(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141649
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】走査アンテナ及び走査アンテナの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/38 20060101AFI20241003BHJP
H01P 11/00 20060101ALI20241003BHJP
H01Q 3/26 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H01Q1/38
H01P11/00
H01Q3/26 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053417
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 順一
(72)【発明者】
【氏名】大澤 崇泰
(72)【発明者】
【氏名】田村 礼
(72)【発明者】
【氏名】田村 毅志
【テーマコード(参考)】
5J021
5J046
【Fターム(参考)】
5J021DB03
5J021HA01
5J046AA06
5J046PA07
5J046PA09
(57)【要約】
【課題】異方性導電膜を介して位相器を接続した場合にも、無機酸化物製の電極(配線)を突き破ることがなく、位相器の液晶の配向乱れを引き起こすことのない走査アンテナを提供すること。
【解決手段】基材10と、基材10上に設けられた接着層20と、接着層20上の一部に設けられた第1配線30と、接着層20上の他の部分に設けられた有機剛体層40と、第1配線30上の一部及び有機剛体層40上の一部に跨って設けられた第2配線50と、第1配線30上、第2配線50上及び有機剛体層40上に跨って設けられた無機絶縁膜60と、を備え、前記有機剛体層の硬度が前記接着層の硬度よりも大きい走査アンテナ1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材上に設けられた接着層と、
前記接着層上の一部分に設けられた、金属製の第1配線と、
前記接着層上の他の部分に設けられた有機剛体層と、
前記第1配線上の一部及び前記有機剛体層上の一部に跨って設けられた、無機酸化物製の第2配線と、
前記第1配線上、前記第2配線上及び前記有機剛体層上に跨って設けられた無機絶縁膜と、
を備え、
前記有機剛体層の硬度が前記接着層の硬度よりも大きい走査アンテナ。
【請求項2】
基材と、
前記基材上に設けられた接着層と、
前記接着層上に設けられた有機剛体層と、
前記有機剛体層上の一部に設けられた、金属製の第1配線と、
前記有機剛体層上及び前記第1配線上に跨って設けられた、無機酸化物製の第2配線と、
前記第1配線上、前記第2配線上及び前記有機剛体層上に跨って設けられた無機絶縁膜と、
を備え、
前記有機剛体層の硬度が前記接着層の硬度よりも大きい走査アンテナ。
【請求項3】
前記有機剛体層が4H~7Hの鉛筆硬度を有する請求項1又は2に記載の走査アンテナ。
【請求項4】
前記接着層がHB~2Hの鉛筆硬度を有する請求項1又は2に記載の走査アンテナ。
【請求項5】
前記有機剛体層が熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂から成る請求項1又は2に記載の走査アンテナ。
【請求項6】
前記有機剛体層の膜厚が1~5μmである請求項1又は2に記載の走査アンテナ。
【請求項7】
前記有機剛体層の最大高さ粗さRzが0.1μm以下である請求項1又は2に記載の走査アンテナ。
【請求項8】
基材上に接着層を介して金属箔を貼り合わせる第1工程と、
金属箔にパターンニングを行い、接着層上の一部に第1配線を形成する第2工程と、
接着層上及び第1配線上にプレ有機剛体層を形成する第3工程と、
プレ有機剛体層にパターンニングを行い、接着層上に有機剛体層を形成する第4工程と、
第1配線上及び有機剛体層上に無機酸化物層を形成する第5工程と、
無機酸化物層にパターンニングを行い、第2配線を形成する第6工程と、
第1配線上、第2配線上及び有機剛体層上に跨って設けられる無機絶縁膜を形成する第7工程と、
を有し、
前記有機剛体層として、その硬度が前記接着層の硬度よりも大きいものを使用する走査アンテナの製造方法。
【請求項9】
金属箔上に有機剛体層を形成する第1工程と、
有機剛体層上に接着層を形成する第2工程と、
基材上に接着層及び有機剛体層を介して金属箔を貼り合わせる第3工程と、
金属箔にパターンニングを行い、有機剛体層上の一部に第1配線を形成する第4工程と、
有機剛体層上及び第1配線上に無機酸化物層を形成する第5工程と、
無機酸化物層にパターンニングを行い、第2配線を形成する第6工程と、
第1配線上、第2配線上及び有機剛体層上に跨って設けられる無機絶縁膜を形成する第7工程と、
を有し、
前記有機剛体層として、その硬度が前記接着層の硬度よりも大きいものを使用する走査アンテナの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走査アンテナ及び走査アンテナの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビームの放射方向を変える機能を有するアンテナ(走査アンテナ)として、アンテナ単位を備えるフェイズドアレイアンテナが知られている。
【0003】
フェイズドアレイアンテナには、位相器(フェイズシフター)が必要である。フェイズドアレイアンテナを低コストで製造可能とするために、液晶を用いた位相器が実用化されつつある。
【0004】
特許文献1には、低抵抗の金属製の電極(配線)及び高抵抗の無機酸化物製の電極(配線)を備える、液晶表示装置の技術を利用した走査アンテナが記載されている。低抵抗の金属製の電極(配線)は周囲を比較的軟らかい接着層に囲まれており、高抵抗の無機酸化物製の電極(配線)はこの金属製の電極(配線)上の一部及び接着層上の一部に跨って設けられており、位相器は、異方性導電膜を介して、接着層上に配置された高抵抗の前記無機酸化物製の電極(配線)に物理的かつ電気的に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
無機酸化物製の電極(配線)は、スパッタリング等の気相製膜法によって形成されるもので、10nm~100nm程度の薄いものである。また、接着層は鉛筆硬度がHB~2H程度の軟らかいものである。
【0007】
一方、異方性導電膜の中には導電性粒子が含まれており、この異方性導電膜を接着層上の無機酸化物製の電極(配線)に押し付けて接合すると、接着層が軟らかいために、異方性導電膜中の導電性粒子が無機酸化物製の電極(配線)を突き破って、接着層にめり込んでしまうことがある。そして、このように異方性導電膜中の導電性粒子が接着層にめり込むと、この導電性粒子と無機酸化物製の電極(配線)との電気的接触が不十分となるのである。
【0008】
そこで、本発明は、異方性導電膜を介して位相器を接続した場合にも、無機酸化物製の電極(配線)を突き破ることがない走査アンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第一の態様は、基材と、前記基材上に設けられた接着層と、前記接着層上の一部分に設けられた、金属製の第1配線と、前記接着層上の他の部分に設けられた有機剛体層と、前記第1配線上の一部及び前記有機剛体層上の一部に跨って設けられた、無機酸化物製の第2配線と、前記第1配線上、前記第2配線上及び前記有機剛体層上に跨って設けられた無機絶縁膜と、を備え、前記有機剛体層の硬度が前記接着層の硬度よりも大きい走査アンテナである。
【0010】
本発明の第二の態様は、基材と、前記基材上に設けられた接着層と、前記接着層上に設
けられた有機剛体層と、前記有機剛体層上の一部に設けられた、金属製の第1配線と、前記有機剛体層上及び前記第1配線上に跨って設けられた、無機酸化物製の第2配線と、前記第1配線上、前記第2配線上及び前記有機剛体層上に跨って設けられた無機絶縁膜と、を備え、前記有機剛体層の硬度が前記接着層の硬度よりも大きい走査アンテナである。
【0011】
本発明の第三の態様は、は、走査アンテナの製造方法である。
【0012】
この製造方法は、基材上に接着層を介して金属箔を貼り合わせる第1工程と、金属箔にパターンニングを行い、接着層上の一部に第1配線を形成する第2工程と、接着層上及び第1配線上にプレ有機剛体層を形成する第3工程と、プレ有機剛体層にパターンニングを行い、接着層上に有機剛体層を形成する第4工程と、第1配線上及び有機剛体層上に無機酸化物層を形成する第5工程と、無機酸化物層にパターンニングを行い、第2配線を形成する第6工程と、第1配線上、第2配線上及び有機剛体層上に跨って設けられる無機絶縁膜を形成する第7工程と、を有し、前記有機剛体層として、その硬度が前記接着層の硬度よりも大きいものを使用する。
【0013】
本発明の第四の態様は、走査アンテナの製造方法である。
【0014】
この製造方法は、金属箔上に有機剛体層を形成する第1工程と、有機剛体層上に接着層を形成する第2工程と、基材上に接着層及び有機剛体層を介して金属箔を貼り合わせる第3工程と、金属箔にパターンニングを行い、有機剛体層上の一部に第1配線を形成する第4工程と、有機剛体層上及び第1配線上に無機酸化物層を形成する第5工程と、無機酸化物層にパターンニングを行い、第2配線を形成する第6工程と、第1配線上、第2配線上及び有機剛体層上に跨って設けられる無機絶縁膜を形成する第7工程と、を有し、前記有機剛体層として、その硬度が前記接着層の硬度よりも大きいものを使用する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、異方性導電膜を介して位相器を接続した場合にも、無機酸化物製の電極(配線)を突き破ることのない走査アンテナ及び走査アンテナの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る走査アンテナを示す断面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る走査アンテナの製造方法を示すフローチャートである。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る走査アンテナの製造における一過程を示す図である。
【
図4】本発明の第2実施形態に係る走査アンテナを示す断面図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る走査アンテナの製造方法を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る走査アンテナの製造における一過程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態について、
図1から
図3を参照して説明する。
【0018】
図1は、本実施形態に係る走査アンテナ1を示す断面図である。走査アンテナ1は、基材10と、基材10上に設けられた接着層20と、接着層20上の一部に設けられた第1配線30と、接着層20上の他の部分に設けられた有機剛体層40と、第1配線30上の
一部及び有機剛体層40上の一部に跨って設けられた第2配線50と、第1配線30上、第2配線50上及び有機剛体層40上に跨って設けられた無機絶縁膜60と、を備える。
【0019】
なお、本明細書では、基材10に対し接着層20が設けられる方向を上側として走査アンテナ1の各部および製造方法の説明を行う。しかしながら、本明細書中の走査アンテナ1の姿勢はあくまで一例であり、走査アンテナ1の使用時の姿勢および製造時の姿勢は、本明細書で示す姿勢に限定されない。
【0020】
基材10は絶縁性の材料から成る。基材10の典型的な材質はガラスであるが、各種のプラスチックフィルムを使用することにより、基材10に可撓性を付与することもできる。本実施形態において、基材10の材質はガラスである。
【0021】
接着層20は、基材10上に設けられる。接着層20は、公知の接着剤で形成された層である。この接着層20は、一般に、HB~2Hの鉛筆硬度を有する比較的軟らかいものである。接着層20を第1配線30との接着するため接着層20として比較的軟らかいものを使用する必要があり、硬度の高い接着層20を使用することは難しい。
【0022】
なお、この実施形態では、接着層20の厚さは約5μm、最大高さ粗さRzは0.5μmである。
【0023】
第1配線30は、接着層20上の一部に設けられる。第1配線30は、所定のパターン形状に形成されている。第1配線30は、接着層20を介して基材10に貼り合わされている。走査アンテナ1において、第1配線30は、低抵抗配線の役割を担う。
【0024】
第1配線30は、金属製である。本実施形態において、第1配線30は、銅製である。第1配線30は、銀、アルミニウム等の比抵抗が小さい金属によって構成されても良い。
【0025】
低抵抗化の観点から、第1配線30は、厚膜であることが望ましく、第1配線30の厚さは、例えば1μm~30μm程度にできる。本実施形態において、第1配線30の厚さは、2μmである。
【0026】
有機剛体層40は、接着層20上のうち第1配線30が設けられない部分に設けられる。有機剛体層40は、所定のパターン形状に形成されている。
【0027】
有機剛体層40は、この上に配置された第2配線50に異方性導電膜を押し付けて物理的かつ電気的に接続するとき、異方性導電膜に含まれる導電性粒子を受け止めて、この導電性粒子が第2配線50を突き破って、接着層にめり込むことを防止する役割を有するものである。そのため、有機剛体層40の硬度は接着層20の硬度よりも大きいことが望ましい。前述のように、接着層20の鉛筆硬度は一般にHB~2H程度であるから、有機剛体層40は4H~7Hの鉛筆硬度を有することが望ましい。
【0028】
このような有機剛体層40は熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂によって形成できる。例えば、カルド、ポリイミド、ポリアミック酸、エポキシ、シロキサン、ウレタン等の熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂である。本実施形態において、有機剛体層40の主成分は硬化した後の光硬化性アクリル系樹脂である。
【0029】
有機剛体層40の厚さは、接着層20の熱膨張、熱収縮及び熱流動によって無機絶縁膜60に加わる負荷を軽減する観点から、1~5μmの膜厚を有することが望ましい。本実施形態において、有機剛体層40の厚さは約3μmである。
【0030】
本実施形態において、有機剛体層40の表面は接着層20の表面よりも平滑であることが望ましい。有機剛体層40の表面が接着層20の表面よりも平滑であると、位相器の液晶の配向乱れを改善することができる。この実施形態では、接着層20の最大高さ粗さRzは0.5μmであるから、有機剛体層40の最大高さ粗さRzは0.1μm以下であることが望ましい。この実施形態では、有機剛体層40の最大高さ粗さRzは0.03μmである。
【0031】
有機剛体層40の熱膨張及び熱収縮によって、無機絶縁膜60に加わる負荷を軽減するため、有機剛体層40の線膨張係数は、無機絶縁膜60の線膨張係数よりも小さいことが好ましい。本実施形態では、有機剛体層40の線膨張係数は、3.5×10-6/K以下である。
【0032】
第2配線50は、第1配線30上の一部及び有機剛体層40上の一部に跨って設けられる。これにより、第1配線30と第2配線50とが接続される。第2配線50は、所定のパターン形状に形成されている。走査アンテナ1において、第2配線50は、高抵抗配線の役割を担う。
【0033】
第2配線50は、無機酸化物製である。本実施形態において、第2配線50は、比抵抗が大きい酸化インジウムスズ(ITO)製である。第2配線50は、酸化インジウム亜鉛(IZO)などの比抵抗が大きい無機酸化物によって構成されても良い。
【0034】
高抵抗化の観点から、第2配線50は、薄膜であることが望ましく、第2配線50の厚さは、例えば10nm~100nm程度にできる。本実施形態において、第2配線50の厚さは、60nmである。
【0035】
無機絶縁膜60は、第1配線30上、第2配線50上及び有機剛体層40上に跨って設けられる。
【0036】
本実施形態において、無機絶縁膜60は、SiNxによって構成される。無機絶縁膜60は、高いガスバリア性および絶縁性を有する。走査アンテナ1において、無機絶縁膜60は、第1配線30の酸化及び接着層20の酸化分解を抑制するバリア層の役割を担う。また、走査アンテナ1において、無機絶縁膜60は、第1配線30及び第2配線50を絶縁する絶縁層の役割を担う。SiNxによって構成される無機絶縁膜60は脆弱であり、曲げ耐性が小さいため、無機絶縁膜60にクラックが発生することを抑制するためには、無機絶縁膜60に加わる負荷を抑制する必要がある。なお、無機絶縁膜60は、SiO2、SiON、SiOF等の高いガスバリア性および絶縁性を有する材料によって構成されても良い。
【0037】
本実施形態では、無機絶縁膜60の線膨張係数は、3.5×10-6/Kである。上述のように、有機剛体層40の線膨張係数は、3.5×10-6/K以下である。つまり、有機剛体層40の線膨張係数は、無機絶縁膜60の線膨張係数よりも小さい。
【0038】
上述の構成を有する本実施形態の走査アンテナ1の製造方法の一例について説明する。
【0039】
図2に示すように、本実施形態の走査アンテナ1の製造方法は、サブ第1工程S111と、第1工程S11と、第2工程S12と、第3工程S13と、第4工程S14と、第5工程S15と、第6工程S16と、第7工程S17と、を有する。
【0040】
サブ第1工程S111は、
図3(a)に示す金属箔130の一方側を向く面130a全体に、液状の接着剤を塗布して接着層20を形成する工程である。接着層20は、金属箔
130の一方側を向く面130a上にロールコート法を用いて形成される。
【0041】
本実施形態において、金属箔130はシート状に形成された銅箔である。金属箔130は、スパッタリング又は電解鍍金法によって形成できる。本実施形態において、金属箔130は、電解鍍金法によって形成されたもので、その厚さは2μmである。
【0042】
第1工程S11は、基材10上に接着層20を介して金属箔130を貼り合わせる工程である。第1工程S11では、まず、金属箔130の一方側を向く面130a全体に形成された接着層20と基材10とを接触させる。次に、金属箔130と基材10とを所定の圧力で圧着させつつ、接着層20を乾燥させる。これにより、接着層20を介して、金属箔130と基材10とを貼り合わせることができる。
【0043】
上述のように、本実施形態では、サブ第1工程S111において、金属箔130の一方側を向く面130a全体に接着層20を形成した後に、第1工程S11において、金属箔130と基材10とを貼り合わせているが、金属箔130と基材10とを貼り合わせる手順はこれに限定されない。例えば、サブ第1工程において、基材10の他方側を向く面10b全体に接着剤を塗布して接着層20を形成し、第1工程において、金属箔130を接着層20と接触させた後に、上述の圧着及び乾燥を行って、金属箔130と基材10とを貼り合わせても良い。この場合、接着層20は、基材10の他方側を向く面10b上にダイコート法及びスリット&スピンコート法等の塗布方法によって形成される。
【0044】
第2工程S12は、金属箔130にパターンニングを行い、接着層20上の一部に第1配線30を形成する工程である。金属箔130のパターンニングは、フォトリソグラフィによって行われる。
【0045】
第2工程S12では、まず、金属箔130上にフォトレジスト層を形成する。本実施形態では、フォトレジストとしてポジ型フォトレジストであるノボラック樹脂を用いた。フォトレジストは、一般的なスピンコーターによって金属箔130上に塗布され、フォトレジスト層が形成される。
【0046】
次に、フォトレジスト層のプレベークを行う。本実施形態では、チャンバー内において減圧下でプレベークを行って、フォトレジスト層を乾燥させる。これにより、フォトレジスト層の乾燥時間を短縮できる。チャンバー内の気圧は、130Paとした。ベーク温度は、120℃とした。ベーク時間は、2分とした。
【0047】
次に、第1配線30に対応したパターン形状が描画されたフォトマスクを介して、フォトレジスト層に紫外光を照射して、フォトレジスト層を露光する。露光量は、35mJとした。
【0048】
次に、露光後のフォトレジスト層の現像を行う。現像液は、ポジ現像液を用いた。現像方法としては、スプレー現像法を用いた。現像液圧は、0.1MPaとした。現像液の温度は、25℃とした。現像時間は、25秒とした。
【0049】
次に、金属箔130のエッチングを行い、金属箔130のうちフォトレジスト層が除去された部分を除去し、金属箔130を第1配線30に対応したパターン形状にパターンニングする。エッチング液は、過酸化水素水、硫酸及び水を混合した混合水溶液とした。過酸化水素水の濃度は、2%~20%程度とした。硫酸の濃度は、2%~20%程度とした。エッチング液の液温は、40℃とした。エッチング時間は、2分程度とした。
【0050】
次に、第1配線30上に残存するフォトレジスト層の剥膜を行う。剥膜液は、ケイ酸塩
水溶液を用いた。剥膜液の温度は、40℃とした。剥膜時間は、180秒とした。
【0051】
次に、第1配線30のポストベークを行う。本実施形態では、窒素雰囲気のチャンバー内においてポストベークを行う。ベーク温度は、250℃とした。ベーク時間は、90分とした。第1配線30のポストベークが終了すると、第2工程S12が終了し、
図3(b)に示すように、接着層20上の一部に、所定のパターン形状の第1配線30が形成される。
【0052】
第3工程S13は、接着層20上及び第1配線30上にプレ有機剛体層140を形成する工程である。プレ有機剛体層140は、接着層20上及び第1配線30上に、スピンコートまたはバーコート等の一般的なコーターを用いて、液体の塗布形成技術により形成される。本実施形態では、塗布する液体の主成分は光硬化性アクリル系樹脂である。
【0053】
第3工程S13が終了すると、
図3(b)に示すように、接着層20上及び第1配線30上にプレ有機剛体層140が形成される。本実施形態では、プレ有機剛体層140の厚みは約3μmである。
【0054】
第4工程S14は、プレ有機剛体層140にパターンニングを行い、接着層20上に有機剛体層40を形成する工程である。プレ有機剛体層140のパターンニングは、フォトリソグラフィによって行われる。プレ有機剛体層140のパターンニングは、レーザー描画によって行われても良い。
【0055】
第4工程S14では、まず、有機剛体層40に対応したパターン形状が描画されたフォトマスクを介して、プレ有機剛体層140に紫外光を照射して、プレ有機剛体層140を露光する。露光量は、600mJとした。
【0056】
次に、プレ有機剛体層140の現像を行い、プレ有機剛体層140のうち紫外光によって露光されていない未硬化部、すなわち、プレ有機剛体層140のうち第1配線30の上側に位置する部分を除去する。現像液は、ネガ現像液を用いた。現像時間は、60秒とした。
【0057】
次に、有機剛体層40のポストベークを行う。本実施形態では、窒素雰囲気のチャンバー内でポストベークを行う。ベーク温度は、230℃とした。ベーク時間は、30分とした。有機剛体層40のポストベークが終了すると、第4工程S14が終了し、
図3(c)に示すように、接着層20上に所定のパターン形状の有機剛体層40が形成される。
【0058】
第5工程S15は、第1配線30上及び有機剛体層40上に無機酸化物層150を形成する工程である。無機酸化物層150は、スパッタリングによって、第1配線30上及び有機剛体層40上に酸化インジウムスズ(ITO)を積層させることにより形成される。スパッタリングの電力値は、5.6kWとした。基材10の搬送速度は、495nm/秒とした。第5工程S15が終了すると、
図3(d)に示すように、第1配線30上及び有機剛体層40上に無機酸化物層150が形成される。本実施形態では、その厚みは60nmである。
【0059】
第6工程S16は、無機酸化物層150にパターンニングを行い、第2配線50を形成する工程である。無機酸化物層150のパターンニングは、フォトリソグラフィによって、行われる。
【0060】
第6工程S16では、まず、無機酸化物層150上にフォトレジスト層を形成する。本実施形態では、フォトレジストとしてポジ型フォトレジストであるノボラック樹脂を用い
た。
【0061】
次に、フォトレジスト層のプレベークを行う。本実施形態では、チャンバー内において減圧下でプレベークを行った。チャンバー内の気圧は、130Paとした。ベーク温度は、120℃とした。ベーク時間は、2分とした。
【0062】
次に、第2配線50に対応したパターン形状が描画されたフォトマスクを介して、フォトレジスト層に紫外光を照射して、フォトレジスト層を露光する。本実施形態において、露光量は、70mJとした。
【0063】
次に、露光後のフォトレジスト層の現像を行う。現像液は、ポジ現像液を用いた。現像方法としては、スプレー現像法を用いた。現像液圧は、0.15MPaとした。現像液の温度は、25℃とした。現像時間は、100秒とした。
【0064】
次に、無機酸化物層150のエッチングを行い、無機酸化物層150のうちフォトレジスト層が除去された部分を除去し、無機酸化物層150を第2配線50に対応したパターン形状にパターンニングする。エッチング液は、シュウ酸水溶液とした。エッチング液の液温は、40℃とした。エッチング時間は、60秒とした。
【0065】
次に、第2配線50上に残存するフォトレジスト層の剥膜を行う。剥膜液は、ケイ酸塩水溶液を用いた。剥膜液の温度は、40℃とした。剥膜時間は、180秒とした。フォトレジスト層の剥膜が終了すると、第6工程S16が終了し、
図3(e)に示すように、所定のパターン形状の第2配線50が形成される。第2配線50は、第1配線30上及び有機剛体層40上に跨って形成される。これにより、第1配線30と第2配線50とが互いに接続される。無機酸化物層150が除去された部分には、第1配線30または有機剛体層40が露出する。
【0066】
第7工程S17は、第1配線30上、第2配線50上及び有機剛体層40上に跨る無機絶縁膜60を形成する工程である。無機絶縁膜60は、化学蒸着法等の成膜方法によって、第1配線30上、第2配線50上及び有機剛体層40上にSiNx膜を形成することにより設けられる。第7工程S17が終了すると、
図1に示すように、第1配線30上、第2配線50上及び有機剛体層40上に跨る無機絶縁膜60が設けられる。上述のように、無機絶縁膜60は、高いガスバリア性および絶縁性を有するため、無機絶縁膜60によって、第1配線30の酸化及び接着層20の酸化分解を抑制できる。
【0067】
上述の第7工程S17では、無機絶縁膜60を形成する際に発生する熱によって、基材10、接着層20、第1配線30、有機剛体層40及び第2配線50それぞれが加熱される。そのため、特に接着層20の熱膨張、熱収縮及び熱流動によって、接着層20上に直接設けられる有機剛体層40には負荷が加わる。
【0068】
以上により、本実施形態の走査アンテナ1が完成する。
【0069】
本実施形態によれば、走査アンテナ1は、基材10と、基材10上に設けられた接着層20と、接着層20上の一部分に設けられた、金属製の第1配線30と、接着層20上の他の部分に設けられた有機剛体層40と、第1配線30上の一部及び有機剛体層40上の一部に跨って設けられた、無機酸化物製の第2配線50と、第1配線30上、第2配線50上及び有機剛体層40上に跨って設けられた無機絶縁膜60と、を備え、しかも、有機剛体層40の硬度が接着層20の硬度よりも大きい。このため、異方性導電膜を介して位相器を接続した場合にも、無機酸化物製の電極(配線)を突き破ることを防ぐことができる。
【0070】
ところで、本実施形態においては、無機絶縁膜60は、SiNx、SiO2、SiON、SiOFのいずれかの材料によって構成される。よって、無機絶縁膜60の一部が、有機剛体層40を介して接着層20と接触するため、無機絶縁膜60を形成する際に発生する熱による接着層20の熱膨張、熱収縮及び熱流動に起因する負荷は、有機剛体層40を介して接着層20から無機絶縁膜60に間接的に加わる。これにより、無機絶縁膜60に加わる負荷を軽減できるため、SiNx等の脆弱であり、曲げ耐性が小さい材料によって構成される無機絶縁膜60にクラックが発生することを抑制でき、無機絶縁膜60のバリア性が低下することを抑制できる。したがって、第1配線30の酸化、及び、接着層20の酸化分解を抑制できるため、第1配線30の電気的特性の劣化及び接着層20の対候性の低下を抑制でき、走査アンテナ1の信頼性を高めることができる。
【0071】
さらに、本実施形態では、上述のように、有機剛体層40の表面形状は、接着層20の表面形状よりも平滑である。そのため、第2配線50が接着層20上に直接設けられる場合と比較して、第2配線50に亀裂や断裂等が発生することを抑制できる。したがって、走査アンテナ1の信頼性をより高めることができる。
【0072】
また、本実施形態では、第1配線30は、接着層20を介して基材10に貼り合わされる。厚膜に形成される第1配線30の内部応力は大きく、また、金属製である第1配線30と基材10との密着力は小さい。そのため、第1配線30を基材10上に直接設ける場合では、基材10からの第1配線30の浮き及び剥がれが発生し易い。しかしながら、本実施形態では、第1配線30及び基材10の両方と密着性が高い接着剤から成る接着層20を介して、第1配線30が基材10に貼り合わされるため、基材10からの第1配線30の浮き及び剥がれが発生することを抑制できる。したがって、走査アンテナ1の信頼性をより高めることができる。
【0073】
また、本実施形態では、第2配線50は、第1配線30上の一部及び有機剛体層40上の一部に跨って設けられる。仮に、有機剛体層40が設けられず、第2配線50が第1配線30と接着層20上に跨って設けられる場合では、第2配線50のうち、第1配線30の側壁と接着層20との境目と接触する部分が断線し易くなる。しかしながら、本実施形態では、第1配線30の側壁を有機剛体層40で覆うため、第2配線50が第1配線30の側壁と接着層20との境目と接触することを防止でき、第2配線50が断線することを抑制できる。したがって、走査アンテナ1の信頼性をより高めることができる。
【0074】
本実施形態によれば、有機剛体層40の線膨張係数は、無機絶縁膜60の線膨張係数よりも小さい。よって、有機剛体層40の熱膨張及び熱収縮によって、無機絶縁膜60に加わる負荷を軽減できる。したがって、無機絶縁膜60にクラックが発生することをより好適に抑制でき、走査アンテナ1の信頼性をより高めることができる。
【0075】
本実施形態によれば、走査アンテナ1の製造方法は、基材10上に接着層20を介して金属箔130を貼り合わせる第1工程S11と、金属箔130にパターンニングを行い、接着層20上の一部に第1配線30を形成する第2工程S12と、接着層20上及び第1配線30上にプレ有機剛体層140を形成する第3工程S13と、プレ有機剛体層140にパターンニングを行い、接着層20上に有機剛体層40を形成する第4工程S14と、第1配線30上及び有機剛体層40上に無機酸化物層150を形成する第5工程S15と、無機酸化物層150にパターンニングを行い、第2配線50を形成する第6工程S16と、第1配線30上、第2配線50上及び有機剛体層40上に跨って設けられ、SiNx、SiO2、SiON、SiOFのいずれかの材料によって構成される無機絶縁膜60を形成する第7工程S17と、を有する。一般的に、鍍金加工によって、厚膜の配線パターンを形成する場合、基材と配線パターンとの接着性を充分に得られない。基材と厚膜の配線パターンとの接着性を高める方法として、導電性ペーストによって厚膜の配線パターンを形成する方法があるが、この方法では、不活性ガス雰囲気下で導電性ペーストを焼成する必要が有るため、製造コストが増大してしまう。しかしながら、本実施形態では、第1工程S11において、接着層20を介して、金属箔130を基材10上に貼り合わせた後に、第2工程S12において、金属箔130をパターンニングして第1配線30を形成する。したがって、厚膜の第1配線30の製造コストが増大することを抑制できる。
【0076】
一般的に、鍍金加工によって、金属製の第1配線を形成する場合は、第1配線が複雑な形状であると、電流密度に偏りが生じやすいため、第1配線の膜厚のムラが大きくなり易く、走査アンテナ1の動作が不安定になる虞がある。しかしながら、本実施形態では、上述のように、金属箔130の形状が簡易な形状であるシート状であるため、鍍金加工によって形成される金属箔130の膜厚ムラを低減できる。また、本実施形態では、第1工程S11において、接着層20を介して、金属箔130を基材10上に貼り合わせた後に、第2工程S12において、金属箔130をパターンニングして第1配線30を形成する。したがって、第1配線30の膜厚のムラを低減でき、走査アンテナ1の信頼性を高めることができる。
【0077】
一般的に、鍍金加工によって金属箔を基材上に設ける場合は、鍍金槽内への基材の浸漬時や基材の搬送時に、基材の割れ及び欠けが発生する虞がある。しかしながら、本実施形態では、第1工程S11において、接着層20を介して金属箔130を基材10上に貼り合わせるため、基材10の割れ及び欠けが発生することを抑制できる。したがって、走査アンテナ1の製造工数および製造コストが増大することを抑制できる。また、走査アンテナ1の信頼性を高めることができる。
【0078】
一般的に、ガラス製の基材10と、銅製の第1配線30との接着性は低いため、鍍金加工によって、基材上に第1配線を設ける場合、第1配線は基材から浮き易く、剥がれ易い。しかしながら、本実施形態では、第1工程S11において、接着層20を介して第1配線30を基材10上に貼り合わせるため、基材10からの第1配線30の浮き及び剥がれが発生することを抑制できる。したがって、走査アンテナ1の信頼性を高めることができる。
【0079】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態について、
図4から
図6を参照して説明する。なお、以下の説明において、上述の第1実施形態と同一態様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する場合がある。
【0080】
図4は、本実施形態に係る走査アンテナ201を示す断面図である。走査アンテナ201は、基材10と、基材10上に設けられた接着層20と、接着層20上に設けられた有機剛体層240と、有機剛体層240上の一部に設けられた第1配線30と、有機剛体層240上及び第1配線30上に跨って設けられた第2配線50と、第1配線30上、第2配線50上及び有機剛体層240上に跨って設けられた無機絶縁膜260と、を備える。
【0081】
本実施形態の基材10の態様は、第1実施形態の基材10の態様と同一である。
【0082】
本実施形態の接着層20の態様は、第1実施形態の接着層20の態様と同一である。
【0083】
有機剛体層240は、接着層20上の全体に設けられる。有機剛体層240のその他の態様は、第1実施形態の有機剛体層240の態様と同一である。
【0084】
第1配線30は、有機剛体層240上の一部に設けられる。本実施形態の第1配線30
のその他の態様は、第1実施形態の第1配線30のその他の態様と同一である。
【0085】
本実施形態の第2配線50の態様は、第1実施形態の第2配線50の態様と同一である。
【0086】
無機絶縁膜260は、第1配線30上、第2配線50上及び有機剛体層240上に跨って設けられる。無機絶縁膜260のその他の態様は、第1実施形態の無機絶縁膜60のその他の態様と同一である。なお、無機絶縁膜260は、SiO2、SiON、SiOF等の高いガスバリア性および絶縁性を有する材料によって構成されても良い。
【0087】
上述の構成を有する本実施形態の走査アンテナ201の製造方法の一例について説明する。
【0088】
図5に示すように、本実施形態の走査アンテナ201の製造方法は、第1工程S21と、第2工程S22と、第3工程S23と、第4工程S24と、第5工程S25と、第6工程S26と、第7工程S27と、を有する。
【0089】
第1工程S21は、
図6(a)に示す金属箔130の一方側を向く面130a上に有機剛体層240を形成する工程である。有機剛体層240は、金属箔130の一方側を向く面130aに、スピンコートおよびバーコート等の一般的なコーターを用いて、液体の塗布形成技術により形成される。第1工程S21が終了すると、金属箔130の一方側を向く面130a上に有機剛体層240が形成される。
【0090】
第2工程S22は、有機剛体層240上に液状の接着剤を塗布して接着層20を形成する工程である。接着層20は、有機剛体層240上にロールコート法を用いて形成される。第2工程S22が終了すると、
図6(a)に示すように、有機剛体層240上に接着層20が形成される。
【0091】
第3工程S23は、基材10上に接着層20及び有機剛体層240を介して金属箔130を貼り合わせる工程である。第3工程S23では、まず、有機剛体層240と基材10とを接触させる。次に、金属箔130と基材10とを所定の圧力で圧着させつつ、接着層20を乾燥させて、金属箔130と基材10とを貼り合わせる。第3工程S23が終了すると、
図6(a)に示すように、基材10上に接着層20及び有機剛体層240を介して金属箔130が貼り合される。
【0092】
第4工程S24は、金属箔130にパターンニングを行い、有機剛体層240上の一部に第1配線30を形成する工程である。金属箔130のパターンニングは、フォトリソグラフィによって行われる。第4工程S24の作業内容は、第1実施形態の第2工程S12の作業内容と同一である。第4工程S24が終了すると、
図6(b)に示すように、有機剛体層240上の一部に、所定のパターン形状の第1配線30が形成される。
【0093】
第5工程S25は、有機剛体層240上及び第1配線30上に無機酸化物層150を形成する工程である。無機酸化物層150は、スパッタリングによって、第1配線30上及び有機剛体層240上に酸化インジウムスズ(ITO)を積層させることにより形成される。第5工程S25の作業内容は、第1実施形態の第5工程S15の作業内容と同様である。第5工程S25が終了すると、
図6(b)に示すように、有機剛体層240上及び第1配線30上に無機酸化物層150が形成される。
【0094】
第6工程S26は、無機酸化物層150にパターンニングを行い、第2配線50を形成する工程である。無機酸化物層150のパターンニングは、フォトリソグラフィによって
、行われる。第6工程S26の作業内容は、第1実施形態の第6工程S16の作業内容と同一である。第6工程S26が終了すると、
図6(c)に示すように、所定のパターン形状の第2配線50が形成される。第2配線50は、有機剛体層240上及び第1配線30上に跨って形成される。これにより、第1配線30と第2配線50とが互いに接続される。また、無機酸化物層150が除去された部分には、第1配線30または有機剛体層240が露出する。
【0095】
第7工程S27は、第1配線30上、第2配線50上及び有機剛体層240上に跨る無機絶縁膜260を形成する工程である。無機絶縁膜260は、化学蒸着法等の成膜方法によって、第1配線30上、第2配線50上及び有機剛体層240上にSiNx膜を形成することにより設けられる。第7工程S27の作業内容は、第1実施形態の第7工程S17の作業内容と同様である。第7工程S27が終了すると、
図4に示すように、第1配線30上、第2配線50上及び有機剛体層240上に跨る無機絶縁膜260が設けられる。上述のように、無機絶縁膜260は、高いガスバリア性および絶縁性を有するため、無機絶縁膜260によって、第1配線30の酸化及び接着層20の酸化分解を抑制できる。
【0096】
以上により、本実施形態の走査アンテナ201が完成する。
【0097】
本実施形態によれば、走査アンテナ1は、基材10と、基材10上に設けられた接着層20と、接着層20上の一部分に設けられた、金属製の第1配線30と、接着層20上の他の部分に設けられた有機剛体層40と、第1配線30上の一部及び有機剛体層40上の一部に跨って設けられた、無機酸化物製の第2配線50と、第1配線30上、第2配線50上及び有機剛体層40上に跨って設けられた無機絶縁膜60と、を備え、しかも、有機剛体層40の硬度が接着層20の硬度よりも大きい。このため、異方性導電膜を介して位相器を接続した場合にも、無機酸化物製の電極(配線)を突き破ることがなく、位相器の液晶の配向乱れを引き起こすことを防ぐことができる。
【0098】
ところで、本実施形態においては、無機絶縁膜60は、SiNx、SiO2、SiON、SiOFのいずれかの材料によって構成される。よって、無機絶縁膜260が、有機剛体層240を介して接着層20と接触するため、無機絶縁膜260を形成する際に発生する熱による接着層20の熱膨張、熱収縮及び熱流動に起因する負荷は、有機剛体層240を介して接着層20から無機絶縁膜260に間接的に加わる。これにより、無機絶縁膜260に加わる負荷を軽減できるため、SiNx等の脆弱であり、曲げ耐性が小さい材料によって構成される無機絶縁膜260にクラックが発生することを抑制でき、無機絶縁膜260のバリア性が低下することを抑制できる。したがって、第1配線30の酸化、及び、接着層20の酸化分解を抑制できるため、第1配線30の電気的特性の劣化及び接着層20の対候性の低下を抑制でき、走査アンテナ201の信頼性を高めることができる。
【0099】
本実施形態によれば、走査アンテナ201の製造方法は、金属箔130上に有機剛体層240を形成する第1工程S21と、有機剛体層240上に接着層20を形成する第2工程S22と、基材10上に接着層20及び有機剛体層240を介して金属箔130を貼り合わせる第3工程S23と、金属箔130にパターンニングを行い、有機剛体層240上の一部に第1配線30を形成する第4工程S24と、有機剛体層240上及び第1配線30上に無機酸化物層150を形成する第5工程S25と、無機酸化物層150にパターンニングを行い、第2配線50を形成する第6工程S26と、第1配線30上、第2配線50上及び有機剛体層240上に跨って設けられ、SiNx、SiO2、SiON、SiOFのいずれかの材料によって構成される無機絶縁膜260を形成する第7工程S27と、を有する。よって、第1実施形態の走査アンテナ1の製造方法と比較して、有機剛体層240にパターニングを行って、有機剛体層240を所定のパターン形状に形成する工程が必要無い。そのため、走査アンテナ201の製造工程を簡略化できるとともに、走査アンテナ201の信頼性を高めることができる。
【0100】
以上、本発明の実施形態について説明したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせなども含まれる。以下にいくつか変更を例示するが、これらは全てではなく、これら以外の変更も可能である。これらの変更は自由に組み合わせることができる。
【0101】
本発明の走査アンテナの製造方法においては、各工程の順番が変更されてもよい。例えば、接着層が塗布された金属箔を基材に貼り合わせる前に金属層のパターニングを行ってもよい。
【0102】
第1配線の断面形状は、略矩形状に限定されず、接着層から離れるにつれて徐々に縮小するテーパー状であっても良い。この場合、第1配線の側面の法線が上方を向くため、スパッタリングによって、無機酸化物層を、第1配線の側面上に安定して形成できる。したがって、第1配線上において、第2配線の膜厚の均一化を図ることができ、走査アンテナの信頼性を高めることができる。
【符号の説明】
【0103】
1,201 走査アンテナ
10 基材
20 接着層
30 第1配線
40,240 有機剛体層
50 第2配線
60,260 無機絶縁膜
130 金属箔
140 プレ有機剛体層
150 無機酸化物層
S11,S21 第1工程
S12,S22 第2工程
S13,S23 第3工程
S14,S24 第4工程
S15,S25 第5工程
S16,S26 第6工程
S17,S27 第7工程