(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141625
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】接合工具及び接合方法
(51)【国際特許分類】
B21J 15/26 20060101AFI20241003BHJP
B21J 15/00 20060101ALI20241003BHJP
F16B 5/04 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B21J15/26 Z
B21J15/00 H
F16B5/04 C
F16B5/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053374
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】下田 陽一朗
【テーマコード(参考)】
3J001
【Fターム(参考)】
3J001FA02
3J001GA02
3J001GA03
3J001GB01
3J001HA02
3J001JD02
3J001JD03
3J001KA02
3J001KA19
3J001KB01
(57)【要約】
【課題】設備費を抑えつつ、実用的かつ簡易的に被接合材同士を接合させることが可能な接合工具及び接合方法を提供する。
【解決手段】重ね合わせた被接合材21,23同士を、リベット1を埋め込んで接合させる接合工具100であって、先端にリベット1を保持可能な保持部15を有し、後端が回転駆動装置の回転軸に把持されて回転軸とともに回転されるシャフト11と、シャフト11が中心に通された工具本体13と、を有し、工具本体13は、シャフト11を回転可能に支持するハウジング30と、被接合材21に当接可能な当接面71を有し、ハウジング30に対して相対的に摺動可能なガイド部60と、ハウジング30とガイド部60との間に設けられてガイド部60を先端側へ付勢するコイルバネ80と、を備える。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重ね合わせた被接合材同士を、接合補助部材を埋め込んで接合させる接合工具であって、
先端に前記接合補助部材を保持可能な保持部を有し、後端が回転駆動装置の回転軸に把持されて前記回転軸とともに回転されるシャフトと、
前記シャフトが中心に通された工具本体と、を有し、
前記工具本体は、
前記シャフトを回転可能に支持するハウジングと、
前記被接合材に当接可能な当接面を有し、前記ハウジングに対して相対的に摺動可能なガイド部と、
前記ハウジングと前記ガイド部との間に設けられて前記ガイド部を先端側へ付勢する弾性部材と、
を備える接合工具。
【請求項2】
前記シャフトの前記保持部は、前記接合補助部材を吸着または係合して着脱可能に保持する保持機能部を備える、
請求項1に記載の接合工具。
【請求項3】
前記保持機能部は、前記接合補助部材を磁力によって吸着する磁石と、前記接合補助部材が嵌め込まれることにより、前記接合補助部材を係合する凹部との少なくとも一方である、
請求項2に記載の接合工具。
【請求項4】
前記弾性部材は、コイルバネであり、
前記ガイド部は、前記コイルバネが伸縮することにより、前記シャフトに対して相対的に摺動される、
請求項1に記載の接合工具。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の接合工具を用い、互いに重ね合わせた前記被接合材同士を前記接合補助部材によって接合させる接合方法であって、
前記シャフトの後端を前記回転駆動装置の前記回転軸に把持させ、
前記シャフトの前記保持部に前記接合補助部材を保持させ、
前記ガイド部を前記被接合材に当接させ、
前記回転軸とともに前記シャフトを回転させながら前記接合工具を前記被接合材へ向かって押圧することにより、前記シャフトとともに回転する前記接合補助部材を前記被接合材に埋め込んで前記被接合材を前記接合補助部材によって接合させる、
接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合工具及び接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車体の軽量化を図るため、例えば、軽量なアルミニウム材を鉄材と接合した接合体が用いられている。このような異種金属材料の接合に好適な接合方法として、外周面にねじ山が形成されたリベットを回転させて被接合材に押し込む、いわゆるフロー・ドリル・スクリュー(FDS(登録商標):Flow Drilling Screw)方式、あるいはフランジに円柱状の突起部が設けられたエレメントを回転させながら被接合材に圧入させる、いわゆるフリクション・エレメント・接合(FEW:(Friction Element Welding)方式が採用されている(例えば、特許文献1参照)。これらの回転動力を用いた接合法であるFDS方式及びFEW方式は、下孔加工が不要で、しかも、被接合材の片面からの加工が可能であるので、施工性に優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のFDS方式及びFEW方式などの機械締結法による接合方法は、ロボット等の高価で大型の専用機を要するため、設備費が嵩むとともに、設備が大掛かりとなってしまう。
【0005】
そこで本発明は、設備費を抑えつつ、実用的かつ簡易的に被接合材同士を接合させることが可能な接合工具及び接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は下記の構成からなる。
(1) 重ね合わせた被接合材同士を、接合補助部材を埋め込んで接合させる接合工具であって、
先端に前記接合補助部材を保持可能な保持部を有し、後端が回転駆動装置の回転軸に把持されて前記回転軸とともに回転されるシャフトと、
前記シャフトが中心に通された工具本体と、を有し、
前記工具本体は、
前記シャフトを回転可能に支持するハウジングと、
前記被接合材に当接可能な当接面を有し、前記ハウジングに対して相対的に摺動可能なガイド部と、
前記ハウジングと前記ガイド部との間に設けられて前記ガイド部を先端側へ付勢する弾性部材と、
を備える接合工具。
(2) (1)に記載の接合工具を用い、互いに重ね合わせた前記被接合材同士を前記接合補助部材によって接合させる接合方法であって、
前記シャフトの後端を前記回転駆動装置の前記回転軸に把持させ、
前記シャフトの前記保持部に前記接合補助部材を保持させ、
前記ガイド部を前記被接合材に当接させ、
前記回転軸とともに前記シャフトを回転させながら前記接合工具を前記被接合材へ向かって押圧することにより、前記シャフトとともに回転する前記接合補助部材を前記被接合材に埋め込んで前記被接合材を前記接合補助部材によって接合させる、
接合方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、設備費を抑えつつ、実用的かつ簡易的に被接合材同士を接合させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る接合工具の斜視図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る接合工具の先端側から視た斜視図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る接合工具の側面図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係る接合工具の軸方向に沿う断面図である。
【
図5】
図5は、FDS方式による接合について説明する被接合材における接合箇所の断面図である。
【
図6】
図6は、卓上ボール盤に接合工具を組付けた状態を示す概略側面図である。
【
図7】
図7は、ハンドドリルに接合工具を組付けた状態を示す概略側面図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態に係る接合工具による被接合材の接合の工程を示す軸方向に沿う断面図である。
【
図9】
図9は、第1実施形態に係る接合工具による被接合材の接合の工程を示す軸方向に沿う断面図である。
【
図10】
図10は、第1実施形態に係る接合工具による被接合材の接合の工程を示す軸方向に沿う断面図である。
【
図11】
図11は、第1実施形態に係る接合工具による被接合材の接合の工程を示す軸方向に沿う断面図である。
【
図12】
図12は、第1実施形態に係る接合工具による被接合材の接合の工程を示す軸方向に沿う断面図である。
【
図13】
図13は、第2実施形態に係る接合工具の軸方向に沿う断面図である。
【
図14】
図14は、FEW方式による接合について説明する被接合材における接合箇所の断面図である。
【
図15】
図15は、第2実施形態に係る接合工具による被接合材の接合の工程を示す軸方向に沿う断面図である。
【
図16】
図16は、第2実施形態に係る接合工具による被接合材の接合の工程を示す軸方向に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
(第1実施形態)
まず、第1実施形態に係る接合工具ついて説明する。
図1は、第1実施形態に係る接合工具100の斜視図である。
図2は、第1実施形態に係る接合工具100の先端側から視た斜視図である。
図3は、第1実施形態に係る接合工具100の側面図である。
図4は、第1実施形態に係る接合工具100の軸方向に沿う断面図である。
【0010】
図1~
図4に示すように、第1実施形態に係る接合工具100は、シャフト11と、工具本体13と、を有している。シャフト11は、丸棒状に形成されており、先端部に接合補助部材であるリベットを保持する保持部15を有している。シャフト11は、工具本体13の中心に通されている。シャフト11は、その後端が回転駆動装置(
図1~
図4に図示せず)の回転軸に把持され、回転駆動装置の回転軸が回転されることにより、この回転軸とともに回転される。この接合工具100は、シャフト11の保持部15に保持させたリベットを回転させて被接合材に押し込むフロー・ドリル・スクリュー(以下、FDSと記す)方式によって被接合材を接合する際に用いられる工具である。
【0011】
なお、本明細書において、接合工具100の軸方向とは図中の上下方向である。接合工具100の先端側とは図中の下方向であり、「軸方向一方側」と呼ぶことがある。接合工具100の後端側とは図中の上方向であり、「軸方向他方側」と呼ぶことがある。
【0012】
図5は、FDS方式による接合について説明する被接合材21,23における接合箇所の断面図である。FDS方式に用いられるリベット(接合補助部材)1は、軸部3と、軸部3の基端に設けられた頭部5とを有する。軸部3は、外周面にねじ山7を有し、先端が尖った形状になっている。頭部5は、例えば、平面視六角形状に形成されている。このリベット1は、重ね合わされた複数の被接合材21,23に、軸部3の軸線まわりに回転されつつ軸部3の先端から押し込まれる。これにより、軸部3が被接合材21,23に貫通して軸部3のねじ山7と被接合材21,23とが係合し、被接合材21,23同士がリベット1によって接合される。
【0013】
図4に示すように、接合工具100を構成する工具本体13は、ハウジング30と、ガイド部60と、コイルバネ(弾性部材)80とを有している。ハウジング30は、軸方向他方側に配置された第一ハウジング40と、軸方向一方側に配置された第二ハウジング50と、を有する。第一ハウジング40は、略円環状の第一底部41と、第一底部41の径方向外側端部から軸方向一方側、すなわち第二ハウジング50側に延びる第一筒部43と、を有する。
【0014】
第一底部41は、その中心を軸方向に貫く第一貫通孔41aを有し、この第一貫通孔41aにシャフト11が挿通される。第一貫通孔41aの軸方向他方側端部には、径方向外側に向かって凹部41bが設けられている。凹部41bには、シャフト11を回転可能に支持する軸受45が配置される。シャフト11の外周面のうち軸受45に支持される部分には、その軸方向一方側にロックブッシュ47が外嵌され、その軸方向他方側にロック部材49が固定されている。これにより、軸受45からのシャフト11の抜け出しが防止される。なお、ロックブッシュ47の代わりに、外周へ張り出す張出部をシャフト11に一体に形成してもよい。第一底部41の軸方向一方側面は、軸方向他方側に向かって凹設された環状のバネ受け溝41cを有する。バネ受け溝41cには、後述するコイルバネ80が配置される。
【0015】
第一筒部43は、略筒状であり、その内周面には雌ネジ部43aが形成される。この雌ネジ部43aには、後述するように、第二ハウジング50の雄ネジ部53aが螺合可能である。
【0016】
第二ハウジング50は、略円環状の第二底部51と、第二底部51の径方向外側端部から軸方向他方側、すなわち第一ハウジング40側に延びる第二筒部53と、を有する。
【0017】
第二底部51は、その中心を軸方向に貫く第二貫通孔51aを有し、この第二貫通孔51aにシャフト11及びガイド部60の突出部63が挿通される。第二筒部53は、略筒状であり、その外周面には雄ネジ部53aが形成されている。そして雄ネジ部53aと雌ネジ部43aとが螺合されることにより、第二ハウジング50と第一ハウジング40とが互いに固定される。
【0018】
ガイド部60は、シャフト11の保持部15に保持されるリベット1を適切な位置にガイドするための略筒状の部材である。ガイド部60は、第二ハウジング50内に配置される本体部61と、本体部61よりも小径であり、本体部61の中心から軸方向一方側に突出する突出部63と、を有する。本体部61及び突出部63には、シャフト11が挿通される貫通孔65が軸方向に貫くように形成されている。
【0019】
貫通孔65には、複数(図示の例では2つ)の略筒状の滑り軸受67が軸方向に並んで配置されている。複数の滑り軸受67は、その内部を挿通するシャフト11を、回転可能且つ軸方向へ移動可能に支持する。
【0020】
本体部61は、筒状部61aと、バネ受け溝61bと、凹部61cとを有し、筒状部61aの外径は、第二ハウジング50の第二筒部53の内径と略同一か僅かに小さく設定される。これにより、筒状部61aは、第二筒部53に対して軸方向に摺動自在に収容される。すなわち、ガイド部60は、ハウジング30(第一ハウジング40及び第二ハウジング50)に対して軸方向へ移動可能になっている。バネ受け溝61bは、軸方向他方側に向かって凹設されており、このバネ受け溝61bには、後述するコイルバネ80が配置される。凹部61cは、軸方向他方側に向かって凹設されており、この凹部61cには、軸受69が配置される。この軸受69は、その内部を挿通するシャフト11を、回転可能且つ軸方向へ移動可能に支持する。
【0021】
突出部63は、中心に貫通孔65を有する略筒状である。突出部63は、第二ハウジング50の第二貫通孔51aの内径よりも小さい外径を有している。したがって、突出部63は、第二貫通孔51aに干渉することなく、第二貫通孔51aを貫通し、第二底部51よりも軸方向一方側に突出する。また、突出部63の軸方向一方側において、貫通孔65は、内径が大きくされた拡径部65aとされており、この拡径部65aには、シャフト11の先端の保持部15が収容される。この拡径部65aには、複数(図示の例では2つ)の略筒状の滑り軸受68が軸方向に並んで配置されている。複数の滑り軸受68は、その内部を挿通するシャフト11の保持部15を、回転可能且つ軸方向へ移動可能に支持する。
【0022】
突出部63には、径方向に貫通する3つの開口63aが設けられている。作業者は、開口63aを介して外部から保持部15に保持されたリベット1を視認可能であり、リベット1の狙い位置が適切か確認できる。なお、開口63aの個数、形成位置及び形状等は特に限定されない。
【0023】
ガイド部60の突出部63の先端部は、被接合材21に面接触可能な先端面からなる当接面71を有する。被接合材21の上面が平面であれば、当接面71の形状も平面とされる。この当接面71には、複数(図示の例では4つ)の位置決め溝73が周方向に間隔をあけて形成されている。作業者は、位置決め溝73を視認し、被接合材21への位置決めを行うことができる。
【0024】
コイルバネ80は、軸方向に延びる圧縮バネである。このコイルバネ80は、その軸方向他方側の端部が第一ハウジング40のバネ受け溝41cに収容され、その軸方向一方側の端部がガイド部60のバネ受け溝61bに収容される。そして、このコイルバネ80によって、ガイド部60は軸方向一方側、すなわち軸方向におけるシャフト11の先端側に付勢されている。このように、ガイド部60に軸方向荷重が負荷されていない状態では、ガイド部60はコイルバネ80によって軸方向一方側に付勢されるが、ガイド部60の本体部61が第二底部51と軸方向に当接することで、ガイド部60の軸方向位置が規制される。また、ガイド部60に軸方向荷重が負荷されていない状態では、突出部63はシャフト11の保持部15の先端部よりも軸方向一方側に延在しており、シャフト11の保持部15はガイド部60に覆われている。
【0025】
シャフト11の先端に設けられた保持部15は、シャフト11よりも大径の外径を有している。保持部15は、突出部63の貫通孔65の拡径部65a内に収容されている。シャフト11の先端には嵌合軸部11aが形成され、この嵌合軸部11aは、保持部15に形成された嵌合穴部15aに嵌合されている。これにより、保持部15がシャフト11の先端に固定される。嵌合軸部11a及び嵌合穴部15aは、例えば、断面視角形状に形成されて、シャフト11と保持部15とが一体に回転する。なお、保持部15は、シャフト11に一体に形成されてもよい。
【0026】
保持部15は、その先端に、リベット1を着脱可能に保持する保持機能部85を有する。保持部15の先端には、係合凹部(凹部)87が形成されている。この係合凹部87は、例えば、平面視六角形状に形成されたリベット1の頭部5の外形と略同一の内形を有する。また、この係合凹部87の底部には、磁石89が埋め込まれている。そして、これらの係合凹部87及び磁石89から保持機能部85が構成されている。なお、本実施形態のように保持機能部85が係合凹部87及び磁石89の両方で構成されても良いが、これらの係合凹部87及び磁石89の少なくとも一方で構成されても良い。
【0027】
この保持機能部85では、リベット1の頭部5が係合凹部87に嵌め込まれる。これにより、リベット1は、その頭部5が係合凹部87に係合されるとともに、磁石89によって吸着される。これにより、リベット1が保持部15の保持機能部85に保持される。
【0028】
上記構成の接合工具100は、一般的な回転駆動装置に組付けて使用できる。回転駆動装置としては、例えば、卓上ボール盤、ハンドドリルあるいはインパクトドライバーなどの汎用性の高い装置が使用可能である。
【0029】
図6は、接合工具100を組付けた卓上ボール盤200の概略側面図である。接合工具100は、卓上ボール盤200に組付けられる。卓上ボール盤200は、コラム201の上部に駆動部203を有している。駆動部203には、ハンドル204によって昇降される主軸である回転軸205が設けられており、この回転軸205の端部には、工具を把持可能なチャックCが設けられている。コラム201には、テーブル209が設けられ、このテーブル209の上部に、互いに重ね合わせた被接合材21,23が配置される。
【0030】
接合工具100は、回転軸205のチャックCにシャフト11の後端部を把持させることにより、卓上ボール盤200に組付けられる。そして、駆動部203及びハンドル204を操作し、テーブル209の上部の被接合材21,23に対して接合工具100によってリベット1を打ち込み、被接合材21,23同士を接合させることができる。
【0031】
図7は、接合工具100を組付けたハンドドリル300の概略側面図である。ハンドドリル300は、駆動部301を有しており、この駆動部301には主軸である回転軸305が設けられている。この回転軸305の端部には、工具を把持可能なチャックCが設けられている。駆動部301には、操作スイッチ307を有するグリップ309が設けられており、このグリップ309を把持しながら操作スイッチ307を操作することにより、回転軸305が回転駆動する。
【0032】
接合工具100は、回転軸305のチャックCにシャフト11の後端部を把持させることにより、ハンドドリル300に組付けられる。そして、互いに重ね合わせた被接合材21,23に接合工具100の先端を当接させながら操作スイッチ307を操作してリベット1を打ち込み、被接合材21,23同士を接合させることができる。
【0033】
次に、上記構成の接合工具100を用いてリベット1によって被接合材21,23を接合させる場合について工程毎に説明する。
図8~
図12は、それぞれ接合工具100による被接合材21,23の接合の工程を示す軸方向に沿う断面図である。
【0034】
(工具組付け工程)
図8に示すように、回転駆動装置の回転軸のチャックCにシャフト11の後端を把持させる。これにより、接合工具100を回転駆動装置に組付ける。
【0035】
(リベット装着工程)
図9に示すように、接合工具100の先端において、突出部63の貫通孔65内へ頭部5側からリベット1を挿し込む。そして、リベット1の頭部5を、シャフト11の保持部15の係合凹部87に嵌め込む。すると、リベット1は、その頭部5が係合凹部87に係合されるとともに、磁石89によって吸着される。これにより、リベット1は、保持部15の係合凹部87及び磁石89を備えた保持機能部85に保持されて接合工具100に装着される。
【0036】
(当接工程)
図10に示すように、接合工具100を、互いに重ね合わせた被接合材21,23に近付け、ガイド部60の突出部63の先端面からなる当接面71を、一方の被接合材21の表面に当接させる。このとき、作業者は、位置決め溝73を視認し、被接合材21に付したマーク等に対して位置合わせすることで、接合工具100を被接合材21に対して容易に位置決めできる。
【0037】
(打ち込み工程)
図11に示すように、回転駆動装置の回転軸を回転させることにより、シャフト11を回転させるとともに、接合工具100を被接合材21,23へ向かって押し付ける。すると、被接合材21に当接されているガイド部60が、コイルバネ80の付勢力に抗してハウジング30及びシャフト11に対して相対的に軸方向他方側に移動する。これにより、シャフト11が回転しながら軸方向一方側へ移動して、シャフト11とともに回転するリベット1の軸部3が被接合材21,23に埋め込まれる。すると、リベット1の軸部3の周囲において、被接合材21,23が摩擦によって加熱して軟化する。このとき、作業者は、ガイド部60の突出部63の開口63aを介してリベット1の狙い位置が適切かを容易に確認できる。
【0038】
(離脱工程)
図12に示すように、リベット1を被接合材21,23に埋め込んだら、回転駆動装置の回転軸を引き上げ、接合工具100を被接合材21,23から引き離し、回転駆動装置の回転軸の回転を停止させる。接合工具100を被接合材21,23から引き離すと、被接合材21,23に埋め込まれたリベット1の頭部5への保持部15の係合状態が解除され、回転軸とともにシャフト11が被接合材21,23から引き離される。すると、リベット1の軸部3の周囲において軟化して流動した被接合材21,23の塑性流動物が硬化し、軸部3のねじ山7が埋め込まれた接合部位が形成される。これにより、被接合材21,23がリベット1によって強固に接合される。
【0039】
また、接合工具100が被接合材21,23から引き離されることにより、圧縮されていたコイルバネ80が伸長し、このコイルバネ80の弾性力によってガイド部60が軸方向一方側へ付勢され、ハウジング30及びシャフト11に対して相対的に軸方向一方側に移動する。これにより、シャフト11の保持部15がガイド部60の突出部63の貫通孔65における奥側へ引き込んだ状態となる。なお、ガイド部60は、本体部61が第二底部51と軸方向に当接することで、ガイド部60の軸方向位置が規制され、その後は、ハウジング30及びシャフト11とともに、被接合材21,23から引き離される。
【0040】
このように、上記第1実施形態に係る接合工具100及びこれを用いた接合方法によれば、シャフト11の保持部15にリベット1を保持させた状態で、回転軸とともにシャフト11を回転させ、重ね合わせた被接合材21,23へ工具本体13を押し付けることにより、保持部15に保持させたリベット1を被接合材21,23へ埋め込んで強固に接合させることができる。
【0041】
特に、一般的に用いられる卓上ボール盤200又はハンドドリル300などの汎用性の高い回転駆動装置の回転軸をシャフト11の後端に把持させて使用できるので、ロボット等の高価で大型の専用機が不要となる。これにより、設備を簡略化して設備費を抑えることができる。
【0042】
また、リベット1を被接合材21,23へ埋め込む際に、ハウジング30に対して相対的に摺動可能なガイド部60が被接合材21に当接されるので、被接合材21,23に対してリベット1を安定した状態で、しかも高い精度で位置決めして埋め込むことができる。
【0043】
しかも、シャフト11の保持部15は、リベット1を磁力によって吸着する磁石89、及びリベット1の頭部5を嵌め込んでリベット1と係合する係合凹部87を含む保持機能部85を有するので、リベット1を保持部15へ容易に装着できる。これにより、被接合材21,23の接合作業性を向上できる。
【0044】
また、弾性部材として設けたコイルバネ80によって、リベット1の打ち込み時にハウジング30に対して相対的に摺動したガイド部60を円滑に初期位置へ戻すことができる。
【0045】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る接合工具について説明する。なお、第1実施形態に係る接合工具と同一構成部分は、同一符号を付して説明を省略する。
【0046】
図13は、第2実施形態に係る接合工具100Aの軸方向に沿う断面図である。第2実施形態に係る接合工具100Aでは、シャフト11は、その先端に、フリクション・エレメント・接合(以下、FEWと記す)方式で用いられるエレメント(接合補助部材)91を保持可能な保持部15Aを備えている。つまり、この接合工具100Aは、エレメント91を回転させて被接合材21,23に押し込むFEW方式によって被接合材21,23を接合する際に用いられる工具である。
【0047】
図14は、FEW方式による接合について説明する被接合材21,23における接合箇所の断面図である。FEW方式に用いられるエレメント91は、突起部93と、突起部93の基端に設けられたフランジ95とを有する。フランジ95は、例えば、平面視六角形状に形成されている。このエレメント91は、重ね合わされた複数の被接合材21,23に、突起部93の軸線まわりに回転されつつ先端から押し込まれる。これにより、突起部93は、被接合材21を貫通し、この被接合材21に重ね合わされた被接合材23に埋め込まれる。これにより、エレメント91と被接合材21,23とが係合し、被接合材21,23同士がエレメント91によって接合される。
【0048】
この接合工具100Aのシャフト11に設けられた保持部15Aも、係合凹部87及び磁石89を含む保持機能部85を有している。そして、保持機能部85では、エレメント91のフランジ95が係合凹部87に嵌め込まれることにより、エレメント91のフランジ95が係合凹部87に係合されるとともに、磁石89によって吸着される。これにより、エレメント91が保持部15Aの保持機能部85に保持される。
【0049】
次に、上記構成の接合工具100Aを用いてエレメント91によって被接合材21,23を接合させる場合について工程毎に説明する。
図15及び
図16は、それぞれ接合工具100Aによる被接合材21,23の接合の工程を示す軸方向に沿う断面図である。
【0050】
(工具組付け工程)
図15に示すように、第2実施形態に係る接合工具100Aによって被接合材21,23を接合させる場合も、回転駆動装置の回転軸のチャックCにシャフト11の後端を把持させて接合工具100Aを回転駆動装置に組付ける。
【0051】
(エレメント装着工程)
次に、接合工具100Aの先端において、突出部63の貫通孔65内へフランジ95側からエレメント91を挿し込み、エレメント91のフランジ95を、シャフト11の保持部15Aの係合凹部87に嵌め込む。これにより、エレメント91を、保持部15Aの係合凹部87及び磁石89を備えた保持機能部85に保持させる。
【0052】
(当接工程)
接合工具100Aを、互いに重ね合わせた被接合材21,23に近付け、ガイド部60の突出部63の先端面からなる当接面71を、一方の被接合材21の表面に当接させる。このとき、作業者は、位置決め溝73を視認し、被接合材21に付したマーク等に対して位置合わせすることで、接合工具100Aを被接合材21に対して容易に位置決めできる。
【0053】
(打ち込み工程)
図16に示すように、回転駆動装置の回転軸を回転させてシャフト11を回転させるとともに、接合工具100Aを被接合材21,23へ向かって押し付ける。これにより、シャフト11とともに回転するエレメント91の突起部93を、互いに重ね合わせた被接合材21,23に押圧する。
【0054】
すると、エレメント91は、突起部93が被接合材21に回転しながら圧接されることにより、被接合材21との間で発生する摩擦熱によって被接合材21を軟化させて貫通する。さらに、被接合材21を貫通した突起部93が被接合材23に回転しながら圧接することにより、被接合材23との間で発生する摩擦熱によって被接合材23を軟化させ、被接合材23に埋め込まれる。このとき、作業者は、ガイド部60の突出部63の開口63aを介してエレメント91の狙い位置が適切かを容易に確認できる。
【0055】
(離脱工程)
エレメント91を被接合材21,23に埋め込んだら、回転駆動装置の回転軸を引き上げ、接合工具100Aを被接合材21,23から引き離し、回転駆動装置の回転軸の回転を停止させる。接合工具100Aを被接合材21,23から引き離すと、被接合材21,23に埋め込まれたエレメント91のフランジ95への保持部15Aの係合状態が解除され、回転軸とともにシャフト11が被接合材21,23から引き離される。すると、エレメント91の突起部93の周囲において軟化して流動した被接合材21,23の塑性流動物が硬化し、突起部93が埋め込まれた接合部位が形成される。これにより、被接合材21,23がエレメント91によって強固に接合される。
【0056】
また、接合工具100Aが被接合材21,23から引き離されることにより、圧縮されていたコイルバネ80が伸長し、このコイルバネ80の弾性力によってガイド部60が軸方向一方側へ付勢され、ハウジング30及びシャフト11に対して相対的に軸方向一方側に移動する。これにより、シャフト11の保持部15Aがガイド部60の突出部63の貫通孔65における奥側へ引き込んだ状態となる。なお、ガイド部60は、本体部61が第二底部51と軸方向に当接することで、ガイド部60の軸方向位置が規制され、その後は、ハウジング30及びシャフト11とともに、被接合材21,23から引き離される。
【0057】
このように、上記第2実施形態に係る接合工具100A及びこれを用いた接合方法によれば、シャフト11の保持部15Aにエレメント91を保持させた状態で、回転軸とともにシャフト11を回転させ、重ね合わせた被接合材21,23へ接合工具100Aの工具本体を押し付けることにより、保持部15Aに保持させたエレメント91を被接合材21,23へ埋め込んで強固に接合させることができる。
【0058】
上記した第1実施形態及び第2実施形態では、互いに重ね合わせた2枚の被接合材21,23を接合させる場合を例示したが、接合する被接合材の枚数は3枚以上であってもよい。
【0059】
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせること、及び明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【0060】
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 重ね合わせた被接合材同士を、接合補助部材を埋め込んで接合させる接合工具であって、
先端に前記接合補助部材を保持可能な保持部を有し、後端が回転駆動装置の回転軸に把持されて前記回転軸とともに回転されるシャフトと、
前記シャフトが中心に通された工具本体と、を有し、
前記工具本体は、
前記シャフトを回転可能に支持するハウジングと、
前記被接合材に当接可能な当接面を有し、前記ハウジングに対して相対的に摺動可能なガイド部と、
前記ハウジングと前記ガイド部との間に設けられて前記ガイド部を先端側へ付勢する弾性部材と、
を備える接合工具。
この接合工具によれば、シャフトの保持部に接合補助部材を保持させた状態で、回転軸とともにシャフトを回転させ、重ね合わせた被接合材へ工具本体を押し付けることにより、保持部に保持させた接合補助部材を被接合材へ埋め込んで強固に接合させることができる。
特に、一般的に用いられる卓上ボール盤又はハンドドリルなどの汎用性の高い回転駆動装置の回転軸をシャフトの後端に把持させて用いることができるので、ロボット等の高価で大型の専用機を不要にできる。これにより、設備を簡略化して設備費を抑えることができる。
また、接合補助部材を被接合材へ埋め込む際に、ハウジングに対して相対的に摺動可能なガイド部が被接合材に当接されるので、被接合材に対して接合補助部材を安定した状態で、しかも高い精度で位置決めして埋め込むことができる。
【0061】
(2) 前記シャフトの前記保持部は、前記接合補助部材を吸着または係合して着脱可能に保持する保持機能部を備える、(1)に記載の接合工具。
この接合工具によれば、シャフトの保持部が、接合補助部材を吸着または係合して着脱可能に保持する保持機能部を備えるので、接合補助部材を保持部へ容易に装着できる。これにより、被接合材の接合作業性を向上できる。
【0062】
(3) 前記保持機能部は、前記接合補助部材を磁力によって吸着する磁石と、前記接合補助部材が嵌め込まれることにより、前記接合補助部材を係合する凹部との少なくとも一方である、(2)に記載の接合工具。
この接合工具によれば、接合補助部材を磁石の磁力と凹部の係合力との少なくとも一方によって容易に保持部へ装着させることができ、被接合材の接合作業性を向上できる。
【0063】
(4) 前記弾性部材は、コイルバネであり、
前記ガイド部は、前記コイルバネが伸縮することにより、前記シャフトに対して相対的に摺動される、(1)~(3)のいずれか一つに記載の接合工具。
この接合工具によれば、接合補助部材の打ち込み時にハウジングに対して相対的に摺動したガイド部をコイルバネによって円滑に初期位置へ戻すことができる。
【0064】
(5) (1)~(4)のいずれか一つに記載の接合工具を用い、互いに重ね合わせた前記被接合材同士を前記接合補助部材によって接合させる接合方法であって、
前記シャフトの後端を前記回転駆動装置の前記回転軸に把持させ、
前記シャフトの前記保持部に前記接合補助部材を保持させ、
前記ガイド部を前記被接合材に当接させ、
前記回転軸とともに前記シャフトを回転させながら前記接合工具を前記被接合材へ向かって押圧することにより、前記シャフトとともに回転する前記接合補助部材を前記被接合材に埋め込んで前記被接合材を前記接合補助部材によって接合させる、接合方法。
この接合方法によれば、保持部に保持させた接合補助部材を被接合材へ埋め込んで強固に接合させることができる。
特に、一般的に用いられる卓上ボール盤又はハンドドリルなどの汎用性の高い回転駆動装置の回転軸をシャフトの後端に把持させて用いることにより、ロボット等の高価で大型の専用機を用いることなく、被接合材を簡易に接合できる。
また、接合補助部材を被接合材へ埋め込む際に、ハウジングに対して相対的に摺動可能なガイド部を被接合材に当接させるので、被接合材に対して接合補助部材を安定した状態で、しかも高い精度で位置決めして埋め込むことができる。
【符号の説明】
【0065】
1 リベット(接合補助部材)
11 シャフト
13 工具本体
15,15A 保持部
21,23 被接合材
30 ハウジング
60 ガイド部
71 当接面
80 コイルバネ(弾性部材)
85 保持機能部
87 係合凹部(凹部)
89 磁石
91 エレメント(接合補助部材)
100,100A 接合工具
200 卓上ボール盤(回転駆動装置)
205,305 回転軸
300 ハンドドリル(回転駆動装置)