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特開2024-141650接着剤組成物、ならびにこれを含有するプリプレグ、接着シート、積層体およびプリント配線板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141650
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】接着剤組成物、ならびにこれを含有するプリプレグ、接着シート、積層体およびプリント配線板
(51)【国際特許分類】
   C09J 145/00 20060101AFI20241003BHJP
   C09J 123/00 20060101ALI20241003BHJP
   C09J 11/00 20060101ALI20241003BHJP
   C09J 109/00 20060101ALI20241003BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20241003BHJP
   C09J 155/00 20060101ALI20241003BHJP
   C09J 7/35 20180101ALI20241003BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C09J145/00
C09J123/00
C09J11/00
C09J109/00
C09J11/04
C09J155/00
C09J7/35
H05K1/03 610H
H05K1/03 610R
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053420
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】722014321
【氏名又は名称】東洋紡エムシー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 修平
(72)【発明者】
【氏名】坂本 晃一
(72)【発明者】
【氏名】嶋口 徹
(72)【発明者】
【氏名】川楠 哲生
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA07
4J004AA18
4J004AB05
4J004FA05
4J040CA041
4J040CA042
4J040CA082
4J040DK001
4J040DM012
4J040DN001
4J040GA01
4J040HA306
4J040KA11
4J040KA16
4J040KA42
4J040LA01
4J040LA08
4J040LA09
4J040MA02
4J040MA05
4J040MA10
4J040MB02
4J040NA19
(57)【要約】
【課題】 耐熱性、接着強度及び誘電特性に優れ、より低温で硬化することが可能な接着剤組成物、それを含むプリプレグ、金属張積層板及びプリント配線板を提供すること
【解決手段】下記(1)~(3)の要件を満たす環状ポリオレフィン樹脂(A)、不飽和結合を有するポリオレフィン樹脂(B)及びフィラー(C)を含有する接着剤組成物。
(1)側鎖に官能基を有しない環状オレフィン(α)単位と側鎖に不飽和結合を有する環状オレフィン(β)単位を構成単位として有する共重合体
(2)前記環状ポリオレフィン樹脂(A)中の前記(α)単位と前記(β)単位との合計を100質量%としたとき、(α)単位の含有量が90~99.9質量%、(β)単位の含有量が0.1~10質量%である
(3)主鎖に5員環を有する
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(1)~(3)の要件を満たす環状ポリオレフィン樹脂(A)、不飽和結合を有するポリオレフィン樹脂(B)及びフィラー(C)を含有する接着剤組成物。
(1)側鎖に官能基を有しない環状オレフィン(α)単位と側鎖に不飽和結合を有する環状オレフィン(β)単位を構成単位として有する共重合体
(2)前記環状ポリオレフィン樹脂(A)中の前記(α)単位と前記(β)単位との合計を100質量%としたとき、(α)単位の含有量が90~99.9質量%、(β)単位の含有量が0.1~10質量%である
(3)主鎖に5員環を有する
【請求項2】
前記環状ポリオレフィン樹脂(A)の重量平均分子量が5,000以上100,000以下である請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
前記側鎖に不飽和結合を有する環状オレフィン(β)単位における側鎖の不飽和結合がメタクリロイル基中の不飽和結合である請求項1または2に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
前記ポリオレフィン樹脂(B)が、側鎖に不飽和結合を有するポリブタジエンである請求項1または2に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
前記フィラー(C)はシリカである、請求項1または2記載の接着剤組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の接着剤組成物を含侵したプリプレグ。
【請求項7】
請求項1に記載の接着剤組成物からなる接着剤層を有する接着シート。
【請求項8】
請求項6に記載のプリプレグまたは請求項7に記載の接着シートを使用した積層体。
【請求項9】
請求項8に記載の積層体を構成要素として含むプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤組成物に関する。より詳しくは、プリプレグ、金属銅張積層板及びプリント配線板に使用される接着樹脂組成物並びにそれを含むプリプレグ、金属銅張積層板及びプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板(電子回路基板)用のプリプレグの多くは、繊維基材を樹脂ワニスに含侵してから乾燥させることで製造されている。近年、電子機器の小型化、軽量化、高密度化、高出力化が進み、プリント配線板の性能に対する要求がますます高度なものとなっている。特に現在開発が加速している第5世代通信システム「5G」では、さらなる大容量化と高速通信が進むことが予想されている。5Gでは使用する周波数の高周波化が進むことになるが、高周波を利用した高速通信の実現には基板材料の更なる性能向上が求められることとなる。例えば、伝送損失低減のために低誘電特性を有すること等が重要である。プリプレグ、金属張積層板及びプリント配線板に使用される絶縁材料用樹脂においても低粗度銅箔に対する密着性を担保しつつ、低誘電特性、高耐熱性を発揮するものが求められている。このような背景を受けて高耐熱、低誘電特性を有する樹脂組成物として、環状オレフィン系樹脂組成物(特許文献1、特許文献2)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】:特開平8―20692
【特許文献2】:特開2023―7603
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の環状オレフィン樹脂はエポキシ樹脂による硬化が必要となる。エポキシ樹脂は硬化後、水酸基が発生するため、誘電特性が悪化する。特許文献2に記載の環状オレフィンはビニル基を有し、ラジカル反応により硬化させるため、水酸基が発生せず誘電特性は維持される。しかし、当該環状オレフィン樹脂は側鎖にビニル基を有しており、低温で硬化する場合、架橋不足により耐熱性に劣る。
【0005】
本発明の目的は、耐熱性、接着強度及び誘電特性に優れ、より低温で硬化することが可能な接着剤組成物、それを含むプリプレグ、金属張積層板及びプリント配線板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討した結果、以下に示す手段により、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。すなわち、本発明は、以下の構成からなる。
[1]下記(1)~(3)の要件を満たす環状ポリオレフィン樹脂(A)、不飽和結合を有するポリオレフィン樹脂(B)及びフィラー(C)を含有する接着剤組成物。
(1)側鎖に官能基を有しない環状オレフィン(α)単位と側鎖に不飽和結合を有する環状オレフィン(β)単位を構成単位として有する共重合体
(2)前記環状ポリオレフィン樹脂(A)中の前記(α)単位と前記(β)単位との合計を100質量%としたとき、(α)単位の含有量が90~99.9質量%、(β)単位の含有量が0.1~10質量%である
(3)主鎖に5員環を有する
[2]前記環状ポリオレフィン樹脂(A)の重量平均分子量が5,000以上100,000以下である[1]に記載の接着剤組成物。
[3]前記側鎖に不飽和結合を有する環状オレフィン(β)単位における側鎖の不飽和結合がメタクリロイル基中の不飽和結合である[1]または[2]に記載の接着剤組成物。
[4]前記ポリオレフィン樹脂(B)が、側鎖に不飽和結合を有するポリブタジエンである[1]~[3]に記載の接着剤組成物。
[5]前記フィラー(C)はシリカである、[1]~[4]記載の接着剤組成物。
[6][1]~[5]に記載の接着剤組成物を含侵したプリプレグ。
[7][1]~[6]に記載の接着剤組成物からなる接着剤層を有する接着シート。
[8][6]に記載のプリプレグまたは[7]に記載の接着シートを使用した積層体。
[9][8]に記載の積層体を構成要素として含むプリント配線板。
【発明の効果】
【0007】
本発明の接着剤組成物は、耐熱性、接着強度及び誘電特性に優れ、より低温で硬化することが可能である。このため、接着剤組成物、それを含むプリプレグ、金属張積層板及びプリント配線板への利用に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の一形態について以下に詳述する。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、既述した範囲内で種々の変形を加えた態様で実施できる。
【0009】
本発明における接着剤組成物は後述する環状ポリオレフィン樹脂(A)、不飽和結合を有するポリオレフィン樹脂(B)及びフィラー(C)を含有する。
【0010】
<環状ポリオレフィン樹脂(A)>
本発明における環状ポリオレフィン樹脂(A)は側鎖に官能基を有しない環状オレフィン(α)および側鎖に不飽和結合を有する環状オレフィン(β)を構成単位として有する。ここで、環状ポリオレフィン樹脂とは、主として環状オレフィンモノマー単位から構成され、環状オレフィンモノマー以外のオレフィンが共重合成分として含まれないか、含まれていてもたかだか1モル%程度のごく僅かであるものを指す。
【0011】
前記側鎖に官能基を有しない環状オレフィン(α)としては、例えば、2-ノルボルネン、ノルボルナジエンなどの二環体、ジシクロペンタジエン、ジヒドロジシクロペンタジエンなどの三環体、テトラシクロドデセンなどの四環体、シクロペンタジエン三量体などの五環体、またはこれら多環体のアルキル(メチル、エチル、プロピル、ブチルなど)置換体、アルケニル(ビニルなど)置換体、アルキリデン(エチリデンなど)置換体、アリール(フェニル、トリル、ナフチルなど)置換体等が挙げられ、これら1種又は2種以上を併用することができる。これらの中でも特に、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、またはこれらのアルキル置換体からなる群より選ばれるノルボルネン系モノマーが溶剤溶解性の観点から好ましい。
【0012】
前記側鎖に不飽和結合を有する環状オレフィン(β)における側鎖の不飽和結合としては、例えばマレイミド基、ビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリロイル基中の不飽和結合が挙げられ、特に好ましくはメタクリロイル基中の不飽和結合である。反応性が特に高いメタクリロイル基を有することで、従来より低温で硬化可能であり、積層体とする場合に他層への熱劣化の影響が少ない。また、ラジカル発生剤なしにラジカル硬化反応を進めることが可能であり、そのため、良好な誘電特性を維持できる。
【0013】
前記側鎖に不飽和結合を有する環状オレフィン(β)は、側鎖にカルボキシ基やヒドロキシ基などイソシアネート化合物と反応可能な官能基を有する環状オレフィンモノマーを不飽和結合を有するイソシアネート化合物により変性することで得ることができる。側鎖にイソシアネート化合物との反応可能な官能基を有する環状オレフィンモノマーとしては、特に限定されないが、例えば5-ノルボルネン-2-カルボン酸、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物、5-ノルボルネン-2-メタノール等が挙げられ、これら1種又は2種以上を併用することができる。特に好ましくは5-ノルボルネン-2-カルボン酸である。主鎖の構造は側鎖に官能基を有しない環状オレフィン(α)に例示したものと同様のものが挙げられ、特に好ましくはノルボルネン、ジシクロペンタジエン、またはこれらのアルキル置換体からなる群より選ばれるノルボルネン系モノマーである。
【0014】
前記不飽和結合を有するイソシアネート化合物は、特に限定されないが、具体的には、2-イソシアネートエチルメタクリレート、2-(2-メタクリロイルオキシエチルオキシ)エチルイソシアネート等が挙げられる。
【0015】
本発明における環状ポリオレフィン樹脂(A)は側鎖に官能基を有しない環状オレフィン(α)と、側鎖に不飽和結合を有する環状オレフィン(β)単位を構成単位として有する共重合体であって、共重合体中の(α)と(β)との合計100質量%中の(α)単位の含有量が90~99.9質量%で、(β)単位の含有量が0.1~10質量%である。(β)単位の含有量は好ましくは、0.5~5質量%、さらに好ましくは1~4質量%である。共重合体中の(β)成分を前記上限値以下とすることで、側鎖に官能基を有しない環状オレフィン(α)に比べてと誘電特性が劣るアクリル骨格やアミド骨格が及ぼす誘電正接への影響が軽微となり、さらに前記下限値以上とすることで、硬化時の架橋が担保されるため、接着強度及び耐熱性が維持できる。
【0016】
本発明における環状ポリオレフィン樹脂(A)は、主鎖に5員環を有する。モノマーユニットに5員環とエチレン骨格が連なる構造のため、従来の付加重合によって得られる環構造が連なる主鎖骨格に比べ、溶剤溶解性が良好であり、接着剤用途の適用に特に好ましい。
【0017】
単量体成分を重合する際の重合方法や重合条件等については、特に制限はなく、常法に従い適宜設定すればよい。
【0018】
本発明の環状ポリオレフィン樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、5,000~100,000であることが好ましい。より好ましくは6,000以上、さらに好ましくは7,500以上である。また、より好ましくは90,000以下、さらに好ましくは85,000以下である。重量平均分子量を前記範囲内とすることで、プリプレグとする際繊維基材への樹脂の含侵が容易となり、また、樹脂としての一定の強度が担保される。重量平均分子量は、実施例に記載の方法で測定される。
【0019】
本発明の環状ポリオレフィン樹脂(A)は主鎖中の炭素―炭素二重結合が水素化されているものが好ましい。二重結合を水素化することにより、特に優れた誘電特性を発揮する。主鎖中の炭素-炭素二重結合のうち水素化された二重結合の割合は好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上である。
【0020】
<環状ポリオレフィン樹脂(A)の製造方法>
本発明の環状ポリオレフィン樹脂(A)の製法は特に限定されないが、重合方法としては、溶液重合法、塊状重合法等の各種の従来公知の重合法を採用することができ、特に溶液重合法を採用するのが好ましい。例えば、以下の方法で製造することができる。すなわち、側鎖に官能基を有しない環状オレフィンモノマーと側鎖にカルボキシ基を有する環状オレフィンモノマーを適当な重合溶剤中で、金属触媒下、開環メタセシス(ROMP)重合させた後、不飽和結合を有するイソシアネート化合物により変性することにより得られる。
【0021】
本発明に係わる重合反応で使用可能な溶媒としては、特に限定されないが、たとえば、芳香族系炭化水素、シクロヘキサン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼン、t-ブチルベンゼン、メシチレン等及びキャップされたグリコールエーテルとしてのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等、およびこれらの混合物が挙げられ、シクロヘキサン、トルエンが好適に用いられる。
【0022】
重合を溶媒中で行う場合には、単量体及び重合体の合計濃度が1~80重量%が好ましく、2~60重量%がより好ましい。単量体及び重合体の合計濃度が1重量%以下の場合は生産性が悪く、80重量%以上の場合は重合後の溶液粘度が高すぎて、その後の取り扱いが困難となる場合がある。
【0023】
重合温度は特に制限はないが、一般的には―30~200℃、好ましくは0~180℃である。重合時間は1分間~100時間で特に制限はない。
【0024】
開環メタセシス重合に使用される触媒は、金属カルベン有機錯体を含み、金属は必ずしもではないが、ルテニウム、モリブデン、オスミウムまたはタングステンなどの遷移金属である。用いられる触媒は、重合性官能基を有するモノマー総重量に対して50~1000ppmで十分反応させることができる。
【0025】
かかる重合反応においては、重合体の分子量を調整するために、分子量調整剤として上述した環状オレフィンモノマーと反応可能なモノマーを用いることができる。そのような分子量調整剤としては、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテンなどのα-オレフィン;スチレン、ビニルトルエンなどのスチレン類;エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、アリルグリシジルエーテルなどのエーテル類;アリルクロライドなどのハロゲン含有ビニル化合物;アクリロニトリル、アクリルアミドなどの窒素含有ビニル化合物などが挙げられる。特に誘電特性を向上させるにはヘテロ原子を含まない分子量調整剤が好適である。また、単量体に対して、分子量調整剤を0.1~100モル%使用することにより、所望の分子量を有する重合体を得ることができる。
【0026】
水素化物の製造方法は、溶液中、水素と水素化触媒存在下で、重合体主鎖中の炭素―炭素二重結合を水素化する。水素化に用いられる水素化触媒は、例えば、酢酸コバルトとトリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナートとトリイソブチルアルミニウム、チタノセンジクロリドとn-ブチルリチウム、ジルコノセンジクロリドとsec-ブチルリチウム、テトラブトキシチタネートとジメチルマグネシウムのような遷移金属化合物とアルカリ金属化合物の組み合わせからなるチーグラー系触媒、ルテニウム―カルベン触媒、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、ルテニウム化合物からなる貴金属錯体触媒などの均一系触媒が挙げられる。また、ニッケル、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウムなどの金属を、カーボン、シリカ、ケイソウ土、アルミナ、酸化チタンなどの担体に嘆じさせた不均一触媒、例えば、ニッケル/シリカ、パラジウム/カーボンなどを用いることができる。水素化反応は、通常、有機溶媒中で実施する。有機溶媒は生成する水素化物の溶解性により適宜選択することができ、前記重合溶媒を同様の有機溶媒を使用することができる。従って、重合反応後、溶媒を入れ替えることなく、そのまま水素化触媒を添加して、反応させることもできる。
【0027】
水素化反応条件は、使用する水素化触媒の種類に応じて適宜選択すればよい。反応温度は、通常、-20~250℃、好ましくは-10~220℃、より好ましくは0~200℃である。-20℃未満では反応速度が遅くなり、逆に250℃を超えると副反応が起こりやすくなる。水素の圧力は、通常0.01~10.0MPa、好ましくは0.05~8.0MPa、より好ましくは0.1~5.0MPaである。水素の圧力が0.01MPa未満では水素化速度が遅くなり、10.0MPaを超えると高耐圧反応装置が必要となる。水素化反応の時間は水素化率をコントロールするために適宜選択される。反応時間は通常0.1~50時間の範囲であり、重合体中の主鎖の炭素-炭素二重結合のうち80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上を水素化することができる。
【0028】
水素化反応の後、触媒を除去することが好ましい。触媒の除去方法としては、シリカ、アルミナ、活性炭等の吸着剤により吸着除去する方法;イオン交換樹脂により除去する方法;キレート剤を加えて触媒残渣を不溶化させてろ過する方法;重合体溶液を多量のメタノール等の貧溶媒で凝固・分離後に乾燥する等公知の方法により行うことができる。
【0029】
<不飽和結合を有するポリオレフィン樹脂(B)>
不飽和結合を有するポリオレフィン樹脂(B)としては特に限定されないが、誘電特性、接着強度、低吸水性の観点からポリブタジエン及びこの変性物が好ましい。また、不飽和結合を有するポリオレフィン樹脂(B)は、環状オレフィン樹脂ではないことが好ましい。
【0030】
不飽和結合を有するポリオレフィン樹脂(B)としては、重量平均分子量が500以上20,000以下のものが好ましく、より好ましくは1,000以上10,000以下、さらに好ましくは1,000以上7,000以下である。前記重量平均分子量が当該範囲内にあれば、溶剤溶解性、相溶性に優れ、ワニスの粘度が低下するため、プリプレグにおける繊維基材への含侵性に優れる。具体的には、例えば、スチレンブタジエン共重合体(SBR:RICON-100、RICON-181、RICON-184いずれもクレイバレー社製など)、ポリブタジエン(B-1000、B-2000、B-3000、いずれも日本曹達社製)が挙げられる。
【0031】
本発明の接着剤組成物における不飽和結合を有するポリオレフィン樹脂(B)の配合量は、本発明の環状ポリオレフィン樹脂(A)100質量部に対し、0.1~30質量部の配合量であることが好ましく、より好ましくは5~28質量部、さらに好ましくは10~25質量部である。。前記下限値以上とすることで特に良好な接着強度を発現することができる。また、前記上限値以下とすることで溶剤溶解性が特に良好となり、均一な組成物が製造できる。
【0032】
<フィラー(C)>
フィラー(C)としては、特に限定されず、有機フィラー、無機フィラーを用いることができる。具体的には有機フィラーとして、耐熱性樹脂であるポリイミド、ポリアミドイミド、フッ素樹脂、液晶ポリエステルなどの粉末が挙げられる。また、無機フィラーとしては、例えば、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、チタニア(TiO2)、酸化タンタル(Ta2O5)、ジルコニア(ZrO2)、窒化硅素(Si3N4)、窒化ホウ素(BN)、炭酸カルシウム(CaCO3)、硫酸カルシウム(CaSO4)、酸化亜鉛(ZnO)、チタン酸マグネシウム(MgO・TiO2)、硫酸バリウム(BaSO4)、有機ベントナイト、クレー、マイカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどが挙げられる。中でも分散の容易さや耐熱性向上効果から特にシリカが好ましい。
【0033】
シリカとしては疎水性シリカ、親水性シリカを用いることができるが、耐吸湿性を付与する上でジメチルジクロロシランやヘキサメチルジシラザン、オクチルシラン等で処理を行った疎水性シリカの方が好ましい。
【0034】
本発明の接着剤組成物におけるフィラー(C)の配合量は、本発明の環状ポリオレフィン樹脂(A)100質量部に対し、0.05~100質量部の配合量であることが好ましく、より好ましくは1~80質量部、さらに好ましくは5~70質量部である。前記下限値以上とすることで更なる耐熱性を発現することができる。また、前記上限値以下とすることでフィラー(C)の分散不良や溶液粘度が高くなりすぎることを抑え、作業性が良好となる。
【0035】
本発明における接着剤組成物はより耐熱性を向上させる添加剤として、末端不飽和炭化水素基を有する化合物を含んでよい。末端不飽和炭化水素基を有することで本発明の環状ポリオレフィン樹脂(A)樹脂と反応させることができるため、これらの化合物間でより架橋密度を高めることによって、優れたはんだ耐熱性を実現できる。ここで、末端不飽和炭化水素基とは、例えば、ビニル基、ビニリデン基や、アリル基、アクリル基、メタクリル基、スチレン基など、CH2=Cの構造を有する基をいう。その他、各用途の目的や要求特性に応じて、難燃剤、酸発生剤、耐熱向上剤、現像助剤、可塑剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、艶消し剤、消泡剤、レベリング剤、帯電防止剤、分散剤、スリップ剤、表面改質剤、揺変化剤、揺変助剤、界面活性剤、シラン系やアルミニウム系、チタン系などのカップリング剤、多価フェノール化合物、有機溶剤等のその他の成分が配合されても良い。
【0036】
<架橋剤>
本発明における接着剤組成物は架橋剤を含んでよい。架橋剤として、2以上の反応性基を有する架橋剤が挙げられる。反応性基としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、ビニルフェニル基、マレイミド基等を挙げることができる。
【0037】
2以上の反応性基を有する架橋剤としては、スチレン-ブタジエンゴム、ポリブタジエンゴム、トリアリルイソシアヌレート、ジビニルベンゼン等を挙げることができ、これらから選択される少なくとも1種を用いることができる。架橋剤は、環状ポリオレフィン樹脂(A)および不飽和結合を有するポリオレフィン樹脂(B)の合計100質量部に対して、5質量部以上200質量部以下、好ましくは10質量部以上180質量部以下、より好ましくは20質量部以上150質量部以下の量で含むことができる。
【0038】
本発明の接着剤組成物は、周波数10GHzにおける比誘電率(εc)が2.4以下であることが好ましい。より好ましくは2.2以下であり、さらに好ましくは2.1以下である。下限は特に限定されないが、実用上は2.0である。また、周波数1GHz~60GHzの全領域における比誘電率(εc)が2.7以下であることが好ましく、2.6以下であることがより好ましく、2.3以下であることがさらに好ましい。
【0039】
本発明の接着剤組成物は、周波数10GHzにおける誘電正接(tanδ)が0.0020未満であることが好ましい。より好ましくは0.0018未満であり、さらにより好ましくは0.0015未満である。下限は特に限定されないが、実用上は0.0001以上である。また、周波数1GHz~60GHzの全領域における誘電正接(tanδ)が0.0025以下であることが好ましく、0.0020未満であることがより好ましく、0.0015未満であることがさらに好ましい。
【0040】
<ラジカル発生剤>
本発明の接着剤組成物はラジカル発生剤を含むことができる。本発明の接着剤組成物は加熱によって不飽和結合を有する化合物を反応させることもできるが、ラジカル発生剤によって発生したラジカルが不飽和炭化水素基同士を効率的に反応させ、架橋密度を高めることで、耐熱性を向上させることができる。ラジカル発生剤としては、特に限定されないが、有機過酸化物を使用することが好ましい。有機過酸化物としては、特に限定されないが、ジ-tert-ブチルパーオキシフタレート、tert-ブチルヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシピバレート、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ターシャリブチルパーオキシ)ヘキサン等の過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソプロピオニトリル等のアゾニトリル類等が挙げられる。中でも誘電特性の観点から好ましくは酸素以外のヘテロ原子を含まないラジカル発生剤が好ましい。
【0041】
ラジカル発生剤の1分間半減期温度としては、140℃以上であることが好ましい。140℃以上にすることで、接着剤組成物ワニスの溶剤を揮発させ接着剤シートを作成する際にラジカル反応が開始することを防ぎ、優れた接着性を発現することができる。
【0042】
接着剤組成物にラジカル発生剤を含有する場合の配合量としては、樹脂成分の合計100質量部に対し、0.1質量部以上であることが好ましく、さらに好ましくは1質量部以上である。また、50質量部以下が好ましく、さらに好ましくは20質量部以下である。上記範囲内にすることによって、最適な架橋密度とすることができ、接着性と耐熱性を両立することができる。
【0043】
本発明の接着剤組成物は基材などに塗工後、乾燥、硬化することにより、接着剤層を形成できる。その際、硬化温度は160~190℃であることが好ましく、より好ましくは170~180℃である。上記の温度範囲とすることにより、積層体とした場合に他層への熱劣化の影響が少なく済む。本発明の接着剤組成物に含有する環状ポリオレフィン樹脂(A)が側鎖にメタクリロイル基を有する場合、低温での硬化に特に好ましい。
【0044】
本発明の接着剤組成物の利用形態としては、特に限定されないが、例えば、上記接着剤組成物からなる樹脂膜、上記樹脂膜をキャリア基材上に設けたキャリア付樹脂膜、上記接着剤組成物を繊維基材に含浸してなるプリプレグ上記プリプレグの硬化物の少なくとも一面に金属層が配置された金属張積層板、上記接着剤組成物の硬化物で構成された絶縁層を備える樹脂基板、上記金属張積層板または上記樹脂基板の表面に回路層が形成されたプリント配線基板等が挙げられる。
【0045】
(樹脂基板)
本実施形態の樹脂基板は、熱硬化性樹脂組成物の硬化物で構成された絶縁層を備えることができる。このような樹脂基板は、ガラス繊維を含まない構成とすることができ、プリント配線基板に利用することができる。
【0046】
(プリプレグ)
本実施形態のプリプレグは、上記接着剤組成物を繊維基材に含浸してなるものである。例えば、プリプレグは、接着剤組成物を繊維基材に含浸させ、その後、半硬化させて得られるシート状の材料として利用できる。このような構造のシート状材料は、誘電特性、高温多湿下での機械的、電気的接続信頼性等の各種特性に優れ、プリント配線基板の絶縁層の製造に適している。
【0047】
接着剤組成物を繊維基材に含浸させる方法としては、特に限定されないが、例えば、接着剤組成物を溶剤に溶かして樹脂ワニスを調製し、繊維基材を上記樹脂ワニスに浸漬する方法、各種コーターにより上記樹脂ワニスを繊維基材に塗布する方法、スプレーにより上記樹脂ワニスを繊維基材に吹き付ける方法、接着剤組成物からなる上記樹脂膜で繊維基材の両面をラミネートする方法等が挙げられる。
【0048】
本実施形態において、プリプレグは、例えば、プリント配線基板におけるビルドアップ層中の絶縁層やコア層中の絶縁層を形成するために用いることができる。プリプレグをプリント配線基板におけるコア層中の絶縁層を形成するために用いる場合は、例えば、2枚以上のプリプレグを重ね、得られた積層体を加熱硬化することによりコア層用の絶縁層とすることもできる。
【0049】
上記繊維基材としては、とくに限定されないが、ガラス織布、ガラス不織布等のガラス繊維基材;ポリアミド樹脂繊維、芳香族ポリアミド樹脂繊維、全芳香族ポリアミド樹脂繊維等のポリアミド系樹脂繊維;ポリエステル樹脂繊維、芳香族ポリエステル樹脂繊維、全芳香族ポリエステル樹脂繊維等のポリエステル系樹脂繊維;ポリイミド樹脂繊維、フッ素樹脂繊維のいずれかを主成分とする織布または不織布で構成される合成繊維基材;クラフト紙、コットンリンター紙、あるいはリンターとクラフトパルプの混抄紙等を主成分とする紙基材;等が挙げられる。これらのうち、いずれかを使用することができる。これらの中でもガラス繊維基材が好ましい。これにより、低吸水性で、高強度、低熱膨張性の樹脂基板を得ることができる。
【0050】
繊維基材の厚みは、とくに限定されないが、好ましくは5μm以上150μm以下であり、より好ましくは10μm以上100μm以下であり、さらに好ましくは12μm以上90μm以下である。このような厚みを有する繊維基材を用いることにより、プリプレグ製造時のハンドリング性がさらに向上できる。
【0051】
繊維基材の厚みが上記上限値以下であると、繊維基材中の接着剤組成物の含浸性が向上し、ストランドボイドや絶縁信頼性の低下の発生を抑制することができる。また炭酸ガス、UV、エキシマ等のレーザーによるスルーホールの形成を容易にすることができる。また、繊維基材の厚みが上記下限値以上であると、繊維基材やプリプレグの強度を向上させることができる。その結果、ハンドリング性が向上できたり、プリプレグの作製が容易となったり、樹脂基板の反りを抑制できたりする。
【0052】
上記ガラス繊維基材として、例えば、Eガラス、Sガラス、Dガラス、Tガラス、NEガラス、UTガラス、Lガラス、HPガラスおよび石英ガラスから選ばれる一種または二種以上のガラスにより形成されたガラス繊維基材が好適に用いられる。
【0053】
(金属張積層板)
本実施形態において、金属張積層板は、上記プリプレグの硬化物の少なくとも一面に金属層が配置されたものである。また、プリプレグを用いた金属張積層板製造方法は、例えば以下の通りである。
【0054】
プリプレグまたはプリプレグを2枚以上重ね合わせた積層体の外側の上下両面または片面に金属箔を重ね、ラミネーター装置やベクレル装置を用いて高真空条件下でこれらを接合する、あるいはそのままプリプレグの外側の上下両面または片面に金属箔を重ねる。また、プリプレグを2枚以上積層するときは、積層したプリプレグの最も外側の上下両面もしくは片面に金属箔を重ねる。次いで、プリプレグと金属箔とを重ねた積層体を加熱加圧成形することで金属張積層板を得ることができる。ここで、加熱加圧成形時に、冷却終了時まで加圧を継続することが好ましい。
【0055】
上記金属箔を構成する金属としては、例えば、銅、銅系合金、アルミ、アルミ系合金、銀、銀系合金、金、金系合金、亜鉛、亜鉛系合金、ニッケル、ニッケル系合金、錫、錫系合金、鉄、鉄系合金、コバール(商標名)、42アロイ、インバー、スーパーインバー等のFe-Ni系の合金、W、Mo等が挙げられる。これらの中でも、金属箔105を構成する金属としては、導電性に優れ、エッチングによる回路形成が容易であり、また安価であることから銅または銅合金が好ましい。すなわち、金属箔105としては、銅箔が好ましい。また、金属箔としては、キャリア付金属箔等も使用することができる。金属箔の厚みは、好ましくは0.5μm以上20μm以下であり、より好ましくは1.5μm以上18μm以下である。本実施形態によれば、このような樹脂膜やそれを用いたプリプレグを採用することにより、平面方向における線膨張係数が低減されたプリント配線基板における絶縁層を構成することが可能になる。
【0056】
(プリント配線基板)
本実施形態のプリント配線基板は、上記の接着剤組成物の硬化物で構成された絶縁層を備えるものである。
【実施例0057】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、本実施例および比較例において、単に部とあるのは質量部を示すこととする。
【0058】
<重量平均分子量および分子量分布>
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用い、以下の条件にて測定し、解析ソフト(LabSolutions(TM)島津製作所社製)を用いて、合成例及び比較合成例で製造した環状オレフィン樹脂について標準ポリスチレンに換算した重量平均分子量および分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)の値を算出した。
測定装置:東ソー製HLC-8220
カラム:TSKgelsuperHM-H2本およびSuperH25001本を直列に接続検出器:示差屈折率(RI)検出器
溶液調整:テトラヒドロフランを溶媒とし、サンプルの0.05重量%溶液を用いる
カラム温度:40℃
注入量:20μL
流速:0.6ml/分
【0059】
<側鎖不飽和結合定量測定>
600MHzの核磁気共鳴スペクトル装置(以下、NMRと略記することがある)を用いて、1H-NMR測定を以下の条件により行い、側鎖に不飽和結合が環状オレフィン樹脂に導入されたか確認した。
(1H-NMR測定条件)
装置:BRUKER社製AVANCENEO600分光計
測定溶媒:重クロロホルム
試料濃度:約20mg/約0.60mL
共鳴周波数:600MHz
フリップ角:30度
データ取得時間:4秒
パルス繰り返し時間:1秒
積算回数:64
測定温度:50℃
【0060】
<合成例1>
(環状ポリオレフィン樹脂(a-1)の作製)
4つ口フラスコに常温、窒素雰囲気下にて、2-ノルボルネン(東京化成工業(株)製)を100重量部、5-ノルボルネン-2-カルボン酸(東京化成工業(株)製)を4.58重量部、1-ヘキセン((東京化成工業(株)製)を4.06重量部、ジクロロ[1,3―ビス(2,4,6―トリメチルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン](ベンジリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム(II)(シグマアルドリッチ(株)製)0.03g、溶剤として、テトラヒドロフラン(富士フィルム和光純薬(株)製)を165重量部、常温にて2hr攪拌、重合させた。次に水添工程として、前記溶液を十分に窒素置換した内容積1LのSUS製オートクレーブに100重量部移し、Pd-C(Pd10%)(約55%水湿潤品、東京化成工業(株)製)0.89重量部を添加した後、0.20MPaGの圧力で水素ガス(H2)を入れ、60℃まで昇温し4hr攪拌、水素化反応を完結した。不溶物をろ過にて除去し、大過剰のメタノールにて精製することにより、環状ポリオレフィン樹脂を得た。得られた環状ポリオレフィン樹脂52.3重量部を、4つ口フラスコに常温、窒素雰囲気下にて、トルエン(ナカライテスク(株)製)43重量部に溶解させ、2-イソシアナトエチルメタクリレート(レゾナック(株)製)3.97重量部、1,8―ジアザビシクロ[5,4,0]―7-ウンデセン(東京化成工業(株)製)0.01重量部)添加し、80℃で4hr攪拌した。上記反応溶液を大過剰のメタノールにて精製することにより、環状ポリオレフィン樹脂(a―1)を得た。前記条件で測定された、得られた樹脂の重量平均分子量(Mw)は7,900、分子量分布(Mw/Mn)は2.0であった。得られた環状オレフィン樹脂の不飽和末端基含量は、ポリマーの総モノマー単位を基準として、3.0mol%であった。
【0061】
<合成例2>
(環状ポリオレフィン樹脂(a-2)の作製)
4つ口フラスコに常温、窒素雰囲気下にて、ジシクロペンタジエン(東京化成工業(株)製)を100重量部、5-ノルボルネン-2-カルボン酸(東京化成工業(株)製)を2.08重量部、1-ヘキセン((東京化成工業(株)製)を0.45重量部、ジクロロ[1,3-ビス(2,4,6―トリメチルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン](ベンジリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム(II)(シグマアルドリッチ(株)製)0.03重量部、溶剤として、テトラヒドロフラン(富士フィルム和光純薬(株)製)を165重量部、常温にて2hr攪拌、重合させた。次に水添工程として、前記溶液を十分に窒素置換した内容積1LのSUS製オートクレーブに100重量部移し、Pd-C(Pd10%)(約55%水湿潤品、東京化成工業(株)製)0.89重量部を添加した後、0.20MPaGの圧力で水素ガス(H2)を入れ、60℃まで昇温し4hr攪拌、水素化反応を完結した。
不溶物をろ過にて除去し、大過剰のメタノールにて精製することにより、環状オレフィン樹脂を得た。得られた環状オレフィン樹脂のうち、51.1重量部を、4つ口フラスコに常温、窒素雰囲気下にて、トルエン(ナカライテスク(株)製)44重量部に溶解させ、2-イソシアナトエチルメタクリレート(レゾナック(株)製)2.65重量部、1,8―ジアザビシクロ[5,4,0]―7-ウンデセン(東京化成工業(株)製)0.01重量部添加し、80℃4hr攪拌した。前記条件で測定された、得られた樹脂の重量平均分子量(Mw)は81,000、分子量分布(Mw/Mn)は2.3であった。得られた環状オレフィン樹脂の不飽和末端基含量は、ポリマーの総モノマー単位を基準として、1.4mol%であった。
【0062】
<比較合成例1>
(環状オレフィン樹脂(a-3)の作製)
4つ口フラスコに常温、窒素雰囲気下にて、2-ノルボルネン(東京化成工業(株)製)を100重量部、1-ヘキセン((東京化成工業(株)製)を2.41重量部、ジクロロ[1,3-ビス(2,4,6―トリメチルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン](ベンジリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム(II)(シグマアルドリッチ(株)製)0.03重量部、溶剤として、テトラヒドロフラン(富士フィルム和光純薬(株)製)を154重量部、常温にて2hr攪拌、重合させた。次に水添工程として、前記溶液を十分に窒素置換した内容積1LのSUS製オートクレーブに100重量部移し、Pd-C(Pd10%)(約55%水湿潤品、東京化成工業(株)製)0.89重量部を添加した後、0.20MPaGの圧力で水素ガス(H2)を入れ、60℃まで昇温し4hr攪拌、水素化反応を完結した。不溶物をろ過にて除去し、大過剰のメタノールにて精製することにより、環状オレフィン樹脂を得た。得られた環状オレフィン樹脂50重量部と無水マレイン酸2.5重量部、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)-3-ヘキシン2重量部を混合し、直径30mmベント装置付二軸押出機を用いて260℃で溶融混練することによって、無水マレイン酸変性環状オレフィン樹脂(a-3)を得た。前記条件で測定された、得られた樹脂の重量平均分子量(Mw)は16,900、分子量分布(Mw/Mn)は2.2であった。得られた変性重合体の酸無水物基含量は、ポリマーの総モノマー単位を基準として、2.9mol%であった。
【0063】
<比較合成例2>
(環状ポリオレフィン樹脂(a-4)の作製)
4つ口フラスコに常温、窒素雰囲気下にて、2-ノルボルネン(東京化成工業(株)製)を100重量部、5-ノルボルネン-2-カルボン酸(東京化成工業(株)製)を18.0重量部、1-ヘキセン((東京化成工業(株)製)を4.01重量部、ジクロロ[1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン](ベンジリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム(II)(シグマアルドリッチ(株)製)0.04重量部、溶剤として、テトラヒドロフラン(富士フィルム和光純薬(株)製)を246重量部、常温にて2hr攪拌、重合させた。次に水添工程として、前記溶液を十分に窒素置換した内容積1LのSUS製オートクレーブに100重量部移し、Pd-C(Pd10%)(約55%水湿潤品、東京化成工業(株)製)0.89重量部を添加した後、0.20MPaGの圧力で水素ガス(H2)を入れ、60℃まで昇温し4hr攪拌、水素化反応を完結した。不溶物をろ過にて除去し、大過剰のメタノールにて精製することにより、環状オレフィン樹脂を得た。得られた環状ポリオレフィン樹脂59.0重量部を、4つ口フラスコに常温、窒素雰囲気下にて、トルエン(ナカライテスク(株)製)121重量部に溶解させ、2-イソシアナトエチルメタクリレート(レゾナック(株)製)19.0重量部、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセン(東京化成工業(株)製)0.06重量部添加し、80℃4hr攪拌した。上記反応溶液を大過剰のメタノールにて精製することにより、環状ポリオレフィン樹脂(a-4)を得た。前記条件で測定された、得られた樹脂の重量平均分子量(Mw)は9,600、分子量分布(Mw/Mn)は2.0であった。得られた環状オレフィン樹脂の不飽和末端基含量は、ポリマーの総モノマー単位を基準として、13.0mol%であった。
【0064】
<比較合成例3>
(環状ポリオレフィン樹脂(a-5)の作製)
3口フラスコに常温、窒素雰囲気下にて、トルエン8.6重量部、ノルボルネン100.0重量部、5-ビニル-2-ノルボルネン3.4重量部、トリエチルシラン4.1重量部、1-ブタノール42.4重量部、およびアニソール182.8重量部を加え、反応液を得た。反応液を窒素バブリングした後、75℃に加熱した。触媒(パラジウム(II)(アセトニトリル)ビス(トリイソプロピルホスフィン)アセテートテトラキス(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル)ボレート、Pd-1206)および助触媒(N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、DANFABA)をトルエン:酢酸エチル=6:4溶液に溶かしたものを用意し、ノルボルネンモノマー総量:触媒:助触媒=20000:1:1(モル比)になるように反応液に投入した。80℃にて2時間攪拌した。重合終了後、放冷して反応を停止させた。反応終了後、反応液37.9重量部を500重量部のメタノールと150重量部のTHFの混合液中に滴下して再沈殿させた。ろ別してポリマーを回収した後、100重量部のメタノールと100重量部のTHFの混合液でろ物を洗浄し、ろ別した。最後に80℃真空乾燥を行い精製し、環状ポリオレフィン樹脂(a-4)を得た。前記条件で測定された、得られた樹脂の重量平均分子量(Mw)は8,800、分子量分布(Mw/Mn)は2.2であった。得られた環状ポリオレフィン樹脂の不飽和末端基含量は、ポリマーの総モノマー単位を基準として、3.3mol%であった。
【0065】
<接着剤組成物の評価>
(比誘電率(εc)及び誘電正接(tanδ))
接着剤組成物を厚さ100μmのテフロン(登録商標)シートに、乾燥後の厚みが25μmとなるように塗布し、140℃で3分乾燥した。次いで180℃で3時間熱処理して硬化させた後、テフロン(登録商標)シートを剥離して試験用の接着剤樹脂シートを得た。その後得られた試験用接着剤樹脂シートを8cm×3mmの短冊状にサンプルを裁断し、試験用サンプルを得た。比誘電率(εc)及び誘電正接(tanδ)は、ネットワークアナライザー(アンリツ社製)を使用し、空洞共振器摂動法で、温度23℃、周波数10GHzの条件で測定した。
<比誘電率の評価基準>
○:2.4以下
×:2.4を超える
<誘電正接の評価基準>
◎:0.0015未満
○:0.0015以上、0.0020未満
×:0.0020以上
【0066】
(ピール強度(接着強度))
接着剤組成物を厚さ12.5μmのポリイミドフィルム(株式会社カネカ製、アピカル(登録商標))に、乾燥後の厚みが25μmとなるように塗布し、130℃で3分乾燥した。この様にして得られた接着性フィルム(Bステージ品)を厚さ18μmの圧延銅箔(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、エスパネックスシリーズ)と貼り合わせた。貼り合わせは、圧延銅箔の光沢面が接着剤層と接する様にして、170℃で2MPaの加圧下に280秒間プレスし、接着した。次いで180℃で3時間熱処理して硬化させ、ピール強度評価用サンプルを得た。ピール強度は、25℃、フィルム引き、引張速度50mm/min、90°剥離の条件で測定した。この試験は常温での接着強度を示すものである。
<評価基準>
○:1.0N/mm以上
×:1.0N/mm未満
【0067】
(はんだ耐熱性)
上記のピール強度測定用と同じ方法で評価用サンプルを作製し、2.0cm×2.0cmのサンプル片を288℃で溶融したはんだ浴に浸漬し、膨れなどの外観変化の有無を確認した。
<評価基準>
◎:60秒以上膨れ無し
○:30秒以上60秒未満で膨れ有り
×:10秒未満で膨れ有り
【0068】
(ゲル分率)
接着剤組成物を厚さ100μmのテフロン(登録商標)シートに、乾燥後の厚みが25μmとなるように塗布し、140℃で3分乾燥した。次いで180℃で3時間熱処理して硬化させた後、テフロン(登録商標)シートを剥離して試験用の接着剤樹脂シートを得た。その後得られた試験用接着剤樹脂シートを8cm×3mmの短冊状にサンプルを裁断し、試験用サンプルを得た。試験用サンプルの重量測定後、トルエン溶液に1時間浸漬した。その後、溶液を濾過にて濾物を回収し、100℃1時間乾燥し、重量測定を行った。下式にてゲル分率を算出した。ゲル分率により、低温で硬化可能であるか評価した。
(乾燥後の重量)÷(乾燥前の重量)×100=ゲル分率(%)
○:75%以上
×:75%未満
【0069】
以下、本発明の実施例となる接着剤組成物、及び比較例となる接着剤組成物の製造例を示す。
なお、接着剤組成物には、以下のものを用いた。
不飽和結合を有するポリオレフィン樹脂(B):B-1000(日本曹達社製)
フィラー(C):シリカ(GTグレード、デンカ社製)
エポキシ化合物:JER―152 (三菱ケミカル社製)
ラジカル発生剤:ルペロックス12(アルケマ吉富社製)
【0070】
(実施例1)
合成例1で得た環状ポリオレフィン樹脂(a-1)80質量部をトルエン150質量部で溶解し、さらに化合物(B)としてポリブタジエン(B-1000、日本曹達社製)を20質量部、シリカ(GTグレード、デンカ社製)を50質量部配合し、接着剤組成物1を得た。
得られた接着剤組成物1について、誘電特性、ピール強度(接着性)、はんだ耐熱性及びゲル分率(低温硬化)の各評価を実施した。結果を表1に記載した。
【0071】
(実施例2、比較例1~3)
実施例1と同様に表1に示す配合量に変更して接着剤組成物2~5を作成し、各評価を実施した。評価結果を表1に記載した。
【0072】
【表1】
【0073】
表1から明らかなように、実施例1~2では、誘電特性、ピール強度、はんだ耐熱性およびゲル分率に優れる。一方、比較例1では、ラジカル硬化ではなく、環状オレフィン樹脂が側鎖に不飽和結合を有さず、無水マレイン酸由来の部位とエポキシ樹脂により硬化するため誘電特性に劣った。比較例2では、環状オレフィンにおける(β)成分比が高く、アクリル骨格が及ぼす影響が大きく、誘電特性に劣った。比較例3では、ゲル分率が低く、はんだ耐熱性が不足した。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の接着剤組成物は、耐熱性、接着強度及び誘電特性に優れ、より低温で硬化することが可能である。そのため、高周波領域のプリント基板(フレキシブル基板,リジッド基板,パッケージ基板)に適用するプリント配線板用接着剤や接着シート、プリプレグとして有用である。