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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141689
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】留置針
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/06 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
A61M25/06 514
A61M25/06 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053478
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】亀井 一成
(72)【発明者】
【氏名】大澤津 正稀
(72)【発明者】
【氏名】三宅 貴子
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA24
4C267BB04
4C267BB19
4C267BB24
4C267CC01
4C267CC08
(57)【要約】
【課題】 留置針の向きによらずに高い操作性を実現することができる留置針を提供する。
【解決手段】 留置針は、所定の軸線方向に沿って延びる内針と、内針に貫通される外針と、内針の基端部を保持する内針ハブと、本体部および分岐部を含む外針ハブと、本体部に外嵌する外嵌部および外嵌部から側方へ延びる板状部を有する翼部と、を備え、内針ハブは外針ハブに対して軸線回りに回動可能であり、翼部は外針ハブに対して軸線回りに回動可能である。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の軸線方向に沿って延びており生体に穿刺される内針と、
前記内針に貫通されており穿刺される前記内針と共に生体に挿入される外針と、
前記内針の基端部を保持する内針ハブと、
前記外針の基端部を保持すると共に前記内針を前記軸線方向に沿って基端側へ抜去可能な本体部、および、前記本体部から分岐すると共に前記外針の内部に連通する流路を有する分岐部、を含む外針ハブと、
前記外針ハブの前記本体部に外嵌する外嵌部、および、外嵌部から前記軸線方向に交差する側方へ延びる板状部、を有する翼部と、
を備え、
前記内針ハブは前記外針ハブに対して前記軸線回りに回動可能であり、
前記翼部は前記外針ハブに対して前記軸線回りに回動可能である、
留置針。
【請求項2】
前記内針ハブは、前記外針ハブに対して前記内針ハブを回動可能な状態と回動不能な状態との間で切り替え可能な切替部を有し、
前記翼部と前記外針ハブとの間には、回転トルクが所定の設定値以上のときに前記翼部が前記外針ハブに対して回動可能となるトルク発生部が設けられており、前記設定値は0.13cN以上に設定されている、
請求項1に記載の留置針。
【請求項3】
前記設定値は、1.0cN以下に設定されている、
請求項2に記載の留置針。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生体に穿刺されて留置される外針を有する留置針に関する。
【背景技術】
【0002】
点滴等の輸液や人工透析に用いられる医療器具として留置針が知られている。例えば特許文献1の留置針は、患者の血管内に穿刺されるニードル(31)と、このニードルに貫通され内針が患者に穿刺されることで内針と共に患者の血管に挿入されるカテーテル(21)と、を備えている。このうちニードルはニードルハブ(34)に保持され、カテーテルはカテーテルアダプター(24)に保持されている。また、カテーテルアダプターに対して外方へ延びる一対のウィング(26)が一体的に設けられており、施術者はこのウィングを把持しつつ操作することで、患者への穿刺を安定的に行えるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2004-528127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の留置針は、カテーテルアダプターに対してサイドポート(22)が設けられ、このサイドポートには延長チューブ(25)が接続されるようになっている。このような留置針を実際に現場で使用する場合、その周囲の状況や施術者の利き手などによっては、カテーテルアダプターに対してサイドポートを一方側に位置させた方が都合のよい場合もあれば、逆に他方側に位置させた方が都合のよい場合もある。
【0005】
ここで、留置針が備えるニードルは、先端が斜めにカットされた開口を有する形状となっており、穿刺時にはこの開口を手前(患者の体表から離れる側)に向けて操作されるのが好ましい。従って、上述した都合により、カテーテルアダプターに対してサイドポートの位置を変更すると、内針の開口方向も変更されてしまって不都合が生じる。また、ウィングの向きが変更されると、施術者が把持したときの感覚も違ってしまうため好ましくない。
【0006】
そこで本開示は、留置針の向きによらずに高い操作性を実現することができる留置針を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の態様に係る留置針は、所定の軸線方向に沿って延びており生体に穿刺される内針と、前記内針に貫通されており穿刺される前記内針と共に生体に挿入される外針と、前記内針の基端部を保持する内針ハブと、前記外針の基端部を保持すると共に前記内針を前記軸線方向に沿って基端側へ抜去可能な本体部、および、前記本体部から分岐すると共に前記外針の内部に連通する流路を有する分岐部、を含む外針ハブと、前記外針ハブの前記本体部に外嵌する外嵌部、および、外嵌部から前記軸線方向に交差する側方へ延びる板状部、を有する翼部と、を備え、前記内針ハブは前記外針ハブに対して前記軸線回りに回動可能であり、前記翼部は前記外針ハブに対して前記軸線回りに回動可能である。
【0008】
これにより、外針ハブ、内針ハブ、および、翼部のそれぞれが、お互いに独立して他に対して回動可能となる。従って、現場において施術者にとって便宜となるように各構成の向きを決定することができ、操作性の向上を図ることができる。
【0009】
また、本開示の第2の態様に係る留置針は、第1の態様において、前記内針ハブは、前記外針ハブに対して前記内針ハブを回動可能な状態と回動不能な状態との間で切り替え可能な切替部を有し、前記翼部と前記外針ハブとの間には、回転トルクが所定の設定値以上のときに前記翼部が前記外針ハブに対して回動可能となるトルク発生部が設けられており、前記設定値は0.13cN以上に設定されていてもよい。
【0010】
これにより、翼部に対して外針ハブが、分岐部(あるいは、これに接続されたチューブ及びチューブ端部に設けられるコネクタ)の自重によって施術者の操作によらずに回動するのを防止できる。その結果、施術者が操作しない限り翼部に対して外針ハブが勝手に回動しにくくなるため、円滑に施術できるようになる。
【0011】
また、本開示の第3の態様に係る留置針は、第2の態様において、前記設定値は、1.0cN以下に設定されていてもよい。
【0012】
これにより、翼部と外針ハブとを相対的に回動させる場合に、過度に大きなトルクを必要としない。従って、翼部に対して外針ハブを回動させる場合には、回動させやすく、操作性が向上する。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、留置針の向きによらずに高い操作性を実現することができる留置針を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本開示に係る留置針の外観構成を示す平面図である。
図2図2は、図1のII-II線で切断した留置針の構成を示す断面図である。
図3図3は、翼部の構成を示す斜視図である。
図4図4は、図2の一部を拡大して示す拡大断面図である。
図5図5は、留置針の動作態様を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の実施の形態に係る留置針について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明で用いる方向の概念は、説明する上で便宜上使用するものであって、各開示の構成の向き等をその方向に限定するものではない。また、以下に説明する留置針は本開示の一実施形態に過ぎない。従って、本開示は以下の実施形態に限定されず、開示の趣旨を逸脱しない範囲で構成の追加、削除、または変更が可能である。
【0016】
図1は、本開示に係る留置針1の外観構成を示す平面図である。図2は、図1の留置針1をII-II線で切断したときの構成を示す断面図である。図1に示すように、留置針1は、鋭利な針先2aを有する管状の内針2と、管状を成して内針2が貫通される外針3とを備えている。
【0017】
このうち内針2は、所定の軸線L1方向に沿って延びており、患者(生体)に穿刺されるべく針先2aは軸線L1に対して斜めにカットされ、軸線L1に交差する方向(図1の紙面手前側)に向いた開口2bを有している。また、外針3には、このような内針2が挿入されて、内針2の先端部は外針3の先端部から突出される。従って、この状態で穿刺が行われると、外針3は内針2と共に生体に挿入される。
【0018】
なお、以下では説明の便宜から、軸線L1に沿う方向を前後方向といい、かつ、穿刺時に内針2および外針3を進める方向を前方、その反対を後方という。また、軸線L1に直交する方向であって図1の紙面に沿った方向を左右方向または側方という。さらに、前後方向および左右方向の両方に直交する方向を上下方向といい、図1の紙面手前側を上方、その反対を下方という。従って、図1において留置針1の内針2および外針3は前後方向に延びており、内針2の針先2aの開口2bは上方へ向いている。
【0019】
留置針1は、内針2の基端部を保持する内針ハブ4、および、外針3の基端部を保持する外針ハブ5を備えている。また、外針ハブ5は、その内部を通じて内針2を軸線L1方向の後方(基端側)へ抜去可能な本体部10と、この本体部10から分岐すると共に外針3の内部に連通する流路21(図2参照)を有する分岐部20とを含んでいる。
【0020】
本体部10は、前後方向に軸心を有する大略円筒状を成し、前側本体部11および後側本体部12を有する。前側本体部11は、内部に挿通された外針3の基端部を保持すると共に、外周部分には後述する翼部6が取り付けられる。なお、前側本体部11の後端付近には径方向に延びて内外を連通する貫通孔が設けられており、この貫通孔に外方から挿入されたカシメ部材により外針3の基端部がカシメられることで、本体部10に外針3が保持される。
【0021】
後側本体部12の内部空間には栓7および栓ホルダ8が収容されている。栓7は弾性部材から成る有底筒状の部材であり、底部を前方にして収容されている。内針2は栓7を貫通するように軸線L1に沿って設けられている。栓ホルダ8は、大略円筒状を成しており、後側本体部12の内面と栓ホルダ8の外面との間で栓7を挟むようにして保持する。
【0022】
栓ホルダ8の後端には径方向外側へ張り出したツバ部8aが設けられている。また、栓ホルダ8においてツバ部8aの前方には径方向外側へ突出した係合突起8bが設けられており、後側本体部12の後部には径方向に内外を貫通する係合孔12aが形成されている。従って、後側本体部12内に栓7と共に栓ホルダ8を入れ、栓ホルダ8が所定位置に至ると、後側本体部12が径方向の外側へ変形した後、係合突起8bが係合孔12aに対応する位置で径方向の内側へ復帰する。これにより、栓ホルダ8は後側本体部12内に軸線L1方向に位置決めされる。また、栓ホルダ8の側面には断面が非円形となるように一対の平面部が形成され、本体部10内面には平面部に対応するような面が形成されている。これにより、栓ホルダ8は後側本体部12内に軸周り方向に位置決めされる。結果、後側本体部12内で栓7が安定的に保持される。なお、後側本体部12が径方向の外側へ変形しやすいように後側本体部12基端に軸線L1方向へ延びる一対のスリットを設けるのが好ましい。
【0023】
外針ハブ5が有する分岐部20は、後側本体部12の前端から後方かつ側方へ向かって軸線L1に対して斜め方向(図1の例では、軸線L1に対して約45度の方向)へ延びている。この分岐部20は大略円筒状を成し、内部の流路21の一端は、後側本体部12の前端付近であって栓7よりも前側の位置で、後側本体部12の内部の流路と合流している。
【0024】
分岐部20の後端には、例えば、人工透析装置等の外部装置から供給された血液が通る延長チューブ22が接続されている。すなわち、延長チューブ22の先端が分岐部20の後端に接続され、延長チューブ22の後端には外部装置(あるいは外部装置から延びるチューブ)と接続するためのコネクタ23が設けられている。さらに、延長チューブ22の途中には、延長チューブ22内の液体の通流を制御するクリップ24が取り付けられている。
【0025】
図1に示すように、外針ハブ5には本体部10と分岐部20との間に架け渡されるように複数本のリブ25が設けられている。このリブ25は、本体部10の左端(分岐部20とは反対側の端)から右へ延び、分岐部20の幅方向の中央位置まで、略円弧状に延びている。各リブ25は同心円状に互いに間隔をあけて、外針ハブ5の上面および下面に設けられており、内針ハブを把持して外針ハブから離間させるときには施術者の手に接触して滑り止めを成す。
【0026】
一方、内針ハブ4は、前後方向に軸心を有する大略筒状であり、前側筒部30と後側筒部31とを備えている。前側筒部30の外観は角が丸められた四角柱状を成し、同様に四角柱状の内部空間を有している。図2に示すように、前側筒部30の内部空間と栓ホルダ8の内部空間とは連通しており、両空間にまたがるようにしてプロテクタホルダ32が収容されている。更に、このプロテクタホルダ32内にはプロテクタ本体33が収容されている。
【0027】
詳しい説明は省くが、プロテクタ本体33は、穿刺後に抜去される内針2の針先を内方に収容するものであり、内針2の針先をプロテクタ本体33内に収容した状態で、これらと共にプロテクタホルダ32も引き抜かれる。
【0028】
前側筒部30の外面(周面)には一対のフック(切替部)34が設けられている。フック34は、支点部34a、操作部34b、および作用部34cを有している。支点部34aは前側筒部30の側面から径方向外側へ突出して設けられている。操作部34bは支点部34aの先端から後方へ延びており、作用部34cは支点部34aの先端から前方へ延びている。
【0029】
作用部34cの前端は径方向内側へ屈曲しており、内針ハブ4が外針ハブ5に装着されている状態では、栓ホルダ8のツバ部8aに係合している。すなわち、外針ハブ5の後側本体部12の後端には、軸線L1を挟んで対向する2箇所に切り欠き12bが形成されている。そして、この切り欠き12bを通じて、外針ハブ5内に収容されている栓ホルダ8のツバ部8aが部分的に露出している。フック34の作用部34cの前端は、このようにして露出したツバ部8aに係合する。
【0030】
フック34がツバ部8aに係合している状態では、内針ハブ4は外針ハブ5に対して軸線L1回りに回動不能である。一方、施術者が一対のフック34に対して、操作部34bを径方向の内側へ押圧するよう操作すると、作用部34cが径方向の外側へ変位してツバ部8aとの係合が解除される。このとき、内針ハブ4は軸線L1回りに回動可能となる。従って、フック34とツバ部8aとが非係合状態のときに、例えば180度回転させて向きを変えて操作部34bへの押圧操作を解除すると、再び作用部34cがツバ部8bに係合して内針ハブ4は外針ハブ5に対して回転不能に固定される。
【0031】
図2に示すように、内針ハブ4の後側筒部31は、その内部に内針2を保持する針保持部35を有している。針保持部35は内針2の基端部を固定的に保持しており、内針ハブ4を軸線L1回りに回動させたときには、内針ハブ4と共に内針2も一体的に回動する。従って、内針2および内針ハブ4は一体的に、外針ハブ5に対して軸線L1回りに回動可能となっており、かつ、フック34の操作によって外針ハブ5に対して軸心L1回りに位置決めされる。
【0032】
図3は、翼部6の構成を示す斜視図である。図1および図3に示すように、翼部6は外嵌部40および2枚の板状部41を有している。外嵌部40は内周面40aを有する円筒状を成しており、この内周面40aは外嵌部40の軸心に直交する断面の輪郭がほぼ真円を成している。また、板状部41は、外嵌部40の左右の側方へ延びている。板状部41は平面視で略矩形状を成し、その主面(表面および裏面のうち少なくとも一方)には円形の凹部41aと、前後方向へ延びる凸状または凹状の条部41bとが形成されている。また、板状部41の外嵌部40に近い側の部分には遠い側の部分に比べて相対的に高さが低く且つ厚み寸法が小さい低面部41cが形成されている。従って、翼部6が把持されるとき、2つの板状部41が上方に起立した状態となり、この際に低面部41cの一部が外嵌部40の外面に当接可能とされている。
【0033】
一対の板状部41はほぼ同一平面内に位置しているが、当該平面は外嵌部40の軸心を通らず、この軸心に対してオフセットして位置している。そのため、翼部6は表面(上面)側の構成と裏面(下面)側の構成とが同一ではなく、表裏対称とはなっていない。従って、穿刺するときの翼部6の向き(どちらの面を手前に向けるか)は構成により予め設定されている。なお、ここでは図1の翼部6において手前に向けられている面を表面6a、その反対側の面を裏面6bとし、穿刺時には表面6aを手前(患者の体表から離れる方向)に向けて操作されるものとする。
【0034】
この翼部6は、外針ハブ5に対して軸線L1回りに回動可能に装着されている。図4は外針ハブ5において翼部6が装着される部分(図2の一点鎖線で囲んだ部分)を拡大して示す断面図である。この図4に示すように、外針ハブ5の本体部10の前側本体部11は、翼部6の外嵌部40が外嵌して装着される装着部50を有している。装着部50の外周面50aは、軸線L1に直交する断面の輪郭がほぼ真円を成し、その径は翼部6の外嵌部40の内周面40aの径とほぼ同一である。また、外周面50aの前後方向の寸法は、内周面40aの前後方向の寸法とほぼ同一、または、内周面40aの前後方向の寸法より少し長くなっている。なお、外周面50aの後端には、径方向の内方へ窪んで周回する周回溝50bが形成されている。
【0035】
外針ハブ5において装着部50に隣接する前後の部分は、装着部50よりも大径となっている。具体的には、外針ハブ5(前側本体部11)において装着部50の後方には拡径方向へ延びる段差部51が設けられている。前側本体部11は、段差部51の外側の端部から後方へ向かうに従って更に拡径した構成となっている。換言すれば、前側本体部11の後部11aは、前方へ向かうに従って徐々に小径化しており、段差部51を経て装着部50に至っている。
【0036】
一方、前側本体部11において装着部50の前方には係止部52が周回して設けられている。係止部52は、前側のテーパ部52aおよび後側の拡径部52bを有する。テーパ部52aは、前側本体部11の前部11bから徐々に大径化する部分であって、図4に示すように断面の輪郭は軸線L1に対して傾斜するテーパ状を成している。従って、テーパ部52aは、図4の前方の径が小さく後方の径が大きい、切頭円錐形状を成している。
【0037】
拡径部52bは、テーパ部52aの後端から後方へ延びる円筒状を成しており、その後端は段差部53を介して装着部50の前端に接続されている。また、拡径部52bの径寸法は装着部50の径寸法よりも大きく、装着部50の前端から拡径部52bの後端へ、段差部53は拡径方向へ延びている。
【0038】
このように前後を段差部51,53で挟まれた装着部50に、翼部6は外嵌して装着されている。すなわち、翼部6は外針ハブ5の前方から軸線L1に沿って外針ハブ5に組み付けられる。このとき、翼部6の外嵌部40はテーパ部52aを超えて装着部50に外嵌する。装着部50に外嵌した翼部6は、前後の段差部51,53により位置決めされるため、例えば外針ハブ5から抜けることがなく、操作時のガタつきも抑えられる。
【0039】
このようにして翼部6が外針ハブ5に装着された結果、翼部6は、外針ハブ5に対して軸線L1回りに回動可能となっている。また、前述したように内針2および内針ハブ4も、外針ハブ5に対して軸線L1回りに回動可能である。従って、施術者は穿刺時に、内針2、外針ハブ5、および、翼部6の向きを、都合に応じて適宜変更することができる。例えば図5に示すように、翼部6の表面6aを手前に向けたまま、かつ、内針2の針先2aの開口2bの向きを手前に向けたまま、外針ハブ5の向きを180度変更することが可能である。
【0040】
ここで、本開示に係る留置針1では、翼部6と外針ハブ5との間にトルク発生部60が設けられている。より詳しくは、翼部6の外嵌部40の内周面40aと外針ハブ5の装着部50の外周面50aとが、トルク発生部60を構成している。トルク発生部60は、翼部6と外針ハブ5との間に作用する軸線L1回りの回転トルクが所定の設定値以上のときに、翼部6が外針ハブ5に対して回転可能とする機能を発揮する。
【0041】
トルク発生部60の上記機能は、例えば、上述した内周面40aと外周面50aとの間の摩擦力によって達成することができ、これは、内周面40aの内径と外周面50aの外径とを調整することによって実現できる。ただし、これは一例であり、他の構成により上記機能を実現してもよい。例えば、内周面40aおよび外周面50aの材質を適宜選択し、上記設定値を実現できるようにしてもよい。
【0042】
また、トルク発生部60は、内周面40aおよび外周面50aの間の摩擦力によって上記機能を発揮させる構成に替えて、機械的な構成によって上記機能を発揮するものとしてもよい。例えば、翼部6には内周面40aから内方へ付勢されたバネ部材を設け、装着部50の外周面50aには周方向に離散して配置された複数の凹部を設ける。この場合、バネ部材と凹部とが係合すると外針ハブ5に対して翼部6は安定的に位置決めされ、上記設定値以上の回転トルクを付与するとバネ部材と凹部との係合が外れて回動可能になる。
【0043】
トルク発生部60における上記設定値としては、透析用として採用されうる延長チューブ、コネクタ及びクリップや輸液用として採用されうる延長チューブ、コネクタやクリップを用いた検証結果から、0.13cN以上の値が好適に採用されることが分かった。すなわち、設定値の下限値を0.13cNとすることにより、穿刺時等において、外針ハブ5に対して翼部6が、施術者の意図しない状態で回動する事態を低減することができる。
【0044】
例えば、本開示に係る留置針1は、外針ハブ5が軸線L1に沿った本体部10の他に、軸線L1方向に交差する側方へ延びる分岐部20を有している。また、分岐部20には延長チューブ22が接続され、延長チューブ22にはコネクタ23およびクリップ24が設けられている。従って、外針ハブ5は、分岐部20、延長チューブ22、コネクタ23、および、クリップ24等の自重によって軸線L1回りに回動する可能性がある。しかしながら、トルク発生部60は、上記設定値以上の回転トルクが作用しなければ、翼部6を外針ハブ5に対して回転不能とするため、このような分岐部20等の自重による意図しない回動が抑制される。
【0045】
また、トルク発生部60における上記設定値としては、本開示に係る留置針1では1.0cN以下の値が好適に採用される。すなわち、設定値の上限値を1.0cNとすることにより、施術者が外針ハブ5に対して翼部6を回動させるときに、過度に大きな力を必要とせず、操作性の向上を図ることができる。
【0046】
すなわち、トルク発生部60の設定値を大きくするほど、上述したような外針ハブ5の意図しない回動を抑制できる。しかしながら、設定値を大きくし過ぎると、穿刺にあたって外針ハブ5に対して翼部6を回動させるときの操作性が低くなる。そこで、設定値の上限値を1.0cNとすることで、意図しない回動を抑制しつつ、操作性の向上も図ることができる。
【0047】
なお、上記では図1に示した一般的な構成における好適な設定値の一例として、0.13cN以上という下限値を示したが、留置針1の構成や分岐部20に接続される部材に応じて、設定値の下限値を他の値としてもよい。例えば、0.13cNより大きい値として、0.20cN以上、あるいは、0.30cN以上としてもよい。これにより、外針ハブ5の意図しない回動をより確実に抑制することができる。
【0048】
なお、設定値を0.13cN未満とし、翼部6を把持した際に板状部41が外嵌部40を内側に押圧させるようにして、外嵌部40と外針ハブ5との固定を一時的に強固にし、穿刺時に翼部6と外針ハブ5が相対回転しないようにしてもよい。この場合、翼部6が外針ハブ5に沿うように翼部6に低面部41cを設けることが好ましく、さらに低面部41c上に外針ハブ5を押圧するための凸部を設けるとよい。なお、このような把持時に板状部41が外針ハブ5を押圧して固定する構成を採用すれば、設定値を0.13cN未満など、低くすることができるが、設定値を0.13cN以上にしつつ同構成を採用してもよい。
【0049】
なお、設定値の下限値は、外針ハブ5において軸線L1に対して偏在する構成が生じさせる軸線L1回りの回転モーメント以上の値に設定するのが好ましい。ここで、上記偏在構成が生じさせる軸線L1回りの回転モーメントは、偏在構成(分岐部20および延長チューブ22等)の重量と、偏在構成の重心位置の軸線L1からの距離と、の乗算から求められる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本開示は、点滴等の輸液や人工透析に用いられる留置針に対して好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 留置針
2 内針
3 外針
4 内針ハブ
5 外針ハブ
6 翼部
10 本体部
20 分岐部
34 フック(切替部)
40 外嵌部
41 板状部
60 トルク発生部

図1
図2
図3
図4
図5