(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141670
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】煙感知器
(51)【国際特許分類】
G08B 17/103 20060101AFI20241003BHJP
G01N 21/59 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G08B17/103 A
G01N21/59 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053456
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000111074
【氏名又は名称】ニッタン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】柳沢 諭
(72)【発明者】
【氏名】阿部 仁一
【テーマコード(参考)】
2G059
5C085
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059BB01
2G059BB09
2G059CC19
2G059DD12
2G059EE01
2G059GG02
2G059KK01
2G059KK03
2G059LL04
2G059MM01
2G059MM05
2G059NN06
2G059NN07
5C085AA03
5C085AB01
5C085BA32
5C085CA04
5C085CA08
5C085FA06
5C085FA10
(57)【要約】
【課題】光路上に配置された反射板の表面の汚損による影響を受けにくい減光式スポット型煙感知器を提供する。
【解決手段】煙流入口を有する外カバー部材と該外カバー部材に結合される内カバー部材とからなる筐体の内部に、光源と受光素子とからなる光電式煙検出手段を備えた感知部と、該感知部からの信号に基づいて火災の発生を検出する電子回路が実装された回路基板と、が収納されている煙感知器において、前記感知部は、煙を通過させることが可能な外側遮光壁が周縁部に円環状に配設されている暗箱と、前記外側遮光壁の内側に配設された1個の光源および1または2以上の受光素子と、を備え、前記光源から前記1または2以上の受光素子に至る複数の光路が設けられ、前記電子回路は前記複数の光路それぞれにおける減光量を合算した値に基づいて火災が発生しているか判定するようにした。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
煙流入口を有する外カバー部材と該外カバー部材に結合される内カバー部材とからなる筐体の内部に、光源と受光素子とからなる光電式煙検出手段を備えた感知部と、該感知部からの信号に基づいて火災の発生を検出する電子回路が実装された回路基板と、が収納されている煙感知器であって、
前記感知部は、煙を通過させることが可能な外側遮光壁が周縁部に円環状に配設されている暗箱と、前記外側遮光壁の内側に配設された1個の光源および1または2以上の受光素子と、を備え、前記光源から前記1または2以上の受光素子に至る複数の光路が設けられ、
前記電子回路は、前記複数の光路それぞれにおける減光量を合算した値に基づいて火災が発生しているか判定することを特徴とする煙感知器。
【請求項2】
前記暗箱の内側には、筒状をなし複数のスリットまたは導孔を有する筒状遮光壁が設けられ、該筒状遮光壁の内部に前記光源が配置され、前記複数のスリットまたは導孔に対応して前記複数の光路が形成されるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の煙感知器。
【請求項3】
前記外側遮光壁の内側空間の前記複数のスリットまたは導孔に対向する位置に、それぞれ反射板が設けられ、前記反射板で1回反射された光が前記受光素子に入射されるように前記反射板の反射面の角度が設定されていることを特徴とする請求項2に記載の煙感知器。
【請求項4】
前記反射板を介さずに前記光源からの光を前記受光素子へ直接入射させる光路を更に有していることを特徴とする請求項3に記載の煙感知器。
【請求項5】
前記光源の光出射部または前記反射板の光入射部および光出射部または前記受光素子の光入射部に、光束を絞るための光ノズルが設けられていることを特徴とする請求項3または4に記載の煙感知器。
【請求項6】
前記光路に沿って、当該光路に周囲から散乱光が入射するのを防止する散乱光遮光体が設けられていることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の煙感知器。
【請求項7】
前記暗箱の底壁がすり鉢状に形成され、そのすり鉢の中央に前記光源が配設され、
前記光源を囲むようにして前記受光素子および前記反射板が配設されていることを特徴とする請求項3または4に記載の煙感知器。
【請求項8】
前記外側遮光壁の底壁に描かれた仮想楕円の円周に沿って複数の前記反射板が配設され、
前記仮想楕円の一方の焦点に前記光源が配設され、前記仮想楕円の他方の焦点に前記受光素子が配設されていることを特徴とする請求項3または4に記載の煙感知器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、煙感知器に関し、特に減光式スポット型煙感知器に適用して有用な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、火災報知設備に用いられている煙感知器は、感知器内に侵入した煙に発光素子から発せられた光を当て、反射・散乱した光を受光素子で捉え、その信号量により火災を判定し警報を発するスポット型散乱光式が主流である。しかし、消防法で定めている煙濃度を示す単位は%/mで表わされ、単位距離当たりの光の透過度の逆数(減衰量、減光量)を用いている。ところが、散乱光式感知器は、減衰量や減光量を検出するものではないため、検出対象である多様な煙それぞれに応じた適切な調整が難しいとい課題がある。
【0003】
一方、火災報知設備に用いる煙感知器の検出方式の一つに、15m~100mの距離間に送光部と受光部を配置し、その間の空間に侵入した煙粒子による減光量を測定して、火災の判断を行う減光式煙感知器も存在する。また、消防法で定めている煙感知器の試験機に用いられる濃度計は、直接光のみで50cm程の距離で減光量を測定している。そのため、煙濃度を表す単位と同じ煙濃度検出方式(減光式)の小型のスポット型感知器を実現する方法が望まれている。
なお、従来、減光式煙感知器に関する発明としては、例えば特許文献1や特許文献2に記載されているものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公昭54-26863号公報
【特許文献2】特開2003-281643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スポット型煙感知器は、筐体をそれほど大きくすることができないため、筐体の内部空間において、必要な距離の減光用光路を確保することが困難である。
そこで、特許文献1や特許文献2に記載されている減光式煙感知器に関する発明においては、筐体内に複数の反射箇所(反射鏡)を設けて、発光部より発せられた光を複数回反射させてから受光部へ入射させることで、充分な距離の減光用光路を確保するようにしている。そのため、反射鏡の表面の汚損により受光部へ入射する光の量が経年減少し、検出精度が低下するという課題がある。
【0006】
また、特許文献2には、反射鏡の汚損による影響を回避するため、測定光と参照光の反射回数が同一で、検出用光路と参照用光路の距離が異なるように設定し、検出用受光部による受光量と参照用受光部による受光量との比によって煙濃度を算出する技術が記載されている。しかし、検出光と参照光の受光量の比によって煙濃度を算出するには、2個の光源と2個の受光素子を必要とするため、回路が複雑になってしまうという課題がある。
【0007】
本発明は上記のような課題に着目してなされたもので、その目的とするところは、検出精度が良好な減光式のスポット型煙感知器を提供することにある。
本発明の他の目的は、減光式スポット型煙感知器において、光路上に配置された反射板の表面の汚損による影響を受けにくいようにすることにある。
本発明のさらに他の目的は、使用する光源の数が少なくて済む減光式スポット型煙感知器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため本発明は、
煙流入口を有する外カバー部材と該外カバー部材に結合される内カバー部材とからなる筐体の内部に、光源と受光素子とからなる光電式煙検出手段を備えた感知部と、該感知部からの信号に基づいて火災の発生を検出する電子回路が実装された回路基板と、が収納されている煙感知器において、
前記感知部は、煙を通過させることが可能な外側遮光壁が周縁部に円環状に配設されている暗箱と、前記外側遮光壁の内側に配設された1個の光源および1または2以上の受光素子と、を備え、前記光源から前記1または2以上の受光素子に至る複数の光路が設けられ、
前記電子回路は、前記複数の光路それぞれにおける減光量を合算した値に基づいて火災が発生しているか判定するように構成したものである。
【0009】
上記のような構成を有する煙感知器によれば、複数の光路それぞれにおける減光量を合算した値に基づいて火災が発生しているか判定するため、検出精度が良好な減光式のスポット型煙感知器を実現することができる。また、光源を1つ設けるだけで良いため、使用する光源の数を少なくすることができ、長い光路を有しているのと同様の効果が得られる。
【0010】
ここで、望ましくは、前記暗箱の内側には、筒状をなし複数のスリットまたは導孔を有する筒状遮光壁が設けられ、該筒状遮光壁の内部に前記光源が配置され、前記複数のスリットまたは導孔に対応して前記複数の光路が形成されるようにする。
かかる構成によれば、光源として広角の発光素子を使用することで、長い距離を有する光路を設定することができる。
【0011】
また、望ましくは、前記外側遮光壁の内側空間の前記複数のスリットまたは導孔に対向する位置に、それぞれ反射板が設けられ、前記反射板で1回反射された光が前記受光素子に入射されるように前記反射板の反射面の角度が設定されているようにする。
かかる構成によれば、光源からの光が反射板で1回のみ反射されて受光素子に入射されるため、反射板の表面の汚損による影響を受けにくくすることができる。
また、前記反射板を介さずに前記光源からの光を前記受光素子へ直接入射させる光路を更に有しているように構成しても良い。
【0012】
さらに、望ましくは、前記光源の光出射部または前記反射板の光入射部および光出射部または前記受光素子の光入射部に、光束を絞るための光ノズルを設ける。
かかる構成によれば、光ノズルを設けているため、光が拡散するのを防止でき、光ノイズを低減することができる。
【0013】
また、望ましくは、前記光路に沿って、当該光路に周囲から散乱光が入射するのを防止する散乱光遮光体を設ける。
かかる構成によれば、光ノイズによって検出精度が低下するのを防止することができる。
【0014】
また、望ましくは、前記暗箱の底壁がすり鉢状に形成され、そのすり鉢の中央に前記光源が配設され、前記光源を囲むようにして前記受光素子および前記反射板が配設されているようにする。
かかる構成によれば、筐体の径を大きくすることなく各光路の距離を長くすることができる。
【0015】
また、望ましくは、前記外側遮光壁の底壁に描かれた仮想楕円の円周に沿って複数の前記反射板が配設され、
前記仮想楕円の一方の焦点に前記光源が配設され、前記仮想楕円の他方の焦点に前記受光素子が配設されているようにする。
かかる構成によれば、複数の光路のすべての光路長を同一にすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、検出精度が良好な減光式スポット型煙感知器を実現するまた、本発明に係る減光式スポット型煙感知器によれば、光路上に配置された反射板の表面の汚損による影響を受けにくいようにすることができる。さらに、本発明によれば、使用する光源(発光素子)の数が少なくて済む減光式スポット型煙感知器を実現することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明が適用される煙感知器の概略構成を示すもので、(A)は外観図、(B)は内部構成を示すケース断面図である。
【
図2】実施形態の煙感知器の暗箱およびその内部構造の第1の実施例を示すもので、(A)は断面平面図、(B)は(A)におけるB-Bに沿った断面側面図である。
【
図3】暗箱およびその内部構造の第1実施例の変形例を示す断面平面図である。
【
図4】暗箱およびその内部構造の第1実施例の他の変形例を示す断面平面図である。
【
図5】実施形態の煙感知器の箱およびその内部構造の第1実施例のさらに他の変形例を示す断面平面図である。
【
図6】実施形態の煙感知器の暗箱およびその内部構造の第2の実施例を示す断面平面図である。
【
図7】実施形態の煙感知器の暗箱およびその内部構造の第3の実施例を示すもので、(A)は断面平面図、(B)は(A)におけるB-Bに沿った断面側面図である。
【
図8】(A)、(B)は、それぞれ暗箱およびその内部構造の第3実施例の変形例を示す中央断面側面図である。
【
図9】(A)~(C)は、それぞれ実施形態の煙感知器の他の変形例である光ノズルの構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明を適用した減光式スポット型煙感知器の一実施形態について説明する。本実施形態の煙感知器は、火災に伴い発生した煙を感知可能な感知器であり、建造物の天井面などに設置されて使用されるように構成されている。
図1には本実施形態の煙感知器10の概略構成が示されている。このうち、(A)は外観図、(B)は内部構成を示すケース断面図である。
【0019】
本実施形態の煙感知器10は、
図1(A)に示すように、煙の流入口となる複数の開口11Aを有し建造物の天井面に取り付けるためのドーム状の本体ケース(外カバー)11と、該本体ケース11の下側の開口を覆う内カバー12とを備え、本体ケース11と内カバー12とにより内部に感知部を収容するための収容空間を有する筐体が形成される。
そして、
図1(B)に示すように、上記本体ケース11の収容空間内に、煙を通過させることが可能なラビリンス構造の遮光壁を周縁部に有する暗箱13および発光素子や受光素子などの電子部品や受光素子からの信号に基づいて火災の発生を検出する電子回路が実装された回路基板14が配設され、内カバー12を貫通して外部の配線と回路基板14とを電気的に接続するための端子15が設けられている。暗箱13の内部または周囲には防虫網が設けられても良い。
【0020】
(第1実施例)
図2には、本体ケース11の内部に収容される暗箱13およびその内部構造の第1の実施例が示されている。このうち、(A)は暗箱13の上蓋を外した平面図、(B)は(A)におけるB-B線に沿った断面図である。なお、
図1および
図2はそれぞれ理解を容易にするために構成の概略を表わしたもので、
図2は
図1に示されている暗箱13そのものを図示したものではない。
【0021】
図2に示すように、この実施例の暗箱13は、円板状の底壁13Aと、該底壁13Aの周縁部に立設された断面が楔状をなす複数の遮光体が円環状に配設されて構成されたラビリンス構造の外側遮光壁13Bと、底壁13Aの中心部に立設された円筒状の素子遮光壁13Cとを備えている。そして、この素子遮光壁13Cの内部にLED(発光ダイオード)のような発光素子16が配設されているとともに、外側遮光壁13Bの近傍に受光素子17が、さらに発光素子16と受光素子17を取り囲むようにして複数(本実施例では4個)の反射板18が配設されている。
【0022】
上記各反射板18は発光素子16からの光を受光素子17へ向かって反射するように角度が設定されている。これにより、発光素子16から反射板18を経由して受光素子17に至る複数の光路LPが形成されている。そして、発光素子16と受光素子17により、光電式煙検出手段が構成されている。
さらに、暗箱13の底壁13Aおよび上壁13Dの内面には、壁面からの反射光を減衰させるために、微小な凹凸からなる微細構造MSが設けられている。
【0023】
図3~
図5には、本体ケース11の内部に収容される暗箱13およびその内部構造の変形例が示されている。このうち、
図3は反射板18の数を6個としたもの、
図4は反射板18の数を6個とするとともに受光素子17を2個設け、各受光素子17に半数の反射板18からの光を入射させるように設定したものである。
【0024】
また、
図5の変形例は、4個の反射板18を仮想楕円Eの円周に沿って配置するとともに、発光素子16と受光素子17を、楕円の2つの焦点位置にそれぞれ配置したものである。これにより、各光路LPの距離を同一にすることができる。
なお、上記いずれの場合も発光素子16には、例えば360度全方位に均一な光を照射可能な広角型のLED(発光ダイオード)が使用されている。また、発光素子16および受光素子17のリード端子16a,17aは、暗箱13の底壁13Aおよび回路基板14を貫通して下方へ突出し、回路基板14の裏面にて半田により接続されている。
【0025】
さらに、円筒状の素子遮光壁13Cには、反射板18が配設されている位置に対応して、発光素子16の数だけスリットまたは径の小さな導孔S(
図4)が形成されており、発光素子16から放出された光はスリットまたは導孔Sを通って各反射板18に照射される。そして、各反射板18は照射された光を受光素子17へ向かって反射するように角度がそれぞれ設定されている。
そして、回路基板14上の検出回路は、4個の反射板18で反射され受光素子17に入射されたすべての光の合算値に基づいて減光量を算出し、算出された減光量が所定値を超えた場合に火災と判定し、火災発生を報知する。なお、上記素子遮光壁13Cは円筒状に限定されず、断面が多角形をなす角筒であってもよい。
【0026】
上記のように、本実施例の暗箱を備えた煙感知器においては、1つの発光素子16に対して4個または6個の反射板18を設けることで、4つまたは6つの光路を作り、それぞれの光路を経た4つまたは6つの光を受光素子17で受光することによって、4つまたは6つの光路の光量を合算して減光量を算出するようにしている。
そのため、各光路の距離は短いとしても、合算した減光量は、1つの光路の4倍または6倍の距離を有する光路を通った光と同等の減光量となり、煙感知器の試験機に用いられている濃度計と同等の性能を実現することができる。具体的には、反射板18の数が4個の暗箱の場合には4つの光路の距離の合計を、また反射板18の数が6個の暗箱の場合には6つの光路の距離の合計を、50cm程度確保することにより、現行の煙感知器の試験機に用いられている濃度計と同等の光路距離が得られる。
【0027】
さらに、1つの光路当りの反射回数が1回であるため、経年使用により反射板の表面が汚れたとしても、複数回反射を取り返すタイプに比べて信号量の減少が少なくて済み、減光量の算出への影響が少ないという利点がある。
また、反射板18として鏡を用いずに、白色等の反射率の高い色を付与した樹脂板を使用することが可能となり、コストダウンを図ることができる。なお、反射板以外の部分は、反射が少ない無反射塗料等で表面処理しても良い。
【0028】
(第2実施例)
図6には、暗箱13およびその内部構造の第2の実施例が示されている。
第2の実施例は、暗箱13の内部空間で煙粒子によって生じる散乱光が受光素子17へ入射するのを防止するため、発光素子16と4個の反射板18との間および各反射板18と受光素子17と間に、光路LPを形成しつつ散乱光を遮る「ハ」の字配置の多数の遮光壁からなるラビリンス構造体19を設けたものである。
【0029】
図6に示すように、本実施例を適用した暗箱を備えた煙感知器においては、ラビリンス構造体19によって、発光素子16と4個の反射板18との間に4本の光路LPが形成され、4個の反射板18と受光素子17と間に4本の光路LPが形成されている。
本実施例によれば、ラビリンス構造体19によって、煙粒子により生じる散乱光が受光素子17へノイズとして入射するのを防止することができ、それによって発光素子16から発せられた光が所定距離進む間に煙粒子に衝突することで減少する減光量を正確に検出することができるようになる。
【0030】
(第3実施例)
図7には、暗箱13およびその内部構造の第3の実施例が示されている。このうち、(A)は平面図、(B)は断面図である。
第3の実施例は、暗箱13の内部空間で煙粒子に衝突することで減少する減光量を検出するための受光素子17Aと、暗箱13の内部空間で煙粒子によって生じる散乱光の量を検出するための受光素子17Bとを設け、受光素子17Aの信号と受光素子17Bの信号に基づいて減光量および散乱光量を演算し、両方の演算結果に基づいて火災発生の判定を行うように構成したものである。
【0031】
図7(A)に示すように、減光量を検出するための構成は
図6のものと同じであるので、ここでは散乱光の量を検出するための構成について説明する。
本実施例においては、散乱光の量を検出するための受光素子17Bが、発光素子16を挟んで減光量検出用の発光素子17Aと反対側の位置に、受光面が発光素子16側を向くように配置されている。また、暗箱13の底壁13Aの中心に立設された円筒状の素子遮光壁13Cには、受光素子17B側にスリットまたは導孔が形成されている。
【0032】
さらに、本実施例においては、
図7(B)に示すように、受光素子17Bと発光素子16との間に、直接入射を防止する遮光壁19aが設けられているとともに、受光素子17Bの光軸が傾斜し遮光壁19aの延長面と交差するように配設されている。
本実施例によれば、発光素子16から受光素子17B側へ発せられた光のうち直接受光素子17Bへ向かう光は遮光壁19aによって遮られ、受光素子17Bへ直接入射するのが防止される。
【0033】
一方、発光素子16から斜め上方へ発せられた光は、暗箱空間に内の煙粒子に当たって散乱し、その散乱光の一部が受光素子17Bへ入射されるため、受光素子17Bの信号に基づいて散乱光の光量を算出することができる。また、減光量は他方の受光素子17Aの信号に基づいて算出することができる。従って、両方の演算結果に基づいて火災発生の判定を行うことで精度の高い火災判定が可能となる。
【0034】
(変形例)
次に、
図8および
図9を用いて、上記実施例の煙感知器の変形例について説明する。
図8に示す変形例は、第3実施例の煙感知器における暗箱13の底壁13Aおよびその上方空間を、平坦ではなく、(A)に示すように中央に向かって下り傾斜するすり鉢状、または(B)に示すように中央に向かって上り傾斜する円錐状に構成したものである。この変形例によれば、感知器のケースの直径が限られている場合に、同じ暗箱の直径でも光路を斜めとすることで光路の距離を長くとることができるという利点がある。
【0035】
図9に示す変形例は、発光素子16から発せられた光の拡散を防止して光ノイズを低減するため、各光路LPに対応した光ノズルを設けたものである。(A)は発光素子16を収納する素子遮光壁13Cに各出射光路LPに対応して複数の光ノズル21を設けたもの、(B)は反射板18の入射光路LPと出射光路LPにそれぞれ光ノズル22を設けたもの、(C)は受光素子17の前方に各反射板18からの入射光路に対応した光ノズル23を設けたものである。
【0036】
なお、各光ノズル21~23はパイプ状をなしており、ノズルの内壁面には微小な凹凸からなる微細構造MSが設けられている。このような構造を有する光ノズルによれば、光路壁内面からの反射光が減少するため、ノズルから出た光の拡散を防止することができ、光束の径が細いまま反射板18や受光素子に達することができる。その結果、複数の光路LPの距離が異なっていても、減光量の算出に与える拡散の影響を低減することができ、散乱光の受光を低減できる。
【0037】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態のものに限定されるものではない。例えば、前記実施形態では、発光素子16から発せられた光を反射する反射板18を配設していると説明したが、反射板18の位置に暗箱13の底壁13Aから立設する起立壁を設けて、その表面に光反射率の高い塗料を塗布して反射体とするように構成しても良い。
【0038】
また、前記実施形態では、各光路で1回ずつ反射を行うように構成しているが、反射板を設けずに、発光素子より発せられた光を直接受光素子に入射させるようにしてもよい。なお、その場合、発光素子(光源)の数は増えることとなる。複数の光路のうち一部の光路のみ発光素子からの光を直接受光素子に入射させるように構成しても良い。
さらに、前記実施形態では、本発明をスポット型煙感知器に適用した場合について説明したが、本発明は例えば可搬式の小型煙感知器の試験機に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0039】
10 火災感知器(光電式煙感知器)
11 本体ケース(外カバー)
11A 開口部(煙流入口)
12 内カバー
13 暗箱
13A 底壁
13B 外側遮光壁
13C 素子遮光壁(筒状遮光体)
13D 上壁
14 回路基板
15 端子
16 発光素子
17 受光素子
18 反射板