(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141627
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
H10K 59/122 20230101AFI20241003BHJP
H10K 50/814 20230101ALI20241003BHJP
H10K 50/824 20230101ALI20241003BHJP
H10K 59/131 20230101ALI20241003BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H10K59/122
H10K50/814
H10K50/824
H10K59/131
G09F9/30 338
G09F9/30 365
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053376
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河村 真一
【テーマコード(参考)】
3K107
5C094
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC11
3K107CC29
3K107DD37
3K107DD89
5C094AA42
5C094BA03
5C094BA27
5C094CA19
5C094DA13
5C094DA15
5C094EA04
5C094FA02
5C094HA05
5C094HA08
(57)【要約】
【課題】 改善された配線構造を有する表示装置を提供する。
【解決手段】 実施形態に係る表示装置は、下電極と、前記下電極に重なる画素開口を有するリブと、前記リブの上に配置された導電性のボトム部、前記ボトム部の上に配置された軸部および前記軸部の上に配置され前記軸部の側面から突出したトップ部を有し、前記画素開口を囲う隔壁と、前記画素開口を通じて前記下電極を覆い、電圧の印加に応じて発光する有機層と、前記有機層を覆う上電極と、を備えている。前記隔壁は、第1方向に延びる第1部分を含む。前記第1部分の前記ボトム部は、前記画素開口側の第1端部と、前記第1方向と交差する第2方向において前記第1端部の反対側に位置する第2端部と、を有している。さらに、前記第1端部は、前記軸部から露出し、前記第2端部は、前記軸部により覆われている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下電極と、
前記下電極に重なる画素開口を有するリブと、
前記リブの上に配置された導電性のボトム部と、前記ボトム部の上に配置された軸部と、前記軸部の上に配置され前記軸部の側面から突出したトップ部とを有し、前記画素開口を囲う隔壁と、
前記画素開口を通じて前記下電極を覆い、電圧の印加に応じて発光する有機層と、
前記有機層を覆う上電極と、
を備え、
前記隔壁は、第1方向に延びる第1部分を含み、
前記第1部分の前記ボトム部は、前記画素開口側の第1端部と、前記第1方向と交差する第2方向において前記第1端部の反対側に位置する第2端部と、を有し、
前記第1端部は、前記軸部から露出し、
前記第2端部は、前記軸部により覆われている、
表示装置。
【請求項2】
前記上電極は、前記第1端部に接触している、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記隔壁は、前記第1方向と交差する第2方向に延びる第2部分をさらに含み、
前記第2部分は、前記ボトム部を有していない、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記隔壁は、前記第1方向と交差する第2方向に延びる第2部分をさらに含み、
前記第2部分の前記ボトム部の両端部は、前記軸部から露出している、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
前記隔壁は、前記第1方向と交差する第2方向に延びる第2部分をさらに含み、
前記第1部分の前記軸部は、前記ボトム部が突出した第1側面と、前記第2方向において前記第1側面の反対側に位置し、前記ボトム部が突出していない第2側面と、を有し、
前記第2部分は、前記第2方向において前記第2側面と隙間を介して対向している、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項6】
前記第1端部は、前記軸部の側面から突出している、
請求項1乃至5のうちいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項7】
前記第1端部は、前記軸部の側面と揃っている、
請求項1乃至5のうちいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項8】
前記軸部は、導電性の材料で形成されている、
請求項1乃至5のうちいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項9】
前記軸部は、絶縁性の材料で形成されている、
請求項1乃至5のうちいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項10】
下電極と、
前記下電極に重なる画素開口を有するリブと、
前記リブの上に配置された導電性のボトム部と、前記ボトム部の上に配置された軸部と、前記軸部の上に配置され前記軸部の側面から突出したトップ部とを有し、前記画素開口を囲う隔壁と、
前記画素開口を通じて前記下電極を覆い、電圧の印加に応じて発光する有機層と、
前記有機層を覆う上電極と、
を備え、
前記隔壁は、第1方向に延びる第1部分と、前記第1方向と交差する第2方向に延びる第2部分と、を含み、
前記第1部分においては、前記ボトム部、前記軸部および前記トップ部が積層され、
前記第2部分においては、前記軸部および前記トップ部が積層され、前記軸部の下方に前記ボトム部が配置されていない、
表示装置。
【請求項11】
前記第1部分の前記ボトム部は、前記画素開口側の第1端部と、前記第2方向において前記第1端部の反対側に位置する第2端部と、を有し、
前記第1端部は、前記軸部から露出し、
前記上電極は、前記第1端部に接触している、
請求項10に記載の表示装置。
【請求項12】
前記第2端部は、前記軸部により覆われている、
請求項11に記載の表示装置。
【請求項13】
前記第2端部は、前記軸部から露出している、
請求項11に記載の表示装置。
【請求項14】
前記第1端部は、前記軸部の側面から突出している、
請求項11乃至13のうちいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項15】
前記第1端部は、前記軸部の側面と揃っている、
請求項11乃至13のうちいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項16】
前記軸部は、導電性の材料で形成されている、
請求項10乃至13のうちいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項17】
前記軸部は、絶縁性の材料で形成されている、
請求項10乃至13のうちいずれか1項に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、表示素子として有機発光ダイオード(OLED)を適用した表示装置が実用化されている。この表示素子は、下電極と、下電極を覆う有機層と、有機層を覆う上電極とを備えている。
【0003】
複数の表示素子が配置された表示領域には、上電極に給電するための給電配線が形成される。例えば歩留まりを改善する観点からは、給電配線と上電極とを接続する構造について種々の改善の余地がある。例えば、給電配線が有機層と接触した場合、有機層にリーク電流が流れて表示不良を生じ得る。また、給電配線と上電極を接続すべき箇所や接続すべきでない箇所が表示領域に混在している構造において、製造時に給電配線と上電極の接続の制御を正確に行うことが困難な場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-195677号公報
【特許文献2】特開2004-207217号公報
【特許文献3】特開2008-135325号公報
【特許文献4】特開2009-32673号公報
【特許文献5】特開2010-118191号公報
【特許文献6】国際公開第2018/179308号
【特許文献7】米国特許出願公開第2022/0077251号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、改善された配線構造を有する表示装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
概して、各実施形態に係る表示装置は、下電極と、前記下電極に重なる画素開口を有するリブと、前記リブの上に配置された導電性のボトム部、前記ボトム部の上に配置された軸部および前記軸部の上に配置され前記軸部の側面から突出したトップ部を有し、前記画素開口を囲う隔壁と、前記画素開口を通じて前記下電極を覆い、電圧の印加に応じて発光する有機層と、前記有機層を覆う上電極と、を備えている。
【0007】
一実施形態によれば、前記隔壁は、第1方向に延びる第1部分を含む。前記第1部分の前記ボトム部は、前記画素開口側の第1端部と、前記第1方向と交差する第2方向において前記第1端部の反対側に位置する第2端部と、を有している。さらに、前記第1端部は、前記軸部から露出し、前記第2端部は、前記軸部により覆われている。
【0008】
他の実施形態によれば、前記隔壁は、第1方向に延びる第1部分と、前記第1方向と交差する第2方向に延びる第2部分と、を含む。前記第1部分においては、前記ボトム部、前記軸部および前記トップ部が積層されている。さらに、前記第2部分においては、前記軸部および前記トップ部が積層され、前記軸部の下方に前記ボトム部が配置されていない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る表示装置の構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る表示装置の表示領域の概略的な平面図である。
【
図3】
図3は、
図2中のIII-III線に沿う表示装置の概略的な断面図である。
【
図4A】
図4Aは、
図2におけるA-A線に沿う隔壁の第1部分の概略的な断面図である。
【
図4B】
図4Bは、
図2におけるB-B線に沿う隔壁の第2部分の概略的な断面図である。
【
図5】
図5は、副画素のレイアウトの他の例を示す概略的な平面図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態に係る表示装置の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、リブおよび隔壁を形成する工程を示す図である。
【
図17】
図17は、第2実施形態に係る表示装置の表示領域の概略的な平面図である。
【
図20】
図20は、第3実施形態に係る表示装置の表示領域の概略的な平面図である。
【
図23】
図23は、第4実施形態に係る表示装置の表示領域の概略的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
いくつかの実施形態について図面を参照しながら説明する。
開示はあくまで一例に過ぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べて、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同一または類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する詳細な説明を適宜省略することがある。
【0011】
なお、図面には、必要に応じて理解を容易にするために、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を記載する。X軸に沿った方向を第1方向Xと称し、Y軸に沿った方向を第2方向Yと称し、Z軸に沿った方向を第3方向Zと称する。第3方向Zは、第1方向Xと第2方向Yを含む平面に対して法線方向である。また、第3方向Zと平行に各種要素を見ることを平面視という。
【0012】
各実施形態に係る表示装置は、表示素子として有機発光ダイオード(OLED)を備える有機エレクトロルミネッセンス表示装置であり、テレビ、パーソナルコンピュータ、車載機器、タブレット端末、スマートフォン、携帯電話端末、ウェアラブル端末等の各種の電子機器に搭載され得る。
【0013】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る表示装置DSPの構成例を示す図である。表示装置DSPは、絶縁性の基板10の上に、画像を表示する表示領域DAと、表示領域DAの周辺の周辺領域SAとを有している。基板10は、ガラスであってもよいし、可撓性を有する樹脂フィルムであってもよい。
【0014】
本実施形態においては、平面視における基板10の形状が長方形である。ただし、基板10の平面視における形状は長方形に限らず、正方形、円形あるいは楕円形などの他の形状であってもよい。
【0015】
表示領域DAは、第1方向Xおよび第2方向Yにマトリクス状に配列された複数の画素PXを備えている。画素PXは、複数の副画素SPを含む。一例では、画素PXは、青色の副画素SP1、緑色の副画素SP2および赤色の副画素SP3を含む。なお、画素PXは、副画素SP1,SP2,SP3とともに、あるいは副画素SP1,SP2,SP3のいずれかに代えて、白色などの他の色の副画素SPを含んでもよい。
【0016】
副画素SPは、画素回路1と、画素回路1によって駆動される表示素子DEとを備えている。画素回路1は、画素スイッチ2と、駆動トランジスタ3と、キャパシタ4とを備えている。画素スイッチ2および駆動トランジスタ3は、例えば薄膜トランジスタにより構成されたスイッチング素子である。
【0017】
画素スイッチ2のゲート電極は、走査線GLに接続されている。画素スイッチ2のソース電極およびドレイン電極の一方は信号線SLに接続され、他方は駆動トランジスタ3のゲート電極およびキャパシタ4に接続されている。駆動トランジスタ3において、ソース電極およびドレイン電極の一方は電源線PLおよびキャパシタ4に接続され、他方は表示素子DEに接続されている。
【0018】
なお、画素回路1の構成は図示した例に限らない。例えば、画素回路1は、より多くの薄膜トランジスタおよびキャパシタを備えてもよい。
【0019】
図2は、表示領域DAの概略的な平面図である。
図2の例においては、副画素SP1,SP2,SP3が第1方向Xに並んでいる。また、複数の副画素SP1が第2方向Yに並び、複数の副画素SP2が第2方向Yに並び、複数の副画素SP3が第2方向Yに並んでいる。なお、副画素SP1,SP2,SP3のレイアウトは
図2の例に限られない。
【0020】
表示領域DAには、リブ5および隔壁6が配置されている。リブ5は、副画素SP1,SP2,SP3においてそれぞれ画素開口AP1,AP2,AP3を有している。画素開口AP1,AP2,AP3と重なる領域には、それぞれ表示素子DE1,DE2,DE3が形成されている。
【0021】
隔壁6は、第1方向Xに延びる複数の第1部分P1と、第2方向Yに延びる複数の第2部分P2とを有している。これら第1部分P1および第2部分P2は、いずれもリブ5の上に配置されている。
【0022】
図2の例においては、各第1部分P1と各第2部分P2が互いに接続されている。これにより、隔壁6の平面形状は、画素開口AP1,AP2,AP3を囲う格子状である。隔壁6は、リブ5と同様に副画素SP1,SP2,SP3において開口を有するということもできる。
【0023】
詳しくは後述するが、隔壁6は、ボトム部61と、ボトム部61の上に位置する軸部62と、軸部62の上に位置するトップ部63とを含む。
図2においては、ボトム部61に斜線模様を付し、トップ部63にドット模様を付している。また、軸部62の外形を破線で示している。
【0024】
第1部分P1は、ボトム部61、軸部62およびトップ部63を含む。本実施形態において、第2部分P2は、軸部62およびトップ部63を含むが、ボトム部61を含んでいない。
【0025】
図3は、
図2中のIII-III線に沿う表示装置DSPの概略的な断面図である。上述の基板10の上に回路層11が配置されている。回路層11は、
図1に示した画素回路1、走査線GL、信号線SLおよび電源線PLなどの各種回路や配線を含む。回路層11は、絶縁層12により覆われている。絶縁層12は、回路層11により生じる凹凸を平坦化する平坦化膜として機能する。
【0026】
絶縁層12の上には、副画素SP1の下電極LE1と、副画素SP2の下電極LE2と、副画素SP3の下電極LE3とが配置されている。リブ5は、絶縁層12および下電極LE1,LE2,LE3の上に配置されている。下電極LE1,LE2,LE3の端部は、リブ5により覆われている。
【0027】
図3に示す隔壁6は、
図2に示した第2部分P2に相当する。隔壁6のトップ部63は、軸部62よりも大きい幅を有している。これにより、
図3においてはトップ部63の両端部が軸部62の側面よりも突出している。このような隔壁6の形状は、オーバーハング状と呼ばれる。
【0028】
副画素SP1には薄膜FL1が配置され、副画素SP2には薄膜FL2が配置され、副画素SP3には薄膜FL3が配置されている。薄膜FL1,FL2,FL3は、例えば蒸着によって形成される。本実施形態においては、薄膜FL1が有機層OR1、上電極UE1およびキャップ層CP1を含み、薄膜FL2が有機層OR2、上電極UE2およびキャップ層CP2を含み、薄膜FL3が有機層OR3、上電極UE3およびキャップ層CP3を含む。
【0029】
有機層OR1は、画素開口AP1を通じて下電極LE1を覆っている。上電極UE1は、有機層OR1を覆い、下電極LE1と対向している。キャップ層CP1は、上電極UE1を覆っている。
【0030】
有機層OR2は、画素開口AP2を通じて下電極LE2を覆っている。上電極UE2は、有機層OR2を覆い、下電極LE2と対向している。キャップ層CP2は、上電極UE2を覆っている。
【0031】
有機層OR3は、画素開口AP3を通じて下電極LE3を覆っている。上電極UE3は、有機層OR3を覆い、下電極LE3と対向している。キャップ層CP3は、上電極UE3を覆っている。
【0032】
下電極LE1,LE2,LE3は、それぞれ絶縁層12に設けられたコンタクトホールを通じて回路層11に含まれる画素回路1(
図1参照)に接続されている。隔壁6は、共通電圧を供給するための給電配線として機能する。上電極UE1,UE2,UE3には、隔壁6の共通電圧が供給される。
【0033】
有機層OR1,OR2,OR3は、電圧の印加に応じて発光する。具体的には、下電極LE1と上電極UE1の間に電位差が形成されると、有機層OR1の発光層が青色の波長域の光を放つ。下電極LE2と上電極UE2の間に電位差が形成されると、有機層OR2の発光層が緑色の波長域の光を放つ。下電極LE3と上電極UE3の間に電位差が形成されると、有機層OR3の発光層が赤色の波長域の光を放つ。
【0034】
他の例として、有機層OR1,OR2,OR3の発光層が同一色(例えば白色)の光を放ってもよい。この場合において、表示装置DSPは、発光層が放つ光を副画素SP1,SP2,SP3に対応する色の光に変換するカラーフィルタを備えてもよい。また、表示装置DSPは、発光層が放つ光により励起して副画素SP1,SP2,SP3に応じた色の光を生成する量子ドットを含んだ層を備えてもよい。
【0035】
キャップ層CP1,CP2,CP3は、それぞれ有機層OR1,OR2,OR3が発する光の取り出し効率を向上させる光学調整層としての役割を有している。なお、キャップ層CP1,CP2,CP3の少なくとも1つが省略されてもよい。
【0036】
下電極LE1、有機層OR1、上電極UE1およびキャップ層CP1のうち、画素開口AP1と重なる部分は、副画素SP1の表示素子DE1を構成する。下電極LE2、有機層OR2、上電極UE2およびキャップ層CP2のうち、画素開口AP2と重なる部分は、副画素SP2の表示素子DE2を構成する。下電極LE3、有機層OR3、上電極UE3およびキャップ層CP3のうち、画素開口AP3と重なる部分は、副画素SP3の表示素子DE3を構成する。
【0037】
薄膜FL1の一部は、トップ部63の上に位置している。当該一部は、薄膜FL1のうち隔壁6の下に位置する部分(表示素子DE1を構成する部分)と離間している。同様に、薄膜FL2の一部はトップ部63の上に位置し、当該一部は薄膜FL2のうち隔壁6の下に位置する部分(表示素子DE2を構成する部分)と離間している。さらに、薄膜FL3の一部はトップ部63の上に位置し、当該一部は薄膜FL3のうち隔壁6の下に位置する部分(表示素子DE3を構成する部分)と離間している。
【0038】
副画素SP1,SP2,SP3には、封止層SE1,SE2,SE3がそれぞれ配置されている。封止層SE1は、薄膜FL1や副画素SP1の周囲の隔壁6を連続的に覆っている。封止層SE2は、薄膜FL2や副画素SP2の周囲の隔壁6を連続的に覆っている。封止層SE3は、薄膜FL3や副画素SP3の周囲の隔壁6を連続的に覆っている。
【0039】
図3の例においては、副画素SP1,SP2の間の隔壁6上の薄膜FL1および封止層SE1が、当該隔壁6上の薄膜FL2および封止層SE2と離間している。また、副画素SP1,SP3の間の隔壁6上の薄膜FL1および封止層SE1が、当該隔壁6上の薄膜FL3および封止層SE3と離間している。
【0040】
封止層SE1,SE2,SE3は、樹脂層13により覆われている。樹脂層13は、封止層14により覆われている。封止層14は、樹脂層15により覆われている。樹脂層13,15および封止層14は、少なくとも表示領域DAの全体に連続的に設けられ、その一部が周辺領域SAにも及んでいる。
【0041】
偏光板、タッチパネル、保護フィルムまたはカバーガラスなどのカバー部材が樹脂層15の上方にさらに配置されてもよい。このようなカバー部材は、例えばOCA(OpticalClear Adhesive)などの接着層を介して樹脂層15に接着されてもよい。
【0042】
絶縁層12は、有機絶縁材料で形成されている。リブ5および封止層14,SE1,SE2,SE3は、シリコン窒化物(SiN)、シリコン酸化物(SiO)、シリコン酸窒化物(SiON)または酸化アルミニウム(Al2O3)などの無機絶縁材料で形成することができる。リブ5および封止層14,SE1,SE2,SE3は、いずれかの無機絶縁材料の単層構造を有してもよいし、2種類以上の無機絶縁材料の層が重ねられた積層構造を有してもよい。リブ5および封止層14,SE1,SE2,SE3をそれぞれ形成する無機絶縁材料は、同一であってもよいし、異なってもよい。
【0043】
樹脂層13,15は、例えばエポキシ樹脂やアクリル樹脂などの樹脂材料(有機絶縁材料)で形成されている。下電極LE1,LE2,LE3は、例えば銀(Ag)で形成された反射層と、この反射層の上面および下面をそれぞれ覆う一対の透明導電層とを有している。各透明導電層は、例えばITO(IndiumTin Oxide)、IZO(IndiumZinc Oxide)またはIGZO(IndiumGallium Zinc Oxide)などの透明な導電性酸化物で形成することができる。
【0044】
上電極UE1,UE2,UE3は、例えばマグネシウムと銀の合金(MgAg)などの金属材料で形成されている。例えば、下電極LE1,LE2,LE3はアノードに相当し、上電極UE1,UE2,UE3はカソードに相当する。
【0045】
有機層OR1,OR2,OR3は、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロッキング層、発光層、正孔ブロッキング層、電子輸送層および電子注入層の積層構造を有している。有機層OR1,OR2,OR3は、複数の発光層を含むいわゆるタンデム構造を有してもよい。
【0046】
キャップ層CP1,CP2,CP3は、上電極UE1,UE2,UE3および封止層SE1,SE2,SE3と異なる屈折率を有している。キャップ層CP1,CP2,CP3は、透明な複数の薄膜の多層体によって形成されてもよい。多層体は、複数の薄膜として、無機材料によって形成された薄膜および有機材料によって形成された薄膜を含んでもよい。また、これらの複数の薄膜は、互いに異なる屈折率を有している。多層体を構成する薄膜の材料は、上電極UE1,UE2,UE3の材料とは異なり、また、封止層SE1,SE2,SE3の材料とも異なる。
【0047】
図4Aは、
図2におけるA-A線に沿う隔壁6の第1部分P1の概略的な断面図である。
図4Bは、
図2におけるB-B線に沿う隔壁6の第2部分P2の概略的な断面図である。これらの図においては、リブ5、隔壁6、下電極LE1,LE2、有機層OR1,OR2および上電極UE1,UE2以外の要素を省略している。
【0048】
図4Aに示すように、第1部分P1は、ボトム部61、軸部62およびトップ部63を含む。ボトム部61は、リブ5の上に配置されている。軸部62は、リブ5およびボトム部61の上に配置されている。
図4Aおよび
図4Bの例においては、ボトム部61および軸部62が単層構造を有している。一方で、トップ部63は、第1トップ層631と、第1トップ層631の上に配置された第2トップ層632との積層構造を有している。例えば、ボトム部61およびトップ部63は軸部62よりも薄いが、この例に限られない。
【0049】
なお、ボトム部61、軸部62およびトップ部63の構造は、
図4Aおよび
図4Bの例に限られない。例えば、ボトム部61および軸部62は、複数の層が重ねられた積層構造を有してもよい。また。トップ部63は、単層構造を有してもよい。
【0050】
図4Aに示すボトム部61は、左方の画素開口AP1側の第1端部E1aと、第2方向Yにおいて第1端部E1aの反対側に位置する第2端部E2aとを有している。第1部分P1の軸部62は、左方の画素開口AP1側の第1側面F1aと、第2方向Yにおいて第1側面F1aの反対側に位置する第2側面F2aとを有している。また、第1部分P1のトップ部63は、第1側面F1aから突出した第1突出部PT1aと、第2側面F2aから突出した第2突出部PT2aとを有している。
【0051】
第1端部E1aは、軸部62から露出している。一方で、第2端部E2aは、軸部62により覆われている。第2端部E2aと第2側面F2aの間の領域においては、軸部62がリブ5の上面に接触している。例えば、ボトム部61の幅は、軸部62の幅の約半分である。
【0052】
図4Aの例においては、第1端部E1aが第1側面F1aから突出している。第1側面F1aからの第1端部E1aの突出長さは、第1側面F1aからの第1突出部PT1aの突出長さよりも短い。すなわち、第1端部E1aの全体が第3方向Zにおいて第1突出部PT1aの下方に位置している。
【0053】
図4Bに示すように、第2部分P2は、軸部62およびトップ部63を含み、ボトム部61を含んでいない。第2部分P2の軸部62は、左方の画素開口AP1側の第1側面F1bと、第2方向Yにおいて第1側面F1bの反対側に位置する第2側面F2bとを有している。また、第2部分P2のトップ部63は、第1側面F1bから突出した第1突出部PT1bと、第2側面F2bから突出した第2突出部PT2bとを有している。
【0054】
ボトム部61は、例えばアルミニウム(Al)、チタン(Ti)、窒化チタン(TiN)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、モリブデン-タングステン合金(MoW)、モリブデン-ニオブ合金(MoNb)、ITOおよびIZOのような導電性の材料によって形成することができる。ボトム部61は、これらのいずれかの材料で形成された単層構造を有してもよいし、異なる材料で形成された複数の層を含む積層構造を有してもよい。
【0055】
軸部62は、例えばアルミニウム、アルミニウム-ネオジム合金(AlNd)、アルミニウム-イットリウム合金(AlY)およびアルミニウム-シリコン合金(AlSi)のような導電性の材料によって形成することができる。軸部62は、これらのいずれかの材料で形成された単層構造を有してもよいし、異なる材料で形成された複数の層を含む積層構造を有してもよい。
【0056】
第1トップ層631および第2トップ層632は、例えばシリコン窒化物、シリコン酸化物およびシリコン酸窒化物のような絶縁性の材料によって形成されてもよいし、アルミニウム、チタン、窒化チタン、モリブデン、タングステン、モリブデン-タングステン合金、モリブデン-ニオブ合金、ITOおよびIZOのような導電性の材料によって形成されてもよい。一例では、第1トップ層631がチタンにより形成され、第2トップ層632がITOによって形成されている。ただし、第1トップ層631および第2トップ層632の一方が導電性の材料で形成され、他方が絶縁性の材料で形成されてもよい。また、第1トップ層631および第2トップ層632の双方が絶縁性の材料で形成されてもよい。
【0057】
図4A中の左右の有機層OR1の端部は、いずれも第1部分P1と離間しており、上電極UE1により覆われている。図中左方の上電極UE1は、ボトム部61の第1端部E1aに接触している。この上電極UE1は、第1端部E1aの上方に位置する第1側面F1aにさらに接触してもよい。
図4Aの例においては、図中右方の上電極UE1が第2側面F2aと離間している。ただし、この上電極UE1が第2側面F2aに接触してもよい。
【0058】
図4Bに示す有機層OR1の端部も上電極UE1により覆われている。さらに、有機層OR2の端部が上電極UE2により覆われている。
図4Bの例においては、上電極UE1が第1側面F1bと離間し、上電極UE2が第2側面F2bと離間している。ただし、上電極UE1が第1側面F1bに接触してもよい。また、上電極UE2が第2側面F2bに接触してもよい。
【0059】
なお、
図4Aにおいては上電極UE1と第1部分P1が接触する構造を示したが、これと同様に上電極UE2,UE3も第1部分P1のボトム部61に接触している。すなわち、上電極UE1,UE2,UE3には、少なくとも第1部分P1を介して共通電圧が供給される。
【0060】
図5は、副画素SP1,SP2,SP3のレイアウトの他の例を示す概略的な平面図である。この例においては、第2方向Yにおける画素開口AP1の幅が、第2方向Yにおける画素開口AP2の幅よりも大きい。さらに、第2方向Yにおける画素開口AP2の幅が、第2方向Yにおける画素開口AP3の幅よりも大きい。画素開口AP1,AP2,AP3の第1方向Xにおける幅は、例えば同等である。画素開口AP2,AP3は、第2方向Yに並んでいる。さらに、画素開口AP2と画素開口AP1が第1方向Xに並び、画素開口AP3と画素開口AP1が第1方向に並んでいる。
【0061】
図2の例と同じく、隔壁6は、第1方向Xに延びる複数の第1部分P1と、第2方向Yに延びる複数の第2部分P2とを有している。画素開口AP1,AP2,AP3の各々は、第1方向Xに隣り合う2本の第2部分P2と、第2方向Yに隣り合う2本の第1部分P1とで囲われている。
【0062】
画素開口AP1,AP3の図中上方に位置する複数の第1部分P1においては、ボトム部61がこれら複数の第1部分P1にわたって第1方向Xに連続的に延びている。画素開口AP1,AP2の図中下方に位置する複数の第1部分P1においても、ボトム部61がこれら複数の第1部分P1にわたって第1方向Xに連続的に延びている。一方で、画素開口AP2,AP3の間に位置する第1部分P1には、他のボトム部61と繋がっていない島状のボトム部61が配置されている。この島状のボトム部61は、導電性の軸部62を介して他のボトム部61と電気的に接続されている。
【0063】
表示素子DE1,DE2の上電極UE1,UE2は、図中下方に位置するボトム部61の第1端部E1aと接触している。表示素子DE3の上電極UE3は、画素開口AP2,AP3の間に位置するボトム部61の第1端部E1aと接触している。
【0064】
続いて、副画素SP1,SP2,SP3が
図5に示すレイアウトを有する場合を例にとり、表示装置DSPの製造方法について説明する。
図6は、表示装置DSPの製造方法の一例を示すフローチャートである。表示装置DSPの製造においては、先ず基板10の上に回路層11、絶縁層12および下電極LE1,LE2,LE3が形成される(工程PR1)。さらに、リブ5および隔壁6が形成される(工程PR2)。
【0065】
図7乃至
図12は、リブ5および隔壁6を形成する一連の工程を示す図である。これらの図においては、(a)表示領域DAの一部の概略的な平面図、(b)第1部分P1が形成される領域の概略的な断面図、および、(c)第2部分P2が形成される領域の概略的な断面図を示している。
【0066】
工程PR2においては、先ず、
図7に示すように、リブ5に加工するための絶縁層5aが形成され、ボトム部61に加工するための第1層L1が絶縁層5aの上に形成される。さらに、第1層L1の上にレジストR1が形成される。
図7(a)においては、第1層L1が形成された領域(この段階では表示領域DAの全域)に斜線模様を付している。
【0067】
レジストR1は、
図5に示したボトム部61と同様の平面形状を有している。このレジストR1をマスクとしたエッチングにより第1層L1がパターニングされ、このパターニングの後にレジストR1が除去される。これにより、
図8に示すようにボトム部61が形成される。
【0068】
続いて、
図9に示すように、軸部62に加工するための第2層L2が絶縁層5aおよびボトム部61の上に形成され、トップ部63に加工するための第3層L3が第2層L2の上に形成され、隔壁6の平面形状にパターニングされたレジストR2が第3層L3の上に形成される。
図9(b)(c)に示すように、第3層L3は、第1トップ層631aと、第1トップ層631aを覆う第2トップ層632aとを含む。なお、
図9(a)においては、第3層L3が存在する領域(この段階では表示領域DAの全域)にドット模様を付している。
【0069】
図9の工程の後、
図10に示すように、第2層L2および第3層L3がパターニングされる。このパターニングは、第2トップ層632aのうちレジストR2から露出した部分を除去するエッチングと、第1トップ層631aのうちレジストR2から露出した部分を除去するエッチングとを含む。これらのエッチングにより、第1トップ層631および第2トップ層632を含むトップ部63が形成される。
【0070】
さらに、当該パターニングは、第2層L2のうちレジストR2から露出した部分を除去する異方性のドライエッチングを含む。これにより、トップ部63と同等の幅を有する軸部62が形成される。
【0071】
なお、
図9に示すボトム部61の一部は、レジストR2からはみ出している。
図10のパターニングは、このはみ出した部分を除去するための異方性エッチングも含む。
【0072】
続いて、
図11に示すように、軸部62の幅を低減するための等方性のウェットエッチングが実施される。さらに、軸部62から突出したボトム部61をやや後退させるドライエッチングが実施される。これらのエッチングの後、レジストR2が除去される。
【0073】
図11の工程の後、
図12に示すように、リブ5の平面形状にパターニングされたレジストR3が配置される。さらに、絶縁層5aのうちレジストR3から露出した部分がエッチングにより除去される。これにより、画素開口AP1,AP2,AP3を有するリブ5が形成される。当該エッチングの後、レジストR3が除去される。
【0074】
なお、
図7乃至
図12の例においては、隔壁6が形成された後にリブ5の画素開口AP1,AP2,AP3が形成される場合を示した。他の例として、画素開口AP1,AP2,AP3が形成された後に隔壁6が形成されてもよい。
【0075】
リブ5および隔壁6の形成の後、表示素子DE1,DE2,DE3を形成するための工程PR3乃至PR8(
図6参照)が実施される。本実施形態においては、表示素子DE1が最初に形成され、表示素子DE2が次に形成され、表示素子DE3が最後に形成される場合を想定する。ただし、表示素子DE1,DE2,DE3の形成順はこの例に限られない。
【0076】
表示素子DE1の形成にあたっては、表示領域DAの全体に有機層OR1、上電極UE1およびキャップ層CP1が蒸着によって順に形成されるとともに、封止層SE1がCVDによって形成される(工程PR3)。有機層OR1、上電極UE1およびキャップ層CP1を含む薄膜FL1は、オーバーハング状の隔壁6によって分断される。封止層SE1は、隔壁6によって分断されることなく薄膜FL1および隔壁6を連続的に覆う。
【0077】
工程PR3の後、薄膜FL1および封止層SE1がパターニングされる(工程PR4)。このパターニングにおいては、薄膜FL1および封止層SE1のうち副画素SP1に位置する部分が残され、他の部分が除去される。これにより、表示素子DE1が形成される。
【0078】
工程PR4の後、表示領域DAの全体に有機層OR2、上電極UE2およびキャップ層CP2が蒸着によって順に形成されるとともに、封止層SE2がCVDによって形成される(工程PR5)。有機層OR2、上電極UE2およびキャップ層CP2を含む薄膜FL2は、オーバーハング状の隔壁6によって分断される。封止層SE2は、隔壁6によって分断されることなく薄膜FL2および隔壁6を連続的に覆う。
【0079】
工程PR5の後、薄膜FL2および封止層SE2がパターニングされる(工程PR6)。このパターニングにおいては、薄膜FL2および封止層SE2のうち副画素SP2に位置する部分が残され、他の部分が除去される。これにより、表示素子DE2が形成される。
【0080】
工程PR6の後、表示領域DAの全体に有機層OR3、上電極UE3およびキャップ層CP3が蒸着によって順に形成されるとともに、封止層SE3がCVDによって形成される(工程PR7)。有機層OR3、上電極UE3およびキャップ層CP3を含む薄膜FL3は、オーバーハング状の隔壁6によって分断される。封止層SE3は、隔壁6によって分断されることなく薄膜FL3および隔壁6を連続的に覆う。
【0081】
工程PR7の後、薄膜FL3および封止層SE3がパターニングされる(工程PR8)。このパターニングにおいては、薄膜FL3および封止層SE3のうち副画素SP3に位置する部分が残され、他の部分が除去される。これにより、表示素子DE3が形成される。
【0082】
表示素子DE1,DE2,DE3および封止層SE1,SE2,SE3が形成された後、
図3に示した樹脂層13、封止層14および樹脂層15が順に形成される(工程PR9)。これにより、表示装置DSPが完成する。
【0083】
【0084】
有機層OR1の形成にあたっては、リブ5や隔壁6が形成された基板(マザー基板)が有機層OR1を構成する各層を形成するためのチャンバに順次搬送される。各チャンバには、
図13Aおよび
図13Bに示す蒸着源100が配置されている。蒸着源100のノズル110からは、蒸着材料M1が放たれる。
【0085】
蒸着材料M1は、ノズル110から拡がりをもって放射される。蒸着材料M1の放射方向RD1は、
図13Aおよび
図13Bのいずれの断面においても第3方向Zと平行である。
【0086】
図13Aに示すように、ノズル110から放射される蒸着材料M1は、第2方向Yと第3方向Zで規定されるY-Z断面において拡がり角θ1yを有している。また、
図13Bに示すように、蒸着材料M1は、第1方向Xと第3方向Zで規定されるX-Z断面において拡がり角θ1xを有している。拡がり角θ1y,θ1xは、いずれも蒸着材料M1がトップ部63に遮られてボトム部61および軸部62に付着しない角度である。
【0087】
有機層OR1が形成された後の基板は、上電極UE1を形成するためのチャンバに搬送される。このチャンバには、
図14Aおよび
図14Bに示す蒸着源200が配置されている。蒸着源200のノズル210からは、蒸着材料M2が放たれる。
【0088】
蒸着材料M2は、ノズル210から拡がりをもって放射される。
図14Aの断面において、蒸着材料M2の放射方向RD2は、ボトム部61に蒸着材料が付着しやすいように第3方向Zに対して傾いている。一方で、
図14Bの断面においては、放射方向RD2が第3方向Zと平行である。
【0089】
図14Aに示すように、ノズル210から放射される蒸着材料M2は、Y-Z断面において拡がり角θ2yを有している。また、
図14Bに示すように、蒸着材料M2は、X-Z断面において拡がり角θ2xを有している。拡がり角θ2yは、
図13Aに示した拡がり角θ1yよりも大きい。また、拡がり角θ2xは、
図13Bに示した拡がり角θ1xよりも大きい。
【0090】
図14Aの例においては、放射方向RD2が傾いていることから、図中左方の副画素SP1には隔壁6と良好に接触した上電極UE1が形成されている。一方で、図中右方の副画素SP1には、隔壁6と離間した上電極UE1が形成されている。
【0091】
本実施形態においては、ボトム部61の第1端部E1aが軸部62の第1側面F1aから突出している。この場合には、第1端部E1aからの第1突出部PT1aの突出長さD1が、第2側面F2aからの第2突出部PT2aの突出長さD2に比べて短くなる。また、リブ5の上面からの第1突出部PT1aの高さH1は、リブ5の上面からの第2突出部PT2aの高さH2よりもボトム部61の厚さ分だけ高い。このような構成においては、ボトム部61の第1端部E1a付近を良好に覆う上電極UE1を形成しやすい。一方で、第2側面F2a付近においては第2突出部PT2aにより蒸着材料M2が遮られるため、第2側面F2aに上電極UE1が接触しにくい。
【0092】
図14Bの断面において、第1側面F1bからの第1突出部PT1bの突出長さ、および、第2側面F2bからの第2突出部PT2bの突出長さは、いずれもD2である。また、リブ5の上面からの突出部PT1b,PTb2の高さは、いずれもH2である。しかも、蒸着材料M2の放射方向RD2が第3方向Zに対して傾いていない。このような場合には、突出部PT1b,PT2bの下方に蒸着材料M2が入り込みにくい。そのため、軸部62と離間した上電極UE1,UE2が形成される。
【0093】
仮に、有機層OR1がボトム部61や軸部62に接触すると、有機層OR1にリーク電流が流れて表示不良を生じ得る。これに対し、有機層OR1の蒸着材料M1については、放射方向RD1が傾いておらず、かつ拡がり角θ1y,θ1xも小さいことから、ボトム部61および軸部62のいずれにも付着しにくい。これにより、有機層OR1とボトム部61や軸部62との接触を抑制することが可能である。
【0094】
なお、蒸着装置によっては、拡がり角θ1y,θ1xの双方を正確に制御することが困難な場合もあり得る。仮に、拡がり角θ1y,θ1xの一方が大きくなってしまうと、有機層OR1がボトム部61や軸部62に接触する可能性がある。この点に関し、
図13Aおよび
図13Bの構成においては、少なくとも拡がり角θ1yを小さく制御してボトム部61との接触を防げば、拡がり角θ1xが多少大きくなっても、有機層OR1と軸部62との接触が抑制されやすい。
【0095】
有機層OR2,OR3および上電極UE2,UE3を蒸着する工程は、
図13A乃至
図14Bに示したものと同様である。これにより、有機層OR2,OR3とボトム部61および軸部62との接触も抑制することができる。また、ボトム部61に対して上電極UE2,UE3を良好に接触させることができる。
【0096】
以上のとおり、本実施形態においては、上電極UE1,UE2,UE3と隔壁6とを接触させる必要がある場所(隔壁6のコンタクト辺)に対して局所的にボトム部61が設けられている。これにより、上電極UE1,UE2,UE3への良好な給電と、有機層OR1,OR2,OR3におけるリーク電流の抑制とを両立した給電構造を得ることができる。
【0097】
本実施形態にて開示した構成は、種々の態様に変形することが可能である。以下に、第1実施形態の変形例を示す。
<第1変形例>
図15は、第1変形例を示す平面図である。この平面図は、
図2と同じく表示領域DAの概略的な構成を示している。
図2の例においては、ボトム部61が複数の副画素SP1,SP2,SP3に沿って第1方向Xに連続的に延びていた。一方、
図15の例においては、副画素SP1,SP2,SP3のそれぞれに対して島状のボトム部61が配置されている。各ボトム部61は、第1方向Xに長尺な形状を有している。これらのボトム部61は、導電性の軸部62を介して電気的に接続されている。
【0098】
<第2変形例>
図16は、第2変形例を示す断面図である。この断面図は、
図4Aと同じく隔壁6の第1部分P1の概略的な構成を示している。
図16の例においては、ボトム部61の第1端部E1aが軸部62の第1側面F1aから突出していない。すなわち、第1端部E1aは、第1側面F1aと第3方向Zに揃っている。
【0099】
<第3変形例>
第1実施形態においては、軸部62が導電性の材料によって形成される場合を想定したが、軸部62は絶縁性の材料で形成されてもよい。当該絶縁性の材料としては、例えば、シリコン窒化物、シリコン酸化物およびシリコン酸窒化物が挙げられる。本変形例は、隔壁6が
図4Aに示した第1部分P1を有する場合、および、隔壁6が
図16に示した第1部分P1を有する場合のいずれにも適用できる。
【0100】
なお、軸部62を絶縁性の材料で形成する場合には、例えばボトム部61が
図2に示したように連続的に延びて表示領域DAを横切る構成を採用し、周辺領域SAにおいてボトム部61を共通電圧の給電源と接続すればよい。
【0101】
軸部62が絶縁性であれば、第1部分P1における第2側面F2a側や、ボトム部61を有していない第2部分P2において、有機層OR1,OR2,OR3へのリーク電流の発生を確実に防ぐことができる。
【0102】
<第4変形例>
図2および
図5の例においては、第1部分P1が第1方向Xに延び、第2部分P2が第2方向Yに延びる場合を例示した。しかしながら、
図2および
図5の副画素SP1,SP2,SP3のレイアウトにおいて、第1部分P1が第2方向Yに延び、第2部分P2が第1方向Xに延びてもよい。
【0103】
[第2実施形態]
第2実施形態について説明する。特に言及しない構成および効果は第1実施形態と同様である。
【0104】
図17は、第2実施形態に係る表示装置DSPの表示領域DAの概略的な平面図である。本実施形態における隔壁6は、第1実施形態と同じく、ボトム部61を含む第1部分P1と、ボトム部61を含まない第2部分P2とを有している。ただし、本実施形態においては、ボトム部61の第2方向Yにおける幅が、軸部62の第2方向Yにおける幅以上である。
【0105】
図17の例においては、ボトム部61が複数の副画素SP1,SP2,SP3に沿って第1方向Xに連続的に延びている。他の例として、
図15の例と同じく、副画素SP1,SP2,SP3のそれぞれに対して島状のボトム部61が配置されてもよい。
【0106】
図18は、
図17におけるA-A線に沿う第1部分P1の概略的な断面図である。
図18の例においては、ボトム部61の第1端部E1aおよび第2端部E2aがいずれも軸部62から露出している。すなわち、第1部分P1において、軸部62は、その全体がボトム部61の上に位置し、リブ5に接触していない。
【0107】
図18の例においては、第1端部E1aが軸部62の第1側面F1aから突出している。また、第2端部E2aが軸部62の第2側面F2aから突出している。図中左方の上電極UE1は、第1端部E1aに接触している。図中右方の上電電極UE1は、第2端部E2aに接触していない。ただし、この上電極UE1が第2端部E2aに接触してもよい。
【0108】
第2部分P2の構成は、第1実施形態と同様である。したがって、本実施形態の構成であっても、第2部分P2と上電極UE1,UE2,UE3および有機層OR1,OR2,OR3との接触を抑制することが可能である。
【0109】
本実施形態にて開示した構成は、種々の態様に変形することが可能である。以下に、第2実施形態の変形例を示す。
<第5変形例>
図19は、第5変形例を示す断面図である。この断面図は、
図18と同じく隔壁6の第1部分P1の概略的な構成を示している。
図19の例においては、ボトム部61の第1端部E1aが軸部62の第1側面F1aから突出していない。また、ボトム部61の第2端部E2aが軸部62の第2側面F2aから突出していない。すなわち、第1端部E1aおよび第2端部E2aは、それぞれ第1側面F1aおよび第2側面F2aと第3方向Zに揃っている。
【0110】
<第6変形例>
上述の第3変形例と同じく、第2実施形態においても軸部62が絶縁性の材料で形成されてもよい。当該絶縁性の材料としては、例えば、シリコン窒化物、シリコン酸化物およびシリコン酸窒化物が挙げられる。本変形例は、隔壁6が
図18に示した第1部分P1を有する場合、および、隔壁6が
図19に示した第1部分P1を有する場合のいずれにも適用できる。
【0111】
<第7変形例>
図17の例においては、第1部分P1が第1方向Xに延び、第2部分P2が第2方向Yに延びる場合を例示した。しかしながら、
図17の副画素SP1,SP2,SP3のレイアウトにおいて、第1部分P1が第2方向Yに延び、第2部分P2が第1方向Xに延びてもよい。
【0112】
[第3実施形態]
第3実施形態について説明する。特に言及しない構成および効果は第1実施形態と同様である。
【0113】
図20は、第3実施形態に係る表示装置DSPの表示領域DAの概略的な平面図である。本実施形態においては、隔壁6の第1部分P1だけでなく、第2部分P2にもボトム部61が配置されている。
【0114】
図20の例においては、第1部分P1のボトム部61と、第2部分P2のボトム部61とが繋がっている。ボトム部61は、全体として画素開口AP1,AP2,AP3を囲う格子状である。ただし、第1部分P1のボトム部61と、第2部分P2のボトム部61とが離間していてもよい。
【0115】
第1部分P1の構成は、例えば
図2および
図4Aに示したものと同様である。
図20の例においては、第2部分P2のボトム部61の幅が第1部分P1のボトム部61の幅よりも広い。
【0116】
図21は、
図20におけるB-B線に沿う隔壁6の第2部分P2の概略的な断面図である。この図においては、リブ5、隔壁6、下電極LE1,LE2、有機層OR1,OR2および上電極UE1,UE2以外の要素を省略している。
【0117】
第2部分P2のボトム部61は、第1方向Xにおける第1端部E1bおよび第2端部E2bを有している。第1端部E1aおよび第2端部E2bは、いずれも軸部62から露出している。すなわち、第2部分P2において、軸部62は、その全体がボトム部61の上に位置し、リブ5に接触していない。
図21の例においては、第1端部E1bが軸部62の第1側面F1bから突出している。また、第2端部E2bが軸部62の第2側面F2bから突出している。
【0118】
本実施形態においても、隔壁6が第1部分P1を有しているため、少なくとも第1部分P1の一方の側面に対する上電極UE1,UE2,UE3および有機層OR1,OR2,OR3の接触を抑制することが可能である。
【0119】
本実施形態にて開示した構成は、種々の態様に変形することが可能である。以下に、第3実施形態の変形例を示す。
<第8変形例>
図22は、第8変形例を示す断面図である。この断面図は、
図21と同じく隔壁6の第2部分P2の概略的な構成を示している。
図22の例においては、ボトム部61の第1端部E1bが軸部62の第1側面F1bから突出していない。また、ボトム部61の第2端部E2bが軸部62の第2側面F2bから突出していない。すなわち、第1端部E1bが第1側面F1bと第3方向Zに揃うとともに、第2端部E2bが第2側面F2bと第3方向Zに揃っている。
【0120】
<第9変形例>
上述の第3変形例と同じく、第3実施形態においても軸部62が絶縁性の材料で形成されてもよい。当該絶縁性の材料としては、例えば、シリコン窒化物、シリコン酸化物およびシリコン酸窒化物が挙げられる。本変形例は、隔壁6が
図21に示した第2部分P2を有する場合、および、隔壁6が
図22に示した第2部分P2を有する場合のいずれにも適用できる。
【0121】
<第10変形例>
図20の例においては、第1部分P1が第1方向Xに延び、第2部分P2が第2方向Yに延びる場合を例示した。しかしながら、
図20の副画素SP1,SP2,SP3のレイアウトにおいて、第1部分P1が第2方向Yに延び、第2部分P2が第1方向Xに延びてもよい。
【0122】
[第4実施形態]
第4実施形態について説明する。特に言及しない構成および効果は第1実施形態と同様である。
【0123】
図23は、第4実施形態に係る表示装置DSPの表示領域DAの概略的な平面図である。表示領域DAには、共通電極CE(カソード電極)が配置されている。図中下方に拡大して示すように、共通電極CEは、隔壁6および上電極UE1,UE2,UE3により構成されている。
【0124】
表示装置DSPを含む電子機器は、近距離無線通信(NFC)のためのアンテナを備えることがある。アンテナは、表示領域DAに重ねて配置され得る。この場合、共通電極CEが表示領域DAの全体を覆い、かつ低抵抗であると、通信時に共通電極CEに生じる渦電流によりアンテナによる通信の感度が低下する可能性がある。
【0125】
そこで、
図23の例においては、共通電極CEに複数のスリットSLTが設けられている。スリットSLTを設けることで、共通電極CEの抵抗を上げるとともに渦電流の発生が抑制される。これにより、通信感度の向上が期待できる。
【0126】
図23の例においては、各スリットSLTが第1方向Xに延びている。さらに、これらのスリットSLTが第2方向Yに並んでいる。共通電極CEは、スリットSLTにより複数のセグメントSGに分割されている。
図23の例においては、これらのセグメントSGの一端が接続されている。
【0127】
図24は、
図23において枠XXIで囲った領域を拡大した概略的な平面図であり、2つのセグメントSGとこれらセグメントSGの間のスリットSLTの構造を示している。
【0128】
図24の例においては、スリットSLTに相当する領域で第1部分P1と第2部分P2とが隙間GPを介して離間している。
図24におけるA-A線に沿う第1部分P1の断面構造は、例えば
図4Aと同様である。すなわち、ボトム部61の第1端部E1aが軸部62の第1側面F1aよりも突出し、ボトム部61の第2端部E2aが軸部62により覆われている。また、スリットSLTにおいては、上電極UE1,UE2,UE3が第1部分P1のボトム部61および軸部62と離間している。
【0129】
図24におけるB-B線に沿う第2部分P2の断面構造は、例えば
図21の例と同様である。すなわち、ボトム部61の第1端部E1bが軸部62の第1側面F1bよりも突出し、ボトム部61の第2端部E2bが軸部62の第2側面F2bよりも突出している。
【0130】
隙間GPは、第1部分P1における軸部62の第2側面F2a(ボトム部61が突出していない側面)と第2部分P2の間に形成されている。すなわち、第2部分P2は、第2方向Yにおいて第2側面F2aと隙間GPを介して対向している。
【0131】
仮に、スリットSLTにより分断される2つのセグメントSGを上電極UE1,UE2,UE3が接続すると、スリットSLTを設けたことによる通信感度向上の実効性が失われる。これに対し、
図23のように第1部分P1の非コンタクト辺(第2側面F2a)に沿ってスリットSLTを形成する場合には、上電極UE1,UE2,UE3による2つのセグメントSGの接続を良好に抑制することが可能となる。
【0132】
本実施形態にて開示した構成は、種々の態様に変形することが可能である。以下に、第4実施形態の変形例を示す。
<第11変形例>
上述の第2変形例(
図16参照)と同じく、第1部分P1のボトム部61の第1端部E1aが軸部62の第1側面F1aから突出していなくてもよい。さらに、上述の第8変形例(
図22参照)と同じく、第2部分P2のボトム部61の第1端部E1bおよび第2端部E2bがそれぞれ軸部62の第1側面F1bおよび第2側面F2bから突出していなくてもよい。
【0133】
<第12変形例>
上述の第3変形例と同じく、第4実施形態においても軸部62が絶縁性の材料で形成されてもよい。当該絶縁性の材料としては、例えば、シリコン窒化物、シリコン酸化物およびシリコン酸窒化物が挙げられる。
【0134】
<第13変形例>
図24の例においては、第1部分P1が第1方向Xに延び、第2部分P2が第2方向Yに延びる場合を例示した。しかしながら、
図24の副画素SP1,SP2,SP3のレイアウトにおいて、第1部分P1が第2方向Yに延び、第2部分P2が第1方向Xに延びてもよい。この場合においては、スリットSLTが第2方向Yに沿って形成される。
【0135】
以上、本発明の実施形態として説明した表示装置を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての表示装置も、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に属する。
【0136】
本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変形例に想到し得るものであり、それら変形例についても本発明の範囲に属するものと解される。例えば、上述の各実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、もしくは設計変更を行ったもの、または、工程の追加、省略もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0137】
また、上述の各実施形態において述べた態様によりもたらされる他の作用効果について、本明細書の記載から明らかなもの、または当業者において適宜想到し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0138】
DSP…表示装置、DA…表示領域、SA…周辺領域、PX…画素、SP1,SP2,SP3…副画素、LE1,LE2,LE3…下電極、OR1,OR2,OR3…有機層、UE1,UE2,UE3…上電極、SE1,SE2,SE3…封止層、1…画素回路、5…リブ、6…隔壁、61…ボトム部、62…軸部、63…トップ部、P1…第1部分、P2…第2部分。