IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立国際電気の特許一覧

<>
  • 特開-放送送信機の異常検出システム 図1
  • 特開-放送送信機の異常検出システム 図2
  • 特開-放送送信機の異常検出システム 図3
  • 特開-放送送信機の異常検出システム 図4
  • 特開-放送送信機の異常検出システム 図5
  • 特開-放送送信機の異常検出システム 図6
  • 特開-放送送信機の異常検出システム 図7
  • 特開-放送送信機の異常検出システム 図8
  • 特開-放送送信機の異常検出システム 図9
  • 特開-放送送信機の異常検出システム 図10
  • 特開-放送送信機の異常検出システム 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014166
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】放送送信機の異常検出システム
(51)【国際特許分類】
   H04B 17/18 20150101AFI20240125BHJP
   H03F 3/24 20060101ALI20240125BHJP
   H03F 3/68 20060101ALI20240125BHJP
   H04B 1/04 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
H04B17/18
H03F3/24
H03F3/68 220
H04B1/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116795
(22)【出願日】2022-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中村 良太
【テーマコード(参考)】
5J500
5K060
【Fターム(参考)】
5J500AA01
5J500AA21
5J500AA41
5J500AC58
5J500AF15
5J500AH10
5J500AS14
5J500AT01
5J500PF05
5J500PF06
5J500PF07
5K060BB04
5K060CC04
5K060HH06
5K060PP01
5K060PP06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】複数のパワーアンプ(増幅部)の異常判定を先行的に確実に判定可能とする技術を提供することにある。
【解決手段】変調部からの信号を、少なくとも3つ以上の同一構成の複数の増幅部へ分配し、複数の増幅部を並列動作させた後段で合成する送信部を具備する放送送信装置の異常検出システムにおいて、複数の増幅部の各々の出力電力に加えて、反射電力、個別増幅器の電圧、個別増幅器の電流、個別増幅器の温度の少なくとも1つの状態値を監視可能であり、状態値の時間的な経緯又は並列した複数の増幅部の各々の状態値の比較より放送送信機の異常を検出する分析装置111を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変調部からの信号を、少なくとも3つ以上の同一構成の複数の増幅部へ分配し、前記複数の増幅部を並列動作させた後段で合成する送信部を具備する放送送信機の異常検出システムであって、
前記複数の増幅部の各々の出力電力に加えて、
反射電力、個別増幅器の電圧、個別増幅器の電流、個別増幅器の温度の少なくとも1つの状態値を監視可能であり、
前記状態値の時間的な経緯、または並列した前記複数の増幅部の各々の前記状態値の比較より前記放送送信機の異常を検出する、異常検出システム。
【請求項2】
請求項1に記載の異常検出システムにおいて、
少なくとも2つ以上の独立稼働可能な前記送信部を有し、
前記2つ以上の送信部の少なくとも1つが稼働することにより運用可能であって、
前記状態値の比較は、各送信部が起動して停止するまでの期間を区切りとして、個別に管理されている、異常検出システム。
【請求項3】
請求項1に記載の異常検出システムにおいて、
分析装置を有し、
前記分析装置は、前記複数の増幅部の各々の出力電力、反射電力、個別増幅器の電圧、個別増幅器の電流、個別増幅器の温度をログデータとして格納する記憶部と、
前記ログデータを解析する演算部と、を有し、
前記演算部は、前記ログデータが異常データを含まない場合、前記演算部への入力ログデータと前記演算部から出力される演算結果データとの誤差が小さくなるように、関数およびその係数が調整されている、異常検出システム。
【請求項4】
請求項3に記載の異常検出システムにおいて、
前記演算部への入力ログデータと前記演算部から出力される演算結果データとの差である乖離度が計算され、
前記乖離度がしきい値以上となった時に、前記放送送信機の異常を検出して、アラームを発報する、異常検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、放送送信機の異常検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
放送送信機として、例えば、地上デジタル放送のマイクロ波伝送装置および送信機がある。地上デジタル放送のマイクロ波伝送装置および送信機において、それらを構成する複数の放送送信装置や放送中継装置の異常を監視する技術が提案されている。たとえば、特開2010-087948号公報は、デジタルFPU受信基地局を含む放送システムにおいて、アラーム発生時のシステム全体の状態を把握しやすくする技術を開示する。特開2001-274756号公報は、複数の増幅器の異常状態を確実に検出できるようにして、異常検出の信頼性と精度を向上させる技術を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-087948号公報
【特許文献2】特開2001-274756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
親局の放送送信機(以下、単に、送信機とも言う)は、複数のパワーアンプ(PA:増幅部)を備え、目的の出力を得るため、複数のPAから選択された1または複数のPAを並列に動作させて高電力を作り出している。また、各PAは、複数のフィナルパワーアンプ(FPA:最終増幅器)を備える。複数のフィナルパワーアンプの各々は、個別増幅器ということができる。
【0005】
本発明者らの知見によれば、PAは、部品点数が多く、放送送信機システム全体を見た場合において、送信機内のPAの故障率が他の構成部の故障率と比較して高い、ことが判明している。
【0006】
本開示の課題は、送信機内の複数のパワーアンプ(増幅部)の異常判定を先行的に確実に判定可能とする技術を提供することにある。
【0007】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば下記の通りである。
【0009】
一実施の形態によれば、
変調部からの信号を、少なくとも3つ以上の同一構成の複数の増幅部へ分配し、前記複数の増幅部を並列動作させた後段で合成する送信部を具備する放送送信機の異常検出システムは、
前記複数の増幅部の各々の出力電力に加えて、
反射電力、個別増幅器の電圧、個別増幅器の電流、個別増幅器の温度の少なくとも1つの状態値を監視可能であり、
前記状態値の時間的な経緯、または並列した前記複数の増幅部の各々の前記状態値の比較より前記放送送信機の異常を検出する。
【発明の効果】
【0010】
上記一実施の形態に係る異常検出システムによれば、複数のパワーアンプ(増幅部)の異常判定を先行的に確実に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施例に係る複数の放送送信装置の構成例を示す図である。
図2図2は、図1の送信機の構成例を説明する図である。
図3図3は、図2の電力増幅器の構成例および電力増幅器に接続される制御装置、遠隔監視装置および解析装置を説明する図である。
図4図4は、分析装置の構成例を説明する図である。
図5図5は、ログデータLGDの一例を説明する図である。
図6図6は、分析装置の分析例を説明する図である。
図7図7は、解離度を説明する図である。
図8図8は、正常データ(異常データを含まない)であるログデータの解析結果の一例を示すグラフである。
図9図9は、異常データを含むログデータの解析結果の一例を示すグラフである。
図10図10は、稼働系統を変更する運用形態をとった時の出力経緯の例である。
図11図11は、稼働系統の出力状態値を稼働~停止までの区間内で管理し、区間内の平均からの差分として正規化した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施例について、図面を用いて説明する。ただし、以下の説明において、同一構成要素には同一符号を付し繰り返しの説明を省略することがある。なお、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【実施例0013】
図1は、実施例に係る放送送信装置の構成例を示す図である。図2は、図1の送信機TXの構成例を説明する図である。図3は、図2の電力増幅器の構成例および電力増幅器に接続される制御装置、遠隔監視装置および解析装置を説明する図である。
【0014】
図1に示される親局の放送送信装置100は、地上デジタル放送のマイクロ波伝送装置(STLTX,STLRX)および放送送信機(TX)(以下、送信機という)を構成している。マイクロ波伝送装置(STLTX,STLRX)は、放送内容を演奏所(スタジオ)から送信機TXの設置された送信所へ送るためのSTL(Studio to Transmitter Link)回線において、STL側送信装置STLTXとSTL側受信装置STLRXとを備える。STL側送信装置STLTXはマイクロ波を発生し、STL側受信装置STLRXはSTL側送信装置STLTXの発生したマイクロ波を受信する。STL側送信装置STLTXは、マイクロ波に基づく放送信号を送信機TXへ送信する。そして、送信機TXは、受信した放送信号基づく地上デジタル放送波をアンテナANTから出力するように構成されている。地上デジタル放送のマイクロ波伝送装置(STLTX,STLRX)および送信機(TX)には、地上デジタル放送のマイクロ波伝送装置(STLTX,STLRX)および送信機(TX)の動作を監視する監視装置110が接続されている。監視装置110は、例えば、放送送信装置100の各装置の状態が表示される表示部と、アラーム発生時にそのアラームのアラーム状況を記憶部112に保存するログ機能と、を有する。監視装置110は、遠隔制御装置(リモコン装置)と言い換えることも可能である。
【0015】
分析装置111は、演算部113と記憶部114とを有する。分析装置111は監視装置110にLANなどのセットワーク回線を介して接続され、記憶部114は監視装置110から出力される各装置の動作状態に係るログデータLGDを格納する。演算部113は、記憶部114に格納された各装置の動作状態に係るログデータLGDを解析する。分析装置111は、例えば、放送局の本社や監視装置110と同一局舎に設けることができる。
【0016】
図2に示すように、変調励振器1および変調励振器2のそれぞれの入力は、STL側送信装置STLTXの出力を受けるように接続される。変調励振器1および変調励振器2は変調部とされる。変調励振器1の出力RFは第1電力増幅装置PP1を含む第1送信機TX1の入力(第1電力増幅装置PP1の入力に対応する)に接続され、第1電力増幅装置PP1の出力はバンドパスフィルタBPF11の入力に接続される。バンドパスフィルタBPF11の出力は、切替器SWの入力に接続される。変調励振器2の出力RFは第2電力増幅装置PP2を含む第2送信機TX2の入力(第2電力増幅装置PP2の入力に対応する)に接続され、第2電力増幅装置PP2の出力はバンドパスフィルタBPF12の入力に接続される。バンドパスフィルタBPF12の出力は、切替器SWの入力に接続される。切替器SWの出力は、アンテナANTに接続される。切替器SWは、第1送信機TX1の出力と第2送信機TX2の出力の一方を選択してアンテナANTへ出力する。これにより、第1送信機TX1の出力または第2送信機TX2の出力が、放送用電波として、アンテナANTから送信されるようになっている。
【0017】
このように、一般的に重要度の高い送信拠点では、送信部としての送信機(TX)は2重系以上の冗長系をとることが多い。この方式によれば、少なくともいずれかの送信系(少なくとも第1送信機TX1と第2送信機TX2のいずれか一方)が稼働していれば運用を継続することが可能である。例えば稼働している系統の個別部位が故障してしまった場合でも、他方の系に切り替えることにより稼働系統として即時正常を保つことができることから、放送送信装置100全体の信頼性を大幅に高めることができる。
【0018】
以上のような冗長系の送信機(TX)をもつシステムの運用形態としては、一定期間内で両系が正常稼働していることを確認するために、数週間~数カ月区切りで稼働系統を変更する場合が多い。図10は、稼働系統を変更する運用形態をとった時の出力経緯の例である。図11は、稼働系統の出力状態値を稼働~停止までの区間内で管理し、区間内の平均からの差分として正規化した図である。
【0019】
図10に示すように、稼働系統が第1送信機TX1から第2送信機TX2に、または、第2送信機TX2から第1送信機TX1に切り替わっていることが分かる。このとき、非稼働系は停止させていても構わない。注目すべき点としては、各稼働系が起動して停止するまでを区切りと考えたときに、それぞれの出力が必ずしも同一ではないことが挙げられる。これは、第1送信機TX1および第2送信機TX2において、温度、湿度、連続稼働時間等の稼働環境が影響していると考えられる。
【0020】
一般に、このような値が安定しない時系列を絶対値でそのまま比較していくと、稼働した直後の値がこれまでの稼働実績値と比較して有意な差があると判断されることも想定される。(勿論、前記有意な差以上に、稼働に影響を及ぼす閾値の範囲を超えているものは、当初から異常と検知すべきである。)これらの対策として、図11に示すように、状態値は前記個々の稼働~停止までの区間(K1、K2)内で管理し、前記区間内の平均からの差分として正規化することにより、他区間と同等に評価していくことが可能となる。ここでは、例えば、図10の最初の第2送信機TX2の区間をK1として、続く第1送信機TX1の区間をK2としている。
【0021】
図3には、代表例として、第1電力増幅装置PP1の構成例が示されている。第2電力増幅装置PP2も、図3に示す第1電力増幅装置PP1の構成例と同様な構成とされている。第1電力増幅装置PP1は、M個のパワーアンプ(増幅部)PA 1-PA Mを備え、目的の出力を得るため、M個のパワーアンプPA 1-PA Mから選択された少なくとも2つのパワーアンプを並列に動作させて高電力を作り出している。つまり、送信部としての第1送信機TX1や第2送信機TX2は、変調部(変調励振器1、変調励振器2)からの信号を、少なくとも3つ以上の同一構成の複数の増幅部(パワーアンプPA 1-PA Mから選択された複数)へ分配し、複数の増幅部(パワーアンプPA 1-PA Mから選択された複数のパワーアンプ)を並列動作させ、並列動作させた後段で複数の増幅部(パワーアンプPA 1-PA Mから選択された複数のパワーアンプ)の出力を合成するように構成されている。複数のパワーアンプPA 1-PA Mの各々は、例えば、最大で400Wの電力増幅を行うことが可能に構成されている。
【0022】
複数のパワーアンプPA 1-PA Mのおのおのは、図3に示すように、複数のフィナルパワーアンプ(最終増幅器)FPA 1-FPA N を備える。N個のフィナルパワーアンプFPA 1-FPA N のおのおのは、個別増幅器ということができる。フィナルパワーアンプFPA 1-FPA N は、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)などの半導体パワードランジスタにより構成可能である。このように、複数のパワーアンプPA 1-PA Mは、部品点数が多く、放送送信装置100全体を見た場合において、送信機TX内の複数のパワーアンプPA 1-PA Mの故障率が他の構成部の故障率と比較して高い。
【0023】
第1電力増幅装置PP1および第2電力増幅装置PP2は、制御部CONTの内部に設けられた送信機制御部TXCONTにより、その動作を制御されている。例えば、第1電力増幅装置PP1において、複数のパワーアンプPA 1-PA MのうちパワーアンプPA 1が故障した場合を考える。送信機制御部TXCONTは、パワーアンプPA 1が故障したことを検知した場合、残りのパワーアンプPA2-PA Mに、故障したパワーアンプPA 1分の増幅を補完するよう制御を行うことができるように構成されている。
【0024】
また、送信機制御部TXCONTは、複数のフィナルパワーアンプFPA 1-FPA Nの動作の制御も行うことができるように構成されている。例えば、パワーアンプPA 1内のフィナルパワーアンプFPA 1-FPA Nが並列に動作している場合において、フィナルパワーアンプFPA2が劣化によりフィナルパワーアンプFPA2の電流が低下(50%程度)した場合を考える。この場合、送信機制御部TXCONTは、フィナルパワーアンプFPA 2の電流低下を補完するために、他のすべてのフィナルパワーアンプFPA 1、FPA 3-FPA Nの電流が高くなるように、フィナルパワーアンプFPA 1、FPA3-FPA Nの動作を制御する。その結果、フィナルパワーアンプFPA 1、FPA 3-FPA Nの電流は、フィナルパワーアンプFPA 2の電流低下を補完するために、それぞれ10%程度、上昇することになる。
【0025】
つまり、パワーアンプPA 1の全体的な出力(例えば、400W)は維持されているので正常に思えるが、パワーアンプPA 1の内部のフィナルパワーアンプFPA 1-FPA NにおいてはフィナルパワーアンプFPA 2に部分的に劣化していることになる。このフィナルパワーアンプFPA2に生じている劣化を、早期に異常として検出できれば、送信機内の複数のパワーアンプの異常判定を先行的に確実に判定できる。
【0026】
そこで、本発明では、以下の様にすることを考える。
【0027】
1)パワーアンプPA 1-PA Mのうち、並列稼働しているパワーアンプ(例えば、PA 1-PA4)を横並び的に比較しながら、また、単体で定める各PA内部の各項目(出力、反射、ドレイン電流、AGC電圧等)において異常検出の閾値には届かないが、ある1つのPA(例えば、PA 1)が他のPA(例えば、PA 2-PA 4)と有意な差が認められる(例えば、統計の有意水準以上)と判断できる場合に、アラームを発報するように構成する。
【0028】
2)また、同様に、1つのPA内のフィナルパワーアンプFPA 1-FPA Nにおいて、並列稼働しているフィナルパワーアンプ(FPA 1-FPA N)を横並び的に比較しながら、また、単体で定める各FPA内部の各項目(電流、温度等)において異常検出の閾値には届かないが、ある1つのFPA(例えば、FPA 2)が他のFPA(例えば、FPA 1、FPA 3-FPA N)と有意な差が認められる(例えば、統計の有意水準以上)と判断できる場合に、アラームを発報するように構成する。
【0029】
上記1)、2)の判断を行うため、分析装置111は、送信機制御部TXCONTが取得している各PAおよび各FPAの動作状態のログデータLGDを、人工知能(AI)を利用して学習および解析を行い、故障予知を行う構成とする。
【0030】
図4は、分析装置の構成例を説明する図である。図5は、ログデータLGDの一例を説明する図である。図6は、分析装置の分析例を説明する図である。図7は、解離度を説明する図である。
【0031】
図4に示すように、分析装置111は、入力部41と、演算部113と、出力部43と、により構成される。
【0032】
入力部41は、記憶部114から図5に示すログデータLGDを読み出して演算部113へ入力する機能を有する。ここで、演算部113へ入力されるログデータLGDは、PA 1~PA Mの各メータ値を一定間隔で取得した一定期間の連続ログデータとなる。
【0033】
演算部113は、入力をログデータとし、演算した結果データとして、前記入力ログデータと同形式の演算結果データを格納することができるように構成されている。演算部113は、ログデータを入力とし、所定のパラメータ係数により演算し出力結果を導く関数により構成される。
【0034】
ここで、演算部113は、入力されたPA 1~PA Mの一定期間のログデータと、出力された演算結果データとの誤差を小さくするように、設計される。つまり、演算部113内の関数は、学習データを用いた機械学習を何回も行うことにより構成された人工知能(AI)の学習モデルであり、入力されたログデータと出力された演算結果データとの誤差が小さくなるように、AI中の関数およびその係数などが調整されて決定されていく。
【0035】
図5に示すように、ログデータLGDは、例えば、以下の項目を有する。ただし、これに限定されるものではない。
【0036】
LGD1)PA 1/PA 2/PA 3の出力(出力電力)、反射(反射電力)、ドレイン電圧、AGC電圧のログデータ。これらのログデータは、一定間隔ごとに格納されている。この例では、00:00:00~23:59:50と10秒間隔の一日のデータにしているが、5秒間隔や20秒間隔、1分間隔のログデータとしても、もちろん良い。また、1か月、1年といった長期間で取得することが学習に有効となる。PA 4-PA Mについては不図示であるが、PA 1/PA 2/PA 3と同様に、各PAの出力、反射、ドレイン電圧、AGC電圧のログデータが格納されている。
【0037】
LGD2)PA 1/PA 2のFPA 1-FPA Nの各電流、および、FPA 1-FPA Nの各温度のログデータ。これらのログデータは、日時ごとに格納されている。この例では、00:00:00~23:59:50と10秒間隔の一日のデータとしているが、5秒間隔や20秒間隔、1分間隔のログデータとしても、もちろん良い。また、1か月、1年といった長期間で取得することが学習に有効となる。PA 3-PA Mについては不図示であるが、PA 1/PA 2と同様に、各PA 3-PAMの各FPA 1-FPA Nの各電流、および、FPA 1-FPA Nの各温度のログデータが格納されている。
【0038】
LGD1)を演算部113により分析することにより、パワーアンプPA 1-PA Mのうち、並列稼働しているパワーアンプを横並び的に比較しながら、また、単体で定める各PA内部の各項目(出力、反射、ドレイン電流、AGC電圧等)において異常検出の閾値には届かないが、ある1つのPA(例えば、PA 1)が他のPA(例えば、PA 2-PA M)と有意な差が認められる(例えば、統計の有意水準以上)と判断できる場合に、故障予知のアラームを早期に発報するように構成することができる。
【0039】
LGD2)を演算部113により分析することにより、1つのPA内のフィナルパワーアンプFPA 1-FPA Nにおいて、並列稼働しているフィナルパワーアンプ(FPA 1-FPA N)を横並び的に比較しながら、また、単体で定める各FPA内部の各項目(電流、温度等)において異常検出の閾値には届かないが、ある1つのFPA(例えば、FPA 2)が他のFPA(例えば、FPA 1、FPA 3-FPA N)と有意な差が認められる(例えば、統計の有意水準以上)と判断できる場合に、故障予知のアラームを早期に発報するように構成することができる。図5に示すように、ログデータLGDには、個別増幅器FPA 1-FPA Nの電圧は記載がないが含めてもよい。
【0040】
つまり、分析装置111は、各増幅部PA 1-PA Mの出力電力に加えて、反射電力、個別増幅器FPA 1-FPA Nの電圧、個別増幅器FPA 1-FPA Nの電流、個別増幅器FPA 1-FPA Nの温度の少なくとも1つの状態値(ログの値)を監視可能である。そして、分析装置111は、状態値(ログの値)の時間的な経緯、または並列した各増幅部PA 1-PA M、個別増幅器FPA 1-FPA Nの状態値(ログの値)の比較より、放送送信機の異常を検出することができる。
【0041】
図6に示すように、分析装置111により、実際のログデータLGDを分析させる場合、入力部41に入力ログデータとして、PA 1~PA Mの各メータ値を一定間隔で取得した一定期間の連続ログデータを入力する。そして、演算部113は入力ログデータを演算して、演算結果データを出力部43に出力する。異常が発生した入力ログデータが演算部113に入力されると、入力ログデータと出力である演算結果データとの差が大きくなり、入力ログデータと出力である演算結果データとの差である乖離度が大きくなる。
【0042】
ここで、入力ログデータと出力された演算結果データとの乖離度を計算する。図7に示される乖離度の計算式によって計算することができる。乖離度の計算は、各部位の所定メータ値について、入力値と出力値の差分を2乗したもの計算し、並列動作する同項目分の前記2乗値を総和したものにより求められる。
【0043】
図8は、正常データ(異常データを含まない)であるログデータの解析結果の一例を示すグラフである。図9は、異常データを含むログデータの解析結果の一例を示すグラフである。
【0044】
図8では、分析装置111により、ログデータのうち、0:00:00から0:01:25のログデータを解析して乖離度を計算した一例である。縦軸が乖離度を示す。乖離度は正常データでは概ね50程度である。異常データの乖離度のしきい値は、この例では、図8において点線で示すように、80としている。
【0045】
図9では、0:00:00から0:01:25のログデータにおいて、(0:00:35から0:00:55)の期間に意図的に異常データを追加して、分析装置111により解析して乖離度を計算した一例である。縦軸が乖離度を示す。異常データの乖離度のしきい値は、図9において点線で示すように、80としている。この様に、意図的に異常とした期間(0:00:35から0:00:55)を正しく異常と検知することが可能である。分析装置111は、乖離度がしきい値となった場合に、放送送信装置100の異常を検出して判定し、アラームを発報するように構成することができる。
【0046】
なお、異常データの乖離度のしきい値は、図8図9に示した値(80)に限定されるものではなく、状況に応じて変更しても、もちろんよい。
【0047】
上記異常検出システムによれば、複数のパワーアンプ(増幅部)の異常判定を先行的に確実に判定することができる。
【0048】
以上、本発明者によってなされた発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0049】
100:放送送信装置
111:分析装置
113:演算部
114:記憶部
TX:送信機
PA:パワーアンプ(増幅部)
FPA:フィナルパワーアンプ(最終増幅器)
LGD:ログデータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11