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特開2024-141638状態推定装置、状態推定方法、プログラム及び記憶媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141638
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】状態推定装置、状態推定方法、プログラム及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
H02J7/00 302C
H02J7/00 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053397
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003683
【氏名又は名称】弁理士法人桐朋
(72)【発明者】
【氏名】井野 光泰
(72)【発明者】
【氏名】モマヤ ディヴィヤン
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA04
5G503BB01
5G503CA08
5G503EA05
5G503GC04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】負荷に対して複数の蓄電装置が電気的に並列に接続されている場合に、正確に状態推定する状態推定装置、状態推定方法、プログラム及び記憶媒体を提供する。
【解決手段】状態推定装置である電力装置であって、負荷に配置されている大容量のコンデンサに接続される1つのバッテリ又は大容量のコンデンサに対して互いに並列に接続される2つ以上のバッテリの接続数に基づいて、判定時間Tdが設定される。次に、電力装置では、設定された判定時間Td内にプリチャージが完了したかどうかを判定する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷に対して並列に設けられる蓄電器の状態を推定する状態推定装置であって、
前記蓄電器に対して接続される1つの蓄電装置、又は、前記蓄電器に対して互いに並列に接続される2つ以上の蓄電装置の数である接続数を取得する第1取得部と、
前記蓄電器の蓄電状態を取得する第2取得部と、
前記第2取得部が取得した前記蓄電状態に基づいて前記蓄電器の状態を推定する推定部と、
を備え、
前記推定部は、前記第1取得部が取得した前記接続数に基づいて前記蓄電器の状態を推定する態様を異ならせる、状態推定装置。
【請求項2】
請求項1記載の状態推定装置において、
前記推定部は、前記蓄電状態である前記蓄電器の蓄電量が蓄電閾値よりも低い状態で、1つの前記蓄電装置、又は、2つ以上の前記蓄電装置が前記蓄電器に接続されたときに、前記第1取得部が取得した前記接続数に基づいて、前記蓄電器の状態の推定期間を異ならせる、状態推定装置。
【請求項3】
請求項2記載の状態推定装置において、
1つの前記蓄電装置、又は、2つ以上の前記蓄電装置を前記蓄電器に接続し始めてからの経過時間を取得する第3取得部をさらに備え、
前記推定部は、前記経過時間と前記推定期間とを考慮して、前記蓄電器の状態を推定する、状態推定装置。
【請求項4】
請求項3記載の状態推定装置において、
前記推定部は、前記推定期間内に前記蓄電量が前記蓄電閾値を超えたかどうかを推定する、状態推定装置。
【請求項5】
請求項4記載の状態推定装置において、
前記推定期間内に前記蓄電量が前記蓄電閾値を超えないと前記推定部が推定した場合に、前記推定期間内に前記蓄電量が前記蓄電閾値を超えないことを前記状態推定装置の外部に出力する出力部をさらに備える、状態推定装置。
【請求項6】
請求項2~5のいずれか1項に記載の状態推定装置において、
前記推定期間は、前記接続数に反比例する長さに設定される、状態推定装置。
【請求項7】
請求項6記載の状態推定装置において、
前記推定期間は、前記接続数が1であるときの推定期間である推定期間初期値を前記接続数で除算した値、又は、前記推定期間初期値を前記接続数の平方根で除算した値である、状態推定装置。
【請求項8】
請求項2~7のいずれか1項に記載の状態推定装置において、
前記推定部は、前記接続数と前記蓄電器の容量とに基づいて、前記推定期間を調整する、状態推定装置。
【請求項9】
請求項2~8のいずれか1項に記載の状態推定装置において、
前記推定部は、前記蓄電器の容量に基づいて、前記蓄電閾値を調整する、状態推定装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の状態推定装置において、
1つの前記蓄電装置、又は、2つ以上の前記蓄電装置の各々は、電力装置に対して着脱可能であり、前記電力装置に装着されることで前記蓄電器に接続可能であり、
前記第1取得部は、前記電力装置に対する1つの前記蓄電装置の装着の有無、又は、前記電力装置に対する2つ以上の前記蓄電装置の装着の有無に基づいて、前記接続数を取得する、状態推定装置。
【請求項11】
請求項10記載の状態推定装置において、
前記電力装置は、1つの前記蓄電装置、又は、2つ以上の前記蓄電装置の各々を制御する制御部を備え、
前記制御部は、1つの前記蓄電装置、又は、2つ以上の前記蓄電装置の各々が前記電力装置に装着されているときに、1つの前記蓄電装置、又は、2つ以上の前記蓄電装置と通信可能であり、
前記第1取得部は、前記制御部と通信可能な蓄電装置の数を把握することで、前記接続数を取得する、状態推定装置。
【請求項12】
請求項10又は11記載の状態推定装置において、
1つの前記蓄電装置、又は、2つ以上の前記蓄電装置の各々は、
蓄電部と、
前記蓄電部と前記蓄電器とを遮断するか、又は、前記蓄電部と前記蓄電器とを接続する断続部と、
前記断続部に対して並列に接続された蓄電回路部と、
を有し、
前記蓄電回路部は、前記断続部が前記蓄電部と前記蓄電器とを遮断しているときに、前記蓄電部を放電させて前記蓄電器に蓄電させる蓄電処理を実行し、
前記第1取得部は、前記蓄電処理に先立ち、前記接続数を取得する、状態推定装置。
【請求項13】
請求項12記載の状態推定装置において、
前記推定部は、前記蓄電器の状態が満充電に近いと判断可能な蓄電完了状態であるかどうかを推定し、
前記蓄電器の状態が前記蓄電完了状態であると前記推定部が推定したときに、前記断続部は、前記蓄電部と前記蓄電器とを接続する、状態推定装置。
【請求項14】
負荷に対して並列に設けられる蓄電器の状態を推定する状態推定方法であって、
前記蓄電器に対して接続される1つの蓄電装置、又は、前記蓄電器に対して互いに並列に接続される2つ以上の蓄電装置の数である接続数を取得する第1ステップと、
取得した前記接続数に基づいて前記蓄電器の状態を推定する態様を異ならせる第2ステップと、
前記蓄電器の蓄電状態を取得する第3ステップと、
取得した前記蓄電状態に基づいて前記蓄電器の状態を推定する第4ステップと、
を有する、状態推定方法。
【請求項15】
請求項14記載の状態推定方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項16】
請求項15記載のプログラムを記憶する記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、状態推定装置、状態推定方法、プログラム及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コンデンサ(蓄電器)と放電抵抗器とスイッチとを備える電源装置が開示されている。コンデンサには、放電抵抗器及びスイッチの直列回路が電気的に並列に接続されている。スイッチがオンすると、コンデンサに蓄えられた電荷が放電する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-54181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バッテリ等の蓄電装置は、第1スイッチを介して負荷と電気的に接続される。負荷が蓄電器を有し、蓄電器の蓄電量(充電量)が少ない場合、第1スイッチをオンにすると、突入電流が発生する。突入電流は、蓄電装置から負荷(低い充電量の蓄電器)に向かって急激に流れる。突入電流の発生を阻止するため、蓄電装置には、プリチャージ回路が設けられる。プリチャージ回路は、第1スイッチと電気的に並列に接続されている。プリチャージ回路は、第2スイッチと抵抗器との直列回路である。
【0005】
蓄電装置から負荷への電力供給に先立ち、プリチャージが実行される。プリチャージは、蓄電器を事前に充電する処理である。具体的には、第1スイッチがオフ状態のときに、第2スイッチをオンにする。これにより、蓄電装置に蓄積された電荷は、第2スイッチ及び抵抗器を介して蓄電器に放電される。すなわち、蓄電装置から負荷にプリチャージ電流が流れる。蓄電器は、蓄電装置が放電した電荷を蓄電する。
【0006】
第2スイッチがオンしてから一定の判定時間内に蓄電器の蓄電量が閾値を超えたときに、第1スイッチをオンすることで、プリチャージが終了する。判定時間内に蓄電器の蓄電量が閾値を超えない場合には、プリチャージの実行がエラーであると判定される。
【0007】
しかしながら、判定時間が一定時間であるため、負荷に対して複数の蓄電装置が電気的に並列に接続されている場合に、負荷に接続される蓄電装置の数(接続数)が変化すると、プリチャージが正常に完了するまでの所要時間が変化する。この結果、プリチャージの実行がエラーであるかどうかを速やかに判定することが困難となる。
【0008】
本発明は、上記した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様は、負荷に対して並列に設けられる蓄電器の状態を推定する状態推定装置であって、前記状態推定装置は、前記蓄電器に対して接続される1つの蓄電装置、又は、前記蓄電器に対して互いに並列に接続される2つ以上の蓄電装置の数である接続数を取得する第1取得部と、前記蓄電器の蓄電状態を取得する第2取得部と、前記第2取得部が取得した前記蓄電状態に基づいて前記蓄電器の状態を推定する推定部と、を備え、前記推定部は、前記第1取得部が取得した前記接続数に基づいて前記蓄電器の状態を推定する態様を異ならせる。
【0010】
本発明の第2の態様は、負荷に対して並列に設けられる蓄電器の状態を推定する状態推定方法であって、前記状態推定方法は、前記蓄電器に対して接続される1つの蓄電装置、又は、前記蓄電器に対して互いに並列に接続される2つ以上の蓄電装置の数である接続数を取得する第1ステップと、取得した前記接続数に基づいて前記蓄電器の状態を推定する態様を異ならせる第2ステップと、前記蓄電器の蓄電状態を取得する第3ステップと、取得した前記蓄電状態に基づいて前記蓄電器の状態を推定する第4ステップと、を有する。
【0011】
本発明の第3の態様は、前記状態推定方法をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0012】
本発明の第4の態様は、前記プログラムを記憶する記憶媒体である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、蓄電器に対して接続される1つの蓄電装置、又は、蓄電器に対して互いに並列に接続される2つ以上の蓄電装置の接続数を取得し、取得した接続数に基づいて蓄電器の状態を推定する態様を異ならせ、蓄電器の蓄電状態を取得した後に、取得した蓄電状態に基づいて蓄電器の状態が推定される。これにより、接続数が変化しても、蓄電器の状態を速やかに推定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本実施形態に係る電力装置の回路図である。
図2図2は、図1のバッテリの回路図である。
図3図3は、コンデンサの電圧及び電流の時間変化を示すタイミングチャートである。
図4図4は、電力装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本実施形態に係る電力装置10(状態推定装置)の回路図である。
【0016】
電力装置10は、複数のバッテリ12(蓄電装置)、複数の装着部14、ECU16(制御部)、メインスイッチ18、入力部20、出力部22及び負荷24を備える。
【0017】
複数のバッテリ12は、スロット等の複数の装着部14に装着される。バッテリ12は、装着部14に対して着脱可能である。バッテリ12は、電力装置10に着脱可能なモバイルバッテリである。また、バッテリ12は、充放電可能なモバイルバッテリである。バッテリ12は、例えば、着脱式のリチウムイオンバッテリのバッテリパックが好適である。なお、バッテリ12は、装着部14に固定されてもよい。
【0018】
電力装置10は、少なくとも1つのバッテリ12を備えていればよい。電力装置10が複数(2つ以上)のバッテリ12を備える場合、複数のバッテリ12のうち、少なくとも1つのバッテリ12が電力装置10に対して着脱可能であればよい。この場合、バッテリ12は、別途の作業工具等を用いることなく、電力装置10に対して着脱可能であることがより好ましい。バッテリ12は、作業工具等を用いなくても、電力装置10に対して着脱できるように構成されている。また、「電力装置10に対して着脱」には、電力装置10に対してバッテリ12を装着する場合と、電力装置10に対してバッテリ12を離脱させる場合とが含まれる。
【0019】
バッテリ12が装着部14に装着されている場合、バッテリ12と負荷24とは、電力伝達経路26を介して電力の授受が可能である。詳しくは、装着部14にバッテリ12が装着されている場合、バッテリ12と負荷24とは、電気的に接続される。電力伝達経路26は、正極線28と負極線30とを有する。バッテリ12の正極端子32は、正極線28を介して、負荷24の正極と電気的に接続される。バッテリ12の負極端子34は、負極線30を介して、負荷24の負極と電気的に接続される。
【0020】
複数の装着部14のうち、2つ以上の装着部14にバッテリ12がそれぞれ装着されている場合、2つ以上のバッテリ12は、負荷24に対して電気的に並列に接続される。2つ以上のバッテリ12の各々において、正極端子32は、正極線28を介して、負荷24の正極と電気的に接続される。2つ以上のバッテリ12の各々において、負極端子34は、負極線30を介して、負荷24の負極と電気的に接続される。
【0021】
負荷24は、バッテリ12から電力伝達経路26を介して供給される電力(直流電力)によって動作する電気負荷である。例えば、負荷24は、バッテリ12から供給される直流電力を交流電力に変換するインバータである。負荷24は、バッテリ12から直流電力が供給されたときに、直流電圧の電圧値を変換するDC/DCコンバータであってもよい。負荷24は、バッテリ12に対してDC/DCコンバータとインバータとが順に接続された電気負荷であってもよい。負荷24は、電力装置10に配置された電気負荷(内部負荷)と、電力装置10の外部に存在し、内部負荷と電気的に接続される電気負荷(外部負荷)とを含めてもよい。この場合、インバータが内部負荷となる。また、電力装置10の外部に存在し、インバータと電気的に接続される家電が外部負荷となる。あるいは、負荷24は、外部負荷であってもよい。
【0022】
従って、電力装置10は、バッテリ12から負荷24に電力を供給(放電)する給電装置として機能する。また、電力装置10は、負荷24からバッテリ12に電力を入力(充電)する充電装置として機能する。
【0023】
負荷24には、相対的に大容量のコンデンサ36(蓄電器)が配置されている。コンデンサ36は、キャパシタとも称される。コンデンサ36は、負荷24に対して電気的に並列に設けられる。そのため、負荷24に対して1つのバッテリ12が電気的に接続されている場合、負荷24に対してコンデンサ36及びバッテリ12が電気的に並列に接続される。また、負荷24に対して複数のバッテリ12が電気的に並列に接続されている場合、複数のバッテリ12は、コンデンサ36及び負荷24に対して電気的に並列に接続される。
【0024】
ECU16は、複数の装着部14に装着された複数のバッテリ12を含む電力装置10の各部を制御する。ECU16は、演算部38(第1取得部、第2取得部、第3取得部、推定部、コンピュータ)、メモリ40(記憶媒体)、活性指令部42及びCAN通信部44を有する。ECU16と複数のバッテリ12及び負荷24とは、CAN通信線等の通信線46を介して接続されている。ECU16は、通信線46を介して、複数のバッテリ12及び負荷24との間で、信号又は情報の送受信が可能である。また、ECU16と複数のバッテリ12とは、信号線48を介して接続されている。ECU16は、信号線48を介して、複数のバッテリ12に指令信号を供給可能である。
【0025】
演算部38は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサ(processor)によって構成され得る。すなわち、演算部38は、処理回路(processing circuitry)によって構成され得る。演算部38は、メモリ40に格納されたプログラムを読み出して実行することにより、第1取得部、第2取得部、第3取得部及び推定部の機能を実現する。演算部38の機能については、後述する。
【0026】
なお、第1取得部、第2取得部、第3取得部及び推定部の少なくとも一部が、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の集積回路によって実現されてもよい。また、第1取得部、第2取得部、第3取得部及び推定部の少なくとも一部が、ディスクリートデバイスを含む電子回路によって構成されてもよい。
【0027】
メモリ40は、揮発性メモリ(不図示)と不揮発性メモリ(不図示)とによって構成され得る。揮発性メモリとしては、例えば、RAM(Random Access Memory)等が挙げられ得る。この揮発性メモリは、プロセッサのワーキングメモリとして使用され、処理又は演算に必要なデータ等を一時的に記憶する。不揮発性メモリとしては、例えば、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等が挙げられ得る。不揮発性メモリは、保存用のメモリとして使用され、プログラム、テーブル、マップ等を記憶する。メモリ40の少なくとも一部が、上述したようなプロセッサ、集積回路等に備えられていてもよい。
【0028】
活性指令部42は、バッテリ12の状態を切り替えるための指令信号(活性化信号)を、信号線48を介して、バッテリ12に供給する。詳しくは、指令信号は、バッテリ12を利用可能な状態(活性状態)にするための信号と、バッテリ12を利用不能な状態(非活性状態)にするための信号とを含む。活性指令部42は、所定の電圧レベルの信号(ハイレベル信号)をバッテリ12の状態を活性状態にするための指令信号としてバッテリ12に供給する。また、活性指令部42は、ローレベル信号をバッテリ12の状態を非活性状態にするための指令信号としてバッテリ12に供給する。なお、活性指令部42は、指令信号の供給を停止することで、ローレベル信号の指令信号を実現してもよい。このように、指令信号は、バッテリ12の状態を非活性状態又は活性状態にすることを該バッテリ12に指示するための信号である。
【0029】
なお、非活性状態は、バッテリ12のバッテリ本体50(蓄電部)と、該バッテリ12の外部とが電気的に接続不能な状態である。従って、非活性状態では、バッテリ本体50からバッテリ12の外部への電力の出力(放電)、又は、バッテリ12の外部からバッテリ本体50への電力の入力(充電)が不能である。
【0030】
また、活性状態は、バッテリ本体50とバッテリ12の外部とが電気的に接続可能な状態である。従って、活性状態では、バッテリ本体50からバッテリ12の外部への電力の出力、又は、バッテリ12の外部からバッテリ本体50への電力の入力が可能である。
【0031】
CAN通信部44は、通信線46を介して、複数のバッテリ12及び負荷24との間で、信号又は情報の送受信を行う。例えば、CAN通信部44は、複数の装着部14に装着された複数のバッテリ12から、バッテリ12に関する各種の情報を取得する。CAN通信部44は、負荷24から該負荷24及びコンデンサ36に関する各種の情報を取得する。
【0032】
メインスイッチ18は、電力装置10の起動スイッチである。例えば、電力装置10が電動車両に適用される場合、メインスイッチ18は、電動車両のメインスイッチである。
【0033】
入力部20は、ユーザからの操作入力を受け付け、受け付けた操作入力の内容を演算部38に出力する。入力部20は、例えば、タッチパネル又は操作ボタンである。
【0034】
出力部22は、演算部38からの指示に基づき、各種の情報を外部に報知する。報知部は、例えば、ディスプレイ又はインジケータである。
【0035】
図2に示すように、バッテリ12は、バッテリ本体50と、BMU52(第1取得部、第2取得部、第3取得部、推定部、コンピュータ)と、CAN通信部54と、スイッチ56(断続部)と、プリチャージ回路部58(蓄電回路部)とを有する。
【0036】
バッテリ本体50は、直列に接続された複数のセルから構成される。バッテリ本体50は、2次電池である。スイッチは、コンタクタ、半導体スイッチ等のスイッチング素子である。バッテリ本体50の正極は、スイッチ56及び正極端子32を介して、電力伝達経路26の正極線28に接続されている。バッテリ本体50の負極は、負極端子34を介して、電力伝達経路26の負極線30に接続されている。
【0037】
プリチャージ回路部58は、スイッチ56に対して電気的に並列に接続されている。プリチャージ回路部58は、スイッチ60と抵抗器62とを有する。プリチャージ回路部58は、スイッチ60と抵抗器62との直列回路である。スイッチ56に対して、スイッチ60と抵抗器62との直列回路が電気的に並列に接続される。2つのスイッチ56、60は、BMU52からの制御によって導通状態が制御される。なお、プリチャージ回路部58は、後述するプリチャージ(蓄電処理)を実行するときに動作する。そのため、プリチャージが行われない場合、プリチャージ回路部58のスイッチ60は、オフである。
【0038】
BMU52は、プロセッサ等のコンピュータである。BMU52は、メモリ64(記憶媒体)に記憶されたプログラムを読み出して実行することで、以下に示す各種の機能を実現する。
【0039】
BMU52は、バッテリ12の充放電の状況、バッテリ本体50の蓄電量、温度等を監視する。BMU52は、バッテリ12の正極端子32と負極端子34との間の電位差(バッテリ12の電圧)も監視する。上記のように、コンデンサ36に対して1つのバッテリ12又は2つ以上のバッテリ12が電気的に並列に接続されるので、バッテリ12の電圧は、コンデンサ36の電圧V(蓄電量、蓄電状態)とみなしてもよい。また、BMU52は、装着部14に対するバッテリ12の装着の有無を検知することで、コンデンサ36に対するバッテリ12の接続の有無を監視する。
【0040】
CAN通信部54は、ECU16のCAN通信部44(図1参照)との間で、信号又は情報の送受信を行う。これにより、BMU52は、CAN通信部54を介してECU16と通信することで、監視結果をECU16と共有することができる。また、BMU52は、ECU16からの指令信号、又は、上記の監視結果に基づき、2つのスイッチ56、60等を制御することで、バッテリ本体50とバッテリ12の外部との充放電を制御する。
【0041】
BMU52は、活性指令部42から供給される指令信号に基づいて、バッテリ12の状態を、非活性状態又は活性状態にするための制御を行う。具体的には、BMU52は、ハイレベル信号の指令信号の供給を受けて、スイッチ56をオンさせる。活性状態では、バッテリ本体50からバッテリ12の外部(負荷24)への電力の出力が可能となる。また、BMU52は、ローレベルの指令信号の供給を受けて、スイッチ56をオフさせる。非活性状態では、バッテリ本体50からバッテリ12の外部(負荷24)への電力の出力が不能である。
【0042】
なお、バッテリ12が装着部14に装着されていれば、バッテリ12とECU16との間で信号又は情報の送受信が可能であると共に、バッテリ12とコンデンサ36とが電気的に接続される。そのため、演算部38は、バッテリ12とECU16との間で通信が可能であれば、コンデンサ36に対してバッテリ12が接続されていると判断することができる。また、演算部38は、バッテリ12とECU16との間で通信が不能であれば、コンデンサ36に対してバッテリ12が接続されていないと判断することができる。
【0043】
また、BMU52は、演算部38と同様に、メモリ64に格納されたプログラムを読み出して実行することにより、第1取得部、第2取得部、第3取得部及び推定部の機能を実現可能である。
【0044】
なお、上記のように、本実施形態では、バッテリ12のBMU52、又は、ECU16の演算部38のいずれかが、第1取得部、第2取得部、第3取得部及び推定部として機能すればよい。
【0045】
負荷24(図1参照)がコンデンサ36を有し、コンデンサ36の蓄電量(充電量)が少ない場合、時点t(図3参照)がt=0においてスイッチ56(図2参照)をオンにすると、大電流(突入電流)が発生する。突入電流は、バッテリ12から負荷24(低い充電量のコンデンサ36)に向かって急激に流れる。すなわち、突入電流は、t=0から時間経過に伴い急激に上昇する。突入電流は、閾値Ifthを超えてさらに上昇し、その後、所定の電流値Isに低下する。なお、閾値Ifthは、過電流の発生の有無を判定するための判定閾値である。閾値Ifthを超える電流が電力伝達経路26に流れた場合、過電流が発生したと判定される。
【0046】
このような突入電流の発生を阻止するため、バッテリ12には、プリチャージ回路部58が設けられる。電力装置10では、スイッチ56を介したバッテリ12と負荷24との間での電力の授受に先立ち、プリチャージが実行される。プリチャージは、コンデンサ36を事前に充電する処理である。具体的には、図3に示すように、スイッチ56(図2参照)がオフ状態のときに、t=0で、プリチャージ回路部58のスイッチ60をオンにする。これにより、バッテリ本体50からプリチャージ回路部58を介してコンデンサ36(図1参照)に電流(プリチャージ電流)が流れる。
【0047】
t=0からプリチャージ電流が流れることで、バッテリ本体50が電荷を放電すると共に、放電した電荷は、コンデンサ36に蓄電される。これにより、コンデンサ36の電圧Vは、時間経過に伴い徐々に増加する。すなわち、コンデンサ36の電圧Vは、抵抗器62の抵抗値とコンデンサ36の容量とで決定される時定数によって、時間経過に伴い徐々に増加する。コンデンサ36の電圧Vが所定の電圧値Vs(例えば、満充電電圧)にまで到達すると、コンデンサ36への充電が完了する。
【0048】
プリチャージの完了後、スイッチ56をオンにすることで、プリチャージ回路部58がショートされ、バッテリ本体50と負荷24との間での電力の授受が行われる。コンデンサ36には、プリチャージによって電荷が蓄電されているので、スイッチ56をオンにしても突入電流の発生が抑制される。なお、プリチャージ回路部58のスイッチ60は、スイッチ56をオンにした後にオフにすればよい。あるいは、プリチャージ回路部58のスイッチ60は、プリチャージの完了後、スイッチ56をオンにする前に、オフにしてもよい。
【0049】
上記のように、演算部38と、複数のバッテリ12のBMU52とは、信号又は情報の送受信が可能である。また、演算部38と、複数のバッテリ12のBMU52とは、バッテリ12の監視結果を共有可能である。そのため、演算部38又はBMU52は、(複数の)バッテリ12の監視結果と、コンデンサ36を含む負荷24の情報とに基づいて、プリチャージが正常に完了したか(蓄電完了状態であるか)どうかを判定することが可能である。
【0050】
具体的には、演算部38又はBMU52は、t=0からの所定の判定時間Td(推定期間)内に電圧Vが判定電圧Ved(蓄電閾値)を超えるかどうかを判定することで、プリチャージが正常に完了したかどうかを判定する。判定電圧Vedは、電圧値Vs以下の任意の電圧値である。判定電圧Vedは、突入電流の発生を抑制でき、且つ、プリチャージが完了したと判断できる電圧値である。
【0051】
演算部38又はBMU52は、判定時間Td内に電圧Vが判定電圧Vedを超えた場合、プリチャージが正常に完了したと判定する。プリチャージが正常に完了したと判定した後、演算部38は、活性状態にするための指令信号をバッテリ12に供給するよう、活性指令部42に指示する。これにより、該バッテリ12は、指令信号の供給を受けて、スイッチ56をオンして、活性状態に切り替わることができる。
【0052】
また、演算部38又はBMU52は、判定時間Td内に電圧Vが判定電圧Vedに到達しない場合、プリチャージの実行が完了しない(エラーである)と判定する。プリチャージの実行がエラーであると判定した後、演算部38又はBMU52は、プリチャージの実行がエラーであることを、出力部22を介して外部に報知する。また、演算部38は、非活性状態にするための指令信号をバッテリ12に供給するよう、活性指令部42に指示する。これにより、該バッテリ12は、指令信号の供給を受けて、非活性状態を維持する。
【0053】
また、演算部38又はBMU52は、負荷24及びコンデンサ36に接続されているバッテリ12の個数(接続数)Nに応じて、判定時間Tdを決定する。判定時間Tdは、バッテリ12の接続数Nに反比例した時間に設定される。具体的には、判定時間Tdは、接続数Nが1であるときの判定時間である判定時間初期値Td0(推定期間初期値)を接続数Nで除算した値である(Td=Td0/N)。あるいは、判定時間Tdは、判定時間初期値Td0を接続数Nの平方根で除算した値であってもよい(Td=Td0/(N1/2))。
【0054】
各バッテリ12は、抵抗器62を有する。接続数Nの変化に伴い、コンデンサ36から電力伝達経路26を見たときの抵抗値が変化し、電圧Vの立ち上がり時間が変化する。そのため、図3に示すように、接続数Nが多くなるほど、判定時間Tdは短くなる。
【0055】
なお、演算部38又はBMU52は、複数のバッテリ12の監視結果(コンデンサ36との接続の有無)に基づき、バッテリ12の接続数Nを特定する。あるいは、演算部38又はBMU52は、ECU16と通信可能なバッテリ12を特定することで、バッテリ12の接続数Nを特定してもよい。
【0056】
図3では、N=1の場合のコンデンサ36の電圧Vの時間変化(一点鎖線)と、N=4の場合の電圧Vの時間変化(実線)とが図示されている。N=1の場合、判定時間Tdは、時点t2で設定されたTd0である。また、N=4の場合、判定時間Tdは、時点t1で設定されたTd4である。図3では、Td4=Td0/4の場合の電圧Vの時間変化を図示している。図3の例では、N=1において、判定時間初期値Td0内に電圧Vが判定電圧Vedを超えているので、演算部38又はBMU52は、プリチャージが正常に完了したと判定することができる。また、N=4において、判定時間Td4内に電圧Vが判定電圧Vedを超えているので、演算部38又はBMU52は、プリチャージが正常に完了したと判定することができる。
【0057】
なお、コンデンサ36は、劣化によって容量が変化する。コンデンサ36の容量が変化すると、電圧値Vsが変化する。また、コンデンサ36の容量が変化すると、電圧Vが電圧値Vsに到達するまでの時間が変化する。そこで、演算部38又はBMU52は、コンデンサ36の容量に基づいて、判定電圧Vedを調整してもよい。また、演算部38又はBMU52は、接続数Nとコンデンサ36の容量とに基づいて、判定時間Tdを調整してもよい。
【0058】
本実施形態に係る電力装置10は、以上のように構成される。次に、電力装置10の動作(状態推定方法)について、図4のフローチャートを参照しながら説明する。ここでは、主として、プリチャージについて説明する。この動作説明では、演算部38が第1取得部、第2取得部、第3取得部及び推定部として機能する場合について説明する。
【0059】
ステップS1において、判定時間Tdのデフォルト値である判定時間初期値Td0(図3参照)が設定される。詳しくは、ユーザは、入力部20(図1参照)を操作して判定時間初期値Td0を入力する。演算部38は、入力された判定時間初期値Td0をメモリ40に格納する。
【0060】
ステップS2(第1ステップ)において、演算部38は、負荷24及びコンデンサ36に対するバッテリ12の接続数Nを判断する。演算部38は、複数のバッテリ12との間で共有しているバッテリ12の監視結果に基づき、バッテリ12の接続数Nを特定する。あるいは、演算部38は、ECU16と通信可能なバッテリ12を特定することで、バッテリ12の接続数Nを特定する。
【0061】
ステップS3(第2ステップ)において、演算部38は、判定時間初期値Td0と接続数Nとを用いて、判定時間Tdを決定する。
【0062】
ステップS4において、演算部38は、複数の装着部14に装着されている複数のバッテリ12に対して、識別情報を付与する附番処理を実行する。演算部38は、CAN通信部44から通信線46を介して複数のバッテリ12と通信することで、例えば、特開2022-166882号公報に開示されている附番処理を実行する。バッテリ12のBMU52は、付与された識別情報をメモリ64に格納する。
【0063】
ステップS5(第3ステップ)において、演算部38は、複数の装着部14に装着されている複数のバッテリ12に対して、プリチャージの実行を指示する。具体的には、演算部38は、CAN通信部44から通信線46を介して複数のバッテリ12に、プリチャージ回路部58のスイッチ60のオンを指示する。複数のバッテリ12の各々において、BMU52は、演算部38からの指示を受けて、スイッチ60をオンにする(図3のt=0)。スイッチ60がオンすることで、プリチャージが開始され、バッテリ本体50からプリチャージ回路部58を介してコンデンサ36にプリチャージ電流が流れる。プリチャージ電流が流れることで、バッテリ本体50が電荷を放電し、放電した電荷は、コンデンサ36に蓄電される。これにより、コンデンサ36の電圧Vは、時間経過に伴い徐々に増加する。
【0064】
複数のバッテリ12において、BMU52は、バッテリ12の状態を監視している。また、演算部38は、通信線46を介して複数のバッテリ12との間で通信可能である。そのため、演算部38は、複数のバッテリ12の監視結果を共有可能である。
【0065】
ステップS6において、演算部38は、複数のバッテリ12の監視結果(スイッチがオンしてからの経過時間)に基づき、t=0からの経過時間が判定時間Tdを超えたかどうかを判定する。
【0066】
t≦Tdの場合(判定時間Td内である場合、ステップS6:NO)、演算部38は、ステップS7に進む。ステップS7(第3ステップ)において、演算部38は、複数のバッテリ12の監視結果(バッテリ12の電圧)に基づき、コンデンサ36の電圧Vが判定電圧Vedを超えたかどうかを判定する。
【0067】
電圧Vが判定電圧Vedを超えていない場合(V≦Ved、ステップS7:NO)、演算部38は、電圧Vが判定電圧Vedに到達していないので、プリチャージが完了していないと判断する。その後、演算部38は、ステップS6に戻り、ステップS6、S7の処理を再度実行する。従って、演算部38は、t=0からの経過時間(時点t)が判定時間Td内である場合(ステップS6:NO)、電圧Vが判定電圧Vedを超えるまで(ステップS7:YES)、ステップS6、S7の処理を繰り返し実行する。
【0068】
V>Vedの場合(ステップS7:YES)、演算部38は、ステップS8(第4ステップ)に進む。ステップS8において、演算部38は、判定時間Td内に電圧Vが判定電圧Vedを超えたので、プリチャージが正常に完了したと判断する。
【0069】
ステップS9において、演算部38は、活性指令部42に対して、バッテリ12の状態を活性状態に切り替えるように指示する。活性指令部42は、演算部38からの指示に基づき、ハイレベル信号の指令信号を、信号線48を介してバッテリ12に供給する。バッテリ12のBMU52は、供給された指令信号に基づき、スイッチ56をオンにする。これにより、バッテリ12の状態が活性状態に切り替わり、バッテリ本体50と負荷24との間で電力の授受が開始される。なお、BMU52は、スイッチ56がオンした後、プリチャージ回路部58のスイッチ60をオフする。
【0070】
ステップS6において、t=0からの経過時間が判定時間Tdを超えた場合(ステップS6:YES)、演算部38は、ステップS10に進む。ステップS10(第4ステップ)において、演算部38は、判定時間Td内に電圧Vが判定電圧Vedを超えないため、プリチャージが正常に完了しないと判断する。すなわち、演算部38は、プリチャージの実行がエラーであると判断する。次に、演算部38は、プリチャージの実行がエラーであることを、出力部22を介して電力装置10の外部に報知する。ユーザは、出力部22からの報知内容を確認することで、バッテリ12の交換等の対応を採ることができる。
【0071】
なお、図4において、BMU52が第1取得部、第2取得部、第3取得部及び推定部として機能する場合には、ステップS1~S3、S5~S8、S10の説明における「演算部38」の文言を、「BMU52」に置き換えることで、BMU52による動作の説明となる。
【0072】
本実施形態は、以下の効果を有する。
【0073】
図3及び図4に示すように、演算部38又はBMU52は、コンデンサ36(蓄電器)に対して接続される1つのバッテリ12(蓄電装置)、又は、コンデンサ36に対して互いに並列に接続される2つ以上のバッテリ12の接続数Nを取得する。演算部38又はBMU52は、取得した接続数Nに基づいて、コンデンサ36に対するプリチャージが完了したかどうか(コンデンサ36の状態)を判定(推定)するための判定時間Td(態様)を異ならせる。演算部38又はBMU52は、コンデンサ36の電圧V(蓄電状態)を取得した後に、取得した電圧Vに基づいて、プリチャージが完了したかどうかを判定する。これにより、接続数Nが変化しても、プリチャージの完了を速やかに判定することが可能となる。
【0074】
図3に示すように、本実施形態では、コンデンサ36の電圧V(蓄電器の蓄電量)が判定電圧Ved(蓄電閾値)よりも低い状態で、1つのバッテリ12、又は、2つ以上のバッテリ12がコンデンサ36に接続されたときに、接続数Nに基づいて判定時間Tdを異ならせる。これにより、個々のバッテリ12に対して個別に判定時間Tdを設定することが不要となる。
【0075】
図3に示すように、本実施形態では、1つのバッテリ12、又は、2つ以上のバッテリ12をコンデンサ36に接続し始めてからの経過時間(t=0からの経過時間)と、判定時間Tdとを考慮して、プリチャージが完了したかどうかを判定する。これにより、プリチャージが完了したかどうかを速やかに判定することができる。
【0076】
図3に示すように、本実施形態では、判定時間Td内にコンデンサ36の電圧Vが判定電圧Vedを超えたかどうかを速やかに判定することができる。
【0077】
図4に示すように、本実施形態では、判定時間Td内に電圧Vが判定電圧Vedを超えない場合には、判定時間Td内に電圧Vが判定電圧Vedを超えないことを外部に出力する。これにより、判定時間Td内にプリチャージが完了したかどうかを判定できないことをユーザに報知することができる。
【0078】
図3に示すように、本実施形態では、判定時間Tdが接続数Nに反比例する長さに設定されるので、接続数Nが多いほど、判定時間Tdを短く設定することができる。
【0079】
本実施形態では、判定時間初期値Td0を接続数Nで除算した値、又は、判定時間初期値Td0を接続数Nの平方根で除算した値が判定時間Tdとして設定されるので、判定時間Tdを容易且つ簡単に設定することができる。
【0080】
本実施形態では、接続数Nとコンデンサ36の容量とに基づいて判定時間Tdを調整するので、コンデンサ36の劣化に応じた適切な判定時間Tdを設定することができる。
【0081】
本実施形態では、コンデンサ36の容量に基づいて判定電圧Vedを調整するので、コンデンサ36の劣化に応じた適切な判定電圧Vedを設定することができる。
【0082】
図1に示すように、本実施形態では、1つのバッテリ12、又は、2つ以上のバッテリ12の各々は、電力装置10に対して着脱可能であると共に、電力装置10に装着されることでコンデンサ36に接続可能である。演算部38又はBMU52は、電力装置10に対する1つのバッテリ12の装着の有無、又は、電力装置10に対する2つ以上のバッテリ12の有無に基づいて、接続数Nを取得する。これにより、接続数Nを確実に取得することができる。
【0083】
本実施形態では、演算部38は、1つのバッテリ12、又は、2つ以上のバッテリ12の各々が電力装置10に装着されているときに、1つのバッテリ12、又は、2つ以上のバッテリ12と通信可能である。演算部38又はBMU52は、通信可能なバッテリ12の数を把握することで、接続数Nを取得する。これにより、接続数Nを確実に取得することができる。
【0084】
図4に示すように、本実施形態では、プリチャージに先立ち、接続数Nを取得するので、プリチャージ中に該プリチャージが完了したかどうかを判定することができる。
【0085】
図1及び図4に示すように、本実施形態では、プリチャージが完了すれば、バッテリ本体50とコンデンサ36とが接続されるので、プリチャージの完了後、速やかにバッテリ本体50とコンデンサ36との間での電力の授受を開始することができる。
【0086】
なお、本実施形態では、判定電圧Vedは、マップ又はテーブルとしてメモリ40、64に格納されてもよい。また、判定時間Tdは、マップ又はテーブルとしてメモリ40、64に格納されてもよい。これにより、演算部38又はBMU52は、マップ又はテーブルを参照して、判定電圧Ved及び判定時間Tdを設定することができる。
【0087】
本実施形態では、演算部38又はBMU52は、通信線46を介して、負荷24から判定電圧Vedの情報を取得してもよい。また、演算部38又はBMU52は、通信線46を介して、負荷24からコンデンサ36の容量の情報を取得してもよい。
【0088】
本実施形態では、電力装置10は、電動一輪車、電動二輪車、電動三輪車、電動四輪車等の各種の電動車両に適用可能である。
【0089】
本実施形態では、バッテリ12の電圧をコンデンサ36の電圧Vとみなして取得している。本実施形態では、コンデンサ36の両端の電圧、又は、電力伝達経路26の正極線28と負極線30との間の電圧を、コンデンサ36の電圧Vとして取得してもよい。
【0090】
上述した開示に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0091】
(付記1)
負荷(24)に対して並列に設けられる蓄電器(36)の状態を推定する状態推定装置(10)であって、前記状態推定装置は、前記蓄電器に対して接続される1つの蓄電装置(12)、又は、前記蓄電器に対して互いに並列に接続される2つ以上の蓄電装置の数である接続数(N)を取得する第1取得部(38、52)と、前記蓄電器の蓄電状態を取得する第2取得部(38、52)と、前記第2取得部が取得した前記蓄電状態に基づいて前記蓄電器の状態を推定する推定部(38、52)と、を備え、前記推定部は、前記第1取得部が取得した前記接続数に基づいて前記蓄電器の状態を推定する態様を異ならせる。
【0092】
この構成によれば、蓄電器に対して接続される1つの蓄電装置、又は、蓄電器に対して互いに並列に接続される2つ以上の蓄電装置の接続数を取得し、取得した接続数に基づいて蓄電器の状態を推定する態様を異ならせ、蓄電器の蓄電状態を取得した後に、取得した蓄電状態に基づいて蓄電器の状態が推定される。これにより、接続数が変化しても、蓄電器の状態を速やかに推定することが可能となる。
【0093】
(付記2)
付記1に記載の状態推定装置において、前記推定部は、前記蓄電状態である前記蓄電器の蓄電量(V)が蓄電閾値(Ved)よりも低い状態で、1つの前記蓄電装置、又は、2つ以上の前記蓄電装置が前記蓄電器に接続されたときに、前記第1取得部が取得した前記接続数に基づいて、前記蓄電器の状態の推定期間(Td)を異ならせてもよい。
【0094】
この構成によれば、蓄電器の蓄電量が蓄電閾値よりも低い状態で、1つの蓄電装置、又は、2つ以上の蓄電装置が蓄電器に接続されたときに、接続数に基づいて蓄電器の状態の推定期間を異ならせる。これにより、個々の蓄電装置に対して個別に推定期間を設定することが不要となる。
【0095】
(付記3)
付記2に記載の状態推定装置において、1つの前記蓄電装置、又は、2つ以上の前記蓄電装置を前記蓄電器に接続し始めてからの経過時間を取得する第3取得部(38、52)をさらに備え、前記推定部は、前記経過時間と前記推定期間とを考慮して、前記蓄電器の状態を推定してもよい。
【0096】
この構成によれば、1つの蓄電装置、又は、2つ以上の蓄電装置を蓄電器に接続し始めてからの経過時間と、推定期間とを考慮して、蓄電器の状態を推定する。これにより、蓄電器の状態を速やかに推定することができる。
【0097】
(付記4)
付記3に記載の状態推定装置において、前記推定部は、前記推定期間内に前記蓄電量が前記蓄電閾値を超えたかどうかを推定してもよい。
【0098】
この構成によれば、推定期間内に蓄電量が蓄電閾値を超えたかどうかを速やかに推定することができる。
【0099】
(付記5)
付記4に記載の状態推定装置において、前記状態推定装置は、前記推定期間内に前記蓄電量が前記蓄電閾値を超えないと前記推定部が推定した場合に、前記推定期間内に前記蓄電量が前記蓄電閾値を超えないことを前記状態推定装置の外部に出力する出力部(22)をさらに備えてもよい。
【0100】
この構成によれば、推定期間内に蓄電量が蓄電閾値を超えない場合には、推定期間内に蓄電量が蓄電閾値を超えないことを外部に出力する。これにより、推定期間内に蓄電部の状態を推定できないことをユーザに報知することができる。
【0101】
(付記6)
付記2~5のいずれかに記載の状態推定装置において、前記推定期間は、前記接続数に反比例する長さに設定されてもよい。
【0102】
この構成によれば、推定期間が接続数に反比例する長さに設定されるので、接続数が多いほど、推定期間を短く設定することができる。
【0103】
(付記7)
付記6に記載の状態推定装置において、前記推定期間は、前記接続数が1であるときの推定期間である推定期間初期値(Td0)を前記接続数で除算した値、又は、前記推定期間初期値を前記接続数の平方根で除算した値であればよい。
【0104】
この構成によれば、推定期間初期値を接続数で除算した値、又は、推定期間初期値を接続数の平方根で除算した値が推定期間として設定されるので、推定期間を容易且つ簡単に設定することができる。
【0105】
(付記8)
付記2~7のいずれかに記載の状態推定装置において、前記推定部は、前記接続数と前記蓄電器の容量とに基づいて、前記推定期間を調整してもよい。
【0106】
この構成によれば、接続数と蓄電器の容量とに基づいて推定期間を調整するので、蓄電器の劣化に応じた適切な推定期間を設定することができる。
【0107】
(付記9)
付記2~8のいずれかに記載の状態推定装置において、前記推定部は、前記蓄電器の容量に基づいて、前記蓄電閾値を調整してもよい。
【0108】
この構成によれば、蓄電器の容量に基づいて蓄電閾値を調整するので、蓄電器の劣化に応じた適切な蓄電閾値を設定することができる。
【0109】
(付記10)
付記1~9のいずれかに記載の状態推定装置において、1つの前記蓄電装置、又は、2つ以上の前記蓄電装置の各々は、電力装置(10)に対して着脱可能であり、前記電力装置に装着されることで前記蓄電器に接続可能であり、前記第1取得部は、前記電力装置に対する1つの前記蓄電装置の装着の有無、又は、前記電力装置に対する2つ以上の前記蓄電装置の有無に基づいて、前記接続数を取得してもよい。
【0110】
この構成によれば、電力装置に対する1つの蓄電装置の装着の有無、又は、電力装置に対する2つ以上の蓄電装置の有無に基づいて、接続数を確実に取得することができる。
【0111】
(付記11)
付記10に記載の状態推定装置において、前記電力装置は、1つの前記蓄電装置、又は、2つ以上の前記蓄電装置の各々を制御する制御部(16)を備え、前記制御部は、1つの前記蓄電装置、又は、2つ以上の前記蓄電装置の各々が前記電力装置に装着されているときに、1つの前記蓄電装置、又は、2つ以上の前記蓄電装置と通信可能であり、前記第1取得部は、前記制御部と通信可能な蓄電装置の数を把握することで、前記接続数を取得してもよい。
【0112】
この構成によれば、制御部と通信可能な蓄電装置の数を把握することで、接続数を確実に取得することができる。
【0113】
(付記12)
付記10又は11に記載の状態推定装置において、1つの前記蓄電装置、又は、2つ以上の前記蓄電装置の各々は、蓄電部(50)と、前記蓄電部と前記蓄電器とを遮断するか、又は、前記蓄電部と前記蓄電器とを接続する断続部(56)と、前記断続部に対して並列に接続された蓄電回路部(58)と、を有し、前記蓄電回路部は、前記断続部が前記蓄電部と前記蓄電器とを遮断しているときに、前記蓄電部を放電させて前記蓄電器に蓄電させる蓄電処理を実行し、前記第1取得部は、前記蓄電処理に先立ち、前記接続数を取得してもよい。
【0114】
この構成によれば、蓄電処理に先立ち、接続数を取得するので、蓄電処理中に蓄電器の状態を推定することができる。
【0115】
(付記13)
付記12に記載の状態推定装置において、前記推定部は、前記蓄電器の状態が満充電に近いと判断可能な蓄電完了状態であるかどうかを推定し、前記蓄電器の状態が前記蓄電完了状態であると前記推定部が推定したときに、前記断続部は、前記蓄電部と前記蓄電器とを接続してもよい。
【0116】
この構成によれば、蓄電器の状態が蓄電完了状態であれば、蓄電部と蓄電器とが接続されるので、蓄電処理の完了後、速やかに蓄電部と蓄電器との間での電力の授受を開始することができる。
【0117】
(付記14)
負荷(24)に対して並列に設けられる蓄電器の状態を推定する状態推定方法であって、前記状態推定方法は、前記蓄電器に対して接続される1つの蓄電装置、又は、前記蓄電器に対して互いに並列に接続される2つ以上の蓄電装置の数である接続数を取得する第1ステップ(S2)と、取得した前記接続数に基づいて前記蓄電器の状態を推定する態様を異ならせる第2ステップ(S3)と、前記蓄電器の蓄電状態を取得する第3ステップ(S5、S7)と、取得した前記蓄電状態に基づいて前記蓄電器の状態を推定する第4ステップ(S8、S10)と、を有する。
【0118】
この方法によれば、蓄電器に対して接続される1つの蓄電装置、又は、蓄電器に対して互いに並列に接続される2つ以上の蓄電装置の接続数を取得し、取得した接続数に基づいて蓄電器の状態を推定する態様を異ならせ、蓄電器の蓄電状態を取得した後に、取得した蓄電状態に基づいて蓄電器の状態が推定される。これにより、接続数が変化しても、蓄電器の状態を速やかに推定することが可能となる。
【0119】
(付記15)
付記14に記載の状態推定方法をコンピュータ(38、52)に実行させるためのプログラムである。
【0120】
(付記16)
付記15に記載のプログラムを記憶する記憶媒体(40、64)である。
【0121】
なお、本発明は、上述した開示に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0122】
10…電力装置(状態推定装置)
12…バッテリ(蓄電装置)
24…負荷
36…コンデンサ(蓄電器)
38…演算部(第1取得部、第2取得部、第3取得部、推定部、コンピュータ)
40、64…メモリ(記憶媒体)
52…BMU(第1取得部、第2取得部、第3取得部、推定部、コンピュータ)
図1
図2
図3
図4