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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141708
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】電源管理システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/32 20060101AFI20241003BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20241003BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20241003BHJP
   H02J 7/35 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H02J3/32
H02J3/38 130
H02J13/00 301A
H02J13/00 311R
H02J7/35 G
H02J7/35 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053500
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】山口 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】庄司 祐子
(72)【発明者】
【氏名】安井 匡史
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
5G503
【Fターム(参考)】
5G064AC05
5G064AC08
5G064CB08
5G064CB10
5G064DA03
5G066HB06
5G066HB09
5G066JA07
5G066JB03
5G503AA01
5G503AA06
5G503BA04
5G503BB01
5G503CA08
5G503GD03
(57)【要約】
【課題】電力需給の逼迫度合いが高くなった場合に蓄電装置から十分な電力を放電させることができる電源管理システムを提供する。
【解決手段】電源管理システムであって、電源管理装置3は、複数の施設10のそれぞれについて、将来の所定期間での、太陽電池装置14の発電電力から電力消費装置15の消費電力を減算した余剰電力の積算値が基準余剰電力量より少ないと予測され、且つ、将来の所定期間に電力需給の逼迫度合いの高さを示す逼迫指標値が基準レベル以上になると予測され、且つ、現在の蓄電装置13の蓄電残量が基準残量より少ないという特別充電条件が満たされる場合、電力消費装置15の消費電力と蓄電装置13の充電電力との和が太陽電池装置14の発電電力を超えることを許容した状態で充電が行われる特別充電処理を蓄電装置13に行わせる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の施設のそれぞれに設置される蓄電装置と、複数の前記蓄電装置との間で情報通信可能な電源管理装置とを備える電源管理システムであって、
複数の前記施設のそれぞれには、電力系統に連系される前記蓄電装置、太陽電池装置及び電力消費装置が設けられ、
前記電源管理装置は、複数の前記施設のそれぞれについて、
前記太陽電池装置の発電電力から前記電力消費装置の消費電力を減算した余剰電力についての将来の所定期間での積算値が基準余剰電力量より少ないと予測され、且つ、将来の前記所定期間後に電力需給の逼迫度合いの高さを示す逼迫指標値が基準レベル以上になると予測され、且つ、現在の前記蓄電装置の蓄電残量が基準残量より少ないという特別充電条件が満たされない場合、前記電力消費装置の前記消費電力と前記蓄電装置の充電電力との和が前記太陽電池装置の前記発電電力を超えない範囲で充電が行われる通常充電処理を前記蓄電装置に行わせ、
前記特別充電条件が満たされる場合、前記電力消費装置の前記消費電力と前記蓄電装置の前記充電電力との和が前記太陽電池装置の前記発電電力を超えることを許容した状態で充電が行われる特別充電処理を前記蓄電装置に行わせる電源管理システム。
【請求項2】
前記蓄電装置は、前記特別充電処理において、前記充電電力が所定値になるように充電を行う請求項1に記載の電源管理システム。
【請求項3】
前記蓄電装置は、前記特別充電処理において、前記施設が前記電力系統から受電する受電電力が所定値になるように充電を行う請求項1に記載の電源管理システム。
【請求項4】
前記逼迫指標値は、複数の前記施設の前記電力消費装置の前記消費電力から複数の前記施設の前記太陽電池装置の前記発電電力を減算して導出される合計不足電力である請求項1~3の何れか一項に記載の電源管理システム。
【請求項5】
前記逼迫指標値は、電力の取引価格である請求項1~3の何れか一項に記載の電源管理システム。
【請求項6】
前記逼迫指標値は、前記電力系統での電力使用率である請求項1~3の何れか一項に記載の電源管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の施設のそれぞれに設置される蓄電装置と、複数の蓄電装置との間で情報通信可能な電源管理装置とを備える電源管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
住戸や事業所などの施設に太陽電池装置と蓄電装置とが設けられたシステムがある。施設に蓄電装置が設けられている場合、太陽電池装置が発電しているタイミングで蓄電装置が充電することもできるし、充電しないこともできる。例えば、特許文献1(特開2015-159726号公報)には、太陽電池装置の発電電力が電力消費装置の消費電力よりも大きい場合、その余剰電力を蓄電装置で充電し、その後、施設の電力消費装置の消費電力が太陽電池装置の発電電力よりも大きくなったタイミング、即ち不足電力が発生するタイミングで蓄電装置から放電させるような動作モードがある。つまり、この動作モードでは、太陽電池装置の発電電力を施設で消費することが優先される。
【0003】
尚、太陽電池装置のような発電装置は天候によって発電電力が増減するため、蓄電装置への充電電力を十分に確保できないこともある。そのような問題に鑑みて、特許文献2(特開2010-213507号公報)には、電力系統から受電した受電電力を蓄電装置に充電することも記載されている。具体的には、特許文献2に記載のシステムでは、蓄電地の残容量と、天気予報データに基づいて導出する自然エネルギー利用発電装置による予測発電量とを考慮して、蓄電装置が電力系統からの充電を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-159726号公報
【特許文献2】特開2010-213507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図3は、施設の受電点電力の推移を示す図である。尚、破線で示すのは、〔電力消費装置の消費電力-太陽電池装置の発電電力〕の値であり、上述した余剰電力又は不足電力に相当する。図3に示す例の場合、日中は太陽電池装置の発電電力が大きくなるため、〔電力消費装置の消費電力-太陽電池装置の発電電力〕が負の値になっている。つまり、余剰電力が発生している。それに対して、太陽電池装置の発電電力がゼロになる夕方から翌朝にかけての期間は、〔電力消費装置の消費電力-太陽電池装置の発電電力〕が正の値になっている。つまり、不足電力が発生している。
【0006】
図3に示す例では、時刻8時以降に発生する余剰電力は蓄電装置で充電され、蓄電装置の蓄電残量が増加する。そして、時刻11時頃に蓄電装置の蓄電残量が上限値に到達することでそれ以上は充電できなくなるため、その後の余剰電力は施設から電力系統へ逆潮流される。
【0007】
時刻17時頃になると、太陽電池装置の発電電力が減少すると共に電力消費装置の消費電力が大きくなり、〔電力消費装置の消費電力-太陽電池装置の発電電力〕は正の値になる(即ち、不足電力が発生する)。その時点では蓄電装置の蓄電残量が残っているため、その不足電力は蓄電装置の放電電力によって賄われる。但し、時刻19時頃に蓄電装置の蓄電残量が下限値になることでそれ以上は放電できなくなるため、その後の不足電力は電力系統から施設への受電電力で賄われる。
【0008】
このように、図3に示す例では、蓄電装置をそれが設けられる施設にとって好ましいタイミングで充放電させている。
【0009】
尚、蓄電装置を複数の施設のそれぞれのために運用するのではなく、複数の施設全体で運用することもできる。例えば、複数の施設の全体で見て買電電力が少なくなるように、各施設の蓄電装置を放電させるような運用も考えられる。特許文献2では、自身の蓄電装置の残容量を考慮して電力系統から受電するか否かを判定しているが、各施設の蓄電装置を複数の施設全体のために運用するという観点で、充電するか否かを決定することが好ましい場合もある。例えば、将来、複数の施設にとっての電力需給の逼迫度合いが高くなった場合に蓄電装置から十分な電力を放電できるように、各施設の蓄電装置で予め充電を行っておくことが好ましい場合もある。
【0010】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、電力需給の逼迫度合いが高くなった場合に蓄電装置から十分な電力を放電させることができる電源管理システムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明に係る電源管理システムの特徴構成は、複数の施設のそれぞれに設置される蓄電装置と、複数の前記蓄電装置との間で情報通信可能な電源管理装置とを備える電源管理システムであって、
複数の前記施設のそれぞれには、電力系統に連系される前記蓄電装置、太陽電池装置及び電力消費装置が設けられ、前記蓄電装置は前記電源管理装置から伝達される放電指示を受けた場合に放電を行い、
前記電源管理装置は、複数の前記施設のそれぞれについて、
前記太陽電池装置の発電電力から前記電力消費装置の消費電力を減算した余剰電力についての将来の所定期間での積算値が基準余剰電力量より少ないと予測され、且つ、将来の前記所定期間後に電力需給の逼迫度合いの高さを示す逼迫指標値が基準レベル以上になると予測され、且つ、現在の前記蓄電装置の蓄電残量が基準残量より少ないという特別充電条件が満たされない場合、前記電力消費装置の前記消費電力と前記蓄電装置の充電電力との和が前記太陽電池装置の前記発電電力を超えない範囲で充電が行われる通常充電処理を前記蓄電装置に行わせ、
前記特別充電条件が満たされる場合、前記電力消費装置の前記消費電力と前記蓄電装置の前記充電電力との和が前記太陽電池装置の前記発電電力を超えることを許容した状態で充電が行われる特別充電処理を前記蓄電装置に行わせる点にある。
ここで、前記蓄電装置は、前記特別充電処理において、前記充電電力が所定値になるように充電を行ってもよい。
また、前記蓄電装置は、前記特別充電処理において、前記施設が前記電力系統から受電する受電電力が所定値になるように充電を行ってもよい。
【0012】
上記特徴構成によれば、特別充電条件が満たされる場合、電力消費装置の消費電力と蓄電装置の充電電力との和が太陽電池装置の発電電力を超えることを許容した状態、即ち、電力系統からの受電電力を蓄電装置の充電に用いることを許容した状態で充電が行われる特別充電処理が行われる。つまり、特別充電処理が行われることで、蓄電装置の蓄電残量を確実に多くすることができる。その結果、例えば将来の所定期間後に電力需給の逼迫度合いの高さを示す逼迫指標値が基準レベルより高くなった場合には、蓄電装置から十分な電力を放電させることができる。
従って、電力需給の逼迫度合いが高くなった場合に蓄電装置から十分な電力を放電させることができる電源管理システムを提供できる。
【0013】
本発明に係る電源管理システムの別の特徴構成は、前記逼迫指標値は、複数の前記施設の前記電力消費装置の消費電力から複数の前記施設の前記太陽電池装置の発電電力を減算して導出される合計不足電力である点にある。
【0014】
上記特徴構成によれば、複数の施設の電力消費装置の消費電力から複数の太陽電池装置の発電電力を減算して導出される合計不足電力が大きくなれば、複数の施設の中での電力需給の逼迫度合いが高いと見なすことができる。
【0015】
本発明に係る電源管理システムの別の特徴構成は、前記逼迫指標値は、電力の取引価格である点にある。
【0016】
電力系統での電力需給の逼迫度合いが高い場合には電力の取引価格が高くなり、電力系統での電力需給の逼迫度合いが低い場合には電力の取引価格が低くなる場合がある。
そこで本特徴構成では、電力の取引価格が高くなれば、電力系統での電力需給の逼迫度合いが高いと見なすことができる。
【0017】
本発明に係る電源管理システムの別の特徴構成は、前記逼迫指標値は、前記電力系統での電力使用率である点にある。
【0018】
電力系統での電力需給の逼迫度合いが高いということは電力系統での電力使用率が高いことを意味する。
そこで本特徴構成では、電力系統での電力使用率が高くなれば、電力系統での電力需給の逼迫度合いが高いと見なすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】電源管理システムの構成を示す図である。
図2】複数の施設の不足電力及び余剰電力の合計の予測値の推移を示す図である。
図3】複数の施設の受電点電力の推移を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に図面を参照して本発明の実施形態に係る電源管理システムの構成を説明する。
図1は、電源管理システムの構成を示す図である。図示するように、電源管理システムは、複数の施設10のそれぞれに設置される蓄電装置13と、複数の施設10との間で情報通信回線2を介して情報通信可能な電源管理装置3とを備える。図1では、3つの施設10を描いているが、施設10の数は適宜変更可能である。例えば、複数の施設10は場所的に隣接して設置され、複数の施設10で一つの街区を構成している。或いは、複数の施設10は場所的に離れて設置され、仮想的に複数の施設10で一つの街区を構成していてもよい。
【0021】
複数の施設10のそれぞれには、電力系統1に連系される蓄電装置13、太陽電池装置14及び電力消費装置15が設けられる。蓄電装置13、太陽電池装置14及び電力消費装置15は電力線12に接続される。また、施設10には、施設10の受電点電力を計測する電力メーター11も設けられる。本実施形態では、施設10から電力系統1に供給される受電電力については正の受電点電力として取り扱い、施設10から電力系統1に供給される逆潮流電力については負の受電点電力として取り扱う。尚、電力メーター11は、施設10から電力系統1に供給される受電電力を計測するメーターと、施設10から電力系統1に供給される逆潮流電力を計測するメーターとを各別に備えていてもよい。
【0022】
電力線12には第1電力測定部CT1及び第2電力測定部CT2が設けられる。第1電力測定部CT1及び第2電力測定部CT2の計測結果は蓄電装置13に伝達される。
【0023】
第1電力測定部CT1は、電力消費装置15の消費電力及び蓄電装置13の充電電力の合計から太陽電池装置14の発電電力を減算した電力、或いは、電力消費装置15の消費電力から蓄電装置13の放電電力及び太陽電池装置14の発電電力を減算した電力を計測する。つまり、電力消費装置15の消費電力及び蓄電装置13の充電電力の合計が太陽電池装置14の発電電力よりも大きい場合、又は、電力消費装置15の消費電力が蓄電装置13の放電電力及び太陽電池装置14の発電電力の合計よりも大きい場合、第1電力測定部CT1が測定する電力は正の値になる。この場合、電力メーター11によって計測される受電点電力も正の値になる。
【0024】
電力消費装置15の消費電力及び蓄電装置13の充電電力の合計が太陽電池装置14の発電電力よりも小さい場合、又は、電力消費装置15の消費電力が蓄電装置13の放電電力及び太陽電池装置14の発電電力の合計よりも小さい場合、第1電力測定部CT1が測定する電力は負の値になる。この場合、電力メーター11によって計測される受電点電力も負の値になる。
【0025】
第2電力測定部CT2は、電力消費装置15の消費電力から蓄電装置13の放電電力を減算した電力、或いは、電力消費装置15の消費電力及び蓄電装置13の充電電力を合計した電力を計測する。そして、電力消費装置15の消費電力が蓄電装置13の放電電力よりも大きい場合、第2電力測定部CT2が測定する電力は正の値になる。それに対して、電力消費装置15の消費電力が蓄電装置13の放電電力よりも小さい場合、第2電力測定部CT2が測定する電力は負の値になる。
【0026】
施設10に設けられるHEMS(Home Energy Management System)16は、施設10に設けられる装置との間で通信線を介して情報通信を行って、各装置からの情報を受信すると共に、各装置への情報の伝達を行うことができる。また、HEMS16は、各装置から受信した情報を電源管理装置3に送信すること、電源管理装置3及び情報提供サーバ6から情報を受信することもできる。HEMS16と電力メーター11との間、及び、HEMS16と蓄電装置13との間の通信方式は、例えばECHONETLite(登録商標)などであるが、適宜設定可能である。
【0027】
HEMS16は、蓄電装置13の充電電力及び放電電力についての情報、電力メーター11で計測される受電点電力についての情報、第1電力測定部CT1で計測される電力についての情報、第2電力測定部CT2で計測される電力についての情報などを電源管理装置3に送信する。HEMS16は、電源管理装置3から放電指示及び放電停止について情報、充電指示(通常充電処理、特別充電処理の指示)を受信する。複数の施設10のそれぞれでは、HEMS16が、電力消費装置15の消費電力から太陽電池装置14の発電電力を減算して導出される不足電力についての情報を電源管理装置3に送信してもよい。尚、太陽電池装置14の発電電力が電力消費装置15の消費電力よりも大きい場合、不足電力は負の値(即ち、余剰電力が正の値)になる。
【0028】
電源管理装置3は、取り扱う情報を記憶する記憶部4と、情報の演算処理等を行う処理部5とを備える。
【0029】
上述した例では、施設10のHEMS16が、電力消費装置15の消費電力から太陽電池装置14の発電電力を減算して導出される不足電力(又は余剰電力)についての情報を電源管理装置3に送信する例を説明したが、電源管理装置3が不足電力(又は余剰電力)の導出を行ってもよい。例えば、施設10から電源管理装置3へは上述したような情報が伝達されるため、電源管理装置3の処理部5は、第2電力測定部CT2が計測する電力と、蓄電装置13の充電電力又は放電電力とに基づいて、電力消費装置15の消費電力を導出できる。つまり、電源管理装置3は、電力消費装置15の消費電力と、蓄電装置13の充電電力又は放電電力とを認識できる。その結果、電源管理装置3の処理部5は、第1電力測定部CT1が計測する電力と、電力消費装置15の消費電力と、蓄電装置13の充電電力又は放電電力とに基づいて、太陽電池装置14の発電電力を導出できる。そして、電源管理装置3の処理部5は、複数の施設10での〔電力消費装置15の消費電力-太陽電池装置14の発電電力〕の値の合計、即ち、合計不足電力(又は合計余剰電力)の推移などを導出できる。
【0030】
ここで、複数の施設10での〔電力消費装置15の消費電力-太陽電池装置14の発電電力〕の値の合計は、複数の施設10の電力消費装置15の消費電力から複数の施設10の太陽電池装置14の発電電力を減算して導出される不足電力であり、複数の施設10にとっての電力需給の逼迫度合いの高さを示す逼迫指標値と見なすことができる。つまり、合計不足電力が大きいほど電力需給の逼迫度合いが高いと見なすことができる。
【0031】
〔蓄電装置13の充電〕
電源管理装置3は、複数の施設10のそれぞれについて、通常充電処理を蓄電装置13に行わせるか、或いは、特別充電処理を蓄電装置13に行わせる。例えば、電源管理装置3は、通常充電処理を行わせる指示、及び、特別充電処理を行わせる指示を複数の蓄電装置13のそれぞれに対して行い、各蓄電装置13は指示された処理に応じて充電処理を行う。そして、蓄電装置13は、電源管理装置3から通常充電処理を行わせる指示を受けた後、電源管理装置3から特別充電処理を行わせる指示を受けるまでの間、或いは、電源管理装置3から特別充電処理を行わせる指示を受けた後、電源管理装置3から通常充電処理を行わせる指示を受けるまでの間、当初の充電指示が有効であると見なすように構成される。
【0032】
具体的には、電源管理装置3は、各施設10のそれぞれについて、太陽電池装置14の発電電力から電力消費装置15の消費電力を減算した余剰電力についての将来の所定期間での積算値が基準余剰電力量より少ないと予測され、且つ、将来の上記所定期間後に電力需給の逼迫度合いの高さを示す逼迫指標値が基準レベル以上になると予測され、且つ、現在の蓄電装置13の蓄電残量が基準残量より少ないという特別充電条件が満たされるか否かの判定を設定タイミングで行う。例えば、電源管理装置3は、30分毎、1時間毎などの設定タイミングで、各施設10のそれぞれについて特別充電条件が満たされるか否かを判定する。
【0033】
ここで、余剰電力の将来の所定期間での積算値は、その所定期間での蓄電装置13の充電量の予測値に相当する。そのため、余剰電力の将来の所定期間での積算値が基準余剰電力量より少ないと予想される場合、その所定期間後の時点で蓄電装置13には十分な放電余力が残っていない状態になっていると予測される。尚、この基準余剰電力量の値は適宜設定可能である。
【0034】
また、将来の上記所定期間後に電力需給の逼迫度合いの高さを示す逼迫指標値が基準レベル以上になると予測される場合、その所定期間後の時点で蓄電装置13から大きな電力を放電する必要がある状態になっていると予測される。本実施形態の逼迫指標値は、後述する図2に示す、複数の施設10での〔電力消費装置15の消費電力-太陽電池装置14の発電電力〕の合計、即ち、複数の施設10の電力消費装置15の消費電力から複数の施設10の太陽電池装置14の発電電力を減算して導出される合計不足電力である。但し、ここでは将来の所定期間後の逼迫指標値の予測値を問題にしているため、必要とする逼迫指標値の予測値は、複数の施設10での〔電力消費装置15の消費電力の予測値-太陽電池装置14の発電電力の予測値〕の合計、即ち、複数の施設10の電力消費装置15の消費電力の予測値から複数の施設10の太陽電池装置14の発電電力の予測値を減算して導出される合計不足電力の予測値である。尚、この基準レベルの値は適宜設定可能である。
【0035】
また更に、現在の蓄電装置13の蓄電残量が基準残量より少ないという状態は、現時点で十分な放電余力が残っていない状態であると言える。尚、この基準残量の値は適宜設定可能である。
【0036】
従って、特別充電条件が満たされる施設10の蓄電装置13は、できるだけ早く充電することが好ましい。それに対して、特別充電条件が満たされない施設10の蓄電装置13は、早急な充電を行う必要性は低く、例えば、余剰電力が発生した場合にその余剰電力を充電すればよい。
【0037】
そして、電源管理装置3は、各施設10のそれぞれについて、特別充電条件が満たされない場合、電力消費装置15の消費電力と蓄電装置13の充電電力との和が太陽電池装置14の発電電力を超えない範囲で充電が行われる通常充電処理を行わせる指示を蓄電装置13に伝達する。その結果、通常充電処理を行うように指令された蓄電装置13は、余剰電力が発生している場合(即ち、太陽電池装置14の発電電力が電力消費装置15の消費電力よりも大きい場合)にその余剰電力の範囲内の電力を充電する。
【0038】
それに対して、電源管理装置3は、各施設10のそれぞれについて、上記特別充電条件が満たされる場合、電力消費装置15の消費電力と蓄電装置13の充電電力との和が太陽電池装置14の発電電力を超えることを許容した状態で充電が行われる特別充電処理を行わせる指示を蓄電装置13に伝達する。その結果、特別充電処理を行うように指令された蓄電装置13は、例えば、特別充電処理において、充電電力が所定値になるように充電を行う。つまり、蓄電装置13は、予め定められた一定の充電電力で充電を行う。その結果、蓄電装置13は、余剰電力よりも大きい電力、即ち、電力系統1から受電した電力を充電する場合もある。そして、蓄電装置13は、蓄電残量が目標蓄電残量に到達した時点で充電を停止する。
【0039】
或いは、蓄電装置13は、特別充電処理において、施設10が電力系統1から受電する受電電力が所定値になるように充電を行ってもよい。つまり、蓄電装置13は、受電電力が予め定められた一定値になるように充電電力を調節しながら充電を行う。その結果、蓄電装置13は、余剰電力よりも大きい電力、即ち、電力系統1から受電した電力を充電する場合もある。そして、蓄電装置13は、蓄電残量が目標蓄電残量に到達した時点で充電を停止する。
【0040】
蓄電装置13は、電源管理装置3から伝達される放電指示を受けた場合に放電を行うように構成される。例えば、蓄電装置13は、放電指示を受けた後、電源管理装置3から放電停止指示を受けるまでの間、その放電指示が有効であると見なすように構成される。蓄電装置13は、電源管理装置3から放電指示を受けて放電を行う場合に、電力消費装置15の消費電力を上回る電力を放電できるように設定されている装置であってもよい。或いは、蓄電装置13は、電力消費装置15の消費電力を上回る電力を放電しないように放電電力を調節することもできる。
【0041】
例えば、蓄電装置13は、第2電力測定部CT2が測定する電力が負の値にならないように、即ち、電力消費装置15の消費電力を上回る電力を放電しないように放電電力を調節できる。或いは、蓄電装置13は、第2電力測定部CT2が測定する電力とは無関係に、即ち、放電電力が電力消費装置15の消費電力を上回る電力となるか否かを考慮せずに、放電電力を調節することもできる。
【0042】
つまり、蓄電装置13は、放電電力を電力系統1へ逆潮流不可能な状態で放電する場合、その放電電力は、自身の施設10に設けられている電力消費装置15の消費電力を上限とする。そのため、複数の施設10の全体で見ると、蓄電装置13が放電することで、複数の施設10の受電点電力の合計を低下させることはできるものの、その低下幅には制限がある。それに対して、蓄電装置13は、逆潮流可能な状態で放電する場合、放電電力には制限はない。そのため、複数の施設10の受電点電力の合計を低下させる能力は、放電電力を逆潮流不可能な状態で放電する場合よりも大きくなる。
【0043】
図2は、複数の施設10の不足電力及び余剰電力の合計の予測値の推移を示す図である。ここで、不足電力及び余剰電力の合計の予測値は、複数の施設10での〔電力消費装置15の消費電力の予測値-太陽電池装置14の発電電力の予測値〕の合計で導出され、それが正の値の場合には不足電力になり、それが負の値の場合には余剰電力になる。
【0044】
各施設10では、例えば過去の1カ月分などの過去の消費電力を、1日の中での消費電力の推移が分かる状態で記憶部(図示せず)に記憶している。また、過去の消費電力の情報には、その負荷電力が測定された日の、月日、曜日、天候などの情報も併せて記憶されている。その過去の消費電力についての情報はHEMS16から電源管理装置3に送信されている。その結果、電源管理装置3の記憶部4にも、複数の施設10のそれぞれでの過去の消費電力についての情報が記憶される。そして、電源管理装置3の処理部5は、過去の負荷電力についての情報を参照して、将来の各日の施設10の消費電力の予測値を、1日の中での消費電力の推移が分かる状態で予測できる。
【0045】
加えて、電源管理装置3の処理部5は、情報提供サーバ6から、各施設10が設置されている地域で予測される予測日射量の推移の情報を入手できる。そして、電源管理装置3の処理部5は、予測日射量の情報に基づいて、各施設10に設置される太陽電池装置14の予測発電電力の推移を導出できる。
【0046】
以上のようにして、電源管理装置3の処理部5は、各施設10での〔電力消費装置15の消費電力の予測値-太陽電池装置14の発電電力の予測値〕、即ち、各施設10の不足電力及び余剰電力の予測値の推移を導出できる。そして、電源管理装置3の処理部5は、それらを複数の施設10について合計することで、図2に示したような複数の施設10の不足電力及び余剰電力の合計の予測値の推移を導出できる。
【0047】
以下に、図2を参照して、電源管理装置3が行う処理の例を説明する。尚、本実施形態では、図2に示す、複数の施設10での〔電力消費装置15の消費電力の予測値-太陽電池装置14の発電電力の予測値〕の合計を、逼迫指標値の予測値としている。
【0048】
<時刻10時の時点>
電源管理装置3の処理部5は、時刻10時(図2のA1)の時点で、太陽電池装置14の発電電力から電力消費装置15の消費電力を減算した余剰電力についての将来の6時間(所定期間の一例で、図2のA1~A2の間)での積算値が基準余剰電力量より少ないと予測され、且つ、将来の6時間(所定期間後(図2のA2の時点))に電力需給の逼迫度合いの高さを示す逼迫指標値が基準レベル以上になると予測され、且つ、現在の蓄電装置13の蓄電残量が基準残量より少ないという特別充電条件が満たされるか否かを判定する。図2に例示する場合、電源管理装置3の処理部5は、太陽電池装置14の発電電力から電力消費装置15の消費電力を減算した余剰電力についての時刻10時~時刻16時の6時間での積算値が基準余剰電力量より少ないと予測する。また、電源管理装置3の処理部5は、現在から6時間後の時刻16時に、電力需給の逼迫度合いの高さを示す逼迫指標値が基準レベルより低くなると予測する。その結果、電源管理装置3は、時刻10時の時点で、特別充電条件が満たされないと判定する。
【0049】
そして、電源管理装置3は、蓄電装置13に通常充電処理を行わせる指示を伝達する。その結果、蓄電装置13は、通常充電処理において、電力消費装置15の消費電力と蓄電装置13の充電電力との和が太陽電池装置14の発電電力を超えない範囲で充電を行う。
【0050】
<時刻12時の時点>
図2に例示する場合、電源管理装置3の処理部5は、時刻12時(図2のB1)の時点で、太陽電池装置14の発電電力から電力消費装置15の消費電力を減算した余剰電力についての時刻12時~時刻18時の間の将来の6時間(図2のB1~B2の間)での積算値が基準余剰電力量より少ないと予測する。また、電源管理装置3の処理部5は、現在から6時間後の時刻18時(図2のB2の時点)に電力需給の逼迫度合いの高さを示す逼迫指標値が基準レベル以上になると予測する。また更に、電源管理装置3の処理部5は、現在の蓄電装置13の蓄電残量が基準残量より少ないと判定する。その結果、電源管理装置3は、時刻12時の時点で、特別充電条件が満たされると判定する。
【0051】
そして、電源管理装置3は、蓄電装置13に特別充電処理を行わせる指示を伝達する。その結果、蓄電装置13は、上述したような特別充電処理による充電を行う。
【0052】
以上のように、特別充電条件が満たされる場合、電力消費装置15の消費電力と蓄電装置13の充電電力との和が太陽電池装置14の発電電力を超えることを許容した状態、即ち、電力系統1からの受電電力を蓄電装置13の充電に用いることを許容した状態で充電が行われる特別充電処理が行われる。つまり、特別充電処理が行われることで、蓄電装置13の蓄電残量を確実に多くすることができる。その結果、例えば将来の所定期間後に電力需給の逼迫度合いの高さを示す実際の逼迫指標値が基準レベルより高くなった場合には、蓄電装置13から十分な電力を放電させることができる。
【0053】
例えば、図2に示す例であれば、電源管理装置3は、時刻18時頃に実際の逼迫指標値が基準レベル以上になった時点で、複数の施設10の全ての蓄電装置13に対して放電指示を伝達する。その結果、各蓄電装置13は、それぞれの施設10で不足電力が発生しているか或いは余剰電力が発生しているかに関わらず、放電を行う。ここで、蓄電装置13は、電力消費装置15の消費電力を上回らない範囲で電力を放電できるように設定されている場合、実際の逼迫指標値が基準レベルより高い間、電力消費装置15の消費電力を上回らない範囲内で放電する。或いは、蓄電装置13は、電力消費装置15の消費電力を上回る電力を放電できるように設定されている場合、実際の逼迫指標値が基準レベルより高い間、所定の電力を放電する。
【0054】
その後、電源管理装置3は、実際の逼迫指標値が基準レベルより低くなった場合には、複数の施設10の全ての蓄電装置13に対して放電停止指示を伝達する。その結果、各蓄電装置13は放電を停止する。
【0055】
<別実施形態>
上記実施形態では、逼迫指標値が、複数の施設10の電力消費装置15の消費電力から太陽電池装置14の発電電力を減算して導出される合計不足電力である場合を説明したが、逼迫指標値の内容は適宜変更可能である。
【0056】
例えば、逼迫指標値は、電力の取引価格であってもよい。尚、この場合の逼迫指標値の予測値は、電力の取引価格の予測値になる。例えば、電力需給の逼迫度合い、特に、電力系統1での電力需給の逼迫度合いが高い場合には電力の取引価格が高くなり、電力系統1での電力需給の逼迫度合いが低い場合には電力の取引価格が低くなる。そのため、電源管理装置3の処理部5は、情報提供サーバ6から、電力の取引価格及びその予測値についての情報を取得し、その取引価格及びその予測値を逼迫指標値及びその予測値として用いてもよい。
【0057】
或いは、逼迫指標値は、電力系統1での電力使用率であってもよい。尚、この場合の逼迫指標値の予測値は、電力系統1での電力使用率の予測値になる。例えば、電源管理装置3の処理部5は、情報提供サーバ6から、電力系統1での電力使用率及びその予測値についての情報を取得し、その電力使用率及びその予測値を逼迫指標値及びその予測値として用いてもよい。
【0058】
尚、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、電力需給の逼迫度合いが高くなった場合に蓄電装置から十分な電力を放電させることができる電源管理システムに利用できる。
【符号の説明】
【0060】
1 :電力系統
2 :情報通信回線
3 :電源管理装置
4 :記憶部
5 :処理部
6 :情報提供サーバ
10 :施設
11 :電力メーター
12 :電力線
13 :蓄電装置
14 :太陽電池装置
15 :電力消費装置
CT1 :第1電力測定部
CT2 :第2電力測定部
図1
図2
図3