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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141619
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】スイッチング制御回路、電源回路
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
H02M3/155 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053365
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 隆二
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA18
5H730AS01
5H730AS04
5H730BB14
5H730BB82
5H730BB88
5H730CC01
5H730DD04
5H730EE57
5H730EE59
5H730FD01
5H730FD48
5H730FF09
(57)【要約】      (修正有)
【課題】並列動作の開始による入力電流のじょう乱を抑制するスイッチング制御回路を提供する。
【解決手段】AC-DCコンバータ10において、力率改善IC25は、スイッチング制御回路が、軽負荷時に出力電圧に応じた第1期間を示す第1指令値を出力し、重負荷時に出力電圧に応じた第2期間を示す第2指令値及び第3期間を示す第3指令値を出力する指令値出力回路と、軽負荷時に第1インダクタ電流IL1が第1の値となると第1トランジスタ26aをオンし、第1指令値に基づく第1期間が経過するとオフする第1駆動信号出力回路と、重負荷時に第2インダクタ電流IL2が第2の値となった後、第2トランジスタ26bをオンし、第3指令値に基づく第3期間が経過すると、第2トランジスタをオフする第2駆動信号出力回路と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電圧に応じた電圧が印加される第1及び第2インダクタと、前記第1インダクタに流れる第1インダクタ電流を制御する第1トランジスタと、前記第2インダクタに流れる第2インダクタ電流を制御する第2トランジスタと、を含み、前記交流電圧から目的レベルの出力電圧を生成する電源回路の前記第1及び第2トランジスタのスイッチングを制御するスイッチング制御回路であって、
前記電源回路の負荷に流れる負荷電流の電流値が第1所定値より小さく、前記負荷の状態が軽負荷である場合、前記出力電圧に応じた第1期間を示す第1指令値を出力し、前記負荷電流の電流値が第2所定値より大きく、前記負荷の状態が重負荷である場合、前記出力電圧に応じた第2期間を示す第2指令値及び第3期間を示す第3指令値を出力する指令値出力回路と、
前記負荷の状態が前記軽負荷である場合、前記第1インダクタ電流が第1の値となると、前記第1トランジスタをオンし、前記第1トランジスタがオンしてから前記第1指令値に基づく前記第1期間が経過すると、前記第1トランジスタをオフする第1駆動回路と、
前記負荷の状態が前記重負荷である場合、前記第2インダクタ電流が第2の値となった後、前記第2トランジスタをオンし、前記第2トランジスタがオンしてから前記第3指令値に基づく前記第3期間が経過すると、前記第2トランジスタをオフする第2駆動回路と、
を有し、
前記第1駆動回路は、
前記負荷の状態が前記重負荷である場合、前記第1インダクタ電流が前記第1の値となると、前記第1トランジスタをオンし、前記第1トランジスタがオンしてから前記第2指令値に基づく前記第2期間が経過すると、前記第1トランジスタをオフする、
スイッチング制御回路。
【請求項2】
請求項1に記載のスイッチング制御回路であって、
前記第2及び第3期間は、前記負荷の状態が前記重負荷に変化する前の前記第1期間より短い、
スイッチング制御回路。
【請求項3】
請求項1に記載のスイッチング制御回路であって、
前記第2及び第3期間は、前記負荷の状態が前記重負荷に変化する前の前記第1期間の1/2である、
スイッチング制御回路。
【請求項4】
請求項2に記載のスイッチング制御回路であって、
前記第1トランジスタのスイッチング周期を計時する計時回路、
を含み、
前記第2駆動回路は、
前記負荷の状態が前記重負荷に変化すると、前記第1トランジスタのスイッチング周期の1/4の期間が経過し、かつ前記第2インダクタ電流が前記第2の値となる第1条件を満たすと、前記第2トランジスタをオンする、
スイッチング制御回路。
【請求項5】
請求項4に記載のスイッチング制御回路であって、
前記第2駆動回路は、
前記第1条件が満たされた後、前記第1トランジスタのスイッチング周期の1/2の期間が経過し、かつ前記第2インダクタ電流が前記第2の値となる第2条件を満たすと、前記第2トランジスタをオンする、
スイッチング制御回路。
【請求項6】
請求項1から5の何れか一項に記載のスイッチング制御回路であって、
前記第1インダクタ電流が前記第1の値となる第1タイミング及び前記第2インダクタ電流が前記第2の値となる第2タイミングの時間差と、前記第1トランジスタのスイッチング周期との比率、及び所定比率の誤差を出力する誤差出力回路、
を含み、
前記第2駆動回路は、
前記負荷の状態が前記重負荷である場合、前記第2インダクタ電流が前記第2の値となった後、前記第2トランジスタをオンし、前記第3指令値及び前記誤差に応じた第4期間が経過すると、前記第2トランジスタをオフする、
スイッチング制御回路。
【請求項7】
請求項1に記載のスイッチング制御回路であって、
前記電源回路は、
前記負荷の状態を検出する第1負荷検出回路、
を含み、
前記指令値出力回路は、
前記第1負荷検出回路の検出結果及び前記第1期間を示す前記第1指令値に基づいて、前記第1指令値もしくは前記第2及び第3指令値を出力する、
スイッチング制御回路。
【請求項8】
請求項1に記載のスイッチング制御回路であって、
前記出力電圧に応じた前記第1期間を示す前記第1指令値に基づいて前記負荷の状態を検出する第2負荷検出回路、
を含み、
前記指令値出力回路は、
前記第2負荷検出回路の検出結果及び前記第1期間を示す前記第1指令値に基づいて、前記第1指令値もしくは前記第2及び第3指令値を出力する、
スイッチング制御回路。
【請求項9】
交流電圧に応じた電圧が印加されるn個(nは3以上の整数)のインダクタと、前記n個のインダクタに流れるインダクタ電流を制御するn個のトランジスタと、を含み、前記交流電圧から目的レベルの出力電圧を生成する電源回路の前記n個のトランジスタのスイッチングを制御するスイッチング制御回路であって、
前記電源回路の負荷に流れる負荷電流の電流値が第1所定値より小さく、前記負荷の状態が軽負荷である場合、前記出力電圧に応じた第1期間を示す第1指令値を出力し、前記負荷電流の電流値が第2所定値より大きく、前記負荷の状態が重負荷である場合、前記出力電圧に応じた第2期間を示す第2指令値及び第3期間を示す第3指令値を出力する指令値出力回路と、
前記負荷の状態が前記軽負荷である場合、前記n個のうち第1インダクタに流れる第1インダクタ電流が第1の値となると、前記n個のうち第1トランジスタをオンし、前記第1トランジスタがオンしてから前記第1指令値に基づく前記第1期間が経過すると、前記第1トランジスタをオフする第1駆動回路と、
前記負荷の状態が前記重負荷である場合、(n-1)個のインダクタに流れる複数のインダクタ電流のそれぞれが第2の値となった後、前記(n-1)個のトランジスタをオンし、前記(n-1)個のトランジスタがオンしてから前記第3指令値に基づく前記第3期間が経過すると、前記(n-1)個のトランジスタをオフする第2駆動回路と、
を有し、
前記第1駆動回路は、
前記負荷の状態が前記重負荷である場合、前記第1インダクタ電流が前記第1の値となると、前記第1トランジスタをオンし、前記第1トランジスタがオンしてから前記第2指令値に基づく前記第2期間が経過すると、前記第1トランジスタをオフする、
スイッチング制御回路。
【請求項10】
交流電圧から目的レベルの出力電圧を生成する電源回路であって、
前記交流電圧に応じた電圧が印加される第1及び第2インダクタと、
前記第1インダクタに流れる第1インダクタ電流を制御する第1トランジスタと、
前記第2インダクタに流れる第2インダクタ電流を制御する第2トランジスタと、
前記第1及び第2トランジスタのスイッチングを制御するスイッチング制御回路と、
を備え、
前記スイッチング制御回路は、
前記電源回路の負荷に流れる負荷電流の電流値が第1所定値より小さく、前記負荷の状態が軽負荷である場合、前記出力電圧に応じた第1期間を示す第1指令値を出力し、前記負荷電流の電流値が第2所定値より大きく、前記負荷の状態が重負荷である場合、前記出力電圧に応じた第2期間を示す第2指令値及び第3期間を示す第3指令値を出力する指令値出力回路と、
前記負荷の状態が前記軽負荷である場合、前記第1インダクタ電流が第1の値となると、前記第1トランジスタをオンし、前記第1トランジスタがオンしてから前記第1指令値に基づく前記第1期間が経過すると、前記第1トランジスタをオフする第1駆動回路と、
前記負荷の状態が前記重負荷である場合、前記第2インダクタ電流が第2の値となった後、前記第2トランジスタをオンし、前記第2トランジスタがオンしてから前記第3指令値に基づく前記第3期間が経過すると、前記第2トランジスタをオフする第2駆動回路と、
を有し、
前記第1駆動回路は、
前記負荷の状態が前記重負荷である場合、前記第1インダクタ電流が前記第1の値となると、前記第1トランジスタをオンし、前記第1トランジスタがオンしてから前記第2指令値に基づく前記第2期間が経過すると、前記第1トランジスタをオフする、
電源回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング制御回路、及び電源回路に関する。
【背景技術】
【0002】
臨界モードで動作する一般的な力率改善回路(以下、PFC(Power Factor Correction)回路と称する。)は、インダクタに流れるインダクタ電流のピーク値の波形を、交流電圧を整流した整流電圧と相似形にして、力率を改善する。この際、例えば、複数(例えば、2系統)の昇圧チョッパー回路を1つのPFC回路とし、並列動作をさせることがある(例えば、特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-041912号公報
【特許文献2】特開2018-207732号公報
【特許文献3】特開2020-127287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、インタリーブ動作するPFC回路では、負荷の状態が軽負荷である場合、1系統の昇圧チョッパー回路のみ動作させ、負荷の状態が重負荷となると、2系統の昇圧チョッパー回路を並列動作させることがある。
【0005】
しかしながら、2系統の昇圧チョッパー回路を並列動作させる際に、停止していた昇圧チョッパー回路をすでに動作しているチョッパー回路と同じ状態で起動すると、負荷に対する出力電流が大きくなり、出力電圧が上昇することがある。この電圧上昇は、電圧制御系により、2系統が動作している条件で電圧が所望の値となるよう、動作状態を修正することで抑制されるが、定常状態になるまでの間、入力電流の振幅が増減し、入力電流にじょう乱が生じることがある。
【0006】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みてなされたものであって、並列動作の開始による入力電流のじょう乱を抑制するスイッチング制御回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した課題を解決する本発明の第1の態様は、交流電圧に応じた電圧が印加される第1及び第2インダクタと、前記第1インダクタに流れる第1インダクタ電流を制御する第1トランジスタと、前記第2インダクタに流れる第2インダクタ電流を制御する第2トランジスタと、を含み、前記交流電圧から目的レベルの出力電圧を生成する電源回路の前記第1及び第2トランジスタのスイッチングを制御するスイッチング制御回路であって、前記電源回路の負荷に流れる負荷電流の電流値が第1所定値より小さく、前記負荷の状態が軽負荷である場合、前記出力電圧に応じた第1期間を示す第1指令値を出力し、前記負荷電流の電流値が第2所定値より大きく、前記負荷の状態が重負荷である場合、前記出力電圧に応じた第2期間を示す第2指令値及び第3期間を示す第3指令値を出力する指令値出力回路と、前記負荷の状態が前記軽負荷である場合、前記第1インダクタ電流が第1の値となると、前記第1トランジスタをオンし、前記第1トランジスタがオンしてから前記第1指令値に基づく前記第1期間が経過すると、前記第1トランジスタをオフする第1駆動回路と、前記負荷の状態が前記重負荷である場合、前記第2インダクタ電流が第2の値となった後、前記第2トランジスタをオンし、前記第2トランジスタがオンしてから前記第3指令値に基づく前記第3期間が経過すると、前記第2トランジスタをオフする第2駆動回路と、を有し、前記第1駆動回路は、前記負荷の状態が前記重負荷である場合、前記第1インダクタ電流が前記第1の値となると、前記第1トランジスタをオンし、前記第1トランジスタがオンしてから前記第2指令値に基づく前記第2期間が経過すると、前記第1トランジスタをオフする。
【0008】
また、前述した課題を解決する本発明の第2の態様は、交流電圧に応じた電圧が印加されるn個(nは3以上の整数)のインダクタと、前記n個のインダクタに流れるインダクタ電流を制御するn個のトランジスタと、を含み、前記交流電圧から目的レベルの出力電圧を生成する電源回路の前記n個のトランジスタのスイッチングを制御するスイッチング制御回路であって、前記電源回路の負荷に流れる負荷電流の電流値が第1所定値より小さく、前記負荷の状態が軽負荷である場合、前記出力電圧に応じた第1期間を示す第1指令値を出力し、前記負荷電流の電流値が第2所定値より大きく、前記負荷の状態が重負荷である場合、前記出力電圧に応じた第2期間を示す第2指令値及び第3期間を示す第3指令値を出力する指令値出力回路と、前記負荷の状態が前記軽負荷である場合、前記n個のうち第1インダクタに流れる第1インダクタ電流が第1の値となると、前記n個のうち第1トランジスタをオンし、前記第1トランジスタがオンしてから前記第1指令値に基づく前記第1期間が経過すると、前記第1トランジスタをオフする第1駆動回路と、前記負荷の状態が前記重負荷である場合、(n-1)個のインダクタに流れる複数のインダクタ電流のそれぞれが第2の値となった後、前記(n-1)個のトランジスタをオンし、前記(n-1)個のトランジスタがオンしてから前記第3指令値に基づく前記第3期間が経過すると、前記(n-1)個のトランジスタをオフする第2駆動回路と、を有し、前記第1駆動回路は、前記負荷の状態が前記重負荷である場合、前記第1インダクタ電流が前記第1の値となると、前記第1トランジスタをオンし、前記第1トランジスタがオンしてから前記第2指令値に基づく前記第2期間が経過すると、前記第1トランジスタをオフする。
【0009】
また、前述した課題を解決する本発明の第3の態様は、交流電圧から目的レベルの出力電圧を生成する電源回路であって、前記交流電圧に応じた電圧が印加される第1及び第2インダクタと、前記第1インダクタに流れる第1インダクタ電流を制御する第1トランジスタと、前記第2インダクタに流れる第2インダクタ電流を制御する第2トランジスタと、前記第1及び第2トランジスタのスイッチングを制御するスイッチング制御回路と、を備え、前記スイッチング制御回路は、前記電源回路の負荷に流れる負荷電流の電流値が第1所定値より小さく、前記負荷の状態が軽負荷である場合、前記出力電圧に応じた第1期間を示す第1指令値を出力し、前記負荷電流の電流値が第2所定値より大きく、前記負荷の状態が重負荷である場合、前記出力電圧に応じた第2期間を示す第2指令値及び第3期間を示す第3指令値を出力する指令値出力回路と、前記負荷の状態が前記軽負荷である場合、前記第1インダクタ電流が第1の値となると、前記第1トランジスタをオンし、前記第1トランジスタがオンしてから前記第1指令値に基づく前記第1期間が経過すると、前記第1トランジスタをオフする第1駆動回路と、前記負荷の状態が前記重負荷である場合、前記第2インダクタ電流が第2の値となった後、前記第2トランジスタをオンし、前記第2トランジスタがオンしてから前記第3指令値に基づく前記第3期間が経過すると、前記第2トランジスタをオフする第2駆動回路と、を有し、前記第1駆動回路は、前記負荷の状態が前記重負荷である場合、前記第1インダクタ電流が前記第1の値となると、前記第1トランジスタをオンし、前記第1トランジスタがオンしてから前記第2指令値に基づく前記第2期間が経過すると、前記第1トランジスタをオフする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、並列動作の開始による入力電流のじょう乱を抑制するスイッチング制御回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】AC-DCコンバータ10の一例を示す図である。
図2】力率改善IC25の一例を示す図である。
図3】スイッチング制御回路43aの一例を示す図である。
図4】負荷11の状態の変化に伴うオン期間Vx,Vy,Vzの変化を示す表である。
図5】スイッチング制御回路43aの主要な波形を示す図である。
図6】AC-DCコンバータ10の主要な波形を説明するための図である。
図7】スイッチング制御回路43aの主要な波形を示す図である。
図8】スイッチング制御回路43aの主要な波形を示す図である。
図9】スイッチング制御回路43bの一例を示す図である。
図10】スイッチング制御回路43bの主要な波形を示す図である。
図11】スイッチング制御回路43bのシミュレーション結果を示す図である。
図12】スイッチング制御回路43bのシミュレーション結果を示す図である。
図13】スイッチング制御回路43bのシミュレーション結果を示す図である。
図14】スイッチング制御回路43cの一例を示す図である。
図15】スイッチング制御回路43cの主要な波形を示す図である。
図16】スイッチング制御回路43dの一例を示す図である。
図17】スイッチング制御回路43dの主要な波形を示す図である。
図18】スイッチング制御回路43dのシミュレーション結果を示す図である。
図19】スイッチング制御回路43dのシミュレーション結果を示す図である。
図20】スイッチング制御回路43dのシミュレーション結果を示す図である。
図21】AC-DCコンバータ13の一例を示す図である。
図22】スイッチング制御回路43eの一例を示す図である。
図23】力率改善IC25の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。なお、以下、本実施形態の「回路」には、アナログ回路、ワイヤ―ドロジック型の論理回路のみならず、DSP(Digital Signal Processor)やマイコン等に含まれ、デジタル演算処理を実行可能な機能ブロック(または、手段)も含むこととする。
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を説明する。各図面に示される同一又は同等の構成要素、部材等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。
【0014】
=====本実施形態=====
<<<AC-DCコンバータ10の概要>>>
図1は、本発明の一実施形態であるAC-DCコンバータ10の構成を示す図である。AC-DCコンバータ10は、商用電源の交流電圧Vacから、目的レベルの出力電圧Voutを生成する昇圧型のPFC回路である。
【0015】
AC-DCコンバータ10は、全波整流回路20、コンデンサ21,22、トランス23a,23b、ダイオード24a,24b、力率改善IC25、NMOSトランジスタ26a,26b、及び抵抗30,31を含んで構成される。なお、AC-DCコンバータ10は、「電源回路」に相当する。
【0016】
全波整流回路20は、入力される所定の交流電圧Vacを全波整流し、入力電圧Vrecとして、コンデンサ21、トランス23aの主コイルL1a(後述)、トランス23bの主コイルL2a(後述)に出力する。なお、交流電圧Vacは、例えば、実効値が100~240V、周波数が50~60Hzの電圧である。以下、本実施形態では、基本的に電圧は基準点(図中のGND)に対する電位差であるが、交流電圧Vacは、端子間電圧を示す。
【0017】
コンデンサ21は、入力電圧Vrecを平滑化し、コンデンサ22は、2つの昇圧チョッパー回路の出力電圧が充電される素子である。そして、トランス23aの主コイルL1a、ダイオード24a、及びNMOSトランジスタ26aは、コンデンサ22とともに1つ目の昇圧チョッパー回路を構成する。また、トランス23bの主コイルL2a、ダイオード24b、及びNMOSトランジスタ26bは、コンデンサ22とともに2つ目の昇圧チョッパー回路を構成する。このため、コンデンサ22の充電電圧が直流の出力電圧Voutとなる。
【0018】
トランス23aは、主コイルL1aと、主コイルL1aに磁気的に結合された補助コイルL1bとを含む。なお、本実施形態の補助コイルL1bは、補助コイルL1bに生じる電圧が主コイルL1aに生じる電圧とは極性が逆となるよう、巻かれている。そして、力率改善IC25の端子ZCD1には、補助コイルL1bで発生する電圧Vzcd1が印加される。また、主コイルL1aに矢印の方向にインダクタ電流IL1が流れる場合、インダクタ電流IL1の流れる方向は正の方向であり、矢印の方向とは逆にインダクタ電流IL1が流れる場合、インダクタ電流IL1の流れる方向は負の方向であるものとする。また、インダクタ電流IL1の電流値がほぼゼロとなると、電圧Vzcd1の電圧値は、第1所定電圧値となる。なお、主コイルL1aは、「第1インダクタ」に相当する。
【0019】
同様に、トランス23bは、主コイルL2aと、主コイルL2aに磁気的に結合された補助コイルL2bとを含む。なお、本実施形態の補助コイルL2bは、補助コイルL2bに生じる電圧が主コイルL2aに生じる電圧とは極性が逆となるよう、巻かれている。そして、力率改善IC25の端子ZCD2には、補助コイルL2bで発生する電圧Vzcd2が印加される。また、主コイルL2aに矢印の方向にインダクタ電流IL2が流れる場合、インダクタ電流IL2の流れる方向は正の方向であり、矢印の方向とは逆にインダクタ電流IL2が流れる場合、インダクタ電流IL2の流れる方向は負の方向であるものとする。また、インダクタ電流IL2の電流値がほぼゼロとなると、電圧Vzcd2の電圧値は、第2所定電圧値となる。なお、主コイルL2aは、「第2インダクタ」に相当する。
【0020】
力率改善IC25は、AC-DCコンバータ10の入力力率を改善しつつ、出力電圧Voutのレベルが目的レベル(例えば、400V)となるよう、NMOSトランジスタ26a,26bのスイッチングを制御する集積回路である。具体的には、力率改善IC25は、主コイルL1aに流れるインダクタ電流IL1、及び出力電圧Voutに基づいて、NMOSトランジスタ26aを駆動する。なお、インダクタ電流IL1は、「第1インダクタ電流」に相当する。
【0021】
また、力率改善IC25は、主コイルL2aに流れるインダクタ電流IL2、及びNMOSトランジスタ26aのオン期間に基づいて、NMOSトランジスタ26bを駆動する。力率改善IC25の詳細については後述するが、力率改善IC25には、端子ZCD1,ZCD2,FB,OUT1,OUT2,CMDが設けられている。なお、本実施形態では、力率改善IC25の端子ZCD1等以外の他の端子(例えば、グランド端子)は便宜上、省略されている。また、インダクタ電流IL2は、「第2インダクタ電流」に相当する。
【0022】
NMOSトランジスタ26a,26bは、AC-DCコンバータ10の負荷11への電力を制御するためのパワートランジスタである。なお、本実施形態では、NMOSトランジスタ26a,26bは、N型のMOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタであることとしたが、これに限られず、例えば、バイポーラトランジスタ等の他のスイッチング素子であっても良い。また、NMOSトランジスタ26aのゲート電極は、端子OUT1に接続され、NMOSトランジスタ26bのゲート電極は、端子OUT2に接続されている。なお、NMOSトランジスタ26aは、「第1トランジスタ」に相当し、NMOSトランジスタ26bは、「第2トランジスタ」に相当する。
【0023】
抵抗30,31は、出力電圧Voutを分圧する分圧回路を構成し、NMOSトランジスタ26a,26bをスイッチングする際に用いられる帰還電圧Vfbを生成する。なお、抵抗30,31が接続されるノードに生成される帰還電圧Vfbは、端子FBに印加される。
【0024】
負荷検出回路(LDET)12は、負荷11の状態を検出する回路であり、負荷11に流れる負荷電流Iloadに基づいて、負荷11の状態が軽負荷である場合、ローレベル(以下、“L”レベルとする)の信号cmdを出力する。一方、負荷検出回路12は、負荷11の状態が重負荷である場合、ハイレベル(以下、“H”レベルとする)の信号cmdを出力する。
【0025】
なお、本実施形態で、「軽負荷」とは、例えば、負荷11に流れる負荷電流Iloadの電流値が、第1所定値より小さくなることを指し、「重負荷」とは、負荷11に流れる負荷電流Iloadの電流値が、第2所定値より大きくなることを指す。また、第1所定値及び第2所定値は、例えば、5Aで同じであってもよいし、第1所定値を、例えば、1Aとし、第2所定値を、例えば、5Aとし、第1所定値及び第2所定値が異なっていてもよい。また、「負荷11の状態が軽負荷」とは、負荷11の状態が「第1負荷」より小さい場合を指し、「負荷11の状態が重負荷」とは、負荷11の状態が「第2負荷」より大きい場合を指す。また、「第1負荷」は、軽負荷に対応し、「第2負荷」は、重負荷に対応する。また、負荷検出回路12は、「第1負荷検出回路」に相当する。
【0026】
<<<力率改善IC25について>>>
==力率改善IC25の構成==
図2は、力率改善IC25の一例を示す図である。力率改善IC25は、ADコンバータ(ADC:Analog-to-Digital Converter)40~42、スイッチング制御回路43、バッファ回路44,45を含んで構成される。なお、スイッチング制御回路43は、デジタル回路で構成される。
【0027】
ADコンバータ40は、電圧Vzcd1をデジタル値に変換し、ADコンバータ41は、電圧Vzcd2をデジタル値に変換し、ADコンバータ42は、帰還電圧Vfbを、デジタル値に変換する。
【0028】
スイッチング制御回路43は、帰還電圧Vfbと、インダクタ電流IL1,IL2のそれぞれに応じた電圧Vzcd1,Vzcd2とに基づいて、NMOSトランジスタ26a,26bを駆動するための駆動信号Vq1,Vq2を出力する回路である。スイッチング制御回路43は、各種演算を実行するワイヤ―ドロジック型の論理回路で構成されたデジタル回路であり、例えば、論理ゲート、フリップフロップ、メモリを含んで構成される。ただし、スイッチング制御回路43は、DSP(Digital Signal Processor)やマイコンであっても良い。なお、スイッチング制御回路43の詳細については後述する。
【0029】
バッファ回路44は、駆動信号Vq1に基づいて、NMOSトランジスタ26aを駆動する駆動回路である。具体的には、バッファ回路44は、駆動信号Vq1が “H”レベルとなると、NMOSトランジスタ26aをオンし、駆動信号Vq1が “L”レベルとなると、NMOSトランジスタ26aをオフする。
【0030】
同様に、バッファ回路45は、駆動信号Vq2に基づいて、NMOSトランジスタ26bを駆動する駆動回路である。具体的には、バッファ回路45は、駆動信号Vq2が“H”レベルとなると、NMOSトランジスタ26bをオンし、駆動信号Vq2が“L”レベルとなると、NMOSトランジスタ26bをオフする。
【0031】
==スイッチング制御回路43aの構成==
図3は、スイッチング制御回路43の一実施形態であるスイッチング制御回路43aの一例である。スイッチング制御回路43aは、インダクタ電流IL1,IL2、帰還電圧Vfb、及び信号cmdに基づいて駆動信号Vq1,Vq2を出力する。具体的には、スイッチング制御回路43aは、負荷11の状態が軽負荷である場合、インダクタ電流IL1が減少しほぼゼロとなり、インダクタ電流IL1に応じた電圧Vzcd1の電圧値が第1所定電圧値となると、NMOSトランジスタ26aをオンする駆動信号Vq1を出力する。
【0032】
その後、スイッチング制御回路43aは、帰還電圧Vfbに基づくオン期間Vxであるオン期間Vyが経過すると、NMOSトランジスタ26aをオフする駆動信号Vq1を出力する。なお、スイッチング制御回路43aは、負荷11の状態が軽負荷である場合、NMOSトランジスタ26bをオフする駆動信号Vq2を出力する。
【0033】
一方、スイッチング制御回路43aは、負荷11の状態が重負荷である場合、インダクタ電流IL1が減少しほぼゼロとなり、インダクタ電流IL1に応じた電圧Vzcd1の電圧値が第1所定電圧値となると、NMOSトランジスタ26aをオンする駆動信号Vq1を出力する。また、スイッチング制御回路43aは、負荷11の状態が重負荷である場合、インダクタ電流IL2が減少しほぼゼロとなり、インダクタ電流IL2に応じた電圧Vzcd2の電圧値が第2所定電圧値となると、NMOSトランジスタ26bをオンする駆動信号Vq2を出力する。その後、スイッチング制御回路43aは、オン期間Vxに、2つの昇圧チョッパー回路が均衡に負荷11に電力を供給するための比率(例えば、本実施形態の場合、0.5)を乗算したオン期間Vy,Vzが経過すると、NMOSトランジスタ26a,26bをオフする駆動信号Vq1,Vq2を出力する。スイッチング制御回路43aは、指令値出力回路100,駆動信号出力回路120,140を含んで構成される。
【0034】
===指令値出力回路100===
指令値出力回路100は、負荷11の状態を示す信号cmd、及び帰還電圧Vfbに基づいて、NMOSトランジスタ26a,26bのオン期間Vy,Vzを示す指令値を出力する回路である。具体的には、指令値出力回路100は、負荷11の状態が軽負荷である場合、帰還電圧Vfbに応じたオン期間Vxに等しいオン期間Vyを示す指令値を出力する。また、指令値出力回路100は、負荷11の状態が軽負荷である場合、NMOSトランジスタ26bをオフする駆動信号Vq2を出力させるよう、“0”のオン期間Vzを示す指令値を出力する。
【0035】
一方、指令値出力回路100は、負荷11の状態が重負荷である場合、帰還電圧Vfbに応じたオン期間Vy,Vzを示す指令値(すなわち、オン期間Vxに、2つの昇圧チョッパー回路が均衡に負荷11に電力を供給するための比率(例えば、0.5)を乗算したオン期間Vy,Vzを示す指令値)を出力する。指令値出力回路100は、減算回路102,108、電圧調整回路104、比率出力回路106、乗算回路110,112を含んで構成される。なお、「指令値」とは、例えば電圧値や、デジタル値等であり、以下、例えば、「オン期間Vxを示す指令値」を、「オン期間Vx」と称することがあり、オン期間Vy,Vz等をそれぞれ示す指令値についても同様である。
【0036】
減算回路102は、目的レベルの出力電圧Vout(例えば、400V)の基準となる基準電圧Vrefから帰還電圧Vfbを減算し、基準電圧Vrefと、帰還電圧Vfbとの誤差E1を算出する。
【0037】
電圧調整回路104は、帰還電圧Vfbのレベルを基準電圧Vrefのレベルに一致させるためのオン期間Vxを、誤差E1に応じて出力する。なお、本実施形態の減算回路102及び電圧調整回路104は、例えば、誤差E1を増幅、積分等する、いわゆる誤差増幅回路に相当する。また、オン期間Vxは、「第1期間」に相当し、オン期間Vxを示す指令値は、「第1指令値」に相当する。
【0038】
比率出力回路106は、負荷11の状態が軽負荷であり、負荷検出回路12が“L”レベルの信号cmdを出力すると、“0”の比率αbを出力する。一方、比率出力回路106は、負荷11の状態が重負荷であり、負荷検出回路12が“H”レベルの信号cmdを出力すると、“0.5”の比率αbを出力する。
【0039】
減算回路108は、“1.0”から比率αbを減算して比率αaとして出力する。乗算回路110は、オン期間Vxに比率αaを乗算してオン期間Vyとして出力する。また、乗算回路112は、オン期間Vxに比率αbを乗算してオン期間Vzとして出力する。
【0040】
したがって、図4に示すように、オン期間Vxが“100”であるとすると、負荷11の状態が軽負荷である場合、比率αbは、“0”であるため、比率αaは、“1.0”となり、オン期間Vyは、オン期間Vxと同じ“100”になる。また、この場合、比率αbが“0”であるため、オン期間Vzは、“0”となる。一方、負荷11の状態が重負荷である場合、比率αbは、“0.5”であるため、比率αaは、“0.5”となり、オン期間Vyは、オン期間Vxの半分の“50”となる。同様に、オン期間Vzもオン期間Vxの半分の“50”となる。
【0041】
また、負荷11の状態が軽負荷から重負荷に変化した際にオン期間Vxが“100”であったとしても、その後、負荷11で消費される電力が、例えば2倍以上となり、負荷電流Iloadが、2倍以上となると、オン期間Vxは、“200”以上となる。この場合、オン期間Vy,Vzは、負荷11の状態が軽負荷から重負荷に変化した際のオン期間Vxよりも長いオン期間となることがある。なお、負荷11の状態が重負荷である場合のオン期間Vyは、「第2期間」に相当し,オン期間Vyを示す指令値は、「第2指令値」に相当し、オン期間Vzは、「第3期間」に相当し、オン期間Vzを示す指令値は、「第3指令値」に相当する。
【0042】
===駆動信号出力回路120===
駆動信号出力回路120は、インダクタ電流IL1に応じた電圧Vzcd1と、オン期間Vyとに基づいて、NMOSトランジスタ26aを駆動する駆動信号Vq1を出力する。具体的には、駆動信号出力回路120は、インダクタ電流IL1がほぼゼロになると、NMOSトランジスタ26aをオンする駆動信号Vq1を出力する。その後、駆動信号出力回路120は、オン期間Vyが経過すると、NMOSトランジスタ26aをオフする駆動信号Vq1を出力する。駆動信号出力回路120は、比較回路122,128、RSフリップフロップ回路124、カウンタ126を含んで構成される。
【0043】
比較回路122は、インダクタ電流IL1の電流値がゼロよりやや大きい所定の電流値I0(例えば、数mA、すなわち、ほぼゼロ(以下、適宜「ほぼゼロ」を単に“0”(ゼロ)と称する。))になると、NMOSトランジスタ26aをオンするタイミングを検出する。
【0044】
具体的には、比較回路122は、インダクタ電流IL1の電流値が電流値I0より小さくなり、インダクタ電流IL1の電流値を示す電圧Vzcd1の電圧値が電流値I0を示す第1所定値より小さくなると、“H”レベルの信号Vc1を出力する。一方、比較回路122は、インダクタ電流IL1の電流値を示す電圧Vzcd1の電圧値が第1所定電圧値より大きい場合、“L”レベルの信号Vc1を出力する。なお、電流値I0は、「第1の値」に相当する。
【0045】
RSフリップフロップ回路124のS入力には、信号Vc1が入力され、R入力には、比較回路128からの信号Vc2が入力される。このため、RSフリップフロップ回路124のQ出力である信号Vq1は、信号Vc1が“H”レベルになると“H”レベルとなる。一方、信号Vc2が“H”レベルになると、信号Vq1は、“L”レベルになる。
【0046】
カウンタ126は、NMOSトランジスタ26aをオフするタイミングを定めるための信号Vcnt1を出力する回路であり、駆動信号Vq1が“H”レベルになると、カウント値をゼロから、図示しないクロック信号に従ってインクリメントする。つまり、カウンタ126は、駆動信号Vq1が“H”レベルになると、信号Vcnt1の値が経過時間に比例して大きくなるランプ波に相当する信号を出力する。
【0047】
比較回路(CMP)128は、オン期間Vyと、信号Vcnt1との大小を比較する。具体的には、比較回路128は、信号Vcnt1がオン期間Vyより大きい場合、“H”レベルの信号Vc2を出力し、信号Vcnt1がオン期間Vyより小さい場合、“L”レベルの信号Vc2を出力する。なお、駆動信号出力回路120及びバッファ回路44は、「第1駆動回路」に相当する。
【0048】
===駆動信号出力回路140===
駆動信号出力回路140は、インダクタ電流IL2に応じた電圧Vzcd2と、オン期間Vzとに基づいて、NMOSトランジスタ26bを駆動する駆動信号Vq2を出力する。具体的には、駆動信号出力回路140は、インダクタ電流IL2がゼロになると、NMOSトランジスタ26bをオンする駆動信号Vq2を出力する。その後、駆動信号出力回路140は、オン期間Vzが経過すると、NMOSトランジスタ26bをオフする駆動信号Vq2を出力する。駆動信号出力回路140は、比較回路142,148、RSフリップフロップ回路144、カウンタ146を含んで構成される。
【0049】
比較回路142は、インダクタ電流IL2の電流値がゼロになると、NMOSトランジスタ26bをオンするタイミングを検出する。具体的には、比較回路142は、インダクタ電流IL2の電流値が電流値I0より小さくなり、インダクタ電流IL2の電流値を示す電圧Vzcd2の電圧値が電流値I0を示す第2所定電圧値より小さくなると、“H”レベルの信号Vc3を出力する。一方、比較回路142は、インダクタ電流IL2の電流値を示す電圧Vzcd2の電圧値が第2所定電圧値より大きい場合、“L”レベルの信号Vc3を出力する。なお、電流値I0は、「第2の値」に相当する。
【0050】
RSフリップフロップ回路144のS入力には、信号Vc3が入力され、R入力には、比較回路148からの信号Vc4が入力される。このため、RSフリップフロップ回路144のQ出力である信号Vq2は、信号Vc3が“H”レベルになると“H”レベルとなる。一方、信号Vc4が“H”レベルになると、信号Vq2は、“L”レベルになる。
【0051】
カウンタ146は、NMOSトランジスタ26bをオフするタイミングを定めるための信号Vcnt2を出力する回路であり、駆動信号Vq2が“H”レベルになると、カウント値をゼロから、図示しないクロック信号に従ってインクリメントする。つまり、カウンタ146は、駆動信号Vq2が“H”レベルになると、信号Vcnt2の値が経過時間に比例して大きくなるランプ波に相当する信号を出力する。
【0052】
比較回路148は、オン期間Vzと、信号Vcnt2との大小を比較する。具体的には、比較回路148は、信号Vcnt2がオン期間Vzより大きい場合、“H”レベルの信号Vc4を出力し、信号Vcnt2がオン期間Vzより小さい場合、“L”レベルの信号Vc4を出力する。なお、駆動信号出力回路140及びバッファ回路45は、「第2駆動回路」に相当する。
【0053】
<<<負荷11の状態が軽負荷である場合のスイッチング制御回路43aの動作>>>
図5は、負荷11の状態が軽負荷である場合のスイッチング制御回路43aの主要な波形を示す図である。負荷11の状態が軽負荷である場合、指令値出力回路100は、帰還電圧Vfbに応じたオン期間Vxであるオン期間Vy、及び“0”のオン期間Vzを出力し、駆動信号出力回路140は、NMOSトランジスタ26bをオフする駆動信号Vq2を出力する。
【0054】
したがって、以下では、図5を参照しつつ、AC-DCコンバータ10が所定の交流電圧Vacから目的レベルの出力電圧Voutを生成し、一定の負荷に電力を供給している際の動作を説明する。同時に、駆動信号出力回路120がオン期間Vyに基づいてNMOSトランジスタ26aを駆動する駆動信号Vq1を出力する動作についても説明する。
【0055】
まず、時刻t0にインダクタ電流IL1が減少し、電流値I0になると、比較回路122は、信号Vc1を“H”レベルに変化させる。そして、信号Vc1が“H”レベルになると、RSフリップフロップ回路124は、“H”レベルの信号Vq1を出力する。
【0056】
駆動信号Vq1が“H”レベルとなると、NMOSトランジスタ26aは、オンするため、インダクタ電流IL1は、増加することになる。
【0057】
また、駆動信号Vq1が“H”レベルになると、カウンタ126のカウント値はインクリメントされるため、信号Vcnt1も増加する。そして、時刻t1に、信号Vcnt1のレベルが、オン期間Vyより大きくなると、比較回路128は、信号Vc2を“H”レベルに変化させる。この結果、RSフリップフロップ回路124は、リセットされ、駆動信号Vq1は、“L”レベルとなる。
【0058】
駆動信号Vq1が“L”レベルとなると、NMOSトランジスタ26aは、オフする。この結果、インダクタ電流IL1は、徐々に減少する。また、時刻t2にインダクタ電流IL1が減少し、ゼロになると、時刻t0の動作が繰り返される。
【0059】
ここで、AC-DCコンバータ10が所定の交流電圧Vacから目的レベルの出力電圧Voutを生成している際、コンデンサ22のキャパシタンスは、十分大きく、帰還電圧Vfbは、Vacの1周期程度の期間内ではほぼ一定となる。この結果、指令値出力回路100から出力されるオン期間Vyもほぼ一定になるため、NMOSトランジスタ26aがオンする期間(例えば、時刻t0~t1までの期間)もほぼ一定となる。
【0060】
また、NMOSトランジスタ26aがオンする際に、交流電圧Vacを整流した電圧Vrecのレベルが高くなると、インダクタ電流IL1の電流値も大きくなる。この結果、図6に示すように、インダクタ電流IL1のピーク値の波形は、電圧Vrecと相似形となる。
【0061】
また、NMOSトランジスタ26aがオフする際のインダクタ電流IL1のピーク値のレベルが高くなると、NMOSトランジスタ26aがオフ時にインダクタ電流IL1がゼロになるまでの時間が長くなる。したがって、電圧Vrecのレベルが低い場合、NMOSトランジスタ26aのスイッチング周波数は、高くなり、電圧Vrecのレベルが高い場合、NMOSトランジスタ26aのスイッチング周波数は、低くなる。
【0062】
<<<負荷11の状態が軽負荷から重負荷に変化する場合のスイッチング制御回路43aの動作>>>
図7は、負荷11の状態が軽負荷から重負荷に変化する場合のスイッチング制御回路43aの主要な波形を示す図である。なお、時刻t10より前において、負荷11の状態が軽負荷であるため、負荷検出回路12は、“L”レベルの信号cmdを出力し、帰還電圧Vfbは、電圧調整回路104が“100”のオン期間Vxを出力する電圧となっているものとする。また、乗算回路110は、“100”のオン期間Vyを出力し、乗算回路112は、“0”のオン期間Vzを出力する。また、時刻t10より前において、スイッチング制御回路43aは、図5で説明した動作をしている。
【0063】
時刻t10において、負荷検出回路12は、負荷11の状態が軽負荷から重負荷に変化したことを検出すると、“H”レベルの信号cmdを出力する。負荷検出回路12が“H”レベルの信号cmdを出力すると、比率出力回路106は、“0.5”の比率αbを出力する。“0.5”の比率αbが出力されると、減算回路108は、“0.5”の比率αaを出力する。“0.5”の比率αa,αbが出力されると、乗算回路110,112のそれぞれは、“50”のオン期間Vy,Vzを出力する。
【0064】
そして、“50”のオン期間Vy,Vzが出力されると、駆動信号出力回路140は、インダクタ電流IL2がゼロであるため、NMOSトランジスタ26bをオンする駆動信号Vq2を出力する。NMOSトランジスタ26bがオンされると、インダクタ電流IL2は、増加し始める。
【0065】
NMOSトランジスタ26bのオン期間が“50”のオン期間Vzとなる時刻t11において、駆動信号出力回路140は、NMOSトランジスタ26bをオフする駆動信号Vq2を出力する。その後、インダクタ電流IL2は、減少し始める。また、時刻t11において、インダクタ電流IL1がゼロとなると、駆動信号出力回路120は、NMOSトランジスタ26aをオンする駆動信号Vq1を出力する。
【0066】
インダクタ電流IL2が減少しゼロとなる時刻t12において、駆動信号出力回路140は、NMOSトランジスタ26bをオンする駆動信号Vq2を出力する。以降、駆動信号出力回路140は、同様の動作を繰り返す。
【0067】
NMOSトランジスタ26aのオン期間が“50”のオン期間Vyとなる時刻t13において、駆動信号出力回路120は、NMOSトランジスタ26aをオフする駆動信号Vq1を出力する。その後、インダクタ電流IL1は、減少し始める。
【0068】
インダクタ電流IL1がゼロとなる時刻t14において、駆動信号出力回路120は、NMOSトランジスタ26aをオンする駆動信号Vq1を出力する。以降、駆動信号出力回路120は、同様の動作を繰り返す。
【0069】
このように、負荷11の状態が軽負荷である場合、スイッチング制御回路43aは、帰還電圧Vfbに基づくオン期間Vxであるオン期間VyでNMOSトランジスタ26aのみを駆動する。一方、負荷11の状態が軽負荷から重負荷に変化すると、スイッチング制御回路43aは、オン期間Vxの半分であるオン期間Vy,VzでNMOSトランジスタ26a,26bを駆動する。すなわち、スイッチング制御回路43aは、オン期間Vy,Vzの合計がオン期間Vxになるよう制御し、オン期間の増大による入力電流及び出力電流の増加並びに出力電圧の上昇に伴う入力電流のじょう乱を抑制する。
【0070】
したがって、オン期間Vxであるオン期間VyでNMOSトランジスタ26aを駆動しつつ、NMOSトランジスタ26bを同等又は近い値のオン期間で駆動し始める場合と異なり、AC-DCコンバータ10の入力電流の総量は、ほぼ変化しない。そのため、負荷11の状態が重負荷となり、2つの昇圧チョッパー回路が動作を開始したとしても、AC-DCコンバータ10は、負荷11に過大な出力電流を供給することもなく、出力電圧Voutが上昇して入力電流にじょう乱が生じることを抑制できる。
【0071】
また、ここで、オン期間Vzをゼロからオン期間Vxの半分まで徐々に長くし、一方オン期間Vyをオン期間Vxからオン期間Vxの半分まで徐々に短くする、いわゆるソフトスタートを用いた場合には、入力電流の振幅の変化及び出力電圧の上昇を抑制することができる。しかしながら、この方法では、オン期間Vy,Vzが等しくなるまでは、駆動信号Vq1,Vq2の周波数が一致しない。
【0072】
また、駆動信号Vq1,Vq2の周波数がわずかでも異なると、2つの昇圧チョッパー回路がインタリーブ動作するよう、NMOSトランジスタ26a,26bを所定の位相関係でオンすることができなくなる。そのため、ソフトスタート期間中は、インタリーブ動作が成立しない。
【0073】
特に、駆動信号Vq1,Vq2の周波数がわずかに異なる場合、その周波数の差による、いわゆるビート周波数と呼ばれる低周波成分を生じ、フィルタとの共振により、予期しない入力電流のじょう乱を起こす懸念がある。また、以降説明するが、負荷11の状態が重負荷から軽負荷に変化する際に、NMOSトランジスタ26bを停止する場合も同様に同じ懸念が生じる。
【0074】
<<<負荷11の状態が重負荷から軽負荷に変化する場合のスイッチング制御回路43aの動作>>>
図8は、負荷11の状態が重負荷から軽負荷に変化する場合のスイッチング制御回路43aの主要な波形を示す図である。なお、時刻t20より前において、負荷11の状態が重負荷であるため、負荷検出回路12は、“H”レベルの信号cmdを出力し、帰還電圧Vfbは、電圧調整回路104が“100”のオン期間Vxを出力する電圧となっているものとする。また、乗算回路110は、“50”のオン期間Vyを出力し、乗算回路112は、“50”のオン期間Vzを出力する。また、時刻t20より前において、スイッチング制御回路43aは、図7で説明した動作をしている。
【0075】
時刻t20において、負荷検出回路12は、負荷11の状態が重負荷から軽負荷に変化したことを検出すると、“L”レベルの信号cmdを出力する。負荷検出回路12が“L”レベルの信号cmdを出力すると、比率出力回路106は、“0”の比率αbを出力する。“0”の比率αbが出力されると、減算回路108は、“1.0”の比率αaを出力する。“1.0”の比率αa及び“0”の比率αbが出力されると、乗算回路110は、“100”のオン期間Vyを出力し、乗算回路112は、“0”のオン期間Vzを出力する。
【0076】
そして、“100”のオン期間Vy及び“0”のオン期間Vzが出力されると、駆動信号出力回路140は、NMOSトランジスタ26bをオフする駆動信号Vq2を出力する。また、NMOSトランジスタ26aのオン期間が“50”のオン期間Vyとなると、駆動信号出力回路120は、NMOSトランジスタ26aをオフする駆動信号Vq1を出力する。その後、インダクタ電流IL1は、減少し始める。
【0077】
インダクタ電流IL1が減少しゼロとなる時刻t21において、駆動信号出力回路120は、NMOSトランジスタ26aをオンする駆動信号Vq1を出力する。
【0078】
NMOSトランジスタ26aのオン期間が“100”のオン期間Vyとなる時刻t22において、駆動信号出力回路120は、NMOSトランジスタ26aをオフする駆動信号Vq1を出力する。その後、インダクタ電流IL1は、減少し始める。
【0079】
インダクタ電流IL1がゼロとなる時刻t23において、駆動信号出力回路120は、NMOSトランジスタ26aをオンする駆動信号Vq1を出力する。以降、駆動信号出力回路120は、同様の動作を繰り返す。
【0080】
このように、負荷11の状態が重負荷である場合、スイッチング制御回路43aは、オン期間Vxの半分であるオン期間Vy,VzでNMOSトランジスタ26a,26bを駆動する。一方、負荷11の状態が重負荷から軽負荷に変化すると、スイッチング制御回路43aは、帰還電圧Vfbに基づくオン期間Vxであるオン期間VyでNMOSトランジスタ26aのみを駆動する。
【0081】
したがって、NMOSトランジスタ26a,26bを、オン期間Vxの半分のオン期間Vy,Vzで駆動している状態から、NMOSトランジスタ26aのみを、オン期間Vxであるオン期間Vyで駆動する状態に変化する。これにより、スイッチング制御回路43aは、AC-DCコンバータ10の入力電流の総量を変化させずに、2つの昇圧チョッパー回路の動作から1つの昇圧チョッパー回路の動作に移行することができ、出力電圧Voutを低下させることを抑制できると伴に入力電流のじょう乱を抑制できる。
【0082】
=====その他の実施例=====
上記の説明においては、オン期間と、オン期間によるインダクタ電流IL1,IL2の振幅にのみ着目したが、2つの昇圧チョッパー回路がインタリーブ動作を行うには、駆動信号Vq1,Vq2を所定の位相関係となるよう制御する手段が必要である。以下で説明する図9において、スイッチング制御回路43aに、駆動信号Vq1,Vq2を所定の位相関係となるよう制御する手段を追加したスイッチング制御回路43bについて説明する。
【0083】
==スイッチング制御回路43bの構成==
図9は、スイッチング制御回路43bの一例を示す図である。スイッチング制御回路43bは、スイッチング制御回路43aと同様に、インダクタ電流IL1,IL2、帰還電圧Vfb、及び信号cmdに基づいて駆動信号Vq1,Vq2を出力する。具体的には、スイッチング制御回路43bは、負荷11の状態が軽負荷である場合、スイッチング制御回路43aと同様に動作する。
【0084】
一方、スイッチング制御回路43bは、負荷11の状態が重負荷である場合、インダクタ電流IL1がゼロとなり、インダクタ電流IL1に応じた電圧Vzcd1の電圧値が第1所定電圧値となると、NMOSトランジスタ26aをオンする駆動信号Vq1を出力する。また、スイッチング制御回路43bは、負荷11の状態が重負荷である場合、インダクタ電流IL2がゼロとなり、インダクタ電流IL2に応じた電圧Vzcd2の電圧値が第2所定電圧値となると、NMOSトランジスタ26bをオンする駆動信号Vq2を出力する。その後、スイッチング制御回路43bは、オン期間Vxに、2つの昇圧チョッパー回路が均衡に負荷11に電力を供給するための比率(例えば、本実施形態の場合、0.5)を乗算したオン期間Vy,Vzのそれぞれが経過すると、NMOSトランジスタ26a,26bをオフする駆動信号Vq1,Vq2を出力する。また、スイッチング制御回路43bは、2つの昇圧チョッパー回路が適切なインタリーブ動作を維持するよう、NMOSトランジスタ26a,26bを駆動する駆動信号Vq1,Vq2を出力する。スイッチング制御回路43bは、指令値出力回路100,駆動信号出力回路120,150、誤差出力回路160を含んで構成される。
【0085】
===駆動信号出力回路150===
駆動信号出力回路150は、インダクタ電流IL2に応じた電圧Vzcd2と、オン期間Vzと、誤差出力回路160(後述)からのオン期間Vlpfとに基づいて、NMOSトランジスタ26bを駆動する駆動信号Vq2を出力する。なお、詳細は後述するが、オン期間Vlpfは、NMOSトランジスタ26a,26bのオンタイミングの時間差Tθに応じ、具体的には、時間差TθをNMOSトランジスタ26aのスイッチング周期Taで除算したものと、所定値との誤差に応じている。
【0086】
具体的には、駆動信号出力回路150は、負荷11の状態が重負荷である場合、インダクタ電流IL2がゼロとなった後、NMOSトランジスタ26bをオンする駆動信号Vq2を出力する。その後、駆動信号出力回路140は、オン期間Vz,Vlpfに応じたオン期間Vuが経過すると、NMOSトランジスタ26bをオフする駆動信号Vq2を出力する。駆動信号出力回路150は、比較回路142,148、RSフリップフロップ回路144、カウンタ146、加算回路152を含んで構成される。
【0087】
加算回路152は、オン期間Vzに、誤差出力回路160からのオン期間Vlpfを加算し、オン期間Vuとして出力する。なお、誤差出力回路160の詳細は、後述する。また、オン期間Vuは、「第4期間」に相当する。
【0088】
===誤差出力回路160===
誤差出力回路160は、NMOSトランジスタ26a,26bのそれぞれのオンタイミングに基づいて、2つの昇圧チョッパー回路が適切なインタリーブ動作をするよう、NMOSトランジスタ26bのオン期間であるオン期間Vuを調整するためにオン期間Vlpfを出力する。
【0089】
具体的には、誤差出力回路160は、NMOSトランジスタ26aのオンタイミングに対してNMOSトランジスタ26bのオンタイミングが進むと、正のオン期間Vlpfを出力する。これにより、オン期間Vuがオン期間Vzより長くなり、後にNMOSトランジスタ26bがオンするオンタイミングが遅れる。
【0090】
一方、誤差出力回路160は、NMOSトランジスタ26aのオンタイミングに対してNMOSトランジスタ26bのオンタイミングが遅れると、負のオン期間Vlpfを出力する。これにより、オン期間Vuがオン期間Vzより短くなり、後にNMOSトランジスタ26bがオンするオンタイミングが早くなる。誤差出力回路160は、RSフリップフロップ回路162、レベルシフト回路164、減算回路166、ローパスフィルタ(LPF)168、乗算回路170を含んで構成される。
【0091】
なお、詳細は後述するが、“L”レベルの信号enbが入力されると、乗算回路170は、“0”のオン期間Vlpfを出力する。また、NMOSトランジスタ26aのオンタイミングは、「第1タイミング」に相当し、NMOSトランジスタ26bのオンタイミングは、「第2タイミング」に相当し、オン期間Vlpfは、「誤差」に相当する。
【0092】
RSフリップフロップ回路162は、NMOSトランジスタ26a,26bのオンタイミングの時間差Tθ及びNMOSトランジスタ26aのスイッチング周期Taを検出し、時間差Tθ及びスイッチング周期Taの比率Rを示す信号Qバーを出力する。具体的には、RSフリップフロップ回路162は、“H”レベルの信号Vc1が入力されると、“L”レベルの信号Qバーを出力し、“H”レベルの信号Vc3が入力されると、“H”レベルの信号Qバーを出力する。
【0093】
これにより、RSフリップフロップ回路162は、信号Qバーが“L”レベルとなる期間において、時間差Tθを検出し、信号Qバーが“L”レベルとなる毎に、スイッチング周期Taを検出する。したがって、RSフリップフロップ回路162からの信号Qバーは、スイッチング周期Taに対するインダクタ電流IL1,IL2の時間差Tθのデューティ(つまり、比率)を示す信号となる。なお、比率Rは、「比率」に相当する。
【0094】
レベルシフト回路164は、詳細は後述するが、本実施形態において回路構成を簡易にするために、RSフリップフロップ回路162からの信号Qバーをレベルシフトする。具体的には、レベルシフト回路164は、RSフリップフロップ回路162からの“L”レベルの信号Qバーの電圧レベルは、接地レベルにしたまま、RSフリップフロップ回路162が電源電圧Vddで動作する場合、“H”レベルの信号Qバーの電圧レベルを2倍のVddの電圧レベルとする。
【0095】
減算回路166は、レベルシフト回路164からの信号のレベルから所定比率(例えば、本実施形態では、“50%”)を示す値(例えば、本実施形態では、“1.0”)を減算し、誤差E2として出力する。これにより、減算回路166は、時間差Tθ及びスイッチング周期Taの比率Rと、所定比率とが一致する場合に、ローパスフィルタ168に“0”のオン期間Vlpfを出力させる。具体的には、減算回路166は、0Vから(2×Vdd)Vまで変化するレベルシフト回路164からの信号から、所定比率を示す値“1.0”に相当する電源電圧Vddを減算し、誤差E2として出力する。
【0096】
これにより、減算回路166は、時間差Tθ及びスイッチング周期Taの比率Rが所定比率と一致し、レベルシフト回路164が1スイッチング周期Taあたりの“L”レベルの信号の比率が50%となる信号を出力する場合、ローパスフィルタ168に“0”のオン期間Vlpfを出力させることができる。また、このように、本実施形態において、減算回路166で減算する値を、所定比率を示す値“1.0”とすることにより、時間差Tθ及びスイッチング周期Taの比率Rと、所定比率とが一致する場合に、減算回路166は、ローパスフィルタ168に“0”のオン期間Vlpfを簡易に出力させることができる。
【0097】
なお、本実施形態では、2つの昇圧チョッパー回路をインタリーブ動作させる場合を説明しており、この場合、適切なインタリーブ動作をするための位相差Δθは、1スイッチング周期において360度/2=180度となる。また、1スイッチング周期Taにおける位相差Δθが180度とすると、所定比率は、50%となる。
【0098】
また、所定比率が50%である場合、減算回路166は、レベルシフトされた信号から所定比率(50%)を示す値“1.0”を減算する。これにより、時間差Tθ及びスイッチング周期Taの比率Rと、所定比率とが一致する場合に、減算回路166は、ローパスフィルタ168にゼロのオン期間Vlpfを出力させることができる。
【0099】
一方、n個(nは3以上)の昇圧チョッパー回路がインタリーブ動作をする場合、適切なインタリーブ動作をするための位相差Δθは、1スイッチング周期Taにおいて360度/nとなる。また、1スイッチング周期Taにおける位相差Δθが360度/nとすると、所定比率は、(100/n)%となる。
【0100】
また、所定比率が(100/n)%である場合、減算回路166は、レベルシフトされた信号から所定比率(100/n)%を示す値(2/n)を減算する。これにより、時間差Tθ及びスイッチング周期Taの比率Rと、所定比率とが一致する場合に、減算回路166は、ローパスフィルタ168にゼロのオン期間Vlpfを出力させることができる。
【0101】
また、ここまで、レベルシフト回路164がRSフリップフロップ回路162からの信号Qバーを(2×Vdd)Vの電圧レベルの信号にレベルシフトする場合を説明した。一方、レベルシフト回路164がRSフリップフロップ回路162からの信号Qバーを(p×Vdd)V(pは正の実数)の電圧レベルの信号にレベルシフトし、n個の昇圧チョッパー回路がインタリーブ動作をする場合、減算回路166は、レベルシフトされた信号から所定比率を示す値(p/n)を減算する。これにより、時間差Tθ及びスイッチング周期Taの比率Rと、所定比率とが一致する場合に、減算回路166は、ローパスフィルタ168にゼロのオン期間Vlpfを出力させることができる。
【0102】
ローパスフィルタ(LPF)168は、減算回路166からの誤差E2を積分してオン期間Vlpfを出力する。
【0103】
乗算回路170は、信号enbが“H”レベルである場合、オン期間Vlpfに、“1”を乗算し、オン期間Vlpfとして出力し、信号enbが“L”レベルである場合、オン期間Vlpfに、“0”を乗算し、オン期間Vlpfとして出力する。なお、イネーブル回路(不図示)は、信号enbを、駆動信号出力回路150がNMOSトランジスタ26bをオンする駆動信号Vq2を1回以上出力した後に、“H”レベルに変化させ、負荷検出回路12が“L”レベルの信号cmdを出力すると、“L”レベルに変化させる。
【0104】
上述のように誤差出力回路160が構成されると、NMOSトランジスタ26aのスイッチング周波数が低くなっても、NMOSトランジスタ26bのスイッチング周波数が高いままであり、時間差Tθが縮小した場合、比率Rが所定比率より大きくなり、オン期間Vlpfが正の値となる。この場合、オン期間Vuがオン期間Vzより長くなる。
【0105】
そして、NMOSトランジスタ26bのオン期間Vuは、長くなるため、インダクタ電流IL2のピーク値は大きくなり、NMOSトランジスタ26bのスイッチング周期は、長くなり、スイッチング周波数は低くなる。また、NMOSトランジスタ26bのスイッチング周期が長くなることにより、次にNMOSトランジスタ26bがオンされるタイミングが遅くなり、比率Rは、低下し、所定比率に近づくようになる。
【0106】
一方、NMOSトランジスタ26aのスイッチング周波数が高くなっても、NMOSトランジスタ26bのスイッチング周波数が低いままであり、時間差Tθが拡大した場合、比率Rが所定比率より小さくなり、オン期間Vlpfが負の値となる。この場合、オン期間Vuがオン期間Vzより短くなる。
【0107】
そして、NMOSトランジスタ26bのオン期間Vuは、短くなるため、インダクタ電流IL2のピーク値は、小さくなり、NMOSトランジスタ26bのスイッチング周期は、短くなり、スイッチング周波数は、高くなる。また、NMOSトランジスタ26bのスイッチング周期が短くなることにより、次にNMOSトランジスタ26bがオンされるタイミングが早くなり、比率Rは、増加し、所定比率に近づくようになる。
【0108】
このように、駆動信号出力回路150の加算回路152が、オン期間Vz及びオン期間Vlpfに応じたオン期間Vuを出力することにより、スイッチング制御回路43bは、NMOSトランジスタ26aのスイッチング周波数の変化に追従しつつ、適切なインタリーブ動作を維持できるようNMOSトランジスタ26bのスイッチングを制御できる。
【0109】
<<<負荷11の状態が軽負荷から重負荷に変化する場合のスイッチング制御回路43bの動作>>>
図10は、負荷11の状態が軽負荷から重負荷に変化する場合のスイッチング制御回路43bの主要な波形を示す図である。なお、時刻t30より前において、負荷11の状態が軽負荷であるため、負荷検出回路12は、“L”レベルの信号cmdを出力し、帰還電圧Vfbは、電圧調整回路104が“100”のオン期間Vxを出力する電圧となっているものとする。また、乗算回路110は、“100”のオン期間Vyを出力し、乗算回路112は、“0”のオン期間Vzを出力する。また、時刻t30より前において、スイッチング制御回路43bは、図5で説明した動作をしている。
【0110】
時刻t30において、負荷検出回路12が、負荷11の状態が軽負荷から重負荷に変化したことを検出すると、負荷検出回路12は、“H”レベルの信号cmdを出力する。負荷検出回路12が“H”レベルの信号cmdを出力すると、比率出力回路106は、“0.5”の比率αbを出力する。“0.5”の比率αbが出力されると、減算回路108は、“0.5”の比率αaを出力する。“0.5”の比率αa,αbが出力されると、乗算回路110,112のそれぞれは、“50”のオン期間Vy,Vzを出力する。
【0111】
そして、“50”のオン期間Vy,Vzが出力されると、駆動信号出力回路140は、インダクタ電流IL2がゼロであるため、NMOSトランジスタ26bをオンする駆動信号Vq2を出力する。NMOSトランジスタ26bがオンされると、インダクタ電流IL2は、増加し始める。
【0112】
その後、NMOSトランジスタ26bがオンしたので、時間差Tθが検出され始めるため、誤差E2は、“-1”から“+1”に変化する。誤差E2が変化すると、ローパスフィルタ168は、オン期間Vlpfを増加させ始める。
【0113】
時刻t31からt32におけるスイッチング制御回路43bの動作は、図6のt11からt12におけるスイッチング制御回路43aの動作と同様であるため、説明を省略する。
【0114】
NMOSトランジスタ26aのオン期間が“50”のオン期間Vyとなる時刻t33において、駆動信号出力回路120は、NMOSトランジスタ26aをオフする駆動信号Vq1を出力する。その後、インダクタ電流IL1は、減少し始める。また、イネーブル回路(不図示)は、駆動信号出力回路150がNMOSトランジスタ26bをオンする駆動信号Vq2を1回以上出力したため、信号enbを“H”レベルに変化させる。また、これ以降、誤差出力回路160が2つの昇圧チョッパー回路を正確にインタリーブ動作させるよう、オン期間Vlpfを出力し始め、駆動信号出力回路150は、オン期間Vz及びオン期間Vlpfに基づくオン期間VuでNMOSトランジスタ26bを駆動する駆動信号Vq2を出力し始める。
【0115】
2つの昇圧チョッパー回路が正確にインタリーブ動作し始める時刻t34において、ローパスフィルタ168は、“0”のオン期間Vlpfを出力している。以降、NMOSトランジスタ26a,26bは、2つの昇圧チョッパー回路が正確にインタリーブ動作をするよう駆動される。
【0116】
このように、負荷11の状態が重負荷となった後、誤差出力回路160からのオン期間Vlpfが駆動信号出力回路150に出力されると、2つの昇圧チョッパー回路は、正確にインタリーブ動作をするようになる。
【0117】
<<<スイッチング制御回路43bのシミュレーション結果>>>
図11は、スイッチング制御回路43bのシミュレーション結果を示す図である。ここで、一番上の図は、信号cmdの変化を示す結果である。また、上から2番目の図は、インダクタ電流IL1,IL2を示す結果である。そして、上から3番目の図は、インダクタ電流IL1,IL2の合計電流を示す結果である。さらに、一番下の図は、入力電流Iinを示す結果である。
【0118】
まず、一番上の図を参照すると、Time=15ms付近で負荷検出回路12が“H”レベルの信号cmdを出力している。そして、負荷検出回路12は、Time=35ms付近で“L”レベルの信号cmdを出力している。この信号cmdの変化を考慮して以下他のシミュレーション結果について説明する。
【0119】
Time=0~15msにおいて、スイッチング制御回路43bは、負荷11の状態が軽負荷であるため、NMOSトランジスタ26aのみを駆動している。したがって、この時は、インダクタ電流IL1のみが流れる。そのため、インダクタ電流IL1,IL2の合計電流もインダクタ電流IL1のみとなる。また、交流電圧Vac及び整流電圧Vrecは、示されていないが、この期間においてスイッチング制御回路43bは、図5で説明した動作を行い、臨界モードで力率改善動作を行っているため、入力電流Iinの位相は、交流電圧Vacの位相にほぼ一致することとなる。
【0120】
Time=15~35msにおいて、スイッチング制御回路43bは、負荷11の状態が重負荷となるため、NMOSトランジスタ26a,26bを駆動している。したがって、この時は、インダクタ電流IL1,IL2が流れる。また、NMOSトランジスタ26a,26bは、帰還電圧Vfbが変化していないと仮定すると、Time=0~15msの間のNMOSトランジスタ26aのオン期間の半分のオン期間で駆動されている。
【0121】
そのため、インダクタ電流IL1,IL2のピーク値は、Time=0~15msの間のインダクタ電流IL1のピーク値の半分となる。また、スイッチング制御回路43bは、2つの昇圧チョッパー回路がインタリーブ動作をするよう、NMOSトランジスタ26a,26bを駆動するため、インダクタ電流IL1,IL2の合計電流は、Time=0~15msの間とは異なり、低周波成分にリプルが重畳した波形となり、またリプルの振幅も小さくなる。
【0122】
Time=35ms以降のスイッチング制御回路43bの動作は、Time=0~15msの間の動作と同様であるため、説明を省略する。
【0123】
<<<スイッチング制御回路43bのシミュレーション結果の拡大図>>>
図12は、図11のスイッチング制御回路43bのシミュレーション結果のTime=14.9~15.1msの部分を拡大した図である。また、4つのシミュレーション結果の並び順は、図10と同じであるため説明を省略する。また、図11,12において、インダクタ電流IL1は、実線で示され、インダクタ電流IL2は、破線で示されている。
【0124】
Time=15msにおいて、負荷検出回路12が“H”レベルの信号cmdを出力すると、指令値出力回路100は、オン期間Vxの半分のオン期間Vy,Vzを出力する。そして、駆動信号出力回路140は、NMOSトランジスタ26bの駆動を開始する。NMOSトランジスタ26bが駆動され始めると、インダクタ電流IL1,IL2の合計電流は、まだ2つの昇圧チョッパー回路が正確にインタリーブ動作をするよう、NMOSトランジスタ26a,26bが駆動されていないため、乱れている。
【0125】
Time=15.05msになると、誤差出力回路160が“0”のオン期間Vlpfを出力するようになり、2つの昇圧チョッパー回路が、正確にインタリーブ動作をするよう、NMOSトランジスタ26a,26bは、駆動されるようになる。これに伴い、インダクタ電流IL1,IL2の合計電流は、低周波成分にリプルが重畳された波形となり、またリプルの振幅は、小さくなる。なお、図11は、Time=14.9~15.1msの間を拡大した図であるため、入力電流Iinは、ほとんど変化しない。
【0126】
図13は、図11のスイッチング制御回路43bのシミュレーション結果のTime=34.9~35.1msの部分を拡大した図である。また、4つのシミュレーション結果の並び順は、図11と同じであるため説明を省略する。
【0127】
Time=35msにおいて、負荷検出回路12が“L”レベルの信号cmdを出力すると、指令値出力回路100は、オン期間Vxであるオン期間Vyと、“0”のオン期間Vzを出力する。そして、駆動信号出力回路140は、NMOSトランジスタ26bの駆動を停止する。NMOSトランジスタ26bの駆動が停止されると、インダクタ電流IL1,IL2の合計電流は、インダクタ電流IL1のみとなる。
【0128】
このように、負荷11の状態が重負荷から軽負荷に変化する場合、NMOSトランジスタ26bの駆動が停止されるのみであるため、インダクタ電流IL1,IL2の合計電流が乱れることは、ない。なお、図12は、図10のTime=34.9~35.1msの間を拡大した図であるため、入力電流Iinは、ほとんど変化しない。
【0129】
以上、スイッチング制御回路43bの動作について説明したが、スイッチング制御回路43bは、時間が経過すれば、2つの昇圧チョッパー回路を適切にインタリーブ動作させることができる。さらに、負荷11の状態が軽負荷から重負荷に変化した直後においても、2つの昇圧チョッパー回路が適切にインタリーブ動作をするよう、NMOSトランジスタ26bのオンタイミングを制御し、ある程度、2つの昇圧チョッパー回路がインタリーブ動作するようにしたスイッチング制御回路43cを以下で説明する。
【0130】
==スイッチング制御回路43cの構成==
図14は、スイッチング制御回路43cの一例を示す図である。スイッチング制御回路43cは、スイッチング制御回路43a,43bと同様に、インダクタ電流IL1,IL2、帰還電圧Vfb、及び信号cmdに基づいて駆動信号Vq1,Vq2を出力する。具体的には、スイッチング制御回路43cは、負荷11の状態が重負荷である場合、インダクタ電流IL1がほぼゼロとなり、インダクタ電流IL1に応じた電圧Vzcd1の電圧値が第1所定電圧値となると、NMOSトランジスタ26aをオンする駆動信号Vq1を出力する。
【0131】
その後、スイッチング制御回路43cは、NMOSトランジスタ26aのスイッチング周期Taの半分が経過し、かつインダクタ電流IL2がゼロとなり、インダクタ電流IL2に応じた電圧Vzcd2の電圧値が第2所定電圧値となる場合、NMOSトランジスタ26bをオンする駆動信号Vq2を出力する。スイッチング制御回路43cは、指令値出力回路100、駆動信号出力回路120,220、検出回路200を含んで構成される。
【0132】
===検出回路200===
検出回路200は、駆動信号Vq1に基づいて、NMOSトランジスタ26bがオンすべきタイミングを検出する。具体的には、検出回路200は、駆動信号Vq1が“L”レベルから“H”レベルに変化する毎に、NMOSトランジスタ26aのスイッチング周期Taを検出し、このスイッチング周期Taから、次にNMOSトランジスタ26aがオンしてスイッチング周期Taの半分が経過するタイミングを検出する。そして、検出回路200は、スイッチング周期Taの半分が経過するタイミングに基づいて、駆動信号出力回路220がNMOSトランジスタ26bをオンするタイミングを制御する。検出回路200は、遅延回路202、カウンタ204、サンプル・ホールド回路206、乗算回路208、比較回路210、RSフリップフロップ回路212を含んで構成される。
【0133】
遅延回路(DELAY)202は、カウンタ204をリセットする信号を出力する回路であり、駆動信号出力回路120が“H”レベルの駆動信号Vq1を出力すると、所定期間経過後、カウンタ204をリセットする信号を出力する。なお、所定期間は、検出回路200が正しく動作するよう、十分短い期間である。
【0134】
カウンタ204は、NMOSトランジスタ26aのスイッチング周期Taをカウントして計時する回路であり、遅延回路202からのリセット信号でリセットされた後、“0”からカウントを開始し、リセットされるまでカウントを継続する。なお、カウンタ204は、「計時回路」に相当する。
【0135】
サンプル・ホールド回路(S/H)206は、NMOSトランジスタ26aのスイッチング周期Taを保持する回路であり、駆動信号出力回路120が“H”レベルの駆動信号Vq1を出力すると、カウンタ204のカウント値cntをサンプル・ホールドし、カウント値scntとして出力する。したがって、カウント値scntは、スイッチング周期Taに対応する。
【0136】
乗算回路208は、スイッチング周期Taの半分を示すカウント値refを出力する回路である。具体的には、乗算回路208は、“H”レベルの信号cmdが入力されてから数えて、駆動信号Vq1の立ち上がりエッジの第1回目において、カウント値scntに“0.25”を乗じてカウント値refとして出力する。
【0137】
また、負荷検出回路12が“H”レベルの信号cmdを出力すると、オン期間Vyは、半分となり、スイッチング周期Taも半分となるものの、駆動信号Vq1の立ち上がりエッジの第1回目において、カウント値scntは、オン期間Vyが半分になる前のスイッチング周期Ta(すなわち、
2倍のスイッチング周期)を示す。そのため、このタイミングにおいて、スイッチング周期Taの半分を示すカウント値refを出力しようとすると、カウント値scntに“0.25”を乗じてカウント値refとして出力する必要がある。このようにすることで、乗算回路208は、負荷検出回路12が“H”レベルの信号cmdを出力した後のスイッチング周期Taの半分を示すカウント値refを出力することができる。
【0138】
また、“H”レベルの信号cmdが入力されてから数えて、駆動信号Vq1の立ち上がりエッジの第2回目以降において、カウント値scntは、オン期間Vyが半分になった後のスイッチング周期Taを示すため、乗算回路208は、カウント値scntに“0.5”を乗じてカウント値refとして出力する。この場合のカウント値refもまた、負荷検出回路12が“H”レベルの信号cmdを出力した後のスイッチング周期Taの半分を示すものとなる。
【0139】
また、詳細は後述するが、これにより、検出回路200は、NMOSトランジスタ26bがオンされるタイミングを、おおよそNMOSトランジスタ26aのスイッチング周期Taの半分以後のタイミングに維持できる。したがって、スイッチング制御回路43cは、2つの昇圧チョッパー回路をある程度インタリーブ動作させるよう、NMOSトランジスタ26a,26bを駆動できる。なお、乗算回路208は、“L”レベルの信号cmdが入力される場合、オン期間Vzが“0”であり、NMOSトランジスタ26bは、オンされないため、“0”のカウント値refを出力してもよい。
【0140】
比較回路210は、カウント値cntと、カウント値refとを比較して、NMOSトランジスタ26aがオンしてから、スイッチング周期Taの半分が経過したか否かを判定する回路である。具体的には、比較回路210は、駆動信号出力回路120が“H”レベルの駆動信号Vq1を出力して、カウンタ204がカウントを開始し、カウント値cntがカウント値refより大きくなると、“H”レベルの信号を出力し、RSフリップフロップ回路212をセットする。一方、比較回路210は、カウント値cntがカウント値refより小さい場合、“L”レベルの信号を出力する。
【0141】
RSフリップフロップ回路212は、比較回路210からの信号と、駆動信号Vq1とに基づいてNMOSトランジスタ26bがオンすべきタイミングを示す信号maskを出力する回路である。具体的には、RSフリップフロップ回路212は、駆動信号出力回路120が“H”レベルの駆動信号Vq1を出力すると、“L”レベルの信号maskを出力し、比較回路210が“H”レベルの信号を出力すると、“H”レベルの信号maskを出力する。
【0142】
このように、検出回路200は、NMOSトランジスタ26aがオンしてからNMOSトランジスタ26aのスイッチング周期Taの半分が経過すると、NMOSトランジスタ26bをオンすべきタイミングを信号maskにより駆動信号出力回路220に通知する。そして、詳細は後述するが、駆動信号出力回路220は、信号maskに従って、NMOSトランジスタ26bをオンする駆動信号Vq2を出力する。これにより、スイッチング制御回路43cは、2つの昇圧チョッパー回路が、ある程度、臨界モードで動作しつつ、インタリーブ動作をするように、NMOSトランジスタ26a,26bを駆動することができる。
【0143】
===駆動信号出力回路220===
駆動信号出力回路220は、インダクタ電流IL2に応じた電圧Vzcd2と、オン期間Vzと、信号maskとに基づいて、NMOSトランジスタ26bを駆動する駆動信号Vq2を出力する。具体的には、駆動信号出力回路220は、検出回路200が“H”レベルの信号maskを出力し、かつインダクタ電流IL2がゼロとなると伴に、インダクタ電流IL2に応じた電圧Vzcd2の電圧値が第2所定電圧値となると、NMOSトランジスタ26bをオンする駆動信号Vq2を出力する。その後、駆動信号出力回路220は、オン期間Vzに応じた期間が経過すると、NMOSトランジスタ26bをオフする駆動信号Vq2を出力する。駆動信号出力回路220は、比較回路142,148、RSフリップフロップ回路144、カウンタ146、AND回路222を含んで構成される。
【0144】
AND回路222は、NMOSトランジスタ26bをオンするタイミングを決定する回路であり、比較回路142からの信号Vc3と、検出回路200からの信号maskとの論理積を演算し、信号Vc5として出力する。具体的には、AND回路222は、検出回路200が“H”レベルの信号maskを出力し、かつインダクタ電流IL2がゼロとなると、“H”レベルの信号Vc5を出力する。これにより、NMOSトランジスタ26bがオンされるタイミングは、NMOSトランジスタ26aがオンされてからスイッチング周期Taの半分が経過したタイミング以後になることが保障される。
【0145】
なお、駆動信号出力回路220は、負荷11の状態が重負荷に変化し、駆動信号Vq1の立ち上がりエッジが1回生じた後、スイッチング周期Taの1/4の期間が経過し、かつインダクタ電流IL2がゼロとなる第1条件を満たすと、NMOSトランジスタ26bをオンする駆動信号Vq1を出力する。その後、駆動信号出力回路220は、第1条件が満たされ、駆動信号Vq1の立ち上がりエッジがもう一度生じた後、スイッチング周期の1/2の期間が経過し、かつインダクタ電流IL2がゼロとなる第2条件を満たすと、NMOSトランジスタ26bをオンする駆動信号Vq2を出力する。
【0146】
<<<負荷11の状態が軽負荷から重負荷に変化する場合のスイッチング制御回路43cの動作>>>
図15は、負荷11の状態が軽負荷から重負荷に変化する場合のスイッチング制御回路43cの主要な波形を示す図である。なお、時刻t40より前において、負荷11の状態が軽負荷であるため、負荷検出回路12は、“L”レベルの信号cmdを出力し、帰還電圧Vfbは、電圧調整回路104が“100”のオン期間Vxを出力する電圧となっているものとする。また、乗算回路110は、“100”のオン期間Vyを出力し、乗算回路112は、“0”のオン期間Vzを出力する。
【0147】
また、時刻t40より前において、スイッチング制御回路43cは、図5で説明した動作をしている。なお、NMOSトランジスタ26aのスイッチング周期Taは、“120”であるものとし、サンプル・ホールド回路206は、“120”のカウント値scntを出力しているものとする。また、負荷検出回路12が“L”レベルの信号cmdを出力しているため、乗算回路208は、“0”のカウント値refを出力している。
【0148】
時刻t40において、負荷検出回路12が、負荷11の状態が軽負荷から重負荷に変化したことを検出すると、負荷検出回路12は、“H”レベルの信号cmdを出力する。負荷検出回路12が“H”レベルの信号cmdを出力すると、比率出力回路106は、“0.5”の比率αbを出力する。“0.5”の比率αbが出力されると、減算回路108は、“0.5”の比率αaを出力する。“0.5”の比率αa,αbが出力されると、乗算回路110,112のそれぞれは、“50”のオン期間Vy,Vzを出力する。
【0149】
時刻t41において、NMOSトランジスタ26aがオンすると、カウンタ204は、“120”のカウント値cntを出力し、サンプル・ホールド回路206は、“120”のカウント値scntを出力し続ける。そして、乗算回路208は、負荷検出回路12が“H”レベルの信号cmdを出力してから最初にNMOSトランジスタ26aがオンされるため、カウント値scntに“0.25”を乗算した“30”のカウント値refを出力する。
【0150】
カウンタ204がカウント値refと同じカウント値cntを出力する時刻t42において、検出回路200は、“H”レベルの信号maskを出力する。検出回路200が“H”レベルの信号maskを出力すると、インダクタ電流IL2は、ゼロであるため、AND回路222は、“H”レベルの信号Vc5を出力し、駆動信号出力回路220は、NMOSトランジスタ26bをオンする駆動信号Vq2を出力する。
【0151】
NMOSトランジスタ26aがオフされた後、インダクタ電流IL1がゼロとなる時刻t43において、NMOSトランジスタ26aのオン期間Vyが、オン期間Vxの半分になっているため、NMOSトランジスタ26aのスイッチング周期Taは、“60”となっている。そのため、サンプル・ホールド回路206は、“60”のカウント値scntを出力する。また、負荷検出回路12が“H”レベルの信号cmdを出力してから、NMOSトランジスタ26aが2回目にオンされるため、乗算回路208は、カウント値scntに“0.5”を乗算したカウント値refを出力する。また、NMOSトランジスタ26aがオンされると、検出回路200は、“L”レベルの信号maskを出力する。
【0152】
以後、検出回路200は、カウント値cntがカウント値refに一致すると、“H”レベルの信号maskを出力し、NMOSトランジスタ26aがオンされると、“L”レベルの信号maskを出力することを繰り返す。これにより、NMOSトランジスタ26bがオンされるタイミングは、NMOSトランジスタ26aがオンされてからスイッチング周期Taの半分が経過したタイミング以後になることが保障される。そして、スイッチング制御回路43cは、ある程度、2つの昇圧チョッパー回路がインタリーブ動作をするよう、NMOSトランジスタ26a,26bを駆動できる。
【0153】
以上、スイッチング制御回路43cの動作について説明した。スイッチング制御回路43cは、負荷11の状態が重負荷になった直後から、2つの昇圧チョッパー回路を、ある程度、インタリーブ動作させる。ただし、AC-DCコンバータを構成する回路素子の回路定数のばらつきや、温度による回路定数の変化等により、NMOSトランジスタ26bが、インダクタ電流IL2がゼロとなった直後にオンされる臨界モードで駆動されないこともある。
【0154】
すなわち、上述の動作では、条件によっては、インダクタ電流IL2がゼロとなってから、NMOSトランジスタ26bがオンするまでの待ち時間を生じることがある。そのため、上述の「ある程度、2つの昇圧チョッパー回路がインタリーブ動作をする」とは、インダクタ電流IL2の波形が、厳密には、ゼロ電流となる期間を含む可能性があり、NMOSトランジスタ26bが不連続モードで駆動される場合があることを示す。
【0155】
以下では、NMOSトランジスタ26bも臨界モードで駆動されるよう、NMOSトランジスタ26aのスイッチング周期Ta等に基づいて、NMOSトランジスタ26bのオン期間を制御する誤差出力回路240を含むスイッチング制御回路43dを説明する。
【0156】
==スイッチング制御回路43dの構成==
図16は、スイッチング制御回路43dの一例を示す図である。スイッチング制御回路43dは、スイッチング制御回路43a,43b,43cと同様に、インダクタ電流IL1,IL2、帰還電圧Vfb、及び信号cmdに基づいて駆動信号Vq1,Vq2を出力する。具体的には、スイッチング制御回路43dは、負荷11の状態が重負荷である場合、インダクタ電流IL1がゼロとなり、インダクタ電流IL1に応じた電圧Vzcd1の電圧値が第1所定電圧値となると、NMOSトランジスタ26aをオンする駆動信号Vq1を出力する。
【0157】
その後、スイッチング制御回路43dは、NMOSトランジスタ26aのスイッチング周期Taの半分が経過し、かつインダクタ電流IL2がゼロとなると伴にインダクタ電流IL2に応じた電圧Vzcd2の電圧値が第2所定電圧値となる場合、NMOSトランジスタ26bをオンする駆動信号Vq2を出力する。
【0158】
また、スイッチング制御回路43dは、NMOSトランジスタ26bが2回以上オンされると、正確にインタリーブ動作をするよう、NMOSトランジスタ26a,26bを駆動する。スイッチング制御回路43dは、指令値出力回路100、駆動信号出力回路120,260、検出回路200、誤差出力回路240を含んで構成される。
【0159】
===誤差出力回路240===
誤差出力回路240は、NMOSトランジスタ26a,26bのそれぞれのオンタイミングに基づいて、2つの昇圧チョッパー回路がインタリーブ動作をするように、NMOSトランジスタ26bのオン期間であるオン期間Vuを調整するためにオン期間Vvを出力する。
【0160】
具体的には、誤差出力回路240は、NMOSトランジスタ26aのオンタイミングに対してNMOSトランジスタ26bのオンタイミングが進むと、正のオン期間Vvを出力する。これにより、第3オン期間Vuがオン期間Vzより長くなり、後にNMOSトランジスタ26bがオンするオンタイミングが遅れる。
【0161】
一方、誤差出力回路240は、NMOSトランジスタ26aのオンタイミングに対してNMOSトランジスタ26bのオンタイミングが遅れると、負のオン期間Vvを出力する。これにより、第3オン期間Vuがオン期間Vzより短くなり、後にNMOSトランジスタ26bがオンするオンタイミングが早くなる。
【0162】
以上の通り、誤差出力回路240の原理は、誤差出力回路160の原理と同じである。誤差出力回路240は、RSフリップフロップ回路242、カウンタ244、除算回路246、減算回路248、電圧調整回路250、乗算回路252を含んで構成される。なお、詳細は後述するが、信号enbが“0”の値をとる場合、オン期間Vvは、“0”となる。
【0163】
RSフリップフロップ回路242は、NMOSトランジスタ26a,26bのオンタイミングの時間差Tθを検出する。具体的には、RSフリップフロップ回路242は、“H”レベルの信号Vc1が入力されると、“H”レベルの信号Qを出力し、“H”レベルの信号Vc5が入力されると、“L”レベルの信号Qを出力する。これにより、RSフリップフロップ回路242は、信号Qが“H”レベルとなる期間において、時間差Tθを検出する。
【0164】
カウンタ244は、RSフリップフロップ回路242からの信号Qが“H”レベルとなっている期間、すなわち時間差Tθをカウントし、信号Qが“L”レベルとなると、時間差Tθをカウント値hcntとして出力する。
【0165】
除算回路246は、比率Rを演算する回路である。具体的には、除算回路246は、カウント値hcntを、サンプル・ホールド回路206からのカウント値scnt、すなわちNMOSトランジスタ26aのスイッチング周期Taで除算し、比率Rを信号divとして出力する。
【0166】
減算回路248は、比率Rと、所定比率(すなわち、“0.5”)との差を演算し、誤差E3として出力する。
【0167】
電圧調整回路250は、スイッチング制御回路43dが正確なインタリーブ動作を実現するためのオン期間Vvを、誤差E3に応じて出力する。なお、本実施形態の減算回路248及び電圧調整回路250は、例えば、誤差E3を増幅、積分等する、いわゆる誤差増幅回路に相当する。
【0168】
乗算回路252は、信号enbが“H”レベルである場合、オン期間Vvに、“1”を乗算し、オン期間Vvとして出力し、信号enbが“L”レベルである場合、オン期間Vvに、“0”を乗算し、オン期間Vvとして出力する。なお、イネーブル回路(不図示)は、信号enbを、駆動信号出力回路260がNMOSトランジスタ26bをオンする駆動信号Vq2を2回以上出力した後に、“H”レベルに変化させ、負荷検出回路12が“L”レベルの信号cmdを出力すると、“L”レベルに変化させる。
【0169】
===駆動信号出力回路260===
駆動信号出力回路260は、インダクタ電流IL2に応じた電圧Vzcd2と、オン期間Vz,Vvと、信号maskとに基づいて、NMOSトランジスタ26bを駆動する駆動信号Vq2を出力する。具体的には、駆動信号出力回路260は、検出回路200が“H”レベルの信号maskを出力し、かつインダクタ電流IL2がゼロとなると伴にインダクタ電流IL2に応じた電圧Vzcd2の電圧値が第2所定電圧値となると、NMOSトランジスタ26bをオンする駆動信号Vq2を出力する。その後、駆動信号出力回路220は、オン期間Vz,Vvに応じたオン期間Vuが経過すると、NMOSトランジスタ26bをオフする駆動信号Vq2を出力する。駆動信号出力回路260は、比較回路142,148、RSフリップフロップ回路144、カウンタ146、AND回路222、加算回路262を含んで構成される。
【0170】
加算回路262は、指令値出力回路100からのオン期間Vzと、誤差出力回路240からのオン期間Vvとを加算し、オン期間Vuとして出力する。
【0171】
<<<負荷11の状態が軽負荷から重負荷に変化する場合のスイッチング制御回路43dの動作>>>
図17は、負荷11の状態が軽負荷から重負荷に変化する場合のスイッチング制御回路43dの主要な波形を示す図である。なお、時刻t50より前において、負荷11の状態が軽負荷であるため、負荷検出回路12は、“L”レベルの信号cmdを出力し、帰還電圧Vfbは、電圧調整回路104が“100”のオン期間Vxを出力する電圧となっているものとする。また、乗算回路110は、“100”のオン期間Vyを出力し、乗算回路112は、“0”のオン期間Vzを出力する。
【0172】
また、時刻t50より前において、スイッチング制御回路43dは、図4で説明した動作をしている。なお、NMOSトランジスタ26aのスイッチング周期Taは、“120”であるものとし、サンプル・ホールド回路206は、“120”のカウント値scntを出力しているものとする。また、負荷検出回路12が“L”レベルの信号cmdを出力しているため、乗算回路208は、“0”のカウント値refを出力している。
【0173】
時刻t50において、負荷検出回路12が、負荷11の状態が軽負荷から重負荷に変化したことを検出すると、負荷検出回路12は、“H”レベルの信号cmdを出力する。負荷検出回路12が“H”レベルの信号cmdを出力すると、比率出力回路106は、“0.5”の比率αbを出力する。“0.5”の比率αbが出力されると、減算回路108は、“0.5”の比率αaを出力する。“0.5”の比率αa,αbが出力されると、乗算回路110,112のそれぞれは、“50”のオン期間Vy,Vzを出力する。
【0174】
時刻t51において、NMOSトランジスタ26aがオンすると、RSフリップフロップ回路242は、“H”レベルの信号Qを出力し、カウンタ244は、時間差Tθをカウントし始める。
【0175】
時刻t52において、NMOSトランジスタ26bがオンすると、RSフリップフロップ回路242は、“L”レベルの信号Qを出力し、カウンタ244は、“30”のカウント値hcntを出力する。そして、除算回路246は、“30”のカウント値hcntと、“120”のカウント値scntとに基づいて“0.25”の信号divを出力する。しかしながら、イネーブル回路は、まだ“L”レベルの信号enbを出力しているため、オン期間Vvは、“0”のままである。
【0176】
時刻t53において、NMOSトランジスタ26aがオンすると、サンプル・ホールド回路206は、“60”のカウント値scntを出力するため、除算回路246は、“30”のカウント値hcntと、“60”のカウント値scntとに基づいて“0.5”の信号divを出力する。そして、電圧調整回路250は、“0”のオン期間Vvを出力する。
【0177】
NMOSトランジスタ26bが2回以上オンされた後の時刻t54において、イネーブル回路は、“H”レベルの信号enbを出力し、誤差出力回路240は、“0”のオン期間Vvを出力する。
【0178】
以後、誤差出力回路240は、時間差Tθと、スイッチング周期Taとに基づいてオン期間Vvを出力し続ける。これにより、スイッチング制御回路43dは、2つの昇圧チョッパー回路が正確にインタリーブ動作をするよう、NMOSトランジスタ26a,26bを駆動できる。
【0179】
<<<スイッチング制御回路43dのシミュレーション結果>>>
図18は、スイッチング制御回路43dのシミュレーション結果を示す図である。ここで、一番上の図は、信号cmdの変化を示す結果である。また、上から2番目の図は、インダクタ電流IL1,IL2を示す結果である。そして、上から3番目の図は、インダクタ電流IL1,IL2の合計電流を示す結果である。さらに、一番下の図は、入力電流Iinを示す結果である。なお、図18のシミュレーション結果は、図11のシミュレーション結果と同様であるため、説明を省略する。
【0180】
<<<スイッチング制御回路43dのシミュレーション結果の拡大図>>>
図19は、図18のスイッチング制御回路43dのシミュレーション結果のTime=14.9~15.1msの部分を拡大した図である。また、4つのシミュレーション結果の並び順は、図18と同じであるため説明を省略する。また、図19,20において、インダクタ電流IL1は、実線で示され、インダクタ電流IL2は、破線で示されている。
【0181】
Time=15ms付近において、負荷検出回路12が“H”レベルの信号cmdを出力すると、指令値出力回路100は、オン期間Vxの半分のオン期間Vy,Vzを出力する。そして、駆動信号出力回路140は、NMOSトランジスタ26aがオンしてからスイッチング周期Taの1/4が経過すると、NMOSトランジスタ26bの駆動を開始する。スイッチング制御回路43dは、2つの昇圧チョッパー回路がインタリーブ動作するよう、NMOSトランジスタ26a,26bを駆動するため、インダクタ電流IL1,IL2の合計電流は、低周波成分にリプルが重畳した波形となり、リプルの振幅は、小さい。なお、図19は、Time=14.9~15.1msの間を拡大した図であるため、入力電流Iinは、ほとんど変化しない。
【0182】
図20は、図18のスイッチング制御回路43dのシミュレーション結果のTime=34.9~35.1msの部分を拡大した図である。また、4つのシミュレーション結果の並び順は、図18と同じであるため説明を省略する。
【0183】
Time=35ms付近において、負荷検出回路12が“L”レベルの信号cmdを出力すると、指令値出力回路100は、オン期間Vxであるオン期間Vyと、“0”のオン期間Vzを出力する。そして、駆動信号出力回路140は、NMOSトランジスタ26bの駆動を停止する。NMOSトランジスタ26bの駆動が停止されると、インダクタ電流IL1,IL2の合計電流は、インダクタ電流IL1のみとなる。なお、図12は、図17のTime=34.9~35.1msの間を拡大した図であるため、入力電流Iinは、ほとんど変化しない。
【0184】
以上、負荷検出回路12が負荷11の状態を検出し、力率改善IC25がその検出結果である信号cmdに基づいて、動作する実施形態を説明した。負荷11の状態を検出する方法は、負荷検出回路12の方式に限られるものではなく、以下に説明するように、力率改善IC25の内部で、負荷11の状態を検出するものとしてもよい。
【0185】
<<<AC-DCコンバータ13の概要>>>
図21は、本発明の一実施形態であるAC-DCコンバータ13の構成を示す図である。AC-DCコンバータ13は、AC-DCコンバータ10と同様に、商用電源の交流電圧Vacから、目的レベルの出力電圧Voutを生成する昇圧型のPFC回路である。AC-DCコンバータ13は、負荷11の状態を検出する負荷検出回路12がない点で、AC-DCコンバータ10と異なる。
【0186】
==スイッチング制御回路43e==
図22は、スイッチング制御回路43の一実施形態であるスイッチング制御回路43eの一例である。スイッチング制御回路43eは、信号cmdを負荷検出回路12から受ける代わりに、内部で生成する点以外、スイッチング制御回路43aと同様である。スイッチング制御回路43eは、指令値出力回路100,駆動信号出力回路120,140、負荷検出回路280を含んで構成される。
【0187】
===負荷検出回路280===
負荷検出回路(LDET)280は、オン期間Vxに基づいて負荷11の状態を検出する。具体的には、負荷検出回路280は、オン期間Vxが第1所定値に対応する第3所定値を下回ると、負荷11の状態が軽負荷であると検出し、“L”レベルの信号cmdを出力し。オン期間Vxが第2所定値に対応する第4所定値を上回ると、負荷11の状態が重負荷であると検出し、“H”レベルの信号cmdを出力する。なお、負荷検出回路12の場合と同様に、負荷11の状態が軽負荷又は、重負荷であることを検出する第3所定値及び第4所定値は、同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0188】
また、このように負荷検出回路280が負荷11の状態を検出できる原理は、以下の通りである。負荷11の状態が軽負荷となり、出力電圧Voutが上昇し、帰還電圧Vfbが上昇すると、出力電圧Voutを低下させるようNMOSトランジスタ26a,26bの少なくとも一方のオン期間を短くするため、オン期間Vxは、短くなる。そのため、負荷検出回路280は、オン期間Vxが第3所定値を下回ると、負荷11の状態が軽負荷であることを検出できる。
【0189】
一方、負荷11の状態が重負荷となり、出力電圧Voutが低下し、帰還電圧Vfbが低下すると、出力電圧Voutを上昇させるようNMOSトランジスタ26a,26bの少なくとも一方のオン期間を長くするため、オン期間Vxは、長くなる。そのため、負荷検出回路280は、オン期間Vxが第4所定値を上回ると、負荷11の状態が重負荷であると検出できる。なお、負荷検出回路280は、「第2負荷検出回路」に相当する。
【0190】
以上、電圧Vzcd1,Vzcd2をADコンバータ40,41でデジタル値に変換したうえで所定値I0と比較し、NMOSトランジスタ26a,26bをオンするタイミングを示す信号Vc1,Vc3を生成する実施形態を説明した。
【0191】
このような実施形態の場合、電圧Vzcd1,Vzcd2の周波数を考慮すると、ACコンバータのサンプリング周波数は、高い周波数となり、ADコンバータの回路規模も大きくなることがある。そのため、以下では、ADコンバータ40,41の代わりに、比較回路を用いた実施形態について説明する。
【0192】
<<<力率改善IC25の変形例の一例>>>
図23は、力率改善IC25の変形例の一例を示す図である。力率改善IC25においては、図2のADコンバータ40が電圧Vzcd1をデジタル値に変換し、その後、図3の比較回路122が電圧Vzcd1を電流値I0に応じたデジタル値と比較し信号Vc1を出力していた。同様に、図2のADコンバータ41が電圧Vzcd2をデジタル値に変換し、その後、図3の比較回路142が電圧Vzcd2を電流値I1に応じたデジタル値と比較し信号Vc3を出力していた。
【0193】
一方、力率改善IC25の変形例は、図2のADコンバータ40,41の代わりに、アナログ回路の比較回路300,301を含み、スイッチング制御回路43は、スイッチング制御回路43fとなる。
【0194】
また、比較回路300は、電圧Vzcd1を電流値I0に応じた基準電圧Vref0と比較し、電圧Vzcd1が基準電圧Vref0を下回ると、“H”レベルの信号Vc1を出力する。また、比較回路300は、電圧Vzcd1が基準電圧Vref0を超える場合、“L”レベルの信号Vc1を出力する。
【0195】
同様に、比較回路301は、電圧Vzcd2を電流値I1に応じた基準電圧Vref1と比較し、電圧Vzcd2が基準電圧Vref1を下回ると、“H”レベルの信号Vc3を出力する。また、比較回路301は、電圧Vzcd2が基準電圧Vref1を超える場合、“L”レベルの信号Vc3を出力する。
【0196】
そして、スイッチング制御回路43fは、比較回路300からの信号Vc1と、比較回路301からの信号Vc3とに基づいて、スイッチング制御回路43aと同様の動作をする。上述のように、力率改善IC25の変形例は、力率改善IC25のADコンバータ40及び比較回路122を、比較回路300に置き換え、力率改善IC25のADコンバータ41及び比較回路142を、比較回路301に置き換えたものとなる。
【0197】
なお、力率改善IC25の場合、ADコンバータ40,41は、最大、数100kHzに達するスイッチング波形の瞬時値をとらえるサンプル間隔を必要とし、そのため、最低でも数MHzのサンプリング周波数が必要となる。しかしながら、力率改善IC25を上述のように変形することにより、数MHzのサンプリング周波数を必要としなくなり、力率改善IC25の省面積化、及び集積回路の消費電力の低減を図ることができる。
【0198】
以上、力率改善IC25がNMOSトランジスタ26a,26bを駆動する実施形態を説明した。しかしながら、力率改善IC25が駆動するNMOSトランジスタは、2つに限られず、複数(例えば、3個以上)であってもよいことは、明らかである。また、上述の説明に接した当業者であれば、複数のNMOSトランジスタを駆動する力率改善ICを想起することは、容易であろう。
【0199】
===まとめ===
以上、本実施形態のAC-DCコンバータ10について説明した。スイッチング制御回路43aは、指令値出力回路100、駆動信号出力回路120,140を含み、バッファ回路44,45は、駆動信号出力回路120,140からの駆動信号Vq1,Vq2に基づいて、NMOSトランジスタ26a,26bを駆動する。指令値出力回路100は、負荷11の状態が軽負荷である場合、出力電圧Voutに応じたオン期間Vxのみを出力し、負荷11の状態が重負荷となると、出力電圧Voutに応じたオン期間Vy,Vzを出力する。また、スイッチング制御回路43aは、負荷電流Iloadの電流値が大きくなり、負荷11の状態が重負荷となる場合に、出力電圧Voutが変動しないよう、出力電圧Voutに応じたオン期間で、NMOSトランジスタ26a,26bを共に駆動する。これにより、並列動作の開始による入力電流のじょう乱を抑制するスイッチング制御回路を提供することができる。
【0200】
また、負荷11の状態が軽負荷から重負荷に変化する際のオン期間Vy,Vzは、負荷11の状態が軽負荷であった直前のオン期間Vxより短い。これにより、スイッチング制御回路43aは、出力電圧Voutの上昇を抑制でき、出力電圧Voutの変動に基づく直流電圧制御系の制御による入力電流のじょう乱を抑制できる。
【0201】
また、負荷11の状態が重負荷となると、指令値出力回路100は、オン期間Vxの半分のオン期間Vx,Vyを出力する。これにより、スイッチング制御回路43aは、2つの昇圧チョッパー回路が並列動作しても、負荷電流Iloadの電流値の大きさに関わらず、出力電圧の上昇を抑制することができる。
【0202】
スイッチング制御回路43cは、カウンタ204を含み、駆動信号出力回路220は、負荷11の状態が重負荷になる前のスイッチング周期Taの1/4が経過し、かつインダクタ電流IL2がゼロとなると、NMOSトランジスタ26bをオンする駆動信号Vq2を出力する。これにより、スイッチング制御回路43cは、ある程度、2つの昇圧チョッパー回路をインタリーブ動作させることができる。
【0203】
駆動信号出力回路220は、負荷11の状態が重負荷となり、NMOSトランジスタ26bが一度オンされた後、負荷11の状態が重負荷になった後のスイッチング周期Taの1/2が経過し、かつインダクタ電流IL2がゼロとなると、NMOSトランジスタ26bをオンする駆動信号Vq2を出力する。これにより、スイッチング制御回路43cは、負荷11の状態が軽負荷から重負荷に変化した後に、スイッチング周期Taの中心付近でNMOSトランジスタ26bをオンできる。
【0204】
スイッチング制御回路43b,43dは、誤差出力回路160,240のそれぞれを含む。これにより、スイッチング制御回路43b,43dは、AC-DCコンバータ10が動作することによる熱の発生により、回路素子の回路定数が変化したとしても、2つの昇圧チョッパー回路を正確にインタリーブ動作させ続けることができる。
【0205】
AC-DCコンバータ10は、負荷検出回路12を含む。これにより、スイッチング制御回路43aから43dは、負荷検出回路12からの信号cmdに基づいて、負荷11の状態を判定することができる。
【0206】
スイッチング制御回路43eは、負荷検出回路280を含む。これにより、スイッチング制御回路43eは、出力電圧Voutに応じたオン期間Vxに基づいて、負荷11の状態を判定することができる。
【0207】
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのはいうまでもない。
【符号の説明】
【0208】
10,13 AC-DCコンバータ
11 負荷
12,280 負荷検出回路
20 全波整流回路
21,22 コンデンサ
23a,23b トランス
24a,24b ダイオード
25 力率改善IC
26a,26b NMOSトランジスタ
30,31 抵抗
40,41,42 ADコンバータ
43,43a,43b,43c,43d,43e,43f スイッチング制御回路
44,45 バッファ回路
100 指令値出力回路
102,108,166,248 減算回路
104,250 電圧調整回路
106 比率出力回路
110,112,170,208,252 乗算回路
120,140,150,220,260 駆動信号出力回路
122,128,142,148,210,300,301 比較回路
124,144,162,212,242 RSフリップフロップ回路
126,146,204,244 カウンタ
152,262 加算回路
160,240 誤差出力回路
164 レベルシフト回路
168 ローパスフィルタ
200 検出回路
202 遅延回路
206 サンプル・ホールド回路
222 AND回路
246 除算回路
図1
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