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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141677
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04W 36/32 20090101AFI20241003BHJP
   H04W 64/00 20090101ALI20241003BHJP
   H04W 84/12 20090101ALI20241003BHJP
   H04W 4/33 20180101ALI20241003BHJP
   H04W 36/38 20090101ALI20241003BHJP
【FI】
H04W36/32
H04W64/00 171
H04W84/12
H04W4/33
H04W36/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053464
(22)【出願日】2023-03-29
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、総務省、電波資源拡大のための研究開発「リアルタイムアプリケーションを支える動的制御型周波数共用技術に関する研究開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】301022471
【氏名又は名称】国立研究開発法人情報通信研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】大須賀 徹
(72)【発明者】
【氏名】板谷 聡子
(72)【発明者】
【氏名】大堀 文子
(72)【発明者】
【氏名】松村 武
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA23
5K067EE02
5K067EE16
5K067JJ39
5K067JJ52
(57)【要約】
【課題】製造現場のように様々なノイズ等が発生する無線環境において、サーチを行う必要をなくしてサーチや切り替えにかかる時間を短縮しつつ、個々の移動無線機器で観測した無線環境情報のみで判断するよりも適切なアクセスポイントへ接続できるようにする通信システムを提供する。
【解決手段】AGVのように無線通信を用いて移動指示等を受信しながら移動する無線機器に対し、中央で管理するコントローラが通信状況やチャネルの混雑率等の無線環境情報と移動無線機器の位置情報とアクセスポイントや建物・設備の位置情報をもとに制御ポリシを作成し、前記移動無線機器が制御ポリシに従って通信経路を切り替えさせながら無線通信を行うようにした通信システム。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載され無線通信制御手段とデータ送受信手段とを有し、無線ネットワークを介してデータ通信を行う移動無線機器と、前記移動無線機器の管理を行う移動無線機器管理装置と、前記無線ネットワーク上の無線環境情報の管理を行う無線環境情報管理部と、前記無線ネットワーク上の無線環境情報及び制御ポリシの送受信を行う第1の情報ポリシ送受信手段とを有し、管理対象エリア全体を管理するコントローラを備えた通信システムにおいて、
前記移動無線機器は、
前記移動無線機器の位置情報を計測し、計測した位置情報を管理する位置情報計測管理手段と、
あらかじめ定められた時間間隔ごと及び/又は前記移動無線機器の通信イベントごとに、前記位置情報計測管理手段から前記位置情報を取得し、前記第1の情報ポリシ送受信手段に通知する第2の情報ポリシ送受信手段と、を有し、
前記コントローラは、
前記管理エリアの設備配置マップを格納するとともに、前記第1の情報ポリシ送受信手段により前記移動無線機器の位置情報を受信して移動経路マップとして格納するマップ情報管理部と、
前記無線環境情報管理部から無線環境情報を取得し、前記情報マップ情報管理部から前記移動無線機器の位置情報を取得し、前記無線環境情報及び位置情報に基づき制御ポリシを作成するポリシ作成手段と、を有する
ことを特徴とする通信システム。
【請求項2】
前記位置情報は、少なくとも水平方向の直交する2方向及び/又は垂直方向の情報を含むことを特徴とする請求項1記載の通信システム。
【請求項3】
前記マップ情報管理部において、複数の移動無線機器の位置情報を格納していることを特徴とする請求項1又は2記載の通信システム。
【請求項4】
前記マップ情報管理部において、あらかじめ管理者により、アクセスポイントの場所、固定された壁及び/又は柱、固定設置された設備の場所の情報のうち、いずれか一以上の情報を格納していることを特徴とする請求項1記載の通信システム。
【請求項5】
前記ポリシ作成手段において、前記移動無線機器が使用しているチャネルを含む複数の無線チャネルの混雑率及び/又は受信信号強度の情報と、前記移動無線機器のアクセスポイントからの距離の情報と、前記移動無線機器の進行方向と前記アクセスポイントのある方向の関係情報と、壁及び/又は柱、固定設置された設備による見通しの情報のうち、少なくとも2つ以上の情報を用いて、接続するアクセスポイントを決定することにより、制御ポリシを作成することを特徴とする請求項1記載の通信システム。
【請求項6】
前記ポリシ作成手段において、前記制御ポリシを作成した後、移動経路マップに従って無線機器が移動した際の実績に基づいて、設定された閾値よりも短い時間で別のアクセスポイントに切り替えたアクセスポイントを接続先から除外する方法、スループット、遅延時間、エラー率のいずれかが設定された閾値よりも悪かったアクセスポイントを接続先から除外する方法、受信信号強度が設定された閾値よりも高かったアクセスポイントを接続先に追加する方法、いずれか一以上の方法で前記制御ポリシを更新することを特徴とする請求項5記載の通信システム。
【請求項7】
前記無線通信制御手段は、前記第1の情報ポリシ送受信手段から通知された前記制御ポリシをもとに前記データ送受信手段の動作を制御することを特徴とする請求項1記載の通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システムに関する。特にAGV(Automated Guided Vehicle)のように無線通信を用いて移動指示等を受信しながら移動する無線機器に対し、適切な通信経路に切り替えさせながら無線通信を行うことで、無線機器が移動してもQoS(Quality of Service)を維持する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
製造現場や物流倉庫では、部品や仕掛品の余剰削減のため、搬送車を用いて部品や仕掛品を必要なときに必要な分だけ供給する仕組みが導入されている。また、省人化や生産効率の向上のため、AGV等の無人搬送車を用いたオートメーション化が進められてきている。ここで、AGVは製造現場や物流倉庫の建屋内外を移動するため有線で通信を行うことができないので、無線通信によって移動指示等を受信する。また、製造現場や物流倉庫では、一定の周期で同じ部品や仕掛品が要求されたり完成したりするため、AGVの移動経路や移動のタイミングには周期性があるという特徴がある。
【0003】
ここで、無人搬送車へ無線通信を行う上での課題が2つある。
1つ目はサーチや切り替えにかかる時間である。例えば製造現場では、無人搬送車以外にも無線工具等の無線を使用する機器が多く存在し、これらを収容するため多くのチャネルを利用可能にしていることが多い。そのため、無人搬送車は適切なアクセスポイントを見つけるために多くのチャネルをサーチする必要があり、サーチに時間がかかってしまう。また、無人搬送車の移動に伴い次々とアクセスポイントを移っていく必要があるため、その都度前記のサーチ時間が発生してしまう。また、アクセスポイントの切り替えの際に通信が遮断するため、移動指示等を受信できるまでに時間がかかってしまう。無人搬送車は一定時間移動指示等を受信しない場合、安全のため停止するように設計されているため、この遮断時間を短くする必要がある。
【0004】
2つ目は適切でないアクセスポイントへの接続である。無人搬送車の移動範囲をカバーするためには、多くのアクセスポイントを設置する必要がある。また、製造現場や物流倉庫では、部品や仕掛品、製造用の機械、建屋の壁等の金属体が多く、また一部の金属体は動いている。そのため、一時的に見通しや反射の関係で受信信号強度が高くなった遠くのアクセスポイントを適切なアクセスポイントだと誤認して接続し、すぐにQoSが劣化するということが起こり得る。また、接続時点では適切なアクセスポイントであっても、無人搬送車の移動方向から見て後方にあるアクセスポイントだった場合、無人搬送車の移動に伴いすぐにQoSが劣化するということが起こり得る。
【0005】
従来、前記無人搬送車へ無線通信を行う上での課題に対し、下記の特許文献1乃至非特許文献1のような技術が提供されてきた。
【0006】
特許文献1では、中央で全体を管理するコントローラが制御ポリシを作成して各無線機器に通知し、前記無線機器は前記コントローラから通知された制御ポリシと自身で収集した周辺の無線環境情報をもとに制御を実施する技術が開示されている。
【0007】
非特許文献1では、無線機器に複数の無線インターフェースを具備させ、あらかじめ各無線インターフェースで異なるアクセスポイントやチャネルに接続しておき、無線品質に応じて使用する無線インターフェースを切り替えることで、遮断時間を発生させずに通信経路を切り替える技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2019-176390号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Toru Osuga et al., ''Design of Smart Resource Flow Wireless Platform for Flexible Factory Communication,'' The 22nd International Symposium on Wireless Personal Multimedia Communications, Nov. 2019.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に開示されている技術は、前記コントローラが制御ポリシとして通信に用いるチャネル等を決定し、前記無線機器は前記コントローラから通知された制御ポリシに従ってチャネルの切り替えを行うことで、サーチを行う必要がなくなり、サーチにかかる時間をなくすことができる。
【0011】
また、特許文献2に開示されている技術は、複数の無線インターフェースを具備した無線機器は必要となるものの、あらかじめ複数のアクセスポイントに接続しておくことで、遮断時間を発生させずに通信経路を切り替えることができる。そのため、これらを組み合わせることで、前記1つ目の課題であるサーチや切り替えにかかる時間の課題を解決することができる。
【0012】
一方で、特許文献1と非特許文献1を組み合わせたシステムでは、前記2つ目の課題である適切でないアクセスポイントへの接続の課題は解決できていないため、前記システムにおいて、特に特許文献1の制御ポリシを作成する際に適切なアクセスポイントを選定する仕組みを導入する必要がある。
前記課題を解決したものであり、本発明の目的とするところは、無線環境情報のサーチを行う必要をなくしてサーチや切り替えにかかる時間を短縮しつつ、個々の移動無線機器で観測した無線環境情報のみで判断するよりも適切なアクセスポイントへ接続可能とし、無線機器が移動してもQoSを維持可能な通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記問題点を解決するために、AGVのように無線通信を用いて移動指示等を受信しながら移動する無線機器に対し、中央で管理するコントローラが通信状況やチャネルの混雑率等の無線環境情報と移動無線機器の位置情報とアクセスポイントや建物・設備の位置情報をもとに制御ポリシを作成し、前記移動無線機器が制御ポリシに従って通信経路を切り替えさせながら無線通信を行う通信システムを発明した。
【0014】
第1発明に係る通信システムは、移動体に搭載され無線通信制御手段とデータ送受信手段とを有し、無線ネットワークを介してデータ通信を行う移動無線機器と、前記移動無線機器の管理を行う移動無線機器管理装置と、前記無線ネットワーク上の無線環境情報の管理を行う無線環境情報管理部と、前記無線ネットワーク上の無線環境情報及び制御ポリシの送受信を行う第1の情報ポリシ送受信手段とを有し、管理対象エリア全体を管理するコントローラを備えた通信システムにおいて、前記移動無線機器は、前記移動無線機器の位置情報を計測し、計測した位置情報を管理する位置情報計測管理手段と、あらかじめ定められた時間間隔ごと及び/又は前記移動無線機器の通信イベントごとに、前記位置情報計測管理手段から前記位置情報を取得し、前記第1の情報ポリシ送受信手段に通知する第2の情報ポリシ送受信手段と、を有し、前記コントローラは、前記管理エリアの設備配置マップを格納するとともに、前記第1の情報ポリシ送受信手段により前記移動無線機器の位置情報を受信して移動経路マップとして格納するマップ情報管理部と、前記無線環境情報管理部から無線環境情報を取得し、前記情報マップ情報管理部から前記移動無線機器の位置情報を取得し、前記無線環境情報及び位置情報に基づき制御ポリシを作成するポリシ作成手段と、を有することを特徴とする。
【0015】
第2発明に係る通信システムは、第1発明において、前記位置情報は、少なくとも水平方向の直交する2方向及び/又は垂直方向の情報を含むことを特徴とする。
【0016】
第3発明に係る通信システムは、第1発明又は第2発明において、前記マップ情報管理部において、複数の移動無線機器の位置情報を格納していることを特徴とする。
【0017】
第4発明に係る通信システムは、第1発明において、前記マップ情報管理部において、あらかじめ管理者により、アクセスポイントの場所、固定された壁及び/又は柱、固定設置された設備の場所の情報のうち、いずれか一以上の情報を格納していることを特徴とする。
【0018】
第5発明に係る通信システムは、第1発明において、前記ポリシ作成手段において前記移動無線機器が使用しているチャネルを含む複数の無線チャネルの混雑率及び/又は受信信号強度の情報と、前記移動無線機器のアクセスポイントからの距離の情報と、前記移動無線機器の進行方向と前記アクセスポイントのある方向の関係情報と、壁及び/又は柱、固定設置された設備による見通しの情報のうち、少なくとも2つ以上の情報を用いて、接続するアクセスポイントを決定することにより、制御ポリシを作成することを特徴とする。
【0019】
第6発明に係る通信システムは、第5発明において、前記ポリシ作成手段において、前記制御ポリシを作成した後、移動経路マップに従って無線機器が移動した際の実績に基づいて、設定された閾値よりも短い時間で別のアクセスポイントに切り替えたアクセスポイントを接続先から除外する方法、スループット、遅延時間、エラー率のいずれかが設定された閾値よりも悪かったアクセスポイントを接続先から除外する方法、受信信号強度が設定された閾値よりも高かったアクセスポイントを接続先に追加する方法、いずれか一以上の方法で前記制御ポリシを更新することを特徴とする。
【0020】
第7発明に係る通信システムは、第1発明において、前記無線通信制御手段は、前記第1の情報ポリシ送受信手段から通知された前記制御ポリシをもとに前記データ送受信手段の動作を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、第1発明~第7発明によれば、AGVのように無線通信を用いて移動指示等を受信しながら移動する無線機器に対し、中央で管理するコントローラが通信状況やチャネルの混雑率等の無線環境情報と移動無線機器の位置情報とアクセスポイントや建物・設備の位置情報をもとに制御ポリシを作成し、前記移動無線機器が制御ポリシに従って通信経路を切り替えさせながら無線通信を行う。これによって、無線環境情報のサーチを行う必要をなくしてサーチや切り替えにかかる時間を短縮しつつ、個々の移動無線機器で観測した無線環境情報のみで判断するよりも適切なアクセスポイントへ接続できるようにすることで、無線機器が移動してもQoSを維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明を適用した通信システムが構築される工場の概念図である。
図2図2は、本発明の実施形態1を示す通信システムの概略ブロック図である。
図3図3は、実施形態1におけるアクセスポイント決定のための制御ポリシ作成にかかる情報の例を示す図である。
図4図4は、実施形態1におけるアクセスポイント更新方法の制御ポリシの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明を適用した通信システムの実施形態について、ブロック図を用いて詳細に説明する。なお、ブロック図における符号については、同様の機能をもったブロック図には、特別な事情のない限り、同じ符号を用いるものとする。
【0024】
<実施形態1>
本実施形態の通信システムは、図1に示すように、工場100などの無線ネットワークシステムに適用して使用される。図1の例では、複数の製造ラインA、Bと部品置場Cなどが存在し、製造ラインA、Bの製造プロセス効率化のために、無人搬送車(AGV)103が製造ラインA、B間、部品置場Cと製造ラインA、B間を、部品(運搬)搬送を行っている概念図を表している。製造ラインA、B上には多数の無線機器101(無線IoTデバイスを搭載した製造工具やロボットなど)が設置され、製造ラインのリアルタイム監視がなされている。無線機器101は工場内の特定エリア(特定空間)をカバーする無線LANアクセスポイント(AP)との通信を行い、工場を監視する上位のコントローラとデータのやり取りを行う。無人搬送車(AGV)103には本実施形態の移動無線機器が搭載され、無線LANアクセスポイントを切替えて移動し、部品の自動搬送などを行う。
【0025】
ここで、図1の例は、工場のレイアウトを示しており、管理エリアの設備配置マップを表している。図1中の矢印は、無人搬送車(AGV)の移動経路マップ例の概略マップを示す。設備配置マップとは、工場内に配置された製造設備、製造ライン、付帯設備、無線機器、無線アクセスポイント(AP)、自動搬送車(AGV)のせ設置状況の配置図全般をいう。図1には、図示されていないが固定された壁や柱なども含まれる。AGVの自動搬送において、障害となる設備は位置なども含めてマップ化して電子データで保存しておくのが好ましい。移動経路マップとは、無人搬送車(AGV)は自律走行するときの経路(ルート)マップのことをいう。例えば、AGVは工場内で部品などを運搬するために、同一の製造ラインにおいて、現在工程から次工程に部品搬送したり、製造ラインと部品置き場を往復し、製造ラインの工程を順次搬送したり、完成した部品を他の工場に運搬したりする。無人搬送車(AGV)は電子地図上に経路情報を座標データとして、保有している。これらの管理エリアの設備配置マップや移動経路マップは、図2のマップ情報管理部に格納されており、AGVが必要の都度、設備配置マップや移動経路マップを読込んで自動搬送を行う。
【0026】
工場100内の柱(金属製またはコンクリート製)104や金属製の移動体(部品)など、工場内の無線環境は絶えず変化し、ノイズ電波などの補完電波を発信している環境下にあり、適切でないアクセスポイントへの接続をさせる原因があるが、AGVのように無線通信を用いて移動指示等を受信しながら移動する無線機器に対し、中央で管理するコントローラが通信状況やチャネルの混雑率等の無線環境情報と移動無線機器の位置情報とアクセスポイントや建物・設備の位置情報をもとに制御ポリシを作成し、前記移動無線機器が制御ポリシに従って通信経路を切り替えさせながら無線通信を行う。これによって、サーチを行う必要をなくしてサーチや切り替えにかかる時間を短縮しつつ、個々の移動無線機器で観測した無線環境情報のみで判断するよりも適切なアクセスポイントへ接続できるようにすることで、無線機器が移動してもQoSを維持することができる。
【0027】
製造ラインの機械や、金属体、柱などで無人搬送車(AGV)が無人で部品を運ぶイメージを表している。製造ラインには、多数の無線機器が備えられており、多数の無線アクセスポイントが工場の柱などに所定間隔毎に設置されている。
【0028】
<実施形態1:構成>
本発明の通信システムは、最小構成としては、図2のように無線ネットワーク2を介してデータ通信を行う移動無線機器1と移動無線機器管理装置3と、中央で全体を管理するコントローラ4によって構成される。移動無線機器1は従来から備えている情報ポリシ送受信部12、無線通信制御部13、データ送受信部14に加えて位置情報計測管理手段11を備え、コントローラ4は従来から備えている情報ポリシ送受信部41、無線環境情報管理部42に加えてマップ情報管理部43を備え、ポリシ作成部が従来の無線環境情報だけでなく前記移動無線機器の位置情報や移動経路の情報も加味して制御ポリシを作成することを特徴とする。移動無線機器管理装置3は、データ送受信部30を有している。
【0029】
<実施形態1:構成の説明>
<実施形態1:構成の説明:移動無線機器>
位置情報計測管理部11は、移動無線機器1の位置情報を計測し、情報ポリシ送受信部12に通知する。ここで、前記位置情報は少なくとも水平方向の直行する2方向を含み、加えて垂直方向の情報を含んでもよい。また、位置の情報だけでなく、移動方向や移動速度の情報を含んでもよい。また、前記位置情報はGPS(Global Positioning System)等の測位システムを用いて計測された絶対的な位置情報でもよいし、特定のランドマークからの距離や、設定されたポイントから移動方向と移動速度と時間で計算した相対的な位置情報でもよい。また、尺度や軸の方向は緯度/軽度のように定義が決まっているものでもよいし、X軸方向/Y軸方向のように独自に定めたものでもよい。
【0030】
情報ポリシ送受信部12は、あらかじめ定められた時間間隔ごと及び/又はパケット送受信やフローの開始/終了等のイベント(通信イベント)ごとに、データ送受信部14から無線ネットワーク2上の無線環境情報を収集し、コントローラ4の情報ポリシ送受信部41に通知する。ここで、前記無線環境情報は、例えばデータ送受信部14が通信しているフローのスループットや遅延時間、エラー率といった通信の状況や、使用しているチャネルの混雑率や受信信号強度等である。ここで、情報ポリシ送受信部12での処理は特許文献1と同様である。また、あらかじめ定められた時間間隔ごと及び/又は移動方向や移動速度の変更等のイベントごとに、位置情報計測管理部11から前記位置情報を取得し、コントローラ4の情報ポリシ送受信部41に通知する。
【0031】
コントローラ4の情報ポリシ送受信部41は、移動無線機器1の情報ポリシ送受信部12から通知された無線環境情報を無線環境情報管理部42に格納する。ここで、無線環境情報管理部42での処理は、特許文献1と同様である。また、移動無線機器1の情報ポリシ送受信部12から通知された位置情報をマップ情報管理部43に格納する。
【0032】
マップ情報管理部43は、コントローラ4の情報ポリシ送受信部41によって前記位置情報を格納される。ここで、移動無線機器1が複数存在し、それぞれの移動無線機器1から通知される前記位置情報の単位等が異なる場合は、単位を揃えて格納してもよい。また、あらかじめ管理者等の手によって、アクセスポイントの場所や固定壁や柱、固定設置された設備の場所の情報を格納されていてもよく、また、移動無線機器1の移動経路が固定的である場合は、前記移動経路の情報を格納されていてもよい。
【0033】
ポリシ作成部44は、無線環境情報管理部42から無線環境情報を取得し、マップ情報管理部43から位置情報を取得し、これらをもとに制御ポリシを作成してコントローラ4の情報ポリシ送受信部41に通知する。制御ポリシの作成は、図3に示すように、アクセスポイント決定のための制御ポリシにかかる情報のうち、少なくとも2つ以上の情報を用いて、接続するアクセスポイントを決定することにより、行う。ポリシ作成部44において、例えば移動無線機器1が使用しているチャネルを含む複数の無線チャネルの混雑率及び/又は受信信号強度の情報と、移動無線機器1のアクセスポイントからの距離の情報と、前記移動無線機器の進行方向とアクセスポイントのある方向の関係情報と、壁及び/又は柱、固定設置された設備等による見通しの情報のうち、から少なくとも2つ以上の情報を用いて、接続するアクセスポイントを決定することにより、制御ポリシを作成する方法である。また、前記方法に限らず、例えば前記方法で決定した接続先にあるアクセスポイントに対し、過去の同じ経路の周回において、短い時間で別のアクセスポイントに切り替えた実績があるアクセスポイントを接続先から除外する方法であってもよい。また、前記方法で決定した接続先にあるアクセスポイントに対し、過去の同じ経路の周回において、実際に通信した際のスループットや遅延時間、エラー率といったQoSがあらかじめ定められた閾値よりも悪かった実績があるアクセスポイントを接続先から除外する方法であってもよい。更に、前記方法で決定した接続先にないアクセスポイントに対し、受信信号強度があらかじめ定められた閾値よりも良い状態があらかじめ定められた閾値よりも長い時間継続しているアクセスポイントを接続先に追加する方法であってもよい。具体的には、図4に示すように、前記ポリシ作成部44において、前記制御ポリシを作成した後、移動経路マップに従って無線機器が移動した際の実績に基づいて、設定された閾値よりも短い時間で別のアクセスポイントに切り替えたアクセスポイントを接続先から除外する方法(制御ポリシC1)、スループット、遅延時間、エラー率のいずれかが設定された閾値よりも悪かったアクセスポイントを接続先から除外する方法(制御ポリシC2)、受信信号強度が設定された閾値よりも高かったアクセスポイントを接続先に追加する方法(制御ポリシC3)、いずれか一以上の方法で前記制御ポリシを更新しても良い。
【0034】
コントローラ4の情報ポリシ送受信部41は、ポリシ作成部44から通知された前記制御ポリシを前記移動無線機器の情報ポリシ送受信部に通知する。また、前記移動無線機器の情報ポリシ送受信部は前記コントローラの情報ポリシ送受信部41から通知された前記制御ポリシを無線通信制御部13に通知する。ここで、無線通信制御部13での処理は、特許文献1と同様である。
【0035】
無線通信制御部13は、情報ポリシ送受信部12から通知された前記制御ポリシをもとにデータ送受信部14の動作を制御する。ここで、前記動作の制御方法は、前記制御ポリシで指定されたとおりに制御する方法であってもよいし、前記制御ポリシで複数の候補が指定された場合に、前記データ送受信部から前記ネットワークの最新の無線環境情報を収集し、その情報を加味して制御する方法であってもよい。
【0036】
本発明では、AGVのように無線通信を用いて移動指示等を受信しながら移動する無線機器に対し、中央で管理するコントローラが通信状況やチャネルの混雑率等の無線環境情報と移動無線機器の位置情報とアクセスポイントや建物・設備の位置情報をもとに制御ポリシを作成し、前記移動無線機器が制御ポリシに従って通信経路を切り替えさせながら無線通信を行う。これによって、サーチを行う必要をなくしてサーチや切り替えにかかる時間を短縮しつつ、個々の移動無線機器で観測した無線環境情報のみで判断するよりも適切なアクセスポイントへ接続できるようにすることで、無線機器が移動してもQoSを維持することができる。
【0037】
<発明の効果が最も発揮される利用例>
製造現場や物流倉庫のような金属体が多く存在する環境でAGVのような移動無線機器を用いるシステムに適用できる。また、移動無線機器はAGVに限らず、部品や仕掛品に付けたタグ等であったり、巡回ルートがある程度固定されている作業者や警備員等に持たせる情報端末であったりしてもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 移動無線機器
2 無線ネットワーク
3 移動無線機器管理装置
4 コントローラ
11 位置情報計測管理部
12 情報ポリシ送受信部
13 無線通信制御部
14 データ送受信部
30 データ送受信部
41 情報ポリシ送受信部
42 無線環境情報管理部
43 マップ情報管理部
44 ポリシ作成部
100 工場
101 無線機器
102 無線アクセスポイント
103 無人搬送車(AGV)
104 柱(金属製またはコンクリート製:電波反射部材)
図1
図2
図3
図4