IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社神鋼環境ソリューションの特許一覧

特開2024-141717廃棄物処理設備及び廃棄物処理設備の運転方法
<>
  • 特開-廃棄物処理設備及び廃棄物処理設備の運転方法 図1
  • 特開-廃棄物処理設備及び廃棄物処理設備の運転方法 図2
  • 特開-廃棄物処理設備及び廃棄物処理設備の運転方法 図3
  • 特開-廃棄物処理設備及び廃棄物処理設備の運転方法 図4
  • 特開-廃棄物処理設備及び廃棄物処理設備の運転方法 図5
  • 特開-廃棄物処理設備及び廃棄物処理設備の運転方法 図6
  • 特開-廃棄物処理設備及び廃棄物処理設備の運転方法 図7
  • 特開-廃棄物処理設備及び廃棄物処理設備の運転方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141717
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】廃棄物処理設備及び廃棄物処理設備の運転方法
(51)【国際特許分類】
   F23J 15/00 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
F23J15/00 F
F23J15/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053512
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000192590
【氏名又は名称】株式会社神鋼環境ソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100109058
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】迫田 健吾
(72)【発明者】
【氏名】尾家 俊康
(72)【発明者】
【氏名】松井 朗
(72)【発明者】
【氏名】多田 俊哉
【テーマコード(参考)】
3K070
【Fターム(参考)】
3K070DA04
3K070DA52
3K070DA58
(57)【要約】
【課題】排ガス温度の過度の降下を抑制しつつ排ガスの熱を有効利用することが可能な廃棄物処理設備を提供する。
【解決手段】廃棄物処理設備は、廃棄物を焼却する焼却炉と、排ガスが流れる排ガス経路と、前記排ガスの熱を加熱対象空気に伝えることにより当該加熱対象空気を加熱する伝熱部を含む制御対象熱交換器と、前記伝熱部の温度と相関して上下する検知対象温度を検知する温度検知部と、前記制御対象熱交換器に前記加熱対象空気を供給するための空気供給経路と、前記排ガス経路及び前記空気供給経路のうち少なくとも一方に設けられ、前記制御対象熱交換器の前記伝熱部に供給される前記排ガス及び前記加熱対象空気のうち少なくとも一方の流量を変化させる動作を行う流量調整機構と、前記温度検知部により検知される前記検知対象温度が予め設定された許容温度以上になるように前記流量調整機構を動作させる温度制御部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物を焼却する焼却炉と、
前記焼却炉から排出される排ガスが流れる排ガス経路と、
前記排ガス経路に配置され、前記排ガスの熱を加熱対象空気に伝えることにより当該加熱対象空気を加熱する伝熱部を含む制御対象熱交換器と、
前記伝熱部の温度と相関して上下する検知対象温度を検知する温度検知部と、
前記制御対象熱交換器に前記加熱対象空気を供給するための空気供給経路と、
前記排ガス経路及び前記空気供給経路のうち少なくとも一方に設けられ、前記制御対象熱交換器の前記伝熱部に供給される前記排ガス及び前記加熱対象空気のうち少なくとも一方の流量を変化させる動作を行うことが可能な流量調整機構と、
前記温度検知部により検知される前記検知対象温度が予め設定された許容温度以上になるように前記流量調整機構を動作させる温度制御部と、を備えた、廃棄物処理設備。
【請求項2】
請求項1に記載の廃棄物処理設備であって、
前記温度検知部は、前記検知対象温度として、前記伝熱部の表面温度を検知する、廃棄物処理設備。
【請求項3】
請求項1に記載の廃棄物処理設備であって、
前記温度検知部は、前記検知対象温度として、前記伝熱部を通過した前記排ガスの温度を検知する、廃棄物処理設備。
【請求項4】
請求項1に記載の廃棄物処理設備であって、
前記流量調整機構は、前記加熱対象空気の少なくとも一部が前記制御対象熱交換器を迂回するように流れることを許容するように前記空気供給経路に接続された空気側バイパス経路と、前記加熱対象空気のうち前記空気側バイパス経路を流れる空気の流量である空気バイパス流量を変化させる動作を行うことが可能な空気バイパス流量調節部と、を含み、前記温度制御部は、前記検知対象温度が前記許容温度よりも低い場合に前記空気バイパス流量を増大させるように前記空気バイパス流量調節部を動作させる、廃棄物処理設備。
【請求項5】
請求項1に記載の廃棄物処理設備であって、
前記空気供給経路に接続されて前記制御対象熱交換器に前記加熱対象空気を送り出すための送風機をさらに備え、前記流量調整機構は、前記送風機により送り出される前記加熱対象空気の流量である送風流量を変化させる送風調整部を含み、前記温度制御部は、前記検知対象温度が前記許容温度よりも低い場合に前記送風流量を減少させるように前記送風調整部を動作させる、廃棄物処理設備。
【請求項6】
請求項1に記載の廃棄物処理設備であって、
前記流量調整機構は、前記排ガスの少なくとも一部が前記制御対象熱交換器を迂回するように流れることを許容するように前記排ガス経路に接続された排ガス側バイパス経路と、前記排ガスのうち前記排ガス側バイパス経路を流れる排ガスの流量である排ガスバイパス流量を変化させる動作を行うことが可能な排ガスバイパス流量調節部と、を含み、前記温度制御部は、前記検知対象温度が前記許容温度よりも低い場合に前記排ガスバイパス流量を減少させるように前記排ガスバイパス流量調節部を動作させる、廃棄物処理設備。
【請求項7】
請求項1に記載の廃棄物処理設備であって、
前記排ガス経路において前記制御対象熱交換器の上流側に配置される高温側熱交換器をさらに備え、前記高温側熱交換器は、前記制御対象熱交換器の前記伝熱部とは別の高温伝熱部をさらに含み、前記高温伝熱部は、前記制御対象熱交換器を通過する前の前記排ガスの熱を前記制御対象熱交換器の前記伝熱部により加熱された後の前記加熱対象空気に伝えることにより当該加熱対象空気をさらに加熱し、当該高温伝熱部により温度が降下した後の前記排ガスが前記制御対象熱交換器の前記伝熱部に供給される、廃棄物処理設備。
【請求項8】
請求項1に記載の廃棄物処理設備であって、
前記排ガス経路において前記制御対象熱交換器の下流側に配置される低温側熱交換器をさらに備え、前記低温側熱交換器は、前記制御対象熱交換器の前記伝熱部とは別の低温伝熱部をさらに含み、前記低温伝熱部は、前記制御対象熱交換器の前記伝熱部を通過して温度が降下した後の前記排ガスの熱を前記制御対象熱交換器の前記伝熱部に供給される前の前記加熱対象空気の少なくとも一部に伝えることにより当該加熱対象空気の少なくとも一部を予備加熱する、廃棄物処理設備。
【請求項9】
請求項8に記載の廃棄物処理設備であって、
前記低温伝熱部は、前記制御対象熱交換器の前記伝熱部を構成する材料よりも高い耐腐食性を有する材料により構成されている、廃棄物処理設備。
【請求項10】
請求項8に記載の廃棄物処理設備であって、
前記空気供給経路は、前記低温側熱交換器の前記低温伝熱部により予備加熱された後の予備加熱空気を前記制御対象熱交換器の前記伝熱部に供給される前記加熱対象空気に含めるように構成されている、廃棄物処理設備。
【請求項11】
請求項10に記載の廃棄物処理設備であって、
前記温度検知部は、前記検知対象温度として、前記予備加熱空気を含んで前記制御対象熱交換器の前記伝熱部に供給される前記加熱対象空気の温度である加熱対象空気温度を検知する、廃棄物処理設備。
【請求項12】
請求項10に記載の廃棄物処理設備であって、
前記流量調整機構は、前記加熱対象空気における前記予備加熱空気の比率である予備加熱空気比率を変化させる動作を行うことが可能な比率調整機構を含み、前記温度制御部は、前記検知対象温度が前記許容温度よりも低い場合に前記予備加熱空気比率を増大させるように前記比率調整機構を動作させる、廃棄物処理設備。
【請求項13】
請求項11に記載の廃棄物処理設備であって、
前記流量調整機構は、前記加熱対象空気の少なくとも一部が前記低温側熱交換器を迂回するように流れることを許容するように前記空気供給経路に接続された低温側空気バイパス経路と、前記加熱対象空気のうち前記低温側空気バイパス経路を流れる空気の流量である低温側空気バイパス流量を変化させる動作を行うことが可能な低温側空気バイパス流量調節部と、を含み、前記温度制御部は、前記検知対象温度が前記許容温度よりも低い場合に前記低温側空気バイパス流量を減少させて前記低温側熱交換器の前記低温伝熱部を通過する前記予備加熱空気の流量を増大させるように前記低温側空気バイパス流量調節部を動作させる、廃棄物処理設備。
【請求項14】
請求項1に記載の廃棄物処理設備であって、前記制御対象熱交換器の前記伝熱部により加熱された後の前記加熱対象空気の熱を利用する熱利用設備をさらに備えた、廃棄物処理設備。
【請求項15】
請求項14に記載の廃棄物処理設備であって、前記熱利用設備は白煙防止部を含み、前記白煙防止部は、前記排ガスを外部空間に放出する煙突における白煙の発生を、前記加熱対象空気の熱を利用して防止する、廃棄物処理設備。
【請求項16】
請求項15に記載の廃棄物処理設備であって、前記温度制御部は、前記煙突における白煙発生に関する情報に基づいて前記許容温度を変更するように構成されている、廃棄物処理設備。
【請求項17】
請求項14に記載の廃棄物処理設備であって、前記熱利用設備は発電装置を含む、廃棄物処理設備。
【請求項18】
廃棄物を焼却する焼却炉と、前記焼却炉から排出される排ガスが流れる排ガス経路と、前記排ガス経路に配置され、前記排ガスの熱を加熱対象空気に伝えることにより当該加熱対象空気を加熱する伝熱部を含む熱交換器と、備えた廃棄物処理設備を運転するための方法であって、
前記伝熱部の温度に相関して上下する検知対象温度を検知することと、
前記検知対象温度が予め設定された許容温度以上になるように、前記熱交換器に供給される前記排ガス及び前記加熱対象空気のうち少なくとも一方の流量を調整することと、を含む、廃棄物処理設備の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物処理設備及び廃棄物処理設備の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されているように、排ガスを排出する焼却炉等の設備において白煙防止装置を設けることが知られている。
【0003】
特許文献1に記載された設備では、焼却炉から煙突まで至る排ガス経路において、湿式排煙処理装置の前後段に高温熱交換器及び低温熱交換器がそれぞれ配置されている。この設備では、押込送風機により送り出された空気が、低温熱交換器において排ガスの熱により加熱された後、高温熱交換器において排ガスの熱によりさらに加熱され、その後排ガス経路のうち低温熱交換器の後段部分に導入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭52-74133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、排ガスが高温熱交換器及び低温熱交換器のそれぞれにおいて空気と熱交換した結果、排ガスの温度が大幅に下がり、これによる不都合が発生するおそれがある。例えば、排ガス経路のうち前記低温熱交換器の下流側の配管において想定以上に排ガスの凝縮(例えば酸性物質の凝縮や水蒸気の凝縮)が起こると、設計時における想定を上回る速度で当該配管の腐食が進むおそれがある。このような不都合は、前記排ガスと前記空気との熱交換量を減らすように設計することにより抑制することができるが、このように排ガスの温度降下の抑制を重視した設計では、前記排ガスの温度が著しく降下するおそれのない運転状況、すなわち、本来は前記熱交換量を著しく減らす必要がない運転状況、において必要以上に熱交換量が抑制されることになる。このことは、排ガスの熱の利用効率の向上を妨げる。
【0006】
本発明は、排ガスの熱を熱交換器によって効率よく回収しながら当該熱交換器の伝熱部またはその下流側の配管の温度の過度の降下を抑制することが可能な廃棄物処理設備及び廃棄物処理設備の運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
提供されるのは、廃棄物処理設備であって、当該廃棄物処理設備は、廃棄物を焼却する焼却炉と、前記焼却炉から排出される排ガスが流れる排ガス経路と、前記排ガス経路に配置され、前記排ガスの熱を加熱対象空気に伝えることにより当該加熱対象空気を加熱する伝熱部を含む制御対象熱交換器と、前記伝熱部の温度と相関して上下する検知対象温度を検知する温度検知部と、前記制御対象熱交換器に前記加熱対象空気を供給するための空気供給経路と、前記排ガス経路及び前記空気供給経路のうち少なくとも一方に設けられ、前記制御対象熱交換器の前記伝熱部に供給される前記排ガス及び前記加熱対象空気のうち少なくとも一方の流量を変化させる動作を行うことが可能な流量調整機構と、前記温度検知部により検知される前記検知対象温度が予め設定された許容温度以上になるように前記流量調整機構を動作させる温度制御部と、を備える。
【0008】
前記設備において、前記温度制御部は、前記検知対象温度が予め設定された前記許容温度以上になるように前記流量調整機構を動作させる、すなわち、前記制御対象熱交換器に供給される排ガス及び空気のうち少なくとも一方の流量を調整する、ことにより、前記検知対象温度に対応する前記制御対象熱交換器の前記伝熱部の温度が過度に降下するのを抑制する一方、前記検知対象温度が前記許容温度以上である場合には前記伝熱部を通過する前記排ガスと前記加熱対象空気との十分な熱交換を確保して当該排ガスの熱が効率的に回収されることを可能にする。
【0009】
前記温度検知部により検知された.前記検知対象温度は、保護されるべき前記制御対象熱交換器の前記伝熱部の温度と相関して上下する温度であればよく、例えば、当該伝熱部そのものの表面温度であってもよいし、あるいは前記伝熱部を通過した前記排ガスの温度であってもよい。
【0010】
前記廃棄物処理設備における前記流量調整機構は、例えば、前記加熱対象空気の少なくとも一部が前記制御対象熱交換器を迂回するように流れることを許容するように前記空気供給経路に接続された空気側バイパス経路と、前記加熱対象空気のうち前記空気側バイパス経路を流れる空気の流量である空気バイパス流量を変化させる動作を行うことが可能な空気バイパス流量調節部と、を含み、前記温度制御部は、前記検知対象温度が前記許容温度よりも低い場合に前記空気バイパス流量を増大させるように前記空気バイパス流量調節部を動作させるように構成されたものが、好適である。
【0011】
また、前記空気供給経路に接続されて前記制御対象熱交換器に前記加熱対象空気を送り出すための送風機を前記設備がさらに備える場合、前記流量調整機構は、前記送風機により送り出される前記加熱対象空気の流量である送風流量を変化させる送風調整部を含み、前記温度制御部は、前記検知対象温度が前記許容温度よりも低い場合に前記送風流量を減少させるように前記送風調整部を動作させるように構成されてもよい。
【0012】
前記流量調整機構は、あるいは、前記排ガスの少なくとも一部が前記制御対象熱交換器を迂回するように流れることを許容するように前記排ガス経路に接続された排ガス側バイパス経路と、前記排ガスのうち前記排ガス側バイパス経路を流れる排ガスの流量である排ガスバイパス流量を変化させる動作を行うことが可能な排ガスバイパス流量調節部と、を含み、前記温度制御部は、前記検知対象温度が前記許容温度よりも低い場合に前記排ガスバイパス流量を減少させるように前記排ガスバイパス流量調節部を動作させるように構成されてもよい。
【0013】
以上の何れの態様においても、前記流量調整機構及び前記温度制御部は、前記制御対象熱交換器に供給される排ガスや空気の流量を容易に調整して前記伝熱部の温度を適正に制御することができる。
【0014】
前記廃棄物処理設備は、前記制御対象熱交換器からなる単一の熱交換器のみを備えていてもよいし、前記制御対象熱交換器を含む複数の熱交換器を備えていてもよい。
【0015】
後者の例として、前記廃棄物処理設備は、前記排ガス経路において前記制御対象熱交換器の上流側に配置される高温側熱交換器をさらに備え、前記高温側熱交換器は、前記制御対象熱交換器の前記伝熱部とは別の高温伝熱部をさらに含み、前記高温伝熱部は、前記制御対象熱交換器を通過する前の前記排ガスの熱を前記制御対象熱交換器の前記伝熱部により加熱された後の前記加熱対象空気に伝えることにより当該加熱対象空気をさらに加熱し、当該高温伝熱部により温度が降下した後の前記排ガスが前記制御対象熱交換器の前記伝熱部に供給されるように構成されてもよい。
【0016】
この態様では、前記制御対象熱交換器が前記高温側熱交換器の運転温度よりも低い運転温度で運転される熱交換器、すなわち低温側熱交換器、であるにもかかわらず、当該制御対象熱交換器の前記伝熱部の温度が過度に降下するのを抑制して当該温度の降下に起因する前記伝熱部の腐食の促進を抑制することができる。
【0017】
前記廃棄物処理設備は、あるいは、前記排ガス経路において前記制御対象熱交換器の下流側に配置される低温側熱交換器をさらに備え、前記低温側熱交換器は、前記制御対象熱交換器の前記伝熱部とは別の低温伝熱部をさらに含み、前記低温伝熱部は、前記制御対象熱交換器の前記伝熱部を通過して温度が降下した後の前記排ガスの熱を前記制御対象熱交換器の前記伝熱部に供給される前の前記加熱対象空気の少なくとも一部に伝えることにより当該加熱対象空気の少なくとも一部を予備加熱するように構成されてもよい。
【0018】
この態様では、前記低温側熱交換器の運転により、排ガス温度のさらなる低下と、加熱対象空気の予備加熱と、の双方を実現することができる。
【0019】
前記低温伝熱部は、前記制御対象熱交換器の前記伝熱部を構成する材料よりも高い耐腐食性を有する材料により構成されていることが、好ましい。このように、前記制御対象熱交換器よりも運転温度の低い低温側熱交換器ではその低温伝熱部を相対的に耐腐食性の高い材料で構成することにより、当該低温伝熱部の温度低下に起因する腐食を確実に防ぐ一方、当該低温側熱交換器よりも相対的に運転温度の高い高温側熱交換器である前記制御対象熱交換器の前記伝熱部については、前記耐腐食性の高い材料の使用によってではなく前記温度制御部による温度制御で過度の温度降下を抑制することによって腐食を抑制することにより、前記耐腐食性の高い材料の使用量を抑えてコストの低減を図りながら前記低温側熱交換器及び前記制御対象熱交換器(高温側熱交換器)の双方の伝熱部の温度降下に起因する腐食を有効に抑制することができる。
【0020】
具体的には、前記空気供給経路が、前記低温側熱交換器の前記低温伝熱部により予備加熱された後の予備加熱空気を前記制御対象熱交換器の前記伝熱部に供給される前記加熱対象空気に含めるように構成されていることが、好ましい。前記予備加熱された後の予備加熱空気が前記加熱対象空気に含まれることは、当該加熱対象空気の温度を変化させて前記伝熱部の温度を制御することを可能にする。
【0021】
この場合、前記温度検知部は、前記検知対象温度として、前記予備加熱空気を含んで前記制御対象熱交換器の前記伝熱部に供給される前記加熱対象空気の温度である加熱対象空気温度を検知してもよい。
【0022】
一方、前記流量調整機構は、前記加熱対象空気における前記予備加熱空気の比率である予備加熱空気比率を変化させる動作を行うことが可能な比率調整機構を含み、前記温度制御部は、前記検知対象温度が前記許容温度よりも低い場合に前記予備加熱空気比率を増大させるように前記比率調整機構を動作させるように構成されてもよい。このような予備加熱空気比率の操作により、前記予備加熱空気を利用した前記検知対象温度の制御、すなわち、前記制御対象熱交換器の前記伝熱部の温度を一定以上に維持するための制御、が実現される。
【0023】
前記流量調整機構は、より具体的には、前記加熱対象空気の少なくとも一部が前記低温側熱交換器を迂回するように流れることを許容するように前記空気供給経路に接続された低温側空気バイパス経路と、前記加熱対象空気のうち前記低温側空気バイパス経路を流れる空気の流量である低温側空気バイパス流量を変化させる動作を行うことが可能な低温側空気バイパス流量調節部と、を含むことが、好ましい。この場合、前記温度制御部は、前記検知対象温度が前記許容温度よりも低い場合に前記低温側空気バイパス流量を減少させて前記低温側熱交換器の前記低温伝熱部を通過する前記予備加熱空気の流量を増大させるように前記空気バイパス流量調節部を動作させることにより、当該検知対象温度を前記許容温度以上に保つことが可能である。
【0024】
前記廃棄物処理設備は、前記制御対象熱交換器の前記伝熱部により加熱された後の前記加熱対象空気の熱を利用する熱利用設備をさらに備えていてもよい。
【0025】
具体的に、前記熱利用設備は、白煙防止部を含んでいてもよい。前記白煙防止部は、前記排ガスを外部空間に放出する煙突における白煙の発生を、前記加熱対象空気の熱を利用して防止する。このことは、前記制御対象熱交換器の前記伝熱部における温度降下の抑制と、排ガスの熱を有効に利用した白煙発生の防止と、が同時に行われることを可能にする。また、前記熱利用設備は、前記白煙防止部に加え、あるいはこれに代え、当該白煙防止部以外の熱利用手段、例えば前記加熱対象空気の熱を利用して発電を行う手段、を含んでもよい。
【0026】
前記熱利用設備が前記白煙防止部を含む場合、前記温度制御部は、前記煙突における白煙発生に関する情報に基づいて前記許容温度を変更するように構成されていてもよい。このことは、実際の白煙の発生の状況に応じた温度制御が行われることを可能にする。
【0027】
また、前記熱利用設備は、発電装置を含んでいてもよい。前記発電装置は、前記制御対象熱交換器により回収される熱を有効に利用して電気エネルギーを得ることを可能にする。
【0028】
また、提供されるのは、廃棄物を焼却する焼却炉と、前記焼却炉から排出される排ガスが流れる排ガス経路と、前記排ガス経路に配置され、前記排ガスの熱を加熱対象空気に伝えることにより当該加熱対象空気を加熱する伝熱部を含む熱交換器と、備えた廃棄物処理設備を運転するための方法であって、前記伝熱部の温度に相関して上下する検知対象温度を検知することと、前記検知対象温度が予め設定された許容温度以上になるように、前記熱交換器に供給される前記排ガス及び前記加熱対象空気のうち少なくとも一方の流量を調整することと、を含む。
【0029】
この方法では、前記検知対象温度が予め設定された前記許容温度以上になるように、前記制御対象熱交換器に供給される排ガス及び空気のうち少なくとも一方の流量を調整する、ことにより、前記検知対象温度に対応する前記制御対象熱交換器の前記伝熱部の温度が過度に降下するのを抑制する一方、前記検知対象温度が前記許容温度以上である場合には前記伝熱部を通過する前記排ガスと前記加熱対象空気との十分な熱交換を確保して当該排ガスの熱が効率的に回収されることができる。
【発明の効果】
【0030】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、排ガスの熱を制御対象熱交換器によって効率よく回収しながら当該制御対象熱交換器の伝熱部またはその下流側の配管の温度の過度の降下を抑制することが可能な廃棄物処理設備及び廃棄物処理設備の運転方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の第1の実施形態に係る廃棄物処理設備のフローシートである。
図2】前記第1の実施形態における廃棄物処理設備のコントローラにより行われる温度制御を示すフローチャートである。
図3】前記第1の実施形態の第1変形例における廃棄物処理設備の運転方法を説明するためのフローチャートである。
図4】前記第1の実施形態の第2変形例における廃棄物処理設備の運転方法を説明するためのフローチャートである。
図5】前記第1の実施形態の第3変形例における温度制御部を説明するための機能ブロック図である。
図6】前記第3変形例における温度設定変更部による制御を説明するためのフローチャートである。
図7】本発明の第2の実施形態に係る廃棄物処理設備のフローシートである。
図8】前記第2の実施形態における廃棄物処理設備のコントローラにより行われる温度制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態につき詳細に説明する。
【0033】
(第1の実施形態)
図1に示すように、本実施形態に係る廃棄物処理設備1は、焼却炉10と、第1高圧熱交換器11と、第2高圧熱交換器12と、再加熱器13と、第1白煙防止熱交換器30と、バグフィルタ31と、第2白煙防止熱交換器40と、排煙処理塔42と、コンプレッサ33及びタービン34を含む過給機32と、排ガス経路20と、を備える。この第1の実施形態では、前記第2白煙防止熱交換器40が制御対象熱交換器に相当し、前記第1白煙防止熱交換器30が前記第2白煙防止熱交換器40よりも高い運転温度で運転される高温側熱交換器に相当する。前記第1高圧熱交換器11、前記再加熱器13、前記第2高圧熱交換器12、前記第1白煙防止熱交換器30、前記バグフィルタ31、前記第2白煙防止熱交換器40及び前記排煙処理塔42は、前記排ガス経路20上において上流側からこの順で配置されている。
【0034】
前記排ガス経路20は、前記焼却炉10から排出される排ガスが当該排ガス経路20を流れて煙突110から放出されることを可能にするように配置される。前記排ガス経路20は、具体的には、第1経路部分21と、第2経路部分22と、第3経路部分23と、第4経路部分24と、第5経路部分25と、第6経路部分26と、を含む。前記第1経路部分21は、前記焼却炉10の出口と前記第1高圧熱交換器11の入口とを接続する。前記第2経路部分22は、前記再加熱器13の出口と前記第2高圧熱交換器12の入口とを接続する。前記第3経路部分23は、前記第2高圧熱交換器12の出口と前記第1白煙防止熱交換器30の入口とを接続する。前記第4経路部分24は、前記第1白煙防止熱交換器30の出口と前記バグフィルタ31の入口とを接続する。前記第5経路部分25は、前記バグフィルタ31の出口と前記第2白煙防止熱交換器40の入口とを接続する。前記第6経路部分26は、前記第2白煙防止熱交換器40の出口と前記排煙処理塔42の入口とを接続する。前記第4経路部分24及び前記第5経路部分25を流れる排ガスの温度は、例えば200~250℃程度である。前記排ガスは、例えば塩化水素等の塩素化合物や硫黄酸化物等の腐食性物質を含有する。
【0035】
前記焼却炉10は、例えば脱水汚泥等の廃棄物を焼却する。本実施形態における前記焼却炉10は、流動床式の焼却炉であるが、これに限定されない。
【0036】
前記第1高圧熱交換器11は、前記焼却炉10から排出される排ガスの熱により燃焼用空気を加熱する。具体的に、前記第1高圧熱交換器11は、前記第1経路部分21を通じて前記第1高圧熱交換器11に流入する排ガスと、前記コンプレッサ33で圧縮されかつ前記第2高圧熱交換器12を通過した後の燃焼用空気と、の間で熱交換を行わせる。前記過給機32は、前記第1高圧熱交換器11により加熱された後の燃焼用空気を後述する再加熱器13および空気冷却器111をこの順に経由させて前記焼却炉10の下部に供給する。
【0037】
前記第2高圧熱交換器12は、前記第1高圧熱交換器11と同様、排ガスの熱により燃焼用空気を加熱する。具体的に、前記第2高圧熱交換器12は、前記第2経路部分22を通じて前記第2高圧熱交換器12に流入する排ガスと、前記コンプレッサ33により圧縮された後の燃焼用空気と、の間で熱交換を行わせる。
【0038】
前記再加熱器13は、前記タービン34から流出した燃焼用空気を排ガスの熱により加熱する。前記過給機32は、必ずしも前記再加熱器13や多段の高圧熱交換器と組み合わせて使用されなくてもよい。例えば、前記過給機32と組み合わされる高圧熱交換器が前記第2高圧熱交換器12のみであってもよい。
【0039】
前記第1白煙防止熱交換器30は、排ガスの熱により白煙防止空気を加熱する。具体的に、前記第1白煙防止熱交換器30は、高温伝熱部を含み、当該高温伝熱部は、前記第2白煙防止熱交換器40を通過する前の排ガスの熱を、後述のように前記第2白煙防止熱交換器40により加熱された後の加熱対象空気である前記白煙防止空気と、の間で熱交換を行わせることにより、当該加熱対象空気をさらに加熱する。このようにして前記第1白煙防止熱交換器30で加熱された前記白煙防止空気は、前記煙突110に供給されて、前記煙突110からの白煙の発生を防止する。
【0040】
前記バグフィルタ31は、前記第1白煙防止熱交換器30から流出した排ガス中に含まれるばいじん等を捕集する。前記バグフィルタ31に代えて、例えばセラミックフィルター等が集じん装置として採用されてもよい。また集じん装置に流入する排ガスの温度が高い場合には、冷却装置(図示しない)が別途設けられてもよい。
【0041】
前記第2白煙防止熱交換器40は、前記第1白煙防止熱交換器30で加熱される前の白煙防止空気を排ガスの熱により加熱するためのものである。この第1の実施形態では、前記第2白煙防止熱交換器40が本発明に係る制御対象熱交換器に相当し、前記第1白煙防止熱交換器30は、前記排ガス経路20において前記制御対象熱交換器である前記第1白煙防止熱交換器30の上流側に配置された高温側熱交換器に相当する。
【0042】
前記第2白煙防止熱交換器40は、前記第1白煙防止熱交換器30の前記高温伝熱部とは別の低温伝熱部を含み、前記低温伝熱部は、前記第1白煙防止熱交換器30を通過して温度が降下した後の排ガスの熱を前記白煙防止空気に伝えることにより当該白煙防止空気を加熱する。前記第2白煙防止熱交換器40は、例えばプレート式熱交換器であり、耐腐食性を有するものであるが、これに限定されない。また第2白煙防止熱交換器40の内部には、洗浄用の散水ノズル(図示しない)が配置されていてもよい。
【0043】
前記廃棄物処理設備1は、排ガス温度検知部41をさらに備える。図1に示すように、この第1の実施形態に係る前記排ガス温度検知部41は、前記第6経路部分26に配置されて排ガス温度を検知対象温度として検知する。前記検知対象温度は、前記制御対象熱交換器である前記第2白煙防止熱交換器40の伝熱部の温度と相関して上下する温度であり、この実施の形態では、前記排ガス温度、具体的には前記第6経路部分26を流れる排ガスの温度、が前記検知対象温度として採択されている。すなわち、前記排ガス温度検知部41は、前記第2白煙防止熱交換器40の前記低温伝熱部を通過した後で前記排煙処理塔42に至る前の排ガスの温度を前記検知対象温度として検知する。
【0044】
前記検知対象温度は、前記制御対象熱交換器の伝熱部の温度と相関して上下する温度であればよく、よって前記排ガス温度に限定されない。前記検知対象温度は、あるいは、前記第1の実施形態において前記制御対象熱交換器に相当する前記第2白煙防止熱交換器40の低温伝熱部そのものの表面温度であってもよい。例えば、前記第2白煙防止熱交換器40が前記プレート式熱交換器である場合、前記設備は、前記排ガス温度検知部41に代えて前記プレート式熱交換器の伝熱部を構成するプレートの表面温度を検知する伝熱部温度検知部を具備してもよい。
【0045】
前記廃棄物処理設備1は、前記焼却炉10に燃焼用空気を供給するための燃焼用空気供給経路35をさらに備える。この燃焼用空気供給経路35には、前記コンプレッサ33、前記第2高圧熱交換器12、前記第1高圧熱交換器11、前記タービン34、前記再加熱器13及び第1温水ボイラ111が、上流側からこの順に配置されている。
【0046】
前記廃棄物処理設備1は、白煙防止空気供給経路50と、流量調整機構と、をさらに備える。前記白煙防止空気供給経路50は、前記白煙防止空気が前記白煙防止空気供給経路50を流れて前記煙突110に供給されることを可能にする経路であり、前記制御対象熱交換器である前記第2白煙防止熱交換器40に前記加熱対象空気である前記白煙防止空気を供給するための空気供給経路に相当する。前記白煙防止空気供給経路50は、第1経路部分51、第2経路部分52、第3経路部分53及び第4経路部分54を含む。前記白煙防止空気供給経路50上において、前記第2白煙防止熱交換器40及び前記第1白煙防止熱交換器30がこの順で配置されている。
【0047】
前記第1経路部分51は、前記白煙防止ブロワ90に接続される入口端と、前記第2白煙防止熱交換器40の空気入口に接続される下流端と、を有する。前記第2経路部分52は、前記第2白煙防止熱交換器40の空気出口に接続される上流端と、前記第1白煙防止熱交換器30の空気入口に接続される下流端と、を有する。前記第3経路部分53は、前記第1白煙防止熱交換器30の空気出口に接続される上流端と、第2温水ボイラ101の空気入口に接続される下流端と、を有する。前記第4経路部分54は、前記第2温水ボイラ101の空気出口に接続される上流端と、前記煙突110に接続される下流端と、を有する。
【0048】
前記流量調整機構は、前記排ガス経路20を流れて前記第2白煙防止熱交換器40に供給される排ガス及び前記白煙防止空気供給経路50を流れる白煙防止空気のうち少なくとも一方の流量を変化させる動作を行うことが可能である。本実施形態における流量調整機構は、白煙防止空気を送り出す前記白煙防止ブロワ90(送風機)と、前記第2白煙防止熱交換器40を迂回するように前記白煙防止空気供給経路50に接続された前記空気側バイパス経路71と、前記白煙防止空気供給経路50のうち前記第2白煙防止熱交換器40の入口側に配置された空気側入口ダンパ72と、前記空気側バイパス経路71に配置された空気側バイパスダンパ73と、空気側出口ダンパ74と、前記第2白煙防止熱交換器40を迂回するように前記排ガス経路20に接続された排ガス側バイパス経路61と、前記排ガス経路20のうち前記第2白煙防止熱交換器40の入口側に配置された排ガス側入口ダンパ62と、前記排ガス側バイパス経路61に配置された排ガス側バイパスダンパ63と、排ガス側出口ダンパ64と、を含む。この明細書に記載される「ダンパ」は、いずれも、当該ダンパに入力される指令信号に応じて変化させられる開度を有する流量調整弁であり、当該開度に対応した流量で当該ダンパを流体が流れることを許容するように構成されている。
【0049】
図1に示すように、前記空気側バイパス経路71は、前記第1経路部分51に接続される上流端と、前記第2経路部分52に接続される下流端と、を有する。前記空気側入口ダンパ72は、前記第1経路部分51のうち前記空気側バイパス経路71の前記上流端に接続される部位よりも下流側の部分に配置されている。前記空気側出口ダンパ74は、前記第2経路部分52のうち前記空気側バイパス経路71の前記下流端に接続される部位よりも上流側の部分に配置されている。
【0050】
前記排ガス側バイパス経路61は、前記第5経路部分25に接続される上流端と、前記第6経路部分26に接続される下流端と、を有する。前記排ガス側出口ダンパ64は、前記第6経路部分26のうち前記排ガス側バイパス経路61の下流端が接続される部位よりも上流側の部分に配置されている。また、この第1の実施の形態に係る前記排ガス温度検知部41は、前記第6経路部分26のうち前記排ガス側バイパス経路61の下流端に接続される部位よりも下流側の部分に配置されている。
【0051】
前記廃棄物処理設備1は、前記第1白煙防止熱交換器30及び前記第2白煙防止熱交換器40で加熱された白煙防止空気の熱を利用するための熱利用設備100をさらに備える。本実施形態における前記熱利用設備100は、前記第2温水ボイラ101と、発電装置102と、前記煙突110と、を含む。
【0052】
前記第2温水ボイラ101は、前記第1白煙防止熱交換器30から流出した前記白煙防止空気により水を加熱して温水を生成する。なお、前記熱利用設備で用いられる熱媒体は水に限定されない。前記熱媒体は、水以外の液体、例えば有機溶媒、であってもよい。前記熱媒体が液体である場合、前記熱媒体は、例えば加圧された状態で循環回路内に充填され、高温でも当該熱媒体が蒸発しない状態を維持しつつ運転可能となっている。
【0053】
前記発電装置102は、バイナリー発電装置であり、前記第2温水ボイラ101で生成された温水(加圧水)を熱源として電気エネルギーを生成する。図示は省略するが、前記発電装置102は、低沸点冷媒である作動媒体が循環する循環回路と、当該循環回路に配置された複数の要素と、を含み、前記複数の要素は、蒸発器、膨張機、凝縮器及び作動媒体ポンプを含む。前記蒸発器は、前記作動媒体と前記温水との間で熱交換を行わせて当該作動媒体を蒸発させる。前記膨張機はスクリューを含み、当該スクリューは前記蒸発器において蒸発した前記作動媒体により回転させられる。前記発電機は、前記スクリューに接続されて当該スクリューとともに回転することにより電気エネルギーを生成する。なお、バイナリー発電装置はスクリュー式のものに限定されず、例えばラジアルタービン式のものやその他の方式のものでもよい。
【0054】
図1に示すように、前記発電装置102は、前記循環回路103を介して第2温水ボイラ101に接続されている。また、前記循環回路103は、分岐路104を介して第1温水ボイラ111に接続されている。前記分岐路104は、前記循環回路103から分岐して前記第1温水ボイラ111に至る分岐往路104Aと、前記第1温水ボイラ111から延びて前記循環回路103に合流する分岐復路104Bと、を含む。具体的に、前記分岐往路104Aは、前記循環回路103の第1回路部分103Aの分岐点と前記第1温水ボイラ111の熱媒体入口とを接続する。前記第1回路部分103Aは、前記循環回路103のうち前記熱媒体を前記発電装置102から前記第2温水ボイラ101に導く部分であり、前記分岐点では前記第1回路部分103Aを流れる熱媒体の一部が分岐して前記循環回路103の外に流出することが可能である。前記分岐復路104Bは、前記第1温水ボイラ111の熱媒体出口と前記循環回路103の第2回路部分103Bの合流点とを接続する。前記第2回路部分103Bは、前記循環回路103のうち前記熱媒体を前記第2温水ボイラ101から前記発電装置102に導く部分であり、前記合流点では、前記第1温水ボイラ111から戻る熱媒体が前記循環回路103を流れる熱媒体と合流する。このように、前記分岐路104は、前記発電装置102から前記第2温水ボイラ101に向かって流れる熱媒体である水の一部が前記分岐往路104Aを通じて前記第1温水ボイラ111に導入されることを許容するとともに、前記第1温水ボイラ111から流出した温水が前記分岐復路104Bを通じて、前記第2温水ボイラ101から発電装置102に向かって流れる温水と合流することを、許容する。
【0055】
前記煙突110は、前記排ガス経路の下流端、この第1の実施の形態では前記排煙処理塔42、に接続され、当該排ガス経路を流れた排ガスが前記煙突110を通じて外部空間(大気中)に放出されることを許容する。前記煙突110には、前記白煙防止空気供給経路50の下流端が接続され、前記第1白煙防止熱交換器30及び前記第2白煙防止熱交換器40で加熱された白煙防止空気の熱が前記煙突110において白煙発生の防止に用いられる。すなわち、この第1の実施の形態に係る前記熱利用設備100は、前記発電装置102と白煙防止部とを併有し、前記白煙防止部は、前記煙突110における白煙の発生を、前記加熱対象空気(この実施の形態では前記白煙防止空気)の熱を利用して防止する。
【0056】
この第1の実施の形態に係る前記熱利用設備100は、前記第2温水ボイラ101を迂回するように前記白煙防止空気供給経路50に接続された白煙防止バイパス経路120と、温水ボイラ入口ダンパ121と、白煙防止バイパスダンパ122と、温水ボイラ出口ダンパ123と、をさらに含む。前記白煙防止バイパス経路120は、前記第3経路部分53に接続される上流端と、前記第4経路部分54に接続される下流端と、を有する。前記温水ボイラ入口ダンパ121は、前記第3経路部分53のうち前記白煙防止バイパス経路120の上流端が接続される部位よりも下流側の部分に配置されている。前記白煙防止バイパスダンパ122は、前記白煙防止バイパス経路120に配置されている。前記温水ボイラ出口ダンパ123は、前記第4経路部分54のうち前記白煙防止バイパス経路120の下流端が接続される部位よりも上流側の部分に配置されている。
【0057】
本実施形態に係る廃棄物処理設備1では、前記温水ボイラ入口ダンパ121及び前記白煙防止バイパスダンパ122のうち少なくとも一方の開度を変化させることにより、前記第2温水ボイラ101に供給される白煙防止空気の流量を調整することができる。なお、本発明において、前記白煙防止バイパス経路120、前記温水ボイラ入口ダンパ121、前記白煙防止バイパスダンパ122及び前記温水ボイラ出口ダンパ123は必須の構成要素ではなく、省略されてもよい。
【0058】
前記廃棄物処理設備1は、前記検知対象温度に相当する排ガスの温度を制御するためのコントローラ80をさらに備える。前記コントローラ80は、CPU(中央演算処理装置)と、受付部81と、記憶部84と、を含み、前記CPUは、前記記憶部84に記憶されるプログラムを実行することにより、所定の機能を実現する。前記所定の機能は、判定部82と、流量調整部83と、を含む。前記記憶部84は、メモリ等の記憶デバイスにより構成されている。
【0059】
前記受付部81は、前記排ガス温度検知部41から前記コントローラ80への検知データの入力を受け付ける。前記判定部82は、前記受付部81により受け付けられた前記検知データに係る温度すなわち前記検知温度と、前記記憶部84に格納されている許容下限温度T2aと、を比較し、両温度の何れが高いかを判定する。具体的に、前記判定部82は、前記検知温度が前記許容下限温度T2a未満であるか否かについての判定結果を出力する。前記許容下限温度T2aは、前記制御対象熱交換器である前記第2白煙防止熱交換器40の前記伝熱部の温度の過度の低下に起因する当該伝熱部またはその下流側の配管の腐食を抑制するという目的を達成する観点から設定された温度であり、本発明に係る許容温度に相当する。当該許容下限温度T2aの具体的な数値は特に限定されないが、例えば100℃である。前記流量調整部83は、前記判定部82の出力結果に基づいて、前記排ガス温度検知部41により検知された前記検知温度が前記許容下限温度T2a以上になるように前記流量調整機構を動作させ、これにより前記検知対象温度に相当する前記伝熱部の温度の制御を行う。
【0060】
以下、当該温度の制御のために前記流量調整部83により行われる前記各ダンパの開度の操作について、図2のフローチャートに基づいて説明する。すなわち、本実施形態に係る廃棄物処理設備の運転方法を説明する。本方法では、以下のようにして、前記検知対象温度、この実施の形態では前記排ガス経路20のうち前記第2白煙防止熱交換器40よりも下流側の経路(第6経路部分26)を流れる排ガスの温度、が予め設定された温度以上になるように、前記第2白煙防止熱交換器40に供給される白煙防止空気の流量が調整される。
【0061】
図2に示すように、前記焼却炉10の運転中において、前記第2白煙防止熱交換器40の後段部分における排ガス温度、すなわち前記第2白煙防止熱交換器40の前記低温伝熱部を通過した排ガスの温度、が前記排ガス温度検知部41により常時又は所定の時間間隔で検知される(ステップS10)。すなわち、前記排ガス温度についての情報を含む検知データが生成される。この検知データは、前記受付部81を通じて前記判定部82に入力される。
【0062】
前記判定部82は、前記検知データに係る温度すなわち前記排ガス温度が前記許容下限温度T2a未満であるか否かを判定する(ステップS20)。当該排ガス温度が当該許容温度未満であると前記判定部82が判定した場合(ステップS20でYES)、前記流量調整部83は、前記排ガス温度を上昇させるべく、空気側入口ダンパ72の開度の減少及び前記空気側バイパスダンパ73の開度の増加の少なくとも一方を実行し(ステップS30)、これにより、前記第2白煙防止熱交換器40に供給される白煙防止空気の流量を減少させる。
【0063】
一方、前記排ガス温度が前記許容下限温度T2a以上であると判定した場合(ステップS20でNO)、前記判定部82は、さらに、前記排ガス温度が許容上限温度T2bよりも高いか否かを判定する(ステップS40)。前記許容上限温度T2bは、前記第2白煙防止熱交換器40に供給される白煙防止空気すなわち加熱対象空気の流量である白煙防止空気流量(加熱対象空気流量;以下、単に「空気流量」と称する。)を増やす方向の制御の実行の可否を判断するために設定された上限温度であり、前記許容下限温度T2a以上の温度に設定され(T2b≧T2a)、好ましくは前記許容下限温度T2aと同等の温度(例えば100°C)に設定される。
【0064】
前記排ガス温度が当該許容上限温度T2bよりも高いと前記判定部82が判定した場合(ステップS40でYES)、前記流量調整部83は、前記空気側バイパスダンパ73が全閉でかつ前記空気側入口ダンパが全開であるか否か、つまり、これ以上前記空気流量を増やすことができない状態にあるか否か、を判断する(ステップS50)。前記空気流量を増やすことが可能な状態である場合、つまり、前記空気側バイパスダンパ73が全閉ではなく、あるいは前記空気側入口ダンパが全開ではない場合にのみ(ステップS50でNO)、前記流量調整部83は、前記空気流量を増やして熱回収量を増やすべく、前記空気側入口ダンパ72の開度の増加及び前記空気側バイパスダンパ73の開度の減少の少なくとも一方を実行し(ステップS60)、これにより、前記第2白煙防止熱交換器40に供給される白煙防止空気の流量を増加させる。前記排ガス温度が前記許容上限温度T2b以下である場合(ステップS40でNO)、もしくは前記空気側バイパスダンパ73が全閉でかつ前記空気側入口ダンパが全開である場合(ステップS50でNO)、前記流量調整部83は前記空気側入口ダンパ72及び前記空気側バイパスダンパ73のそれぞれの開度をそのまま維持する。以上の動作が所定時間の経過ごとに繰り返される。
【0065】
前記ステップS30では、前記空気側入口ダンパ72の開度及び前記空気側バイパスダンパ73の開度の双方が変更されるが、いずれか一方の開度のみの変更によっても、前記第2白煙防止熱交換器40に供給される前記白煙防止空気の流量を減少させることが可能である。具体的には、前記空気側入口ダンパ72の開度を維持して前記空気側バイパスダンパ73の開度のみを増加させる操作が行われてもよいし、前記空気側バイパスダンパ73の開度を維持して前記空気側入口ダンパ72の開度を減少させる操作が行われてもよい。
【0066】
同様に、ステップS60では、前記空気側入口ダンパ72の開度及び前記空気側バイパスダンパ73の開度のいずれか一方の開度のみの変更によっても、前記第2白煙防止熱交換器40に供給される前記白煙防止空気の流量を減少させることが可能である。具体的には、前記空気側入口ダンパ72の開度を維持して前記空気側バイパスダンパ73の開度を減少させる操作が行われてもよいし、前記空気側バイパスダンパ73の開度を維持して前記空気側入口ダンパ72の開度を増加させる操作が行われてもよい。
【0067】
前記ステップS40に係る判定は、前記ステップS20に係る判定の直後に行われてもよいし、前記ステップS20に係る判定が終了してから所定時間が経過した後に行われてもよい。すなわち、前記排ガス温度が前記許容温度よりも高い状態が所定時間継続した場合に限って、前記空気側入口ダンパ72の開度を増加させる操作、前記空気側バイパスダンパ73の開度を減少させる操作、及び前記空気側出口ダンパ74の開度を増加させる操作、のうちのいずれか1つの操作が行われてもよいし、これらの操作が組み合わされて行われてもよい。
【0068】
換言すれば、前記流量調整部83は、前記排ガス温度が前記許容温度未満であると判定された場合には(ステップS20でYES)、前記空気側入口ダンパ72及び前記空気側バイパスダンパ73の開度を直ちに変更する一方、前記排ガス温度が前記許容温度よりも高いと判定された場合には(ステップS40でYES)、当該判定が所定の待機時間が継続した時点で両ダンパの開度を変更するように構成されてもよい。当該待機時間は、自由に設定されることが可能であり、例えば1秒~30分、好ましくは30秒~15分である。これにより、前記ダンパの開度の頻繁な変更を抑制しながら、前記排ガス温度が前記許容温度未満まで低下するのを抑制して高温に維持することができる。
【0069】
前記待機時間の設定は必須ではない。例えば、前記検知温度に基づく一般的なPID制御に基づいて前記ダンパの開閉速度が調整されても良い。
【0070】
前記許容上限温度T2bと前記許容下限温度T2aとの間に差が与えられている場合(T2b>T2a)、前記検知対象温度(図2に示される例では前記排ガス温度)について所定の幅をもつ許容範囲が与えられることになる。このような許容範囲の設定により、前記ダンパ72,73のそれぞれの開度操作の頻度を抑制しながら前記排ガス温度を前記許容範囲内に収める、つまり前記許容温度以上の温度に保つ、ことができる。
【0071】
前記許容範囲が設定される場合、当該許容範囲の幅の大きさ、すなわち、前記許容上限温度T2bと前記許容下限温度T2aとの差、の具体的な数値は特に限定されない。一般に、当該差は、1℃以上20℃以下、3℃以上15℃以下、5℃以上10℃以下であることが好ましい。前記差(許容範囲の幅)が過大であると、回収熱量が少なくなる。一方、前記差が過小であると、それぞれのダンパの開閉頻度が高くなり、ハンチングが起こり易く、また流量が不安定になる可能性もある。
【0072】
以上の通り、本実施形態に係る廃棄物処理設備1によれば、温度制御部を構成する前記コントローラ80は、検知対象温度(前記排ガス温度)が予め設定された前記許容温度以上になるように前記流量調整機構を動作させる、すなわち、前記制御対象熱交換器である前記第2白煙防止熱交換器40に供給される排ガス及び白煙防止空気のうち少なくとも一方の流量を調整する、ことにより、前記排ガス温度に対応する前記第2白煙防止熱交換器40の前記低温伝熱部の温度が過度に降下するのを抑制する一方、前記排ガス温度が前記許容温度以上である場合には前記低温伝熱部を通過する前記排ガスと前記白煙防止空気との十分な熱交換を確保して当該排ガスの熱が効率的に回収されることを可能にする。
【0073】
(第1変形例)
次に、前記第1の実施の形態の第1変形例に係る廃棄物処理設備について、図3に基づいて説明する。前記第1変形例に係る廃棄物処理設備は、基本的に第1の実施形態に係る廃棄物処理設備1と同様の構成を備え且つ同様の効果を奏するものであるが、排ガス温度の制御のために、第2白煙防止熱交換器40に供給される排ガスの流量を調整する点において、前記第1の実施形態と相違する。以下、その相違点について専ら説明する。
【0074】
図3は、前記第1変形例において温度制御部として機能するコントローラ80の流量調整部83による制御動作を示すフローチャートである。当該フローチャートは、ステップS11,S21,S31,S41,S51,S61を含み、このうちのステップS11,S21は、図2に示される前記ステップS10,S20のそれぞれと実質的に同等である。
【0075】
前記流量調整部83は、排ガス温度が許容下限温度T3a未満であると判定された場合(図3のステップS21でYES)、ステップS31において、排ガス側入口ダンパ62の開度の増加及び排ガス側バイパスダンパ63の開度の減少の少なくとも一方を実行し、これにより、前記第2白煙防止熱交換器40の前記低温伝熱部を通過する排ガスの流量を増加させて当該第2白煙防止熱交換器40の出口温度(合流前温度)を上昇させる。
【0076】
前記排ガス温度が前記許容下限温度T3a以上であると判断した場合(ステップS21でNO)、前記判定部82は、前記排ガス温度が前記許容下限温度T3aよりも高い耐熱上限温度T3b(>T3a)よりも高いか否かを判断する(ステップS41)。前記耐熱上限温度T3bは、前記伝熱部及びその周囲の配管を構成する材料の耐熱温度を前記排ガス温度が超えないようにするための上限温度であり、当該耐熱温度よりも低い温度に設定される。前記排ガス温度が前記耐熱上限温度T3bよりも高いと判定された場合(図3のステップS21でNOかつステップS41でYES)、前記流量調整部83は、前記排ガス側バイパスダンパ63が全開でかつ前記排ガス側入口ダンパ62が全閉であるか否か、つまり、前記第2白煙防止熱交換器40の前記伝熱部を流れる排ガスの流量をこれ以上減少させることができない状態にあるか否か、を判断する(ステップS51)。排ガスの流量を減少させることが可能な状態である場合、つまり、前記排ガス側バイパスダンパ63が全開ではなく、あるいは前記排ガス側入口ダンパ62が全閉ではない場合にのみ(ステップS51でNO)、ステップS61において、前記排ガス側入口ダンパ62の開度の減少及び前記排ガス側バイパスダンパ63の開度の増加の少なくとも一方を実行し、これにより、前記第2白煙防止熱交換器40に供給される排ガスの流量を減少させる。
【0077】
前記ステップS31では、前記排ガス側入口ダンパ62の開度及び前記排ガス側バイパスダンパ63の開度の双方が変更されるが、いずれか一方の開度のみの変更によっても、前記第2白煙防止熱交換器40に供給される排ガスの流量を増加させることが可能である。具体的には、前記排ガス側入口ダンパ62の開度を維持して前記排ガス側バイパスダンパ63の開度を減少させる操作が行われてもよいし、前記排ガス側バイパスダンパ63の開度を維持して前記排ガス側入口ダンパ62の開度を増加させる操作が行われてもよい。同様に、前記ステップS61では、前記排ガス側入口ダンパ62の開度及び前記排ガス側バイパスダンパ63のいずれか一方の開度のみを変更しても、前記第2白煙防止熱交換器40に供給される排ガスの流量を減少させることが可能である。具体的には、前記排ガス側入口ダンパ62の開度を維持して前記排ガス側バイパスダンパ63の開度を増加させる操作が行われてもよいし、前記排ガス側バイパスダンパ63の開度を維持して前記排ガス側入口ダンパ62の開度を減少させる操作が行われてもよい。
【0078】
また、前記第1変形例に係る排ガスの流量調整と、前記第1の実施形態に係る白煙防止空気の流量調整と、が組み合わせてもよい。例えば、前記ステップS20(または前記ステップS21)において排ガス温度が前記許容温度未満であると判定された場合に(前記ステップS20,S21でYES)、前記空気側入口ダンパ72及び前記排ガス側バイパスダンパ63のそれぞれの開度を減少させると共に前記空気側バイパスダンパ73及び前記排ガス側入口ダンパ62のそれぞれの開度を増加させる操作が行われてもよい。
【0079】
また、前記第1変形例における前記耐熱上限温度T3bに代えて他の許容上限温度が設定されてもよい。例えば、当該耐熱温度が十分に高い場合、当該耐熱温度に関係なく、前記許容下限温度T3aよりも十分に高い許容上限温度が設定されてもよい。この場合、前記許容範囲の幅(前記所定の値)の具体的な数値は、前記第1の実施形態について説明されたものと同様である。
【0080】
(第2変形例)
次に、前記第1の実施形態の第2変形例に係る廃棄物処理設備を、図4に基づいて説明する。前記第2変形例に係る廃棄物処理設備は、基本的に前記第1の実施形態に係る廃棄物処理設備1と同様の構成を備え且つ同様の効果を奏するものであるが、第2白煙防止熱交換器40に供給される白煙防止空気及び排ガスの流量の調整において前記第1の実施形態と相違する。以下、その相違点について専ら説明する。
【0081】
図4に示すように、まず、排ガス温度検知部41が前記第2白煙防止熱交換器40の後段部分における排ガス温度、すなわち前記第2白煙防止熱交換器40の低温伝熱部を通過した後の排ガスの温度、を検知し(ステップS12)、この検知温度が予め設定された許容下限温度T4a未満であるか否かを判定部82が判定する(ステップS22)。当該検知温度が当該許容下限温度T4a未満であると判定した場合(ステップS22でYES)、前記判定部82は、さらに、前記第2白煙防止熱交換器40に供給される白煙防止空気の流量が予め定められた白煙防止空気最低流量であるか否かを判定する(ステップS32)。この白煙防止空気最低流量は、前記第2白煙防止熱交換器40の過熱に起因する破損である熱破損を防ぐ観点から定められた空気流量の下限値である。この判定を可能にするため、白煙防止空気供給経路50のうち前記第2白煙防止熱交換器40よりも上流側の部分、詳しくは、前記白煙防止空気供給経路50のうち空気側バイパス経路71の上流端が接続される部位よりも下流側の部分、に図略の空気流量検知部が配置され、当該空気流量検知部は前記第2白煙防止熱交換器40に供給される空気流量を検知してその検知データを前記コントローラ80に入力する。
【0082】
前記白煙防止空気の流量が前記白煙防止空気最低流量であると前記判定部82が判定した場合(ステップS32でYES)、前記第2白煙防止熱交換器40の前記低温伝熱部を流れる前記白煙防止空気の流量を維持しながら前記排ガス温度を上昇させるべく、前記流量調整部83が排ガス側入口ダンパ62の開度の増加及び排ガス側バイパスダンパ63の開度の減少の少なくとも一方を実行する(ステップS52)。一方、前記白煙防止空気の流量が前記白煙防止最低流量でないと前記判定部82が判定した場合(ステップS32でNO)、前記流量調整部83が前記空気側入口ダンパ72の開度の減少及び前記空気側バイパスダンパ73の開度の増加の少なくとも一方を実行して(ステップS42)前記低温伝熱部を流れる前記白煙防止空気の流量を減少させる。
【0083】
ステップS22において、前記排ガス温度検知部41により検知された排ガス温度すなわち前記第2白煙防止熱交換器40の前記低温伝熱部を通過した後の排ガスの温度が前記許容下限温度T4a以上であると判定した場合(ステップS22でNO)、前記判定部82は、さらに、当該排ガス温度(検知温度)が予め設定された許容上限温度T4bよりも高いか否かを判定する(ステップS62)。当該検知温度が当該許容上限温度T4bよりも高くないと判定された場合(ステップS62でNO)、前記流量調整部83はダンパの開度調整を保留する。
【0084】
一方、前記排ガス温度検知部41により検知された排ガス温度が前記許容上限温度T4bよりも高いと判定した場合(ステップS62でYES)、前記流量調整部83は、さらに、前記空気側バイパスダンパ73が全閉でかつ前記空気側入口ダンパ72が全開であるか否かを判定する(ステップS72)。前記空気側バイパスダンパ73が全閉ではなく、あるいは前記空気側入口ダンパ72が全開ではないと判定した場合(ステップS72でNO)、前記流量調整部83は前記空気側入口ダンパ72の開度の増加及び前記空気側バイパスダンパ73の開度の減少の少なくとも一方を実行する(ステップS74)。
【0085】
前記空気側バイパスダンパ73が全閉でかつ前記空気側入口ダンパ72が全開であると判定した場合(ステップS72でYES)、前記判定部82は、前記排ガス温度検知部41により検知された排ガス温度が前記許容上限温度T4bよりもさらに高い耐熱上限温度T4c(>T4b)よりも高いか否かを判定する(ステップS82)。前記耐熱上限温度は、前記伝熱部及びその周囲の配管を構成する材料の耐熱温度を目安に当該耐熱温度を前記排ガス温度が超えないように設定された温度である。
【0086】
前記排ガス温度が前記耐熱上限温度T4cよりも高いと判定された場合(ステップS82でYES)、前記判定部82は、さらに、前記排ガス側バイパスダンパ63が全開でかつ前記排ガス側入口ダンパ62が全閉であるか否かを判定する(ステップS92)。前記排ガス側バイパスダンパ63が全開でなく、あるいは前記排ガス側入口ダンパ62が全閉ではないと判定した場合(ステップS92でNO)、前記流量調整部83は、前記排ガス側入口ダンパ62の開度の減少及び前記排ガス側バイパスダンパ63の開度の増加の少なくとも一方を実行する(ステップS94)。なお、前記排ガス側バイパスダンパ63の開度が十分に大きい場合には、前記流量調整部83は前記排ガス側入口ダンパ62の開度の減少のみを実行してもよい。
【0087】
以上説明した制御動作は、所定時間が経過するごとに繰り返される。
【0088】
この第2変形例においても、前記検知対象温度について許容範囲が設定されてもよい。当該許容範囲の幅の具体的な数値は、前記第1の実施形態について説明されたものと同様である。
【0089】
また、前記ステップS22での判定から前記ステップS62での判定までの間に待機時間が設定されて当該ステップS22での判定が終了してから所定時間が経過した後に当該ステップS62の判定が行われてもよい。
【0090】
(第3変形例)
次に、前記第1の実施形態の第3変形例に係る廃棄物処理設備を、図5及び図6に基づいて説明する。第3変形例に係る廃棄物処理設備は、基本的に前記第1の実施形態に係る廃棄物処理設備1と同様の構成を備え且つ同様の効果を奏するものであるが、当該第3変形例に係る設備は前記第1の実施形態に係るコントローラ80に代えてコントローラ80Aを具備し、当該コントローラ80Aが許容温度変更部85をさらに含む点で第1の実施形態と異なっている。以下、第1の実施形態と異なる点についてのみ説明する。
【0091】
図5は、第3変形例におけるコントローラ80Aの機能を示すブロック図である。図5に示すように、第3変形例におけるコントローラ80Aは、第1の実施形態に係る前記受付部81、前記判定部82、前記流量調整部83及び前記記憶部84と同様の受付部81、判定部82、流量調整部83及び記憶部84に加えて前記許容温度変更部85を含む。また、前記第3変形例に係る設備は、外気温度を検知する外気温度検知部45をさらに備える。前記許容温度変更部85は、前記記憶部84に格納された許容温度(前記第1実施形態並びに前記第1及び第2変形例における前記許容下限温度T2a,T3a,T4a)の値を煙突110における白煙発生に関する情報に基づいて変更する。この許容温度変更部85の機能は、前記コントローラ80Aを構成するCPUが所定のプログラムを実行することにより実現される。本変形例における「白煙発生に関する情報」は、前記外気温度検知部45により検知される前記外気温度、具体的には、排煙処理塔42を通過した排ガスの煙突110からの放出先の空間における大気の温度である。しかし、「白煙発生に関する情報」は当該外気温度に限定されず、例えば、外気の湿度、季節、煙突110の出口温度又は煙突110から白煙が放出されているか否かの情報等が含まれてもよい。
【0092】
図6は、前記許容温度を変更するための動作を示すフローチャートである。まず、前記外気温度検知部45が外気温度を検知し(ステップS13)、その検知データが前記受付部81に送信される。当該検知データに基づき、外気温度が予め設定された温度閾値以上であるか否かを前記判定部82が判定する(ステップS23)。
【0093】
外気温度が温度閾値以上であると前記判定部82が判定した場合(ステップS23でYES)、前記許容温度変更部85は、前記許容温度を変更する(ステップS33)。具体的には、前記許容温度を、それまでの第1設定温度(例えば80℃)から当該第1設定温度よりも高い第2設定温度(例えば90℃)に変更する。一方、外気温度が温度閾値未満である場合(ステップS23でNO)、前記許容温度変更部85は、前記許容温度を変更せずに現在の前記第1設定温度に維持する。
【0094】
なお、前記許容温度が前記第2設定温度に変更された状態で、前記外気温度が前記温度閾値以上であると前記判定部82が判定した場合(ステップS23でYES)、前記許容温度変更部85は前記許容温度を前記第2設定温度に維持する。一方、前記許容温度が前記第2設定温度であり、かつ、外気温度が前記温度閾値未満であると前記判定部82が判定した場合(ステップS23でNO)、前記許容温度変更部85は、前記許容温度を前記第2設定温度からこれよりも低い前記第1設定温度に変更する。
【0095】
前記第3変形例では、前記外気温度について単一の閾値のみが設定されているが、これに代えて複数の温度閾値が設定されてもよい。この場合、外気温度に応じて、前記許容温度が3以上の設定温度、例えば、第1設定温度(例えば80℃)、第2設定温度(例えば90℃)、第3設定温度(例えば100℃)及び第4設定温度(例えば110℃)の間で適宜変更されてもよい。また、検知対象温度について前記許容範囲が設定されている場合、当該許容範囲の下限値である前記許容温度が上述のように(例えば80℃、90℃、100℃、110℃の間で)変更される一方、当該許容範囲の上限値も同じ温度幅で変更されてもよい。
【0096】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について図7及び図8を参照しながら説明する。
【0097】
図7は、前記第2の実施形態に係る廃棄物処理設備1Bを示す。当該廃棄物処理設備1Bは、図1に示される前記廃棄物処理設備1に含まれる構成要素にそれぞれ対応する構成要素を含むが、以下の点において前記廃棄物処理設備1と相違する。
【0098】
(1)制御対象熱交換器について
前記第1の実施形態に係る前記廃棄物処理設備1では、前記第2白煙防止熱交換器40が制御対象熱交換器に相当し、前記第1白煙防止熱交換器30が前記排ガス経路20において前記制御対象熱交換器の上流側に配置される、つまり相対的に高い運転温度で運転される、高温側熱交換器に相当するのに対し、前記第2の実施形態に係る前記廃棄物処理設備1Bでは、前記制御対象熱交換器が第1白煙防止熱交換器30であり、第2白煙防止熱交換器40は排ガス経路20において前記制御対象熱交換器の下流側に配置される、つまり相対的に低い運転温度で運転される、低温側熱交換器に相当する。すなわち、第2の実施形態において実質的な制御対象となる温度は、前記第1白煙防止熱交換器30の伝熱部(高温伝熱部)の温度であり、当該伝熱部の温度を一定以上に保つ制御の実行により、当該伝熱部またはその下流側の配管の温度の過度の低下に起因する腐食が抑制される。
【0099】
(2)検知対象温度及び温度検知部について
前記第2の実施形態に係る検知対象温度は、従って、前記第1白煙防止熱交換器30の前記伝熱部(高温伝熱部)の温度と相関して上下する温度であり、図7に示される例では前記伝熱部から排出される排ガスの温度、すなわち、当該伝熱部を通過した後の排ガスの温度(排ガス出口温度)、である。具体的に、前記検知対象温度を検知するための温度検知部として、排ガス経路20のうち前記第1白煙防止熱交換器30の下流側に位置する部分すなわち第4経路部分24に排ガス温度検知部37が接続され、当該排ガス温度検知部37は、当該第4経路部分24を流れる排ガスの温度を検知して当該温度に対応する排ガス温度検知信号を生成する。
【0100】
前記第1の実施形態と同様、前記検知対象温度は前記伝熱部を通過した後の排ガスの温度に限定されない。前記検知対象温度は、例えば、前記第1白煙防止熱交換器30の前記伝熱部(高温伝熱部)そのものの温度であってもよいし、当該伝熱部に導入される加熱対象空気すなわち白煙防止空気の温度(空気入口温度)であってもよい。すなわち、前記温度検知部は、前記第1白煙防止熱交換器30の前記伝熱部の温度を直接検知するものであってもよいし、白煙防止空気経路50のうち前記第1白煙防止熱交換器30の上流側に配置された部分(第2経路部分52)に接続されて当該部分を流れる空気、すなわち、送風機である白煙防止ブロワ90から吐出されて前記第1白煙防止熱交換器30の前記伝熱部に至るまでの空気、の温度を検知するものでもよい。
【0101】
(3)伝熱部の材質について
本発明では制御対象熱交換器その他の熱交換器の伝熱部の材質は何ら限定されないが、この第2の実施形態では、前記第2白煙防止熱交換器40の伝熱部である前記低温伝熱部が、前記制御対象熱交換器である前記第1白煙防止熱交換器30の前記伝熱部(高温伝熱部)を構成する材料よりも高い耐腐食性を有する材料により構成される。前記低温伝熱部は、前記第1白煙防止熱交換器30を通過して温度が降下した後の前記排ガスの熱を前記第1白煙防止熱交換器30の前記伝熱部に供給される前の前記加熱対象空気(白煙防止空気)に伝えることにより当該加熱対象空気を予熱するものであるから、当該低温伝熱部を高い腐食性を有する材料により構成することは、当該低温伝熱部での過度の温度降下に起因する腐食を抑制するのに有効である。一方、当該低温伝熱部の運転温度よりも高い運転温度で運転される前記白煙防止熱交換器30の前記伝熱部については、前記耐腐食性の高い材料の使用によってではなく、上述の温度制御で当該伝熱部の温度の降下を抑制することによって当該伝熱部の腐食を抑制することにより、高価な耐腐食性材料の使用量を抑えてコストの削減を図ることが可能である。このように第1及び第2白煙防止熱交換器30,40のそれぞれの伝熱部の材質を異ならせる場合、前記第1白煙防止熱交換器30の前記伝熱部を構成する材料(耐腐食性が相対的に低い材料)としては、例えば、ステンレス鋼が好適であり、前記第2白煙防止熱交換器40の前記伝熱部を構成する材料(耐腐食性が相対的に高い材料)としては、例えば、ニッケル合金が好適である。ステンレス鋼としては、SUS316(ニッケル10~18質量%、クロム16~18質量%、モリブデン2~3質量%、残部として鉄)、SUS304(ニッケル8~10.5質量%、クロム18~20質量%、残部として鉄)等のオーステナイト系ステンレス鋼が挙げられる。ニッケル合金としては、ハステロイ(登録商標)、ALLOY、インコネル(登録商標)等が挙げられ、これらはニッケル40質量%以上を主成分として含んでいる。なお、ニッケル合金に替えて純チタン、チタンを50質量%以上含有するチタン合金が選択されてもよいし、あるいは、表面に銅やニッケルなどで保護性錆を形成した耐候性鋼(コールテン鋼)が選択されてもよい。
【0102】
(4)温度制御部及び流量調整機構について
前記第2の実施形態に係る前記廃棄物処理設備1Bでは、前記検知対象温度を予め設定された許容温度(第2の実施形態では前記第1の実施形態に係る前記許容下限温度T2aと同等の許容下限温度T2Ba)以上に保つように制御するための温度制御部が、図1に示される前記コントローラ80に代えて図7に示されるコントローラ80Bを含む。当該コントローラ80Bは、図1に示される前記コントローラ80と同様、受付部81、判定部82、流量調整部83及び記憶部84を含むが、前記判定部82は、前記検知対象温度(図7に示される例では前記排ガス温度検知部37により検知される排ガス温度)が前記記憶部84に予め格納された許容温度未満であるか否かを判定し、前記流量調整部83は、前記判定部82による判定の結果に基づき、前記検知対象温度が前記許容温度以上となるように流量調整機構を動作させる。
【0103】
この第2の実施形態に係る流量調整機構は、比率調整機構を含む。前記比率調整機構は、加熱対象空気である前記白煙防止空気における予備加熱空気の比率である予備加熱空気比率を変化させる。前記予備加熱空気は、送風機(図7では白煙防止ブロワ90)から前記第1白煙防止熱交換器30の前記伝熱部に供給されるべき加熱対象空気(白煙防止空気)のうち前記第2白煙防止熱交換器40の前記低温伝熱部を通過して排ガスの熱により予備加熱された空気である。具体的に、前記比率調整機構は、図1に示される前記空気側バイパス経路71、前記空気側入口ダンパ72、前記空気側バイパスダンパ73及び前記空気側出口ダンパ74と同様の低温空気側バイパス経路71B、低温空気側入口ダンパ72B、低温空気側バイパスダンパ73B及び低温空気側出口ダンパ74Bを含む。前記低温空気側バイパス経路71Bは、前記低温側熱交換器である前記第2白煙防止熱交換器40を迂回するように前記白煙防止空気供給経路50に接続され、これにより、送風機である前記白煙防止ブロワ90から送られる白煙防止空気が前記第2白煙防止熱交換器40を経由せずに前記第1白煙防止熱交換器30の前記伝熱部(高温伝熱部)に供給されることを許容する。前記低温空気側入口ダンパ72Bは、前記白煙防止空気供給経路50のうち前記第2白煙防止熱交換器40の入口側に配置され、前記低温空気側バイパスダンパ73Bは前記低温空気側バイパス経路71Bに配置され、前記低温空気側出口ダンパ74Bは、前記白煙防止空気供給経路50のうち前記第2白煙防止熱交換器40の入口側に配置される。
【0104】
前記コントローラ80Bの前記流量調整部83は、前記検知対象温度である前記排ガス温度が前記許容温度よりも低いと前記判定部82が判定した場合に前記予備加熱空気比率を増大させるように前記比率調整機構を動作させる。
【0105】
次に、前記流量調整部83により具体的に行われる前記各ダンパの開度の操作、すなわち前記予備加熱空気比率の変更、について図8のフローチャートに基づいて説明する。
【0106】
図7に示される焼却炉10の運転中において、前記第1白煙防止熱交換器30の後段部分における排ガス温度、すなわち前記第1白煙防止熱交換器30の前記伝熱部を通過した排ガスの温度、が前記排ガス温度検知部37により常時又は所定の時間間隔で検知される(図8のステップS10B)。すなわち、前記検知データが生成される。この検知データは、前記受付部81を通じて前記判定部82に入力される。
【0107】
前記判定部82は、前記検知データに係る温度すなわち前記排ガス温度が前記許容温度である前記許容下限温度T2Ba未満であるか否かを判定する(ステップS20B)。当該排ガス温度が当該許容下限温度T2Ba未満であると前記判定部82が判定した場合(ステップS20BでYES)、前記流量調整部83は、前記低温空気側入口ダンパ72Bの開度の増加及び前記低温空気側バイパスダンパ73Bの開度の減少の少なくとも一方を実行する(ステップS30B)、これにより、前記白煙防止ブロワ90から送られる白煙防止空気(加熱対象空気)のうち前記第2白煙防止熱交換器40の前記低温伝熱部を通過する空気の流量つまり予備加熱空気の流量が増加して前記予備加熱空気比率が上昇する。このことは、前記第1白煙防止熱交換器30の前記伝熱部に供給される白煙防止空気(加熱対象空気)の温度を上昇させて当該伝熱部の温度を上昇させる。
【0108】
一方、前記排ガス温度が前記許容下限温度T2Ba以上であると判定した場合(ステップS20BでNO)、前記判定部82は、さらに、前記排ガス温度が許容上限温度T2Bbよりも高いか否かを判定する(ステップS40B)。この許容上限温度T2Bbは、前記第1の実施形態に係る前記許容上限温度T2bと同等である。前記排ガス温度が当該許容上限温度T2Bbよりも高いと前記判定部82が判定した場合(ステップS40BでYES)、前記流量調整部83は、前記低温空気側バイパスダンパ73Bが全閉でかつ前記低温空気側入口ダンパ72Bが全開であるか否かを判断する(ステップS50B)。前記低温空気側バイパスダンパ73Bが全閉ではなく、あるいは前記低温空気側入口ダンパ72Bが全開ではないと判定した場合にのみ(ステップS50BでNO)、前記流量調整部83は、前記排ガス温度が前記許容下限温度T2Ba未満であると判定された場合と逆に、前記低温空気側入口ダンパ72Bの開度の減少及び前記低温空気側バイパスダンパ73Bの開度の増加の少なくとも一方を実行し(ステップS60B)、これにより、前記白煙防止空気のうち前記第2白煙防止熱交換器40の前記低温伝熱部を通過して予備加熱される空気の流量を減少させる。前記排ガス温度が前記許容上限温度T2Bb以下である場合(ステップS40BでNO)、前記流量調整部83は前記低温空気側入口ダンパ72B及び前記低温空気側バイパスダンパ73Bのそれぞれの開度をそのまま維持する。以上の動作が所定時間の経過ごとに繰り返される。
【0109】
前記ステップS30Bでは、前記低温空気側入口ダンパ72Bの開度及び前記低温空気側バイパスダンパ73Bの開度のいずれか一方の開度のみの変更によっても、前記第2白煙防止熱交換器40の前記低温伝熱部を通過して予備加熱される空気の流量を増加させる、すなわち前記予備加熱空気比率を増加させる、ことが可能である。具体的には、前記低温空気側入口ダンパ72Bの開度を維持して前記低温空気側バイパスダンパ73Bの開度のみを減少させる操作が行われてもよいし、前記低温空気側バイパスダンパ73Bの開度を維持して前記低温空気側入口ダンパ72Bの開度を増加させる操作が行われてもよい。このように前記ダンパ72B,73Bの何れか一方のみの操作でも成立することは、前記ステップS50Bに係る処理でも同様である。
【0110】
図2に示される前記ステップS40に係る判定と同様、図7に示される前記ステップS40Bに係る判定は、前記ステップS20Bに係る判定の直後に行われてもよいし、前記ステップS20に係る判定が終了してから所定の待機時間が経過した後に行われてもよい。すなわち、前記排ガス温度が前記許容下限温度T2Baよりも高い状態が前記待機時間継続した場合に限って前記予備加熱空気比率を増大させる操作が行われてもよい。前記待機時間は、前記ステップS40に係る判定について設定される前記待機時間と同様、自由に設定されることが可能であり、例えば1秒~30分、好ましくは30秒~15分である。これにより、前記ダンパの開度の頻繁な変更を抑制しながら、前記排ガス温度が前記許容下限温度T2Ba未満まで低下するのを抑制して高温に維持することができる。また、前記待機時間の設定は必須ではなく、例えば、前記検知温度に基づく一般的なPID制御に基づいて前記ダンパの開閉速度が調整されても良い。
【0111】
以上の通り、前記第2の実施形態に係る前記廃棄物処理設備1Bによれば、温度制御部として機能する前記コントローラ80Bは、検知対象温度(前記排ガス温度)が予め設定された前記許容温度(前記許容下限温度T2Ba)以上になるように前記流量調整機構を動作させる、具体的には、前記制御対象熱交換器である前記第1白煙防止熱交換器30に供給される白煙防止空気の予備加熱空気比率を調整する、ことにより、前記排ガス温度に対応する前記第1白煙防止熱交換器30の前記伝熱部の温度が過度に降下するのを抑制する一方、前記排ガス温度が前記許容温度以上である場合には前記伝熱部を通過する前記排ガスと前記白煙防止空気との十分な熱交換を確保して当該排ガスの熱が効率的に回収されることを可能にする。
【0112】
前記第2の実施形態において、前記第1白煙防止熱交換器30の前記伝熱部の温度の過度の降下を抑制するための流量調整機構は、当該伝熱部に供給される加熱対象空気(白煙防止空気)における前記予備加熱空気比率を変化させる比率調整機構を含むものに限定されず、実質的に前記伝熱部の温度を上昇させることが可能なものであればよい。
【0113】
例えば、前記廃棄物処理設備1Bにおいて前記制御を実現するための流量調整機構として、前記第1の実施形態と同様に、前記加熱対象空気の少なくとも一部が前記制御対象熱交換器である前記第1白煙防止熱交換器30を迂回するように流れることを許容するように前記白煙防止空気供給経路50に接続された図略の空気側バイパス経路と、前記加熱対象空気のうち前記空気側バイパス経路を流れる空気の流量である空気バイパス流量を変化させる動作を行うことが可能な図略の空気バイパス流量調節部(例えば前記空気側バイパス経路に設けられる空気側バイパスダンパ及び前記白煙防止空気供給経路50において前記伝熱部の入口に設けられる空気側入口ダンパの少なくとも一方)と、を含んでもよい。この場合、前記コントローラ80Bの前記流量調整部83は、前記検知対象温度が前記許容温度(前記許容下限温度T2Ba)よりも低い場合に前記加熱対象空気のバイパス流量を増大させるように前記空気バイパス流量調節部を動作させる(例えば、前記空気側バイパスダンパの開度の増大及び前記空気側入口ダンパの開度の減少の少なくとも一方を行う)ように構成されるのがよい。
【0114】
あるいは、前記第1の実施形態について開示された前記第1変形例と同様、前記流量調整機構は、前記排ガスの少なくとも一部が前記第1白煙防止熱交換器30を迂回するように流れることを許容するように前記排ガス経路20に接続された図略の排ガス側バイパス経路と、前記排ガスのうち前記排ガス側バイパス経路を流れる排ガスの流量である排ガスバイパス流量を変化させる動作を行うことが可能な図略の排ガスバイパス流量調節部(例えば前記排ガス側バイパス経路に設けられる排ガス側バイパスダンパ及び前記排ガス経路20において前記伝熱部の入口に設けられる排ガス側入口ダンパの少なくとも一方)と、を含んでもよい。この場合、前記流量調整部83は、前記検知対象温度が前記許容温度(前記許容下限温度T2Ba)よりも低い場合に前記排ガスバイパス流量を減少させるように前記排ガスバイパス流量調節部を動作させる(例えば、前記排ガス側バイパスダンパの開度の減少及び前記排ガス側入口ダンパの開度の増大の少なくとも一方を行う)ように構成されるのがよい。
【0115】
前記第1の実施形態と同様、前記第2の実施形態においても前記第3変形例と同様の変形例が成立し得る。すなわち、前記第2の実施形態に係る前記コントローラ80Bが図5に示される前記許容温度変更部85と同様の許容温度変更部をさらに含み、外気温度を検知する外気温度検知部により検知された当該外気温度が予め設定された温度閾値以上であると判定された場合に前記許容温度変更部が前記許容温度(前記許容下限温度T2Ba)を変更するように構成されてもよい。
【0116】
(その他の実施形態)
本発明は、以上説明した実施形態及びその変形例に限定されない。本発明は、例えば、次のような態様を包含する。
【0117】
本発明は、必ずしも加熱対象空気を加熱するために複数の熱交換器を具備するものに限定されない。例えば、前記第2の実施形態における低温側熱交換器である前記第2白煙防止熱交換器40が省略されて白煙防止ブロワ90から吐出される空気がそのまま加熱対象空気として前記第1白煙防止熱交換器30に供給されてもよい。
【0118】
本発明に係る加熱対象空気の保有する熱が熱利用設備により利用される場合において、当該熱利用設備は、白煙防止部を含むものに限定されない。換言すれば、加熱対象空気は白煙防止空気に限定されない。例えば、制御対象熱交換器により加熱された後の前記加熱対象空気が専ら発電のみに利用されてもよい。逆に、当該加熱対象空気が専ら白煙防止にのみ用いられてもよい。
【0119】
焼却炉10に燃焼用空気を供給するための手段は前記過給機32に限定されない。当該手段は例えばブロワであってもよく、当該手段がブロワである場合は、前記第1高圧熱交換器11、前記第2高圧熱交換器12及び前記再加熱器13のうちの一部または全部が省略されてもよい。
【0120】
本発明に係る流量調整機構は、前記排ガス経路及び前記空気供給経路のうち少なくとも一方に設けられ、前記制御対象熱交換器の前記伝熱部に供給される前記排ガス及び前記加熱対象空気のうち少なくとも一方の流量を変化させて前記伝熱部の温度を変化させる動作を行うことが可能なものであればよい。例えば、図1に示される前記空気側バイパス経路71及び前記排ガス側バイパス経路61のうち一方が省略されてもよい。また、前記流量調整機構は、制御対象熱交換器を迂回する空気側バイパス経路に代え、またはこれに加えて、送風機により送り出される前記加熱対象空気の流量である送風流量を変化させる送風調整部を含んでもよい。前記送風調整部は、例えば、図1及び図7にそれぞれ示される前記白煙防止ブロワ90の回転数を変更する手段(例えばインバータ)及び当該白煙防止ブロワ90の上流側又は下流側に配置されたダンパの少なくとも一方を含む。この場合、前記温度制御部は、前記検知対象温度が前記許容温度よりも低い場合に前記送風流量を減少させるように前記送風調整部を動作させる(例えば、前記白煙防止ブロワ90の回転数を減少させ、あるいはその上流側又は下流側に配置されたダンパの開度を減少させる)ことにより、制御対象熱交換器(図1に示される前記第2白煙防止熱交換器40または図7に示される前記第1白煙防止熱交換器30)に供給される加熱対象空気(図1及び図7に示される例では前記白煙防止空気)の流量を減少させることができる。しかし、前記第1の実施形態において、前記第1白煙防止熱交換器30に供給される白煙防止空気の流量を維持し、前記バグフィルタ31に供給される排ガス温度を維持するためには、前記空気側バイパス経路71及び前記排ガス側バイパス経路61を採用することが好ましい。
【0121】
本発明に係る廃棄物処理設備の運転方法では、各ダンパの開度が必ずしも自動制御されなくてもよい。すなわち、当該ダンパの開度が温度検知部により検知された検知対象温度に基づいて手動で操作されてもよい。
【0122】
本発明に係る廃棄物処理設備が白煙防止部を含む場合、当該白煙防止部の具体的な構成は限定されない。また、前記第1及び第2温水ボイラ111,101のうちの第1温水ボイラ111が省略されてもよい。前記第1温水ボイラ111が省略される場合に、該温水ボイラに代えて、前記焼却炉10に供給する燃焼用空気を冷却する空気冷却器を備えてもよく、該空気冷却器は水冷式であっても空冷式であってもよい。また、前記第2温水ボイラ101に代えて、排ガスの熱により加熱された空気の熱によって蒸気を発生させる蒸気ボイラが配置されてもよく、その場合、前記発電装置102は、前記蒸気を熱源として電気エネルギーを生成するバイナリー発電機であってもよい。
【0123】
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと解されるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0124】
1,1B 廃棄物処理設備
10 焼却炉
20 排ガス経路
30 第1白煙防止熱交換器
37,41 排ガス温度検知部
40 第2白煙防止熱交換器
50 白煙防止空気供給経路
61 排ガス側バイパス経路
62 排ガス側入口ダンパ
63 排ガス側バイパスダンパ
64 排ガス側出口ダンパ
71 空気側バイパス経路
71B 低温空気側バイパス経路
72 空気側入口ダンパ
72B 低温空気側入口ダンパ
73 空気側バイパスダンパ
73B 低温空気側バイパスダンパ
80,80A,80B コントローラ
82 判定部
83 流量調整部
85 許容温度変更部
90 白煙防止ブロワ(送風機)
100 熱利用設備
110 煙突
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8