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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141723
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】旋回式作業機械の制御装置
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/20 20060101AFI20241003BHJP
   E02F 9/24 20060101ALI20241003BHJP
   E02F 9/26 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
E02F9/20 M
E02F9/24 B
E02F9/26 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053519
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100109058
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】五頭 直紀
(72)【発明者】
【氏名】大川 将弥
(72)【発明者】
【氏名】越智 智彦
(72)【発明者】
【氏名】中野 稔志
【テーマコード(参考)】
2D003
2D015
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB02
2D003BA07
2D003DA04
2D003DB04
2D003DB05
2D003FA02
2D015GA03
2D015GB06
2D015GB07
2D015HA03
2D015HB04
2D015HB05
(57)【要約】
【課題】簡単な構成で、作業機械の旋回体と監視対象との接近を抑制するための制御を適正に行う。
【解決手段】装置は、監視対象の位置情報を取得する位置情報取得部と、監視対象と旋回体12との接近を抑制するための抑制制御を行う制御部と、を備える。制御部は、旋回体12の右旋回時には旋回体12と一体に右旋回するように設定された右旋回監視領域91,92,90に前記監視対象が位置するときにのみ抑制制御を行って右旋回監視領域に監視対象が位置しないときは抑制制御を保留する。制御部は、旋回体12の左旋回時には右旋回監視領域と異なる領域であって旋回体12と一体に左旋回するように設定された左旋回監視領域に監視対象が位置するときにのみ抑制制御を行って左旋回監視領域に監視対象が位置しないときは抑制制御を保留する。
【選択図】図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持本体及び前記支持本体に旋回動作可能に支持される旋回体を備えた作業機械の前記旋回動作を制御するための装置であって、
前記旋回体に対する監視対象の相対位置に関する位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記位置情報に基づいて前記監視対象と前記旋回体との接近を抑制するための抑制制御を行う制御部と、を備え、
前記制御部は、前記旋回体の右旋回時には当該旋回体と一体に右旋回するように設定された右旋回監視領域に前記監視対象が位置するときにのみ前記抑制制御を行って前記右旋回監視領域に前記監視対象が位置しないときは前記抑制制御を保留し、前記旋回体の左旋回時には前記右旋回監視領域と異なる領域であって当該旋回体と一体に左旋回するように設定された左旋回監視領域に前記監視対象が位置するときにのみ前記抑制制御を行って前記左旋回監視領域に前記監視対象が位置しないときは前記抑制制御を保留する、旋回式作業機械の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の旋回式作業機械の制御装置であって、前記右旋回監視領域は、前記旋回体の右側面のうち前記旋回体の旋回中心より前側に位置する右前側面の側方に設定された右前領域部分と、前記旋回体の左側面のうち前記旋回中心より後側に位置する左後側面の側方に設定された左後領域部分と、を含み、前記左旋回監視領域は、前記旋回体の左側面のうち前記旋回中心より前側に位置する左前側面の側方に設定された左前領域部分と、前記旋回体の右側面のうち前記旋回中心より後側に位置する右後側面の側方に設定された右後領域部分と、を含む、旋回式作業機械の制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の旋回式作業機械の制御装置であって、前記右前領域部分は、前記旋回中心を通って前記旋回体の左右方向に延びる鉛直面である旋回中心面に沿う後端面を有し、前記左後領域部分は、前記旋回中心面に沿う前端面を有する、旋回式作業機械の制御装置。
【請求項4】
請求項2に記載の旋回式作業機械の制御装置であって、前記左前領域部分は、前記旋回中心を通って前記旋回体の左右方向に延びる鉛直面である旋回中心面に沿う後端面を有し、前記右後領域部分は、前記旋回中心面に沿う前端面を有する、旋回式作業機械の制御装置。
【請求項5】
請求項2に記載の旋回式作業機械の制御装置であって、前記位置情報取得部は、前記旋回体の右側部に配置されて当該旋回体の右側方に位置する監視対象を検知する右対象検知器を含み、前記右旋回監視領域の前記右前領域部分及び前記左旋回監視領域の前記右後領域部分はともに前記右対象検知器の検知範囲内に設定されている、旋回式作業機械の制御装置。
【請求項6】
請求項2に記載の旋回式作業機械の制御装置であって、前記位置情報取得部は、前記旋回体の左側部に配置されて当該旋回体の左側方に位置する監視対象を検知する左対象検知器を含み、前記右旋回監視領域の前記左後領域部分及び前記左旋回監視領域の前記左前領域部分はともに前記左対象検知器の検知範囲内に設定されている、旋回式作業機械の制御装置。
【請求項7】
請求項2に記載の旋回式作業機械の制御装置であって、前記右前領域部分は、平面視において前記旋回中心を中心とする円弧状の外周面を有し、当該外周面は前記旋回体の右旋回に伴う当該旋回体の右前角部の旋回軌跡よりも前記旋回体の旋回半径方向について外側に位置する、旋回式作業機械の制御装置。
【請求項8】
請求項2に記載の旋回式作業機械の制御装置であって、前記左後領域部分は、平面視において前記旋回中心を中心とする円弧状の外周面を有し、当該外周面は前記旋回体の右旋回に伴う当該旋回体の左後角部の旋回軌跡よりも前記旋回体の旋回半径方向について外側に位置する、旋回式作業機械の制御装置。
【請求項9】
請求項2に記載の旋回式作業機械の制御装置であって、前記左前領域部分は、平面視において前記旋回中心を中心とする円弧状の外周面を有し、当該外周面は前記旋回体の左旋回に伴う当該旋回体の左前角部の旋回軌跡よりも前記旋回体の旋回半径方向について外側に位置する、旋回式作業機械の制御装置。
【請求項10】
請求項2に記載の旋回式作業機械の制御装置であって、前記右後領域部分は、平面視において前記旋回中心を中心とする円弧状の外周面を有し、当該外周面は前記旋回体の左旋回に伴う当該旋回体の右後角部の旋回軌跡よりも前記旋回体の旋回半径方向について外側に位置する、旋回式作業機械の制御装置。
【請求項11】
請求項2に記載の旋回式作業機械の制御装置であって、前記右旋回監視領域及び前記左旋回監視領域は、前記旋回体の後方に設定される後方領域部分を共有する、旋回式作業機械の制御装置。
【請求項12】
請求項1に記載の旋回式作業機械の制御装置であって、前記抑制制御は、警報器からオペレータに対して警報を発出させる警報制御を含む、旋回式作業機械の制御装置。
【請求項13】
請求項12に記載の旋回式作業機械の制御装置であって、前記制御部は、前記作業機械の動作のために与えられる操作を無効にする操作ロック信号が入力されているときには前記監視対象の有無にかかわらず前記抑制制御を保留するように構成されている、旋回式作業機械の制御装置。
【請求項14】
請求項1に記載の旋回式作業機械の制御装置であって、前記旋回体はオペレータの搭乗を許容する運転室を含み、前記作業機械は、前記旋回体に搭載されて前記運転室の前方で作業動作を行うことが可能な作業装置をさらに備え、前記制御部は、前記監視対象の有無及び位置にかかわらず、前記作業装置と前記監視対象との接近を抑制するために前記作業動作を制限するための作業制限制御はしないように構成されている、旋回式作業機械の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、旋回式作業機械の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油圧ショベルのように旋回体を有する作業機械において、前記旋回体の旋回動作による当該旋回体と前記作業機械の周辺の監視対象との接触乃至近接を防ぐための制御を行う装置が知られている。例えば特許文献1には、ショベルの周囲の所定範囲内で監視対象が検出された場合に安全機能を作動させることが記載されている。前記安全機能は、報知機能や動作制限機能を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-183624号公報(段落0033~0035)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記監視対象の検出に基づく前記安全機能の作動は、必要な場合にのみ行われることが好ましく、無駄な作動は却って不都合を招く。例えば、警報が不必要な場合も含めて頻繁に発出されると、その効果、すなわちオペレータ等に警戒を促す効果、が低減する。また、作業機械の動作の過度の制限は著しい作業効率の低下を招く。
【0005】
前記のような無駄な安全機能の作動を抑止するために、特許文献1には、ショベルの走行動作について、車両の進行方向に監視対象が存在する場合にのみ安全機能を作動させ、当該進行方向と反対の方向に監視対象が存在する場合には安全機能を作動させないことが記載されているが(同文献の図7及び図8A図8B)、旋回体の旋回動作に起因する当該旋回体と監視対象との接触乃至近接を防ぐための適正な制御の実現については何ら具体的な手段は開示されていない。このような制御の実現のために複雑な演算や大掛かりな装備が用いられることは好ましくない。
【0006】
本発明は、簡単な構成で、作業機械の旋回体と監視対象との接近を抑制するための制御を適正に行うことが可能な制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
提供されるのは、支持本体及び前記支持本体に旋回動作可能に支持される旋回体を備えた作業機械の前記旋回動作を制御するための装置である。当該装置は、前記旋回体に対する監視対象の相対位置に関する位置情報を取得する位置情報取得部と、前記位置情報に基づいて前記監視対象と前記旋回体との接近を抑制するための抑制制御を行う制御部と、を備える。前記制御部は、前記旋回体の右旋回時には当該旋回体と一体に右旋回するように設定された右旋回監視領域に前記監視対象が位置するときにのみ前記抑制制御を行って前記右旋回監視領域に前記監視対象が位置しないときは前記抑制制御を保留する。前記制御部は、前記旋回体の左旋回時には前記右旋回監視領域と異なる領域であって当該旋回体と一体に左旋回するように設定された左旋回監視領域に前記監視対象が位置するときにのみ前記抑制制御を行って前記左旋回監視領域に前記監視対象が位置しないときは前記抑制制御を保留する。
【0008】
前記装置によれば、予め与えられた前記右旋回監視領域及び前記左旋回監視領域のうち前記旋回体の旋回方向に対応した監視領域を採択することと、その採択された監視領域内に監視対象が位置するか否かを判断することと、を含むだけの簡単な制御で、作業機械の旋回体と監視対象との相互接近を抑制しながら、当該制御の実行の頻度を適正に抑えることが可能である。例えば、右旋回時には、当該右旋回について設定された右旋回監視領域内に監視対象が位置するか否かに基づいて前記抑制制御の実行の要否を判断することにより、左旋回時には警戒の必要があるが右旋回時には警戒の必要がない位置に監視対象が位置する場合に当該右旋回時において前記抑制制御が実行されるのを回避することができる。
【0009】
具体的に、前記右旋回監視領域は、前記旋回体の右側面のうち前記旋回体の旋回中心より前側に位置する右前側面の右側方に設定された右前領域部分と、前記旋回体の左側面のうち前記旋回中心より後側に位置する左後側面の左側方に設定された左後領域部分と、を含み、前記左旋回監視領域は、前記旋回体の左側面のうち前記旋回中心より前側に位置する左前側面の左側方に設定された左前領域部分と、前記旋回体の右側面のうち前記旋回中心より後側に位置する右後側面の右側方に設定された右後領域部分と、を含むことが、好ましい。前記右前領域部分及び前記左後領域部分を含む前記右旋回監視領域は、前記旋回体の前記右旋回に伴って当該旋回体の前記右前側面及び前記左後側面が前記監視対象に接近するのを抑制することを可能にし、同様に、前記左前領域部分及び前記右後領域部分を含む前記左旋回監視領域は、前記旋回体の前記左旋回に伴って当該旋回体の前記左前側面及び前記右後側面が前記監視対象に接近するのを抑制することを可能にする。
【0010】
ここにおいて、「右前側面の側方に設定された右前領域部分」は、当該右前側面の側方に位置する部分だけでなく当該部分から後方にはみ出した部分を含んでいてもよい。このことは、前記左後領域部分、前記左前領域部分及び前記右後領域部分についても同様である。
【0011】
より具体的に、前記右前領域部分は、前記旋回中心を通って前記旋回体の左右方向に延びる鉛直面である旋回中心面に沿う後端面を有し、前記左後領域部分は、前記旋回中心面に沿う前端面を有することが、好ましい。このことは、右旋回時において、前記右前側面及び前記左後側面がそれぞれ監視対象に接近することを抑制しながら、前記左前側面及び右後側面の側方に監視対象が位置する場合、つまり、前記旋回体と前記監視対象との接近のおそれが低い場合に前記監視対象の実行を保留することを可能にする。
【0012】
同様に、前記左前領域部分は、前記旋回中心面に沿う後端面を有し、前記右後領域部分は、前記旋回中心面に沿う前端面を有することが、好ましい。このことは、左旋回時において、前記左前側面及び前記右後側面がそれぞれ監視対象に接近することを抑制しながら、前記右前側面及び左後側面の側方に監視対象が位置する場合、つまり、前記旋回体と前記監視対象との接近のおそれが低い場合に前記監視対象の実行を保留することを可能にする。
【0013】
ここにおいて、「旋回中心面に沿う後端面」及び「旋回中心面に沿う前端面」には、前記旋回中心面と合致する面の他、前記旋回中心面の近傍において当該旋回中心面と略平行に延びる面も含まれる。
【0014】
前記位置情報取得部は、前記旋回体の右側部に配置されて当該旋回体の右側方に位置する監視対象を検知する右対象検知器を含み、前記右旋回監視領域の前記右前領域部分及び前記左旋回監視領域の前記右後領域部分はともに前記右対象検知器の検知範囲内に設定されていることが、好ましい。このことは、前記右前領域部分及び前記右後領域部分のそれぞれに位置する監視対象を共通の前記右対象検知器が検知することを可能にする。
【0015】
同様に、前記位置情報取得部は、前記旋回体の左側部に配置されて当該旋回体の左側方に位置する監視対象を検知する左対象検知器を含み、前記右旋回監視領域の前記左後領域部分及び前記左旋回監視領域の前記左前領域部分はともに前記左対象検知器の検知範囲内に設定されていることが、好ましい。このことは、前記左前領域部分及び前記左後領域部分のそれぞれに位置する監視対象を共通の前記左対象検知器が検知することを可能にする。
【0016】
前記右前領域部分は、平面視において前記旋回中心を中心とする円弧状の外周面を有し、当該外周面は前記旋回体の右旋回に伴う当該旋回体の右前角部の旋回軌跡よりも前記旋回体の旋回半径方向について外側に位置することが、好ましい。このことは、前記旋回体の前記右旋回に伴う当該旋回体の前記右前角部と監視対象との接近を有効に抑止することを可能にする。
【0017】
また、前記左後領域部分は、平面視において前記旋回中心を中心とする円弧状の外周面を有し、当該外周面は前記旋回体の右旋回に伴う当該旋回体の左後角部の旋回軌跡よりも前記旋回体の旋回半径方向について外側に位置することが、好ましい。このことは、前記旋回体の前記右旋回に伴う当該旋回体の前記左後角部と監視対象との接近を有効に抑止することを可能にする。
【0018】
同様に、前記左前領域部分は、平面視において前記旋回中心を中心とする円弧状の外周面を有し、当該外周面は前記旋回体の左旋回に伴う当該旋回体の左前角部の旋回軌跡よりも前記旋回体の旋回半径方向について外側に位置することが、好ましい。このことは、前記旋回体の前記左旋回に伴う当該旋回体の前記左前角部と監視対象との接近を有効に抑止することを可能にする。
【0019】
また、前記右後領域部分は、平面視において前記旋回中心を中心とする円弧状の外周面を有し、当該外周面は前記旋回体の左旋回に伴う当該旋回体の右後角部の旋回軌跡よりも前記旋回体の旋回半径方向について外側に位置することが、好ましい。このことは、前記旋回体の前記左旋回に伴う当該旋回体の前記左後角部と監視対象との接近を有効に抑止することを可能にする。
【0020】
前記右旋回監視領域及び前記左旋回監視領域は、その少なくとも一部が互いに異なっていればよく、両監視領域に共通の部分が含まれていてもよい。例えば、前記右旋回監視領域及び前記左旋回監視領域は、前記旋回体の後方に設定される後方領域部分を共有してもよい。このことは、右旋回時及び左旋回時の双方において前記旋回体の後方に位置する監視対象と当該旋回体とが接近することを有効に抑止することを可能にする。
【0021】
前記抑制制御は、例えば、警報器からオペレータに対して警報を発出させる警報制御を含むことが、好ましい。当該警報の発出の過剰な頻度は当該警報の効率の低下を招くので、前記右旋回監視領域及び前記左旋回監視領域の設定による前記抑制制御の実行の頻度の抑制は、前記警報の有効性の担保に寄与する。
【0022】
一方、前記制御部は、前記作業機械の動作のために与えられる操作を無効にする操作ロック信号が入力されているときには前記監視対象の有無にかかわらず前記抑制制御(少なくとも前記警報制御)を保留するように構成されていることが、好ましい。このことは、前記操作ロック信号が入力されていて前記旋回操作の有無にかかわらず前記旋回動作が行われる可能性がない状況においてまで前記抑制制御が実行されることを防ぎ、これにより、当該抑制制御の実行の頻度が適正に抑制されることを可能になる。
【0023】
前記旋回体がオペレータの搭乗を許容する運転室を含み、前記作業機械が、前記旋回体に搭載されて前記運転室の前方で作業動作を行うことが可能な作業装置をさらに備える場合、前記制御部は、前記監視対象の有無及び位置にかかわらず、前記作業装置と前記監視対象との接近を抑制するために前記作業動作を制限するための作業制限制御はしないように構成されてもよい。このように、前記運転室に搭乗するオペレータによって視認が可能な作業動作については当該作業装置と前記監視対象の接近を抑制するための前記作業制限制御、すなわち前記作業動作を制限する制御、の実行を控えることにより、安全性を確保しながら、作業機械の動作を制限する制御の実行の頻度をさらに下げることが可能である。前記作業制限制御は、前記作業装置の実際の動きを制限する制御の他、オペレータに警報を発して前記作業動作の抑制を促すことにより間接的に前記作業動作を制限する制御も含む。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明によれば、簡単な構成で、作業機械の旋回体と監視対象との接近を抑制するための抑制制御を適正な頻度で行うことが可能な制御装置が、提供される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施の形態に係る作業機械の例である油圧ショベルを示す側面図である。
図2A】前記油圧ショベルの上部旋回体の周囲に設定される右旋回監視領域を示す平面図である。
図2B】前記油圧ショベルの上部旋回体の周囲に設定される左旋回監視領域を示す平面図である。
図3】前記油圧ショベルに搭載される油圧回路及びコントローラ等を示すブロック図である。
図4】前記コントローラの主要な機能を示すブロック図である。
図5】前記コントローラにより実行される処理を示すフローチャートである。
図6】上部旋回体の周囲に設定される右旋回監視領域及び左旋回監視領域の他の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0027】
図1及び図2A図2Bは、本発明の実施の形態に係る制御装置が搭載される作業機械を示す。ここに例示される前記作業機械は、油圧ショベルであり、地面Gの上を走行可能な下部走行体10と、前記下部走行体10に搭載される上部旋回体12と、上部旋回体12に搭載される作業装置14と、作業駆動装置と、を備える。
【0028】
前記下部走行体10は、支持本体の一例であり、右及び左にそれぞれ配置された一対の右クローラ11R及び左クローラ11Lを備える。前記右及び左クローラ11R,11Lのそれぞれは、前記下部走行体10が前記地面Gの上を走行するように動作する。
【0029】
前記上部旋回体12は、旋回体の一例であり、縦方向の旋回中心軸13回りの旋回動作が可能となるように前記下部走行体10に支持される。前記上部旋回体12は、旋回フレーム16と、その上に搭載される複数の要素と、を含む。前記複数の要素は、エンジンを収容するエンジンルーム17と、キャブ18と、を含む。前記キャブ18は、オペレータの搭乗を許容する運転室の一例であり、当該運転室は、例えば、少なくとも一部の側壁が省略されたキャノピタイプのものでもよい。前記旋回動作は、前記キャブ18内のオペレータから見て右方向に旋回する右旋回動作と左方向に旋回する左旋回動作とを含む。
【0030】
前記作業装置14は、ブーム21、アーム22及びバケット24を含む。前記ブーム21は、起伏動作が可能となるように前記旋回フレーム16の前端に支持される。前記アーム22は前記ブーム21に対して上下方向に回動することが可能となるように前記ブーム21の先端部に連結される。前記バケット24は、掘削作業等を行うための先端アタッチメントであり、前記アーム22に対して上下方向に回動することが可能となるように前記アーム22の先端部に取付けられる。
【0031】
図3は、前記作業機械に搭載される油圧回路、複数の対象検知器、操作ロック装置61、警報器62、表示装置64及びコントローラ70を示す。前記コントローラ70は、例えばマイクロコンピュータからなり、前記油圧回路に含まれる各要素の作動を制御する。一方、前記コントローラ70は、前記複数の対象検知器、前記警報器62及び前記表示装置64及びに電気的に接続されてこれらとともに制御装置を構成する。
【0032】
前記油圧回路は、ポンプユニット30、複数の油圧アクチュエータ、複数の制御弁、操作装置、複数の操作弁及び複数のパイロット圧センサを含む。
【0033】
前記ポンプユニット30は、複数の油圧ポンプを含み、当該複数の油圧ポンプは、少なくとも一つのメインポンプとパイロットポンプとを含む。前記複数の油圧ポンプは、駆動源である図略のエンジンに接続され、当該エンジンが出力する動力により駆動されて作動油を吐出する。
【0034】
前記複数の油圧アクチュエータは、それぞれが前記ポンプユニット30からの作動油の供給を受けて前記作業機械の可動部位を動かすものであり、図1に示される複数の作業用油圧シリンダ、すなわち、ブームシリンダ26、アームシリンダ27及びバケットシリンダ28と、図3に示される旋回モータ32、右走行モータ33及び左走行モータ34と、を含む。
【0035】
前記ブームシリンダ26は、作動油の供給を受けることにより、前記上部旋回体12に対して前記ブーム21に起伏動作を行わせるように伸縮する。前記アームシリンダ27は、作動油の供給を受けることにより、前記ブーム21に対して前記アーム22を上下方向に回動させるように伸縮する。前記バケットシリンダ28は、作動油の供給を受けることにより、前記アーム22に対して前記バケット24を上下方向に回動させるように伸縮する。
【0036】
前記旋回モータ32は、一対の右旋回ポート及び左旋回ポートを含み、当該右旋回及び左旋回ポートのうちの一方に作動油が供給されることにより、当該ポートに対応した方向(右旋回方向または左旋回方向)に前記上部旋回体12を旋回させるように動作する。
【0037】
前記右走行モータ33は、一対の右前進ポート及び右後進ポートを含み、当該右前進及び右後進ポートの一方に作動油が供給されることにより、当該ポートに対応した方向(前進方向または後進方向)に前記右クローラ11Rを動かすように動作する。同様に、前記左走行モータ34は、一対の左前進ポート及び左後進ポートを含み、当該左前進及び左後進ポートの一方に作動油が供給されることにより、当該ポートに対応した方向(前進方向または後進方向)に前記左クローラ11Lを動かすように動作する。
【0038】
前記複数の制御弁は、前記複数の油圧アクチュエータのそれぞれの動きの制御を可能とするように開閉動作をする弁であり、図3に示される旋回制御弁36、右走行制御弁37及び左走行制御弁38を含む。
【0039】
前記旋回制御弁36は、前記ポンプユニット30から前記旋回モータ32に供給される作動油の方向及び流量(旋回流量)を変化させるように開閉動作する。前記旋回制御弁36は、右旋回パイロットポート及び左旋回パイロットポートを含むパイロット操作式の方向切換弁により構成され、前記右旋回パイロットポートにパイロット圧が入力されると前記旋回モータ32の前記右旋回ポートに前記パイロット圧の大きさに対応した流量(右旋回流量)で作動油が供給されることを許容するように開弁し、逆に前記左旋回パイロットポートにパイロット圧が入力されると前記旋回モータ32の前記左旋回ポートに当該パイロット圧の大きさに対応した流量(左旋回流量)で作動油が供給されることを許容するように開弁する。
【0040】
前記右走行制御弁37は、前記ポンプユニット30から前記右走行モータ33に供給される作動油の方向及び流量(右走行流量)を変化させるように開閉動作する。前記右走行制御弁37は、右前進パイロットポート及び右後進パイロットポートを含むパイロット操作式の方向切換弁により構成され、前記右前進パイロットポートにパイロット圧が入力されると前記右走行モータ33の前記右前進ポートに前記パイロット圧の大きさに対応した流量(右前進流量)で作動油が供給されることを許容するように開弁し、逆に前記右後進パイロットポートにパイロット圧が入力されると前記右走行モータ33の前記右後進ポートに前記パイロット圧の大きさに対応した流量(右後進流量)で作動油が供給されることを許容するように開弁する。
【0041】
前記左走行制御弁38は、前記ポンプユニット30から前記左走行モータ34に供給される作動油の方向及び流量(左走行流量)を変化させるように開閉動作する。前記左走行制御弁38は、左前進パイロットポート及び左後進パイロットポートを含むパイロット操作式の方向切換弁により構成され、前記左前進パイロットポートにパイロット圧が入力されると前記左走行モータ34の前記左前進ポートに前記パイロット圧の大きさに対応した流量(左前進流量)で作動油が供給されることを許容するように開弁し、逆に前記左後進パイロットポートにパイロット圧が入力されると前記左走行モータ34の前記左後進ポートに前記パイロット圧の大きさに対応した流量(左後進流量)で作動油が供給されることを許容するように開弁する。
【0042】
前記複数の制御弁は、その他、前記ブームシリンダ26、前記アームシリンダ27及び前記バケットシリンダ28のそれぞれについて設けられる図略のブーム制御弁、アーム制御弁及びバケット制御弁を含む。
【0043】
前記操作装置は、前記作業機械を動かすための操作を受けて前記コントローラ70に操作信号を入力するものであり、前記複数の制御弁にそれぞれ対応する複数の操作器を含む。前記複数の操作器のそれぞれは、前記パイロットポンプに接続されるいわゆるリモコン弁により構成され、当該リモコン弁に与えられた操作に対応したパイロット圧が対応する制御弁に与えられることを許容するように開弁する。
【0044】
図3は、前記複数の操作器のうちの旋回操作器42、右走行操作器43及び左走行操作器44を示す。
【0045】
前記旋回操作器42は、旋回レバー及びこれに連結される旋回パイロット弁を含み、前記旋回パイロット弁は、前記旋回制御弁36の前記右旋回及び左旋回パイロットポートのうち前記旋回レバーに与えられる旋回操作の方向に対応したパイロットポートに当該旋回操作の大きさに対応した大きさのパイロット圧が供給されるように開弁する。前記右走行操作器43は、右走行レバー及びこれに連結される右走行パイロット弁を含み、前記右走行パイロット弁は、前記右走行制御弁37の前記右前進及び左前進パイロットポートのうち前記右走行レバーに与えられる右走行操作の方向に対応したパイロットポートに当該右走行操作の大きさに対応した大きさのパイロット圧が供給されるように開弁する。同様に、前記左走行操作器44は、左走行レバー及びこれに連結される左走行パイロット弁を含み、前記左走行パイロット弁は、前記左走行制御弁38の前記左前進及び左前進パイロットポートのうち前記左走行レバーに与えられる左走行操作の方向に対応したパイロットポートに当該左走行操作の大きさに対応した大きさのパイロット圧が供給されるように開弁する。
【0046】
前記複数の操作器は、前記旋回操作器42及び前記右走行及び左走行操作器43,44の他、前記ブーム21を動かすためのブーム操作を受けて前記ブーム制御弁へのパイロット圧の供給を許容するブーム操作器、前記アーム22を動かすためのアーム操作を受けて前記アーム制御弁へのパイロット圧の供給を許容するアーム操作器、及び、前記バケット24を動かすためのバケット操作を受けて前記バケット制御弁へのパイロット圧の供給を許容するバケット操作器を含む。前記ブーム操作、前記アーム操作及び前記バケット操作は、いずれも前記作業装置14を動かすための操作である。
【0047】
前記複数の操作弁のうち図3に示されるものは、前記旋回操作器42、前記右走行操作器43及び前記左走行操作器44と、これらの操作器にそれぞれ対応する前記旋回制御弁36、前記右走行制御弁37及び前記左走行制御弁38と、の間にそれぞれ介在し、前記コントローラ70による前記旋回パイロット圧及び前記右及び左走行パイロット圧の制限を可能にする。具体的に、前記複数の操作弁のそれぞれは電磁式の減圧弁により構成され、当該減圧弁は当該減圧弁に入力される制限指令に対応した度合いでパイロット圧の制限を行う。前記減圧弁のそれぞれは、例えば、電磁逆比例減圧弁(逆比例弁)であり、前記制限指令(励磁電流)が大きいほど大きな度合いで前記パイロット圧を制限する。前記減圧弁は、あるいは電磁比例減圧弁(比例弁)であってもよい。
【0048】
具体的に、前記複数の操作弁は、図3に示される右旋回操作弁46R及び左旋回操作弁46L、右前進走行操作弁47F及び右後進走行操作弁47B、並びに左前進走行操作弁48F及び左後進走行操作弁48Bを含む。
【0049】
前記右旋回操作弁46Rは、前記旋回操作器42と前記旋回制御弁36の前記右旋回パイロットポートとの間に介在し、前記旋回操作器42から前記右旋回パイロットポートに入力される右旋回パイロット圧を前記コントローラ70から前記右旋回操作弁46Rに入力される右旋回制限指令に対応した度合いで制限するように動作する。同様に、前記左旋回操作弁46Lは、前記旋回操作器42と前記旋回制御弁36の前記左旋回パイロットポートとの間に介在し、前記旋回操作器42から前記左旋回パイロットポートに入力される左旋回パイロット圧を前記コントローラ70から前記左旋回操作弁46Lに入力される左旋回制限指令に対応した度合いで制限するように動作する。
【0050】
前記右前進走行操作弁47Fは、前記右走行操作器43と前記右走行制御弁37の前記右前進パイロットポートとの間に介在し、前記右走行操作器43から前記右前進パイロットポートに入力される右前進パイロット圧を前記コントローラ70から前記右前進走行操作弁47Fに入力される右前進走行制限指令に対応した度合いで制限するように動作する。同様に、前記右後進走行操作弁47Rは、前記右走行操作器43と前記右走行制御弁37の前記右後進パイロットポートとの間に介在し、前記右走行操作器43から前記右後進パイロットポートに入力される右後進パイロット圧を前記コントローラ70から前記右後進走行操作弁47Rに入力される右後進走行制限指令に対応した度合いで制限するように動作する。
【0051】
前記左前進走行操作弁48Fは、前記左走行操作器44と前記左走行制御弁38の前記左前進パイロットポートとの間に介在し、前記左走行操作器44から前記左前進パイロットポートに入力される左前進パイロット圧を前記コントローラ70から前記左前進走行操作弁48Fに入力される左前進走行制限指令に対応した度合いで制限するように動作する。同様に、前記左後進走行操作弁48Rは、前記左走行操作器44と前記左走行制御弁38の前記左後進パイロットポートとの間に介在し、前記左走行操作器44から前記左後進パイロットポートに入力される左後進パイロット圧を前記コントローラ70から前記左後進走行操作弁48Rに入力される左後進走行制限指令に対応した度合いで制限するように動作する。
【0052】
前記複数のパイロット圧センサのそれぞれは、前記旋回操作、前記右走行操作及び前記左走行操作のそれぞれの方向及び大きさ(操作量)を検出するための操作量検出器である。具体的に、当該複数のパイロット圧センサのそれぞれは圧力センサにより構成され、前記旋回制御弁36、前記右走行制御弁37及び前記左走行制御弁38のそれぞれに入力されるパイロット圧を検出して当該パイロット圧の大きさに対応した検出信号、つまり前記対象操作量に対応する検出信号、を前記コントローラ70に入力する。具体的に、前記複数のパイロット圧センサは、前記右旋回パイロット圧を検出する右旋回パイロット圧センサ52Rと、前記左旋回パイロット圧センサを検出する左旋回パイロット圧センサ52Lと、前記右前進パイロット圧を検出する右前進パイロット圧センサ53Fと、前記右後進パイロット圧を検出する右後進パイロット圧センサ53Bと、前記左前進パイロット圧を検出する左前進パイロット圧センサ54Fと、前記左後進パイロット圧を検出する左後進パイロット圧センサ54Bと、を含む。
【0053】
前記油圧回路において、前記旋回モータ32、前記旋回制御弁36及び前記右旋回及び左旋回操作弁46R,46Lは、前記ポンプユニット30とともに、前記上部旋回体12を旋回させるための旋回駆動回路を構成する。同様に、前記右走行モータ33、前記右走行制御弁37及び前記右前進及び右後進走行操作弁47F,47Bは、前記ポンプユニット30とともに、前記右クローラ11Rを動かすための右走行駆動回路を構成し、前記左走行モータ34、前記左走行制御弁38及び前記左前進及び左後進走行操作弁48F,48Bは、前記ポンプユニット30とともに、前記左クローラ11Lを動かすための左走行駆動回路を構成する。
【0054】
前記複数の対象検知器は、前記作業機械の特定部位にそれぞれ配置され、前記作業機械の周囲に存在する監視対象を検知するとともに、当該特定部位から前記監視対象までの距離を含む位置情報を取得することを可能にする検知信号を生成して前記コントローラ70に入力する。前記複数の対象検知器のそれぞれは、例えば、単眼カメラ、ステレオカメラといった撮像装置により構成され、前記監視対象を含む撮影画像を生成する。
【0055】
具体的に、前記複数の対象検知器は、図2に示される例では右対象検知器60R、左対象検知器60L及び後対象検知器60Bを含み、これらは前記上部旋回体12に配置されている。前記右対象検知器60Rは、少なくとも前記上部旋回体12の右側方に位置する監視対象を検知することが可能となるように当該上部旋回体12の右側部に配置され、前記左対象検知器60Lは、少なくとも前記上部旋回体12の左側方に位置する監視対象を検知することが可能となるように当該上部旋回体12の左側部に配置され、前記後対象検知器60Bは、少なくとも前記上部旋回体12の後方に位置する監視対象を検知することが可能となるように当該上部旋回体12の後端部に配置される。
【0056】
前記操作ロック装置61は、図示されないゲートロックレバー及び指令信号生成器を含む。前記操作ロックレバーは、例えば、前記運転室である前記キャブ18における乗降口を遮蔽する閉位置(アンロック位置)と当該乗降口を開通する開位置(ロック位置)とに切換えられることが可能となるように設けられる。前記指令信号生成器は、例えば前記操作ロックレバーの位置を検知するレバー位置センサにより構成され、前記ゲートロックレバーが前記開位置にあるときのみに操作ロック信号を生成して当該操作ロック信号を前記コントローラ70に入力する。前記操作ロック信号は、前記複数の操作器のそれぞれに与えられる前記操作をすべて無効にする、つまり当該操作の有無にかかわらず前記作業機械の動作を不能にする、ための信号である。
【0057】
前記警報器62は、前記コントローラ70から警報指令が入力されたときに警報を発出する。当該警報は、後に詳述するように、前記作業機械と前記監視対象との相互接近を抑制するためにオペレータに対して発出される。前記警報器62は、音による警報を行うもの、例えばブザー、でもよいし、光による警報を行うもの、例えば警報ランプでもよい。
【0058】
前記表示装置64は、前記監視対象を含む周辺画像を表示することが可能な画面を有するとともに、当該画面をオペレータが視認することが可能となるように前記キャブ(運転室)18内に配置される。前記表示装置64は、前記コントローラ70から入力される表示指令信号に対応した画像の表示を行う。
【0059】
前記コントローラ70は、前記対象検知器60R,60L,60Bのそれぞれから入力される画像信号に基づいて前記作業機械の周辺における監視対象の存否の判定、及び、監視対象が存在する場合の当該監視対象の位置の特定を行い、さらに、その特定された位置に基づいて抑制制御を実行する。前記抑制制御は、前記作業機械と前記監視対象との接近を抑制する(詳しくは過度の接近を防ぐ)ための対象動作についての制御である。前記対象動作は、この実施の形態では、前記右クローラ11R及び前記左クローラ11Lによる走行動作と、前記下部走行体10に対する前記上部旋回体12の旋回動作と、の少なくとも一方を含み得る。
【0060】
前記対象動作は、あるいは、前記作業装置14の動作、例えば前記ブーム21の起伏動作及び前記アーム22の回動動作を含んでもよい。逆に、この実施の形態のように、前記作業装置14において行われる作業動作、特に前記運転室(この実施形態では前記キャブ18)の前方において行われる動作であって当該運転室に搭乗するオペレータから視認されることが可能な動作、が前記対象動作から除外されてもよい。このように、前記監視対象の有無や位置にかかわらず前記作業装置14と監視対象の接近を抑制するための作業制限制御の実行を控えることは、前記作業機械の安全性を確保しながら当該作業機械の動作を制限する制御の実行の頻度をさらに下げることを可能にする。前記作業制限制御は、前記作業装置14の実際の動きを制限する制御の他、例えばオペレータに警報を発して前記作業動作の抑制を促すことにより間接的に前記作業動作を制限する制御制御も含む。
【0061】
前記対象検知器60R,60L,60Bにより検知される前記監視対象の位置は、例えば、前記作業機械において設定された基準位置に対する前記監視対象の相対位置である。前記基準位置は、例えば、前記対象検知器60R,60L,60Bがそれぞれ配設される位置、すなわち前記特定部位の位置、である。
【0062】
この実施の形態に係る前記抑制制御は、強制停止制御、警報制御及び表示制御を含む。前記強制停止制御は、前記対象動作を強制的に停止させる制御である。前記警報制御は、前記対象動作の抑制を促すための警報を前記警報器62からオペレータに発出させる制御である。前記表示制御は、前記監視対象の検知に基づいて前記表示装置64に警告画像を表示させる制御である。
【0063】
前記コントローラ70は、前記抑制制御を実行するための、図4に示されるような複数の機能を備え、当該複数の機能は、位置情報生成部72、抑制制御判定部74、旋回制限指令部76、走行制限指令部78、警報指令部82及び表示指令部84を含む。これらの機能は、例えば、前記コントローラ70に含まれるCPUが当該コントローラ70に含まれるメモリに予め格納されたプログラムを実行することにより、実現される。
【0064】
前記位置情報生成部72は、前記対象検知器60R,60L,60Bのそれぞれから入力される画像信号を周期的に(具体的には予め設定されたサンプリング周期が経過するごとに)取り込み、当該画像信号を処理することにより、当該対象検知器60R,60L,60Bの撮影範囲内における監視対象の存否の判別、及び、監視対象が存在する場合の当該監視対象の前記基準位置(この実施の形態では前記対象検知器60R,60L,60Bのそれぞれが配置されている位置)に対する相対位置、すなわち前記作業機械に対する前記監視対象の相対位置、の特定を行い、当該相対位置についての情報である位置情報を生成する。すなわち、前記位置情報生成部72は、前記対象検知器60R,60L,60Bとともに、前記位置情報を取得する位置情報取得部を構成する。前記監視対象は、少なくとも人(作業員)を含むことが好ましく、人以外の物を含んでもよい。
【0065】
前記抑制制御判定部74は、前記位置情報生成部72により生成される前記位置情報に基づいて前記抑制制御の実行の要否を特定する。具体的に、前記抑制制御判定部74は、前記抑制制御が必要であると判定した場合に、前記抑制制御の対象となる動作(この実施の形態では前記旋回動作及び前記走行動作のうちの少なくとも一方)を特定するとともに、その対象動作に対応する制御内容を特定する。
【0066】
この実施の形態では、前記旋回動作についての前記抑制制御の実行の要否の判断のために図2Aに示される右旋回監視領域及び図2Bに示される左旋回監視領域が予め設定され、これらの監視領域に関する情報を前記コントローラ70が格納する。前記右旋回監視領域は、図2Aに示されるように前記上部旋回体12が右旋回動作をする時に用いられる監視領域であり、前記上部旋回体12と一体に右旋回するように設定されている。同様に、前記左旋回監視領域は、図2Bに示されるように前記上部旋回体12が左旋回動作をする時に用いられる監視領域であり、前記上部旋回体12と一体に左旋回するように設定されている。つまり、前記上部旋回体12と前記右旋回監視領域及び前記左旋回監視領域との相対位置関係は当該上部旋回体12の旋回動作にかかわらず常に一定に保たれる。
【0067】
前記抑制制御判定部74は、図2Aに示される前記右旋回動作中においては、前記監視対象が前記右旋回監視領域内に位置するときにのみ前記抑制制御の実行を決定し、前記監視対象が前記右旋回監視領域内に位置しないときは前記抑制制御の実行を保留する。同様に、前記抑制制御判定部74は、図2Bに示される前記左旋回動作中においては、前記監視対象が前記左旋回監視領域内に位置するときにのみ前記抑制制御の実行を決定し、前記監視対象が前記左旋回監視領域内に位置しないときは前記抑制制御の実行を保留する。
【0068】
前記右旋回監視領域は、図2Aに示されるように、右前領域部分91、左後領域部分92及び後方領域部分90を含む。同様に、前記左旋回監視領域は、図2Bに示されるように、左前領域部分93、右後領域部分94及び前記後方領域部分90を含む。つまり、前記後方領域部分90は前記右旋回監視領域と前記左旋回監視領域とに共有されている。
【0069】
前記右旋回監視領域の前記右前領域部分91及び前記左旋回監視領域の前記右後領域部分94はともに前記右対象検知器60Rの検知範囲内に設定されている。具体的に、図2Aでは、前記右対象検知器60Rの検知範囲の内側端(前記上部旋回体12の前記右側面に近い側の端)が二点鎖線66Rで示されており、当該内側端が前記右前領域部分91及び前記右後領域部分94の内側面を画定している。従って、前記右前領域部分91及び前記右後領域部分94に位置する監視対象は共通の前記右対象検知器60Rによって検知されることが可能である。
【0070】
同様に、前記左旋回監視領域の前記左前領域部分93及び前記右旋回監視領域の前記左後領域部分92はともに前記左対象検知器60Lの検知範囲内に設定されている。具体的に、図2Bでは、前記左対象検知器60Lの検知範囲の内側端(前記上部旋回体12の前記左面に近い側の端)が二点鎖線66Lで示されており、当該内側端が前記左前領域部分93及び前記左後領域部分92の内側面を画定している。従って、前記左前領域部分93及び前記左後領域部分92における監視対象は共通の前記左対象検知器60Lによって検知されることが可能である。
【0071】
また、前記右旋回監視領域及び前記左旋回監視領域に共有される前記後方領域部分90は、前記後対象検知器60Bの検知範囲内に設定されている。具体的に、図2A及び図2Bでは、前記後対象検知器60Bの検知範囲の内側面(前記上部旋回体12の後端面に近い側の端)が二点鎖線66Bで示されており、当該内側端が前記後方領域部分90の内側端を画定している。従って、右旋回動作及び左旋回動作のいずれにおいても前記後方領域部分90に位置する監視対象は前記後対象検知器60Bによって検知されることが可能である。
【0072】
前記右旋回監視領域の前記右前領域部分91は、前記上部旋回体12の右前側面の右側方に設定された領域部分であり、前記右側側面は、前記上部旋回体12の右側面のうち前記上部旋回体12の前後方向について前記旋回中心軸13より前側(図2Aでは上側)に位置する側面である。前記右前領域部分91は、主として、前記内側面と、後端面91aと、外周面91bと、によって画定される。
【0073】
前記後端面91aは、旋回中心面15に沿う平面であり、前記旋回中心面15は図2Aに一点鎖線で示されるように前記旋回中心軸13を通って前記上部旋回体12の左右方向に延びる鉛直面である。「旋回中心面15に沿う」とは、前記後端面91aが前記旋回中心面15と合致する態様の他、当該後端面91aが当該旋回中心面15の近傍において当該旋回中心面15と略平行に延びる態様も含む。従って、前記右前領域部分91は、前記上部旋回体12の前記右前側面の右側方に位置する部分に加えて当該部分から後側にはみ出た部分を含んでいてもよい。以上のような前記後端面91aの設定は、前記上部旋回体12の前記右旋回動作に伴う当該上部旋回体12の右前側面と監視対象との接近を有効に抑止しながら、前記旋回中心面15よりも後側に監視対象が位置していて当該監視対象と前記右後側面との接近のおそれが低い状況での前記右旋回動作を前記抑制制御の対象から除外して当該抑制制御の実行の頻度を抑えることを可能にする。
【0074】
前記外周面91bは、平面視において前記旋回中心軸13を中心とする円弧状をなす曲面であり、当該外周面91bは前記上部旋回体12の右旋回に伴う当該上部旋回体の右前角部121の旋回軌跡よりも前記上部旋回体12の旋回半径方向について外側に位置する。つまり、前記外周面91bは前記右前角部121の旋回半径よりも大きな半径を有する。このことは、前記右前角部121と前記右前領域部分91内に位置する監視対象との接近がより確実に抑止されることを可能にする。
【0075】
前記右旋回監視領域の前記左後領域部分92は、前記上部旋回体12の左後側面の左側方に設定された領域部分であり、前記左後側面は、前記上部旋回体12の左側面のうち前記上部旋回体12の前後方向について前記旋回中心軸13より後側(図2Aでは下側)に位置する側面である。前記左後領域部分92は、主として、前記内側面と、前端面92aと、外周面92bと、によって画定される。
【0076】
前記前端面92aは、前記旋回中心面15に沿う平面である。「旋回中心面15に沿う」とは、前記前端面92aが前記旋回中心面15と合致する態様の他、当該前端面92aが当該旋回中心面15の近傍において当該旋回中心面15と略平行に延びる態様も含む。従って、前記左後領域部分92は、前記上部旋回体12の前記左後側面の側方に位置する部分に加えて当該部分から前側にはみ出た部分を含んでいてもよい。以上のような前記前端面92aの設定は、前記上部旋回体12の前記右旋回動作に伴う当該上部旋回体12の左後側面と監視対象との接近を有効に抑止しながら、前記旋回中心面15よりも前側に監視対象が位置していて当該監視対象と前記左前側面との接近が生じない状況での前記右旋回動作を前記抑制制御の対象から除外して当該抑制制御の実行の頻度を抑えることを可能にする。
【0077】
前記外周面92bは、平面視において前記旋回中心軸13を中心とする円弧状をなす曲面であり、当該外周面92bは前記上部旋回体12の右旋回に伴う当該上部旋回体の左後角部122の旋回軌跡よりも前記上部旋回体12の旋回半径方向について外側に位置する。つまり、前記外周面92bは前記左後角部122の旋回半径よりも大きな半径を有する。このことは、前記左後角部122と前記左後領域部分92内に位置する監視対象との接近がより確実に抑止されることを可能にする。
【0078】
前記左旋回監視領域の前記左前領域部分93は、前記上部旋回体12の左前側面の左側方に設定された領域部分であり、前記左前側面は、前記上部旋回体12の左側面のうち前記上部旋回体12の前後方向について前記旋回中心軸13より前側(図2Bでは上側)に位置する側面である。前記左前領域部分93は、主として、前記内側面と、後端面93aと、外周面93bと、によって画定される。
【0079】
前記後端面93aは、前記旋回中心面15に沿う平面である。「旋回中心面15に沿う」とは、前記後端面93aが前記旋回中心面15と合致する態様の他、当該後端面93aが当該旋回中心面15の近傍において当該旋回中心面15と略平行に延びる態様も含む。従って、前記左前領域部分93は、前記上部旋回体12の前記左前側面の側方に位置する部分に加えて当該部分から後側にはみ出た部分を含んでいてもよい。以上のような前記後端面93aの設定は、前記上部旋回体12の前記左旋回動作に伴う当該上部旋回体12の左前側面と監視対象との接近を有効に抑止しながら、前記旋回中心面15よりも後側に監視対象が位置していて当該監視対象と前記左後側面との接近が生じない状況での前記左旋回動作を前記抑制制御の対象から除外して当該抑制制御の実行の頻度を抑えることを可能にする。
【0080】
前記外周面93bは、平面視において前記旋回中心軸13を中心とする円弧状をなす曲面であり、当該外周面93bは前記上部旋回体12の左旋回に伴う当該上部旋回体の左前角部123の旋回軌跡よりも前記上部旋回体12の旋回半径方向について外側に位置する。つまり、前記外周面93bは前記左前角部123の旋回半径よりも大きな半径を有する。このことは、前記左前角部123と前記左前領域部分93内に位置する監視対象との接近がより確実に抑止されることを可能にする。
【0081】
前記左旋回監視領域の前記右後領域部分94は、前記上部旋回体12の右後側面の右側方に設定された領域部分であり、前記右後側面は、前記上部旋回体12の右側面のうち前記上部旋回体12の前後方向について前記旋回中心軸13より後側(図2Aでは下側)に位置する側面である。前記右後領域部分94は、主として、前記内側面と、前端面94aと、外周面94bと、によって画定される。
【0082】
前記前端面94aは、前記旋回中心面15に沿う平面である。「旋回中心面15に沿う」とは、前記前端面94aが前記旋回中心面15と合致する態様の他、当該前端面94aが当該旋回中心面15の近傍において当該旋回中心面15と略平行に延びる態様も含む。従って、前記右後領域部分94は、前記上部旋回体12の前記右後側面の側方に位置する部分に加えて当該部分から前側にはみ出た部分を含んでいてもよい。以上のような前記前端面94aの設定は、前記上部旋回体12の前記左旋回動作に伴う当該上部旋回体12の右後側面と監視対象との接近を有効に抑止しながら、前記旋回中心面15よりも前側に監視対象が位置していて当該監視対象と前記右前側面との接近が生じない状況での前記左旋回動作を前記抑制制御の対象から除外して当該抑制制御の実行の頻度を抑えることを可能にする。
【0083】
前記外周面94bは、平面視において前記旋回中心軸13を中心とする円弧状をなす曲面であり、当該外周面94bは前記上部旋回体12の左旋回に伴う当該上部旋回体の右後角部124の旋回軌跡よりも前記上部旋回体12の旋回半径方向について外側に位置する。つまり、前記外周面94bは前記右後角部124の旋回半径よりも大きな半径を有する。このことは、前記右後角部124と前記右後領域部分94内に位置する監視対象との接近がより確実に抑止されることを可能にする。
【0084】
前記左旋回監視領域及び前記右旋回監視領域の双方に含まれる前記後方領域部分90は、前記上部旋回体12の後端面の後方に設定された領域部分であり、主として前記内側面と外周面90bとによって画定される。前記外周面90bは、平面視において前記旋回中心軸13を中心とする円弧状をなす曲面であり、当該外周面90bは前記上部旋回体12の右旋回及び左旋回のそれぞれに伴う当該上部旋回体12の右後角部124及び前記左後角部123の旋回軌跡よりも前記上部旋回体12の旋回半径方向について外側に位置する。つまり、前記外周面90bは前記右後角部124及び前記左後角部123の旋回半径よりも大きな半径を有する。このことは、前記右後角部124または前記左後角部123と前記後方領域部分90内に位置する監視対象との接近が抑止されることを可能にする。
【0085】
前記旋回制限指令部76は、前記抑制制御判定部74により前記旋回動作についての前記抑制制御の実行が判定されたときに、旋回制限指令信号を生成する。前記旋回制限指令信号は、前記右旋回動作及び前記左旋回動作のうち前記抑制制御の対象として指定された旋回動作を減速させるための信号である。具体的に、前記旋回制限指令部76は、前記右旋回操作弁46R及び前記左旋回操作弁46Lのうち前記強制停止制御の対象となる方向の旋回動作に対応する操作弁(例えば右旋回動作が対象の場合には右旋回操作弁46R)に前記旋回制限指令信号を入力する。
【0086】
一方、前記抑制制御判定部74は、前記抑制制御の対象動作に前記走行動作が含まれると判定した場合に、当該走行動作についての抑制制御の内容を特定する。当該走行動作の抑制制御の実行の要否の判定及び制御の内容は任意に設定されることが可能である。当該抑制制御の実行の要否は、例えば、前記右旋回監視領域及び前記左旋回監視領域と同様に前記走行動作について設定された監視領域(例えば前記下部走行体10からその走行方向に延長された領域)における監視対象の存否に基づいて判定されてもよいし、単純に前記対象検知器60R,60L,60Bのうち前記監視対象を検知した対象検知器から当該監視対象までの距離の大小に基づいて判定されてもよい。また、前記走行動作についての前記抑制制御は、前記強制停止制御、前記警告制御、前記表示制御の少なくとも一部を含むのが好ましく、あるいはこれら以外の制御を含んでもよい。
【0087】
前記走行制限指令部78は、走行制限指令信号を生成する。前記抑制制御判定部74により前記走行動作についての抑制制御として強制停止制御の実行が決定されたときに、走行制限指令信号を生成する。すなわち、前記走行制限指令信号は、前記作業機械と前記監視対象との接近を伴う方向の走行動作を減速させるための信号である。前記走行制限指令部78は、具体的には、前記右前進走行操作弁47F、前記右後進走行操作弁47B、前記左前進走行操作弁48F及び前記左後進走行操作弁48Bのうち前記強制停止の対象となる走行動作に対応する操作弁に前記走行制限指令信号を入力する。
【0088】
前記警報指令部82は、前記抑制制御判定部74により前記抑制制御として警報制御の実行が決定された場合に、当該警報制御のための警報指令信号を生成し、当該警報指令信号を前記警報器62に入力することにより当該警報器62からオペレータに警報を発出させる。前記旋回動作についての前記警報制御は、前記右旋回動作時と前記左旋回動作時とで異なっていてもよい。例えば、右旋回時と左旋回時とで異なる色のランプを点灯させる制御であってもよいし、前記警報器62を構成するスピーカから異なる音声でのメッセージを出力させる制御であってもよい。
【0089】
前記表示指令部84は、前記抑制制御判定部74により前記抑制制御が必要と判定された場合に表示指令信号を生成し、当該表示指令信号を前記表示装置64に入力することにより、警告画像を前記表示装置64に表示させる。前記警告画像は、例えば、前記対象検知器60R,60L,60Bによる撮影画像であって前記監視対象を含む周辺画像である。前記対象動作が前記旋回動作を含む場合、前記警告画像は、前記旋回方向に応じて前記右旋回監視領域または前記左旋回監視領域を選択的に含むことが、より好ましい。
【0090】
一方、前記コントローラ70は、前記操作ロック装置61から前記操作ロック信号が入力されている場合、すなわち前記操作ロックレバーが前記開位置(ロック位置)にある場合、に図3に示される前記旋回操作器42、前記右走行操作器43及び前記左走行操作器44を含む前記複数の操作器の全てと前記パイロットポンプとの間に介在する開閉弁を閉弁させ、これにより、前記複数の操作器に与えられるすべての操作を無効にする。つまり、前記作業機械の動作を強制的に不能にする。
【0091】
さらに、前記コントローラ70の前記抑制制御判定部74は、前記操作ロックレバーが前記開位置にあって前記操作ロック装置61から前記操作ロック信号が入力されているときは、前記監視対象の検知の有無にかかわらず前記抑制動作の実行を保留するように構成されている。なお、前記操作ロック信号が入力されているときは前記作業機械が停止しているために前記強制停止制御の実効性はなく、よって、実質的に前記実行の保留の対象となるのは前記抑制制御のうちの前記警報制御及び前記表示制御である。
【0092】
次に、前記コントローラ70により行われる処理であって前記旋回動作についての前記抑制制御に関する処理を、図5のフローチャートを参照しながらより具体的に説明する。
【0093】
前記コントローラ70の前記位置情報生成部72は、予め設定された前記サンプリング周期(例えば50ms)が経過する度に前記対象検知器60R,60L,60Bから入力される画像信号(検知信号)を取り込んで当該画像信号に基づき位置情報を取得する(ステップS10)。詳しくは、前記位置情報生成部72は前記画像信号を処理することにより監視対象の位置情報を生成する。前記位置情報は、前記上部旋回体12に対する前記監視対象の相対位置を特定するものであり、前記右旋回監視領域及び前記左旋回監視領域のそれぞれにおける前記監視対象の存否の判定を可能にする情報である。
【0094】
前記コントローラ70の前記抑制制御判定部74は、前記操作ロック装置61から前記操作ロック信号が入力されておらず(ステップS11でNO)、かつ、前記旋回操作器42に前記旋回操作(右旋回操作または左旋回操作)が与えられた場合にのみ(ステップS12でYES)、ステップS14以下の処理、すなわち、前記旋回操作に対応する旋回方向に応じた監視領域の選定及びその選定された監視領域(右旋回監視領域または左旋回監視領域)に基づく抑制制御の実行を行う。前記旋回操作の有無及び旋回方向の判別は、前記旋回パイロット圧センサ52R,52Lのそれぞれから入力される検出信号によって行われることが可能である。
【0095】
前記操作ロック装置61から前記操作ロック信号が入力されている場合(ステップS11でYES)、前記抑制制御判定部74は前記抑制制御を含む前記ステップS14以下の処理を保留する。このことは、前記旋回操作の有無にかかわらず前記旋回動作が行われる可能性がない状態においてまで前記抑制制御が実行されるのを防いで当該実行の頻度の適正な抑制を可能にする。特に、前記警報制御の実行の保留は、当該警報制御が頻繁に実行されて前記警報の効力が低下することを防ぐのに有効である。
【0096】
前記旋回操作がされていて当該旋回操作が右旋回操作である場合(ステップS12及びステップS14のそれぞれでYES)、前記抑制制御判定部74は、前記右旋回監視領域に監視対象が位置するか否かを判定する(ステップS16R)。当該判定は、この実施の形態では、図2Aに示される右前領域部分91、左後領域部分92、及び後方領域部分90のうちの何れかに前記監視対象が位置するか否かの判定である。前記抑制制御判定部74は、前記右旋回監視領域に監視対象が位置すると判定した場合にのみ(ステップS16RでYES)前記右旋回動作についての抑制制御の実行を決定する(ステップS18R)。この決定に伴って前記右旋回動作についての前記抑制制御が実行される。具体的には、前記旋回制限指令部76から前記右旋回操作弁46Rに右旋回制限指令信号が入力され、前記警報指令部82から前記警報器62に警報指令信号が入力され、前記表示指令部84から表示指令信号が入力される。
【0097】
前記右旋回監視領域に監視対象が位置しないと判定した場合(ステップS16RでNO)、前記抑制制御判定部74は前記右旋回動作についての前記抑制制御の実行を保留する。前記右旋回監視領域に監視対象が位置しない場合としては、何らの監視対象も検知されていない場合のみならず、監視対象は検知されているが当該監視対象が前記右旋回監視領域には位置していない場合も含み、後者の場合には、前記監視対象が前記左旋回監視領域には位置しているが前記右旋回監視領域には位置していない場合、例えば前記監視対象が前記前記左前領域部分93または前記右後領域部分94に位置する場合、も含まれる。
【0098】
前記旋回操作が右旋回操作ではない場合(ステップS14でNO)すなわち左旋回操作である場合、前記抑制制御判定部74は、前記左旋回監視領域に監視対象が位置するか否かを判定する(ステップS16L)。当該判定は、この実施の形態では、図2Bに示される左前領域部分93、右後領域部分94、及び後方領域部分90のうちの何れかに前記監視対象が位置するか否かの判定である。前記抑制制御判定部74は、前記左旋回監視領域に監視対象が位置すると判定した場合にのみ(ステップS16LでYES)前記左旋回動作についての抑制制御の実行を決定する(ステップS18L)。この決定に従って前記左旋回動作についての前記抑制制御が実行される。具体的には、前記旋回制限指令部76から前記左旋回操作弁46Lに左旋回制限指令信号が入力され、前記警報指令部82から前記警報器62に警報指令信号が入力され、前記表示指令部84から表示指令信号が入力される。
【0099】
前記左旋回監視領域に監視対象が位置しないと判定した場合(ステップS16LでNO)、前記抑制制御判定部74は前記左旋回動作についての前記抑制制御の実行を保留する。前記左旋回監視領域に監視対象が位置しない場合としては、何らの監視対象も検知されていない場合のみならず、監視対象は検知されているが当該監視対象が前記左旋回監視領域には位置していない場合も含み、後者の場合には、前記監視対象が前記右旋回監視領域には位置しているが前記左旋回監視領域には位置していない場合、例えば前記監視対象が前記右前領域部分91または前記左後領域部分92に位置する場合、も含まれる。
【0100】
以上説明した抑制制御の実行の要否の判定は、予め設定された前記右旋回監視領域及び前記左旋回監視領域のうち前記上部旋回体12の旋回方向に対応したものを選定してその選定した監視領域に監視対象が位置するか否かを判断するのみの簡単な構成で、前記上部旋回体12と監視対象との接近のおそれが高い状況においてのみ前記旋回動作の抑制を行うこと、及び、前記接近のおそれが低い状況では前記旋回動作の抑制を保留することを可能にする。例えば図2A図2Bに示される位置P1に監視対象が検知された場合、当該位置P1は前記右旋回監視領域の前記右前領域部分91内にあるために右旋回動作についての抑制制御は実行されるが、当該位置P1は前記左旋回監視領域の外側にあり、実際にも前記左旋回動作に伴って前記位置P1から前記上部旋回体12の前記右前側面が離れるので、左旋回動作についての抑制制御は保留される。同様に、図2A図2Bに示される位置P2に監視対象が検知された場合、当該位置P2は前記左旋回監視領域の前記左前領域部分93内にあるために左旋回動作についての抑制制御は実行されるが、当該位置P2は前記右旋回監視領域の外側にあり、実際にも前記右旋回動作に伴って前記位置P2から前記上部旋回体12の前記左前側面が離れるので、右旋回動作についての抑制制御は保留される。このように、前記右旋回監視領域及び前記左旋回監視領域に基づく前記抑制制御の実行の要否の判断は、前記上部旋回体12の旋回方向に対応した前記接近の可能性の大小と適合している。
【0101】
また、この実施の形態では、前記右旋回監視領域及び前記左旋回監視領域が前記後方領域部分90を共有しているので、監視対象が前記上部旋回体12の後方に位置する場合には、前記旋回方向を問わず前記抑制制御を実行して前記監視対象と前記上部旋回体12の後端部分との接近を抑制することが可能である。
【0102】
本発明において、前記右旋回監視領域及び前記左旋回監視領域の具体的な形状や大きさは限定されず、旋回体(図2では前記上部旋回体12)の具体的な形状及び大きさ、対象検知器の検知範囲、に応じて任意に設定されることが可能である。例えば、図6に示される油圧ショベルでは、平面視において上部旋回体12の後端が旋回中心軸13を中心とする円弧状とされて当該後端の突出量が抑えられた後方小旋回型となっており、図2A図2Bの上部旋回体12に比べて後部近傍の領域に余裕があるが、当該後部に対応して設定される左後領域部分92、右後領域部分94及び後方領域部分90のそれぞれの外周面92b,94b,90bの半径は、前記上部旋回体12の前部に対応して設定される右前領域部分91及び左前領域部分93のそれぞれの外周面91b,93bの半径と同等に設定されている。前記外周面92b,94b,90bの半径は、これとは逆に、前記外周面91b,93bの半径よりも小さく(例えば上部旋回体12の後方に向かうに従って減少するような半径に)設定されてもよい。
【0103】
また、図6に示される前記上部旋回体12では、当該上部旋回体12の後端に補助ウエイト19が後ろ向きに突設されているが、この補助ウエイト19の突出量が大きくて支配的となる場合には当該補助ウエイト19の後端面を基準に前記左後領域部分92、前記右後領域部分94及び前記後方領域部分90のそれぞれの外周面92b,94b,90bの半径が設定されてもよい。
【0104】
本発明は、その他、例として次のような態様を包含する。
【0105】
(1)抑制制御について
本発明に係る抑制制御は、監視対象が右旋回時に設定される右旋回監視領域または左旋回時に設定される左旋回監視領域に位置するときに対象動作を抑制するものであればよく、当該条件を満たす範囲で自由に設定されることが可能である。例えば、前記抑制制御には、前記実施の形態に係る前記強制停止制御、前記警報制御及び前記表示制御のうちの一部のみが選定されてもよいし、それ以外の制御、例えば前記対象動作の実際の速度をオペレータにより与えられた操作の大きさ(操作量)に対応する速度よりも小さくする速度抑制制御、を含んでもよい。
【0106】
本発明は、図3に示される前記操作ロック装置61を含まない作業機械にも適用されることが可能であり、また、当該操作ロック装置61を含む作業機械においても、前記操作ロック信号の入力の有無と前記抑制制御の実行の要否の判断とは切り離されていてもよい。すなわち、本発明に係る制御部は、右旋回時及び左旋回時のそれぞれにおいて監視対象が右旋回監視領域及び左旋回監視領域にそれぞれ位置する場合には前記操作ロック信号が入力の有無にかかわらず前記抑制制御を実行するように構成されてもよい。
【0107】
(2)右旋回監視領域及び左旋回監視領域について
本発明に係る右旋回監視領域及び左旋回監視領域は、それらの少なくとも一部が互いに異なっていればよく、図2A図2B及び図6に示される前記後方領域部分90のように両監視領域に共通の領域部分を含む態様を除外しない。このように右旋回監視領域及び左旋回監視領域に共用される部分は前記後方領域部分90に限らず、右旋回及び左旋回の双方において警戒すべき領域であればよい。
【0108】
図2A図2Bでは、前記上部旋回体12の右及び左前角部121,123を基準に右前領域部分91及び左前領域部分93の外周面91b,93bの半径が設定されているが、前記運転室(図2A図2Bに示される例では前記キャブ18)内のオペレータからみて作業装置14の裏側に死角がある場合にはこれを考慮して前記右前領域部分91乃至前記左前領域部分93の前記外周面91b,93個々の半径が前記作業装置14の監視対象部位の旋回半径まで拡大されてもよい。また、このような右旋回監視領域及び左旋回監視領域の具体的な形状及び大きさは、適用される作業機械の機種(例えばショベル、クレーン、破砕機、高所作業車)に対応して自由に設定されることが可能である。
【0109】
(3)位置情報及び位置情報取得部について
本発明に係る位置情報は、作業機械に対する監視対象の相対位置についての情報であって、当該監視対象と右旋回監視領域及び左旋回監視領域との相対位置関係を把握することを可能にする情報であればよい。例えば、前記下部走行体10に対する前記上部旋回体12の旋回角度を検出する旋回角度センサが備えられて当該旋回角度センサにより検出される旋回角度と前記上部旋回体12に搭載される対象検知器による検知結果とに基づいて前記監視対象の位置座標が特定されてもよい。
【0110】
また、本発明に係る位置情報取得部を構成する対象検知器は撮像装置を含むものに限られない。例えば、監視対象に特別な限定がない場合(つまり監視対象の特定が不要である場合)、前記対象検知器は赤外線深度センサやミリ波レーダといった距離検出器であってもよい。あるいは、単眼カメラではなく三次元情報を生成することが可能な撮像装置、例えばステレオカメラであってもよい。
【符号の説明】
【0111】
10 下部走行体
12 上部旋回体
14 作業装置
18 キャブ(運転室)
60R,60L,60B 対象検知器
61 操作ロック装置
62 警報器
70 コントローラ
72 位置情報生成部
74 抑制制御判定部
76 旋回制限指令部
78 走行制限指令部
82 警報指令部
84 表示指令部
90 後方領域部分
91 右前領域部分
92 左後領域部分
93 左前領域部分
94 右後領域部分
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6