(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014168
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】透水性ブロック
(51)【国際特許分類】
E01C 5/06 20060101AFI20240125BHJP
E01C 7/32 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
E01C5/06
E01C7/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116799
(22)【出願日】2022-07-22
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 発行日 令和4年2月20日,「令和3年度土木学会西部支部研究発表会講演概要集」(CD-ROM),第695-696頁,公益社団法人土木学会西部支部 〔刊行物等〕開催日 令和4年3月5日,学会名「令和3年度土木学会西部支部研究発表会」,Web会議システムZOOMを使用したリアルタイムでの発表
(71)【出願人】
【識別番号】504224153
【氏名又は名称】国立大学法人 宮崎大学
(71)【出願人】
【識別番号】504237050
【氏名又は名称】独立行政法人国立高等専門学校機構
(71)【出願人】
【識別番号】522293456
【氏名又は名称】有限会社南建興業
(74)【代理人】
【識別番号】100189854
【弁理士】
【氏名又は名称】有馬 明美
(72)【発明者】
【氏名】木之下 広幸
(72)【発明者】
【氏名】安井 賢太郎
(72)【発明者】
【氏名】南曲 誠
【テーマコード(参考)】
2D051
【Fターム(参考)】
2D051AA02
2D051AE05
2D051AE06
2D051AF01
2D051AF02
2D051AH01
2D051DC09
(57)【要約】
【課題】焼成軽石に着眼することで、高い透水性と十分な強度とを有し、且つ、軽量である透水性ブロックを提供することを目的とする。
【解決手段】内側の透水部を囲むように形成されるフレーム部を有し、前記透水部は焼成軽石とバインダーとを含み前記フレーム部に固定されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側の透水部を囲むように形成されるフレーム部を有し、前記透水部は焼成軽石とバインダーとを含み前記フレーム部に固定されていることを特徴とする透水性ブロック。
【請求項2】
前記焼成軽石は、密度が1.2~2.0g/cm3である焼成ボラであることを特徴とする請求項1に記載の透水性ブロック。
【請求項3】
前記フレーム部は、前記焼成軽石とセメント又は混合セメントとを含むことを特徴とする請求項1に記載の透水性ブロック。
【請求項4】
前記フレーム部に含まれる前記焼成軽石の粒径は、前記透水部に含まれる前記焼成軽石の粒径よりも小さいことを特徴とする請求項2に記載の透水性ブロック。
【請求項5】
前記バインダーが、セメント又は混合セメントであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の透水性ブロック。
【請求項6】
前記バインダーが、焼結助剤であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の透水性ブロック。
【請求項7】
前記焼結助剤は、SiO2を主成分とし、さらにCaOを5~30wt%含むことを特徴とする請求項6に記載の透水性ブロック。
【請求項8】
内側に空間を有するフレーム部を成形し、成形された前記フレーム部の内側に焼成軽石とセメントとを含む混合物を充填・硬化させて、前記フレーム部に固定された透水部を形成することを特徴とする透水性ブロックの製造方法。
【請求項9】
焼成軽石と焼結助剤とを含む混合物を型枠に詰め型枠ごと焼成して透水部を形成し、前記型枠から取り外した前記透水部の周りにバインダーを塗布し、前記透水部の周りにフレーム部を形成して、前記透水部を前記フレーム部に固定することを特徴とする透水性ブロックの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩道や広場に敷設される、透水性ブロックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歩道や広場では、景観や求められる機能に応じてアスファルトによる舗装を行う代わりに、コンクリートブロックの敷設が行われている。コンクリートブロックの中でも透水性ブロックは、地表に降った雨水を地下へ浸透させることにより、地表面の冠水を減少させ、街路樹や植生を保護育成する効果を有している。
【0003】
一方、近年、コンクリートの骨材として用いられる川砂利、川砂、海砂等は、環境への配慮から採取規制や採取禁止が行われ、入手が難しくなってきている。そのため、その代替となる骨材資源の確保が要請されている。
【0004】
このような技術として、例えば、特許文献1に示されるような水分保水調節コンクリート製品が開発されている。特許文献1に示される水分保水調節コンクリート製品は、廃コンクリートを粉砕して得られた粒子に、溶融スラグ、電気炉スラグ、高炉徐冷スラグのうち少なくとも1つのスラグを骨材として加え、さらにセメント及び水分を加えて混合し、成形後、蒸気養生されることにより得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-8733号公報(第4頁~第5頁、
図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示される水分保水調節コンクリート製品は、廃コンクリートやスラグを川砂利等の代替骨材として用いている点、及び廃コンクリートを粉砕して得られた粒子とスラグとの混合比率を変化させることにより透水性と曲げ強度とを変化させることができる点で有効である。しかしながら、上記の水分保水調節コンクリート製品にあっては、透水性ブロックの透水係数の規格値1.0×10-2cm/sを充足しているものの近年増加している局地的豪雨には対応し難いという問題、また、廃コンクリートを粉砕した粒子とスラグとが骨材として用いられるため重量が重くなり、運搬、取扱い、施工が不便であるという問題があった。
【0007】
本発明はこのような問題点に着目してなされたもので、焼成軽石に着眼することで、高い透水性と十分な強度とを有し、且つ、軽量である透水性ブロックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の透水性ブロックは、
内側の透水部を囲むように形成されるフレーム部を有し、前記透水部は焼成軽石とバインダーとを含み前記フレーム部に固定されていることを特徴としている。
この特徴によれば、外部から加えられた荷重は主にフレーム部で受け持ち、雨水は透水部で透過させることができるため、透水性ブロックを高強度、軽量、高透水性とすることができる。
【0009】
前記焼成軽石は、密度が1.2~2.0g/cm3である焼成ボラであることを特徴としている。
この特徴によれば、焼成による焼締まりにより高密度化、高強度化した焼成ボラを透水部に用いるため、透水性ブロックの強度を高くすることができる。
【0010】
前記フレーム部は、前記焼成軽石とセメント又は混合セメントとを含むことを特徴としている。
この特徴によれば、焼成軽石とセメント又は混合セメントとを用いたモルタル又はコンクリートをフレーム部に用いるため、透水性ブロックを軽量化することができる。
【0011】
前記フレーム部に含まれる前記焼成軽石の粒径は、前記透水部に含まれる前記焼成軽石の粒径よりも小さいことを特徴としている。
この特徴によれば、焼成による焼締まりにより高密度化、高強度化した焼成軽石を透水部とフレーム部とに用いるため、透水性ブロックの強度を未焼成のものと比べるとさらに高くすることができる。また、透水部に用いる焼成軽石の粒径をフレーム部の焼成軽石の粒径よりも大きくすることで透水性を高くすることができる。さらに、フレーム部も透水部も焼成軽石を含み、同種の性状を有していることから、焼成軽石同士が強く接合し、フレーム部に透水部を強固に固定できる。
【0012】
前記バインダーが、セメント又は混合セメントであることを特徴としている。
この特徴によれば、セメント又は混合セメントとは接合性が良好であるため透水部とフレーム部との固定強度が高く、透水性ブロックの強度を高くすることができる。
【0013】
前記バインダーが、焼結助剤であることを特徴としている。
この特徴によれば、焼成軽石同士の接合箇所を減少させることにより、セメント又は混合セメントをバインダーとして用いた透水部と同等の曲げ強度を有する透水部を形成することができると共に、空隙率を高めた透水性の高い透水部を形成することができる。
【0014】
前記焼結助剤は、SiO2を主成分とし、さらにCaOを5~30wt%含むことを特徴としている。
この特徴によれば、CaOを焼成軽石よりも多く含むことで、焼成軽石同士の接合性(焼結性)を高め、透水性ブロックの強度をさらに高くすることができる。
【0015】
内側に空間を有するフレーム部を成形し、成形された前記フレーム部の内側に焼成軽石とセメントとを含む混合物を充填・硬化させて、前記フレーム部に固定された透水部を形成することを特徴としている。
この特徴によれば、先に成形したフレーム部の内側の形状に合わせて透水部を形成することができるため、透水部をフレーム部に確実に固定させることができる。また、セメントにより硬化させているため、フレーム部内で均質に透水部を形成できる。
【0016】
焼成軽石と焼結助剤とを含む混合物を型枠に詰め型枠ごと焼成して透水部を形成し、前記型枠から取り外した前記透水部の周りにバインダーを塗布し、前記透水部の周りにフレーム部を形成して、前記透水部を前記フレーム部に固定することを特徴としている。
この特徴によれば、先に成形した透水部の周囲の形状に合わせてフレーム部を形成することができるため、透水部をフレーム部に確実に固定させることができる。また、透水部を焼結助剤を用いて形成しているため、強度が一層強くなる。また、透水部の周りにバインダーを塗布していることから、透水部をフレーム部に強固に固定することができる。
【0017】
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】(a)は実施例1における透水性ブロックを示す斜視図、(b)は透水性ブロックを示す平面図である。
【
図2】(a)は実施例1における透水性ブロックを示す断面図、(b)はフレーム部と、フレーム部に固定された透水部を示す拡大された断面図である。
【
図3】(a)(b)(c)は実施例1における透水性ブロックの製造方法を示す一連の斜視図である。
【
図4】(a)は変形例における透水性ブロックを示す平面図、(b)は変形例における透水性ブロックを示す断面図である。
【
図5】(a)は実施例1における透水性ブロックが敷設された状態を示す斜視図、(b)は敷設された透水性ブロックの透水状態を説明する説明図である。
【
図6】(a)は実施例2における透水性ブロックを示す平面図である。(b)は実施例2における透水性ブロックを示す断面図、(c)は実施例2における透水性ブロックのフレーム部と、フレーム部に固定された透水部を示す拡大された断面図である。
【
図7】(a)(b)(c)は実施例2における透水性ブロックの製造方法を示す一連の斜視図である。
【
図8】は焼成温度と焼成ボラ試料の密度との関係を示すグラフである。
【
図9】は焼成温度と焼成ボラ試料のビッカース硬さとの関係を示すグラフである。
【
図10】はモルタル供試体の曲げ強度を示すグラフである。
【
図11】は透水性ブロック供試体の曲げ強度とポーラス幅Xとの関係を示すグラフである。
【
図12】は透水性ブロック供試体の透水係数とポーラス幅Xとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る透水性ブロックを実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。以下の実施例で説明する材料、配合、製造条件等は本発明の実施する一例であって、これらに限定されるものではない。
【実施例0020】
実施例1に係る透水性ブロックにつき、
図1から
図3を参照して説明する。以下、
図1(a)の紙面左側を透水性ブロックの正面側(前方側)として説明する。
【0021】
図1(a)及び
図1(b)に示されるように、透水性ブロック1は、平面視略ロ型のフレーム部2と、その内側に配置された透水部3と、から主に構成されている。フレーム部2は、焼成軽石である焼成ボラ3aを細骨材としたモルタルより形成される。
【0022】
図2(a)及び
図2(b)に示されるように、透水部3は、焼成軽石である焼成ボラ3a同士をセメントペースト4で接合させることにより形成される。また、透水部3は、フレーム部2の内周面2aにセメントペースト4で接合されることでフレーム部2に固定されている。
【0023】
図2(a)及び
図2(b)に示されるように、焼成ボラ3aは多孔質の軽石の一つであるボラを焼成したものであり、表面や内部に多くの細孔3bを有している。セメントペースト4で接合された焼成ボラ3a同士の間及び焼成ボラ3aと内周面2aとの間には、空隙5が形成されており、水を浸透させやすくなっている。また、透水部3は、表面(上面)及び裏面(下面)が共に開放されている。なお、
図2においては、説明の便宜上、セメントペースト4が焼成ボラ3aの周囲に薄く略均厚で設けられている形態として模式しているが、実際にはセメントペースト4の厚さはバラバラであって隣接する焼成ボラ3a同士の間に亘って存在する箇所もある。
【0024】
次に、焼成ボラ3aの製造方法について説明する。焼成ボラ3aの原料となるボラは、南九州地域で豊富に産出される軽石であるため、採取規制や採取禁止の対象となっている川砂利等の代替骨材として有効に活用することができると共に、ボラを用いた透水性ブロックの量産化を図ることができる。また、ボラは多孔質であるため、水分や養分を適度に吸収する性質や良好な排水性を有している。また、ボラは、SiO2を67.2%,Al2O3を20.1%,Fe2O3を5.0%,K2Oを2.98%含んでいるものを用いた。ボラの化学成分の一例を表1に示す。
【0025】
【0026】
焼成ボラ3aの製造には、鹿児島県・宮崎県産のボラを用いた。また、透水性ブロック1には、未焼成のボラおよび電気炉を用い900~1100℃で焼成された焼成ボラ3aを用いた。
【0027】
次に、透水性ブロック1の製造方法について説明する。
図3(a)に示されるように、先ず、粒径2mm以下の焼成ボラ3aに、セメント及び水を混ぜたモルタルを平面視ロ型の型枠に充填し、脱型、養生することにより、フレーム部2を成形する。先行してフレーム部2を成形することにより、透水性ブロック1の製造が容易になる。この時のモルタルの配合は、焼成ボラ3aが1120kg/m
3、セメントが520kg/m
3、水が260kg/m
3、である。尚、本明細書において、粒径は篩により分級したものである。
【0028】
次に、
図3(b)に示されるように、粒径4~7mmの焼成ボラ3a、セメントペースト4からなる混合物を、成形したフレーム部2の内側に充填し、再び養生することにより、透水部3を形成する。この時の透水部3の配合は、焼成ボラ3aが614kg/m
3、セメントが183kg/m
3、水が42kg/m
3、である。これにより、透水部3が内周面2aと接合しフレーム部2に固定された透水性ブロック1が成形される(
図3(c))。
【0029】
このようにすることで、先に成形したフレーム部2の内側の形状に合わせて透水部3を形成することができるため、透水部3をフレーム部2に確実に固定させることができる。また、セメントペースト4により透水部3を硬化させているため、フレーム部2内で均質に透水部3を形成することができる。言い換えると透水部3に形成される空隙5が上下左右に亘って大きな偏りなく略均等に分配されている。
【0030】
次に、変形例に係る透水性ブロック10につき、
図4を参照して説明する。尚、前記実施例と同一構成で重複する構成を省略する。
【0031】
図4(a)及び
図4(b)に示されるように、変形例に係る透水性ブロック10の下部にはフレーム部2に結合した底部6が形成される。そして、図示されていない透水部3はセメントペースト4によりフレーム部2の内周面2a、底部表面6a及び排水孔7の周囲に接合し固定されるため、透水性ブロック1よりさらに高い強度を有する透水性ブロック10を提供することができる。
【0032】
また、底部6には、排水孔7が形成されているため、透水性ブロック10の透水部3を透過する水を地中Gに排出させることができる。
【0033】
次に、透水性ブロック1の使用状態について説明する。
図5(a)に示されるように、透水性ブロック1は、所要の地面に敷設される。敷設される場所としては、歩道、広場、公園、駐車場等が想定される。
【0034】
図5(b)に示されるように、敷設された透水性ブロック1の表面に降った雨水Wは、透水部3の表面から空隙5を経て地中Gに排出されるため、敷設された透水性ブロック1の表面は冠水しにくい。そのため、透水性ブロック1は、近年増加している局地的豪雨にも対応できる排水能力を有している。
【0035】
また、
図5(b)に示されるように、街路樹等の周囲を透水性ブロック1で敷設した場合、透水性ブロック1を透過して地中Gに排出された雨水Wが、地中Gで伸びている街路樹等の根Rに行き亘るため、水不足による街路樹等の立枯れを防ぐことができる。
【0036】
次に、焼成ボラの焼成温度を変化させることにより、焼成ボラの密度、ビッカース硬さがどの様に変化するかを調べた。ボラの焼成は、1時間に100℃のペースで焼成温度(最高1100℃)まで上昇させ、焼成温度では1時間保持し、その後室温まで炉冷することにより行った。密度の測定に用いる焼成ボラは焼成ボラ試料4~6、ビッカース硬さの測定に用いる焼成ボラは焼成ボラ試料1~6とした。また、比較のため、未焼成ボラについても未焼成ボラ試料として密度とビッカース硬さを測定した。各試料の焼成温度、密度、ビッカース硬さを、表2に示す。
【0037】
【0038】
図8に示されるように、焼成温度が900℃である焼成ボラ試料4の密度は、未焼成ボラ試料の密度より低い。これは、焼成による焼締まり(焼結と収縮)がまだ十分に進んでいない一方、焼成前のボラに含まれていた水分が焼成により蒸発したため、及び有機成分が気化したためと考えられる。焼成温度が1000℃(焼成ボラ試料5)、1100℃(焼成ボラ試料6)と上昇するにしたがい、各焼成ボラ試料の密度は高くなる。これは、焼成温度が上昇するにしたがい、焼成ボラ試料の焼締まりが進むためである。
【0039】
図9に示されるように、焼成ボラ試料のビッカース硬さは、未焼成から800℃まではほとんど変化がないものの、800℃から900℃にかけては緩やかな上昇が、900℃から1100℃にかけては急激な上昇がみられる。これは、800℃から焼成ボラ試料の焼成による焼締まりが始まるためである。
【0040】
焼成ボラ試料以外の物質のビッカース硬さについてみると、銀は平均25HV,モルタルは平均45HV,ステンレスは平均187HV,強化ガラスは平均640HVである。このことから、900~1100℃で焼成された焼成ボラは、軽量骨材として利用できる十分な硬さを有していることがわかる。
【0041】
次に、モルタルに用いられる細骨材の種類、及びモルタルの材齢により、モルタルの曲げ強度がどの様に変化するかを調べた。曲げ強度の測定は、40mm×40mm×160mmのブロック状に成形したモルタル供試体1~9について行った。また、夫々のモルタル供試体には、細骨材として、焼成ボラ、未焼成ボラ及び砕砂を用いた。また、曲げ強度の測定は、材齢が3,7,28日の夫々のモルタル供試体について行った。各モルタル供試体に用いる細骨材の種類、モルタルの配合、測定時の材齢を表3に示す。
【0042】
【0043】
図10に示されるように、曲げ強度を同じ材齢で比較すると、細骨材として焼成ボラを用いたモルタル供試体の曲げ強度は、未焼成ボラを用いたモルタル供試体よりも高い値を示している。
【0044】
次に、モルタルに用いられる細骨材の種類により、モルタル供試体の比強度がどの様に変化するかを調べた。比強度は、モルタル供試体の曲げ強度/モルタル供試体の密度、で算出される。焼成ボラ、未焼成ボラ及び砕砂を夫々細骨材として用いたモルタル供試体の比強度を表4に示す。
【0045】
【0046】
表4に示されるように、細骨材として焼成ボラを用いたモルタル供試体の比強度は3.89であり、砕砂を骨材として用いた供試体の比強度3.83と同程度の値を有している。このことから、焼成ボラは、軽量骨材として十分に利用可能であることがわかる。
【0047】
上記、焼成ボラ3aの密度及びビッカース硬さ、焼成ボラ3aを骨材として用いたモルタル供試体の曲げ強度及び比強度から、900~1100℃の温度範囲で焼成された焼成ボラ3aは、軽量且つ高強度の骨材としての利用が十分可能であると共に、川砂利等の代替となる骨材資源として有効である。
【0048】
次に、実施例1に係る透水性ブロック1の透水部の占める範囲を変化させることにより、透水性ブロック1の曲げ強度がどの様に変化するかを調べた。透水部の占める範囲は、透水部の縦幅(以下、ポーラス幅Xという(
図1(b)参照))を変化させることにより調整される。曲げ強度の測定には、縦幅98mm×横幅198mm×高さ60mmの透水性ブロック供試体1~4を用いた。また、比較として、フレーム部2に細骨材として未焼成ボラを用いた透水性ブロック供試体5~8,砕砂を用いた透水性ブロック供試体9~12についても曲げ強度の測定を行った。
【0049】
また、実施例1に係る透水性ブロック1における透水部3の占める範囲を変化させることにより、透水性ブロック1の透水係数がどの様に変化するかを調べた。透水係数の測定には、透水性ブロック供試体2,3,4を用いた。
【0050】
各透水性ブロック供試体の、フレーム部2に用いる細骨材の種類、フレーム部2に用いるモルタルの配合、ポーラス幅Xを表5に示す。
【0051】
【0052】
図11に示されるように、フレーム部2に同じ細骨材を用いた透水性ブロック供試体同士では、ポーラス幅Xが増加するにしたがい、サンプルの曲げ強度は減少する。これは、ポーラス幅Xの増加に伴い、曲げ応力を負担するフレーム部の縦幅Y1,Y2(
図1(b)参照)が、減少するためである。
【0053】
また、
図11に示されるように、同じポーラス幅Xの透水性ブロック供試体同士で曲げ強度を比較すると、フレーム部2に焼成ボラを用いた透水性ブロック供試体は、フレーム部2に砕砂を用いた透水性ブロック供試体よりも低い値を示す一方、フレーム部に未焼成ボラを用いた透水性ブロック供試体よりは高い値を示している。
【0054】
また、
図11に示されるように、フレーム部に焼成ボラを用いた透水性ブロック供試体2~4の曲げ強度は、透水性ブロックの曲げ強度の規格値である3.0N/mm
2以上の値を示していることから、透水性ブロックとして十分な強度を有していることがわかる。
【0055】
図12に示されるように、ポーラス幅Xが増加するにしたがって、透水性ブロック供試体の透水係数は増加している。これは、ポーラス幅Xが増加することで透水性ブロック供試体における透水部の占める範囲が大きくなり、透水効果が大きくなるためである。
【0056】
また、
図12に示されるように、透水性ブロック供試体2,3,4の透水係数は、夫々10×10
-2cm/s,19×10
-2cm/s,23.9×10
-2cm/sであり、透水性ブロックの透水係数の規格値である1.0×10
-2cm/sの約10~24倍の値を示している。透水係数が1.0×10
-2cm/sである透水性ブロックは、1時間当たり約36mmの雨量浸透機能を有している。そのため、例えば、ポーラス幅Xが28mmである透水性ブロック供試体2は、1時間当たり360mmの雨量浸透機能を有しており、2020年7月に発生した熊本豪雨の1時間当たりの降水量約120mmの約3倍の雨量浸透機能を有している。これらのことから、透水性ブロック供試体2,3,4は、近年増加している局地的豪雨にも対応できる極めて高い透水性を有している。
透水部30における焼成ボラ3aの密度は、上記実施例1に係る透水部3の密度と異なってもよい。これは、バインダーに焼結助剤8を用いる場合と、セメントペースト4を用いる場合では、焼成ボラ3a同士の接合強度が異なるからである。バインダーに焼結助剤8を用いた際に,セメントペースト4を用いる場合よりも高い接合強度が得られる場合は、透水部30に用いる焼成ボラ3aの密度を低くし、焼成ボラ3a同士の接合箇所を減少させても、透水部3と同等の曲げ強度を得ることができると共に、透水性を高くすることができる。
次に、透水部30の周りにセメントペースト4を塗布する。これにより、透水部30とフレーム部2の内周面2aとの接合性を高めることができる。また、透水部30の周囲にモルタルを充填する際に、空隙5がモルタルにより埋められるのを防ぐことができる。
これにより、先に成形した透水部30の周囲の形状に合わせてフレーム部2を形成することができるため、透水部30をフレーム部2に確実に固定させることができる。また、透水部30の周りにセメントペースト4を塗布していることから、透水部30をフレーム部2に強固に固定することができる。
次に、実施例2に係る透水性ブロック100から得られる透水性ブロック供試体の透水係数と曲げ強度についても測定を行ったところ、上記、実施例1に係る透水性ブロック供試体と同等の結果が得られた。
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
また、バインダーにはセメントペーストや焼結助剤を用いたがこれに限らず、エポキシ系、ポリエステル系、アクリル系、シリコン系、酢酸ビニル系などの公知のバインダーを用いてもよい。
また、前記実施例1では、焼成ボラとセメントペーストとの混合物を、先に成形したフレーム部に流し込むことにより透水性ブロックを成形したが、これに限らず、先に透水部を成形した後、型枠内に透水部を載置し、透水部の周囲にモルタルを充填しフレーム部を形成してもよい。また、透水部とフレーム部とを別個に成形し、透水部の周りにセメントペーストを塗布した後、透水部をフレーム部の内側に嵌合して固定してもよい。
また、前記変形例に係る透水性ブロック100の底部6には、排水孔7が2箇所形成されているが、これに限らず、排水孔7の数は適宜増減させてもよい。また、排水孔7の形状は円形に限らず、楕円、矩形等、種々の形状であってもよい。
また、前記実施例2では、先に成形し周りにセメントペーストを塗布した透水部を型枠Fの略中央部に載置し、透水部の周囲にモルタルを充填し、型枠Fごと焼成することによりフレーム部に固定された透水部を形成したが、これに限らず、先に成形したフレーム部を型枠F内に載置し、フレーム部の内側に焼成軽石と焼結助剤とを含む混合物を充填し、型枠Fごと焼成することによりフレーム部に固定された透水部を形成してもよい。
また、フレーム部や透水性ブロックを成形するために用いられる型枠の材質や構造は特に限定されるものではなく、例えば、型枠を金属製とし、内側に抜け勾配を設けてもよい。これによれば、金属製の型枠は剛性が高いため、フレーム部や透水性ブロックの成形を行う際変形しにくい。また、抜け勾配により、フレーム部や透水性ブロックの脱型が容易にできるため、量産化が可能となる。