(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141654
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】アルカリ金属除去方法
(51)【国際特許分類】
B09B 3/80 20220101AFI20241003BHJP
B09B 101/30 20220101ALN20241003BHJP
【FI】
B09B3/80 ZAB
B09B101:30
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053428
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】比留間 友亮
(72)【発明者】
【氏名】辰巳 慶展
【テーマコード(参考)】
4D004
【Fターム(参考)】
4D004AA32
4D004AA33
4D004AA36
4D004AA37
4D004AB03
4D004BA02
4D004CA04
4D004CA22
4D004CA34
4D004CA40
4D004CB31
4D004CC11
4D004CC13
4D004CC20
4D004DA03
4D004DA06
4D004DA10
4D004DA20
(57)【要約】
【課題】アルカリ金属含有物に含まれるアルカリ金属を、従来よりも効率的に除去する方法を提供する。
【解決手段】この方法は、アルカリ金属含有物に、硫黄源とカルシウム源と塩素源とを一時に又は順次に混合する工程(a)と、工程(a)によってアルカリ金属含有物から水硬率が調整された状態の混合物を加熱して加熱処理物を得る工程(b)とを有する。カルシウム源は、硫黄源と同一の材料であるか、又は硫黄源とは別の材料である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ金属含有物からアルカリ金属を除去する方法であって、
前記アルカリ金属含有物に、硫黄源とカルシウム源と塩素源とを一時に又は順次に混合する工程(a)と、
前記工程(a)によって前記アルカリ金属含有物から水硬率が調整された状態の混合物を加熱して加熱処理物を得る工程(b)とを有し、
前記カルシウム源は、前記硫黄源と同一の材料であるか、又は前記硫黄源とは別の材料であることを特徴とする、アルカリ金属除去方法。
【請求項2】
前記工程(a)は、
前記アルカリ金属含有物に、前記硫黄源と前記カルシウム源を混合して、前記アルカリ金属含有物の水硬率及びSO3濃度を調整する工程(a1)と、
前記工程(a1)が実行された混合物に前記塩素源を混合する工程(a2)とを含むことを特徴とする、請求項1に記載のアルカリ金属除去方法。
【請求項3】
前記アルカリ金属含有物は、アルカリ金属を難溶性の状態で含む原料組成物を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載のアルカリ金属除去方法。
【請求項4】
前記アルカリ金属含有物は、木質バイオマス灰の飛灰、木質バイオマス灰の主灰、建設発生土、及び廃コンクリートの再生微粉からなる群に属する1種以上であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のアルカリ金属除去方法
【請求項5】
前記工程(a)は、前記工程(a)を経て得られる前記混合物の水硬率が0.2~1.0の範囲内、SO3濃度が2~10質量%の範囲内となるように調整された量で、前記硫黄源と前記カルシウム源とを投入する工程を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載のアルカリ金属除去方法。
【請求項6】
前記硫黄源は、石膏、廃石膏ボード、塩素バイパスダスト水洗残渣、塩素バイパスダスト分級粗粉、下水汚泥、下水汚泥焼却灰、ポリ硫酸鉄、硫黄含有可燃性有機廃棄物からなる群から選ばれた1種以上であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のアルカリ金属除去方法。
【請求項7】
前記カルシウム源は、CaCO3及びCaOの少なくとも一方が含有された工業原料、製紙汚泥、ペーパースラッジ焼却灰、廃コンクリート微粉、生コンクリートスラッジ、塩素バイパスダスト水洗残渣、塩素バイパスダスト分級粗粉、石膏、及び廃石膏ボードかからなる群から選ばれた1種以上であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のアルカリ金属除去方法。
【請求項8】
前記塩素源は、塩素含有可燃性廃棄物及び無機塩素化合物からなる群から選ばれた1種以上であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のアルカリ金属除去方法。
【請求項9】
前記工程(a)は、前記アルカリ金属含有物に含まれるK(カリウム)のモル量に対する、前記塩素源に含まれるClのモル量の比率である、Cl/K比が、1~4の範囲内となるように調整された量で、前記塩素源を投入する工程を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載のアルカリ金属除去方法。
【請求項10】
前記工程(b)は、600℃~1200℃の温度で加熱する工程であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のアルカリ金属除去方法。
【請求項11】
前記工程(a)は、前記工程(b)を通じて排出された排ガスから回収された、前記塩素源及び前記カルシウム源のうちの一方又は双方を混合する工程を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載のアルカリ金属除去方法。
【請求項12】
前記工程(b)は、キルン内で前記混合物を加熱する工程であり、
前記工程(a)は、前記硫黄源としての硫黄含有可燃性有機廃棄物を、前記キルンの窯前側から投入する工程を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載のアルカリ金属除去方法。
【請求項13】
前記工程(b)で得られた前記加熱処理物を水洗する工程(c)を更に含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載のアルカリ金属除去方法。
【請求項14】
前記工程(a)の前に、前記アルカリ金属含有物を粉砕する工程(d)を有し、
前記工程(a)は、粉砕された前記アルカリ金属含有物に、硫黄源とカルシウム源と塩素源とを混合する工程であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のアルカリ金属除去方法。
【請求項15】
前記工程(a)で得られた前記混合物を粉砕する工程(e)を有し、
前記工程(b)は、粉砕された前記混合物を加熱する工程であるであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のアルカリ金属除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアルカリ金属除去方法に関し、特に、アルカリ金属を含む廃棄物をセメント原料等として有効利用するためのアルカリ金属除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
経済産業大臣の非効率石炭火力のフェードアウトを受けて、石炭灰の発生数量の減少が予想されている。石炭灰は、セメント原料の粘土代替原料として利用されているが、前記の事情を受けて、今後は石炭灰が不足する可能性があることから、石炭灰に代わる粘土代替原料の確保が求められている。
【0003】
しかしながら、他の粘土代替原料には、セメント忌避成分であるアルカリ金属を高濃度で含むものが多い。このため、石炭灰に替わる材料をセメント原料として利用するためには、アルカリ金属の除去が必要となる。
【0004】
粘土代替原料に含まれるアルカリ金属(特にカリウム)は、非水溶性(難溶性)の状態で存在しているものが多い。このため、本出願人は、過去に対象物に塩素源を加えて加熱して(いわゆる、塩化焙焼)、対象物に含まれるカリウムをKClに変成して、揮発除去又は水洗除去する方法を提案している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1で提案されている方法を用いても、難溶性の状態でアルカリ金属を含む対象物から除去されるアルカリ金属の量(除去率)は、ある一定程度に留まっていた。このため、更なる改善を図るためには別途対策が必要であった。
【0007】
本発明は、上記に鑑み、対象物に含まれるアルカリ金属を、従来よりも更に効率的に除去して、セメント原料等として有効利用するための、アルカリ金属除去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意研究を重ねたところ、アルカリ金属含有物を塩化焙焼する際に、単に塩素源と共に加熱するのではなく、カルシウム源を混合した状態で塩素源と共に加熱することで、アルカリ金属の除去率を更に高めることができる点を見出した。
【0009】
更に、本発明者らの鋭意研究の結果、カルシウム源に加えて硫黄源をアルカリ金属含有物に混合した状態で、塩素源と共に加熱することで、アルカリ金属の除去率を更に高めることができること、及び、従来の塩化焙焼よりも低温での焼成でアルカリ金属の除去が可能となる点を見出した。
【0010】
すなわち、本発明は、アルカリ金属含有物からアルカリ金属を除去する方法であって、
前記アルカリ金属含有物に、硫黄源とカルシウム源と塩素源とを一時に又は順次に混合する工程(a)と、
前記工程(a)によって前記アルカリ金属含有物から水硬率が調整された状態の混合物を加熱して加熱処理物を得る工程(b)とを有し、
前記カルシウム源は、前記硫黄源と同一の材料であるか、又は前記硫黄源とは別の材料であることを特徴とする。
【0011】
本発明が適用される、処理対象としてのアルカリ金属含有物としては、アルカリ金属成分を高濃度に含有する非可燃性のアルカリ金属含有物であればよく、特に制限はない。ただし、アルカリ金属含有物は、アルカリ金属を難溶性の状態で含む原料組成物を有する場合において、本発明の方法は特に効果的である。
【0012】
アルカリ金属含有物が廃棄物である場合には、本発明の方法によって処理をすることで、廃棄物をセメント原料として有効に活用できるため、地球環境の観点で好適である。このような材料としては、例えば木質バイオマス灰の飛灰や主灰、建設発生土、及び廃コンクリートの再生微粉等が挙げられる。これらの材料は、アルカリ金属を難溶性の状態で含む。
【0013】
カルシウム源を、処理対象であるアルカリ金属含有物(以下、「対象物」と適宜略記される。)に混合することで、アルカリ金属の除去率が更に高められる理由について、本発明者らは以下のように考察している。
【0014】
塩素源と対象物との混合物を加熱する過程において、加熱温度によっては対象物の溶融や焼結が生じる。また、この過程において生じた水溶性のアルカリ金属塩化物(例えばKCl等)においても溶融状態となる。
【0015】
加熱工程が完了した後、温度が低下していく過程で、溶融した対象物は固体へと固まる。このとき、溶融状態のアルカリ金属塩化物は、表面張力の相違等に由来して、溶融した対象物の内部で凝集・結晶化する。この結果、冷却後の対象物は、水溶性のアルカリ金属塩化物を一部内包した状態となる。対象物に内包されたアルカリ金属塩化物については、その後に水洗処理を施しても効果的に除去することが難しい。
【0016】
これに対し、上記方法によれば、加熱工程(b)の前段階で対象物に対して塩素源とカルシウム源とが混合されている。この結果、加熱工程(b)により、カルシウム源に含まれるCaが、対象物の構成原子と反応してCa含有鉱物を形成する。一例として、対象物が上記に挙げた廃棄物である場合、形成されるCa含有鉱物としては、CaSiO3(ウォラストナイト)、Ca2SiO4(ビーライト)、CaAl2Si2O8(灰長石)、又はCa2Al2SiO7(ゲーレナイト)等が例示される。これらのCa含有鉱物は、廃棄物そのものよりも融点が高い。
【0017】
従って、加熱工程(b)によって対象物の少なくとも一部がCa含有鉱物に変化することにより、溶融・焼結する対象物の量が低下する。この結果、溶融状態のアルカリ金属塩が、対象物の内側に取り込まれる量を低下させることができる。このため、例えば水洗処理をして水に溶解させることで、アルカリ金属の含有率が低下した残渣を得ることができる。つまり、前記アルカリ金属除去方法は、加熱工程(b)の後、得られた前記加熱処理物を水洗する工程(c)を含むものとしても構わない。
【0018】
また、水洗処理以外の方法で、加熱処理物からアルカリ金属塩を除去(分離)しても構わない。
【0019】
ただし、加熱工程(b)の条件等によっては、対象物に含まれるアルカリ金属が、加熱工程(b)の実行によって揮発性を示す物質に変化する量が多くなることが起こり得る。この場合には、加熱後に得られた加熱処理物は、水洗等を行わなくてもアルカリ金属が充分に除去されている可能性がある。かかる観点から、本発明において水洗工程(c)は必ずしも必須ではない。
【0020】
特に、本発明に係る加熱工程(b)では、カルシウム源に加えて硫黄源が対象物に混合された状態で加熱される。この結果、対象物に含まれるアルカリ金属の一部を、揮発性の高いNa2SO4、K2SO4等の硫黄化合物に変換できる。生成された硫黄化合物は、加熱工程(b)で生成される排ガスとして対象物から脱離される。つまり、硫黄源が加えられることで、対象物に含まれるアルカリ金属から、揮発性を示す化合物に変換される量が増えるため、加熱後に得られた加熱処理物は、水洗処理を行う前の状態であっても、すでにアルカリ金属が高い割合で除去される。好ましくは、その後に水洗処理等が施されて加熱処理物からアルカリ金属塩が除去(分離)されることで、アルカリ金属の除去率は更に向上する。
【0021】
このように、加熱工程(b)の実行後に得られた加熱処理物、又はその後に水洗処理等が施された残渣は、処理前の対象物と比べて、アルカリ金属の含有率が大幅に低下しているため、石炭灰に代わるセメント原料として有効に利用できる。
【0022】
加えて、硫黄源を加えて対象物を加熱することで、硫黄源が融剤として機能し、アルカリ金属含有物の特に表面近傍をより低温で溶融させる効果が得られる。この結果、従来の塩化焙焼より低温であっても、対象物からアルカリ金属を除去する反応を進行させることが可能となる。
【0023】
かかる観点から、前記工程(b)は、600℃~1200℃の温度で加熱する工程としても構わない。この温度は、1200℃を超える温度で塩化焙焼を行っていた従来の方法よりも低温である。
【0024】
600℃未満で加熱工程(b)が行われると、温度が低いためにアルカリ金属をアルカリ金属塩に変化させにくい場合がある。また、加熱温度が1200℃を超える場合には、塩素含有物に含まれる塩素が揮発しやすくなり、アルカリ金属に対する接触量が減って反応性が低下する可能性がある。前記工程(b)が実行される温度は、800℃~1100℃とするのがより好ましい。
【0025】
このような加熱工程(b)は、例えばロータリーキルン内で実行することができる。ロータリーキルンで行うことで、混合物を撹拌しながら高温で加熱することができる。
【0026】
なお、カルシウム源と塩素源とを混合した状態で加熱することで、塩素源に含まれるClの一部が、カルシウム源に含まれるCaと反応して塩化カルシウム(CaCl2)として固定できる。CaCl2の揮発速度は、Cl2やHClと比べて低い。この結果、投入した塩素源に含まれるClのうち、対象物に含まれるアルカリ金属との反応に寄与せずに揮発する量を抑制する効果も得られる。
【0027】
カルシウム源としては、CaCO3及びCaOの少なくとも一方が含有された工業原料、製紙汚泥、ペーパースラッジ焼却灰、廃コンクリート微粉、生コンクリートスラッジ、塩素バイパスダスト水洗残渣、塩素バイパスダスト分級粗粉、石膏、及び廃石膏ボードからなる群から選ばれた1種以上を利用することができる。なお、上で列挙した材料のうち、塩素バイパスダスト水洗残渣、塩素バイパスダスト分級粗粉、石膏、及び廃石膏ボードは、硫黄源としても利用され得る。言い換えれば、工程(a)において、対象物に、塩素バイパスダスト水洗残渣及び/又は塩素バイパスダスト分級粗粉を混合することによって、対象物にカルシウム源と硫黄源の両者を混合することが可能である。
【0028】
塩素源としては、塩素含有可燃性廃棄物及び無機塩素化合物からなる群から選ばれた1種以上を利用することができる。塩素含有可燃性廃棄物としては、廃ポリ塩化ビニル等のモノマー中に有機塩素を少なくとも一つ含む廃プラスチック等が例示される。無機塩素化合物としては、CaCl2、MgCl2、PbCl2等が例示される。
【0029】
塩素源は、80mm以下の大きさとするのが好適である。この程度の大きさの塩素源を対象物に混合した状態で加熱工程(b)を行うことで、対象物に含まれる難溶性のアルカリ金属を、高い割合で水溶性塩に変化できる。塩素源の大きさが80mmよりも大きい場合、加熱工程(b)の実行中に塩素源からの塩素の揮発が十分に生じず、対象物の塩化焙焼が生じ難くなることがある。なお、ここでいう塩素源の大きさとは、篩いの目開きの大きさであって、大きさが80mm以下とは目開き80mmの篩いを通過するものを指す。
【0030】
硫黄源としては、石膏、廃石膏ボード、塩素バイパスダスト水洗残渣、塩素バイパスダスト分級粗粉、下水汚泥、下水汚泥焼却灰、ポリ硫酸鉄、硫黄含有可燃性有機廃棄物からなる群から選ばれた1種以上を利用することができる。
【0031】
前記工程(a)は、
前記アルカリ金属含有物に、前記硫黄源と前記カルシウム源を混合して、前記アルカリ金属含有物の水硬率及びSO3濃度を調整する工程(a1)と、
前記工程(a1)が実行された混合物に前記塩素源を混合する工程(a2)とを含むものとしても構わない。
【0032】
特に、硫黄源として塩素バイパスダスト水洗残渣を利用する場合、塩素バイパスダストを水洗して得られた残渣に含まれるSO3濃度やCl濃度は、水洗条件等によって影響される。このため、塩素源を混合する前の段階で、所望の水硬率及びSO3濃度となるように硫黄源及びカルシウム源の混合量を設定し、その後、好ましいCl量になるように調整された量で塩素源を混合することにより、高いアルカリ除去率が実現できる環境条件の下で塩化焙焼が行える。
【0033】
前記工程(a)は、前記工程(a)を経て得られる前記混合物の水硬率が0.2~1.0の範囲内、SO3濃度が2~10質量%の範囲内となるように調整された量で、前記硫黄源と前記カルシウム源とを投入する工程を含むものとしても構わない。
【0034】
本明細書において、水硬率は、混合物中に含まれるCaO、SiO2、Al2O3、Fe2O3の組成比に基づいて、以下の式で規定されるものとして構わない。
水硬率(HM)=(CaO[%])/{SiO2 [%]+Al2O3 [%]+Fe2O3 [%]}
なお、混合物の組成比は、蛍光X線分析法(XRF)によって得られた値を採用することができる。
【0035】
水硬率が0.2以上となるようにカルシウム源を投入することで、対象物に含まれるアルカリ金属の除去率が充分に高められる。一方で、水硬率が1.0を超える程度にカルシウム源を投入すると、加熱工程(b)で一時に加熱できる対象物の量が減少してしまう。これは、加熱工程(b)を行う燃焼炉に一時に投入できる粉体の量には制限があるためである。つまり、同一時間で、アルカリ金属を除去することのできる対象物の量が低下することになるため、処理速度が低下してしまう。
【0036】
かかる観点から、混合工程(a)においては、混合物の水硬率が0.2~1.0となるように調整された量で、カルシウム源を投入するのが好適である。
【0037】
また、混合物のSO3濃度が2質量%未満である場合には、アルカリ金属の除去率を高める効果が十分には得られない。一方で、前記SO3濃度が10質量%を超えると、工程(b)において硫黄源が機能する融剤としての作用が強まりすぎ、対象物全体が焼結・溶融するか、又は焼結・溶融が進行し過ぎることがある。この結果、塩化焙焼によって生成された、KCl、NaCl、K2SO4、Na2SO4等が揮発しにくくなり、アルカリ金属の除去率を向上する効果が十分得られなくなるおそれがある。
【0038】
かかる観点から、混合工程(a)においては、混合物のSO3濃度が2~10質量%の範囲内となるように調整された量で、硫黄源を投入するのが好適である。
【0039】
前記工程(a)は、前記廃棄物に含まれるK(カリウム)のモル量に対する、前記塩素源に含まれるClのモル量の比率である、Cl/K比が、1~4の範囲内となるように調整された量で、前記塩素源を投入する工程を含むものとしても構わない。
【0040】
上記方法によれば、対象物に含まれる難溶性のアルカリ金属の多くを効率的に水溶性塩に変化させることができる。Cl/K比の値が4を超えると、塩化焙焼に寄与しない塩素が残存してしまい、一部の塩素源を無駄にするおそれがある。更に、加熱工程(b)の実行時に排出される排ガスから、Cl及びSを回収する際に用いられる消石灰(Ca(OH)2)の量が増加して不経済となる上、加熱装置の運転上のトラブルを招くおそれもある。逆に、また、Cl/K比の値が1を下回る場合には、加熱工程(b)の完了後に得られた加熱処理物にも、依然として難溶性のアルカリ金属が一定程度含まれるおそれがある。
【0041】
前記工程(a)は、前記工程(b)を通じて排出された排ガスから回収された、前記塩素源及び前記カルシウム源のうちの一方又は双方を混合する工程を含むものとしても構わない。
【0042】
上記方法によれば、排ガス中に含まれていた塩素を含む物質、及び/又はカルシウムを含む物質を、それぞれ、塩素源及び/又はカルシウム源として再び対象物からアルカリ金属を除去する処理に利用できるため、材料費の削減や資源の有効利用に資する。
【0043】
硫黄源として硫黄含有可燃性有機廃棄物を利用する場合、加熱工程が行われるキルンの窯前側からこの硫黄源を投入するものとしても構わない。
【0044】
窯尻側から可燃性の硫黄源が投入されると、キルン内において対象物とほとんど接触されずに排ガスとして流出する硫黄源の割合が高くなる可能性がある。これに対し、可燃性の硫黄源については、窯前側から投入することにより、二次空気の流れに沿って燃焼された硫黄分がキルン内を窯尻側に向かって通流するため、この間に対象物と硫黄分とが接触し、反応効率が高まる。
【0045】
前記アルカリ金属除去方法は、前記工程(a)の前に、前記アルカリ金属含有物を粉砕する工程(d)を有し、
前記工程(a)は、粉砕された前記アルカリ金属含有物に、硫黄源とカルシウム源と塩素源とを混合する工程であるものとしても構わない。
【0046】
アルカリ金属含有物には、難溶性のアルカリ金属が全体的に満遍なく含まれていることが想定される。アルカリ金属含有物に粉砕処理が行われることで、アルカリ金属の露出面積が増加する。よって、粉砕されたアルカリ金属含有物に対して、硫黄源とカルシウム源と塩素源とを混合した後に加熱工程(b)を行うことで、塩素源に含まれるClとの反応性が向上し、より高効率でアルカリ金属塩化物に変化させることができる。
【0047】
前記工程(d)は、粉砕後の前記アルカリ金属含有物のブレーン比表面積が7,000cm2/g以下となるように粉砕する工程とするのが好適である。このブレーン比表面積は、1,000cm2/g~7,000cm2/gとするのがより好適である。
【0048】
前記アルカリ金属除去方法は、前記工程(a)で得られた前記混合物を粉砕する工程(e)を有し、
前記工程(b)は、粉砕された前記混合物を加熱する工程としても構わない。
【0049】
前記工程(b)は、大気雰囲気下で加熱する工程であっても構わないし、酸素濃度10%以下の雰囲気下で加熱する工程であるものとしても構わない。
【0050】
低酸素濃度下で加熱工程(b)を行うことで、塩素源に含まれる塩素の揮発が進行し過ぎるのが抑制され、対象物に含まれるアルカリ金属を水溶性のアルカリ金属塩化物に更に変化させやすくなる。
【発明の効果】
【0051】
本発明によれば、アルカリ金属含有物からアルカリ金属を効率的に除去できる。これにより、例えば建設発生土やバイオマス灰等の廃棄物をセメント原料等に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1】アルカリ金属含有物の処理方法の一手順を模式的に示すフローチャートである。
【
図2】
図1に示す方法を実施する装置の一例を模式的に示す図面である。
【
図3】
図1に示す方法を実施する装置の別の一例を模式的に示す図面である。
【
図4】
図2に示す装置から排出される排ガスの処理設備の一例を模式的に示す図面である。
【
図5】
図2に示す装置において、硫黄源を異なる場所から投入する場合を模式的に示す図面である。
【
図6】アルカリ金属含有物の処理方法の別の一手順を模式的に示すフローチャートである。
【
図7】
図6に示す方法を実施する装置の一例を模式的に示す図面である。
【
図8】アルカリ金属含有物の処理方法の別の一手順を模式的に示すフローチャートである。
【
図9】アルカリ金属含有物の処理方法の別の一手順を模式的に示すフローチャートである。
【
図10】
図9に示す方法を実施する装置の一例を模式的に示す図面である。
【
図11】混合物に含まれるSO
3濃度を変化させたときのK除去率への影響を対比したグラフである。
【
図12】水準#10、水準#18、及び水準#P6における加熱処理後のXRDスペクトルである。
【
図13】対象物を真砂土として加熱焼成の温度条件を異ならせたときのK除去率への影響を対比したグラフである。
【
図14】混合物の水硬率を異ならせたときのK除去率への影響を対比したグラフである。
【
図15】塩素源の量を調整して混合物のCl/Kを異ならせたときのK除去率への影響を対比したグラフである。
【
図16】対象物をバイオマス灰として加熱焼成の温度条件を異ならせたときのK除去率への影響を対比したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本発明が適用される、処理対象としてのアルカリ金属含有物としては、アルカリ金属成分を高濃度に含有する非可燃性のアルカリ金属含有物であればよく、特に制限はないが、例えば木質バイオマス灰の飛灰や主灰、建設発生土、廃コンクリートの再生微粉等の廃棄物が挙げられる。
【0054】
木質バイオマス灰は、アルカリ金属(Na,K)を塩化物、炭酸塩、硫酸塩、ケイ酸塩ガラスとして含有し、R2O換算(R2O=Na2O+0.658×K2O)で、木質バイオマス灰の飛灰では3質量%~50質量%程度、木質バイオマス灰の主灰では3質量%~20質量%程度を含んでいる。上で挙げたアルカリ金属のうち、塩化物、炭酸塩、及び硫酸塩は水溶性であり、ケイ酸塩ガラスは難溶性である。
【0055】
また、建設発生土及び廃コンクリートの再生微粉は、アルカリ金属(Na,K)を長石(曹長石、カリ長石)の形態で含有し、R2O換算で、2.5質量%~8質量%程度を含んでいる。
【0056】
本発明によれば、上記のようなアルカリ金属含有物中に含まれるアルカリ金属成分の濃度を、上記R2O換算で2.5質量%以下、より典型的には2.0質量%以下にまで低減することができる。特に、アルカリ金属含有物に含まれるカリウム(K)を50%以上除去することが可能となる。したがって、処理後のアルカリ金属含有物を、例えばセメント原料として有効利用することができる。アルカリ金属含有物中のアルカリ金属の濃度は、周知の方法で測定することができ、例えば、蛍光X線装置によるFP法、又は湿式分析(酸分解-ICP発光分光分析法)などが好ましく例示される。
【0057】
以下、本発明についてより具体的に図面を参照しつつ説明する。ただし、本発明は、これら図面とともに説明する態様に限定されるものではない。
【0058】
図1は、アルカリ金属除去方法の一手順を模式的に示すフローチャートである。また、
図2は、
図1に示すアルカリ金属除去方法を実施する装置(以下、「アルカリ金属除去装置」と称する。)の一例を模式的に示すブロック図である。
図2において、バイオマス灰や建設発生土等の固体及び水等の液体の流れを矢印付きの実線で示し、気体の流れを矢印付き破線で示している。後述する各図においても同様である。
【0059】
図1に示すように、本実施形態のアルカリ金属除去方法は、混合工程S1、混合工程S2、加熱工程S3、及び水洗工程S4を含む。また、
図2に示すアルカリ金属除去装置1は、混合装置5、混合装置6、加熱装置7、及び水洗装置9を備える。
【0060】
以下、
図1に示す各工程での処理内容につき、適宜
図2を参照しながら詳述する。
【0061】
(混合工程S1)
混合工程S1は、バイオマス灰や建設発生土等の処理対象物(以下、「対象物BT」と呼ぶ。)に対して、カルシウム源CAと硫黄源Sとを混合する工程である。
図2に示すアルカリ金属除去装置1では、混合装置5によって混合工程S1が実行される。
【0062】
例えば、
図2に示すように、対象物BTが貯留されている貯槽2から、対象物BTが混合装置5に向けて供給される。貯槽2は、混合装置5に対する対象物BTの供給量を調整できる供給装置が付設されていてもよい。
【0063】
カルシウム源CAは、カルシウム(Ca)を含んだものであれば特に限定されないが、CaCO3及びCaOの少なくとも一方が含有されているのが好ましい。また、カルシウム源CAは、入手の容易性や環境への配慮から、石灰石、生石灰、消石灰等の工業原料や、製紙汚泥、ペーパースラッジ焼却灰、下水汚泥焼却灰、廃コンクリート微粉、生コンクリートスラッジ等の廃棄物を好適に利用できる。例えば、アルカリ金属除去装置1は、図示しないカルシウム源CAの貯槽を備えており、この貯槽に貯留されたカルシウム源CAが定量的に混合装置5に対して供給されるものとしても構わない。より好適には、カルシウム源CAの貯槽には排出量調整バルブ等の排出量調整装置が付設されおり、この排出量調整装置を適切に制御することで、カルシウム源CAの供給量を調整できるものとしてもよい。
【0064】
カルシウム源CAは、Caを10質量%以上含有するのが好ましく、30質量%以上含有するのがより好ましく、50質量%以上含有するのが特に好ましい。なお、ここでいうカルシウム源CA中のCa濃度は、周知の方法で測定することができ、例えば、蛍光X線装置によるFP法及び検量線法、又は湿式分析(酸分解-ICP発光分光分析法)を利用することができる。
【0065】
カルシウム源CAは、対象物BTの水硬率を調整する目的で投入される。水硬率は、HMとも称される指標であり、対象物BTに含まれるCaO、SiO2、Al2O3、Fe2O3の組成比に基づいて、以下の式で規定されるものとして構わない。対象物の組成比は、蛍光X線分析法(XRF)によって得られた値を採用することができる。
水硬率(HM)=(CaO[%])/{SiO2 [%]+Al2O3 [%]+Fe2O3 [%]}
【0066】
混合工程S1では、対象物BTとカルシウム源CAとを含む混合物BCの水硬率が、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.2~1.0となるようにカルシウム源CAの投入量が調整される。
【0067】
カルシウム源CAは、対象物BTと混合した状態で後段の加熱工程S3が行われることで、対象物BTに含まれるSiO2やK2O・4SiO2(カリウムガラス)等のケイ素分と反応して、Ca含有鉱物を生成する目的で混合される。この観点から、カルシウム源CAは、対象物BTと良好な混合状態を形成するために、好ましくは5mm以下の大きさであり、より好ましくは3mm以下の大きさであり、特に好ましくは1mm以下の大きさである。なお、カルシウム源CAの大きさとは、カルシウム源CAが通過する最小の篩いの目開きを指す。
【0068】
上記の観点から、カルシウム源CAを貯留する貯槽の上流側に、受入れたカルシウム源CAから粗大物を除去するための分級装置や粗大物を所定の粒度にするための粉砕分級装置が付設されていてもよい。これらの分級装置や粉砕分級装置は、受入れたカルシウム源CAの状態に応じて適宜に使用するようにしてもよい。
【0069】
硫黄源Sは、硫黄(S)を含んだものであれば特に限定されないが、入手の容易性や環境への配慮から、石膏、廃石膏ボード、塩素バイパスダスト水洗残渣、塩素バイパスダスト分級粗粉、下水汚泥、下水汚泥焼却灰、ポリ硫酸鉄、硫黄含有可燃性有機廃棄物等を好適に利用できる。例えば、アルカリ金属除去装置1は、図示しない硫黄源Sの貯槽を備えており、この貯槽に貯留された硫黄源Sが定量的に混合装置5に対して供給されるものとしても構わない。より好適には、硫黄源Sの貯槽には排出量調整バルブ等の排出量調整装置が付設されおり、この排出量調整装置を適切に制御することで、硫黄源Sの供給量を調整できるものとしてもよい。
【0070】
硫黄源Sは、対象物BTのSO3濃度を調整する目的で投入される。混合工程S1では、対象物BTと硫黄源Sを含む混合物BCのSO3濃度が、好ましくは2~10質量%となるように硫黄源Sの投入量が調整される。
【0071】
硫黄源Sの混合目的は、以下の2点にある。第一の目的は、硫黄源Sと対象物BTとが混合した状態で後段の加熱工程S3が行われることで、対象物BTに含まれるアルカリ金属の一部と反応させて、揮発性の高いNa2SO4、K2SO4等の硫黄化合物を生成することにある。第二の目的は、硫黄源Sと対象物BTとが混合した状態で加熱工程S3が実行されることで、硫黄源Sを融剤として機能させてアルカリ金属含有物の特に表面近傍を従来よりも低温下で溶融させることにある。
【0072】
上記の観点から、硫黄源Sについても、カルシウム源CAと同様に、対象物BTと良好な混合状態を形成するのが好適である。具体的には、硫黄源Sは、好ましくは5mm以下の大きさであり、より好ましくは3mm以下の大きさであり、特に好ましくは1mm以下の大きさである。硫黄源Sの大きさとは、硫黄源Sが通過する最小の篩いの目開きを指す。
【0073】
ところで、硫黄源Sとして挙げた上記の材料のうち、石膏、廃石膏ボード、塩素バイパスダスト水洗残渣、塩素バイパスダスト分級粗粉については、Ca成分も含んでいる。このため、硫黄源Sとカルシウム源CAについては、同一の材料とすることも可能である。
【0074】
この場合、混合物BCのSO3濃度が上述した好適な範囲内(具体的には2~10質量%)になるように、硫黄源Sの投入量が決定された後、決定された投入量の硫黄源Sに由来するカルシウム源CAの量に基づいて、混合物BCの水硬率が算定される。そして、算定された水硬率が上述した好適な範囲(具体的には0.2以上)に達しない場合に限り、必要な量のカルシウム源CAが別途投入されるものとして構わない。このとき追加的に投入されるカルシウム源CAとしては、S分を含まない材料から選択されるものとして構わない。
【0075】
この混合工程S1が、工程(a1)に対応する。
【0076】
(混合工程S2)
混合工程S2は、上記のように水硬率が調整された混合物BCに対して、塩化焙焼に利用される塩素源CLを混合する工程である。
【0077】
塩素源CLは、塩素を含んだものであれば特に限定されないが、廃ポリ塩化ビニル等のモノマー中に有機塩素を少なくとも一つ含む廃プラスチックや、CaCl2、MgCl2、PbCl2等の無機塩素化合物が混入する可燃性廃棄物を好適に利用できる。例えば、アルカリ金属除去装置1は、図示しない塩素源の貯槽を備えており、この貯槽に貯留された塩素源CLが定量的に混合装置6に対して供給されるものとしても構わない。より好適には、塩素源CLの貯槽には排出量調整バルブ等の排出量調整装置が付設されおり、この排出量調整装置を適切に制御することで、塩素源CLの供給量を調整できるものとしてもよい。
【0078】
塩素源CLは、塩素(Cl)を0.8質量%以上含有するのが好ましく、1.2質量%以上含有するのがより好ましく、2質量%以上含有するのが特に好ましい。なお、ここでいう塩素源CL中のCl濃度は、周知の方法で測定することができ、例えば、蛍光X線装置によるFP法、又は湿式分析(エシュカ分解-イオンクロマトグラフ法)を利用することができる。
【0079】
塩素源CLは、対象物BTと混合した状態で後段の加熱工程S3が行われることで、対象物BTに含まれるアルカリ金属の塩化揮発を効率的に生じさせる目的で混合される。かかる観点から、塩素源CLは、対象物BTと良好な混合状態を形成しつつ、且つ当該塩素源CLからの塩素の揮発を生じさせやすくするために、好ましくは80mm以下の大きさであり、より好ましくは40mm以下の大きさであり、特に好ましくは10mm以下の大きさである。なお、塩素源CLの大きさとは、塩素源CLが通過する最小の篩いの目開きを指す。
【0080】
上記の観点から、塩素源CLを貯留する貯槽の上流側に、受入れた塩素源CLから粗大物を除去するための分級装置や粗大物を所定の粒度にするための粉砕分級装置が付設されていてもよい。これらの分級装置や粉砕分級装置は、受入れた塩素源CLの状態に応じて適宜に使用するようにしてもよい。
【0081】
対象物BTと塩素源CLの割合は、対象物BT中に含まれるカリウム(K)のモル量に対する、塩素源CLに含まれるClのモル量の比率である、Cl/K比が、1~4となるように、設定されるのが好ましい。なお、Cl/K比は、2~4であるのがより好ましく、2~3であるのが特に好ましい。
【0082】
Cl/K比が1を下回ると、加熱装置7内で加熱される混合物BCに含まれる塩素量が少ないために、対象物BT中のアルカリ金属成分のうち、塩素と反応できないアルカリ金属成分が多く残存してしまう場合がある。また、逆にCl/K比の値が4を超えると、揮発、散逸する塩素量が多くなって設備の腐食の進行を早めてしまう場合がある。
【0083】
なお、
図2では、混合装置6内において、対象物BTとカルシウム源CAと硫黄源Sとを含む混合物と、塩素源CLとが混合される場合が想定されているが、混合工程S2の実施態様は
図2に示す構成には限られない。例えば、
図3に示すように、塩素源CLが直接加熱装置7に投入されるものとしても構わない。この場合、加熱装置7が混合装置6を兼ねることになる。
【0084】
この混合工程S2が、工程(a2)に対応する。混合工程S1及びS2が、工程(a)に対応する。
【0085】
以下では、
図2に示すアルカリ金属除去装置1を参照して説明を続けるが、
図3のアルカリ金属除去装置1を利用する場合においても同様の説明が可能である。
【0086】
(加熱工程S3)
加熱工程S3は、混合工程S1~S2を経て得られた、対象物BT、カルシウム源CA、硫黄源S及び塩素源CLを含む混合物BCを、加熱する工程である。加熱工程S3により、対象物BTに含まれる難溶性のアルカリ金属塩が、水溶性又は揮発性のアルカリ金属塩に効率的に変化する。
図2に示すアルカリ金属除去装置1では、加熱装置7によって加熱工程S3が実行される。
【0087】
加熱装置7は、上述したように、対象物BT、カルシウム源CA、硫黄源S及び塩素源CLを一緒に加熱する。これにより、対象物BT内のアルカリ金属と塩素源CLから揮発した塩素とが反応して水溶性のアルカリ金属塩化物が生成される。更に、加熱工程S3の実行時に硫黄源Sに含まれるS分とアルカリ金属とが反応することで、揮発性の硫黄化合物が生成される。なお、加熱装置7内は高温であるため、生成されたアルカリ金属塩化物についても、少なくとも一部は揮発される。
【0088】
加熱工程S3における加熱温度は、対象物BT中のアルカリ金属と塩素源CL中の塩素による塩化焙焼を効率的に生じさせつつ、対象物BTそのものを溶融させにくくする観点から、600℃~1200℃が好ましく、800℃~1100℃がより好ましい。加熱温度が600℃未満であると塩化焙焼の反応が不十分となり、場合によっては水溶性アルカリ金属塩が生成しないか、生成効率が低くなることがある。
【0089】
ところで、カルシウム源CAを混合せずに、単に対象物BTと塩素源CLとの混合物を、1000℃以上の高温で加熱した場合には、対象物BTに焼結、粒子表面や粒子全体の溶融による大径化が生じ、これによって水溶性のアルカリ金属塩が内包される場合がある。この場合、後の水洗工程S4で水洗処理を行っても、アルカリ金属塩が水溶されずに残存してしまう。しかしながら、本実施形態では、対象物BTと塩素源CLに加えて、カルシウム源CAが混合された状態で、加熱装置7で加熱される。このような混合物BCが高温下で加熱されると、対象物BTの一部がカルシウム源CAに含まれるCa由来の鉱物を生成する。この鉱物は、対象物BTよりも融点が高いため、溶融したアルカリ金属塩が内包されるという現象が起こりにくい。この結果、後の水洗工程S4によって、アルカリ金属塩を除去する割合が高められる。
【0090】
対象物BTに含まれるアルカリ金属の存在形態によっては、より好ましい温度条件が異なる。例えば、対象物BTが建設発生土や廃コンクリートの再生微粉等である場合には、アルカリ金属が長石の形態で含まれる。また、バイオマス灰であっても、アルカリ金属が長石の形態で含まれる場合がある。長石の形態を示すアルカリ金属の存在量が多い対象物BTにカルシウム源CAのみを混合した場合には、極めて高温の下で塩化焙焼をしなければ、その効果が十分に得られない。
【0091】
しかしながら、上述したように、本実施形態の方法では、混合工程S1において対象物BTは、カルシウム源CAと共に硫黄源Sが混合されている。加熱工程S3において硫黄源Sが加熱されることで融剤として機能し、アルカリ金属含有物の表面近傍をより低温で溶融させる作用をもたらす。一方、対象物については、加熱工程S3において、カルシウム源CAに含まれるCaに由来した鉱物に変化し、この鉱物は対象物BTよりも融点が高い。よって、この加熱工程S3によれば、対象物BTの表面近傍については溶融させつつも、全体的な溶融・焼結が抑制されるため、アルカリ金属塩が対象物BTの内側に取り込まれる量を低下できる。
【0092】
このように、加熱工程S3では、対象物BTが硫黄源Sと共に加熱されるため、対象物BTが長石の形態でアルカリ金属を含む場合であっても、より低温条件下でアルカリ金属含有物の特に表面近傍を溶融することは可能である。好ましい加熱温度は600℃~1200℃であり、より好ましい加熱温度は800℃~1100℃である。
【0093】
加熱工程S3で行われる加熱時間は、加熱温度に応じて5分間~2時間の範囲内で適宜設定すればよい。この加熱時間は、対象物BT中のアルカリ金属と塩素源CL中の塩素とを十分に反応させる観点から、加熱温度が高い場合には短く、加熱温度が低い場合には長くする必要がある。具体的には、加熱温度が600℃の場合は30分間~2時間、加熱温度が800℃の場合は10分間~90分間、加熱温度が1000℃の場合は5分間~60分間とするのが好適である。
【0094】
加熱装置7内の雰囲気は、特に制限されず、酸化雰囲気でも還元雰囲気でもよい。
図2に示す例では、吸気ファン33から燃焼用の大気G1が加熱装置7内に送り込まれている。
【0095】
加熱装置7では、水溶性のアルカリ金属塩の生成反応を効率的に生じさせるために、対象物BTと塩素源CLとは十分に混合された状態で加熱されることが望ましい。かかる観点から、加熱装置7を内燃式ロータリーキルンで構成することができる。焼成炉が回転運動するロータリーキルンであれば、対象物BT、カルシウム源CA、硫黄源S、及び塩素源CLの混合及び撹拌を物理的且つ連続的に行いながら、加熱処理を行うことが可能である。
【0096】
更に、上記の観点に立てば、
図2に示すアルカリ金属除去装置1のように、対象物BT、カルシウム源CA、硫黄源S、及び塩素源CLが混合された状態の混合物BCが加熱装置7内に投入される態様がより好ましいといえる。ただし、
図3のように、塩素源CLが加熱装置7内で対象物BTと混合される態様であっても、充分に混合された後に(又は混合しながら)加熱処理が行われることで、水溶性のアルカリ金属塩の生成反応を効率的に生じさせることができる。
【0097】
加熱装置7(典型的にはロータリーキルン)における加熱雰囲気を大気G1とする場合には、加熱装置7に対して燃焼用空気としての大気G1が吸気ファン33から供給される。ロータリーキルンでは、吸気ファン33によって内燃バーナ31の燃焼用空気として用いられた大気G1が、キルン内部を混合物BCの流れに対して向流する方向に流れた後、燃焼排ガスG2としてキルン外に排出される。
【0098】
なお、加熱雰囲気を低酸素濃度の気体(例えば窒素)とする場合には、加熱装置7に対して、
図2内の大気G1に代えて低酸素濃度のガスが流入される。この低酸素濃度のガスのガス源としては、空気から酸素を分離する空気分離装置としても構わないし、他の燃焼炉からの排ガスが排出されるガス排出路としても構わない。更に、
図2に示すように、加熱装置7に対して吸気ファン33を通じて大気を流入させながら、吸気量と燃料の焚量を調整することで、加熱装置7内の雰囲気の酸素濃度を低下させるものとしても構わない。
【0099】
加熱装置7は、対象物BTと塩素源CLとの混合物を、高温で、典型的には600℃~1200℃の温度範囲で、加熱できるものであれば特に限定されず、固定炉、ストーカ炉、ロータリーキルン、流動床炉、竪型炉、多段炉等の加熱炉が使用できる。なかでも、物理的撹拌が行えるという観点からは、上記のロータリーキルンが好ましい。
【0100】
加熱装置7からは、難溶性のアルカリ金属が水溶性塩に変化した状態の対象物BT又はCa含有鉱物、カルシウム源CA、硫黄源S、及び塩素源CLの焼却残渣の混合物である、加熱処理物P1が排出される。排出された加熱処理物P1は、水洗装置9に送出される。
【0101】
ところで、塩素(Cl2)、加熱工程S3で生成された、KCl、NaCl等のアルカリ金属塩化物、及び硫黄化合物は、上記温度条件の下では揮発しやすい。このため、排ガスG2には、これらの物質が含まれ得る。よって、排ガスG2に含まれる塩素含有物質及び硫黄化合物を回収して、それぞれ塩素源CL及び硫黄源Sとして再利用することも可能である。
【0102】
例えば、
図4に示すように、排ガス塔41を通じて排出された排ガスG2は、サイクロン42を通じて、排ガスG2に含まれる粉塵Z1が取り除かれた後、気体分が配管43に導かれる。粉塵Z1は、KCl、K
2SO
4、NaCl等のアルカリ金属を含む。
【0103】
配管43を通流中の燃焼排ガスG2に対して、処理剤供給部44から処理剤ETが投入される。処理剤ETとしては、燃焼排ガスG2中に含まれる塩素含有物質(HCl、Cl2等)、及び硫黄化合物(SOx)と反応して、回収可能な物質に変換できるものであればよく、典型的にはCa(OH)2、Mg(OH)2、及びこれらの混合物(水酸化ドロマイト)等が利用できる。
【0104】
処理剤ETとしてCa(OH)2を用いた場合、排ガスG2中に含まれる塩素含有物質がCa(OH)2と反応してCaCl2、CaClOH等が生成され、排ガスG2中に含まれる硫黄化合物がCa(OH)2と反応してCaSO4、CaSO3、Ca(HSO3)2等が生成される。
【0105】
処理剤ETによって処理がされることで前記生成物が混在した排ガスG2は、バグフィルタ45を介して固気分離され、気体分が排ガスG3として排出される。この気体は、脱塩及び脱硫が施されているため、外気へと放出することが可能である。また、回収された固体分のうち、CaCl2、CaClOH等は塩素源CLとして再利用でき、未反応のCa(OH)2はカルシウム源CAとして再利用でき、CaSO4、CaSO3、Ca(HSO3)2等は硫黄源S、兼カルシウム源CAとして再利用できる。なお、処理剤ETとしてMg(OH)2を利用した場合には、同様にMgCl2等は塩素源CLとして再利用でき、MgSO4等は硫黄源Sとして再利用できる。ただし、この場合未反応のMg(OH)2は、この加熱工程S3における原料としては再利用できない。
【0106】
ところで、硫黄源Sとして硫黄を含む可燃性物(有機廃棄物)を用いる場合、
図2に示したように、ロータリーキルンで構成される加熱装置7の窯尻側からこの可燃性の硫黄源Sを投入すると、直ちに気化されて排ガス塔41を通じて排ガスG2と共に排出される可能性がある。この場合には、対象物BTと接触する時間が短くなり、硫黄源Sとしての機能を十分に発揮できない可能性がある。かかる観点から、可燃性の硫黄源Sの場合には、
図5に示すように窯前側(内燃バーナ31側)から加熱装置7に投入してもよい。これによれば、可燃性の硫黄源Sが、加熱装置7内において混合物BCの流れとは逆向きに流れる二次空気流に乗って窯尻側へ向かい、加熱装置7内において混合物BCと接触する時間が確保される。
【0107】
この加熱工程S3が、工程(b)に対応する。
【0108】
(水洗工程S4)
水洗工程S4は、加熱工程S3で得られた加熱処理物P1を水洗する工程である。この水洗工程S4により、加熱処理物P1に残存する水溶性のアルカリ金属塩が溶解除去される。
図2に示すアルカリ金属除去装置1では、水洗装置9によってこの水洗工程S4が実行される。
【0109】
この水洗工程S4で用いられる溶媒としては、水が好ましい。
【0110】
水洗装置9では、加熱装置7から供給された加熱処理物P1と水W1とを混合してスラリーLr1を生成した後、スラリーLr1の撹拌を継続して、加熱処理物P1中の水溶性のアルカリ金属塩を水に溶解させる。
【0111】
一例として、
図2に示す水洗装置9には、加熱処理物P1の供給ホッパ11、及び水W1の供給装置13が付設されている。また、水洗装置9には、加熱処理物P1と水W1の混合、並びに前記混合によって生成されたスラリーLr1を攪拌するためのスラリー攪拌装置35が付設されている。スラリー攪拌装置35は、例えば、一般的なパドル型やスクリュー型のものが好適に利用され、
図2に示す例では撹拌翼を備えている。
【0112】
供給ホッパ11の上流側に、受入れた加熱処理物P1中の大径物を適当な大きさに粉砕するための粉砕装置が付設されていてもよい。この粉砕装置は、加熱工程S3から供給された加熱処理物P1の状態に応じて適宜に使用するようにしてもよい。
【0113】
水溶性のアルカリ金属塩の水への溶解度は非常に高く、また水温を変えてもその溶解度は大きく変わらない。このため、水洗工程S4で用いられる溶媒としては、常温の水を、加熱処理物P1(以下、「水洗処理物」と称する場合がある。)の質量の3倍量以上、好ましくは4倍量以上、より好ましくは5倍量以上の量だけ用いればよい。
【0114】
水洗工程S4における、水洗処理物と水からなるスラリーLr1の撹拌時間は、10分以上が好ましく、15分以上がより好ましく、20分以上が特に好ましい。通常、水溶性アルカリ金属塩は水に非常に溶けやすいので、スラリーLr1の撹拌に特段の条件は必要とならない。
【0115】
かかる水洗工程S4によって、加熱処理物P1に残存していたアルカリ金属が水に溶解される。アルカリ金属が水に溶解された状態のスラリーLr1は、後段に設置された固液分離装置17によって、含水率が有効に低減されてセメント原料等として利用可能な固体物(ケーキC1)と排水W3とに分離される。
【0116】
スラリーLr1を固液分離装置17に輸送する際には、スラリー用渦巻きポンプ、ピストンポンプ、及び、モーノポンプ、ホースポンプ等の汎用のスラリー液用輸送装置(不図示)を用いればよい。
【0117】
固液分離装置17としては、フィルタープレス、加圧葉状濾過装置、スクリュープレス、ベルトプレス、ベルトフィルター等の汎用のろ過装置等を用いればよい。
図2に示す実施形態では、固液分離装置17がフィルタープレスで構成されている場合が図示されている。
【0118】
固液分離装置17には、洗浄水W2の供給装置15が付設されており、輸送されたスラリーLr1を、水洗処理物のケーキC1(固相)と、アルカリ金属を含む排水W3(液相)とに分離する。このとき、ケーキC1は洗浄水W2で洗浄されつつ分離される。洗浄水W2としては、常温の水を、水洗処理物の質量の3倍量以上、好ましくは4倍量以上、より好ましくは5倍量以上の量だけ用いればよい。
【0119】
固液分離装置17によって分離されたケーキC1は、アルカリ金属成分の濃度が2.0質量%以下、より典型的には1.5質量%以下、更に典型的には1.0質量%以下にまで低減されているので、セメント原料等に有効に利用できる。ここでいうアルカリ金属の濃度とは、周知の方法での分析値、例えば、蛍光X線装置によるFP法、又は湿式分析(酸分解-ICP発光分光分析法)による分析値を指す。
【0120】
この水洗工程S4が、工程(c)に対応する。
【0121】
[別実施形態]
以下、アルカリ金属除去方法の別実施形態について説明する。
【0122】
〈1〉
図6に示すように、混合工程S1の前に、対象物BTを粉砕する工程S5が実行されても構わない。この粉砕工程S5は、例えば、
図7に示す粉砕装置4で実行される。
図7は、アルカリ金属除去装置1の一部を
図1にならって模式的に示した図面であり、
図1と比べて粉砕装置4が追加されている。
【0123】
粉砕工程S5は、混合工程S1の前に、対象物BTの粒度を予め細かくするために行われる。粒度が細かくされた対象物BTは、混合工程S1においてカルシウム源CA及び硫黄源Sと共に混合される。なお、カルシウム源CA及び硫黄源Sとともに対象物BTを粉砕することで、粉砕工程S5と混合工程S1を同時に行ってもよい。
【0124】
対象物BTには、難溶性のアルカリ金属塩が全体的に満遍なく含まれていることが想定される。加熱工程S3の前に粉砕工程S5が実行されることで、アルカリ金属の露出面積が増加するため、加熱工程S3において塩素源CLに含まれる塩素との反応性が向上し、より高効率でアルカリ金属塩に変化させることができる。更に、加熱工程S3において、対象物BTに含まれるケイ素分とカルシウム源CAに含まれるカルシウムとの反応性が向上するため、Ca含有鉱物になりやすくなり、対象物BTの過度な溶融や焼結が抑制できる。
【0125】
粉砕工程S5によって粉砕された後の対象物BTのブレーン比表面積は、好ましくは7,000cm2/g以下であり、より好ましくは1,000cm2/g~7,000cm2/gであり、特に好ましくは4,000cm2/g~7,000cm2/gである。対象物BTを細かくするほど、加熱工程S3において、対象物BTに含まれるアルカリ金属と塩素源CLに含まれる塩素との反応性は向上するが、一方で対象物BT自体の溶融現象も起きやすくなる。ブレーン比表面積が7,000cm2/gを超える程度にまで対象物BTを細かくすると、加熱工程S3中に溶融が顕著に生じ、アルカリ金属塩が内包されやすくなる。
【0126】
粉砕工程S5によって粉砕された後の対象物BTの粒径の下限値は、ブレーン比表面積が7,000cm2/g以下となるような数値であればよく、例えば0.5μm以上である。対象物BTの粒径が0.5μm未満を示す程度にまで粉砕されると、後に行われる加熱工程S3において溶融・焼結されやすくなってしまう。
【0127】
粉砕装置4としては、チューブミル、竪型ローラーミル、ジョークラッシャ、ジャイレトリクラッシャ、コーンクラッシャ、インパクトクラッシャ、ロールクラッシャ及びエアロフォールミル等が好適に使用できる。
【0128】
この粉砕工程S5が、工程(d)に対応する。
【0129】
〈2〉同様の観点で、混合工程S1又は混合工程S2の実行後に、粉砕工程が行われても構わない。
図8に示すフローチャートでは、混合工程S2の実行後に粉砕工程S6が実行される場合が例示されている。粉砕工程S6は、粉砕工程S5と同様の装置で実行することができる。
【0130】
この粉砕工程S6が、工程(e)に対応する。なお、粉砕工程S5と粉砕工程S6の両者を実行しても構わない。
【0131】
〈3〉
図9に示すように、対象物BTに対して、カルシウム源CA、硫黄源S、及び塩素源CLを一時に混合しても構わない。つまり、混合工程S1が混合工程S2を兼ねても構わない。この混合工程S1は、例えば、
図10に示す混合装置5で実行される。
図10は、
図7と同様に、アルカリ金属除去装置1の一部を
図1にならって模式的に示した図面である。
【0132】
ただし、硫黄源Sとして塩素バイパスダスト水洗残渣を利用する場合、塩素バイパスダストを水洗して得られた残渣に含まれるS濃度やCl濃度は、水洗条件等によって影響される。このため、
図1を参照して上述した実施形態のように、塩素源CLを混合する前の段階で、所望の水硬率及びSO
3濃度となるように、硫黄源S及びカルシウム源CAの混合量を設定し、その後、好ましいCl量になるように調整された量で塩素源CLを混合するのが、より好ましい。
【実施例0133】
以下、本発明についてさらに詳細に説明するために具体的な試験例を示すが、本発明はこれら試験例の態様に限定されるものではない。
【0134】
(試験説明)
対象物BTに、異なる条件で各材料物(カルシウム源CA、硫黄源S、塩素源CL等)を混合させた状態で加熱工程を実行して、水洗後に得られた残渣と、処理前の対象物BTとのK濃度の対比を行った。
【0135】
対象物BTと他の材料物とを混合するに際しては、袋混合により行われた。また、上記の混合物を加熱するに際しては、アルミナるつぼに混合物を100g入れ、高速昇温電気炉(モトヤマ社製、S7-2035D-OP)にて60分間加熱焼成することで行われた。加熱処理がされた後の混合物は、4倍量の水で室温下で30分間撹拌し、得られたスラリーLr1を吸引ろ過後、スラリーLr1作成時と同量の水で洗浄、ろ過して、ケーキC1を作成した。得られたケーキC1について、Kの含有濃度を、酸分解試料のICP発光分光分析法による分析で求め、処理前と対比することでK除去率を算定した。
【0136】
対象物BT、硫黄源S、カルシウム源CA、及びCL源は、それぞれ表1に示す材料が利用された。
【0137】
【0138】
塩素バイパスダスト水洗残渣(KP水洗残渣)は、塩素バイパスダストの原粉を水洗した後に得られる残渣である。実施形態で上述したように、KP水洗残渣は、硫黄分に加えてカルシウム分も含むため、硫黄源Sであると共にカルシウム源CAでもある。ただし、KP水洗残渣(及び水洗前のKP)は、硫黄分を追加することを第一の目的として混合される点に鑑み、表1では「硫黄源S」に分類されている。また、二水石膏(CaSO4・2H2O)についても、同様の理由で表1では「硫黄源S」に分類されている。
【0139】
対象物BT及び硫黄源Sとして利用された材料の詳細は、表2及び表3に示す通りである。なお、表2及び表3に示すように、KP水洗残渣としては、水洗条件を異ならせた4パターン(SU2A、SU2B、SU2C、及びSU2D)が利用された。
【0140】
表2は、表1に示す各材料の化学組成を示す。表2では、アルカリ金属については酸分解試料のICP発光分光分析法による分析で、その他の化学成分は蛍光X線装置(リガク社製、ZSX Primus II)を用いたFP法(ファンダメンタルパラメータ法)による分析で得られた値が採用されている。表3は、表1に示す各材料の鉱物組成を示し、XRD解析結果に基づく。なお、表4では、XRD解析の結果、存在が確認されたものを「○」、微量に存在が確認されたものを「△」、存在が全く確認されなかったものを「×」と表記されている。なお、以下の各表においても、組成分析及びアルカリ金属濃度分析の方法は、上記と同様である。
【0141】
【0142】
【0143】
混合条件及び混合物の組成等は、以下の表4及び表5に示すように、混合物BC1~BC15までの15種類の混合物が準備された。ただし、表4~表5においては、塩素源CLの混合条件は規定されていない。塩素源CLの混合条件については、加熱条件と共に表6を参照して後述される。
【0144】
なお、表内における「混合物説明記号」は、便宜上、以下の規則の下で付された記号である。
【0145】
混合物説明記号は、「対象物記号-硫黄源記号-カルシウム源記号-水硬率記号」の4つの記号と必要に応じて末尾に枝番が付されて記載されている。
【0146】
「対象物記号」は、表1に示したように、混合物に用いられた対象物BTが、「真砂土」か「バイオマス」かを規定している。真砂土であれば「BT1」、バイオマスであれば「BT2」の符号が付されている。
【0147】
硫黄源記号は、表1~表3に示したように、混合物に用いられた硫黄源Sが、「KP水洗残渣」であるか「二水石膏」であるか、又は硫黄源が混合されていないかを規定している。硫黄源が「KP水洗残渣」である場合には、表2~表3に示すように、利用されたKP水洗残渣に応じた符号(SU2A、SU2B、SU2C、又はSU2D)が付されている。硫黄源が「二水石膏」である場合には、「SU3」が付されている。S源が投入されなかった場合には、Nullの頭文字を取って「N」が付されている。
【0148】
カルシウム源記号は、表1に示したように、カルシウム源CAとしてのCaCO3が混合されているか、又はCaCO3が混合されていないかを規定している。カルシウム源CAとしてのCaCO3が混合されている場合には、「C1」が付されており、CaCO3が混合されていない場合には、「N」が付されている。
【0149】
水硬率記号は、混合物BCを生成する際に、目標とされた水硬率(HM)の値の小数点以下2桁に対応する数字が規定されている。上述したように、対象物BTにカルシウム源CAを混合することで、水硬率を高めることができる。このため、混合物BCの生成に際しては、所望の水硬率が得られるように、カルシウム源CAの量が調整される。なお、表2に示したように、KP水洗残渣(SU2A、SU2B、SU2C、及びSU2D)にはCaOが含まれている。このため、カルシウム源CAとしてのCaCO3が混合されない場合においては、硫黄源SとしてのKP水洗残渣の混合量によって、水硬率の調整が可能である。混合物説明記号内の水硬率記号は、表4内のHMの項目の値に対応している。
【0150】
表4において、混合物BC9~BC12には枝番が付されている。各混合物BC9~BC12では、対象物BTの種別、硫黄源Sの種別、カルシウム源CAの種別、及び水硬率(HM)の値は全て共通に設定されているものの、硫黄源Sの混合比率が異なっている。そこで、これらを相互に区別する目的で枝番が付されている。
【0151】
例えば、混合物BC3であれば、対象物BTとしての真砂土と、硫黄源SとしてのKP水洗残渣SU2Bと、カルシウム源CAとしてのCaCO3とが混合されており、水硬率は0.35である。また、混合物BC15であれば、対象物BTとしてのバイオマス灰と、カルシウム源CAとしてのCaCO3とが混合されており、硫黄源Sは混合されておらず、水硬率は0.54である。
【0152】
【0153】
【0154】
なお、表5において、SMはケイ酸率であり、IMは鉄率である。それぞれは以下の式で算出された値が採用されている。
ケイ酸率(SM)=(SiO2 [%])/{SiO2 [%]+Al2O3 [%]+Fe2O3 [%]}
鉄率(IM)=Al2O3 [%]/Fe2O3 [%]
【0155】
上述した各混合物BC1~BC15を用い、塩素源CLの混合条件、及び加熱温度を異ならせた複数の水準(#1~#24,#P1~P11)を設定した。各水準の試験前の条件は、表6の通りである。
【0156】
【0157】
表6に示した各水準の下での混合物BCに対する加熱・水洗処理後の分析結果を表7に示す。
【表7】
【0158】
以下、実施例の結果を検証する。
【0159】
(検証1:混合物のSO3濃度とK除去率の関係について)
以下の表8は、表6~表7を一部抜粋したものである。
【0160】
【0161】
表8に示す、水準#1、#10、#15、及び#16は、混合物の構成材料、HM、Cl/K、加熱温度が全て同一であったが、加熱前における混合物のSO3濃度が相互に異なっていた。
表8に示す、水準#17~#20は、混合物の構成材料、HM、Cl/K、加熱温度が全て同一であったが、加熱前における混合物のSO3濃度が相互に異なっていた。
表8に示す、水準#1、#10、#15~#20、及び#P6は、いずれもHM、Cl/K、加熱温度が全て同一であった。
【0162】
表8に示す水準#1、#10、#15~#20、及び#P6の結果を、
図11にグラフ化して示す。
【0163】
図11によれば、HM、Cl/K、及び加熱温度を共通とした場合であっても、硫黄源Sを投入することでK除去率が向上することが確認される。
【0164】
また、水準#1、#10、#15、及び#16と、水準#17~#20とを対比すると、硫黄源Sとして、石膏よりもKP水洗残渣を混合した場合の方が、K除去率の改善効果が高いことが分かる。この結果からKP水洗残渣中のS分は、石膏のS分よりも反応性に富むと推測される。より詳細には、KP水洗残渣中のS分は、比較的低融点の反応性に富む鉱物として存在するため、対象物BT内のK分やNa分と反応してK2SO4やNa2SO4を生成し易く、これらが揮発(水洗)除去されたため、除去率が向上したものと考えられる。
【0165】
一方で、石膏に含まれるS分はKP水洗残渣に含まれるS分よりも融点が高い鉱物として存在する。このため、硫黄源Sとして石膏を用いた場合、KP水洗残渣を用いた場合と同様に、対象物BTの表面近傍に対して溶融させやすくする効果は得られるものの、硫黄源Sに含まれるS分については、KP水洗残渣と比べて反応性に乏しい。このため、部分的に溶融状態下にある対象物BTの表面近傍に、KP水洗残渣内のSO3が溶解することで液液反応が支配的となってアルカリ硫酸塩が生成される一方、S分の反応性が乏しい石膏の場合には、石膏に含まれるS分と対象物BTに含まれるアルカリ金属とは固液反応が支配的となってアルカリ硫酸塩が生成されるものと推察される。このため、硫黄源Sとアルカリ金属との反応速度に関して、KP水洗残渣の方が石膏よりも速くなったことで、KP水洗残渣の方が石膏よりもK除去率が向上したものと考えられる。
【0166】
参考のために、水準#10、#18、及び#P6における加熱処理後のXRDスペクトルを
図12に示し、比較結果を表9に示す。XRD分析によれば、硫黄源Sが投入された、水準#10及び水準#18において、K
2SO
4やNa
2SO
4は確認されなかったことから、これらの硫酸塩は揮発して除去されたものと考えられる。
【0167】
【0168】
なお、
図11によれば、原料(混合物BC)のSO
3濃度が11%と高い値を示していた水準#15、#20においては、K除去率が50%を下回った。これは、SO
3濃度が高すぎた結果、言い換えれば硫黄源Sを混合し過ぎた結果、低温焼成がより顕著となり、混合物BCがより溶融しやすい環境が形成されたことによるものと考えられる。かかる観点から、混合物BCのSO
3濃度は、2~10質量%とするのが好適であることが分かる。
【0169】
(検証2:加熱焼成温度とK除去率の関係について)
以下の表10は、表6~表7を一部抜粋したものである。
【0170】
【0171】
表10に示す、水準#6~#11は、混合物の構成材料、HM、Cl/K、加熱前における混合物のSO3濃度、K濃度は全て同一であり、加熱温度を相互に異ならせたものである。
表10に示す、水準#P2~#P7は、混合物の構成材料、HM、Cl/K、加熱前における混合物のSO3濃度、K濃度は全て同一であり、加熱温度を相互に異ならせたものである。
【0172】
なお、水準#6~#11と水準#P2~#P7とでは、混合物BCの態様が異なっている。水準#6~#11では、硫黄源SとしてKP水洗残渣SU2Bが利用され、このKP水洗残渣SU2Bがカルシウム源CAを兼ねた。一方、水準#P2~#P7では、硫黄源Sが投入されず、カルシウム源CAとしてのCaCO3が投入された。
【0173】
表10に示す水準#6~#11、及び水準#P2~#P7の結果を、
図13にグラフ化して示す。
【0174】
図13によれば、硫黄源SとしてKP水洗残渣SU2Bが混合された水準#6~#11は、硫黄源Sが混合されていない#P2~#P7と比較して、低温焼成環境下であっても高いK除去率が実現できていることが分かる。この結果は、上述したように、混合された硫黄源Sが融剤として機能し、対象物BTの特に表面近傍が比較的低温でも早期に溶融して、アルカリ金属塩化物やアルカリ金属硫化物に変化し、揮発又は水洗によって除去されたことによるものと考えられる。
【0175】
なお、
図13によれば、概ね1200℃程度までは高いK除去率が得られていることが確認される。一方で、加熱温度が1300℃を超える場合には、塩素源CLに含まれる塩素が揮発しやすくなり、アルカリ金属に対する接触量が減って反応性が低下する可能性がある。一方で、温度が400℃の場合には十分にKが除去されているとはいいにくい。かかる観点から、加熱焼成温度は、K除去率が50%以上を見込むことのできる、600℃~1200℃であるのが好ましく、800℃~1100℃がより好ましい。
【0176】
(検証3:水硬率とK除去率の関係について)
以下の表11は、表6~表7を一部抜粋したものである。
【0177】
【0178】
表11に示す、水準#2、#3、#13、及び#14は、Cl/K、加熱前における混合物のSO3濃度、及び加熱温度は共通であり、水硬率(HM)を相互に異ならせたものである。詳細には、水準#2、#3、#13、及び#14は、混合物BCに含まれるカルシウム源CAの量を異ならせることで(水準#2では投入量が0)、HMを相互に異ならせた。
【0179】
表11に示す水準#2、#3、#13、及び#14の結果を、
図14にグラフ化して示す。
【0180】
図14によれば、混合物BCの水硬率(HM)の値を上げることで、K除去率が改善することが示唆される。なお、K除去率を50%以上にする観点からは、HMは0.2以上とするのが好ましいといえる。一方で、水硬率が1.0を超える程度にカルシウム源CAを投入すると、混合物BC全体に対するカルシウム源CAの割合が高まり、対象物BTの処理速度が低下する可能性がある。これは、加熱工程(b)を行う燃焼炉に一時に投入できる粉体の量には制限があるためである。以上に鑑みると、水硬率が0.2~1.0の範囲内となるように、カルシウム源CA、及び/又はCa分を含む硫黄源Sの量を調整するのが好ましい。
【0181】
(検証4:Cl/KとK除去率の関係について)
以下の表12は、表6~表7を一部抜粋したものである。
【表12】
【0182】
表12に示す、水準#4、#5、#10、及び#12は、混合物の構成材料、HM、加熱前における混合物のSO3濃度、K濃度、及び加熱温度は全て同一であり、Cl/Kを相互に異ならせたものである。
表12に示す、水準#P1及び#P6は、混合物の構成材料、HM、加熱前における混合物のSO3濃度、K濃度、及び加熱温度は全て同一であり、Cl/Kを相互に異ならせたものである。
Cl/Kの値は、塩素源CLとしてのCaCl2の混合量を異ならせることで調整された。
【0183】
水準#4、#5、#10及び#12からなる群と、水準#P1及び#P6からなる群とでは、混合物BCの態様が異なっている。水準#4、#5、#10及び#12では、硫黄源SとしてKP水洗残渣SU2Bが利用され、このKP水洗残渣SU2Bがカルシウム源CAを兼ねており、HMが0.54となるように調整された。一方、水準#P1及び#P6では、硫黄源Sが投入されず、カルシウム源CAとしてのCaCO3が投入されることで、HMが0.54となるように調整された。
【0184】
表12に示す水準#4、#5、#10、#12、#P1、及び#P6の結果を、
図15にグラフ化して示す。
【0185】
図15によれば、混合物BCのCl/Kの値を上げることで、K除去率が改善することが示唆される。ただし、Cl/Kが高すぎると、投入された塩素源CLが対象物CTに対して多すぎることで、未反応のCl分が多くなり非効率である。よって、Cl/Kの値が1~4になるように、塩素源CLが混合されるのが好ましい。
【0186】
なお、
図15において、塩素源CLを投入していない水準#4と水準#P1を対比すると、硫黄源SとしてKP水洗残渣が投入されている水準#4の方が、わずかながらK除去率が高い。KP水洗残渣には、非水溶性のCl含有鉱物及びS含有鉱物がもともと含まれていたため、塩素源CLを別途投入しなくても、このCl含有鉱物に含まれていたCl分やS分が、対象物BTに含まれるアルカリ金属と反応して、KClやK
2SO
4が生成され、これらが揮発又は水洗で除去されたものと考えられる。一方で、水準#P1でカルシウム源CAとして投入されたCaCO
3には、Cl分やS分が含まれていない。このため、水準#P1と比べて水準#4では、少しではあるがK除去率が向上したものと考えられる。
【0187】
(検証5:対象物BTの種別とK除去率の関係について)
以下の表13は、表6~表7を一部抜粋したものである。
【表13】
【0188】
表13に示す、水準#21~#24、及び水準#P8~#P11では、いずれも対象物BTとして、バイオマス灰BT2が用いられている。
【0189】
表13に示す、水準#21~#24は、混合物の構成材料、HM、Cl/K、加熱前における混合物のSO3濃度、K濃度は全て同一であり、加熱温度を相互に異ならせたものである。
表13に示す、水準#P8~#P11は、混合物の構成材料、HM、Cl/K、加熱前における混合物のSO3濃度、K濃度は全て同一であり、加熱温度を相互に異ならせたものである。
【0190】
なお、水準#21~#24と水準#P8~#P11とでは、混合物BCの態様が異なっている。水準#21~#24では、硫黄源SとしてKP水洗残渣SU2Aが利用され、このKP水洗残渣SU2Aがカルシウム源CAを兼ねた。一方、水準#P8~#P11では、硫黄源Sが投入されず、カルシウム源CAとしてのCaCO3が投入された。
【0191】
表13に示す水準#21~#24、及び水準#P8~#P11の結果を、
図16にグラフ化して示す。
【0192】
図16によれば、硫黄源SとしてKP水洗残渣が混合された水準#21~#24は、硫黄源Sが混合されていない#P8~#P11と比較して、低温焼成環境下であっても高いK除去率が実現できていることが分かる。この結果は、上述したように、混合された硫黄源Sが融剤として機能し、対象物BTの特に表面近傍が比較的低温でも早期に溶融して、アルカリ金属塩化物やアルカリ金属硫化物に変化し、揮発又は水洗によって除去されたものと考えられる。つまり、
図16は、対象物BTを真砂土BT1とした水準同士を比較した、検証2(
図13)とほぼ同じ傾向を示していることがわかる。
【0193】
例えば、検証2の水準#6~#11で利用された混合物BC4と、本検証5の水準#21~#24で利用された混合物BC13は、表5によれば、SM、IM等の諸率が異なっている。このことは、諸率の異なる対象物BTについても同様の方法でK除去処理が行えることを意味し、広範な廃棄物に技術適用が可能であることを示唆する。