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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141652
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】ホップ由来の香気組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/00 20160101AFI20241003BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20241003BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20241003BHJP
   C12G 3/04 20190101ALI20241003BHJP
   C12C 5/02 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
A23L27/00 C
A23L2/00 B
A23L2/52
C12G3/04
C12C5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053426
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000253503
【氏名又は名称】キリンホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003421
【氏名又は名称】弁理士法人フィールズ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加野 智慎
(72)【発明者】
【氏名】杉村 哲
(72)【発明者】
【氏名】川崎 由美子
【テーマコード(参考)】
4B047
4B115
4B117
4B128
【Fターム(参考)】
4B047LB03
4B047LB09
4B047LE01
4B047LF07
4B047LG37
4B047LP01
4B115LG03
4B115LH12
4B115LP02
4B117LC02
4B117LG16
4B117LG18
4B117LP01
4B128CP16
(57)【要約】
【課題】新規な香気組成物およびその製造方法の提供。
【解決手段】本発明によれば、ホップ由来の香気組成物の製造方法であって、(A)ホップを水に懸濁させることによりホップ懸濁液を調製する工程と、(B)工程(A)で調製されたホップ懸濁液を40℃以上80℃未満で加熱処理する工程と、(C)工程(B)の後のホップ懸濁液を70℃以上120℃未満で加熱処理することにより香気成分を分離する工程とを含む、製造方法が提供される。本発明によれば、新規な香気組成物が提供されるため、従来品にはない、飲み始めから中盤にかけての香味が強く、かつ、後キレの良い飲料を製造することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホップ由来の香気組成物の製造方法であって、
(A)ホップを水に懸濁させることによりホップ懸濁液を調製する工程と、
(B)工程(A)で調製されたホップ懸濁液を40℃以上80℃未満で加熱処理する工程と、
(C)工程(B)の後のホップ懸濁液を70℃以上120℃未満で加熱処理することにより該ホップ懸濁液から香気成分を分離する工程と
を含む、製造方法。
【請求項2】
工程(B)の加熱処理が、通気処理を伴う、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
通気処理が、液量1Lあたり0.1L/分以上で行われる、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
工程(B)の加熱処理が、30~300分間行われる、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項5】
工程(C)の加熱処理が、1~60分間行われる、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項6】
(D)工程(C)で分離した香気成分を回収する工程をさらに含む、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項7】
請求項1または2に記載の製造方法により製造される、香気組成物。
【請求項8】
請求項1または2に記載の製造方法により香気組成物を製造する工程と、前記香気組成物を添加する工程とを含む、飲料の製造方法。
【請求項9】
香気組成物の添加量が、ホップ原単位換算で0.01g/L~10g/Lである、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
飲料がビールテイスト飲料である、請求項8に記載の製造方法。
【請求項11】
請求項8に記載の製造方法により製造される、飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホップ由来の香気組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホップはビールに爽快な苦味と香りを付与するアサ科の多年生植物であり、ホップに由来する香りはビールのキャラクター形成に大きな影響を与えている。香気特徴を表現する言葉として、フローラル、スパイシー、シトラス、フルーティー、ホッピー、スパイシー、マスカット等が一般的に用いられている(非特許文献1~5)。
【0003】
ホップ香気を強調するためのホップの使用方法として、ケトルホッピングやドライホッピングが知られている(非特許文献6)。また、ドライホッピングによるホップ香気の強調と、荒々しさの少ないケトルホッピングの長所を合わせ持つ発酵飲料の製法も知られている(特許文献1~3)。
【0004】
このように、これまでにも香味が増強されたビールテイスト飲料が開発されてきたが、近年の多様化した消費者のニーズに応えていく上では、従来品だけでは十分とは言えない。また、ホップはハーブとしての健康効果が知られておりビール以外の飲料への展開も期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-132272号公報
【特許文献2】特開2013-132274号公報
【特許文献3】特開2013-132275号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】T. Kishimoto et al., J. Agric. Food Chem., 54, 8855-8861, 2006
【非特許文献2】G. T. Eyres et al., J. Agric. Food Chem., 55, 6252-6261, 2007
【非特許文献3】V. E. Peacock, et al., J. Agric. Food Chem., 28, 774-777, 1980
【非特許文献4】K. C. Lam et al., J. Agric. Food Chem, 34, 763-770, 1986
【非特許文献5】V. E. Peacock et al., J. Agric. Food Chem., 29, 1265-1269, 1981
【非特許文献6】「醸造物の成分」(財団法人日本醸造協会:平成11年12月10日発行)、p.259~261
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、新規な香気組成物の製造方法を提供することを目的とする。本発明はまた、香気に特徴を有する新規な飲料の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、ホップを水に懸濁させたホップ懸濁液を40℃以上80℃未満で加熱処理した後、そのホップ懸濁液を70℃以上120℃未満でさらに加熱処理して該ホップ懸濁液から香気成分を分離することにより新規な香気組成物が得られることを見出した。本発明は、この知見に基づくものである。
【0009】
本発明によれば以下の発明が提供される。
[1]ホップ由来の香気組成物の製造方法であって、(A)ホップを水に懸濁させることによりホップ懸濁液を調製する工程と、(B)工程(A)で調製されたホップ懸濁液を40℃以上80℃未満で加熱処理する工程と、(C)工程(B)の後のホップ懸濁液を70℃以上120℃未満で加熱処理することにより該ホップ懸濁液から香気成分を分離する工程とを含む、製造方法。
[2]工程(B)の加熱処理が、通気処理を伴う、蒸気[1]に記載の製造方法。
[3]通気処理が、液量1Lあたり0.1L/分以上で行われる、上記[2]に記載の製造方法。
[4]工程(B)の加熱処理が、30~300分間行われる、上記[1]~[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5]工程(C)の加熱処理が、1~60分間行われる、上記[1]~[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6](D)工程(C)で分離した香気成分を回収する工程をさらに含む、請求項1または2に記載の製造方法。
[7]上記[1]~[6]のいずれかに記載の製造方法により製造される、香気組成物。
[8]上記[1]~[6]に記載の製造方法により香気組成物を製造する工程と、前記香気組成物を添加する工程とを含む、飲料の製造方法。
[9]香気組成物の添加量が、ホップ原単位換算で0.01g/L~10g/Lである、上記[8]に記載の製造方法。
[10]飲料がビールテイスト飲料である、請求項8に記載の製造方法。
[11]上記[8]または[9]に記載の製造方法により製造される、飲料。
【0010】
本発明によれば、新規な香気組成物が提供されるため、従来品にはない、飲み始めから中盤にかけての香味が強く、かつ、後キレの良い飲料を製造することができる点で有利である。
【発明の具体的説明】
【0011】
<<香気組成物の製造方法>>
本発明によれば、ホップ由来の香気組成物の製造方法が提供される。本発明の香気組成物の製造方法は、前記工程(A)、前記工程(B)および前記工程(C)を含むものである。
【0012】
工程(A)では、ホップを水に懸濁させることによりホップ懸濁液を調製する。
【0013】
本発明に用いられるホップ(Humulus lupulus L.)は、アサ科に属する多年生植物であり、その品種としては、特に限定されるものではないが、例えば、ヘルスブルッカー(Hersbrucker)、IBUKI、ブリオン(Bullion)、ブリューワーズゴールド(Brewers Gold)、カスケード(Cascade)、チヌーク(Chinook)、クラスター(Cluster)、イーストケントゴールディング(East Kent Golding)、ファグルス(Fuggles)、ハレトウ(Hallertau)、マウントフッド(Mount Hood)、ノーザンブリューワー(Northan Brewer)、ペーレ(Perle)、ザーツ(Saaz)、スティリアン(Styrian)、テットナンガー(Tettnanger)、ウィラメット(Willamette)、ブラボー、シトラ、ギャラクシー、ネルソンソービン、IBUKI、トラディション、信州早生、ムラカミセブン等が挙げられる。本発明において、ホップは、1種または2種以上の品種を組み合わせて用いることができ、例えば、上記の品種から選択される1種または2種以上の品種を用いることができる。
【0014】
本発明において、ホップは、ホップの毬花(雌花)、毬果(未受精の雌花が成熟したもの)、葉、茎、苞、ルプリンのいずれかの部位を単独もしくは組み合わせて使用することができ、生、乾燥、粉砕物、圧縮物(ペレット)のいずれの状態のホップも使用することができる。
【0015】
本発明において、水に懸濁するホップの量は、任意に設定することができるが、飲料(例えば、ビールテイスト飲料)に添加することを目的とする場合は、飲料における濃度の下限値(以上または超える)は、加工前のホップの乾燥重量(ホップ原単位)として、0.01g/L、0.05g/L、0.1g/Lとすることができ、該飲料の上限値(以下または下回る)は、30g/L、20g/L、10g/L、5g/L、2g/Lとすることができる。これらの下限値および上限値はそれぞれ任意に組み合わせることができ、その数値範囲は、例えば、0.01g/L~30g/Lとすることができ、0.01g/L~10g/L、0.05~5g/L、0.1~2g/Lとすることができる。
【0016】
工程(B)では、ホップ懸濁液を加熱処理する。工程(B)において、加熱処理は、40℃以上80℃未満であり、好ましくは47℃以上80℃未満である。加熱処理の時間は、例えば、30~300分間であり、30~180分間、30~120分間、30~60分間である。なお、本発明において、加熱処理の温度条件は、特に言及のない限り、常圧下における温度を指すが、減圧下において実施する場合はその温度条件を適宜調整することができる。
【0017】
工程(B)において、ホップ懸濁液の加熱処理は、通気処理を伴うことができる。ホップ懸濁液の通気処理は、空気、二酸化炭素、窒素、酸素等の気体による通気処理であり、好ましくは空気による通気処理である。
【0018】
工程(B)において、ホップ懸濁液の通気処理は、液量1Lあたり、0.1L/分以上、好ましくは0.5L/分以上、より好ましくは1.0L/分以上、さらに好ましくは1.5L/分以上、さらに好ましくは3.0L/分以上、さらに好ましくは5.0L/分以上、さらに好ましくは7.0L/分以上の通気量で行うことができる。また、通気処理の時間は、任意に設定することができるが、例えば、加熱処理と同じ時間とすることができる。
【0019】
工程(B)では、後記の工程(C)において香気成分を高い純度で分離する観点から、ホップ懸濁液の構成成分のうち、主として沸点が47℃以上80℃未満の成分(特に揮発性成分)を該ホップ懸濁液から除去することができる。
【0020】
工程(C)では、工程(B)の後のホップ懸濁液を加熱処理することにより該ホップ懸濁液から香気成分を分離する。工程(C)において、加熱処理の温度は、70℃以上120℃未満であり、好ましくは80℃以上115℃未満であり、より好ましくは85℃以上110℃未満であり、さらに好ましくは90℃以上105℃未満であり、さらにより好ましくは95℃以上105℃未満である。加熱処理の時間は、目的とする該香気成分の量に応じて任意に設定することができるが、例えば、1~60分間、1~45分間、1~30分間、1~20分間とすることができる。工程(C)で分離される香気成分は、主として沸点が70℃以上120℃未満の成分で構成される。
【0021】
本発明の香気組成物の製造方法は、(D)工程(C)において分離した香気成分を回収する工程をさらに含むことができる。
【0022】
工程(D)において、香気成分は、蒸気の状態のまま回収してもよく、蒸気を冷却して回収することもできる。なお、工程(C)および工程(D)の処理は、蒸留の一態様といえる。
【0023】
工程(D)において、蒸気を冷却して香気成分を回収する場合、冷却の温度は、香気成分を回収できる温度であれば任意に設定することができ、例えば、-10~30℃、-10~20℃、-5~10℃とすることができる。
【0024】
<<香気組成物>>
本発明によればまた、本発明の香気組成物の製造方法により製造される、香気組成物が提供される。本発明の香気組成物は、本発明の香気組成物の製造方法の記載に従って製造することができる。
【0025】
<<飲料の製造方法>>
本発明によればまた、本発明の香気組成物の製造方法により製造される香気組成物を添加する工程を含む、飲料の製造方法が提供される。すなわち、本発明の飲料の製造方法は、
(E)ホップ由来の香気組成物を製造する工程と、
(F)工程(E)で製造した香気組成物を添加する工程と
を含み、
前記工程(E)は、前記工程(A)、前記工程(B)および前記工程(C)を含むものとすることができる。本発明の飲料の製造方法において、前記工程(E)は、前記工程(A)、前記工程(B)および前記工程(C)に加えて、前記工程(D)をさらに含むものとすることができる。
【0026】
工程(E)は、本発明の香気組成物の製造方法の記載に従って実施することができる。
【0027】
工程(F)では、本発明の香気組成物を飲料に添加する。工程(F)では、工程(E)において製造される香気組成物を分離された状態のまま飲料に添加することができ、あるいは、工程(E)において製造される香気組成物を、分離後に回収し、それを飲料に添加することもできる。
【0028】
工程(F)において、本発明の香気組成物の添加は、製造される飲料がビールテイスト発酵アルコール飲料である場合、糖化前、糖化後、発酵前、発酵後、貯蔵中、貯蔵後および濾過後のいずれの段階においても行うことができる。本発明の香気組成物の添加は、添加に際して飲料(原料、麦汁、若ビール等の飲料の製造過程にあるものも含む)が冷却された状態にあることが好ましく、例えば、飲料がビールテイスト発酵アルコール飲料である場合は、発酵前、発酵後、貯蔵中または貯蔵後であることが好ましい。
【0029】
工程(F)において、本発明の香気組成物の添加は、製造される飲料がビールテイスト発酵アルコール飲料以外の飲料である場合は、原材料の調合の際、あるいは、原材料の調合の前後に行うことができる。
【0030】
本発明の飲料の製造方法において、製造対象となる「飲料」は、特に限定されるものではないが、例えば、ホップ様の香気を有する飲料(ホップ由来の香気を有する飲料を含み、典型的にはビールテイスト飲料である)、アルコール飲料、ノンアルコール飲料、清涼飲料等が挙げられる。
【0031】
本発明において、「ビールテイスト飲料」とは通常にビールを製造した場合、すなわち、酵母等による発酵に基づいてビールを製造した場合に得られるビール特有の味わい、香りを有する飲料を意味し、「ビールテイストアルコール飲料」と「ビールテイストノンアルコール飲料」が含まれる。
【0032】
本発明において、ビールテイスト飲料は、麦芽および未発芽の麦類のいずれかまたは両方を原料の少なくとも一部とするものとすることができ、好ましくは、麦芽または麦芽および未発芽の麦類を原料の少なくとも一部とすることができる。本発明のビールテイスト飲料は、麦芽として大麦麦芽を原料の一部とすることができる。本発明のビールテイスト飲料はまた、未発芽の麦類として、未発芽大麦(エキス化したものを含む)や、未発芽小麦(エキス化したものを含む))を原料とすることができる。
【0033】
本発明において、ビールテイスト飲料は、麦芽および未発芽の麦類以外に、米、とうもろこし、大豆、こうりゃん、馬鈴薯、でんぷん、糖類(例えば、液糖)、果実(例えば、果汁、濃縮果汁)、コリアンダーまたはその種、香辛料またはその原料(例えば、こしょう、シナモン、さんしょう)、ハーブ(例えば、カモミール、セージ、バジル)、野菜(例えば、かんしょ、かぼちゃ)、そばまたはごま、含糖質物(例えば、ハチミツ、黒糖)、食塩、みそ、花、茶、コーヒー、ココア(茶、コーヒーおよびココアはその調製品を含む)、海産物(例えば、牡蠣、こんぶ、わかめ、かつお節)等の副原料;タンパク質分解物や酵母エキス等の窒素源;香料、色素、起泡・泡持ち向上剤、水質調整剤、発酵助成剤等のその他の添加物を醸造原料として含むことができる。本発明において、ビールテイスト飲料は、醸造用水以外の使用原料を少なくとも麦芽およびホップとすることができ、場合によっては更に糖類、米、とうもろこし、でんぷん等を使用原料とすることができる。
【0034】
本発明において、「ビールテイストアルコール飲料」には、炭素源、窒素源、および水などを原料として酵母により発酵させた「ビールテイストの発酵アルコール飲料」も含まれ、「ビールテイストの発酵アルコール飲料」としては、ビール、発泡酒、原料として麦または麦芽を使用しないビールテイスト発泡アルコール飲料(例えば、酒税法上、「その他の醸造酒(発泡性)(2)」に分類される飲料)および原料として麦芽を使用するビールや発泡酒にアルコールを添加してなる飲料(例えば、酒税法上、「リキュール(発泡性)(2)」に分類されるリキュール系新ジャンル飲料)が挙げられる。本発明において、「アルコール飲料」とは、エタノール濃度が1%以上である飲料を意味し、エタノール濃度は特に限定されない。
【0035】
本発明において、ビールテイストアルコール飲料は、麦芽および/または未発芽の麦類を原料の一部とするものであり、いずれの麦芽使用比率を取ることができるが、例えば、麦芽使用比率を25%未満、25%以上、50%未満、50%以上、60%以上、60%以下、70%以上、70%以下、80%以上、80%以下、90%以上、90%以下、95%以上または95%以下とすることができ、これらの上限値および下限値は任意に組み合わせることができる。本明細書において「麦芽使用比率」とは、ホップおよび醸造用水を除く全原料の質量に対する麦芽質量の割合をいう。
【0036】
本発明において、「ビールテイストノンアルコール飲料」とは、ノンアルコール飲料でありながらビール様の風味を持つ飲料をいい、具体的には、未発酵のために発酵に由来するアルコール成分を含まない飲料、発酵を行うがエタノール濃度が1v/v%未満である飲料および発酵後にアルコール成分の除去によりエタノール濃度を1v/v%未満に調整した飲料が挙げられる。
【0037】
本発明において、アルコール飲料としては、例えば、ウイスキー、バーボン、スピリッツ、リキュール、ワイン、果実酒、日本酒、中国酒、焼酎、発泡酒、酎ハイ、その他雑酒が挙げられ、ノンアルコール飲料としては、例えば、これらの飲料のテイストを有するノンアルコール飲料が挙げられる。ここで、本発明において、「ノンアルコール飲料」とは、アルコールが全く含まれない、すなわち、エタノール濃度が0.00v/v%である飲料、および、エタノール濃度が0.00v/v%超であり1v/v%未満である飲料のいずれをも含む意味で用いられる。
【0038】
本発明において、清涼飲料水としては、例えば、炭酸飲料、果汁入り飲料、野菜汁入り飲料、果汁および野菜汁入り飲料、栄養ドリンク、エナジー飲料、スポーツドリンク、ミネラルウォーター、ニア・ウォーター等が挙げられる。なお、ミネラルウォーターは、発泡性および非発泡性のミネラルウォーターのいずれもが包含される。
【0039】
本発明において、上記以外の飲料としては、例えば、茶飲料が挙げられる。
【0040】
本発明において、飲料に使用される容器は、飲料の充填に通常使用される容器であればよく、例えば、金属缶、樽容器、プラスチック製ボトル(例えば、PETボトル、カップ)、紙容器、瓶、パウチ容器等が挙げられるが、好ましくは、金属缶・樽容器、プラスチック製ボトル(例えば、PETボトル)、瓶である。
【0041】
本発明の飲料の製造方法において、本発明の香気組成物の添加量は、任意に設定することができるが、飲料における濃度の下限値(以上または超える)は、加工前のホップの乾燥重量(ホップ原単位)として、0.01g/L、0.05g/L、0.1g/Lとすることができ、該飲料の上限値(以下または下回る)は、30g/L、20g/L、10g/L、5g/L、2g/Lとすることができる。これらの下限値および上限値はそれぞれ任意に組み合わせることができ、その数値範囲は、例えば、0.01g/L~30g/Lとすることができ、0.01g/L~10g/L、0.05~5g/L、0.1~2g/Lとなるようにすることができる。
【0042】
本発明の飲料の製造方法は、上記に加えて、本発明の香気組成物の製造方法の記載に従って実施することができる。
【0043】
<<飲料>>
本発明によればまた、本発明の飲料の製造方法により製造される飲料が提供される。本発明の飲料は、本発明の飲料の製造方法の記載に従って製造することができる。
【0044】
本発明の飲料は、上記に加えて、本発明の香気組成物の製造方法の記載に従って実施することができる。
【実施例0045】
以下の例に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0046】
例1:ホップ液の調製および該ホップ液を添加したビールテイスト飲料の評価
例1では、各種ホップ液を調製するとともに、該ホップ液を添加したビールテイスト飲料の評価を実施した。
【0047】
(1)方法
ア ホップ液の調製
表1に示す手順でホップ液(1)~(3)を調製した。表7に各試験区のホップ液に使用したホップ品種を示す。
【0048】
【表1】
【0049】
イ 試飲サンプルの調製
上記アで調製したホップ液をビールテイスト飲料(麦芽100%、アルコール5%の生ビール市販品)に添加し試飲サンプル(試験区)を調製した。対照(試験区1)にはホップ液を添加していないものを用いた。各ホップ液の添加量はホップ原単位換算で0.2g/L相当である。
【0050】
ウ 試飲サンプルの評価
試験は訓練されたパネラー7名で実施した。嗜好性、香りおよび香味の評価基準を表2~4にそれぞれ示す。ここで、香り(表3)および香味(表4)の評価では対照を評点「2」として基準を設定し、この基準に対する相対評価で実施したのに対し、嗜好性(表2)の評価では基準を設定せずに評価を実施した。表4の香味の評価は、試飲サンプル(15mL)を一気に口に含み、飲み始めから、中盤を経て、味および香りを感じなくなるまでの一連の香味を評価した。具体的には、「飲み始め」は飲み込んだ直後、「中盤」は味の流れの中で最も盛り上がりを感じる時点、「余韻」は中盤を過ぎてから香りおよび味がなくなるまでの印象を評価した。
【0051】
【表2】
【0052】
【表3】
【0053】
【表4】
【0054】
(2)結果
結果は、表5に示す通りであった。ホップ液(2)(香気組成物)を添加することにより、飲み始めと中盤の香味強度は4.5以上であるのに対し、余韻は3.3未満であることが確認された。また、この香味強度は、ホップ品種およびホップの形態に依存しないことも確認された。一方で、ホップ液(1)またはホップ液(3)を添加したビールテイスト飲料では、余韻の香味強度が4.3以上であることが確認された。これらの結果から、ホップ液(2)(香気組成物)を添加することにより、飲み始めから中盤にかけての香味が強く、かつ、後キレの良いビールテイスト飲料を製造できることが示された。
【0055】
【表5】