(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141602
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置及び記録方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20241003BHJP
B41J 2/175 20060101ALI20241003BHJP
C09D 11/30 20140101ALI20241003BHJP
【FI】
B41J2/01 501
B41J2/175 169
B41J2/175 141
C09D11/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053341
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100080953
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 克郎
(72)【発明者】
【氏名】内田 健太
【テーマコード(参考)】
2C056
4J039
【Fターム(参考)】
2C056EA15
2C056FC01
2C056KC09
2C056KD02
4J039BB01
4J039BD02
4J039BE01
4J039BE12
4J039BE16
4J039BE22
4J039BE28
4J039BE30
4J039BE32
4J039CA06
4J039EA36
4J039EA46
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】インク組成物がインク収容容器から溢れることを抑制できるインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】インク注入口を有するインク収容容器と、インク組成物と、インク収容容器から供給されるインク組成物を吐出するインクジェットヘッドと、を含むインクジェット記録装置であって、インク収容容器は、第1インク収容容器と、収容容器の底からインク注入口までの高さが第1インク収容容器よりも低い第2インク収容容器と、を含み、インク組成物は、第1インク収容容器に収容される第1インク組成物と、第2インク収容容器に収容される第2インク組成物と、を含み、第1インク組成物は、第2インク組成物よりも、起泡性が小さい、インクジェット記録装置。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク注入口を有するインク収容容器と、インク組成物と、前記インク収容容器から供給される前記インク組成物を吐出するインクジェットヘッドと、を含むインクジェット記録装置であって、
前記インク収容容器は、第1インク収容容器と、収容容器の底から前記インク注入口までの高さが前記第1インク収容容器よりも低い第2インク収容容器と、を含み、
前記インク組成物は、前記第1インク収容容器に収容される第1インク組成物と、前記第2インク収容容器に収容される第2インク組成物と、を含み、
前記第1インク組成物は、前記第2インク組成物よりも、起泡性が小さい、
インクジェット記録装置。
【請求項2】
前記第1インク組成物及び前記第2インク組成物は、JIS K 3362-2008に準拠して測定される起泡性が60mm以下である、
請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記第1インク収容容器及び前記第2インク収容容器は、収容容器の底から前記インク注入口までの高さが300mm以下である、
請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記第1インク組成物及び前記第2インク組成物は、樹脂粒子及び顔料分散剤樹脂の合計含有量が、組成物の全量に対して6.0質量%以下である、
請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記第1インク組成物は、前記第2インク組成物よりも、樹脂粒子及び顔料分散剤樹脂の合計含有量が少ない、
請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記第1インク収容容器は、前記第2インク収容容器よりも、容積が大きい、
請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記第1インク組成物及び前記第2インク組成物は、それぞれ独立に、ブラックインク、シアンインク、イエローインク又はマゼンタインクのいずれかである、
請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記第1インク収容容器と前記第2インク収容容器は、インクジェット記録装置におけるインク注入口の高さが同じである、
請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
前記第1インク組成物は自己分散顔料を含有し、前記第2インク組成物は樹脂分散顔料を含有する、
請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項10】
請求項1~請求項9のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置を用いる記録方法であって、
前記第1インク収容容器に収容された前記第1インク組成物及び前記第2インク収容容器に収容された前記第2インク組成物を、前記インクジェットヘッドに供給する工程と、
前記第1インク組成物及び前記第2インク組成物を前記インクジェットヘッドから吐出して記録媒体に付着させる工程と、を含む、
記録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置及び記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録用の記録ヘッドのノズルから吐出させた微小なインク滴によって、記録媒体に画像等を記録するインクジェット記録装置が知られている。
また、リモートワークやSOHOが増え、家庭などでインクジェット記録装置を用いる機会も増加している。
インクジェット記録装置は、記録ヘッドにインク組成物を供給するためのインク容器(例えば、インクカートリッジなど)を有する。
【0003】
このようなインク容器としては、例えば、インク容器内のインク組成物が一定量以下になった場合に、インク容器自体を交換するタイプ(いわゆるインクカートリッジ)、インク容器を交換せずに連続供給型のインク容器内にインク組成物を補充するタイプ(いわゆる連続供給型インク容器)等が知られている。
【0004】
例えば、特許文献1には、インク組成物を補充可能なインク室と開閉可能なインク注入口とを有し、インク室が外気と連通可能なインク容器に注入されるインク組成物であって、顔料と、樹脂と、有機溶剤と、を含有し、インク室を区画する壁の内側を構成する部材との静的接触角が、10°以上である、インク組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
インク収容容器としては、例えば、上述の連続供給型インク容器(本明細書中、CISSタンクともいう。)が挙げられる。CISSタンクは、インクカートリッジを交換する手間がなく連続印刷ができるという利点を有する。また交換するたびにインクカートリッジを必要とせず、インクだけをインク収容容器に補充すればすむ。
一方で、CISSタンクは、インク注入時に、気泡が発生して注入口まで達すると、気泡がインク収容容器からあふれることがある。
インク組成物の泡立ちにより、インク組成物がインク収容容器から溢れることを抑制することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した。その結果、所定の構成を含むインクジェット記録装置を用いることにより上記課題を解決できることを見出して、本発明を完成させた。
【0008】
本発明は以下のとおりである。
本発明のインクジェット記録装置は、インク注入口を有するインク収容容器と、インク組成物と、前記インク収容容器から供給される前記インク組成物を吐出するインクジェットヘッドと、を含むインクジェット記録装置であって、前記インク収容容器は、第1インク収容容器と、収容容器の底から前記インク注入口までの高さが前記第1インク収容容器よりも低い第2インク収容容器と、を含み、前記インク組成物は、前記第1インク収容容器に収容される第1インク組成物と、前記第2インク収容容器に収容される第2インク組成物と、を含み、前記第1インク組成物は、前記第2インク組成物よりも、起泡性が小さい。
本発明の記録方法は、本発明のインクジェット記録装置を用いる記録方法であって、前記第1インク収容容器に収容された前記第1インク組成物及び前記第2インク収容容器に収容された前記第2インク組成物を、前記インクジェットヘッドに供給する工程と、前記第1インク組成物及び前記第2インク組成物を前記インクジェットヘッドから吐出して記録媒体に付着させる工程と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】インク収容容器の一実施形態を表す概略図である。
【
図5】本実施形態のインクジェット記録装置の一例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0011】
1.インクジェット記録装置
本実施形態のインクジェット記録装置は、インク注入口を有するインク収容容器と、インク組成物と、インク収容容器から供給されるインク組成物を吐出するインクジェットヘッドと、を含むインクジェット記録装置であって、
インク収容容器は、第1インク収容容器と、収容容器の底からインク注入口までの高さが第1インク収容容器よりも低い第2インク収容容器と、を含み、
インク組成物は、第1インク収容容器に収容される第1インク組成物と、第2インク収容容器に収容される第2インク組成物と、を含み、
第1インク組成物は、第2インク組成物よりも、起泡性が小さい。
【0012】
インク組成物は、組成により起泡性が異なる。例えば、樹脂粒子(乳化剤分散型)及び樹脂分散顔料は分散剤(乳化剤)であるため泡立ちの原因となる傾向にある。顔料を分散する分散剤も泡立ちの原因となる傾向にある。
また、注入口から底までの高さの長いタンクは、インクの落下距離が長いため、気泡が発生しやすい。
【0013】
本実施形態のインクジェット記録装置は、上記構成を含むことで、インク組成物の泡立ちにより、インク組成物がインク収容容器から溢れることを抑制できる。
【0014】
本実施形態のインクジェット記録装置としては、特に言及のない限り、形態に制限がない。
例えば、各色ごとのインク収容容器(例えばCISSタンク)において、インク注入口から底まで高さは、インク収容容器の設計又はレイアウトにより異なっていてもよい。例えば、インク注入口から底までの高さが高いインク収容容器としてもよい。例えば、プリンタの横方向の長さをコンパクトにするために、インク収容容器を2段で上積みする場合に、通常のインク収容容器2個分の高さのインク収容容器を設けてもよい。
または、容量が大きいインク収容容器を用いる場合に、インク収容容器の横方向の幅を長くしてもよい。レイアウトの観点から、インク収容容器の横方向の幅を長くしたくない場合はインク収容容器の高さを高くしてもよい。その場合、各色ごとのCISSタンクにおいて、注入口からタンク底まで高さが異なっていてもよい。
また、各色ごとのCISSタンクにおいて、容量は同じで、高さがそれぞれ異なるように自由なレイアウトとしてもよい。
【0015】
1.1.インク収容容器
本実施形態のインクジェット記録装置において、インク収容容器はインク注入口を有する。インク収容容器は、第1インク収容容器と、収容容器の底からインク注入口までの高さが第1インク収容容器よりも低い第2インク収容容器と、を含む。インク収容容器を単に収容容器ともいう。
【0016】
収容容器の底からインク注入口までの高さは、収容容器本体の高さだけでなく、インク注入口の部分も含めた高さを意味する。例えば、収容容器の横方向の幅が広くならないようにする観点からインク収容容器を上下2段に設置する場合に、下のインク収容容器のインク注入口を上のインク収容容器まで伸ばして、上下2段のインク収容容器間でインク注入口の位置を同じ高さにしてもよい。この場合、上段のインク収容容器の収容容器の底からインク注入口までの高さよりも、下段のインク収容容器の収容容器の底からインク注入口までの高さが高くなるため、上段のインク収容容器が第2インク収容容器に相当し、下段のインク収容容器が第1インク収容容器に相当する。
【0017】
第1インク収容容器と第2インク収容容器は、収容容器におけるインク注入口の位置が異なっていてもよい。例えば、第1インク収容容器と第2インク収容容器は、インク注入口を備えるインク注入管と収容容器本体との連結部分の位置が異なっていてもよく、インク注入口の高さが異なっていてもよい。
インク注入口の位置が異なることで、隣り合うインク収容容器間でインクが付着しあって混合することを抑制できる傾向がある。
【0018】
第1インク収容容器と第2インク収容容器は、インクジェット記録装置におけるインク注入口の高さ(インク注入口の上下方向の位置)が同じであってもよく、異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。
インク注入口の高さが同じであることにより、インク注入口の位置が確認しやすく、各インク収容容器に対してインクを注入しやすくなる傾向にある。
【0019】
第1インク収容容器及び第2インク収容容器は、泡立ちを抑制する観点から、それぞれ、収容容器の底からインク注入口までの高さが400mm以下が好ましい。さらには、300mm以下であることが好ましく、250mm以下であることが好ましく、200mm以下であることが好ましい。さらには150mm以下が好ましい。
【0020】
第1インク収容容器及び第2インク収容容器は、インクの収容量の観点から、それぞれ、収容容器の底からインク注入口までの高さが10mm以上であることが好ましく、50mm以上であることが好ましく、70mm以上であることが好ましく、90mm以上であることが好ましく、100mm以上であることが好ましい。
【0021】
泡立ち抑制とインクの収容量の観点から、第1インク収容容器の収容容器の底からインク注入口までの高さと、第2インク収容容器の収容容器の底からインク注入口までの高さとの差は、好ましくは、10mm~300mmであり、20mm~200mmであり、30mm~180mmであり、50mm~150mmであり、75mm~125mmである。
【0022】
第1インク収容容器及び第2インク収容容器は、それぞれ、容積が10cm3~500cm3であることが好ましく、40cm3~400cm3であることが好ましく、80cm3~300cm3であることが好ましい。
さらに第1インク収容容器の容積は、40cm3~500cm3が好ましく、80cm3~300cm3がより好ましく、100cm3~250cm3がさらに好ましく、130cm3~200cm3が特に好ましい。第2インク収容容器の容積は、10cm3~400cm3が好ましく、40cm3~200cm3がより好ましく、60cm3~150cm3がさらに好ましく、70cm3~120cm3が特に好ましい。
【0023】
インク収容容器の底からインク注入口までの高さは、第1インク収容容器や第2インク収容容器ごとに独立したものである。容積も、第1インク収容容器や第2インク収容容器ごとに独立したものであってもよい。
【0024】
第1インク収容容器の容積と、第2インク収容容器の容積との差は、好ましくは、30cm3~180cm3であり、50cm3~150cm3であり、60cm3~125cm3である。さらには、60cm3~100cm3が好ましい。第1インク収容容器は第2インク収容容器よりも容積が大きいことが好ましい。
なおインク収容容器の容積は、後述するインク供給管の容積を含めないものとする。
【0025】
第1インク収容容器は、第2インク収容容器よりも、容積が大きいことが好ましい。
【0026】
インク収容容器は、具体的には下記の態様であってもよい。
インク収容容器は、インクジェットヘッドにインク組成物を供給する。インク収容容器は、上部に設けられたインク注入口と、インク注入口及び外気に連通する液体収容部とを有していてもよい。利用者は、インクボトルの補充口をインク収容容器のインク注入口に挿入して、インクボトルに収容されたインクをインク収容容器に注入できる。つまり、インク収容容器は、インク収容容器に収容されたインクが無くなっても、インク収容容器を交換せずに、外部からインクを補充する、いわゆる連続供給型のインク収容容器であることが好ましい。インク組成物の泡立ちの課題は、特にインクの注ぎ足し時において生じることが少なくないため、本実施形態のインクジェット記録装置は、インクの注ぎ足しが可能な連続供給型のインク収容容器を有することが好ましい。
【0027】
このようなインクの注ぎ足しが可能な連続供給型のインク収容容器を備えるインクジェットプリンターは、オフィスやSOHOなどで、普通紙に文字や画像を印字することに使用される場合がある。
【0028】
図5は、本実施形態のインクジェット記録装置の一例を模式的に示す斜視図である。インクジェット記録装置1は、インク収容容器50と、インク収容容器からインクジェットヘッド17に向かいインクを供給するインク供給管24とを有する。インク収容容器50からインクジェットヘッド17までの間の中継個所に、サブタンク20を有し、インク供給経路24を介して供給されたインクはサブタンク20に一時的に貯留され、インクジェットヘッド17に供給される。
【0029】
インクジェットヘッド17は、インク組成物(以下、単に「インク」ともいう。)の液滴を吐出して記録媒体上に画像を記録する。
また、サブタンク20およびインクジェットヘッド17を搭載してX軸方向に往復動可能なキャリッジ16と、記録媒体を給紙する給紙口12と、記録媒体を排紙する排紙口14と、給紙口12に給紙される記録媒体を支持する支持部13と、を有する。
インクジェットヘッド17は、記録媒体の記録面と対向する位置に設けられたノズル面(図示せず)を有し、当該ノズル面に設けられた複数のノズル(図示せず)から液滴状にしたインクを吐出して、記録媒体の記録面に付着させる。
【0030】
インクジェット記録方式としては、例えば、ノズルとノズルの前方に置いた加速電極の間に強電界を印加し、ノズルから液滴状のインクを連続的に吐出させ、インクの液滴が偏向電極間を飛翔する間に印刷情報信号を偏光電極に与えて記録する方式、インクの液滴を偏向することなく印刷情報信号に対応して吐出させる方式(静電吸引方式)、小型ポンプでインク液に圧力を加え、ノズルを水晶振動子等で機械的に振動させることにより、強制的にインクの液滴を吐出させる方式、インクに圧電素子で圧力と印刷情報信号を同時に加え、インクの液滴を吐出・記録させる方式(ピエゾ方式)、インクを印刷情報信号にしたがって微小電極で加熱発泡させ、インク滴を吐出・記録させる方式(サーマルジェット方式)等を用いることができる。
【0031】
サブタンク20は、
図5では、インク収容容器50に収容される各色のインクに対応するように、一例として、色毎に4つのサブタンク20Bk、20Cn、20Ma、20Ywが設けられている。なおインクジェットヘッド17も、各色のインクに対応して4個有している。
キャリッジ16は、インクジェットヘッド17およびサブタンク20を搭載し、モーターやタイミングベルト等からなるキャリッジ移動機構(図示せず)により、X軸に沿って往復動するものである。このようなキャリッジ16の移動に伴って、インクジェットヘッド17もX軸方向に沿って往復動するので、記録媒体へのX軸方向への画像の記録は、キャリッジ16の移動に伴うインクジェットヘッド17のインクの吐出により行われる。本実施形態では、いわゆるシリアルヘッドタイプのインクジェット記録装置を例に挙げて説明するが、これに限定されず、本発明に係るインク容器は、いわゆるラインヘッドタイプのインクジェット記録装置にも適用できる。
【0032】
排紙口14は、インクジェット記録装置1の前面に設けられている。また、給紙口12は、インクジェット記録装置1の背面側に設けられている。給紙口12に記録媒体をセットして記録動作を実行することで給紙口12から記録媒体が給紙され、内部で画像等が記録された後、排紙口14から印刷用紙が排出される。記録媒体の搬送は、Y軸方向に紙送りするための紙送り機構(図示せず)によって行うことができる。このように、記録媒体へのY軸方向への画像の記録は、紙送り機構による記録媒体の移動に伴うインクジェットヘッド17のインクの吐出により行うことができる。
【0033】
インクジェット記録装置1は、インクジェット記録装置1の全体の動作を制御する制御部(図示せず)を有し、制御部は、例えばCPUとROMとRAMとを備えていてもよい。制御部は、キャリッジ16を往復動させる動作や、記録媒体を紙送りする動作、インクジェットヘッド17からインクを吐出する動作、インク収容容器50からインクを供給する動作などの動作を制御する。
【0034】
インク収容容器50は、
図5ではインク収容容器の全体が示されているが、内部にはインク毎に分けられた複数個のインク収容容器を有し、インク毎に、インク供給経路24とインク注入口54を有する。インク注入口54は、インクを注入しない時には、図示しないキャップなどのフタがされており、フタは開閉可能となっており、インク注入時にはフタを開けてインクを注入する。
【0035】
インク収容容器50は、内部を壁で仕切ることによって、複数個のインク収容容器とするようにしても良いし、インク収容容器の複数個を並べて配置しても良い。このようにしてインク毎の複数個のインク収容容器とする。
複数個のインク収容容器の位置関係は、限られるものではなく、例えば、上下方向(Z方向)に並べてもよいし、横方向(X方向又はY方向)に並べてもよい。上下方向に並べる場合、インク収容容器の全体の横方向の長さが小さくなり、しいてはインクジェット記録装置の横方向の長さが小さくなり、インクジェット記録装置の設置面積を小さくすることができ好ましい。
複数個のインク注入口54の位置関係も限られるものでは無く、上下方向(Z方向)に並べてもよいし、横方向(X方向又はY方向)に並べてもよい。インク注入口54の上下方向の高さが揃っている場合、インク注入時にインク注入口の位置を確認し易く、インクが注入し易く好ましい。
【0036】
インク収容容器の一実施形態について、
図1を用いて説明する。
図1は、インク収容容器の一実施形態を表す概略図である。
図5のインク収容容器の1例の内部を詳細に示すものである。
インク収容容器は、例えば、第1インク収容容器101と、収容容器の底からインク注入口103までの高さが第1インク収容容器101よりも低い第2インク収容容器102と、を含む。第1インク収容容器101には第1インク組成物105が、第2インク収容容器102には第2インク組成物106が、それぞれ収容される。第1インク組成物105及び第2インク組成物106は、インク注入口103から注入され、インク注入管104を介して、それぞれ、第1インク収容容器101及び第2インク収容容器102に充填される。
図1に示す通り、第1インク収容容器101及び第2インク収容容器102は、上下2段に積載してもよい。その場合、下の収容容器のインク注入管104を、上の収容容器のインク注入管104におけるインク注入口103まで延ばして、上下の収容容器において、インクジェット記録装置におけるインク注入口の高さ(上下方向の位置)を同じにしてもよい。
【0037】
図1では、インク収容容器はインク注入管104を有しているが、インク注入管104は、インク注入口103の上下方向の位置を調節するなどの場合に有すればよく、インク注入管104を有しなくてもよい。インク注入管104を有しない場合、インク収容容器はインク注入管104を介せずにインク注入口103を有していればよい。
例えばインク収容容器を上下方向に並べる場合、下に配置するインク収容容器はインク注入管を有し、下に配置するインク収容容器はインク注入管を有さらに又は有する、としてもよい。またインク収容容器におけるインク注入管の位置は図のものに限られない。
【0038】
収容容器の底からインク注入口までの高さは、インク収容容器の内側の底から、インク注入口までの高さである。なお「収容容器の底からインク注入口までの高さ」と記載しているが、つまり「インク収容容器の底からインク注入口までの高さ」である。
【0039】
インク注入口は、インク収容容器がインク注入管を有する場合は、インク注入管の上端であり、インク収容容器がインク注入管を有しない場合は、例えば
図1のインク注入管とインク収容容器との連結部分の位置に設ければよい。
【0040】
上述したように、第1インク収容容器101及び第2インク収容容器102の位置関係は、
図1のものに限られず、上下方向に並べてもよいし、横方向に並べてもよい。また、第1インク収容容器101のインク注入口及び第2インク収容容器102のインク注入口の位置関係も、
図1のものに限られず、上下方向に並べてもよいし、横方向に並べてもよい。
【0041】
また各インク収容容器の形状も、
図1のような6面体に限られず、6面対以外の多面体、多面体以外の形状などでもよい。各インク収容容器の上下方向、横方向(図の左右方向及び前後方向)の長さも、
図1のものに限られず、上下方向に長いものや、左右方向に長いもの、前後方向に長いものなどがあげられる。
【0042】
1.2.インクジェットヘッド
インクジェットヘッドは、インク収容容器から供給されるインク組成物を吐出する。
インクジェットヘッドは、記録媒体の記録面と対向する位置に設けられたノズル面を有し、上記ノズル面に設けられた複数のノズルから液滴状にしたインクを吐出して、記録媒体の記録面に付着させてもよい。
【0043】
1.3.インク組成物
本実施形態のインクジェット記録装置は、インク組成物を含む。
また、インク組成物は、第1インク収容容器に収容される第1インク組成物と、第2インク収容容器に収容される第2インク組成物と、を含み、第1インク組成物は、第2インク組成物よりも、起泡性が小さい。
【0044】
本実施形態におけるインク組成物は、記録装置、インク収容容器などの構造及び性質に基づいて要求特性を満たすように設計されてもよい。
以下、本実施形態におけるインク組成物(以下、単に「インク」ともいう。)に含まれ得る成分について説明する。
【0045】
1.3.1.色剤
本実施形態におけるインクは、色剤を含有してもよい。色剤は、顔料、染料などがあげられる。顔料は、染料と比較して、耐水性、耐ガス性、耐光性等に優れる。
【0046】
顔料としては、無機顔料や有機顔料等の公知の顔料を使用できる。
無機顔料としては、以下に限定されないが、例えば、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエロー、カーボンブラック、紺青、及び金属粉が挙げられる。
【0047】
有機顔料としては、以下に限定されないが、例えば、アゾ顔料、多環式顔料、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、及びアニリンブラック等が挙げられる。これらの中でも、アゾ顔料及び多環式顔料が好ましい。
アゾ顔料としては、以下に限定されないが、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、及びキレートアゾ顔料が挙げられる。
多環式顔料としては、以下に限定されないが、例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料、アゾメチン系顔料、及びローダミンBレーキ顔料等が挙げられる。
【0048】
顔料の体積基準の平均粒子径(以下、単に「顔料の平均粒子径」ともいう。)は、30nm以上300nm以下であることが好ましく、より好ましくは50nm以上200nm以下である。
顔料の平均粒子径が上記範囲内にあることで、顔料の発色性が向上したり、フィルターや記録ヘッドの目詰まりが低減したりする場合がある。
【0049】
顔料の平均粒子径は、レーザー回折散乱法を測定原理とする粒度分布測定装置により測定することができる。粒度分布測定装置としては、例えば、動的光散乱法を測定原理とする粒度分布計(例えば、「マイクロトラックUPA」日機装株式会社製)を用いることができる。
【0050】
顔料は、インク中での分散性を高めるという観点から、表面処理を施した顔料であってもよいし、分散剤等を利用した顔料であってもよい。
表面処理を施した顔料とは、物理的処理又は化学的処理によって顔料表面に親水性基(カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等)を、直接または間接的に結合させて水性溶媒中に分散可能とした顔料である(以下、「自己分散顔料」ともいう。)。
また、分散剤を利用した顔料とは、界面活性剤や樹脂により顔料を分散させた顔料であり(以下、樹脂により分散させた顔料を「樹脂分散顔料」ともいう。)、界面活性剤や樹脂としてはいずれも公知の物質を使用することが可能である。
また、「樹脂分散顔料」の中には、樹脂により被覆された顔料も含まれる。樹脂により被覆された顔料は、酸析法、転相乳化法、及びミニエマルション重合法などにより得ることができる。インク中における樹脂の含有量を低減可能であるため、自己分散型の顔料を用いるのが好ましい。
【0051】
自己分散顔料としては、市販品を用いてもよく、CAB-O-JET 400、450C、465M、470Y(キャボット社製)等が挙げられる。
【0052】
泡立ちを抑制する観点から、第1インク組成物は自己分散顔料を含有し、第2インク組成物は樹脂分散顔料を含有することが好ましい。
【0053】
色剤として染料を用いてもよく、染料としては公知のものがあげられる。例えば、直接染料、酸性染料、分散染料などがあげられる。
色剤の含有量は、インクの全質量(100質量%)に対して、固形分換算で0.5質量%~20質量%が好ましく、1質量%~10質量%がより好ましく、3質量%~7質量%がさらに好ましい。
【0054】
第1インク組成物及び第2インク組成物は、それぞれ独立に、ブラックインク、シアンインク、イエローインク又はマゼンタインクのいずれかであることが好ましく、第1インク組成物がブラックインクであり、第2インク組成物がシアンインク、イエローインク又はマゼンタインクのいずれかであることが好ましい。ブラックインクは他の色のインクよりも泡立ちやすいため第1インク収容容器に収容されることが好ましい。
ブラックインク、シアンインク、イエローインク、マゼンタインクは、それぞれ、色剤として、ブラック、シアン、イエロー、マゼンタ、の発色性を有する色剤を含有し、該色材の発色性を有するインクである。
【0055】
1.3.2.樹脂
本実施形態におけるインクは、樹脂粒子、顔料分散剤樹脂などの樹脂を含有してもよい。
樹脂粒子は、記録媒体に付着したインクの密着性を向上させるなどの機能を備え、顔料分散剤樹脂は、上述の顔料の分散性を向上させるなどの機能を備える。
【0056】
樹脂としては、溶解状態、エマルジョン等の粒子状態としたもの等、いずれのタイプの樹脂も使用できる。例えば、樹脂が粒子状(以下、「樹脂粒子」ともいう。)である場合には、樹脂粒子の体積基準の平均粒子径(以下、単に「樹脂粒子の平均粒子径」ともいう。)は、30nm以上300nm以下であることが好ましい。より好ましくは50nm以上200nm以下である。樹脂粒子の平均粒子径が上記範囲内にあることで、記録媒体に対するインクの定着性が向上したり、フィルターや記録ヘッドの目詰まりが低減したりする傾向にある。
【0057】
樹脂粒子の平均粒子径は、レーザー回折散乱法を測定原理とする粒度分布測定装置により測定することができる。粒度分布測定装置としては、例えば、動的光散乱法を測定原理とする粒度分布計(例えば、「マイクロトラックUPA」日機装株式会社製)を用いることができる。
【0058】
樹脂粒子としては、例えば、アクリル系樹脂、フルオレン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ロジン変性樹脂、テルペン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、エチレン酢酸ビニル系樹脂等を用いることができる。これらの樹脂粒子は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
アクリル系樹脂は、スチレンアクリル系樹脂であってもよい。樹脂粒子としては、市販品を用いてもよく、例えば、X-436(スチレンアクリル樹脂エマルション、星光PMC株式会社製)が挙げられる。
【0059】
顔料分散剤樹脂としては、ポリビニルアルコール類、ポリアクリル酸、アクリル酸-アクリルニトリル共重合体、酢酸ビニル-アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-α?メチルスチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-α?メチルスチレン-アクリル酸-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン-アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン-マレイン酸共重合体、酢酸ビニル-マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル-クロトン酸共重合体、酢酸ビニル-アクリル酸共重合体等及びこれらの塩が挙げられる。
【0060】
これらのうち、アクリル系樹脂が好ましい。アクリル系樹脂は、少なくともアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルなどのアクリル系単量体を1成分として重合して得られる重合体の総称である。例えば、アクリル系単量体から得られる樹脂、アクリル系単量体とこれ以外の単量体との共重合体などが挙げられる。例えばアクリル系単量体とビニル系単量体との共重合体であるアクリル-ビニル系樹脂などが挙げられ、例えば、スチレンなどのビニル系単量体との共重合体が挙げられる。例えばスチレンアクリル系樹脂があげられる。
【0061】
これらの中でも、疎水性官能基を有するモノマーと親水性官能基を持つモノマーとの共重合体、疎水性官能基と親水性官能基とを併せ持つモノマーからなる重合体が好ましい。共重合体の形態としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体のいずれの形態でも用いることができる。
【0062】
固形分換算による樹脂の含有量は、インク中に含まれる顔料100質量部に対して、100質量部未満であることが好ましく、0.5質量部以上60質量部以下であることが好ましく、1.0質量部以上50質量部以下であることが好ましく、2.0質量部以上40質量部以下であることが好ましい。
樹脂の含有量が顔料の含有量未満であることで、記録媒体に付着した樹脂の皮膜化が顔料によって阻害されにくくなるので、記録媒体に対するインクの密着性が向上する傾向にある。
【0063】
樹脂と顔料の含有量の合計は、インクの全質量(100質量%)に対して、固形分換算で20質量%以下であることが好ましい。合計量が20質量%以下であることで、インク中における凝集物の発生を低減できる。
樹脂と顔料の含有量の合計は、より好ましくは2質量%以上15質量%以下であり、3質量%以上15質量%以下であり、3質量%以上11質量%以下である。
【0064】
第1インク組成物及び第2インク組成物は、泡立ちを抑制する観点から、樹脂粒子及び顔料分散剤樹脂の合計含有量が、組成物の全量に対して6.0質量%以下であることが好ましく、5.0質量%以下であることが好ましく、3.0質量%以下であることが好ましい。
なお、第1インク組成物における樹脂粒子及び顔料分散剤樹脂の合計含有量は、組成物の全量に対して、好ましくは、3.0質量%以下であり、2.0質量%以下であり、1.0質量%以下であり、0質量%であってもよい。また、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1.0質量%以上がさらに好ましく、2.0質量%以上が特に好ましい。
【0065】
また、第1インク組成物における樹脂粒子及び顔料分散剤樹脂の合計含有量と、第2インク組成物における樹脂粒子及び顔料分散剤樹脂の合計含有量と、の差は、好ましくは、0.1質量%~6.0質量%であり、0.2質量%~5.0質量%であり、0.5~3.0質量%である。
【0066】
第1インク組成物は、第2インク組成物よりも、泡立ちを抑制する観点から、樹脂粒子及び顔料分散剤樹脂の合計含有量が少ないことが好ましい。
【0067】
1.3.3.有機溶剤
本実施形態におけるインクは、有機溶剤を含有してもよい。
有機溶剤としては、例えば、アルカンジオール類、多価アルコール類、グリコールエーテル類、含窒素複素環式化合物、尿素、尿素誘導体等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
【0068】
アルカンジオール類としては、炭素数4~8の1,2-アルカンジオール(例えば、1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール等)、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール等が挙げられる。
アルカンジオール類は、記録媒体に対する濡れ性を向上させる、記録ヘッドのノズル面におけるインクの乾燥固化を抑制できる等の機能を備える。
アルカンジオール類を含有する場合には、その含有量は、インクの全質量に対して、例えば0.1質量%以上20質量%以下とすることができる。濡れ性が向上しすぎるのを防止するため、好ましくは0.5質量%以上5質量%以下であり、0.5質量%以上3質量%以下である。
【0069】
上記のアルカンジオール類の中でも、炭素数5又は6の1,2-アルカンジオール類を用いることが好ましい。これらの化合物は、記録媒体に対するインクの浸透性及び濡れ性を向上させるにもかかわらず、インクの表面張力の低下が少ないためである。
【0070】
グリコールエーテル類としては、例えば、アルキレングリコールモノエーテル、アルキレングリコールジエーテル等が挙げられる。
【0071】
アルキレングリコールモノエーテルとしては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチエレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。
【0072】
アルキレングリコールジエーテルとしては、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル等が挙げられる。
【0073】
グリコールエーテル類は、1種単独か又は2種以上を混合して使用することができる。グリコールエーテル類は、記録媒体に対するインクの浸透性及び濡れ性を向上させるにもかかわらず、インクの表面張力の低下が少ないため、好ましく用いることができる。
グリコールエーテル類を含有する場合には、その含有量は、インク全質量に対して、例えば0.05質量%以上6質量%以下とすることができる。さらに、凝集物の析出等も考慮して濡れ性を適切に制御するため、含有量は、0.2質量%以上4質量%以下が好ましい。
【0074】
多価アルコール類(上記アルカンジオール類を除く)としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等が挙げられる。多価アルコール類は、ヘッドのノズル面におけるインクの乾燥固化を抑制して目詰まりや吐出不良等を低減できるという観点から好ましく用いることができる。多価アルコール類を含有する場合には、その含有量は、インクの全質量に対して、例えば5質量%以上、さらには5質量%以上30質量%以下とすることができる。
【0075】
含窒素複素環式化合物としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-ビニル-2-ピロリドン、2-ピロリドン、N-ブチル-2-ピロリドン、5-メチル-2-ピロリドン、ヒダントイン等が挙げられる。尿素又は尿素誘導体としては、尿素、エチレン尿素、テトラメチル尿素、チオ尿素等が挙げられる。これらは、1種単独か又は2種以上を混合して使用することができる。これらは、多価アルコール類と同様、ヘッドのノズル面におけるインクの乾燥固化を抑制して目詰まりや吐出不良等を低減できるという観点から好ましく用いることができる。これらを含有する場合には、その含有量は、インクの全質量に対して、例えば0.5質量%以上10質量%以下、より好ましくは1質量%以上5質量%以下とすることができる。
【0076】
多価アルコール類、含窒素複素環式化合物、尿素、及び尿素誘導体は保湿剤としての機能を発揮する。上記の中でも、グリセリンと、多価アルコール類(上述した多価アルコール類のうちグリセリンを除く)、含窒素複素環式化合物、尿素、尿素誘導体からなる群から選択される一種以上と、を併用することで、長期的な水分蒸発と、インク室の壁面で急速に生じる水分蒸発の両方を効果的に抑制できる。この場合において、より好ましい多価アルコール類としては、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、トリメチロールプロパンである。多価アルコール類の中でも、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,3-ブタンジオールが析出物防止の観点で好ましい。また、含窒素複素環式化合物としては、ピロリドン誘導体、ヒダントインが好ましく、2-ピロリドン、ヒダントインがより好ましい。さらに、尿素誘導体としては、エチレン尿素、テトラメチル尿素、チオ尿素が好ましい。
【0077】
本実施形態におけるインクは、炭素数4~8の1,2-アルカンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール及び2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、グリコールエーテルから選択されるいずれか一種以上を含む場合は、凝集物の析出防止の観点から、グリセリンと、他の多価アルコール類(上述した多価アルコール類のうちグリセリンを除く)、含窒素複素環式化合物、尿素、尿素誘導体からなる群から選択される一種以上と、を併用した保湿剤を添加することが望ましい。
有機溶剤の合計の含有量は、インク組成物の全量に対して、0.1質量%~30質量%が好ましく、1.0質量%~25質量%がより好ましく、5質量%~20質量%がさらに好ましい。
【0078】
1.3.4.水
本実施形態におけるインクは、水を含有してもよい。本実施形態におけるインクは、水がインクの主溶媒であり水が乾燥により蒸発飛散する成分である水性インクであることが好ましい。水系インクの水の含有量は、インクの総質量に対し、40質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましい。また、60質量%~99質量%が好ましい。
【0079】
水としては、例えば、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、及び蒸留水等の純水、並びに超純水のような、イオン性不純物を極力除去したものが挙げられる。また、紫外線照射又は過酸化水素の添加などによって滅菌した水を用いると、インクを長期保存する場合にカビやバクテリアの発生を防止することができる。
【0080】
1.3.5.界面活性剤
本実施形態におけるインクは、界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤は、表面張力を低下させ記録媒体との濡れ性を向上させる機能を備える。界面活性剤の中でも、例えば、アセチレングリコール系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、及びポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤を好ましく用いることができる。
【0081】
アセチレングリコール系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、サーフィノール104、104E、104H、104A、104BC、104DPM、104PA、104PG-50、104S、420、440、465、485、SE、SE-F、504、61、DF37、CT111、CT121、CT131、CT136、TG、GA、(以上全て商品名、AirProductsandChemicals.Inc.社製)、オルフィンB、Y、P、A、STG、SPC、E1004、E1010、PD-001、PD-002W、PD-003、PD-004、EXP.4001、EXP.4036、EXP.4051、EXP.4300、AF-103、AF-104、AK-02、SK-14、AE-3(以上全て商品名、日信化学工業社製)、アセチレノールE00、E00P、E40、E100(以上全て商品名、川研ファインケミカル社製)が挙げられる。
【0082】
シリコーン系界面活性剤としては、特に限定されないが、ポリシロキサン系化合物が好ましく挙げられる。当該ポリシロキサン系化合物としては、特に限定されないが、例えばポリエーテル変性オルガノシロキサンが挙げられる。当該ポリエーテル変性オルガノシロキサンの市販品としては、例えば、BYK-306、BYK-307、BYK-333、BYK-341、BYK-345、BYK-346、BYK-348(以上商品名、BYK社製)、KF-351A、KF-352A、KF-353、KF-354L、KF-355A、KF-615A、KF-945、KF-640、KF-642、KF-643、KF-6020、X-22-4515、KF-6011、KF-6012、KF-6015、KF-6017(以上商品名、信越化学工業社製)が挙げられる。
【0083】
フッ素系界面活性剤としては、フッ素変性ポリマーを用いることが好ましく、具体例としては、メガファックシリーズ(DIC社製)、ゾニールシリーズ(デュポン社製)、BYK-340(ビックケミー・ジャパン社製)が挙げられる。
【0084】
ポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、一般式、CnHn+1O(CmH2mO)lH(ただし、該一般式中、nは5以上の整数、m及びlは1以上の整数を表す。)、で表される化合物から選択されるものが好ましく、具体的には、C8H17O(C2H4O)2H、C10H21O(C2H4O)4H、C12H25O(C2H4O)3H、C12H25O(C2H4O)7H、C12H25O(C2H4O)12H、C13H27O(C2H4O)3H、C13H27O(C2H4O)5H、C13H27O(C2H4O)7H、C13H27O(C2H4O)9H、C13H27O(C2H4O)12H、C13H27O(C2H4O)20H、C13H27O(C2H4O)30H、C14H29O(C2H4O)30H、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよいが、後者の場合は、1種単独ではインク中に溶解し難い場合に有効であり、該インクへの溶解性を向上させることができる点で有利である。該ポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤としては、市販品を使用してもよく、該市販品としては、例えば、BTシリーズ(日光ケミカルズ社製)、ソフタノールシリーズ(日本触媒社製)、ディスパノール(日本油脂社製)、などが挙げられる。
【0085】
上述の界面活性剤の中でも濡れ性、表面張力の低下力を考慮して、シリコーン系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤又はポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤が好ましく、より好ましくはアセチレングリコール系界面活性剤又はポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤である。
【0086】
1.3.6.その他
本実施形態におけるインクは、その性能を向上させることを目的として、ワックス粒子(例えばポリオレフィンワックス、パラフィンワックス等)、両性イオン化合物(例えばベタイン系化合物、アミノ酸及びその誘導体等)、糖類(例えば、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、アルドン酸、ソルビトール、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース、還元澱粉糖化物等)、糖アルコール類、ヒアルロン酸類、尿素類、防腐剤・防かび剤(例えば、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、2-ピリジンチオール-1-オキサイドナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2-ジベンジンチアゾリン-3-オン等)、pH調整剤(例えば、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、アンモニア、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等)、キレート化剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸及びこれの塩類(エチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム塩等)、消泡剤(SNウエット980(サンノプコ株式会社製)等)等を含有してもよい。
【0087】
1.3.7.起泡性
インク組成物は、第1インク収容容器に収容される第1インク組成物と、第2インク収容容器に収容される第2インク組成物と、を含み、第1インク組成物は、第2インク組成物よりも、起泡性が小さい。
インク組成物の起泡性は、JIS K 3362-2008に準拠して、インク200mLを室温25℃で900mmの高さから30秒間で液面に落下させたときに生じる泡の高さとして測定される。
【0088】
第1インク組成物及び第2インク組成物は、それぞれ独立して、JIS K 3362-2008に準拠して測定される起泡性が60mm以下であることが好ましく、30mm以下であることが好ましい。さらに10mm以下が好ましい。
【0089】
第1インク組成物及び第2インク組成物は、それぞれ独立して、JIS K 3362-2008に準拠して測定される起泡性が0mm以上であってもよい。10mm以上が好ましく、30mm以上が好ましい。
起泡性が、上記範囲以下の場合、インクの泡立ちを低減でき好ましく、上記範囲以上の場合、インクの設計の自由度が高く、インクの耐擦過性などをより優れたものにでき、好ましい。
インクの気泡性は、インク組成を異ならせることで異なるものにできる。例えば、インクの樹脂粒子及び顔料分散剤樹脂の合計含有量により調整できる。または2つのインクがある場合に、上記の方法でインクの起泡性を測定し、気泡性の小さいインクを第1インク収容容器に収容し、気泡性の大きいインクを第2インク収容容器に収容するように、インクを割り当てればよい。
【0090】
第1インク組成物のJIS K 3362-2008に準拠して測定される起泡性と、第2インク組成物のJIS K 3362-2008に準拠して測定される起泡性との差は、好ましくは、1mm~60mmであり、5mm~40mmであり、10mm~35mmであり、15mm~30mmであり、20mm~25mmである。
【0091】
2.記録方法
本実施形態の記録方法は、本実施形態のインクジェット記録装置を用いる記録方法であって、第1インク収容容器に収容された第1インク組成物及び第2インク収容容器に収容された第2インク組成物を、インクジェットヘッドに供給する工程と、
第1インク組成物及び第2インク組成物をインクジェットヘッドから吐出して記録媒体に付着させる工程と、を含む。
【0092】
本実施形態の記録方法は、第1インク収容容器に収容された第1インク組成物及び第2インク収容容器に収容された第2インク組成物を、インクジェットヘッドに供給する工程を含む。
【0093】
本実施形態のインクジェット記録装置は、インクジェットヘッドにインク組成物を供給するためのインク収容容器を有する。
収容容器からインクジェットヘッドにインク組成物を供給する態様については、特に制限はない。
例えば、インクジェットヘッドとインク収容容器とが、連通部を介して連通し、上記連通部を介してインク収容容器からインクジェットヘッドにインク組成物を供給してもよい。
具体的には、下記の態様であってもよい。
液体供給チューブの一方の端部はインク収容容器に繋がれ、他方の端部はインクジェットヘッドに繋がれている。インク収容容器に収容されたインクは、液体供給チューブを介してインクジェットヘッドに供給される。
【0094】
本実施形態の記録方法は、第1インク組成物及び第2インク組成物をインクジェットヘッドから吐出して記録媒体に付着させる工程を含む。
インクジェット方式としては、特に限定されないが、例えば、荷電偏向方式、コンティニュアス方式、オンデンマンド方式(ピエゾ式、バブルジェット(登録商標)式)などが挙げられる。
【0095】
また、インク収容容器にインクを注入する工程を有してもよい。該工程は、インク収容容器のインク注入口のフタを開けて、インク注入口からインク収容容器内にインクを注入し、インク収容容器にインクを補充する工程である。例えば、インクボトルなどに入っていたインクを、インクボトルからインク注入口に注げばよい。
【0096】
2.1.記録媒体
記録媒体の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、アクリル樹脂等の樹脂材料、紙、ガラス、金属、セラミックス、革、木材、陶器、布帛等が挙げられる。
記録媒体の構成材料としては、上記のうちの少なくとも1種で構成された繊維、絹、毛、綿、麻、ポリエステル、ポリアミド(ナイロン)、アクリル、ポリウレタン、セルロース、リンター、レーヨン、キュプラ、アセテート等の各種天然繊維、合成繊維、半合成繊維等が挙げられる。記録媒体としては、上記の構成材料から選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、記録媒体としては、シート状、球状、直方体形状等の立体的な形状を有する物を用いてもよい。
記録媒体は、インク吸収性を有する吸収性記録媒体、インク吸収性の低い低吸収性記録媒体、インクを吸収しない非吸収性記録媒体などがあげられる。
吸収性記録媒体は、インク吸収性のインク受容層が表面に設けられた記録媒体、記録媒体の基材自体がインク吸収性を有する記録媒体などがあげられる。例えば、布帛、普通紙、インクジェット専用紙などがあげられる。
低吸収性記録媒体は、インク低吸収性の塗工層が設けられたコート紙などがあげられる。
非吸収性記録媒体は、ガラス、金属、プラスチックなどのインク非吸収性の材料からなり、インク吸収性のインク受容層が表面に設けられていない記録媒体や、表面にインク非吸収性の層が設けられた記録媒体などがあげられる。
【実施例0097】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0098】
[インク組成物の材料]
下記の実施例及び比較例において使用したインク組成物の主な材料は、以下の通りである。
〔自己分散顔料〕
CAB-O-JET 400(ブラック顔料)
CAB-O-JET 450C(シアン顔料)
CAB-O-JET 465M(マゼンタ顔料)
CAB-O-JET 470Y(イエロー顔料)
【0099】
〔樹脂分散顔料〕
下記製法により得られる樹脂分散顔料である。
有機溶媒(メチルエチルケトン)20質量部、重合連鎖移動剤(2-メルカプトエタノール)0.03質量部、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(プロピレンオキサイド基=9)15質量部、ポリ(エチレングリコール・プロピレングリコール)モノメタクリレート(プロピレンオキサイド基=7、エチレンオキサイド基=5)15質量部、メタクリル酸12質量部、スチレンモノマー50質量部、スチレンマクロマー10質量部、ベンジルメタクリレート10質量部を用いた。これらを、窒素ガス置換を十分に行った反応容器内に入れて、75℃の攪拌下で、モノマー成分100質量部に対して、メチルエチルケトン40質量部に溶解した重合開始剤である2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.9質量部を加えて重合させた。80℃で1時間熟成させて顔料分散剤樹脂を含むポリマー溶液を得た。
【0100】
メチルエチルケトン45質量部に上記で得られた分散樹脂を溶解させて、その中に20%の水酸化ナトリウム水溶液(中和剤)を所定量加えて塩生成基を中和した。さらに顔料としてP.B.15:3(トーヨーカラー株式会社製)を加えてビーズミルで2時間混練した。なお、上記分散樹脂と上記顔料との質量比は、
図2に記載の通りである。
得られた混練物にイオン交換水120質量部を加えて攪拌した後、減圧下、6℃でメチルエチルケトンを除去し、さらに一部の水を除去することにより、固形分濃度が20質量%の樹脂被覆型顔料分散液を得た。
【0101】
〔染料〕
シアン染料(アシッドブルー7)
【0102】
〔有機溶剤〕
グリセリン
トリエチレングリコール
トリエチレングリコールモノブチルエーテル
トリエチレングリコールモノメチルエーテル
2-ピロリドン
1,2-ヘキサンジオール
【0103】
〔樹脂〕
X-436(スチレンアクリル樹脂エマルション、星光PMC株式会社製)
【0104】
〔界面活性剤〕
オルフィンE1010(アセチレングリコール系界面活性剤、日信化学工業社製)
オルフィンEXP4300(アセチレングリコール系界面活性剤、日信化学工業社製)
【0105】
〔pH調整剤〕
トリエタノールアミン
〔消泡剤〕
SNウエット980(三洋化成社製)
【0106】
[インク組成物の調製]
各材料を下記の
図2に示す組成で混合し、十分に撹拌し、各インク組成物を得た。なお、
図2中、数値の単位は質量%であり、合計は100.0質量%である。
各インク組成物について、以下の評価を行った。
【0107】
<評価>
(起泡性)
JIS K 3362-2008に準拠して、インク200 mLを室温25℃で900 mmの高さから30秒間で液面に落下させたときに生じる泡の高さを起泡性として測定した。当該測定を5回行い、その平均値として起泡性を算出した。得られた起泡性について、下記評価基準に従って評価した。
[評価基準]
a:起泡性が0mm以上10mm以下であった。
b:起泡性が10mm以上30mm以下であった。
c:起泡性が30mm超60mm以下であった。
d:起泡性が60mm超であった。
【0108】
(耐擦過性)
後述の改造機に、各インク組成物を充填し、A4サイズの写真用紙100(EPSON写真用紙<光沢>KA4100PSKR)の中央部に、2×2cmの正方形、単色100%Dutyパターン101を印刷した。
印刷部を0.5Nの力かつ10cm/secの速さにて指で擦った際の耐擦過性を、下記評価基準に従って評価した。
[評価基準]
a:印刷後15分経過時点で印刷部を指で擦った際に印刷部が削れていないことを、目視にて確認した。
b:印刷後15分経過時点で印刷部を指で擦った際に印刷部が削れていたが、印刷後6時間経過時点で印刷部を指で擦った際に印刷部が削れていないことを、目視にて確認した。
c:印刷後6時間経過時点で印刷部を指で擦った際に印刷部が削れていたが、印刷後24時間経過時点で印刷部を指で擦った際に印刷部が削れていないことを、目視にて確認した。
【0109】
<実施例1~10、比較例1、2>
インクジェットプリンターPX-M791FT(セイコーエプソン株式会社製)を改造して、改-PX-M791FTを得た。
インク収容容器の底からインク注入口までの長さが
図3~
図4に記載の通りとなるようにし、インク収容容器を後述の様にした。具体的には、インク収容容器の上面の中央に、インク注入管(直径1cmの円筒形)を取り付けて、インク注入管の上端をインク注入口とした。インク注入管の高さを変えてインク注入口からタンク内部の底までの高さを
図3~
図4に記載の通りとした。
なお、改-PX-M791FTは、第1インク収容容器及び第2インク収容容器を含み、第1インク収容容器及び第2インク収容容器はインクジェット記録装置におけるインク注入口の上方方向の高さを
図1のように同じにして、インク注入口の高さを揃えて、インクの注入をし易くした。
第1インク収容容器の容積は160cm
3であり、第2インク収容容器の容積は95cm
3である。
なお、第1インク収容容器(インク注入管を除く部分)は、内部を、高さ5cm、幅5cm、奥行き6.4cmとした。第2インク収容容器(インク注入管を除く部分)は、内部を、高さ5cm、幅5cm、奥行き3.8cmとした。
図3~
図4に記載の通りに、各インク組成物を改-PX-M791FTに充填して、以下の評価を行った。
【0110】
<評価>
(タンク高さ)
改-PX-M791FTについて、インク収容容器の底からインク注入口までの長さ[mm]を測定した。
【0111】
(泡高さ)
改-PX-M791FTのインク収容容器毎に、インクが入っていない状態からインクを70g注入して、注入完了直後のインク液面から泡の最上位置までの高さについて、下記評価基準及び下記判定基準に従って評価した。
[評価基準]
A:インクの泡の最上位置が、インク注入口の位置より3cm以上低かった。
B:インクの泡の最上位置が、インク注入口の位置より、3cm未満1cm以上低かった。
C:インクの泡の最上位置が、インク注入口の位置から1cm低い位置よりも高かった。
【0112】
改-PX-M791FTにおける第1インク収容容器及び第2インク収容容器における泡高さの評価について、下記の判定基準に従って判定した。
[判定基準]
A:第1インク収容容器及び第2インク収容容器において、両方ともA評価であった。
B:第1インク収容容器及び第2インク収容容器において、少なくとも一方がB評価であり、C評価がなかった。
C:第1インク収容容器及び第2インク収容容器において、少なくとも一方がC評価であった。
【0113】
図2~
図4に示す通り、本実施形態のインクジェット記録装置を用いた実施例は、泡高さがA又はBであった。そのため、インク組成物がインク収容容器から溢れることを抑制できた。
一方、比較例は、インク収容容器は、収容容器の底からインク注入口までの高さが高い第1インク収容容器に収容する第1インクが、収容容器の底からインク注入口までの高さが低い第2インク収容容器に収容する第2インクよりも、起泡性の低いインクになっておらず、泡高さがCであった。そのため、インク組成物がインク収容容器から溢れることを抑制できなかった。