酸(F)を含有する項目1~4のいずれかに記載の多液型硬化性組成物。
[項目6]
B剤が、水(G)をさらに含有する、項目1~5のいずれかに記載の多液型硬化性組成物。
[項目7]
水(G)の量が、反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)と反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)の合計100重量部に対して0.5重量部以上である、項目6に記載の多液型硬化性組成物。
[項目8]
A剤に含まれる脱水剤の量が、A剤に含まれる反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)と反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)の合計100重量部に対して0重量部以上1重量部以下である、項目1~7のいずれかに記載の多液型硬化性組成物。
[項目9]
A剤とB剤からなる2液型の硬化性組成物である、項目1~8のいずれか1項に記載の多液型硬化性組成物。
[項目10]
項目1~9のいずれか1項に記載の多液型硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物。
【実施例0139】
以下に、実施例を掲げて本発明を具体的に説明するが、本実施例は本発明を限定するものではない。
【0140】
実施例中の数平均分子量は以下の条件で測定したGPC分子量である。
送液システム:東ソー製HLC-8120GPC
カラム:東ソー製TSK-GEL Hタイプ
溶媒:THF
分子量:ポリスチレン換算
測定温度:40℃
【0141】
実施例中の末端基換算分子量は、水酸基価をJIS K 1557の測定方法により、ヨウ素価をJIS K 0070の測定方法により求め、有機重合体の構造(使用した重合開始剤によって定まる分岐度)を考慮して求めた分子量である。
【0142】
実施例に示す重合体(Q)の末端1個あたりへの炭素-炭素不飽和結合の平均導入数は以下の計算式により算出した。
(平均導入数)=[ヨウ素価から求めた重合体(Q)の不飽和基濃度(mol/g)-ヨウ素価から求めた前駆重合体(P)の不飽和基濃度(mol/g)]/[水酸基価から求めた前駆重合体(P)の水酸基濃度(mol/g)]。
【0143】
実施例に示す重合体(A)の末端1個あたりへのシリル基の平均導入数はNMR測定により算出した。
【0144】
(合成例1)
数平均分子量が約2,000のポリオキシプロピレングリコールを開始剤とし、亜鉛ヘキサシアノコバルテートグライム錯体触媒にてプロピレンオキサイドの重合を行い、両末端に水酸基を有する数平均分子量28,500(末端基換算分子量17,700)、分子量分布Mw/Mn=1.21のポリオキシプロピレン(P)を得た。
得られた水酸基末端ポリオキシプロピレンの水酸基に対して1.0モル当量のナトリウムメトキシドを28%メタノール溶液として添加した。真空脱揮によりメタノールを留去した後、水酸基末端ポリオキシプロピレンの水酸基に対して、1.0モル当量のアリルグリシジルエーテルを添加して130℃で2時間反応を行った。その後、0.28モル当量のナトリウムメトキシドのメタノール溶液を添加してメタノールを除去し、さらに1.79モル当量の塩化アリルを添加して末端の水酸基をアリル基に変換した。得られた未精製のアリル基末端ポリオキシプロピレン100重量部に対し、n-ヘキサン300重量部と、水300重量部を混合攪拌した後、遠心分離により水を除去した後、得られたヘキサン溶液に更に水300重量部を混合攪拌し、再度遠心分離により水を除去した後、ヘキサンを減圧脱揮により除去した。以上により、炭素-炭素不飽和結合を2個以上有する末端構造を有するポリオキシプロピレン(Q)を得た。この重合体は1つの末端部位に炭素-炭素不飽和結合が平均2.0個導入されていることがわかった。
得られた1つの末端部位に炭素-炭素不飽和結合を平均2.0個有するポリオキシプロピレン100重量部に対し白金ジビニルジシロキサン錯体(白金換算で3重量%のイソプロパノール溶液)72ppmを加え、撹拌しながら、トリメトキシシラン2.2重量部をゆっくりと滴下した。その混合溶液を90℃で2時間反応させた後、未反応のトリメトキシシランを減圧下留去する事により、1つの末端部位にトリメトキシシリル基を平均1.6個含み、1分子当たりのトリメトキシシリル基が平均3.2個、数平均分子量が28,500である直鎖状の反応性ケイ素基含有ポリオキシプロピレン重合体(A-1)を得た。
【0145】
(合成例2)
数平均分子量が約2,000のポリオキシプロピレングリコールを開始剤とし、亜鉛ヘキサシアノコバルテートグライム錯体触媒にてプロピレンオキサイドの重合を行い、両末端に水酸基を有する数平均分子量28,500(末端基換算分子量17,700)、分子量分布Mw/Mn=1.21のポリオキシプロピレン(P)を得た。
得られた水酸基末端ポリオキシプロピレンの水酸基に対して1.0モル当量のナトリウムメトキシドを28%メタノール溶液として添加した。真空脱揮によりメタノールを留去した後、水酸基末端ポリオキシプロピレンの水酸基に対して、1.0モル当量のアリルグリシジルエーテルを添加して130℃で2時間反応を行った。その後、0.28モル当量のナトリウムメトキシドのメタノール溶液を添加してメタノールを除去し、さらに1.79モル当量の塩化アリルを添加して末端の水酸基をアリル基に変換した。得られた未精製のアリル基末端ポリオキシプロピレン100重量部に対し、n-ヘキサン300重量部と、水300重量部を混合攪拌した後、遠心分離により水を除去した後、得られたヘキサン溶液に更に水300重量部を混合攪拌し、再度遠心分離により水を除去した後、ヘキサンを減圧脱揮により除去した。以上により、炭素-炭素不飽和結合を2個以上有する末端構造を有するポリオキシプロピレン(Q)を得た。この重合体は1つの末端部位に炭素-炭素不飽和結合が平均2.0個導入されていることがわかった。
得られた1つの末端部位に炭素-炭素不飽和結合を平均2.0個有するポリオキシプロピレン100重量部に対し白金ジビニルジシロキサン錯体(白金換算で3重量%のイソプロパノール溶液)36ppmを加え、撹拌しながら、ジメトキシメチルシラン1.9重量部をゆっくりと滴下した。その混合溶液を90℃で2時間反応させた後、未反応のジメトキシメチルシランを減圧下留去する事により、1つの末端部位にジメトキシメチルシリル基を平均1.6個含み、1分子当たりのジメトキシメチルシリル基が平均3.2個、数平均分子量が28,500である直鎖状の反応性ケイ素基含有ポリオキシプロピレン重合体(A-2)を得た。
【0146】
(合成例3)
攪拌機を備えた四口フラスコにイソブタノール42.9重量部を入れ、窒素雰囲気下、105℃まで昇温した。そこに、メチルメタクリレート65.0重量部、2-エチルヘキシルアクリレート25.0重量部、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン10.0重量部、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン7.2重量部、及び2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)1.8重量部をイソブタノール16.4重量部に溶解した混合溶液を5時間かけて滴下した。さらに2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.7重量部をイソブタノール6.3重量部に溶解した混合溶液を加え105℃で2時間重合を行い、1分子あたりのケイ素基が平均1.6個、数平均分子量が2,300である反応性ケイ素基含有(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B-1)のイソブタノール溶液(固形分60%)を得た。固形分の反応性ケイ素基当量は0.72mmol/gである。
【0147】
(実施例1)
合成例1で得られた反応性ケイ素基含有ポリオキシプロピレン重合体(A-1)42重量部と、合成例3で得られた反応性ケイ素基含有(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B-1)のイソブタノール溶液を固形分が28重量部となるように混合した後、イソブタノールを加熱脱揮した。得られた混合物に、安定剤としてノクラックCD(酸化防止剤、大内新興化学工業(株)製)1重量部、アデカスタブAO-60(酸化防止剤、(株)ADEKA製)1重量部、DINP(フタル酸ジイソノニル、(株)ジェイ・プラス製)4重量部、充填剤としてCCR-S10(コロイド炭酸カルシウム、白石工業(株)製)12.5重量部、アサヒサーマル(カーボンブラック、旭カーボン(株)製)0.05重量部、レオロジーコントロール剤としてCrayvallac SL(脂肪酸アミドワックス、ARKEMA製)3重量部を、プラネタリーミキサーを用いて混合し、120℃で1時間減圧加熱脱水した。得られた組成物を冷却し、アミン化合物(C-1)として4-メチルピペリジン0.5重量部、アミン化合物(C-2)としてAncamineK54(EVONIK製)7重量部、接着性付与剤としてKBM-603(N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業(株)製)2重量部を混合してA剤を得た。
【0148】
次に、エポキシ樹脂(D)としてjER828(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、三菱化学(株)製)30重量部、可塑剤(E)としてDINP 5.3重量部、無機充填剤としてCCR-S10(コロイド炭酸カルシウム、白石工業(株)製)18.5重量部、R-820(酸化チタン、石原産業(株)製)2重量部、レオロジーコントロール剤としてNIPGEL CX-200(湿式シリカ、東ソーシリカ(株)製)1.2重量部、カルボン酸(F)としてネオデカン酸4重量部を、プラネタリーミキサーを用いて混合し、B剤を得た。
【0149】
(混合方法)
実施例1で作製したA剤とB剤を、A剤:B剤=1.6:1(重量比)、又は2:1(体積比)となるように2液混合用カートリッジ(NORDSON(株)製)に充填した。エレメント径10mm、エレメント数が24段のスタティックミキサーを用いて、A剤とB剤を混合して混合物を得た。
【0150】
(皮張り時間)
23℃、相対湿度50%の雰囲気下にて、前記混合物を、厚さ約5mmの型枠にスパチュラを用いて充填し、表面を平面状に整えた時間を硬化開始時間とした。表面をスパチュラで触り、スパチュラに組成物が付着しなくなるまでの時間を皮張り時間として硬化時間の測定を行った。
また、混合する前のA剤とB剤それぞれを用いて、同様に皮張り時間を測定した。以上の結果を表1に示す。
【0151】
(実施例2~4、比較例1~4)
表1に示す配合に変更した以外は実施例1と同様にA剤及びB剤を作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
【0152】
【表1】
(1):酸化防止剤(大内新興化学工業(株))
(2):酸化防止剤((株)ADEKA)
(3):N,N-ジエチル-1,3-プロパンジアミン
(4):2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(EVONIK)
(5):フタル酸ジイソノニル((株)ジェイプラス)
(6):ポリプロピレングリコール(三井化学(株))
(7):コロイド炭酸カルシウム(白石工業(株))
(8):カーボンブラック(旭カーボン(株))
(9):脂肪酸アミドワックス(ARKEMA)
(10):N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株))
(11):ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株))
(12):酸化チタン(石原産業(株))
(13):湿式シリカ(東ソー・シリカ(株))
【0153】
表1より、A剤にアミン化合物(C-1)を配合し、B剤にカルボン酸(F)を配合した実施例1~4では、A剤、B剤それぞれは硬化しにくいにも関わらず、A剤とB剤を混合した後の皮張り時間は短く、硬化性が良好であることが分かる。
一方、アミン化合物(C-1)又はカルボン酸(F)を使用していない比較例1及び2では、A剤とB剤を混合した後も皮張り時間は長く、硬化性が不十分であることが分かる。また、A剤にアミン化合物(C-1)とカルボン酸(F)を共に配合した比較例3では、A剤とB剤を混合する前のA剤の皮張り時間が短く、A剤の大気中での安定性が悪かった。さらに、B剤にアミン化合物(C-1)とカルボン酸(F)を共に配合した比較例4では、B剤の大気中での安定性が悪かった。
【0154】
(実施例5~7、比較例5)
表2に示す配合に変更した以外は実施例1と同様にA剤及びB剤を作製し、評価を行った。さらに下記の方法により接着強度を測定した。結果を表2に示す。
【0155】
(接着強度)
被着体として使用する鋼板(SS400)をサンドペーパー#400を用いて磨き、へプタンで脱脂した。A剤とB剤の混合物を一方の被着体に塗布した後、接着面積25mm×12.5mm、厚み0.5mmとなるようにもう一方の被着体を張り合わせた。この張り合わせた時間を開始時間として、23℃50%RH条件下で2時間後養生した後、試験速度を10mm/minとして剪断接着強度を測定した。結果を表2に示す。
【0156】
【表2】
(1):酸化防止剤(大内新興化学工業(株))
(2):酸化防止剤((株)ADEKA)
(3):ポリプロピレングリコール(三井化学(株))
(4):コロイド炭酸カルシウム(白石工業(株))
(5):カーボンブラック(旭カーボン(株))
(6):アマイドワックス(ARKEMA)
(7):ビニルトリメトキシシラン(MOMENTIVE)
(8):N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株))
(9):ポリプロピレングリコール(Covestro AG)
(10):酸化チタン(石原産業(株))
(11):乾式シリカ(日本アエロジル(株))
【0157】
表2より、A剤にアミン化合物(C-1)を配合し、B剤にカルボン酸(F)を配合した実施例5~6、及び、A剤にカルボン酸(F)を配合し、B剤にアミン化合物(C-1)を配合した実施例7では、A剤、B剤それぞれは硬化しにくいにも関わらず、A剤とB剤を混合した後の皮張り時間は短く、硬化性が良好であることが分かる。
一方、A剤にアミン化合物(C-1)とカルボン酸(F)を共に配合した比較例5では、A剤とB剤を混合する前のA剤の皮張り時間が短く、A剤の大気中での安定性が悪かった。
【0158】
比較例5では、A剤の安定性を改善する目的で脱水剤を添加したが、それにも関わらずA剤の大気中での安定性は悪かった。これに対し、実施例5のA剤は、脱水剤を配合していなくても安定性が良好であった。
また、実施例5と比較例5はA剤とB剤を混合した後の皮張り時間は同じであるが、初期(2時間養生後)の接着強度は実施例5のほうが良好であった。これは、実施例5において脱水剤を配合していないことが原因と推測される。