IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デンソーの特許一覧

<>
  • 特開-車載通信機及びプッシュサーバ 図1
  • 特開-車載通信機及びプッシュサーバ 図2
  • 特開-車載通信機及びプッシュサーバ 図3
  • 特開-車載通信機及びプッシュサーバ 図4
  • 特開-車載通信機及びプッシュサーバ 図5
  • 特開-車載通信機及びプッシュサーバ 図6
  • 特開-車載通信機及びプッシュサーバ 図7
  • 特開-車載通信機及びプッシュサーバ 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141656
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】車載通信機及びプッシュサーバ
(51)【国際特許分類】
   G06F 9/445 20180101AFI20241003BHJP
【FI】
G06F9/445
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053434
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】生島 佳祐
【テーマコード(参考)】
5B376
【Fターム(参考)】
5B376AE07
5B376GA07
(57)【要約】
【課題】プッシュデータの送信先である車載電子制御装置を即座に起動完了させる。
【解決手段】車載通信機4は、アプリサーバ2からプッシュデータの送信要求がプッシュサーバ3に受信されたことで当該プッシュサーバからプッシュデータを受信すると、その受信したプッシュデータを車載ECU5へ送信する。車載通信機4は、クラウド側のアプリケーションの起動直後にアプリサーバから起動開始指示がプッシュサーバへ通知されたことで当該プッシュサーバから起動開始指示が通知されると、プッシュデータの送信先である車載電子制御装置に起動処理を開始させる起動制御部4aを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アプリサーバからプッシュデータの送信要求がプッシュサーバに受信されたことで当該プッシュサーバからプッシュデータを受信すると、その受信したプッシュデータを車載電子制御装置へ送信する車載通信機(4)であって、
クラウド側のアプリケーションの起動直後に前記アプリサーバから起動開始指示が前記プッシュサーバへ通知されたことで当該プッシュサーバから起動開始指示が通知されると、プッシュデータの送信先である車載電子制御装置に起動処理を開始させる起動制御部(4a)を備える車載通信機。
【請求項2】
前記起動制御部は、プッシュデータの送信先である前記車載電子制御装置に起動処理を開始させ、プッシュデータの送信先でない車載電子制御装置に起動処理を開始させない請求項1に記載した車載通信機。
【請求項3】
前記起動制御部は、起動処理を開始させる起動対象の前記車載電子制御装置を、起動対象情報に基づいて特定する請求項1に記載した車載通信機。
【請求項4】
前記起動制御部は、前記起動対象情報を前記プッシュサーバとの間で同期させる請求項3に記載した車載通信機。
【請求項5】
前記起動制御部は、プッシュデータの送信先である前記車載電子制御装置に起動処理を低消費電力状態で開始させる請求項1に記載した車載通信機。
【請求項6】
前記車載電子制御装置が起動処理を完了すると、前記車載電子制御装置が起動処理完了した旨を示す起動完了通知を前記プッシュサーバへ通知する第1起動完了通知部(4b)を備える請求項1から5の何れか一項に記載した車載通信機。
【請求項7】
アプリサーバからのプッシュデータの送信要求を受信すると、プッシュデータを前記車載通信機へ送信するプッシュサーバ(3)であって、
クラウド側のアプリケーションの起動直後にアプリサーバから起動開始指示が通知されると、起動開始指示をプッシュデータの送信先である車載通信機へ通知する起動開始指示通知部(3a)を備えるプッシュサーバ。
【請求項8】
前記車載通信機は、前記車載電子制御装置が起動処理を完了すると、前記車載電子制御装置が起動処理を完了した旨を示す起動完了通知を前記プッシュサーバへ通知するように構成され、
前記車載通信機から起動完了通知が通知されると、起動完了通知を前記アプリサーバへ通知する第2起動完了通知部(3b)を備える請求項7に記載したプッシュサーバ。
【請求項9】
前記車載通信機から起動完了通知が通知されると、アプリケーションとの間でセッションを確立するセッション確立部(3c)を備える請求項8に記載したプッシュサーバ。
【請求項10】
前記セッション確立部によるセッションの確立に成功すると、プッシュデータを、セッションの確立に成功したアプリケーションへ直接伝達する請求項9に記載したプッシュサーバ。
【請求項11】
プッシュデータの送信先を判定する送信先判定部(3d)を備える請求項10に記載したプッシュサーバ。
【請求項12】
前記セッション確立部によるセッションの確立に失敗すると、プッシュデータを、前記車載通信機へ送信する請求項9又は10に記載したプッシュサーバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載通信機及びプッシュサーバに関する。
【背景技術】
【0002】
車両外部から車載システムのアプリケーションへアクセスする遠隔要求サービスの一つとして、プッシュデータを送信するプッシュシステムが供されている。プッシュシステムは、クラウド側にアプリサーバ及びプッシュサーバが設けられ、車両側に車載通信機及び車載電子制御装置(以下、車載ECU(Electronic Control Unit)と称する)が設けられる。プッシュサーバは、例えばスマートフォン端末等によりクラウド側のアプリケーションが起動され、アプリサーバからプッシュデータの送信要求を受信すると、プッシュデータを車載通信機へ送信する。車載通信機は、プッシュサーバから送信されたプッシュデータを車載ECUへ送信し、車載ECUに搭載されている車載システム側のアプリケーションへプッシュデータを伝達する(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-192953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プッシュデータが車載システム側のアプリケーションへ伝達されるには当該車載ECUが起動処理を完了して起動済みであることが必要であるが、ECU構成や機能配置等によっては車載ECUが起動処理を開始してから完了するまでに要する起動時間が長くなる虞がある。そのため、車載通信機がプッシュサーバから送信されたプッシュデータの受信を契機として車載ECUに起動処理を開始させる構成では、車載通信機がプッシュデータを車載ECUへ送信するタイミングでは当該車載ECUが起動済みでない可能性がある。そうなると、遠隔要求サービスを即座に提供することが困難となり、サービス性及び商品性に劣る。
【0005】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、プッシュデータの送信先である車載電子制御装置を即座に起動させることができ、サービス性及び商品性を高めることができる車載通信機及びプッシュサーバを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載した車載通信機(4)によれば、アプリサーバからプッシュデータの送信要求がプッシュサーバに受信されたことで当該プッシュサーバからプッシュデータを受信すると、その受信したプッシュデータを車載電子制御装置へ送信する。起動制御部(4a)は、クラウド側のアプリケーションの起動直後にアプリサーバから起動開始指示がプッシュサーバへ通知されたことで当該プッシュサーバから起動開始指示が通知されると、プッシュデータの送信先である車載電子制御装置に起動処理を開始させる。
【0007】
プッシュサーバから起動開始指示が通知されると、車載電子制御装置に起動処理を開始させるようにした。クラウド側のアプリケーションが起動すると、プッシュデータの送信先である車載電子制御装置に起動処理を即座に開始させることで、プッシュデータの送信先である車載電子制御装置を即座に起動完了させることができる。車載通信機がプッシュデータを車載電子制御装置へ送信するタイミングで当該車載電子制御装置が起動済みでない可能性を低減し、車載電子制御装置に搭載されている車載システム側のアプリケーションを即座に起動させることができ、サービス性及び商品性を高めることができる。
【0008】
請求項7に記載したプッシュサーバ(3)によれば、アプリサーバからのプッシュデータの送信要求を受信すると、プッシュデータを車載通信機へ送信する。起動開始指示通知部(3a)は、クラウド側のアプリケーションの起動直後にアプリサーバから起動開始指示が通知されると、起動開始指示をプッシュデータの送信先である車載通信機へ通知する。
【0009】
クラウド側のアプリケーションの起動直後にアプリサーバから起動開始指示が通知されると、起動開始指示をプッシュデータの送信先である車載通信機へ通知するようにした。クラウド側のアプリケーションが起動すると、プッシュデータの送信先である車載電子制御装置に起動処理を即座に開始させることで、プッシュデータの送信先である車載電子制御装置を即座に起動完了させることができる。車載通信機がプッシュデータを車載電子制御装置へ送信するタイミングで当該車載電子制御装置が起動済みでない可能性を低減し、車載電子制御装置に搭載されている車載システム側のアプリケーションを即座に起動させることができ、サービス性及び商品性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態を示し、プッシュシステムの全体構成を示す図
図2】車載通信機及びプッシュサーバの機能ブロック図
図3】シーケンス図
図4】第2実施形態を示すシーケンス図
図5】第3実施形態を示すシーケンス図
図6】第4実施形態を示し、車載通信機及びプッシュサーバの機能ブロック図
図7】シーケンス図
図8】シーケンス図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、複数の実施形態について図面を参照して説明する。複数の実施形態において共通する部分については説明を省略することがある。
【0012】
(第1実施形態)
第1実施形態について図1から図3を参照して説明する。図1に示すプッシュシステム1は、クラウド側に設けられているアプリサーバ2及びプッシュサーバ3と、車両側に設けられている車載通信機4及び車載ECU5とを備える。車載ECU5には遠隔要求サービスを実現するための車載システム側のアプリケーション6が搭載されている。プッシュシステム1は、例えばスマートフォン端末等によりクラウド側のアプリケーションが起動されると、アプリサーバ2から車載システム側のアプリケーション6へのプッシュデータの送信を可能にするシステムである。
【0013】
例えばユーザが遠隔による乗車前のエアコン開始や乗車後のドアロック等のアプリケーションをスマートフォン端末により起動させて所定操作を行うと、エアコン開始やドアロックを命令するプッシュデータの送信要求がアプリサーバ2からプッシュサーバ3へ送信され、プッシュデータが車載通信機4を経由して車載ECU5へ送信され、エアコン開始やドアロック等を実現させる車載システム側のアプリケーション6へ伝達される。
【0014】
図1では、クラウド側において、複数のアプリサーバ2に対して一つのプッシュサーバ3が設けられている構成を例示しているが、複数のアプリサーバ2に対して複数のプッシュサーバ3が設けられている構成であっても良い。又、車両側において、複数の車載ECU5に対して一つの車載通信機4が設けられている構成を例示しているが、複数の車載ECU5に対して複数の車載通信機4が設けられている構成であっても良い。
【0015】
プッシュシステム1にはオートモーティブ無線通信プラットフォーム7が採用されている。オートモーティブ無線通信プラットフォーム7は、クラウド側のACPクラウド8及び車両側のACPエンジン9により機能が実現され、いつでも、どこでも、アプリサーバ2とアプリケーション6との間のセキュアな接続を可能にする。詳述すると、車載ECU5は、例えば車両が駐車中の場合には電源がオフ状態となり、電源状態が互いに異なっている。又、各車両では車載ECU5を含むシステム構成が互いに異なっている。オートモーティブ無線通信プラットフォーム7は、このような車載ECU5の電源状態の違い及び各車両のシステム構成の違いをアプリサーバ2側から隠蔽する。その結果、車両毎の単位で全ての車載ECU5があたかも車外のネットワークに常時接続されているような擬似的な常時接続が実現可能となる。
【0016】
以下、オートモーティブ無線通信プラットフォーム7が搭載されるクラウド側のシステム及び車両側の車載システムについて説明する。
(1)クラウド側のシステム
最初に、車両側の車載システムについて説明する。アプリサーバ2は、プッシュデータの送信要求元として機能するサーバである。アプリサーバ2は、アプリケーション6を識別するアプリID及びトークンの少なくとも一方を管理する。アプリサーバ2は、プッシュデータの送信要求をプッシュサーバ3へ送信する場合に、アプリケーション6へ送信するメッセージ本体と共に、アプリID又はトークンを要求情報として提供する。アプリサーバ2は、要求情報としてトークンを用いる場合には、プッシュデータの送信先と対応付けられたトークンを読み出す。トークンは、プッシュサーバ3及び車載システム等においてプッシュデータの送信先を決定するキー情報となる。
【0017】
プッシュサーバ3は、プッシュデータの送信元であり、オートモーティブ無線通信プラットフォーム7のクラウド側の機能を実現するACPクラウド8の構成を含む。プッシュサーバ3は、プロセッサ10と、RAM11と、記憶媒体12とを有するマイクロコントローラを主体として備える。プッシュサーバ3は、記憶媒体12に格納されている制御プログラムをプロセッサ10により実行して各種動作を行い、オートモーティブ無線通信プラットフォーム7のクラウド側の機能を実現する。
【0018】
プッシュサーバ3は、移動体通信網を介した無線通信による通信回線を車載通信機4との間で接続し、通信回線を接続している状態でプッシュデータを車載通信機4へ送信可能である。移動体通信網は、例えば携帯電話網、Wi-Fi(登録商標)及びV2X(Vehicle-to-Anything)等を含む。プッシュサーバ3は、アプリサーバ2からプッシュデータの送信要求を受信すると、プッシュデータの送信先となる車載通信機4を選択し、プッシュデータを当該送信先として選択した車載通信機4へ送信する。
【0019】
プッシュサーバ3は、TLS(Transport Layer Security)処理等により通信相手の認証、通信内容の暗号化及び改竄の検出等の機能を提供すると共に、TCP/IP、UDP/IP及びこれら以外のプロトコルを用いたデータ通信の機能を提供し、アプリサーバ2及び車載通信機4との間のセキュアなデータ通信を可能とする。
【0020】
プッシュサーバ3は、プッシュデータの送信を所定時間内においてリトライすることが可能である。プッシュデータを送信する場合に、車載システムの応答が直ちに必要なシーンと、プッシュデータが通知先に届けば良いシーンとが存在し、要求されるレスポンスに応じたリトライ期限が設定される。プッシュサーバ3は、プッシュデータの送信が失敗すると、プッシュデータの内容に応じて設定されたリトライ期限に基づいてリトライ期限の経過前となる所定時間内においてプッシュデータの送信をリトライする。プッシュサーバ3は、プッシュデータの送信が失敗したままリトライ期限が経過すると、プッシュデータの送信に失敗したと判定し、プッシュデータの送信のリトライを終了する。
【0021】
(2)車両側の車載システム
次に、車両側の車載システムについて説明する。車載通信機4は、TCU(Telematics Control Unit)又はDCM(Data Communication Module)等と呼称され、プッシュデータの送信先であり、オートモーティブ無線通信プラットフォーム7の車両側の機能を実現するACPエンジン9の構成を含む。車載通信機4は、プロセッサ13と、RAM14と、記憶媒体15とを有するマイクロコントローラを主体として備える。車載通信機4は、記憶媒体15に格納されている制御プログラムをプロセッサ13により実行して各種動作を行い、オートモーティブ無線通信プラットフォーム7の車両側の機能を実現する。
【0022】
車載通信機4は、車内ネットワークを通じて複数の車載ECU5と接続されている。車内ネットワークは、例えばイーサーネット(Ethernet)(登録商標)、CAN(Controller Area Network)(登録商標)、FLEXRAY(登録商標)、CXPI(Clock Extension Peripheral Interface)(登録商標)、LIN(Local. Interconnect Network)等である。車内ネットワークは、パワートレイン系、シャシ系、ボディ系、マルチメディア系、安全系等の系統毎に設けられている。
【0023】
車載通信機4は、移動体通信網を介した無線通信による通信回線をプッシュサーバ3との間で接続し、通信回線を接続している状態で車載通信機4からプッシュデータを受信可能である。車載通信機4は、プッシュサーバ3からプッシュデータを受信すると、送信先となる車載ECU5を選択し、プッシュデータを当該送信先として選択した車載ECU5へ送信する。
【0024】
車載通信機4は、TLS処理等により通信相手の認証、通信内容の暗号化及び改竄の検出等の機能を提供すると共に、TCP/IP、UDP/IP及びこれら以外のプロトコルを用いたデータ通信の機能を提供する。車載通信機4とプッシュサーバ3との間及び車載通信機4と車載ECU5との間は、それぞれセキュアなデータ通信を可能とする場合がある。
【0025】
車載通信機4は、例えば駐車中等であり、車両の主電源がオフ、具体的には、所謂イグニッションがオフの状態である場合でも、通信ネットワークに接続されたオンラインの状態を維持可能である。車載通信機4は、プッシュサーバ3との間での無線通信を介した接続状態と、車内ネットワークにおけるプッシュデータの送信の進捗状態とを監視する。車載通信機4は、プッシュサーバ3と連携し、車載通信機4とプッシュサーバ3との間の相互接続確認を可能にする。車載通信機4とプッシュサーバ3との間の相互接続確認は死活監視と称する場合もある。
【0026】
車載通信機4は、プッシュデータが送信先に到達しなかった場合には、プッシュデータの送信の失敗を当該失敗と対応付けられる理由情報と共へ送信元へ通知する。一例として、車載通信機4は、プッシュデータの送信先となるアプリケーション6又は車載ECU5が車内ネットワークに存在しない場合には、このような理由情報と対応付けてプッシュデータの送信の失敗を送信元であるプッシュサーバ3へ通知する。
【0027】
車載通信機4は、プッシュデータの送信先となる車載ECU5に関するECU情報として送信先情報及びステータス情報を特定する。送信先情報は宛先情報と称する場合もある。送信先情報は、複数の車載ECU5の中からプッシュデータの送信先となる車載ECU5を特定可能な情報である。車載通信機4は、アプリID又はトークンを参照して送信先情報を取得する。ステータス情報は、送信先として特定された車載ECU5の電源状態(オンオフ状態)を特定可能な情報である。詳述すると、ここでの電源オフの状態とは、イグニッションのオフ等により車載ECU5が起動状態から休止状態等に遷移した状態である。このとき、車載ECU5は、低消費電力で起動要求を受信可能である一方、データ通信が不能な状態となる。車載通信機4は、ステータス情報に基づいて送信先として特定した車載ECU5の電源がオフ状態である場合に、当該車載ECU5を起動させて電源をオン状態(起動状態)にする起動処理を行う。
【0028】
車載ECU5は、一つ又は複数のアプリケーション6を搭載しており、アプリケーションを実行可能である。車載ECU5は、プロセッサ(図示せず)と、RAM(図示せず)と、記憶媒体(図示せず)とを有するマイクロコントローラを主体として備える。車載ECU5は、記憶媒体に格納されている制御プログラムをプロセッサにより実行して各種動作を行い、プッシュサーバ3から送信されるプッシュデータの最終的な送信先となるエンドECUとして動作する。車載ECU5は、車載通信機4から送信されたプッシュデータを受信すると、プッシュデータと対応付けられているアプリID又はトークンと一致する登録情報を特定し、複数のアプリケーション6の中からプッシュデータの伝達先となるアプリケーション6を特定し、プッシュデータを当該伝達先として特定したアプリケーション6へ伝達する。
【0029】
車載ECU5は、暗号処理機能を提供し、車載通信機4とアプリケーション6との間のセキュアなデータ通信を可能とする。車載ECU5は、車載通信機4とは異なり、車両の電源がオフ状態である場合には、消費電力抑制のために原則的にオフ状態とされる。このとき、車載ECU5は、通信ネットワークへの接続も切断された状態となる。尚、一部の車載ECU5には、アプリケーション6が搭載されていなくても良い。又、車載通信機4は、車載ECU5を兼ねる構成として車載システムに設けられ、アプリケーション6を搭載可能であっても良い。
【0030】
上記した構成では、前述したように、車載通信機4がプッシュサーバ3から送信されたプッシュデータの受信を契機として車載ECU5に起動処理を開始させる構成では、車載通信機4がプッシュデータを車載ECU5へ送信するタイミングでは当該車載ECU5が起動済みでない可能性がある。この点に関し、本実施形態では、車載通信機4及びプッシュサーバ3は、それぞれ以下に示す機能を備える。
【0031】
図2に示すように、車載通信機4は、起動制御部4aと、第1起動完了通知部4bとを備える。起動制御部4aは、プッシュサーバ3から起動開始指示が通知されると、プッシュデータの送信先である車載ECU5に起動処理を低消費電力状態で開始させる。このとき、起動制御部4aは、プッシュデータの送信先でない車載ECU5に起動処理を開始させない。第1起動完了通知部4bは、車載ECU5が起動完了した旨を示す起動完了通知が通知されると、起動完了通知をプッシュサーバ3へ通知する。
【0032】
プッシュサーバ3は、起動開始指示通知部3aと、第2起動完了通知部3bとを備える。起動開始指示通知部3aは、クラウド側のアプリケーションの起動直後にアプリサーバ2から起動開始指示が通知されると、起動開始指示をプッシュデータの送信先である車載通信機4へ通知する。第2起動完了通知部3bは、車載通信機4から起動完了通知が通知されると、起動完了通知をアプリサーバ2へ通知する。
【0033】
上記した構成の作用について図3を参照して説明する。
アプリサーバ2は、例えばユーザがスマートフォン端末においてスマフォアプリの起動操作を行ったことを特定すると(A1)、起動開始指示をプッシュサーバ3へ通知する(S1)。プッシュサーバ3は、アプリサーバ2から起動開始指示が通知されると、起動開始指示を車載通信機4へ通知する(S2)。車載通信機4は、プッシュサーバ3から起動開始指示が通知されると、起動開始指示をプッシュデータの送信先である車載ECU5へ通知する(S3)。即ち、車載通信機4は、起動開始指示をプッシュデータの送信先である車載ECU5を特定することで、プッシュデータの送信先である車載ECU5に対してだけ起動開始指示を通知し、プッシュデータの送信先でない車載ECU5に対しては起動開始指示を通知しない。
【0034】
車載ECU5は、車載通信機4から起動開始指示が通知されると、スリープ状態から低消費電力状態へ移行して起動処理を開始する(B1)。車載ECU5は、起動処理を完了すると(B2:YES)、自機が起動処理完了した旨を示す起動完了通知を車載通信機4へ通知する(S4)。車載通信機4は、車載ECU5から起動完了通知が通知されると、起動完了通知をプッシュサーバ3へ通知する(S5)。プッシュサーバ3は、車載通信機4から起動完了通知が通知されると、起動完了通知をアプリサーバ2へ通知する(S6)。
【0035】
アプリサーバ2は、例えばユーザが遠隔要求サービスの所定操作を行ったことを特定すると(A2)、プッシュデータの送信要求をプッシュサーバ3へ送信する(S7)。プッシュサーバ3は、アプリサーバ2から送信されたプッシュデータの送信要求を受信すると、プッシュデータを車載通信機4へ送信する(S8)。車載通信機4は、プッシュサーバ3から送信されたプッシュデータを受信すると、プッシュデータを車載ECU5へ送信する(S9)。車載ECU5は、車載通信機4から送信されたプッシュデータを受信すると、プッシュデータを当該プッシュデータに対応するアプリケーション6へ伝達し、アプリケーション6を起動させ、プッシュデータに対応する遠隔要求サービスの制御を行う(B3)。
【0036】
以上に説明したように第1実施形態によれば、次に示す作用効果を得ることができる。車載通信機4において、プッシュサーバ3から起動開始指示が通知されると、車載ECU5に起動処理を開始させるようにした。クラウド側のアプリケーションが起動すると、プッシュデータの送信先である車載ECU5に起動処理を即座に開始させることで、プッシュデータの送信先である車載ECU5を即座に起動完了させることができる。車載通信機4がプッシュデータを車載ECU5へ送信するタイミングで当該車載ECU5が起動済みでない可能性を低減し、車載ECU5に搭載されている車載システム側のアプリケーションを即座に起動させることができ、サービス性及び商品性を高めることができる。
【0037】
プッシュサーバ3において、クラウド側のアプリケーションの起動直後にアプリサーバ2から起動開始指示が通知されると、起動開始指示をプッシュデータの送信先である車載通信機4へ通知するようにした。クラウド側のアプリケーションが起動すると、プッシュデータの送信先である車載ECU5に起動処理を即座に開始させることで、プッシュデータの送信先である車載ECU5を即座に起動完了させることができる。車載通信機4がプッシュデータを車載ECU5へ送信するタイミングで当該車載ECU5が起動済みでない可能性を低減し、車載ECU5に搭載されている車載システム側のアプリケーションを即座に起動させることができ、サービス性及び商品性を高めることができる。
【0038】
(第2実施形態)
第2実施形態について図4を参照して説明する。車載通信機4において、起動制御部4aは、起動処理を開始させる起動対象の車載ECU5を特定可能な起動対象情報を保持しており、起動処理を開始させる起動対象の車載ECU5を起動対象情報に基づいて特定する。プッシュサーバ3は、プッシュデータを起動対象情報に基づいて特定した車載ECU5へ送信する。
【0039】
上記した構成の作用について参照して説明する。
車載通信機4は、例えば車両メーカにより予め設定される起動対象情報を保持している(C1)。車載通信機4は、プッシュサーバ3から起動開始指示が通知されると、起動対象情報を参照し、起動処理を開始させる起動対象の車載ECU5を起動対象情報に基づいて特定する(C2)。車載通信機4は、起動対象情報に基づいて特定した車載ECU5をプッシュデータの送信先として特定し、起動開始指示をプッシュデータの送信先である車載ECU5へ通知する(S3)。これ以降、第1実施形態と同様の処理を行う。
【0040】
以上に説明したように第2実施形態によれば、起動処理を開始させる起動対象の車載ECU5を起動対象情報に基づいて特定し、起動対象情報に基づいて特定した車載ECU5をプッシュデータの送信先として特定し、起動開始指示をプッシュデータの送信先である車載ECU5へ通知するようにした。サービス性及び商品性を高めることと、車両消費電力を低減することとのトレードオフの関係を両立させることができる。
【0041】
例えばバッテリ容量が小さい安価なコンパクトカーや軽自動車等の充電不足のリスクが比較的高い車両では不要な車両消費電力の抑制したいニーズが高い。例えばドアロック等の即時性が求められるアプリケーションのみを起動対象情報に起動対象として登録しておき、エアコン開始等の即時性が求められないアプリケーションを起動対象から除外しておくことで、車両消費電力を抑制しつつも即時性が求められるアプリケーションを優先的に起動させることができる。
【0042】
一方、例えば充電設備が整備されている環境下の電気自動車等の車両では不要な車両消費電力を抑制したいニーズがそれほど高くない。例えばドアロック等の即時性が求められるアプリケーションのみでなく、エアコン開始等の即時性が求められないアプリケーションも起動対象情報に起動対象として登録しておくことで、即時性が求められるか否かに関係なく多くのアプリケーションを一斉に起動させることができる。
【0043】
(第3実施形態)
第2実施形態について図5を参照して説明する。車載通信機4において、起動制御部4aは、起動対象情報をプッシュサーバ3との間で同期させる。
上記した構成の作用について参照して説明する。
【0044】
プッシュサーバ3は、起動対象情報を保持しており(D1)、起動対象情報を更新すると(D2)、起動対象情報を車載通信機4へ送信する(S10)。車載通信機4は、プッシュサーバ3から送信された起動対象情報を受信すると、保持している起動対象情報を更新し(C3)、起動対象情報をプッシュサーバ3との間で同期させる。これ以降、第2実施形態と同様の処理を行う。
【0045】
以上に説明したように第3実施形態によれば、起動対象情報を車載通信機4とプッシュサーバ3との間で同期させるようにした。サービス性及び商品性を高めることと、車両消費電力を低減することとのトレードオフの関係を車両やユーザのニーズにしたがって自在に変更することができ、利便性を高めることができる。
【0046】
例えば通常使用時では車両消費電力を抑制したいニーズがそれほど高くない車両が遠方に走行する場合では、航続距離を確保するために車両消費電力を抑制したいニーズが発生する。プッシュサーバ3に保持されている起動対象情報を更新し、起動対象情報を車載通信機4とプッシュサーバ3との間で同期させることで、使用環境の変化に柔軟に対応することができる。
【0047】
(第4実施形態)
第4実施形態について図6から図8を参照して説明する。プッシュサーバ3は、起動開始指示通知部3aと、第2起動完了通知部3bとに加え、セッション確立部3cと、送信先判定部3dとを備える。
【0048】
セッション確立部3cは、車載通信機4から起動完了通知が通知されると、アプリケーション6との間でセッションを確立する。送信先判定部3dは、プッシュデータの送信先を判定する。
【0049】
上記した構成の作用について図7から図8を参照して説明する。
プッシュサーバ3は、車載通信機4から起動完了通知が通知されると、アプリケーション6との間でセッションを確立する。プッシュサーバ3は、アプリケーション6との間でセッションの確立を管理し、セッションの確立正否を判定する。プッシュサーバ3は、図7に示すように、アプリケーション6との間でセッションの確立成功を判定し(D3)、アプリサーバ2から送信されたプッシュデータの送信要求を受信すると、プッシュデータの送信先を判定し(D4)、プッシュデータを、セッションの確立に成功したアプリケーション6へ直接伝達する(S11)。
【0050】
一方、プッシュサーバ3は、図8に示すように、アプリケーション6との間でセッションの確立失敗を判定し(D5)、アプリサーバ2から送信されたプッシュデータの送信要求を受信すると、プッシュデータを車載通信機4へ送信する(S12)。車載通信機4は、プッシュサーバ3から送信されたプッシュデータを受信すると、プッシュデータを車載ECU5へ送信する(S13)。車載ECU5は、車載通信機4から送信されたプッシュデータを受信すると、プッシュデータを当該プッシュデータに対応するアプリケーション6へ伝達し、アプリケーション6を起動させ、プッシュデータに対応する遠隔要求サービスの制御を行う(B3)。
【0051】
以上に説明したように第4実施形態によれば、プッシュデータの送信先であるアプリケーションとプッシュサーバ3との間でセッションを確立するようにした。プッシュデータをプッシュサーバ3から車載ECU5へ直接送信し、車載通信機4の処理を省くことで、プッシュサーバ3から車載ECU5までのプッシュデータの送信に要する送信時間を短縮することができ、即時性を高めることができる。
【0052】
(その他の実施形態)
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、更には、それらに一要素のみ、それ以上、或いはそれ以下を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0053】
実施形態において、プッシュササーバ3及び車載通信機4により提供される各機能は、ソフトウェア及びそれを実行するハードウェア、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、又はそれらの複合的な組み合わせによっても提供可能である。更に、このような機能がハードウェアとしての電子回路により提供される場合に、各機能は、多数の論理回路を含むデジタル回路、又はアナログ回路によっても提供可能である。
【0054】
プッシュサーバ3のプロセッサ10及び車載通信機4のプロセッサ13は、それぞれCPU(Central Processing Unit)等の演算コアを少なくとも一つ含む構成である。各プロセッサ10,13を含む処理回路は、FPGA(Field-Programmable Gate Array)及びASIC(Application-Specific Integrated Circuit)を主体とした構成であっても良い。
【0055】
プッシュサーバ3の記憶媒体12及び車載通信機4の記憶媒体15は、それぞれ不揮発性の記憶媒体を含む構成である。各記憶媒体12,15の形態は、適宜変更されても良く、例えば各記憶媒体12,15は、回路基板上に設けられた構成に限定されず、メモリカード等の形態で提供され、スロット部に挿入されることでプッシュサーバ3及び車載通信機4の処理回路に電気的に接続される構成であって良い。更に、各記憶媒体12,15は、プログラムのコピー基となる光学ディスクやハードディスクドライブ等であっても良い。
【0056】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することにより提供された専用コンピュータにより実現されても良い。或いは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によりプロセッサを構成することにより提供された専用コンピュータにより実現されても良い。若しくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路により構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより実現されても良い。又、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていても良い。
【0057】
本開示は、特許請求の範囲に記載の発明に加え、以下のような発明を含む。
[1]
アプリサーバからプッシュデータの送信要求がプッシュサーバに受信されたことで当該プッシュサーバからプッシュデータを受信すると、その受信したプッシュデータを車載電子制御装置へ送信する車載通信機(4)であって、
クラウド側のアプリケーションの起動直後に前記アプリサーバから起動開始指示が前記プッシュサーバへ通知されたことで当該プッシュサーバから起動開始指示が通知されると、プッシュデータの送信先である車載電子制御装置に起動処理を開始させる起動制御部(4a)を備える車載通信機。
【0058】
[2]
前記起動制御部は、プッシュデータの送信先である前記車載電子制御装置に起動処理を開始させ、プッシュデータの送信先でない車載電子制御装置に起動処理を開始させない[1]に記載した車載通信機。
【0059】
[3]
前記起動制御部は、起動処理を開始させる起動対象の前記車載電子制御装置を、起動対象情報に基づいて特定する[1]又は[2]に記載した車載通信機。
【0060】
[4]
前記起動制御部は、前記起動対象情報を前記プッシュサーバとの間で同期させる[3]に記載した車載通信機。
【0061】
[5]
前記起動制御部は、プッシュデータの送信先である前記車載電子制御装置に起動処理を低消費電力状態で開始させる[1]から[4]の何れか一項に記載した車載通信機。
【0062】
[6]
前記車載電子制御装置が起動処理を完了すると、前記車載電子制御装置が起動処理完了した旨を示す起動完了通知を前記プッシュサーバへ通知する第1起動完了通知部(4b)を備える[1]から[5]の何れか一項に記載した車載通信機。
【0063】
[7]
アプリサーバからのプッシュデータの送信要求を受信すると、プッシュデータを前記車載通信機へ送信するプッシュサーバ(3)であって、
クラウド側のアプリケーションの起動直後にアプリサーバから起動開始指示が通知されると、起動開始指示をプッシュデータの送信先である車載通信機へ通知する起動開始指示通知部(3a)を備えるプッシュサーバ。
【0064】
[8]
前記車載通信機は、前記車載電子制御装置が起動処理を完了すると、前記車載電子制御装置が起動処理を完了した旨を示す起動完了通知を前記プッシュサーバへ通知するように構成され、
前記車載通信機から起動完了通知が通知されると、起動完了通知を前記アプリサーバへ通知する第2起動完了通知部(3b)を備える[7]に記載したプッシュサーバ。
【0065】
[9]
前記車載通信機から起動完了通知が通知されると、アプリケーションとの間でセッションを確立するセッション確立部(3c)を備える[7]又は[8]に記載したプッシュサーバ。
【0066】
[10]
前記セッション確立部によるセッションの確立に成功すると、プッシュデータを、セッションの確立に成功したアプリケーションへ直接伝達する[7]から[9]の何れか一項に記載したプッシュサーバ。
【0067】
[11]
プッシュデータの送信先を判定する送信先判定部(3d)を備える[10]に記載したプッシュサーバ。
【0068】
[12]
前記セッション確立部によるセッションの確立に失敗すると、プッシュデータを、前記車載通信機へ送信する請求項[9]又は[10]に記載したプッシュサーバ。
【符号の説明】
【0069】
図面中、1はプッシュシステム、2はアプリサーバ、3はプッシュサーバ、3aは起動開始指示通知部、3bは第2起動完了通知部、3cはセッション確立部、3dは送信先判定部、4は車載通信機、4aは起動制御部、4bは第1起動完了通知部、5は車載ECU、6はアプリケーションである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8