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特開2024-141648バーナー集合体、ガスタービン燃焼器及びガスタービン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141648
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】バーナー集合体、ガスタービン燃焼器及びガスタービン
(51)【国際特許分類】
   F23R 3/28 20060101AFI20241003BHJP
   F02C 7/232 20060101ALI20241003BHJP
   F23R 3/30 20060101ALI20241003BHJP
   F23R 3/10 20060101ALI20241003BHJP
   F23D 11/38 20060101ALI20241003BHJP
   F23D 14/48 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
F23R3/28 D
F02C7/232 B
F23R3/30
F23R3/10
F23D11/38 Z
F23D14/48 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053414
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】福場 信一
(72)【発明者】
【氏名】三浦 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】張 志
(72)【発明者】
【氏名】北村 仁
(72)【発明者】
【氏名】中山 知哉
【テーマコード(参考)】
3K017
【Fターム(参考)】
3K017CA05
3K017CB01
3K017CD02
3K017CF00
3K017CF02
3K017CF03
(57)【要約】
【課題】フラッシュバックを抑制可能なバーナー集合体を提供する。
【解決手段】燃料及び空気を混合するための複数のバーナーを備えるバーナー集合体であって、複数のバーナーの各々は、空気が供給される混合流路と、混合流路の内部に混合流路の中心軸線に沿って延在し、燃料を噴射するように構成された燃料ノズルと、を含み、燃料ノズルは、燃料ノズルの出口よりも上流にオリフィスを含む。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料及び空気を混合するための複数のバーナーを備えるバーナー集合体であって、
前記複数のバーナーの各々は、
前記空気が供給される混合流路と、
前記混合流路の内部に前記混合流路の中心軸線に沿って延在し、前記燃料を噴射するように構成された燃料ノズルと、
を含み、
前記燃料ノズルは、前記燃料ノズルの出口よりも上流にオリフィスを含む、バーナー集合体。
【請求項2】
前記燃料ノズルにおける前記出口と前記オリフィスとの距離をL、前記オリフィスのオリフィス径をDとすると、L/D>5を満たす、請求項1に記載に記載のバーナー集合体。
【請求項3】
L/D≧7.5を満たす、請求項2に記載に記載のバーナー集合体。
【請求項4】
前記混合流路は、前記燃料ノズルの外周側に空気流路を含み、
前記燃料ノズルの出口の流路面積をAf、前記燃料ノズルの軸方向における前記出口の位置での前記空気流路の流路面積をAaとすると、Af/Aa≧0.1を満たす、請求項1に記載のバーナー集合体。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載のバーナー集合体と、
前記バーナー集合体の下流側に火炎が形成される空間を形成する燃焼筒と、
を備える、ガスタービン燃焼器。
【請求項6】
圧縮機と、
前記圧縮機によって圧縮した空気と燃料とが供給され、前記燃料を燃焼させて燃焼ガスを発生させるように構成されたガスタービン燃焼器と、
前記ガスタービン燃焼器で発生した前記燃焼ガスにより駆動するタービンと、
を備え、
前記ガスタービン燃焼器は、請求項5に記載のガスタービン燃焼器である、ガスタービン。
【請求項7】
前記混合流路は、前記燃料ノズルの外周側に空気流路を含み、
前記ガスタービンの定格運転時において、前記燃料ノズルの出口における前記燃料の密度をρf、前記燃料ノズルの出口における前記燃料の流速をVf、前記燃料ノズルの軸方向における前記燃料ノズルの出口の位置での前記空気流路の前記空気の密度をρa、前記燃料ノズルの軸方向における前記燃料ノズルの出口の位置での前記空気流路の前記空気の流速をVaとすると、ρf×(Vf)<ρa×(Va)を満たす、請求項6に記載のガスタービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バーナー集合体、ガスタービン燃焼器及びガスタービンに関する。
【背景技術】
【0002】
フラッシュバックのリスクが高い燃料(例えば水素等)に対して、フラッシュバック耐性を有しつつ低NOx化を実現するための技術として、バーナー集合体(クラスタバーナ)により多数の独立した短小火炎を形成させる技術がある。
【0003】
この技術では、燃料と空気とを混合する混合流路を複数配置し、燃料混合のスケールを小さくすることで、燃料と空気の混合に旋回流を積極的に利用しなくても、高い混合性能を得ることができる。
【0004】
特許文献1に記載のバーナーは、燃料ノズルが混合流路の中心軸線に沿って燃料を噴射するよう構成されており、燃料ノズルの中心軸線と混合流路の中心軸線が一致するため、同軸型と称されることがある。このような同軸型のバーナーの場合、混合流路の流路壁から空気の流れと交差する方向に燃料を噴射するクロスフロー型のバーナーよりも、混合流路の壁面近傍の燃料濃度が高くなりにくいため、フラッシュバック(逆火)のリスクを抑制することができる。
【0005】
特許文献2に記載のバーナー集合体は、燃料及び空気を混合するための複数のバーナーを備えており、複数のバーナーの各々は、燃料ノズルと、燃料及び空気が供給される混合流路と、混合流路の流路壁と燃料ノズルとを接続し、燃料ノズルを支持する支持部と、を含む。かかる構成によれば、バーナーの各々において混合流路の流路壁に接続された支持部に燃料ノズルが支持されているため、混合流路の上流側に混合流路の流路壁とは独立して設けられた特許文献1に記載のような大型のヘッダを設ける必要が無い。このため、ヘッダに起因する複数の混合流路間での空気の流量の偏りをなくし、複数の混合流路間での燃料濃度の偏りを小さくすることができる。したがって、低NOx化及びフラッシュバックの抑制が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-232234号公報
【特許文献2】特開2021-173190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示の少なくとも一実施形態は、上記特許文献2に記載の従来技術を更に改良したものであり、フラッシュバックを抑制可能なバーナー集合体並びにこれを備えるガスタービン燃焼器及びガスタービンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本開示の少なくとも一実施形態に係るバーナー集合体は、
燃料及び空気を混合するための複数のバーナーを備えるバーナー集合体であって、
前記複数のバーナーの各々は、
前記空気が供給される混合流路と、
前記混合流路の内部に前記混合流路の中心軸線に沿って延在し、前記燃料を噴射するように構成された燃料ノズルと、
を含み、
前記燃料ノズルは、前記燃料ノズルの出口よりも上流にオリフィスを含む。
【0009】
上記目的を達成するため、本開示の少なくとも一実施形態に係るガスタービン燃焼器は、
上記バーナー集合体と、
前記バーナー集合体の下流側に火炎が形成される空間を形成する燃焼筒と、
を備える。
【0010】
上記目的を達成するため、本開示の少なくとも一実施形態に係るガスタービンは、
圧縮機と、
前記圧縮機によって圧縮した空気と燃料とが供給され、前記燃料を燃焼させて燃焼ガスを発生させるように構成されたガスタービン燃焼器と、
前記ガスタービン燃焼器で発生した前記燃焼ガスにより駆動するタービンと、
を備え、
前記ガスタービン燃焼器は、上記ガスタービン燃焼器である。
【発明の効果】
【0011】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、フラッシュバックを抑制可能なバーナー集合体並びにこれを備えるガスタービン燃焼器及びガスタービンが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態に係るガスタービン100を示す概略構成図である。
図2図1に示す燃焼器4の近傍を示す模式的断面図である。
図3】一実施形態に係るバーナー集合体32の中心軸線Lに沿った模式的断面図である。
図4図3に示すバーナー42の概略構成の一例を示す模式的断面図である。
図5図4における混合流路46の出口49近傍を拡大した模式的断面図である。
図6】比較形態に係る混合流路046における燃料ノズル043の出口060近傍を示す模式的断面図である。
図7A図5に示すバーナー42の混合流路46について、オリフィス62が中心軸線Oに沿って燃料を噴射するように設計通りに形成された場合における燃料及び空気の軸方向流速の分布の一例を示す図である。
図7B図5に示すバーナー42の混合流路46について、オリフィス62の形状が設計形状からずれてオリフィス62が中心軸線Oから傾斜し方向に燃料を噴射するように形成された場合における燃料及び空気の軸方向流速の分布の一例を示す図である。
図8図7Aにおける燃料ノズル43の出口60の位置での燃料の軸方向流速の分布C1と、図7Bにおける軸方向における燃料ノズル43の出口60の位置での燃料及び空気の軸方向流速の分布C2とを示す図である。
図9図5に示すバーナー42の混合流路46について、オリフィス62の形状が設計形状からずれてオリフィス62が中心軸線Oから傾斜し方向に燃料を噴射するように形成された場合における、L/Dと、混合流路46の出口49近傍における流路壁55の壁面63の位置での無次元壁面燃空比との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0014】
図1は、本開示の一実施形態に係るガスタービン100を示す概略構成図である。図1に示すように、一実施形態に係るガスタービン100は、燃焼器4に供給される酸化剤としての空気を圧縮(即ち圧縮空気を生成)するための圧縮機2と、圧縮空気及び燃料を用いて燃焼ガスを発生させるための燃焼器4(ガスタービン燃焼器)と、燃焼器4から排出された燃焼ガスにより駆動されるように構成されたタービン6と、を備える。発電用のガスタービン100の場合、不図示の発電機がタービン6に連結されており、タービン6の回転エネルギーによって発電が行われる。
【0015】
ガスタービン100が備える燃焼器4では、燃料との空気との混合気体を燃焼させることで、上記の燃焼ガスが発生する。燃焼器4で燃焼される燃焼される燃料としては、水素、メタン、軽油、重油、ジェット燃料、天然ガス又はガス化した石炭等が挙げられ、これらの燃料の1種又は2種以上を任意に組み合わせて燃焼できる。
【0016】
圧縮機2は、圧縮機車室10と、圧縮機車室10の入口側に設けられ、空気を取り込むための空気取入口12と、圧縮機車室10及びタービン車室22を共に貫通するように設けられたロータ8と、圧縮機車室10内に配置された各種の翼と、を備える。各種の翼は、空気取入口12側に設けられた入口案内翼14と、圧縮機車室10側に固定された複数の静翼16と、静翼16に対して交互に配列されるようにロータ8に植設された複数の動翼18と、を含む。このような圧縮機2において、空気取入口12から取り込まれた空気は、複数の静翼16及び複数の動翼18を通過して圧縮されることで高温高圧の圧縮空気となる。そして、高温高圧の圧縮空気は圧縮機2から後段の燃焼器4に送られる。
【0017】
燃焼器4は、ロータ8を中心として周方向に間隔を空けて複数配置される。燃焼器4には燃料と圧縮機2で生成された圧縮空気とが供給され、燃料を燃焼させることによって、タービン6の作動流体である燃焼ガスが発生する。そして、燃焼ガスは燃焼器4から後段のタービン6に送られる。
【0018】
タービン6は、タービン車室22と、タービン車室22内に配置された各種の翼と、を備える。各種の翼は、タービン車室22側に固定された複数の静翼24と、静翼24に対して交互に配列されるようにロータ8に植設された複数の動翼26と、を含む。タービン6においては、燃焼ガスが複数の静翼24及び複数の動翼26を通過することで、ロータ8が回転駆動する。これにより、ロータ8に連結された発電機(図示しない)が駆動される。
【0019】
また、タービン車室22の下流側には、排気車室28を介して排気室30が連結される。タービン6を駆動した後の燃焼ガスは、排気車室28及び排気室30を介して外部へ排出される。
【0020】
図2は、燃焼器4の近傍を示す模式的断面図である。燃焼器4は、バーナー集合体32と、バーナー集合体32を収容する有底の筒状のケーシング20と、バーナー集合体32の下流側に火炎が形成される空間を形成する燃焼筒25と、を含む。図2において、一点鎖線は、ケーシング20、バーナー集合体32、及び燃焼筒25の各々に共通の中心軸線Lである。燃焼器4のケーシング20の内部にはバーナー集合体32が配置される。
【0021】
図示する例示的実施形態では、バーナー集合体32は、ケーシング20の内部に配置された筒状部材34の内側に保持されており、筒状部材34は、中心軸線Lの周りに間隔を空けて配置された複数の支持部35を介してケーシング20に支持される。ケーシング20と筒状部材34の外周面との間(ケーシング20とバーナー集合体32の外周面との間)には、車室40から流入した圧縮空気が流れる空気流路36が形成される。
【0022】
車室40から空気流路36に流入した圧縮空気は、バーナー集合体32とケーシング20の底面21との軸方向の隙間23を通って、バーナー集合体32が備える後述の複数の混合流路46に燃料とともに流入する。バーナー集合体32で混合された燃料と空気とは、不図示の着火装置により着火されて、燃焼筒25に火炎が形成されて燃焼ガスを生成する。
【0023】
図3は、一実施形態に係るバーナー集合体32の中心軸線Lに沿った模式的断面図である。
【0024】
図3に示すように、バーナー集合体32は、燃料及び空気を混合するための複数のバーナー42を備える。
【0025】
複数のバーナー42の各々は、燃料を噴射するための燃料ノズル43と、燃料及び空気が供給される混合流路46(混合管)と、混合流路46の流路壁55(混合流路46の内周面)と燃料ノズル43とを接続し、燃料ノズル43を支持する複数の支持部39と、を含む。複数のバーナー42の各々は、バーナー集合体32の外周面を形成する部分を除き、基本的に同一の構成を有するため、以下では、バーナー42の各々に共通の構成について説明する。
【0026】
図4は、バーナー42の概略構成の一例を示す模式的断面図である。図5は、図4における混合流路46の出口49近傍を拡大した模式的断面図である。
【0027】
例えば図4に示すように、燃料ノズル43は、管状に形成されており、混合流路46の内部に混合流路46の中心軸線Oに沿って延在している。燃料ノズル43の内部には中心軸線O上に燃料流路45が形成されている。燃料ノズル43の先端には燃料ノズル43の出口60(燃料流路45の出口)が形成されている。また、燃料ノズル43は、燃料流路45における燃料ノズル43の出口60よりも上流にオリフィス62を含む。燃料ノズル43のオリフィス62は、中心軸線O上に位置し、図5の矢印a1に示すように中心軸線Oに沿って燃料を噴射するように構成されている。以下において「軸方向」とは、特記しない限り、中心軸線Oに平行な方向、すなわち、燃料ノズル43の軸方向(混合流路46の軸方向)を意味する。
【0028】
例えば図4に示すように、混合流路46は、管状に形成されており、中心軸線Oに沿って延在している。混合流路46における燃料ノズル43の外周側、すなわち、混合流路46の流路壁55と燃料ノズル43の外周面44との間には、空気流路47が形成されており、混合流路46の入口51から混合流路46に流入した上述の圧縮空気は、図5の矢印bに示すように空気流路47を通過した後、燃料ノズル43の出口60から噴射された燃料と混合される。
【0029】
例えば図4に示すように、支持部39の内部及び流路壁55の内部には、燃料ノズル43に燃料を供給するための燃料流路48が形成されており、燃料流路48は燃料ノズル43の燃料流路45に接続している。不図示の燃料供給源からバーナー集合体32に供給された燃料は、燃料流路48を通って(すなわち流路壁55の内部及び支持部39の内部を通って)燃料ノズル43の燃料流路45に供給され、燃料ノズル43の燃料流路45を通って燃料ノズル43の出口60から混合流路46に噴射される。
【0030】
例えば図5に示すように、オリフィス62は、燃料流路45の流路壁58から中心軸線Oに向かって突出する環状の突出部として構成される。また、オリフィス62のオリフィス径をD、燃料流路45におけるオリフィス62よりも下流側での燃料流路45の流路幅をWd、燃料流路45におけるオリフィス62よりも上流側での燃料流路45の流路幅をWuとすると、Wd>D及びWu>Dを満たす。なお、典型的には、燃料流路45の流路断面の形状及びオリフィス62の流路断面の形状は円形であり、この場合、オリフィス径Dはオリフィス62の直径であり、燃料流路45の流路幅Wu,Wdは燃料流路45の直径である。また、図示する例示的形態では、燃料流路45の流路幅Wu,Wdの各々は、軸方向の位置によらず一定である。また、混合流路46の流路壁55は、流路幅一定部74,78及び絞り部76を含む。流路幅一定部74及び流路幅一定部78の各々の流路幅Hは、軸方向の位置によらず一定である。絞り部76の流路幅Hは、下流側に向かうにつれて狭くなる。図示する例示的形態では、混合流路46の上流側から順に流路幅一定部74、絞り部76及び流路幅一定部78が設けられており、絞り部76は、軸方向において燃料ノズル43の出口60よりも上流側に位置する。
【0031】
上記バーナー集合体32によれば、図4等に示したように、バーナー42の各々において混合流路46の流路壁55の壁面63に接続された支持部39に燃料ノズル43が支持されているため、混合流路46の上流側に混合流路46の流路壁55とは独立して構成された特許文献1に記載のような大型のヘッダを設ける必要が無い。このため、ヘッダに起因する複数の混合流路間での空気の流量の偏りをなくし、複数の混合流路46間での燃料濃度の偏りを小さくすることができる。したがって、低NOx化及びフラッシュバックの抑制が可能となる。
【0032】
次に、燃料ノズル43のオリフィス62を燃料ノズル43の出口60よりも上流に設けることの技術的意義について比較形態との比較に基づき説明する。図6は、比較形態に係る混合流路046における燃料ノズル043の出口060近傍を示す模式的断面図である。
【0033】
図6に示す比較形態に係る燃料ノズル043は、燃料ノズル043の出口060の位置にオリフィス062を有する。すなわち、比較形態に係る燃料ノズル043の燃料流路045の流路幅は、燃料ノズル043の出口060の位置で最小となっている。このような構成の場合、仮に、バーナー集合体の製造時にオリフィス062の形状や寸法等が設計点から外れてしまった場合(例えば図6の矢印a2に示すように、オリフィス062が中心軸線Oから傾斜した方向に燃料を噴射するように形成された場合)には、燃料ノズル043のオリフィス062(燃料ノズル043の出口060)から混合流路046の流路壁055に向けて燃料が噴射されることになるため、混合流路046の流路壁055近傍の燃料の濃度が局所的に高くなり、フラッシュバックの発生リスクが高くなる。
【0034】
これに対し、図4及び図5等に示した実施形態では、バーナー集合体32の製造時にオリフィス62の形状や寸法等が設計点から外れてしまった場合(例えば図5の矢印a2に示すように、オリフィス62が中心軸線Oから傾斜した方向に燃料を噴射するように形成された場合)であっても、燃料ノズル43のオリフィス62が燃料ノズル43の出口60よりも上流に位置するため、オリフィス62から噴射された燃料が燃料ノズル43の出口60に到達するまでの間に燃料ノズル43の内部の燃料流路45で整流され、燃料ノズル43の出口60の位置における燃料の偏流を抑制することができる。このため、燃料ノズル43の出口60から出た燃料が混合流路46の流路壁55側に拡散することを抑制し、フラッシュバックの発生リスクを低減できる。
【0035】
図7Aは、上述したバーナー42の混合流路46について、オリフィス62が中心軸線Oに沿って燃料を噴射するように設計通りに形成された場合における燃料及び空気の軸方向流速の分布の一例を示す図である。図7Bは、上述したバーナー42の混合流路46について、オリフィス62の形状が設計形状からずれてオリフィス62が中心軸線Oから傾斜し方向に燃料を噴射するように形成された場合における燃料及び空気の軸方向流速の分布の一例を示す図である。図8は、図7Aにおける軸方向における燃料ノズル43の出口60の位置での燃料及び空気の軸方向流速の分布C1と、図7Bにおける軸方向における燃料ノズル43の出口60の位置での燃料及び空気の軸方向流速の分布C2とを示す図である。
【0036】
図7A図7Bを比較すると、図7Aでは、燃料の軸方向流速は、中心軸線Oに対して略対称的な分布を有しているのに対し、図7Bでは、オリフィス62から噴射された直後の燃料の噴流を示す領域A1では、燃料の軸方向流速は、中心軸線Oに対して下側の方が上側よりも大きくなっており、中心軸線Oに対して燃料の噴流に偏りが生じている。しかしながら、ノズル43の出口60よりも上流側にオリフィス62が設けられているため、オリフィス62から噴射された燃料が燃料ノズル43の出口60に到達するまでの間に燃料ノズル43の内部の燃料流路45で整流され、ノズル43の出口60の位置では、燃料の軸方向流速は、中心軸線Oに対して略対称的な分布を示している。このため、図8に示すように、上記分布C1と上記分布C2とは、略同一の分布となっている。このように、上記バーナー集合体32によれば、オリフィス62の形状が設計形状からずれてオリフィス62が中心軸線Oから傾斜し方向に燃料を噴射するように形成された場合であっても、燃料ノズル43の出口60の位置における燃料の偏流を抑制することができるため、燃料ノズル43の出口60から出た燃料が混合流路46の流路壁55側に拡散することを抑制し、フラッシュバックの発生リスクを低減できる。
【0037】
幾つかの実施形態では、例えば図5に示すように、燃料ノズル43における出口60とオリフィス62との距離をL、オリフィス62のオリフィス径をDとすると、燃料ノズル43は、L/D>5を満たしていてもよく、より望ましくは、L/D≧7.5を満たしていてもよい。すなわち、燃料ノズル43における出口60とオリフィス62との距離Lをオリフィス62のオリフィス径Dで除算した値は、5より大きくてもよく、より望ましくは7.5以上であってもよい。以下、L/D>5を満たすことの技術的意義及びL/D≧7.5を満たすことの技術的意義について、図9を用いて説明する。
【0038】
図9は、上述したバーナー42の混合流路46について、オリフィス62の形状が設計形状からずれてオリフィス62が中心軸線Oから傾斜した方向b(図5参照)に燃料を噴射するように形成された場合における、上記L/Dと、混合流路46の出口49近傍における流路壁55の壁面63の位置での無次元壁面燃空比との関係を示す図である。なお、燃空比とは、空燃比の逆数であり、燃料質量を空気質量で割った無次元量であり、無次元壁面燃空比とは、壁面63の位置での燃空比を当該位置を含む流路断面全体の平均燃空比で除算することで算出した無次元量である。
【0039】
図9に示すように、L/D≦5を満たす範囲では、混合流路46の出口49近傍における流路壁55の壁面63の位置での無次元壁面燃空比はL/Dの値によらずに略一定であるのに対し、L/D>5を満たす範囲では、L/Dが大きくなるにつれて該無次元壁面燃空比が小さくなる。また、L/D≧7.5を満たす範囲では、L/D≦5を満たす範囲と比較して、混合流路46の出口49近傍における流路壁55の壁面63の位置での無次元壁面燃空比が有意に且つ大幅に小さくなる。
【0040】
したがって、バーナー集合体32の製造時にオリフィス62の形状や寸法等が設計点から外れてしまった場合であっても、L/D>5を満たすことにより、オリフィス62から噴射された燃料が燃料ノズル43の出口60に到達するまでの間に燃料ノズル43の内部で整流されて燃料ノズル43の出口60の位置における燃料の偏流を抑制することができ、混合流路46の出口49近傍における流路壁55の壁面63での燃空比の上昇を抑制することができる。また、L/D≧7.5を満たすことにより、オリフィス62から噴射された燃料が燃料ノズル43の出口60に到達するまでの間に燃料ノズル43の内部で良好に整流されて燃料ノズル43の出口60の位置における燃料の偏流を大幅に抑制することができ、混合流路46の出口49近傍における流路壁55の壁面63での燃空比の上昇を有意に且つ大幅に抑制することができるため、フラッシュバックの発生リスクを効果的に低減できる。なお、L/D>5又はL/D≧7.5を満たす場合において、燃料ノズル43の管内流れの完全発達による燃料ノズル43の内壁面側の流速の低下を抑制するために、更にL/Wd<25を満たしていてもよい。
【0041】
幾つかの実施形態では、例えば図4及び図5等に示す構成において、燃料ノズル43の出口60の流路面積をAf、軸方向における出口60の位置での空気流路47の流路面積をAaとすると、流路面積Aaに対する流路面積Afの比率が、Af/Aa≧0.1を満たしていてもよい。
【0042】
かかる構成では、従来のバーナー集合体よりもAf/Aaを大幅に大きくしており、燃料ノズル43の軸方向における出口60の位置での燃料の流速を空気の流速に対して積極的に小さくすることにより、燃料ノズル43の出口60に残った燃料の偏流を空気流路47の空気によって良好に整流することができ、燃料ノズル43から噴射された燃料が混合流路46の流路壁55に到達することを抑制することができる。これにより、混合流路46の出口49近傍における流路壁55の壁面63での燃空比の上昇を抑制することができるため、フラッシュバックの発生リスクを効果的に低減できる。なお、Af/Aa≧0.1を満たす場合において、空気流路47の圧力損失の増大を抑制する観点から、Af/Aa<0.65を更に満たしていてもよい。
【0043】
幾つかの実施形態では、ガスタービンの定格運転時において、燃料ノズル43の出口60における燃料の密度をρf、燃料ノズル43の出口60における燃料の流速をVf、軸方向における燃料ノズル43の出口60の位置での空気流路47の空気の密度をρa、軸方向における燃料ノズル43の出口60の位置での空気流路47の空気の流速をVaとすると、ρf×(Vf)<ρa×(Va)を満たしていてもよい。すなわち、ガスタービンの定格運転時において、燃料ノズル43の出口60における燃料の運動量よりも、軸方向における燃料ノズル43の出口60の位置での空気流路47の空気の運動量の方が大きくてもよい。
【0044】
かかる構成では、燃料ノズル43の出口60に残った燃料の偏流を空気流路47の空気によって良好に整流することができ、燃料ノズル43から噴射された燃料が混合流路46の流路壁55に到達することを抑制することができる。これにより、混合流路46の出口49近傍における流路壁55の壁面63での燃空比の上昇を抑制することができるため、フラッシュバックの発生リスクを効果的に低減できる。
【0045】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0046】
例えば、図5に示した例示的な実施形態では、混合流路46の流路壁55は、燃料ノズル43の出口60より上流に絞り部76を有していたが、混合流路46の流路壁55は、絞り部76を有していなくてもよく、混合流路46の入口51から出口49まで、混合流路46の流路幅は一定であってもよい。
【0047】
図5等に示した燃料ノズル43の内部に形成される燃料流路45の流路幅は、オリフィス62の下流側において軸方向の位置によらず一定であったが、燃料流路45は、オリフィス62の下流側において、下流側に向かうにつれて燃料流路45の流路幅が大きくなる区間を有していてもよい。
【0048】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0049】
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係るバーナー集合体(例えば上述のバーナー集合体32)は、
燃料及び空気を混合するための複数のバーナー(例えば上述のバーナー42)を備えるバーナー集合体であって、
前記複数のバーナーの各々は、
前記空気が供給される混合流路(例えば上述の混合流路46)と、
前記混合流路の内部に前記混合流路の中心軸線に沿って延在し、前記燃料を噴射するように構成された燃料ノズル(例えば上述の燃料ノズル43)と、
を含み、
前記燃料ノズルは、前記燃料ノズルの出口よりも上流にオリフィス(例えば上述のオリフィス62)を含む。
【0050】
上記(1)に記載のバーナー集合体によれば、バーナー集合体の製造時にオリフィスの形状や寸法等が設計点から外れてしまった場合であっても、燃料ノズルのオリフィスが燃料ノズルの出口よりも上流に位置するため、オリフィスから噴射された燃料が燃料ノズルの出口に到達するまでの間に燃料ノズルの内部で整流され、燃料ノズルの出口の位置における燃料の偏流を抑制することができる。このため、燃料ノズルの出口から出た燃料が混合流路の流路壁側に拡散することを抑制し、フラッシュバックの発生リスクを低減できる。
【0051】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載のバーナー集合体において、
前記燃料ノズルにおける前記出口と前記オリフィスとの距離をL、前記オリフィスのオリフィス径をDとすると、L/D>5を満たす。
【0052】
上記(2)に記載のバーナー集合体によれば、バーナー集合体の製造時にオリフィスの形状や寸法等が設計点から外れてしまった場合であっても、L/D>5を満たすことにより、オリフィスから噴射された燃料が燃料ノズルの出口に到達するまでの間に燃料ノズルの内部である程度整流されるため、燃料ノズルの出口の位置における燃料の偏流を抑制することができる。これにより、混合流路の流路壁の壁面における燃空比の上昇を抑制することができるため、フラッシュバックの発生リスクを低減できる。
【0053】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)に記載のバーナー集合体において、
L/D≧7.5を満たす。
【0054】
上記(3)に記載のバーナー集合体によれば、バーナー集合体の製造時にオリフィスの形状や寸法等が設計点から外れてしまった場合であっても、L/D≧7.5を満たすことにより、オリフィスから噴射された燃料が燃料ノズルの出口に到達するまでの間に燃料ノズルの内部で良好に整流されるため、燃料ノズルの出口の位置における燃料の偏流を大幅に抑制することができる。これにより、混合流路の流路壁の壁面における燃空比の上昇を有意且つ大幅に抑制することができるため、フラッシュバックの発生リスクを効果的に低減できる。
【0055】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れかに記載のバーナー集合体において、
前記混合流路は、前記燃料ノズルの外周側に空気流路(例えば上述の空気流路47)を含み、
前記燃料ノズルの出口の流路面積をAf、前記燃料ノズルの軸方向における前記出口の位置での前記空気流路の流路面積をAaとすると、Af/Aa≧0.1を満たす。
【0056】
上記(4)に記載のバーナー集合体によれば、従来のバーナー集合体よりもAf/Aaを大幅に大きくしており、燃料ノズルの軸方向における出口の位置での燃料の流速を空気の流速に対して積極的に小さくすることにより、燃料ノズルの出口に残った燃料の偏流を空気流路の空気によって良好に整流することができ、燃料ノズルから噴射された燃料が混合流路の流路壁に到達することを抑制することができる。これにより、混合流路の出口近傍における流路壁の壁面での燃空比の上昇を抑制することができるため、フラッシュバックの発生リスクを効果的に低減できる。
【0057】
(5)本開示の少なくとも一実施形態に係るガスタービン燃焼器(例えば上述の燃焼器4)は、
上記(1)乃至(4)の何れかに記載のバーナー集合体と、
前記バーナー集合体の下流側に火炎が形成される空間を形成する燃焼筒(例えば上述の燃焼筒25)と、
を備える、ガスタービン燃焼器。
【0058】
上記(5)に記載のバーナー集合体によれば、上記(1)乃至(4)の何れかに記載のバーナー集合体を備えるため、フラッシュバックの発生リスクを低減できる。
【0059】
(6)本開示の少なくとも一実施形態に係るガスタービン(例えば上述のガスタービン100)は、
圧縮機(例えば上述の圧縮機2)と、
前記圧縮機によって圧縮した空気と燃料とが供給され、前記燃料を燃焼させて燃焼ガスを発生させるように構成されたガスタービン燃焼器(例えば上述の燃焼器4)と、
前記ガスタービン燃焼器で発生した前記燃焼ガスにより駆動するタービン(例えば上述のタービン6)と、
を備え、
前記ガスタービン燃焼器は、上記(5)に記載のガスタービン燃焼器である。
【0060】
上記(6)に記載のバーナー集合体によれば、上記(5)に記載のガスタービン燃焼器を備えるため、フラッシュバックの発生リスクを低減できる。
【0061】
(7)幾つかの実施形態では、上記(6)に記載のガスタービンにおいて、
前記混合流路は、前記燃料ノズルの外周側に空気流路(例えば上述の空気流路47)を含み、
前記ガスタービンの定格運転時において、前記燃料ノズルの出口における前記燃料の密度をρf、前記燃料ノズルの出口における前記燃料の流速をVf、前記燃料ノズルの軸方向における前記燃料ノズルの出口の位置での前記空気流路の前記空気の密度をρa、前記燃料ノズルの軸方向における前記燃料ノズルの出口の位置での前記空気流路の前記空気の流速をVaとすると、
ρf×(Vf)<ρa×(Va)を満たす。
【0062】
上記(7)に記載のガスタービンによれば、燃料ノズルの軸方向における出口の位置における空気の運動量(ρa×(Va))が燃料ノズルの出口における燃料の運動量(ρf×(Vf))よりも大きいため、燃料ノズルの出口に残った偏流を空気流路の空気によって整流し、燃料ノズルの出口に残った偏流が混合流路の流路壁に到達することを抑制することができる。したがって、フラッシュバックの発生リスクを効果的に低減できる。
【符号の説明】
【0063】
2 圧縮機
4 燃焼器
6 タービン
8 ロータ
10 圧縮機車室
12,51 入口
14 入口案内翼
16,24 静翼
18,26 動翼
20 ケーシング
21 底面
22 タービン車室
23 隙間
25 燃焼筒
28 排気車室
30 排気室
32 バーナー集合体
34 筒状部材
35,39 支持部
36,47 空気流路
49,60 出口
40 車室
42 バーナー
43 燃料ノズル
44 外周面
45,48 燃料流路
46 混合流路
55,58 流路壁
62 オリフィス
63 壁面
74,78 流路幅一定部
76 絞り部
100 ガスタービン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9