(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141722
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】ステートレスコアネットワークシステム、リクエスト管理装置およびリクエスト管理方法
(51)【国際特許分類】
H04W 8/22 20090101AFI20241003BHJP
H04W 76/10 20180101ALI20241003BHJP
H04W 88/18 20090101ALI20241003BHJP
H04W 24/00 20090101ALI20241003BHJP
【FI】
H04W8/22
H04W76/10
H04W88/18
H04W24/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053517
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】城 哲
(72)【発明者】
【氏名】植田 一暁
(72)【発明者】
【氏名】加藤 尭彦
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA21
5K067DD23
5K067DD34
5K067EE02
5K067EE10
5K067EE16
5K067LL01
(57)【要約】
【課題】リクエストの処理にステートを必要としないステートレスコアネットワークにおいて、同一のUEから複数のリクエストを短時間に受けた際に、適切に制御を行なうことを可能にする。
【解決手段】前記端末から送信される前記リクエストを受け付ける受付層200と、前記受付層から前記リクエストを受信し、前記端末の状況を把握して前記リクエストを管理する管理層300と、前記管理層から転送される前記リクエストを、その種類に応じて処理する複数のソフトウェアを有する処理層400と、前記端末に関する情報を保持し、前記処理層に前記情報を提供する保持層500と、を備え、前記管理層300は、前記端末の状況に基づいて前記リクエストに対する処理を判定し、前記リクエストを実行すると判定された場合、前記リクエストの内容に応じたソフトウェア410へ転送する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動通信システムに用いられ、端末から送信されるリクエストの処理にステートを必要としないステートレスコアネットワークシステムであって、
前記端末から送信される前記リクエストを受け付ける受付層と、
前記受付層から前記リクエストを受信し、前記端末の状況を把握して前記リクエストを管理する管理層と
前記管理層から転送される前記リクエストを、その種類に応じて処理する複数のソフトウェアを有する処理層と、
前記端末に関する情報を保持し、前記処理層に前記情報を提供する保持層と、を備え、
前記管理層は、前記端末の状況に基づいて前記リクエストに対する処理を判定し、前記リクエストを実行すると判定された場合、前記リクエストの内容に応じたソフトウェアへ転送することを特徴とするステートレスコアネットワークシステム。
【請求項2】
前記管理層は、前記端末の状況を把握するために、前記保持層から前記端末に関する情報を取得することを特徴とする請求項1に記載のステートレスコアネットワークシステム。
【請求項3】
前記処理層は、前記保持層において前記端末に関する情報を更新する場合、前記管理層に前記端末に関する情報の更新を要求することを特徴とする請求項2に記載のステートレスコアネットワークシステム。
【請求項4】
前記管理層は、対応する端末の前記リクエストを管理する複数のリクエスト管理部を有し、
前記受付層は、少なくとも前記端末の情報に基づいて、前記受け付けたリクエストをいずれかの前記リクエスト管理部に転送する振り分け部を備えることを特徴とする請求項1または2に記載のステートレスコアネットワークシステム。
【請求項5】
請求項1または2記載のステートレスコアネットワークシステムの管理層に適用されるリクエスト管理装置であって、
リクエストを送信した端末に関する情報を保持する情報保持部と、
前記情報保持部に保持される情報に基づいて、前記リクエストの種類を判別する判別部と、
前記リクエストを前記判別した種類に応じたソフトウェアへ転送部と、を備えることを特徴とするリクエスト管理装置。
【請求項6】
請求項1記載のステートレスコアネットワークシステムの管理層に適用されるリクエスト管理方法であって、
リクエストを送信した端末に関する情報に基づいて、受信した前記リクエストに対する処理を判定する工程と、
前記リクエストに対して実行すると判定された場合、前記リクエストの内容に応じたソフトウェアへ転送する工程と、を含むことを特徴とするリクエスト管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動通信システムに用いられ、端末から送信されるリクエストの処理にステートを必要としないステートレスコアネットワークシステム、リクエスト管理装置およびリクエスト管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1に記載の第5世代移動通信システム(5G)では、ユーザ端末(UE:User Equipment)、RAN(Radio Access Network)、コアネットワーク(CN:Core Network)から構成される。RANは、UEと通信を行なう無線アンテナの制御や無線信号とパケット信号の変換など、無線通信区間に関する制御を行なう。コアネットワークは、UEの接続認証やUEの通信時における通信パケットの通り道となる通信セッションの構築・変更・開放等の制御、UEの移動に伴う通信セッション更新等の移動管理制御等、5G全体にまたがる制御を行なう。
【0003】
非特許文献1では、複数のネットワーク機能(NF :Network Function)と呼ばれる機能部の集合体としてコアネットワークを定義している。ネットワーク機能としてはAccess and Mobility Management Function(AMF)やSession Management Function(SMF)等が挙げられる。各ネットワーク機能はUEのステートやポリシーなどのUE情報を部分的に保持し、保持する情報を用いてコアネットワーク内で特定の処理を行なう。
【0004】
しかしながら、非特許文献1では、コアネットワーク内の各ネットワーク機能でステートを保持することから、システムの耐障害性やスケール性が低下してしまうことが課題として挙げられる。この課題に対して、非特許文献2では、
図8に示される受付層、処理層および保持層からなる3層のステートレスコアネットワークを提案している。
【0005】
非特許文献2の3層ステートレスコアネットワークでは、受付層としてUEからのリクエストを受け付けるメッセージキュー(MQ)、処理層としてリクエストに対応する一連の処理を実行するFunction(Fn)と呼ばれる複数のソフトウェア、保持層として各種UE情報を一律で保持する中央集権型のデータベースから構成される。メッセージキューがUEからリクエストを受け取り、処理に適したFnに転送することでリクエストが処理される。この際、FnがUEの処理情報を事前に保持しない。すなわち、Fnがステートレスであるため、Fnが故障した場合に、代わりのFnであってもリクエストの処理が容易に実施できる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】3GPP, System architecture for the 5G System(5GS). Technical Specification(TS) 23.501
【非特許文献2】渡邊大記,「プロシージャ型処理を用いたステートレスな5Gコアネットワークの実現」,電子情報通信学会、ネットワークシステム研究会,2022年12月, NS2022-139,pp.54-59
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
UEから短い期間で同じ内容のリクエストを複数受信した場合に、従来のステートフルなコアネットワークでは、前後のリクエストの状態に応じてリクエストの破棄や待機もしくはUEへの一時応答やエラー応答等、適切に対応することができる。しかしながら、非特許文献2に記載の3層ステートレスコアネットワークでは、処理層でステートを保持しないため、前後のリクエストの状態に応じて適切に制御することができない。
【0008】
そのため、非特許文献2に記載の3層ステートレスコアネットワークは、
図9に示すように、リクエストの応答待ちの間に、先に送られたリクエストのキャンセルや、再送されたリクエストの一時的な保持もしくは破棄等の制御を行なわずに他のFnへ転送してしまうため、処理層で処理の重複が連鎖的に発生してしまう。
【0009】
これにより、アクティブなUEの数が多いときや災害時などUEからのリクエストが増加するときなど、コアネットワーク内の処理量が増加しリクエストに対する応答遅延が増える場合に、コアネットワークの処理資源が不足するおそれがある。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、移動通信システムに用いられ、端末から送信されるリクエストの処理にステートを必要としないステートレスコアネットワークにおいて、同一のUEから複数のリクエストを短時間に受けた際に、適切に制御を行なうことを可能にするステートレスコアネットワークシステム、リクエスト管理装置およびリクエスト管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)上記の目的を達成するため、本発明は以下のような手段を講じた。すなわち、本発明のステートレスコアネットワークシステムは、移動通信システムに用いられ、端末から送信されるリクエストの処理にステートを必要としないステートレスコアネットワークシステムであって、前記端末から送信される前記リクエストを受け付ける受付層と、前記受付層から前記リクエストを受信し、前記端末の状況を把握して前記リクエストを管理する管理層と前記管理層から転送される前記リクエストを、その種類に応じて処理する複数のソフトウェアを有する処理層と、前記端末に関する情報を保持し、前記処理層に前記情報を提供する保持層と、を備え、前記管理層は、前記端末の状況に基づいて前記リクエストに対する処理を判定し、前記リクエストを実行すると判定された場合、前記リクエストの内容に応じたソフトウェアへ転送することを特徴とする。
【0012】
これにより、リクエストの処理にステートを必要としないステートレスコアネットワークシステムであっても、管理層において端末の状況を把握してリクエストを管理するから、同一のUEから複数のリクエストを短時間に受けた際に、適切に制御を行なうことができる。また、管理層において端末の状況に基づいてリクエストに対する処理を判定し、リクエストを実行すると判定された場合、リクエストの内容に応じたソフトウェアへ転送するから、処理層でスムーズにリクエストを処理することができる。
【0013】
(2)また、上記(1)記載のステートレスコアネットワークシステムにおいて、前記管理層は、前記端末の状況を把握するために、前記保持層から前記端末に関する情報を取得することを特徴とする。
【0014】
これにより、管理層で端末の状況を把握するために、保持層から端末に関する情報を取得する頻度を減らすことができ、処理速度を向上させることができる。
【0015】
(3)また、上記(1)または(2)記載のステートレスコアネットワークシステムにおいて、前記処理層は、前記保持層において前記端末に関する情報を更新する場合、前記管理層に前記端末に関する情報の更新を要求することを特徴とする。
【0016】
これにより、管理層において保持する端末に関する情報を最新の状態に保つことができる。したがって、更新されていない端末に関する情報に基づいてリクエストを管理することを防止できる。
【0017】
(4)また、上記(1)~(3)いずれかに記載のステートレスコアネットワークシステムにおいて、前記管理層は、対応する端末の前記リクエストを管理する複数のリクエスト管理部を有し、前記受付層は、少なくとも前記端末の情報に基づいて、前記受け付けたリクエストを前記いずれかの前記リクエスト管理部に転送する振り分け部を備えることを特徴とする。
【0018】
管理層がリクエスト管理部を複数有するから、障害が生じても他のリクエスト管理部で対応できる。そのため、障害によるリクエスト管理への影響を抑えることができる。また、受付層がいずれかのリクエスト管理部に転送する振り分け部を有するから、管理層が複数のリクエスト管理部を有しても適切にリクエストを管理することができる。
【0019】
(5)また、本発明のリクエスト管理装置は、上記(1)~(4)いずれかに記載のステートレスコアネットワークシステムの管理層に適用されるリクエスト管理装置であって、リクエストを送信した端末に関する情報を保持する情報保持部と、前記情報保持部に保持される情報に基づいて、前記リクエストの種類を判別する判別部と、前記リクエストを前記判別した種類に応じたソフトウェアへ転送部と、を備えることを特徴とする。
【0020】
これにより、リクエストの処理にステートを必要としないステートレスコアネットワークシステムであっても、管理層において端末の状況を把握してリクエストを管理するから、同一のUEから複数のリクエストを短時間に受けた際に、適切に制御を行なうことができる。また、管理層においてリクエストの種類を判別し、判別した種類に応じたソフトウェアへ転送するから、処理層でスムーズにリクエストを処理することができる。
【0021】
(6)また、本発明のリクエスト管理方法は、上記(1)記載のステートレスコアネットワークシステムの管理層に適用されるリクエスト管理方法であって、リクエストを送信した端末に関する情報に基づいて、受信した前記リクエストに対する処理を判定する工程と、前記リクエストに対して実行すると判定された場合、前記リクエストの内容に応じたソフトウェアへ転送する工程と、を含むことを特徴とする。
【0022】
これにより、端末の情報に関する情報に基づいて、リクエストの種類に応じた適切なソフトウェアへ転送することができる。
【発明の効果】
【0023】
移動通信システムに用いられ、端末から送信されるリクエストの処理にステートを必要としないステートレスコアネットワークにおいて、同一のUEから複数のリクエストを短時間に受けた際に、適切に制御を行なうことを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】第一実施形態に係る移動通信システムの構成を示す構成図である。
【
図2】第一実施形態に係る移動通信システムにおける初期登録要求の処理を示す構成図である。
【
図3】本発明に係る移動通信システムを用いたリクエストの処理における遅延が多い処理を説明するシーケンス図である。
【
図4】本発明に係る移動通信システムを用いたリクエストの処理におけるFnの構成を説明するシーケンス図である。
【
図5】第二実施形態に係る移動通信システムの構成を示す構成図である。
【
図6】第二実施形態に係る移動通信システムにおける初期登録要求の処理を示す構成図である。
【
図7】第二実施形態に係る移動通信システムにおける初期登録要求の処理を示す構成図である。
【
図8】従来の3層コアネットワークを用いた移動通信システムの構成を示す構成図である。
【
図9】従来の3層コアネットワークを用いた移動通信システムにおける同一のUEから複数のリクエストを短期間に受けた状態を説明するシークエンス図である。
【
図10】従来の3層コアネットワークを含む移動通信システムを用いたリクエストの処理における遅延が多い処理を説明するシーケンス図である。
【
図11】従来の3層コアネットワークを含む移動通信システムを用いたリクエストの処理におけるFnの構成を説明するシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明者らは、
図8に示す3層ステートレスコアネットワーク600では、すべてのリクエストを処理層400に転送していることに着目し、処理層400に転送する前にUEの状況を把握してリクエストを管理する管理層を新たに設けることで、同一のUEから複数のリクエストを短時間に受けた際に、適切に制御を行なうことを見出し、本発明に至った。
【0026】
すなわち、本発明のステートレスコアネットワークシステムは、移動通信システムに用いられ、端末から送信されるリクエストの処理にステートを必要としないステートレスコアネットワークシステムであって、前記端末から送信される前記リクエストを受け付ける受付層と、前記受付層から前記リクエストを受信し、前記端末の状況を把握して前記リクエストを管理する管理層と前記管理層から転送される前記リクエストを、その種類に応じて処理する複数のソフトウェアを有する処理層と、前記端末に関する情報を保持し、前記処理層に前記情報を提供する保持層と、を備え、前記管理層は、前記端末の状況に基づいて前記リクエストに対する処理を判定し、前記リクエストを実行すると判定された場合、前記リクエストの内容に応じたソフトウェアへ転送することを特徴とする。
【0027】
これにより、本発明者らは、移動通信システムに用いられ、端末から送信されるリクエストの処理にステートを必要としないステートレスコアネットワークにおいて、同一のUEから複数のリクエストを短時間に受けた際に、適切に制御を行なうことを可能にする。
【0028】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0029】
[第1実施形態]
(移動通信システムの構成)
図1は、第1実施形態に係る移動通信システムの構成を示す構成図である。本発明の移動通信システム1000は、UE1~n、RAN20およびコアネットワーク100から構成されている。
【0030】
RAN20は、UE1~nからメッセージを受信し、メッセージをステートレスな状態にしてコアネットワーク100に向けて送信する。RAN20は、例えば基地局とN1N2GWとを含み、N1N2GWがSCTPアソシエーションの終端となり、N2メッセージに送信元の基地局のIDを付加してメッセージキューに送信する。
【0031】
コアネットワーク100は、受付層200、管理層300、処理層400および保持層500の4層で構成される。受付層200は、RAN20から受信したメッセージを管理層300に転送するメッセージキュー250を有する。
【0032】
管理層300は、リクエストの種類を判別し、リクエストの処理を判定するURM(UE Request Manager)310を有する。URM310は、N2インターフェース311と、UE関連情報格納部313-1~313-nと、リクエスト共通情報格納部315と、判定部317とを有する。N2インターフェース311は、UE1~nから送信されたN2メッセージを解析し、N2メッセージからUEの識別子を取り出すとともに、N2メッセージに含まれるリクエストの種類を判別する。
【0033】
UE関連情報格納部313-1~313-nは個々のUE1~nと対応するように設けられ、対象のUEに関する情報の一部を保持する。UE関連情報格納部313-1~313-nは、UEに関する情報の一部を保持層500から取得する。UE関連情報格納部313-1~313-nに保持される情報としては、各UEから受信したリクエストの処理状況や各UEのNG-AP情報、各UEとの共通鍵が挙げられる。また、UE関連情報格納部313は、一定時間以上リクエストを受信しなかった場合、削除される仕様であることが好ましい。UE関連情報格納部313が削除されることによってコアネットワーク100内の資源利用効率が高められる。
【0034】
リクエスト共通情報格納部315は、各種リクエストの特徴に関する情報を保持する。リクエストの特徴に関する情報としては、処理の完了までにかかる許容可能な時間やリクエストの種別間の順序、リクエストの種別間の依存関係が挙げられる。
【0035】
判定部317は、処理ロジックに基づいてリクエストの処理を判定する。具体的には、判定部317は、N2インターフェース311から対象のリクエストのUE識別子およびリクエストの種類を取得する。そして、判定部317は、必要に応じて取得したUE識別子に基づいて対応するUE関連情報格納部313からリクエストの解析に必要な鍵情報等を取得する。また、判定部317は、キュー319における処理状況を取得する。判定部317は、UE関連情報格納部313から取得した情報およびキュー319における処理状況に基づいてリクエストを解析し、リクエスト種別を判別する。判定部317は、判別したリクエストの種類をリクエスト共通情報格納部315に送信してリクエストの特徴に関する情報を取得する。判定部317は、UE関連情報格納部313から取得した情報、キュー319における処理状況およびリクエスト共通情報格納部315から取得した情報を処理ロジックに入力し、リクエストの処理を判定する。
【0036】
処理ロジックは、入力された情報からリクエストに対する処理を判定する。処理ロジックは、まず、対象のUEにおけるリクエストの処理状況を確認し、判定対象のリクエストと同じ内容のリクエストが処理されていないか確認する。同じ内容のリクエストが処理されていない場合、「リクエストを実行する」と判定し、キュー319にリクエストを格納する。キュー319は適切なFn410へリクエストを転送する。同じ内容のリクエストが処理されている場合、処理層400に処理状況を確認し、上手く実行されていない場合には、「現在処理中のリクエストを破棄し、新たなリクエストで処理を実行する」と判定する。処理中のリクエストが順調に進んでいる場合には、「リクエストの破棄」や「リクエストの待機」と判定する。また、「リクエストを実行する」と判定した場合には、前後に受信したリクエストを考慮して処理層400へ転送するタイミングを決定する。「リクエストの破棄」や「リクエストの待機」と判定した場合には、UEに対する一時応答や暫定応答について定めてもよい。
【0037】
処理層400は少なくとも1種類のリクエストを実行可能なFn410-1~410-iを有する。処理層400はUEから送信されたリクエストだけでなく、コアネットワーク100内からのリクエストについても処理する。
【0038】
保持層500は、各UEに関する情報を保持する、中央集権型のデータベースを有する。保持層500は、各UEに関する情報として、N2情報、共通鍵、ステート、ポリシー、セッション情報などの他に、各UEに対応するURM310のエンドポイントに関する情報(URMエンドポイント情報)を保持する。
【0039】
(リクエストの処理方法)
次に、UEから送信されるリクエストの処理方法について説明する。以下では、リクエストを送信したUEがUEnの場合について説明する。
【0040】
UEnから送信されたメッセージは、RAN20を通じてステートレスな状態で受付層200に転送される。受付層200では、メッセージキュー250でメッセージを受け取り、管理層300へ転送する。管理層300では、受付層から転送されたメッセージをN2インターフェース311で受け取り、メッセージを解析する。N2インターフェース311は解析結果を合わせてメッセージを判定部317へ転送する。
【0041】
判定部317は、UE識別子に基づいてUE関連情報格納部313-nからUEnに関する情報を取得するとともに、取得したリクエストの種類をリクエスト共通情報格納部315に送信してリクエストの特徴に関する情報を取得する。判定部317は、取得した情報を処理ロジックに入力し、リクエストの処理を判定する。リクエストを実行すると判定した場合、判定部317は、内容に応じて適したFn410へリクエストを転送する。
【0042】
Fn410では、受信したリクエストの処理を終えるまで一連の処理を実行する。Fn410は、リクエストの処理にUEnに関する情報が必要な場合には、データベース510から取得する。また、データベース510に保存されている情報に更新がある場合には、データベース510およびURM310に更新要求する。データベース510およびURM310に更新要求する具体的な方法については後述する。Fn410は、作成したリクエストメッセージを、UEnのURMエンドポイント情報に沿ってURM310へ送信する。
【0043】
URM310は、受信したリクエストメッセージをN2インターフェース311からメッセージキュー250に送信する。メッセージキュー250はメッセージの送信元であるRAN20に向けてリクエストメッセージを転送し、RAN20を通じてUEnにリクエストメッセージが届けられる。
【0044】
(UE情報の更新)
次に、第1実施形態に係るUEに関する情報が更新されるリクエストの処理について説明する。
図2は、UEの初期登録要求の処理工程を含む構成図を示している。UEに関する情報が更新されるリクエストとして、UEnの初期登録要求を例に挙げて説明する。
【0045】
UEnから送信された初期登録要求は、RAN20を通じてステートレスな状態で受付層200に転送され、メッセージキュー250介して管理層300へ転送される(S1)。初期登録要求を受け取った管理層300は、UEの初期登録を処理するFn410-iへ初期登録要求を転送する(S2)。
【0046】
初期登録要求を受信したFn410は、データベース510を参照および更新し(S3)、URM310に対してUEに関する情報の更新を要求する(S4)。管理層300は、初期登録要求を送信したUEと対応するUE関連情報格納部313を新たに作成し、その内部にUEに関する情報を格納する。
【0047】
これにより、データベースにおける情報の更新に合わせて、URMで保持されるUEに関する情報についても更新されるため、直近の情報に基づいて管理層でリクエストの管理を行なうことができる。
【0048】
(ハンドオーバ)
RAN20が切り替えるXnハンドオーバが生じる際には、RAN20からコアネットワーク100に対して通信パス切り替え要求(Path switch)が送信される。通信パス切り替え要求に含まれるN2情報は、URM310やデータベース510に保持されている情報から変更されているため、情報を更新する必要がある。
【0049】
メッセージキュー250を介して通信パス切り替え要求を受信したURM310は、N2インターフェース311で識別子を取得し、通信パス切り替え要求を送信したUEと対応するUE関連情報格納部313で保持される情報を更新する。
【0050】
一方でURM310は、通信パス切り替え要求をFn410へ送信し、データベース510で保持される情報も更新する。
【0051】
以上から本発明のコアネットワークを含む移動通信システムでは、処理層でステートを持たなくても、同一のUEから複数のリクエストを短時間に受けた際に、適切に制御を行なうことを可能にする。
【0052】
また、本発明のコアネットワークシステムでは、
図3のように、URM310でリクエストの内容を判別してから適した処理層に転送する。そのため、データベース510へアクセスする回数を減らすことができ、処理速度が向上する。これに対して、従来の3層コアネットワーク6000では、
図10に示すように、処理層400においてリクエストの内容を判別してリクエストを処理する。そのため、リクエストの種類の判別と、リクエストを処理するタイミングでデータベース510からUEに関する情報を取得する必要がある。データベース510へのアクセスは遅延が大きいため、リクエストの処理速度が低下してしまう。
【0053】
また、本発明のコアネットワークでは、受付層、管理層および処理層が単一もしくは複数のサーバで実現されてもよく、個々が単一もしくは複数のサーバで実現されてもよい。受付層、管理層および処理層のうち少なくとも1つが実現されるサーバは物理サーバおよび仮想サーバのどちらでもよい。コアネットワークを基地局の近傍に位置するクラウド環境(エッジクラウド)で分散配置して運用する場合、
図3のように、リクエストの識別に関する処理を中央集権型のデータベース(セントラルクラウド)を参照せずに実行できるため、制御処理の遅延を低減できる。
【0054】
また、本発明のコアネットワークでは、処理層が少なくとも1種類のリクエストを処理可能であればよいため、
図4のように、リクエストの種別に合わせた細分化が可能となる。
図4では、処理1用Fn410-1と、処理2用Fn410-2が複数設けられている。これに対して、従来の3層コアネットワーク6000では、
図11に示すように、受付層200から転送されるリクエストを受信する処理層400が、全種類のリクエストに対応可能である必要がある。
【0055】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態の移動通信システム2000は、管理層300に複数のURM310が含まれる点が第1実施形態と異なる。以下では、第1実施形態との相違点を中心に説明し、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
【0056】
図5は、第2実施形態に係る移動通信システムの構成を示す構成図である。コアネットワーク102では、管理層300に複数のURM310を含むため、受付層200で適切なURM310へ転送する機能が必要となる。受付層200は、適切なURM310へメッセージを転送するULB(UE Load Balancer)210から構成される。ULB210は、N2インターフェース211と、URMアクセス情報格納部220と、メッセージキュー250と、を有する。
【0057】
N2インターフェース211は、RAN20から受信するメッセージを解析し、リクエストのN2情報の識別および転送先のURMの特定を行なう。転送先のURMの特定は、メッセージに含まれるUEに関する情報を送信してURMアクセス情報格納部220から情報を取得することで特定する。URMアクセス情報格納部220内部に対象のUEに関する情報がない場合には、データベース510からURMエンドポイント情報を取得する必要がある。この際、Fnを介してデータベース510からURMエンドポイント情報を取得してもよいし、直接データベース510から取得してもよい。
【0058】
図6では、Fnを介してデータベース510からURMエンドポイント情報を取得する処理工程を示している。ULB210は、URMアクセス情報格納部220内部に対象のUEに関する情報がない場合、UE情報検索用Fn410-sへ対象となるUEのURMエンドポイント情報の検索を要求する(T1)。UE情報検索用Fn410-sは、データベース510から検索し、取得したURMエンドポイント情報をULB210へ送信し、URMアクセス情報格納部220における情報の更新を要求する(T2)。ULB210は、取得したURMエンドポイント情報に基づいて、適切なURMへリクエストを転送する(T3)。
【0059】
URMアクセス情報格納部220は、N2情報のうち、UEの識別に関する情報(NG-AP等)と各UEに対応するURMエンドポイント情報を保持する。メッセージキュー250は、N2インターフェース311で特定されたURMへメッセージを転送する。
【0060】
管理層300は、複数のURM310を有する。URM310は単一のUEと対応するように設けられてもよいし、複数のUEと対応するように設けられてもよい。
図5では、単一のUE1~nと対応するように、URM(UE1)~URM(UEn)310-1~310-nを設けられている。各URM310では、UE関連情報格納部313、リクエスト共通情報格納部315、判定部317およびキュー319を有する。キュー319は受付層200からのメッセージを受信する。
【0061】
(リクエストの処理方法)
次に、第2実施形態に係るリクエストの処理方法として、UEnから送信されるリクエストの処理方法について説明する。
【0062】
受付層200は、UEnから送信されたメッセージをN2インターフェース211で受け取り、メッセージを解析する。N2インターフェース211は送信元がUEnであることを特定し、URMアクセス情報格納部220からUEnのURMエンドポイント情報を取得する。メッセージキュー250を介して適切なURM(UEn)410-nにメッセージを転送する。URM310-nでは、UEnに関する処理状況やリクエストの特徴に基づいてリクエストに対する処理を判定し、リクエストを実行する場合にはリクエストの種類に適したFn410へ転送する。
【0063】
(UEの登録要求)
次に、第2実施形態に係るUEnの初期登録要求について説明する。
図7は、第2実施形態に係るUEの初期登録要求の処理工程を含む構成図を示している。第2実施形態では、URMを複数有するため、UEの収容先となるURMを定めるか、URMを新規生成する必要がある。以下では、URMを新規生成する場合の初期登録要求について説明する。
【0064】
管理層300では、新しいURM(new)310-wを予め作成する(U1)。受付層200は、N2インターフェース211においてUEnから送信された初期登録要求を受信し、収容先となるURMがない場合、URM(new)310-wに転送する(U2)。URM(new)310-wは、UEnに関するN2情報とURMエンドポイント情報をURMアクセス情報格納部220に格納するように、ULB210に要求する(U3)。
【0065】
これらとは別に、URM(new)310-wは、登録用Fn410-rにも初期登録要求を転送する。登録用Fn410-rは、データベース510に登録処理を要求する。(U4)そして、登録用Fn410-rは、URM310に対して一定時間以上リクエストを受信していないUEに関する情報の削除を要求する(U5)。このとき、URM310ごと削除してもよいし、UEに関する情報のみ削除してもよい。UEに関する情報のみ削除する場合には、UEに関する情報を削除したURM310に新たなUEを収容してもよい。
【0066】
(ハンドオーバ)
第2実施形態では、URM310およびデータベース510に加えて、さらにULB210でN2情報を有する。そのため、URM310およびデータベース510における情報更新に加えて、N2インターフェース211で通信パス切り替え要求を検知し、URMアクセス情報格納部220に保持される情報も更新する。
【0067】
このように、本発明のコアネットワークシステムでは、移動通信システムに用いられ、端末から送信されるリクエストの処理にステートを必要としないステートレスコアネットワークにおいて、同一のUEから複数のリクエストを短時間に受けた際に、適切に制御を行なうことを可能にする。
【符号の説明】
【0068】
1~n UE
20 RAN
100、102 コアネットワーク
200 受付層
210 ULB
211 N2インターフェース
220 URMアクセス情報格納部
250 メッセージキュー
300 管理層
310 URM
310-1~310-n URM(UE1)~URM(UEn)
310-w URM(UEnew)
311 N2インターフェース
313 UE関連情報格納部
313-1~313-n UE1関連情報格納部~UEn関連情報格納部
315 リクエスト共通情報格納部
317 判定部
319 キュー
400 処理層
410 Fn
410-1~410-i 処理1用Fn~処理i用Fn
410-2 処理2用Fn
410-s UE情報検索用Fn
410-r 登録用Fn
500 保持層
510 データベース
600 3層コアネットワーク
1000、2000 移動通信システム
6000 (従来の)移動通信システム