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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141662
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】バッテリ冷却装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/204 20210101AFI20241003BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20241003BHJP
   H01M 10/6554 20140101ALI20241003BHJP
   H01M 10/6567 20140101ALI20241003BHJP
   H01M 50/209 20210101ALI20241003BHJP
【FI】
H01M50/204 401H
H01M10/613
H01M10/6554
H01M10/6567
H01M50/209
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053441
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】バットウラ ロケッシュ ヤダウ
(72)【発明者】
【氏名】米田 悠佑
【テーマコード(参考)】
5H031
5H040
【Fターム(参考)】
5H031AA09
5H031EE01
5H031EE04
5H031KK01
5H031KK08
5H040AA28
5H040AS07
5H040AT02
5H040AT06
5H040AY05
5H040CC05
5H040LL01
5H040LL06
(57)【要約】
【課題】バッテリを効率よく冷却することができるバッテリの冷却装置を提供する。
【解決手段】バッテリBを冷却液Cに浸漬させて冷却するバッテリ冷却装置Aであって、前記バッテリB及び前記冷却液Cを収容するバッテリ収容部50を有するバッテリケース5と、並設されて前記バッテリBを構成する複数のセル1と、隣り合う前記セル1の間に配置され、前記セル1の一側面1cに接触する断熱部6及び前記セル1の他側面1dに接触する伝熱部2を有する介在部材Kと、を備えたバッテリ冷却装置A。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリを冷却液に浸漬させて冷却するバッテリ冷却装置であって、
前記バッテリ及び前記冷却液を収容するバッテリ収容部を有するバッテリケースと、
並設されて前記バッテリを構成する複数のセルと、
隣り合う前記セルの間に配置され、前記セルの一側面に接触する断熱部及び前記セルの他側面に接触する伝熱部を有する介在部材と、を備えたバッテリ冷却装置。
【請求項2】
前記伝熱部は、前記バッテリケースに接触しており、
前記断熱部は、前記伝熱部よりも表面積が小さい請求項1に記載のバッテリ冷却装置。
【請求項3】
前記セルの前記一側面に接触する前記断熱部の側面の面積は、前記一側面の面積以下である請求項2に記載のバッテリ冷却装置。
【請求項4】
前記断熱部は、前記セルの前記一側面に点在して接触している請求項1又は2に記載のバッテリ冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリを冷却液に浸漬させて冷却する冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、走行駆動源としてモータを備えた自動車(ハイブリッド車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)、プラグインハイブリッド車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、バッテリ車(BEV:Battery Electric Vehicle)、燃料電池車(FCEV:Fuel Cell Electric Vehicle)等)が普及している。これらの自動車(以下、「電動車」と総称する)はモータを駆動させるためのバッテリ(以下、単にバッテリともいう)を搭載している。
【0003】
通常、電動車に搭載されるバッテリは複数のセルを容器に収容したバッテリパックとして構成されている。そのため、バッテリを使用すると、発熱により容器の内部に熱がこもって高温になる。バッテリが高温になると劣化が進みやすくなるので、バッテリを冷却しながら使用して温度上昇を防いでいる。バッテリを確実に冷却するためには、容器内のバッテリのセルを冷却液に浸漬することが効果的である。
【0004】
特許文献1に記載のバッテリ冷却装置は、バッテリのセルを冷却液に浸漬させて冷却するものである。このバッテリ冷却装置は、複数のセルを夫々金属シールドで囲み、夫々のセルの間隔を空けて生まれた空間に冷却液を流通させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2017-536658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献1に記載のバッテリ冷却装置は、セル全体に冷却液を浸漬させているため、多量の冷却液を必要とし、その重量が重くなる。また、夫々のセル全体を金属シールドで囲んでいるため、装置全体の重量が重くなると共に、コストアップに繋がる。
【0007】
そこで、少量の冷却液にバッテリを浸漬させた場合でも、バッテリを効率よく冷却可能なバッテリ冷却装置が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るバッテリ冷却装置の特徴構成は、バッテリを冷却液に浸漬させて冷却するバッテリ冷却装置であって、前記バッテリ及び前記冷却液を収容するバッテリ収容部を有するバッテリケースと、並設されて前記バッテリを構成する複数のセルと、隣り合う前記セルの間に配置され、前記セルの一側面に接触する断熱部及び前記セルの他側面に接触する伝熱部を有する介在部材と、を備えた点にある。
【0009】
本構成では、バッテリを冷却液に浸漬させて冷却するバッテリ冷却装置において、セルの一側面に接触する断熱部及びセルの他側面に接触する伝熱部を有する介在部材を備えている。このため、隣り合うセル間では断熱部により伝熱が抑制され、セルの温度が上昇した場合には、伝熱部により冷却液等に熱を逃がすことが可能となる。その結果、セル間で熱移動が連鎖的に発生してバッテリ全体が熱暴走を起こすことがなく、あるセル温度が上昇した場合でも、伝熱部を介して放熱することができる。
【0010】
このような介在部材を備えることにより、少量の冷却液にバッテリを浸漬させた場合でも、効率よくバッテリを冷却可能なバッテリ冷却装置となっている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第一実施形態に係るバッテリ冷却装置の断面図である。
図2】第一実施形態の変形例になる図1のII-II線矢視断面図である。
図3図2のIII-III線矢視断面図である。
図4】第二実施形態に係るバッテリ冷却装置の断面図である。
図5】第三実施形態に係るバッテリ冷却装置の断面図である。
図6図5のIV-IV線矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係るバッテリ冷却装置の実施形態について、図面に基づいて説明する。なお、以下に記載される実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこれらの実施形態にのみ限定するものではない。したがって、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、様々な形態で実施することができる。
【0013】
〔第一実施形態〕
図1に示されるように、本実施形態に係るバッテリ冷却装置Aは、並設された複数(本実施形態においては7つ)のセル1と、隣り合うセル1,1の間に配置された複数(本実施形態においては6つ)の介在部材Kと、ノズル3と、冷却液Cが流通する配管4と、バッテリケース5と、を備える。夫々の介在部材Kは、断熱部6と伝熱部2から構成されている。バッテリケース5は、その内部空間である密閉されたバッテリ収容部50に、複数のセル1と、複数の介在部材Kと、複数のノズル3と、冷却液Cとを収容する。
【0014】
バッテリ冷却装置Aは、複数のセル1が電気的に接続されることにより構成されるバッテリBがバッテリケース5の内部に収容されている。バッテリ冷却装置Aは、例えば電動車のバッテリに用いられる。本実施形態における冷却液Cは、例えばロングライフクーラント(LLC)等の冷却液、パラフィン系等の絶縁油等である。
【0015】
バッテリBを構成するセル1は、例えばリチウムイオン電池が用いられる。複数のセル1を直列に接続することにより、バッテリBとして高電圧を発生させている。本実施形態において、セル1は直方体形状を有し、その側面のうち、一側面1c及び他側面1dの面積が最も大きい。介在部材Kは、隣り合うセル1,1の間に配置され、断熱部6がセル1の一側面1cに、伝熱部2の接触部位21がセル1の他側面1dに接触している。バッテリBにおいては、両端に位置するセル1,1の外側に配置された不図示のエンドプレート同士をボルト等で締結することにより、セル1と介在部材Kとを密着させている。断熱部6及び伝熱部2の詳細な構造は後述する。
【0016】
バッテリケース5は、上部容器5aと下部容器5bとからなり、上部容器5aと下部容器5bとを接合することにより、密閉された内部空間であるバッテリ収容部50が形成されている。バッテリ収容部50に収容されるバッテリBの高さは、下部容器5bの深さよりも低い。つまり、セル1及び介在部材Kの高さは、下部容器5bの深さよりも低い。
【0017】
ノズル3は、図1図2に示されるように、セル1の上面1bの中央部であって、セル1の上面1bに近接した上方に、上面1bから離間して配置されている。ノズル3は、1つのセル1につき1つ設けられている。すなわち、図1には、セル1が7つ設けられており、ノズル3が7つ設けられる実施形態が示されているが、セル1やノズル3の数量や配置は特に限定されない。ノズル3からはセル1の上面1bに向けて冷却液Cが噴射される。ノズル3は、バッテリケース5のうち、上部容器5aの内側、すなわちバッテリケース5の内部空間であるバッテリ収容部50に配置されている。なお、ノズル3が冷却液Cを噴射するとは、ノズル3から出る冷却液Cが、配管4を流通する冷却液Cよりも高圧になった形態だけでなく、配管4を流通する冷却液Cと同圧である形態も含まれる。
【0018】
配管4のうち、ノズル3に冷却液Cを供給する上部配管4aは、上部容器5aの外側に配置されている。上部配管4aを流通する冷却液Cは、7つに分岐してバッテリ冷却装置A(上部容器5a)の内部(バッテリケース5の内部空間)に流入し、夫々の分岐先に接続されたノズル3からセル1に向けて噴射される。
【0019】
下部容器5bの鉛直方向下方の外側には、セル1を冷却した後の冷却液Cが流通する下部配管4b(配管4の一部)が配置されている。ノズル3から噴射された冷却液Cは下部容器5bの内部に溜まり、溜まった冷却液Cにセル1が浸漬されている。下部容器5bの底部には多数の貫通孔(不図示)が形成されており、該貫通孔を介して下部容器5bの内部と下部配管4bとが連通している。これにより、下部容器5bの内部に溜まった冷却液Cの一部は貫通孔から下部配管4bに流出する。下部配管4bに流出した冷却液Cは下部配管4bを流通し、不図示の冷却器(例えば熱交換器)で冷却された後、再度上部配管4aを流通し、セル1に噴射される。つまり、冷却液Cは冷却器で冷却されることにより循環利用されている。
【0020】
断熱部6は、樹脂やゴム等の絶縁物からなる弾性のある材料であり、1~2mmの厚みとすることができる。本実施形態における断熱部6は直方体形状であり、一方の側面6dがセル1の一側面1cに接触し、他方の側面6cが伝熱部2の接触部位21の一方の側面21dに接触するように、隣り合うセル1と伝熱部2の間に配置されている。断熱部6の一方の側面6cの面積は、接触部位21の他方の側面21dと略同一であり、断熱部6の他方の側面6dの面積は、セル1の一側面1cの面積と略同一である。
【0021】
伝熱部2は、金属等の高熱伝導率を有する材料であり、1~2mmの厚みとすることができる。伝熱部2は、セル1及び断熱部6と接触する接触部位21と、セル1の上面1bよりも鉛直方向上方に延出した延出部位22を有する。図1に示されるように、伝熱部2は直方体形状であり、接触部位21の一方の側面21cがセル1の他側面1dに接触し、接触部位21の他方の側面21dが断熱部6の一方の側面6cに接触するように、隣り合うセル1と断熱部6の間に配置されている。延出部位22は、セル1及び断熱部6とは接しておらず、隣り合う複数の延出部位22,22の間には空間Sが形成されている。伝熱部2の高さは、バッテリケース5の下部容器5bよりも低く、伝熱部2の上面2bはノズル3よりも下方に位置する。接触部位21の一方の側面21cの面積は、セル1の他側面1dの面積と略同一であり、接触部位21の他方の側面21dの面積は、断熱部6の一方の側面6cと略同一である。伝熱部2は接触部位21及び延出部位22を有するため、伝熱部2の表面積は断熱部6の表面積よりも大きい。
【0022】
本実施形態においては、冷却液Cの液面は、伝熱部2の上面2bよりも高い。したがって、セル1は、介在部材Kと接触する一側面1c及び他側面1d以外の面において冷却液Cと接触し、その面を介して冷却液Cとの間で熱交換を行う。一方で、介在部材Kと接触する一側面1c及び他側面1dは冷却液Cとは接触しないので、セル1と冷却液Cとの熱交換は、一側面1c及び他側面1dを介しては生じない。
【0023】
本実施形態においては、隣り合う延出部位22,22の間の空間Sは冷却液Cで満たされており、延出部位22は冷却液Cに浸漬された状態となる。この状態において、伝熱部2は、セル1と接触する一方の側面21c及び断熱部6と接触する他方の側面21d以外の面が冷却液Cと接触している。伝熱部2は高熱伝導率を有するため、周囲との熱交換を容易に行う。すなわち、セル1の熱は、セル1と接している伝熱部2の接触部位21の一方の側面21cを介して伝熱部2へ移動する。そして、伝熱部2に移動した熱は、伝熱部2が冷却液Cと接触する面から冷却液Cへ移動する。伝熱部2は延出部位22を有するので、延出部位22の表面積だけ、伝熱部2が冷却液Cと接触する表面積が大きくなり、冷却液Cとの間で熱交換が生じやすい。このように、伝熱部2は、隣り合うセル1の熱を容易に冷却液Cへ伝達するため、セル1の全面が冷却液Cに浸漬していなくても、セル1を効率的に冷却することができる。よって、隣り合うセル1,1の間に冷却液Cを導入するための流路等を形成する必要がないので、部品点数の削減が可能となると共に、セル1の全面を冷却液Cに浸漬させる場合と比較して、冷却液Cの必要量を減らすことができる。
【0024】
本実施形態においては、断熱部6は絶縁体であり、伝熱部2よりも低い熱伝導率を有する。したがって、接触部位21の一方の側面21cから伝熱部2へ移動したセル1の熱は、接触部位21の他方の側面21dから断熱部6へはほとんど移動しない。つまり、セル1の熱は、伝熱部2へ移動したとしても、伝熱部2から断熱部6への熱移動がほぼ生じないため、隣り合うセル1へは移動しない。同様に、セル1の熱は、セル1の一側面1cと接触する断熱部6へはほとんど移動しない。すなわち、断熱部6は、セル1から隣り合うセル1への熱移動を抑制する。したがって、断熱部6は、隣り合うセル1,1間における熱移動が連鎖的に生じることによるバッテリB全体の熱暴走を抑制することができる。
【0025】
本実施形態においては、伝熱部2がセル1の冷却を効率的に行うので、断熱部6に要求される性能を低減できる。例えば、断熱部6の厚みを、介在部材Kが伝熱部2を有さない場合において、セル1,1間の熱移動を抑制するために必要とされていた厚みよりも薄くすることができる。また、断熱部6は、金属等からなり、ある程度の強度を有する伝熱部2と接触しているため、介在部材Kが伝熱部2を有さない場合に断熱部6に求められる程度の強度を有する必要がない。つまり、断熱部6は、強度の低下を懸念することなく薄肉化可能である。したがって、介在部材Kを隣り合うセル1,1の間に配置したとしても、バッテリB全体としての体積を増加させることがないので、バッテリBのエネルギー密度は低下しない。すなわち、介在部材Kを有することにより、バッテリBのエネルギー密度を低下させることなく、少量の冷却液Cでも効率的にセル1を冷却すると共に、隣り合うセル1,1間での連鎖的な熱移動を抑制することができる。
【0026】
さらに、伝熱部2がセル1及び冷却液Cとの熱交換を容易に行い、セル1の温度を低く保つので、断熱部6に求められる耐熱性の低減が可能である。したがって、断熱部6の材料は樹脂やゴム等に限られず、スポンジ等の多孔質体を用いることも可能であり、材料コストを低減させることができる。
【0027】
断熱部6の側面6c,6dの夫々には、図2、3に示されるように、流路10が形成されていてもよい。流路10は、図3に示されるように、断熱部6の一方の側面6c及び他方の側面6dに形成された溝である。そして、断熱部6の他方の側面6dがセル1の一側面1cに、一方の側面6cが伝熱部2の接触部位21の他方の側面21dに接触することにより、冷却液Cはセル1及び接触部位21に接触しつつ流路10に沿って流れる。
【0028】
流路10は、図2に示されるように、複数のセル1の並設方向に沿って断熱部6を見たときに、水平方向に延出する水平流路11と垂直方向に延出する垂直流路12とが交互に配置された蛇行流路10aを有している。具体的には、断熱部6の側面6c,6dの最も上部(冷却液Cの流通方向の最も上流)に形成され、ノズル3から噴射される冷却液Cが最初に供給されるのは、水平流路11である。最もノズル3に近い水平流路11は、冷却液Cが供給される供給部14を有する。その後、下方に向かって垂直流路12、水平流路11が交互に形成され、最も下部(冷却液Cの流通方向の最も下流)には垂直流路12が形成されている。この最も下に位置する垂直流路12から冷却液Cは断熱部6の外部に排出される。なお、水平流路11と垂直流路12の流路断面積は同じである。このように、冷却液Cが流路10を流れることにより、セル1及び伝熱部2の接触部位21が冷却液Cと接触する表面積が増加する。したがって、セル1の熱をより効率よく冷却液Cへ移動させることができる。なお、断熱部6に形成される流路10は、蛇行流路10aに限定されず、セル1と対向する面に開口を形成してもよいし、直線流路や曲線流路でもよく、特に限定されない。
【0029】
〔第二実施形態〕
次に、第二実施形態に係るバッテリ冷却装置Aについて図4を用いて説明する。本実施形態においては、伝熱部2は、セル1の上面1bよりも鉛直方向上方に延出する延出部位22と、セル1の下面1eよりも鉛直方向下方に延出する延出部位23を有する。そして、伝熱部2の上面2bが、バッテリケース5の上部容器5aと接触し、伝熱部2の下面2eが、バッテリケース5の下部容器5bと接触している。冷却液Cの液面の位置は、セル1の上面1bよりも高く、伝熱部2の上面2bよりも低い。また、断熱部6の一方の側面6cの面積は伝熱部2の接触部位21の他方の側面21dの面積よりも小さく、断熱部6の他方の側面6dの面積はセル1の一側面1cの面積よりも小さい。その他の構成は第一実施形態と同じであるので、第一実施形態と同じ構成については詳細な説明を省略する。
【0030】
断熱部6の一方の側面6cの面積は伝熱部2の接触部位21の他方の側面21dの面積よりも小さく、断熱部6の他方の側面6dの面積はセル1の一側面1cの面積よりも小さいため、断熱部6を介して隣り合うセル1と接触部位21の間には空間Tが生じる。冷却液Cの液面はセル1の上面1bよりも高いので、空間Tは冷却液Cで満たされる。空間Tに存在する冷却液Cは、セル1の一側面1cの一部と、接触部位21の他方の側面21dの一部に接触する。よって、冷却液Cとセル1及び伝熱部2とが接触する面積が増大するため、セル1の熱をより効率的に冷却液Cへ移動させることができる。また、断熱部6の表面積を小さくすることができるので、断熱部6の材料コストの低減につながる。
【0031】
本実施形態においては、伝熱部2がバッテリケース5の上部容器5a及び下部容器5bと接触しており、隣り合う延出部位22,22の間の空間Sの一部が冷却液Cで満たされる。また、隣り合う延出部位23,23の間の空間Uは冷却液Cで満たされる。延出部位22の一部の側面と、延出部位23のすべての側面が冷却液Cと接触しているため、伝熱部2と冷却液Cの接触する表面積は第一実施形態よりも大きく、伝熱部2はセル1の熱をより効率よく冷却液Cへ移動させることができる。さらに、伝熱部2の上面2bと下面2eがバッテリケース5と接触しているため、伝熱部2は、バッテリケース5を介してセル1の熱を大気へ放熱することができる。よって、より効率的にセル1を冷却することができる。
【0032】
バッテリケース5に供給される冷却液Cが少量であり、セル1の一部のみが冷却液Cに浸漬される状態であっても、空間Uは冷却液Cで満たされるので、セル1の下面1eよりも下方にある延出部位23は冷却液Cで浸漬される。そのため、空間S及び空間Tが冷却液Cで満たされていなくても、伝熱部2はセル1の熱を接触部位21及び延出部位23を介して冷却液Cに移動させることができる。したがって、より少量の冷却液Cでセル1を冷却することも可能である。
【0033】
〔第三実施形態〕
次に、第三実施形態に係るバッテリ冷却装置Aについて図5図6を用いて説明する。本実施形態においては、伝熱部2は、セル1の上面1bよりも鉛直方向上方に延出する延出部位22と、セル1の下面1eよりも鉛直方向下方に延出する延出部位23を有する。伝熱部2の上面2bは、バッテリケース5の上部容器5aと接触し、伝熱部2の下面2eは、バッテリケース5の下部容器5bと接触する。隣り合う複数の延出部位23の間には空間Uが形成される。また、断熱部6がセル1の一側面1cに点在する。その他の構成は第一実施形態と同じであるので、第一実施形態と同じ構成については詳細な説明を省略する。
【0034】
本実施形態においては、断熱部6は円柱形状を有し、セル1の一側面1c及び伝熱部2の接触部位21の他方の側面21dに複数(本実施形態においては、5つ)点在する。断熱部6の一方の側面6cは接触部位21の他方の側面21dと接触し、断熱部6の他方の側面6dはセル1の一側面1cと接触している。断熱部6を介して隣り合うセル1と接触部位21の間において、断熱部6の配置されていない空間Tは、冷却液Cが流れる流路として機能する。したがって、セル1及び伝熱部2と冷却液Cとが接触する表面積が増大するため、セル1の熱をより効率的に冷却液Cへ移動させることができる。また、断熱部6をセル1の一側面1cに点在させることにより、断熱部6の材料コストを大幅に節約できる。さらに、例えば接触部位21に点在した断熱部6を固定し、介在部材Kをユニット化すれば、組み立ても容易となる。
【0035】
本実施形態においては、空間S及びTは、冷却液Cで満たされていなくてもよい。すなわち、セル1から伝熱部2へ移動した熱は、延出部位23を介して冷却液Cに移動するか、バッテリケース5を介して大気へ放熱されるので、セル1全体に冷却液Cを浸漬させる必要がない。したがって、より少量の冷却液Cでセル1を冷却することもできる。
【0036】
上述した実施形態では、下記の構成が想起される。
(1)バッテリBを冷却液Cに浸漬させて冷却するバッテリ冷却装置Aであって、バッテリB及び冷却液Cを収容するバッテリ収容部50を有するバッテリケース5と、並設されてバッテリBを構成する複数のセル1と、隣り合うセル1,1の間に配置され、セル1の一側面1cに接触する断熱部6及びセル1の他側面1dに接触する伝熱部2を有する介在部材Kと、を備えたバッテリ冷却装置A。
【0037】
本構成では、バッテリBを冷却液Cに浸漬させて冷却するバッテリ冷却装置Aにおいて、セル1の一側面1cに接触する断熱部6及びセル1の他側面1dに接触する伝熱部2を有する介在部材Kを備えている。このため、隣り合うセル1,1間では断熱部6により伝熱が抑制され、セル1の温度が上昇した場合には、伝熱部2により冷却液等に熱を逃がすことが可能となる。その結果、セル1,1の間で熱移動が連鎖的に発生してバッテリB全体が熱暴走を起こすことがなく、あるセル温度が上昇した場合でも、伝熱部2を介して放熱することができる。
【0038】
このような伝熱部2を備えることにより、バッテリBのエネルギー密度を低下させることなく熱暴走の誘発を抑制することができ、冷却液Cが少量であっても効率よくバッテリBを冷却可能なバッテリ冷却装置Aとなっている。
【0039】
(2)(1)に記載のバッテリ冷却装置Aとして、伝熱部2は、バッテリケース5に接触しており、断熱部6は、伝熱部2よりも表面積が小さいと好適である。
【0040】
本構成のように、伝熱部2がバッテリケース5に接触していると、セル1の熱がバッテリケース5を介して大気放熱されるので、セル1全体を冷却液Cに浸漬させる必要がない。したがって、少量の冷却液CにバッテリBを浸漬させた場合でも、バッテリBを効率よく冷却可能なバッテリ冷却装置Aとなっている。また、断熱部6は伝熱部2よりも表面積が小さいので、伝熱経路を確保しながら断熱部6の材料コストを節約できる。
【0041】
(3)(2)に記載のバッテリ冷却装置Aとして、断熱部6の側面6dの面積は、セル1の一側面1cの面積以下であると好適である。
【0042】
本構成のように、断熱部6の側面6dの面積がセル1の一側面1cの面積と同一であると、隣り合うセル1,1間での伝熱がより抑制される。断熱部6の側面6dの面積がセル1の一側面1cの面積より小さいと、断熱部6を介して隣り合うセル1と伝熱部2の間において、断熱部6の配置されていない空間Tは冷却液Cで満たされるため、セル1の冷却をより効率的に行うことができる。
【0043】
(4)(1)又は(2)に記載のバッテリ冷却装置Aとして、断熱部6は、セル1の一側面1cに点在して接触していると好適である。
【0044】
本構成のように、断熱部6をセル1の一側面1cに点在させれば、断熱部6の材料コストを大幅に節約できる。例えば伝熱部2の接触部位21に点在した断熱部6を固定し、介在部材Kをユニット化すれば、組み立ても容易となる。
【0045】
〔その他の実施形態〕
(1)上述した実施形態において、伝熱部2の延出部位22,23は、複数のセル1の並設方向に沿って伝熱部2を見たときに、セル1の他側面1dの端部よりも水平方向に延出して設けられていてもよい。つまり、上下方向に加えて、又は上下方向に代えて、奥行き方向に沿って延出部位22を延出させてもよい。また、伝熱部2の延出部位22,23は何れか一方であってもよい。
【0046】
(2)上述した実施形態において、延出部位22は、隣り合う空間S,Sを連通する開口を有していてもよい。延出部位23も同様に、隣り合う空間U,Uを連通する開口を有していてもよい。開口は複数設けられていてもよく、大きさは問わない。これにより、冷却液Cを各セル1に対して均等に流通させることができる。
【0047】
(3)上述した実施形態において、セル1の高さは、下部容器5bの深さと同じであってもよい。これにより、バッテリケース5の体積を増加させることなく、バッテリ冷却装置Aをコンパクトに形成することができる。
【0048】
(4)上述した実施形態において、バッテリケース5は冷却液Cで満たされていてもよいし、セル1の一部が浸漬されていてもよい。冷却液Cは、ノズル3を介さずにバッテリケース5へ供給されてもよい。
【0049】
(5)上述した実施形態において、断熱部6の一方の側面6c又は他方の側面6dの何れかが流路10を有していてもよい。また、流路10は水平流路11を有さず、断熱部6の側面6c,6dの上端から下端向かって形成された複数の垂直流路12のみを有してもよい。流路10は、断熱部6を貫通して形成されていてもよい。流路10には多孔質体が嵌め込まれて配置されていてもよい。
【0050】
(6)上述した実施形態において、伝熱部2のうち、接触部位21の側面21c又は21dに流路10を設けてもよい。特に、側面21dに設ければ、伝熱部2とセル1との接触面積を減らすことなく、伝熱部2の冷却液Cとの接触面積を増やせるので、冷却効率が高まる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、バッテリを冷却液に浸漬させて冷却するバッテリの冷却装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 :セル
1c :一側面
1d :他側面
K :介在部材
2 :伝熱部
21 :接触部位
21c :側面
21d :側面
22 :延出部位
6 :断熱部
6c :側面
6d :側面
5 :バッテリケース
50 :バッテリ収容部
A :バッテリ冷却装置
B :バッテリ
C :冷却液
図1
図2
図3
図4
図5
図6