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特開2024-141702コルゲート鋼管の内面平滑構造及び内面平滑方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141702
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】コルゲート鋼管の内面平滑構造及び内面平滑方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 9/06 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
F16L9/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053492
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006839
【氏名又は名称】日鉄建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】大高 範寛
(72)【発明者】
【氏名】藤本 雄充
【テーマコード(参考)】
3H111
【Fターム(参考)】
3H111BA02
3H111CA02
3H111CA04
3H111CA43
3H111CB03
3H111CB22
3H111DA26
3H111DB05
(57)【要約】
【課題】内面の粗度係数を低減して流量を確保し、施工効率が良好で工期を短縮することができるコルゲート鋼管の内面平滑構造及び内面平滑方法を提供する。
【解決手段】波形のコルゲート鋼管2の内面を平滑化して粗度係数を低減するコルゲート鋼管の内面平滑構造1において、コルゲート鋼管2の内面に可撓性を有するゴムシート又は樹脂シートからなる内面平滑シート3を取り付ける。また、内面平滑シート3は、5℃~35℃の常温で軟化又は硬化しない素材とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
波形のコルゲート鋼管の内面を平滑化して粗度係数を低減するコルゲート鋼管の内面平滑構造であって、
前記コルゲート鋼管の内面に可撓性を有するゴムシート、樹脂シート、又は布シートからなる内面平滑シートが取り付けられていること
を特徴とするコルゲート鋼管の内面平滑構造。
【請求項2】
前記内面平滑シートは、5℃~35℃の常温で軟化又は硬化しない素材であること
を特徴とする請求項1に記載のコルゲート鋼管の内面平滑構造。
【請求項3】
前記コルゲート鋼管の内面及び前記内面平滑シートのいずれか一方にスリット又は取付孔が形成され、他方に取付フックが形成され、前記スリット又は取り付け孔に前記フックが掛け止められることで前記コルゲート鋼管の内面に前記内面平滑シートが固定されていること
を特徴とする請求項1又は2に記載のコルゲート鋼管の内面平滑構造。
【請求項4】
前記内面平滑シートは、チューブ状となっており、前記チューブ状の内面平滑シートがリングバネで内側から前記コルゲート鋼管に押し付けられてコルゲート鋼管の内面に前記内面平滑シートが固定されていること
を特徴とする請求項1又は2に記載のコルゲート鋼管の内面平滑構造。
【請求項5】
波形のコルゲート鋼管の内面を平滑化して粗度係数を低減するコルゲート鋼管の内面平滑方法であって、
前記コルゲート鋼管の内面に可撓性を有するゴムシート又は樹脂シートからなる内面平滑シートを取り付ける内面平滑シート取付工程を有すること
を特徴とするコルゲート鋼管の内面平滑方法。
【請求項6】
前記内面平滑シート取付工程では、前記コルゲート鋼管の内面及び前記内面平滑シートのいずれか一方に形成されたスリット又は取付孔に他方に形成された取付フックを掛け止めて前記コルゲート鋼管の内面に前記内面平滑シートを取り付けること
を特徴とする請求項5に記載のコルゲート鋼管の内面平滑方法。
【請求項7】
前記内面平滑シート取付工程では、前記内面平滑シートは、チューブ状となっており、前記チューブ状の内面平滑シートをリングバネで内側から前記コルゲート鋼管に押し付けて固定して前記コルゲート鋼管の内面に前記内面平滑シートを取り付けること
を特徴とする請求項5に記載のコルゲート鋼管の内面平滑方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波付け加工したコルゲート鋼板を円形又はU形断面に形成したコルゲート鋼管の内面平滑構造及び内面平滑方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
排水管として使用されるコルゲートパイプでは、内面を流れる流量を増やすため、瀝青材からなるペービング材をコルゲート状の内面の波板部に貼り付けることで、粗度係数を下げる方法が用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、湾曲させた波付け鋼板2の内面にアスファルト混合物3を平滑内面が形成されるように被覆した水路用のアスファルト被覆波付け鋼板1において、前記アスファルト混合物3として、骨材は実質的に含まずブローンアスファルトが75±2重量%で残りが充填材であるアスファルト混合材料に、その1m3当たり短繊維を2~6kgを混合させたアスファルト混合物3を用いたアスファルト被覆波付け鋼板1が開示されている(特許文献1の特許請求の範囲の請求項1、明細書の段落[0022]~[0032]、図面の図1図3等参照)。
【0004】
しかし、特許文献1に記載のアスファルト被覆波付け鋼板に用いるペービング材は、瀝青材を使用するため、温度に影響することが多く、夏の暑い時期には、軟化し、他の部材と干渉した箇所に凹みが生じるという問題がある。また、このようなアスファルト被覆波付け鋼板は、反転させた場合、重力によりコルゲート鋼板とペービング材が剥がれるおそれがあるという問題もある。その上、ペービング材は、冬の寒い時期には、衝撃により割れが生じる場合があり、現場での保管や施工時の取り扱いに注意が必要であるという問題もある。
【0005】
それに加え、特許文献1に記載のアスファルト被覆波付け鋼板は、内面を平滑にすることが目的であるが、瀝青材の塊を貼り付けるため、重量が大幅に増え、現場での組立作業の負荷が増すという問題も発生する。また、コルゲート鋼板同士を接合するボルト接続部には、あらかじめぺービング材を付けておくことができないため、組み立てた後に、目地材と呼ばれる現地補修用材料でボルト接続部の溝を埋めていく作業が必要となる。その上、ペービング材とコルゲート(鋼材)の接着には、溶かしたアスファルトが用いられるが、両者をしっかりと接着するためには、コルゲートの表面全体をあらかじめアスファルトでライニングしておく必要があり、非常に手間がかかるという問題もある。
【0006】
このような問題を解決するべく、特許文献2には、コルゲート鋼管素材2a、2bを組み合わせて円形あるいはU形断面に形成したコルゲート鋼管の内面に、補助金具3を取り付け、これに、シート状のガラス繊維に熱可塑性樹脂を含浸させ、前記コルゲート鋼管素材とほぼ同一形状に裁断した耐磨耗性ペービングシート1を取り付けて被覆した内面被覆コルゲート鋼管が開示されている(特許文献2の特許請求の範囲の請求項1,2、明細書の段落[0011]~[0027]、図面の図3等参照)。
【0007】
また、特許文献3には、コルゲート鋼管素材2a、2bを組み合わせて円形断面に形成したコルゲート鋼管の内面下部1/4~1/2周の範囲に、繊維強化熱可塑性樹脂複合材を前記コルゲート鋼管素材とほぼ同一形状に裁断した耐磨耗性ペービングシート1を締結手段3により取り付けて被覆するコルゲート鋼管の内面被覆方法が開示されている(特許文献3の特許請求の範囲の請求項1、明細書の段落[0010]~[0027]、図面の図1図6等参照)。
【0008】
さらに、特許文献4には、コルゲートパイプ本体1と、このコルゲートパイプ本体1内に設けられる平面材2とを備え、前記平面材2は、コルゲートパイプ本体1の内壁面に沿って設けられるとともに、コルゲートパイプ本体1の軸方向に複数に分割された排水路用コルゲートパイプが開示されている(特許文献4の特許請求の範囲の請求項1、明細書の段落[0015]~[0019]、図面の図1図5等参照)。
【0009】
このような特許文献2,3に記載のペービングシートや特許文献4に記載の平面材は、コルゲート鋼管の内面の粗度係数を低減することはできる。しかし、特許文献2,3に記載のペービングシートや特許文献4に記載の平面材は、板状のものであるためコルゲート鋼管とボルトで締結する必要があり、これらの全てのボルトを現地で締結するのに手間がかかり、施工コストが増加するという問題がある。また、ボルト締結箇所が増加することにより、ボルト孔の加工費やボルト自体の材料費も当然増加するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009-275353号公報
【特許文献2】特開平7-158775号公報
【特許文献3】特開平8-270840号公報
【特許文献4】特開平7-252818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明は、前述した問題に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、内面の粗度係数を低減して流量を確保し、施工効率が良好で工期を短縮することができるコルゲート鋼管の内面平滑構造及び内面平滑方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1発明に係るコルゲート鋼管の内面平滑構造は、波形のコルゲート鋼管の内面を平滑化して粗度係数を低減するコルゲート鋼管の内面平滑構造であって、前記コルゲート鋼管の内面に可撓性を有するゴムシート、樹脂シート、又は布シートからなる内面平滑シートが取り付けられていることを特徴とする。
【0013】
第2発明に係るコルゲート鋼管の内面平滑構造は、第1発明において、前記内面平滑シートは、5℃~35℃の常温で軟化又は硬化しない素材であることを特徴とする。
【0014】
第3発明に係るコルゲート鋼管の内面平滑構造は、第1発明又は第2発明において、前記コルゲート鋼管の内面及び前記内面平滑シートのいずれか一方にスリット又は取付孔が形成され、他方に取付フックが形成され、前記スリット又は取り付け孔に前記フックが掛け止められることで前記コルゲート鋼管の内面に前記内面平滑シートが固定されていることを特徴とする。
【0015】
第4発明に係るコルゲート鋼管の内面平滑構造は、第1発明又は第2発明において、前記内面平滑シートは、チューブ状となっており、前記チューブ状の内面平滑シートがリングバネで内側から前記コルゲート鋼管に押し付けられてコルゲート鋼管の内面に前記内面平滑シートが固定されていることを特徴とする。
【0016】
第5発明に係るコルゲート鋼管の内面平滑方法は、波形のコルゲート鋼管の内面を平滑化して粗度係数を低減するコルゲート鋼管の内面平滑方法であって、前記コルゲート鋼管の内面に可撓性を有するゴムシート又は樹脂シートからなる内面平滑シートを取り付ける内面平滑シート取付工程を有することを特徴とする。
【0017】
第6発明に係るコルゲート鋼管の内面平滑方法は、第5発明において、前記内面平滑シート取付工程では、前記コルゲート鋼管の内面及び前記内面平滑シートのいずれか一方に形成されたスリット又は取付孔に他方に形成された取付フックを掛け止めて前記コルゲート鋼管の内面に前記内面平滑シートを取り付けることを特徴とする。
【0018】
第7発明に係るコルゲート鋼管の内面平滑方法は、第5発明において、前記内面平滑シート取付工程では、前記内面平滑シートは、チューブ状となっており、前記チューブ状の内面平滑シートをリングバネで内側から前記コルゲート鋼管に押し付けて固定して前記コルゲート鋼管の内面に前記内面平滑シートを取り付けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
第1発明~第7発明によれば、内面平滑シートによりコルゲート鋼管の内面の粗度係数を低下させることができ、それにより、コルゲート鋼管からなる排水管の流量を確保することができる。また、第1発明~第7発明によれば、従来の瀝青材からなるペービング材をコルゲート鋼管の内面に貼り付けるのと比べて、ライニング材が不要となる点で施工及び製造コストを削減することができる。
【0020】
その上、第1発明~第7発明によれば、従来の瀝青材からなるペービング材と比べて、コルゲート鋼管から内面平滑シートを取り外すことが容易で、廃棄物処理、鋼材スクラップによる費用回収が可能となる。さらに、第1発明~第7発明によれば、従来の瀝青材からなるペービング材と比べて、ペービング材をコルゲート鋼管に接着する必要がなく、コルゲート鋼管に通常の溶融亜鉛めっき鋼板を使用することができ、在庫管理が容易となり、コルゲート鋼管の製造単価を低減することができる。
【0021】
特に、第2発明によれば、内面平滑シートが常温で軟化又は硬化しない素材であるので、夏の暑い時期に軟化し、冬期に硬化して衝撃で割れてしまうという温度の影響による不具合の発生を抑制することができる。
【0022】
特に、第3発明、第4発明、第6発明、第7発明によれば、従来のコルゲート鋼管に板材からなるべーピング材や鋼板をボルト接合する場合と比べて、現地による内面平滑シートの取付作業の施工を容易に短時間で行うことができる。このため、コルゲート鋼管からなる排水管の設置工事の施工効率が向上し、工期を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係るコルゲート鋼管の内面平滑構造を示す斜視図である。
図2図2は、同上のコルゲート鋼管の内面平滑構造のコルゲート鋼管を示す斜視図である。
図3図3は、同上のコルゲート鋼管の内面平滑構造の内面平滑シートを示す斜視図である。
図4図4は、同上のコルゲート鋼管の内面平滑構造のコルゲート鋼管と内面平滑シートの接合部を主に示す図1のA部拡大図である。
図5図5は、本発明の第2実施形態に係るコルゲート鋼管の内面平滑構造を示す斜視図である。
図6図6は、同上のコルゲート鋼管の内面平滑構造を示す管軸方に沿った鉛直断面図である。
図7図7(a)は、同上のコルゲート鋼管の内面平滑構造のコルゲート鋼管の概要を示す模式図であり、図7(b)は、同上のコルゲート鋼管の内面平滑構造のコルゲート鋼管の別例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態に係るコルゲート鋼管の内面平滑構造について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0025】
<コルゲート鋼管の内面平滑構造>
[第1実施形態]
先ず、図1図4を用いて、本発明の第1実施形態に係るコルゲート鋼管の内面平滑構造1について説明する。図1は、本実施形態に係るコルゲート鋼管の内面平滑構造1を示す斜視図である。また、図2は、コルゲート鋼管の内面平滑構造1のコルゲート鋼管を示す斜視図であり、図3は、コルゲート鋼管の内面平滑構造1の内面平滑シートを示す斜視図である。そして、図4は、コルゲート鋼管と内面平滑シートの接合部を主に示す図1のA部拡大図である。
【0026】
図1に示すように、本実施形態に係るコルゲート鋼管の内面平滑構造1は、薄鋼板から波形に成形されたコルゲート鋼管2と、このコルゲート鋼管2の内面に取り付けられた内面平滑シート3など、から構成されている。
【0027】
(コルゲート鋼管)
コルゲート鋼管2は、熱間圧延軟鋼板SPHC(steel plate hot commercial)や一般構造用圧延鋼材SS400などの1.6mm~7.0mmの薄鋼板から、図1図2に示すように、所定のピッチ(例えば、68mm)で所定の波の深さ(例えば、13mm)の波形に成形された波形鋼板をU字状又は半割円筒状に曲げ加工したコルゲート鋼管である。勿論、コルゲート鋼管2は、半割円筒状に限られず、楕円形や円筒状など適宜曲げ加工して所定の形状になっていてもよいことは云うまでもない。
【0028】
また、このコルゲート鋼管2は、瀝青材からなるペービング材を接着しないので、防錆処理として通常の亜鉛溶融めっきを施すことができる。このため、安価に耐久性を担保することができる。また、亜鉛溶融めっきをしない特殊なコルゲート鋼管と、亜鉛溶融めっきを施した通常のコルゲート鋼管とを区別して管理する必要がなくなり、在庫管理が容易となり、コルゲート鋼管の製造単価を低減することができる。
【0029】
このコルゲート鋼管2は、図2に示すように、断面略U字状のU字フリューム本体20と、このU字フリューム本体20の上端の縁に沿って外側に張り出したフランジ21など、から構成されている。また、フランジ21の波打った上部である山部には、ボルト接合するための長孔22が穿設されている。
【0030】
その上、図2に示すように、コルゲート鋼管2のフランジ21に沿って後述の内面平滑シート3を掛け止めるための帯状鋼板からなる掛止めプレート23が溶接等で接合されている。また、この掛止めプレート23は、後述のボタンフック31を掛け止めるための切り込みであるスリット24が形成されたスリット付きプレートとなっている。
【0031】
(内面平滑シート)
内面平滑シート3は、厚さ1~2mm程度の軽量なゴムシートからなるシート本体30から主に構成されている。但し、本発明に係る内面平滑シートは、樹脂シートや布シートなど、所定の剛性と可撓性を有し、波形鋼板の内面の粗度係数を下げることができるシート状の素材であれば特に限定されるものではない。
【0032】
所定の剛性と可撓性を有するシート状のものであれば、背景技術で述べた鋼板やFRPシートのような硬化した板状のものと相違してボルト等で多数の箇所を固定しなくても、コルゲート鋼管2内を流通する流体の流れに沿って押し流されることで波形鋼板の内面の粗度係数を下げることができるからである。但し、内面平滑シート3をゴムシートとすることは、ゴム弾性に起因する所定の剛性があり、波形鋼板の波形形状に追随しないので、粗度係数を下げることができる度合が大きく好ましい。
【0033】
また、内面平滑シート3は、常温で軟化又は硬化しない素材であることが好ましい。夏の暑い時期に軟化し、冬期に硬化して衝撃で割れてしまうるという温度の影響による不具合の発生を抑制することができるからである。なお、ここで常温とは、日本産業規格と同様に20℃を想定しており、その20℃±15℃範囲、即ち5℃~35℃の範囲を指している。
【0034】
その上、図3に示すように、シート本体30の縁沿いには、取付フックである複数のボタンフック31が止付けられている。このため、図4に示すように、ボタンフック31を前述の掛止めプレート23のスリット24に掛け止めるだけで、背景技術で述べた鋼板やFRPシートをボルト接合する場合と比べ、短時間で容易に、コルゲート鋼管2の内面に内面平滑シート3を固定することができる。
【0035】
なお、図1に示した形態では、U字フリューム本体20の内面を略全てを内面平滑シート3で覆う場合を例示したが、排水管の設計水量等に応じてU字フリューム本体20の下部のみを覆うようにしても構わない。排水管を流れる水量が少ない場合は、下部のみで足りるからである。
【0036】
また、コルゲート鋼管2の内面にスリット24付きの掛止めプレート23を取り付け、内面平滑シート3に取付フックであるボタンフック31を設ける場合を例示したが、これらが逆であっても構わない。即ち、内面平滑シート3側にスリットや取付孔が設けられ、コルゲート鋼管2の内面に取付フックであるボタンフック31を設けても構わない。要するに、コルゲート鋼管2の内面及び内面平滑シート3のいずれか一方にスリット31又は取付孔が形成され、他方に取付フック(ボタンフック31)が形成されていればよい。いずれの場合でも簡単に短時間で掛け止めることができるからである。
【0037】
[第2実施形態]
次に、図5図7を用いて、本発明の第2実施形態に係るコルゲート鋼管の内面平滑構造1’について説明する。図5は、本実施形態に係るコルゲート鋼管の内面平滑構造1’を示す斜視図であり、図6は、コルゲート鋼管の内面平滑構造1’を示す管軸方に沿った鉛直断面図である。また、図7(a)は、コルゲート鋼管の内面平滑構造1’のコルゲート鋼管の概要を示す模式図であり、図7(b)は、コルゲート鋼管の内面平滑構造1’のコルゲート鋼管の別例を示す模式図である。
【0038】
第2実施形態に係るコルゲート鋼管の内面平滑構造1’は、薄鋼板から波形に成形されたコルゲート鋼管2’と、このコルゲート鋼管2’の内面に取り付けられた内面平滑シート3’と、など、から構成されている。
【0039】
(コルゲート鋼管)
コルゲート鋼管2’は、前述のコルゲート鋼管2と同様に、熱間圧延軟鋼板SPHC(steel plate hot commercial)や一般構造用圧延鋼材SS400などの1.6mm~7.0mmの薄鋼板から、図5図6に示すように、所定のピッチ(例えば、68mm)で所定の波の深さ(例えば、13mm)の波形に成形された波形鋼板を半割円筒状に曲げ加工し、それらを組合わせて円筒状としたコルゲート鋼管である。勿論、コルゲート鋼管2’は、楕円形や円筒状など適宜曲げ加工して所定の形状になっていてもよいことは云うまでもない。
【0040】
コルゲート鋼管2’は、図5図6に示すように、半割円筒状の円弧状鋼板20’と、この円弧状鋼板20’の端部の縁に沿って曲げ起こされて外側に張り出したフランジ21’など、から構成されている。また、フランジ21’の波打った上部である山部には、ボルト接合するための長孔22’が穿設されている。
【0041】
なお、コルゲート鋼管2’として、図7(a)に示すように、半円形セクション(円弧状鋼板20’)の端部を曲げ起こしてフランジ21’をつくり、ボルトを通して上下セクションを組み合わせたものに限られず、図7(b)に示すように、円周を複数の円弧に分割した円弧形セクション20”を数枚組み合わせて断面を形づくり、各セクションをラップ方式でボルトによって組み合わせて円筒状としたコルゲート鋼管2”としても構わない。
【0042】
(内面平滑シート)
第2実施形態に係る内面平滑シート3’は、前述の内面平滑シート3と同様に、厚さ1~2mm程度の軽量なゴムシートからなるが、内面平滑シート3と相違して、直径800mm~3000mmのゴムチューブ30’から構成されている。
【0043】
また、図5図6に示すように、このチューブ状の内面平滑シート3’は、リングバネ4で内側からコルゲート鋼管3’に押し付けられることでコルゲート鋼管3’の内面に固定されている。このため、内面平滑シート3’のコルゲート鋼管2’への取付作業が短時間で簡単に行うことができる。
【0044】
なお、内面平滑シート3’をチューブ状としてコルゲート鋼管2’の内面全体を覆う場合を例示したが、コルゲート鋼管の内面平滑構造1のボタンフック31とスリット24を適用して、コルゲート鋼管2’の排水が流れると予想されるコルゲート鋼管2’の下部半分を覆う場合や、下部の三分の一のみを覆うなどとしてもよい。コルゲート鋼管2’の内面を内面平滑シート3で部分的に覆うだけでも粗度係数を下げることは明らかだからである。
【0045】
<コルゲート鋼管の内面平滑方法>
次に、本発明の実施形態に係るコルゲート鋼管の内面平滑方法について説明する。
【0046】
(コルゲート鋼管組立設置工程)
先ず、本実施形態に係るコルゲート鋼管の内面平滑方法では、コルゲート鋼管を組み立てて設置するコルゲート鋼管組立設置工程を行う。
【0047】
例えば、前述のコルゲート鋼管の内面平滑構造1の場合は、溝を掘削してU字フリューム本体20からなるコルゲート鋼管2を設置する。
【0048】
また、前述のコルゲート鋼管の内面平滑構造1’の場合は、上下2つの半割円筒状の円弧状鋼板20’のフランジ21’同士をボルト接合して、コルゲート鋼管2’を組み立て、暗渠などに挿入して設置する。
【0049】
(内面平滑シート取付工程)
その後、本実施形態に係るコルゲート鋼管の内面平滑方法では、コルゲート鋼管の内面に前述の内面平滑シートを取り付ける内面平滑シート取付工程を行う。
【0050】
例えば、前述のコルゲート鋼管の内面平滑構造1の場合は、コルゲート鋼管2の内面にスリット24が形成され前述の掛止めプレート23を予め取り付けておき、内面平滑シート3に突設されたボタンフック31をスリット24に嵌め込んで掛け止めてコルゲート鋼管2の内面に内面平滑シート3を取り付ける(図4参照)。
【0051】
また、前述のコルゲート鋼管の内面平滑構造1’の場合は、チューブ状の内面平滑シート3’をリングバネ4で内側からコルゲート鋼管2’に押し付けて固定してコルゲート鋼管2’の内面に内面平滑シート3’を取り付ける(図6参照)。
【0052】
以上説明した本発明の実施形態に係るコルゲート管の内面平滑構造1,1’及び本発明の実施形態に係るコルゲート管の内面平滑方法によれば、内面平滑シート3,3’によりコルゲート鋼管2,2’の内面の粗度係数を低下させることができ、それにより、コルゲート鋼管2,2’からなる排水管の流量を確保することができる。
【0053】
また、コルゲート管の内面平滑構造1,1’及び本実施形態に係るコルゲート管の内面平滑方法によれば、従来の瀝青材からなるペービング材をコルゲート鋼管の内面に貼り付けると比べて、ライニング材が不要となる点で施工及び製造コストを削減することができる。
【0054】
その上、コルゲート管の内面平滑構造1によれば、内面平滑シート3に突設されたボタンフック31をスリット24に嵌め込んで掛け止めてコルゲート鋼管2の内面に内面平滑シート3を取り付けるだけなので、従来のコルゲート鋼管に板材からなるべーピング材や鋼板をボルト接合する場合と比べて、現地による内面平滑シートの取付作業の施工を容易に短時間で行うことができる。このため、コルゲート鋼管からなる排水管の設置工事の施工効率が向上し、工期を短縮することができる。
【0055】
同様に、コルゲート管の内面平滑構造1’によれば、チューブ状の内面平滑シート3’をリングバネ4で内側からコルゲート鋼管2’に押し付けて固定してコルゲート鋼管2’の内面に内面平滑シート3’を取り付けるだけので、従来のコルゲート鋼管に板材からなるべーピング材や鋼板をボルト接合する場合と比べて、現地による内面平滑シートの取付作業の施工を容易に短時間で行うことができる。このため、コルゲート鋼管からなる排水管の設置工事の施工効率が向上し、工期を短縮することができる。
【0056】
それに加え、コルゲート管の内面平滑構造1,1’及び本実施形態に係るコルゲート管の内面平滑方法によれば、従来の瀝青材からなるペービング材と比べて、コルゲート鋼管2,2’から内面平滑シート3,3’を取り外すことが容易で、廃棄物処理、鋼材スクラップによる費用回収が可能となる。
【0057】
さらに、コルゲート管の内面平滑構造1,1’及び本実施形態に係るコルゲート管の内面平滑方法によれば、従来の瀝青材からなるペービング材と比べて、ペービング材をコルゲート鋼管に接着する必要がなく、コルゲート鋼管2,2’に通常の溶融亜鉛めっき鋼板を使用することができ、在庫管理が容易となり、コルゲート鋼管の製造単価を低減することができる。
【0058】
以上、本発明の実施形態に係るコルゲート管の内面平滑構造1、1’及び本発明の実施形態に係るコルゲート管の内面平滑方法について詳細に説明したが、前述した又は図示した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたって具体化した一実施形態を示したものに過ぎない。よって、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。
【符号の説明】
【0059】
1,1’:コルゲート鋼管の内面平滑構造
2,2’:コルゲート鋼管
20:U字フリューム本体
20’:円弧状鋼板
20”:円弧形セクション
21,21’:フランジ
22,22’:長孔
23:掛止めプレート
24:スリット
3,3’:内面平滑シート
30:シート本体
30’:ゴムチューブ
31:ボタンフック
4:リングバネ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7