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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141728
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】火災受信機
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/00 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
G08B17/00 L
G08B17/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053527
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 聡介
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 丈
(72)【発明者】
【氏名】茂木 康伸
【テーマコード(参考)】
5G405
【Fターム(参考)】
5G405AA06
5G405AB02
5G405CA09
5G405CA13
5G405CA22
5G405CA41
5G405CA46
5G405FA01
5G405FA11
(57)【要約】
【課題】発報情報等の感知器回線から取得した情報の視認性を向上させることのできる火災受信機を提供するものである。
【解決手段】複数の感知器に共通の感知器回線が、1回線以上接続される火災受信機であって、複数の感知器のうち発報した感知器及び当該感知器が接続された、感知器回線のいずれか又は両方の情報である発報情報を取得する取得部と、発報した、感知器が接続された、感知器回線の情報を表示灯と銘板とで表示する地区表示灯と、取得された、発報情報をグラフィカル表示する表示装置とを備えた。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の感知器に共通の感知器回線が、1回線以上接続される火災受信機であって、
前記複数の感知器のうち発報した感知器及び当該感知器が接続された前記感知器回線のいずれか又は両方の情報である発報情報を取得する取得部と、
発報した前記感知器が接続された前記感知器回線の情報を表示灯と銘板とで表示する地区表示灯と、
取得された前記発報情報をグラフィカル表示する表示装置とを備えた
火災受信機。
【請求項2】
前記複数の感知器は、煙感知器を含み、
前記取得部は、前記煙感知器から送信された汚れ量を取得し、
前記表示装置は、取得された前記汚れ量を、トレンドグラフとして表示する
請求項1記載の火災受信機。
【請求項3】
前記複数の感知器は、複数の煙感知器を含み、
前記取得部は、前記複数の煙感知器の汚れ量を取得し、
前記表示装置は、取得された前記汚れ量に基づいて、前記複数の煙感知器の情報を前記汚れ量のランキングにしたがって表示する
請求項1記載の火災受信機。
【請求項4】
防排煙装置が接続された防排煙回線が接続され、
前記表示装置は、前記防排煙装置が動作した場合には、当該防排煙装置を特定する情報及び当該防排煙装置の状態を表示する
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の火災受信機。
【請求項5】
前記複数の感知器及び前記感知器回線の状態の履歴を記憶する記憶部を備え、
前記表示装置は、前記記憶部に記憶された履歴を、文字で表示する
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の火災受信機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、P型の火災受信機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、P型の火災受信機は、発報した感知器が接続された感知器回線に対応した警戒区域を表示する地区表示灯を備えている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の地区表示灯は、表示灯と、警戒区域の名称が表示された地区窓とも称される銘板とが一対となったものが、複数並べられて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-145464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されたような表示灯と地区窓とで構成された地区表示灯は、火災受信機が設置された環境の明るさ等によって、視認性に問題が生じうる。例えば環境が薄暗い場合、表示灯の点灯は見えても、地区窓に表示された地区名が見えづらいことがあり、表示灯の点灯を確認した管理者が発報した警戒区域を把握するのに時間がかかりうる。このため、発報情報の視認性を向上させることが望まれていた。
【0005】
本発明は、上記のような課題を背景としたものであり、発報情報等の感知器回線から取得した情報の視認性を向上させることのできる火災受信機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る火災受信機は、複数の感知器に共通の感知器回線が、1回線以上接続される火災受信機であって、前記複数の感知器のうち発報した感知器及び当該感知器が接続された前記感知器回線のいずれか又は両方の情報である発報情報を取得する取得部と、発報した前記感知器が接続された前記感知器回線の情報を表示灯と銘板とで表示する地区表示灯と、取得された前記発報情報をグラフィカル表示する表示装置とを備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の火災受信機は、表示灯と銘板とを備えた地区表示灯に加えて、発報情報をグラフィカル表示する表示装置を備えたので、発報情報の視認性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態に係る火災受信機を含む火災報知システムの構成図である。
図2】実施の形態に係る地区表示灯及び表示装置を説明する図である。
図3】実施の形態に係る表示装置によるトレンドグラフの表示例を説明する図である。
図4】実施の形態に係る表示装置による感知器の汚れ量のランキング表示例を説明する図である。
図5】実施の形態に係る表示装置による防排煙装置の情報の表示例を説明する図である。
図6】実施の形態に表示装置による状態履歴の表示例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、以下の実施の形態及び図示された態様に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、本発明は、以下の実施の形態に示す構成のうち、組合せ可能な構成のあらゆる組合せを含む。また、各図において、同一の符号を付したものは、同一の又は相当するものであり、これは明細書の全文において共通している。
【0010】
実施の形態.
(火災報知システムの構成)
図1は、実施の形態に係る火災受信機1を含む火災報知システム100の構成図である。火災報知システム100は、火災受信機1と、感知器回線2を介して火災受信機1に接続された感知器3及び発信機4と、防排煙回線5を介して火災受信機1に接続された防排煙装置6とを備える。なお、図示された感知器回線2及び防排煙回線5の数は一例であり、数は図示のものに限定されない。
【0011】
感知器3は、火災により発生する物理量を検出し、検出した物理量又は物理量の変化量が閾値を超えたことを検出すると、発報信号を発信する。感知器3は、例えば、熱感知器、煙感知器、又は炎感知器のいずれか一種以上である。感知器3は、感知器回線2に接続されている接点の開閉状態を変化させ、これによって感知器回線2の電圧を変化させる。火災受信機1は、感知器回線2の電圧を監視しており、感知器3が接点の開閉状態を変化させたことによって生じる電圧の変化を、火災の発報信号として取得(受信)する。この場合、感知器3による設定の開閉状態の変更が、発報信号の送信に相当する。なお、本実施の形態では、感知器3が煙感知器である場合を例に説明する。
【0012】
感知器3は、散乱光方式の光電式煙感知器であり、暗箱内に光を発する発光素子と、発光素子からの光を直接受光しない位置に設けられた受光素子とを備え、暗箱内に流入した煙によって散乱した光を受光素子が受け、その受光量の変化を検出する。感知器3は、定期的に平常時の受光量を検出して基準値として記憶しており、検出した受光量の基準値に対する変化量が閾値を超えると、火災を検出し、発報信号を発信する。受光量は、煙濃度に換算される情報であるので、これ以降の説明では、受光量を煙濃度として説明する。感知器3は、発報信号とともに、検出した煙濃度を含む信号を火災受信機1に送信する。
【0013】
感知器3は、監視状態にある平常時に、定期的に煙濃度を取得して記憶する。ここで、経時に伴って感知器3の発光素子、受光素子及び暗箱には塵埃等の汚れが付着しうるので、平常時の感知器3が検出する煙濃度は、経時に伴って変化する可能性がある。このため、平常時の煙濃度は、感知器3の汚れ量を表すといえる。これ以降の説明では、火災検出時の煙濃度と、平常時の煙濃度とを区別するために、平常時の煙濃度を汚れ量と称する。感知器3は、汚れ量を定期的に取得し、汚れ量の履歴を記憶している。例えば、汚れ量の1ヶ月平均の値を、15ヶ月分記憶している。感知器3は、後述する火災受信機1からの定期監視の要求に応じて、汚れ量を含む信号を火災受信機1に送信する。
【0014】
発信機4は、火災を発見した人が押しボタンを押すことにより、火災受信機1に火災信号を発信する装置である。押しボタンが押されると、火災受信機1に接続された感知器回線2の電圧が変化する。火災受信機1は、感知器回線2の電圧を監視しており、押しボタンが押されたことによって生じる電圧の変化を、火災信号として取得(受信)する。
【0015】
防排煙装置6は、煙の流通を防ぐ装置又は建物から排煙する装置である。具体的には防排煙装置6は、防火戸、防火ダンパ、又は排煙装置等である。防火戸は、例えば火災報知システム100が設置された建築物の壁面等に設けられ、通常は人の通行が可能であるが、火災時に閉まることによって、他の防護区画に火災が広がることを防止する。防火戸は防火扉とも呼称され、シャッター形式の場合は防火シャッターとも呼称される。防火ダンパは、例えば火災報知システム100が設置された建築物の空調ダクトの内側に設置された羽根状又は板状の扉であり、ダクトを閉じることで火災時の延焼防止及び熱い空気の噴出を防ぐ。防火ダンパは、ダクトが建築物の防火区画を貫通する場合に取り付けられる。排煙装置は、建築物の室内と室外を連通させるダクトに設けられたファンを有し、ファンが回転することで室内の煙を室外に排出する装置である。
【0016】
(火災受信機の構成)
火災受信機1は、P型の火災受信機である。火災受信機1は、制御部10と、伝送回路11と、移報回路12と、操作装置13と、地区表示灯14と、表示装置15と、記憶部16とを備える。記憶部16には、敷設データ17、履歴データ18及び連動設定データ19が記憶される。
【0017】
制御部10は、感知器3の発報信号が伝送回路11を介して入力されると、発報信号を受信したことを地区表示灯14及び表示装置15により報知する。報知により現場に行った管理者等が火災の発生を確認して発信機4の押しボタンを押すと、発信機4からの火災信号を受けて制御部10は火災の発生と断定する。1つの感知器回線2に対して複数台の感知器3から発報信号が送信された場合に、制御部10が火災の発生を断定してもよい。火災の発生を断定すると、制御部10は、記憶部16に記憶された連動設定に基づいて、防排煙装置6又は他の連動装置を、移報回路12を介して動作させる。また、制御部10は、地区表示灯14及び表示装置15による表示動作を制御する。
【0018】
制御部10は、感知器回線2に接続された感知器3から定期的に情報を取得する定期監視の機能を有する。この定期監視においては、制御部10は、感知器3に対し、監視情報の送信を要求する要求信号を送出する。要求信号を受信した感知器3は、自機の異常の有無を判定するとともに、自機を特定する情報及び汚れ量を含む信号を、応答信号として送信する。感知器3が熱感知器である場合は検出した温度のアナログ値を、感知器3が炎感知器である場合は検出した紫外線量又は赤外線量のアナログ値を、応答信号として送信する。
【0019】
制御部10は、専用の制御回路、又はメモリに格納されるプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)若しくはこれらの組み合わせにより構成される。制御部10がCPUである場合、制御部10が実行する各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、又はソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。
【0020】
伝送回路11は、感知器3及び発信機4が接続された感知器回線2が接続される回路である。伝送回路11は、感知器回線2からの発報信号及び発信機4からの火災信号を受信し、受信した信号を制御部10に送る。
【0021】
移報回路12は、防排煙装置6が接続された防排煙回線5が接続される回路である。移報回路12は、制御部10から出力された信号に基づいて、防排煙装置6を動作させる連動信号を、防排煙回線5を介して防排煙装置6に送る。
【0022】
操作装置13は、火災受信機1の筐体に設けられたハードウェアボタン、又は表示装置15の画面に重ねて設けられたタッチパネルのいずれか又は両方を含む。操作装置13は、ユーザからの操作を受け付け、操作に対応した信号を制御部10に送る。
【0023】
地区表示灯14は、発報した感知器3が接続された感知器回線2を表示する。表示装置15は、表示内容をドット単位で制御することのできる、グラフィカル表示が可能な画面を備えた装置である。表示装置15は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ又は電子ペーパー等である。
【0024】
記憶部16は、制御部10による各部の制御に用いられるデータを記憶する。記憶部16には、感知器回線2の各々と、各感知器回線2が敷設された警戒区域を示すフロア名等の情報とを対応づけたテーブルが、敷設データ17として記憶される。敷設データ17はさらに、感知器3の各々と、その感知器3を特定する名称、番号、又は設置位置等の情報とを対応づけたテーブルを含む。敷設データ17に記憶された情報は、後述する表示装置15における発報情報152の表示に用いられる。また、記憶部16には、感知器3から送信された汚れ量の履歴と、感知器3又は感知器回線2に生じた異常の履歴と、感知器3の試験結果の履歴と、感知器回線2における発報の履歴とが、履歴データ18として記憶される。また、記憶部16には、連動要因と連動装置とを対応づけたテーブルが、連動設定データ19として記憶される。連動要因は、本実施の形態では感知器3又は感知器回線2であり、連動装置は、防排煙装置6である。一の連動要因又は複数の連動要因の組み合わせと、一又は複数の連動装置とが対応づけられて連動設定データ19が構成される。記憶部16は、内部記憶メモリ、メモリカード等の外部記憶媒体、又はそれらの組み合わせであり、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリ、EPROM、EEPROM等の、不揮発性又は揮発性の半導体メモリを含む。
【0025】
図2は、実施の形態に係る地区表示灯14及び表示装置15を説明する図である。地区表示灯14及び表示装置15は、火災受信機1の筐体の前面に設けられる。地区表示灯14と表示装置15との位置関係、及びそれぞれの形状等は、図示のものに限定されない。
【0026】
地区表示灯14は、表示灯141と銘板142とが一対となったものの集合体であり、当該一対が、火災受信機1に接続可能な感知器回線2の数だけ設けられる。表示灯141は、電球、放電灯又は発光ダイオードである。複数の表示灯141のそれぞれには、感知器回線2のいずれかが対応付けられており、対応する感知器回線2に発報信号が生じると、点灯する。銘板142は、感知器回線2の情報を、手書き文字、印刷、刻印、又はシール添付等により静的に表示する。銘板142には、例えば、感知器回線2が敷設された監視区域の情報として、敷設フロア名、敷設された部屋名等が表示される。火災受信機1の管理者等が、当該火災受信機1が設置された建物にあわせて、銘板142に表示する監視区域の情報を準備する。
【0027】
表示装置15は、情報を文字、図形、又はこれらの組み合わせによりグラフィカルに表示する。図2では、感知器3が火災を検出して感知器回線2に発報信号が生じた場合の表示例を示している。表示装置15には、発報表示151と、発報情報152と、図形表示153とが表示されている。発報表示151は、いずれかの感知器回線2に発報信号が生じると、表示される。発報表示151は点滅又は交互に表示色が切り替えられてもよく、このようにすることで人の注意を引くことができる。
【0028】
発報情報152は、発報した感知器回線2の情報を表示する。表示装置15は、銘板142と異なり、動的表示が可能であるので、感知器回線2に関するより詳細な情報を表示することができる。一つの銘板142の表示領域には制約があるため、警戒区域の情報を記号化等により省略して表示せざるを得ない場合もあり、その場合、管理者等は省略された情報を補って発報した感知器回線2の警戒区域を認識しなければならない。他方、本実施の形態の表示装置15は、表示領域に、発報した感知器回線2の情報のみを発報情報152として表示すればよいので、情報をより詳しく表示することができる。また、火災を検知した感知器3が発報信号とともに当該感知器3を特定するアドレス等を送信する場合には、発報情報152には当該アドレスに基づいて発報した感知器3に関する情報を表示することができる。なお、発報情報152における表示内容は、記憶部16に記憶された敷設データ17に基づいて、制御部10によって制御される。
【0029】
図形表示153は、発報信号を受信したこと、又は発報した感知器回線2に関する情報等を、図形により表示する。図2では火災が検出されたことを示す炎の図が図形表示153として例示されているが、発報した感知器3から送信された煙濃度の値又は値の推移を、グラフ表示してもよい。
【0030】
なお、表示装置15は、発報表示151、発報情報152及び図形表示153のすべてを表示しなくてもよく、少なくとも発報情報152に相当する情報を表示すればよい。
【0031】
以上のように、本実施の形態の火災受信機1は、複数の感知器3のうち発報した感知器3及び当該感知器3が接続された感知器回線2のいずれか又は両方の情報である発報情報を取得する取得部として、制御部10と伝送回路11とを備えた。さらに火災受信機1は、地区表示灯14と、表示装置15とを備えている。地区表示灯14は、発報した感知器3が接続された感知器回線2の情報を表示灯141と銘板142とで表示する。表示装置15は、取得された情報を、発報情報152としてグラフィカル表示する。
【0032】
このように、本実施の形態では、地区表示灯14に加えて表示装置15において発報情報152がグラフィカル表示されるので、感知器回線2から取得した情報の視認性を向上させることができる。このため、例えば火災受信機1の設置場所が薄暗い等の理由により銘板142が見づらい場合であっても、管理者等に、火災発生に関する情報をより明確に伝えることができる。
【0033】
従来のP型の火災受信機においては、地区表示灯14、他のランプ、いわゆる7セグLED、又はキャラクタLCD等の表示部材のみが設けられていた。これら表示部材は、表示可能な情報量に関して制約が大きい。例えば、キャラクタLCDは文字を表示可能であるが、表示文字数の上限に加え、表示可能な文字種の限定もあるため、アルファベット又は数字で構成されたコードを表示し、これを管理者等が読み替える作業が必要であった。しかし、本実施の形態によれば、グラフィカル表示が可能な表示装置15により、発報情報を任意の文字、図形又はこれらの組み合わせにより詳細に表示できるので、コードの読み替え等も不要となり、管理者等による情報の把握スピードを向上させることができる。
【0034】
図3は、実施の形態に係る表示装置15によるトレンドグラフ154の表示例を説明する図である。表示装置15は、感知器3から送信された汚れ量を、トレンドグラフ154として表示する。トレンドグラフ154は、感知器3から取得した汚れ量の履歴をグラフ表示したものであり、記憶部16に記憶された履歴データ18に基づいて表示される。図3では、1台の感知器3のトレンドグラフ154を例示しているが、複数台の感知器3の汚れ量の履歴を、1つのトレンドグラフ154において互いに区別可能な状態で表示してもよい。
【0035】
図3の表示装置15はさらに、感知器情報155を表示する。感知器情報155は、トレンドグラフ154に表示されている汚れ量を検出した感知器3を特定する情報であり、感知器3のアドレス、設置場所、又は種別等の情報である。
【0036】
操作装置13に対してトレンドグラフ154の表示を指示する操作入力がなされると、表示装置15は、トレンドグラフ154を表示する。トレンドグラフ154は、記憶部16に記憶された履歴データ18に基づいて表示される。
【0037】
このように、本実施の形態の火災受信機1は、煙感知器である感知器3から送信された汚れ量を取得し、表示装置15は、取得された汚れ量をトレンドグラフ154として表示する。このため、管理者等に、感知器3の汚れ状態を分かりやすく伝えることができる。これにより、管理者等は、感知器3の清掃又は交換等のメンテナンスを行いやすくなる。
【0038】
なお、図3では、煙感知器である感知器3の汚れ量をトレンドグラフ154として表示することを説明したが、感知器3が熱感知器又は炎感知器等である場合、これらから定期監視等にて取得した物理量のアナログ値を、トレンドグラフ154として表示してもよい。
【0039】
図4は、実施の形態に係る表示装置15による感知器3の汚れ量のランキング表示例を説明する図である。表示装置15に表示されるランキング表示156は、複数の感知器3から送信された汚れ量に基づいて、汚れ量の多い又は少ない順に、感知器3の情報を文字、図形又はこれらの組み合わせにより表示するものである。ランキング表示156は、各感知器3の順位及び感知器3を特定する情報を含み、さらに、感知器3が設置された場所、又は感知器3の汚れの程度等の情報を含んでいてもよい。汚れの程度の情報は、汚れ量の値であってもよいし、汚れ量の値を予め定められたルールにしたがってレベル分けした情報であってもよい。表示装置15の表示領域に表示しきれないランキング表示156の感知器3の情報は、表示領域をスクロールさせることによって表示される。
【0040】
操作装置13に対してランキング表示156の表示を指示する操作入力がなされると、表示装置15は、ランキング表示156を表示する。ランキング表示156は、記憶部16に記憶された履歴データ18に基づいて表示される。ランキング表示156の表示対象とする感知器3を操作装置13において指定できるようにしてもよい。例えば、火災受信機1が複数の建物を含む大規模物件に設置されている場合には、特定の建物に設置された感知器3のみを対象としてランキング表示156を行ってもよい。
【0041】
このように、本実施の形態の表示装置15は、取得された汚れ量に基づいて、複数の感知器3の情報を、汚れ量のランキングにしたがってランキング表示156として表示する。このため、管理者は、各感知器3の汚れの程度を他の感知器3との比較で把握できるので、感知器3の清掃又は交換等のメンテナンスの優先順位をつけやすい。したがって、管理者は、効率的に感知器3のメンテナンスを行うことができる。
【0042】
図5は、実施の形態に係る表示装置15による防排煙装置6の情報の表示例を説明する図である。表示装置15には、防排煙装置情報157と、連動元情報158とが表示される。防排煙装置情報157は、動作した防排煙装置6を特定する情報及び防排煙装置6の状態を含み、さらに防排煙装置6の設置場所等を含んでいてもよい。図5の例では、防排煙装置6の一例である防火シャッターが閉鎖したことが、防排煙装置情報157として表示されている。連動元情報158は、防排煙装置6が動作する要因となった連動元の感知器3を特定する情報であり、感知器3の設置場所及び感知器3の種別に関する情報を含んでいてもよい。なお、連動元情報158が表示されず、防排煙装置情報157のみが表示されてもよい。また、表示装置15は、防排煙装置情報157と連動元情報158とを、時系列で履歴として表示してもよい。
【0043】
制御部10から送信された連動信号に基づいて防排煙装置6が動作すると、防排煙装置6から動作したことを示す信号が、防排煙回線5を介して移報回路12に入力され、当該信号は移報回路12から制御部10に入力される。制御部10は、当該信号を受信すると、表示装置15に、防排煙装置情報157及び連動元情報158を表示させる。制御部10が移報回路12を介して移報信号を出力した際に、表示装置15が防排煙装置情報157及び連動元情報158を表示してもよい。防排煙装置情報157に含まれる防排煙装置6の設置場所の情報、及び連動元情報158に含まれる感知器3の情報は、敷設データ17から得られる。
【0044】
このように、本実施の形態の表示装置15は、防排煙装置6が動作した場合には、当該防排煙装置6を特定する情報及び当該防排煙装置6の状態を、防排煙装置情報157として表示する。グラフィカル表示が可能な表示装置15によって防排煙装置情報157が表示されるため、動作した防排煙装置6の情報を管理者により分かりやすく伝えることができる。
【0045】
図6は、実施の形態に係る表示装置15による状態履歴159の表示例を説明する図である。表示装置15には、状態履歴159が文字、図形又はこれらの組み合わせにより表示される。状態履歴159は、複数の感知器3及び感知器3が接続された1以上の感知器回線2の状態の履歴であり、例えば異常の履歴である。状態履歴159に含まれる異常の履歴は、履歴データ18から得られる。状態履歴159は、例えば、異常が発生した感知器3の種別と、当該感知器3を特定する情報と、異常発生の日時と、異常の具体的な内容とを含むことができる。
【0046】
本実施の形態では、表示装置15は、グラフィカル表示が可能であるので、感知器3又は感知器回線2の状態の履歴を、管理者に分かりやすい状態で表示することができる。例えば、7セグLED及びキャラクタLCDは、上記のように表示可能な文字に制約があるため、エラーコードを表示し、これを管理者が読み替える作業が必要であった。しかし、本実施の形態によれば、グラフィカル表示が可能な表示装置15により、状態の履歴を任意の文字、図形又はこれらの組み合わせにより詳細に表示できるので、エラーコードの読み替え等も不要となり、管理者の利便性を向上させることができる。
【0047】
なお、図6では状態履歴159が感知器3の異常履歴である例を示したが、感知器回線2の発報又は断線等の状態、若しくは発信機4、防排煙装置6、防排煙回線5、火災受信機1、又は火災受信機1に接続された図示しない他の機器の状態を含んでもよい。
【0048】
また、表示装置15は、火災報知システム100の試験内容及び試験結果を表示してもよい。火災報知システム100には定期的な動作試験が求められるが、従来は、例えば7セグLEDに試験対象の回線番号を表示し、操作装置13に設けられたボタンを押す回数によって試験内容を選択していた。このため、試験担当者にとって試験内容の選択と、その選択結果の把握が困難であった。しかし、表示装置15において試験内容及び試験結果を、文字、図形又はこれらの組み合わせによりグラフィカル表示することで、試験担当者による試験内容の選択肢と選択結果の把握が容易になる。また、表示装置15は、試験結果の履歴を、図6の例に倣って表示してもよい。また、火災受信機1は、監視状態にある平常時とメンテナンス時とで状態を切り替える1以上のスイッチを備え、当該スイッチが平常時の定位にない場合に点灯するスイッチ注意灯(図示せず)を備えている。当該スイッチとして、例えば、防排煙装置6の連動動作を禁止するための連動停止スイッチがある。表示装置15は、定位にないスイッチ又はメンテナンス時に状態を切り替えるべきスイッチの名称を、一覧表示してもよい。これにより、メンテナンスを行う管理者等は、メンテナンス時と平常時との切り替わりの際、どのスイッチを操作すればよいかを把握しやすく、また操作忘れも防止することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 火災受信機、2 感知器回線、3 感知器、4 発信機、5 防排煙回線、6 防排煙装置、10 制御部、11 伝送回路、12 移報回路、13 操作装置、14 地区表示灯、15 表示装置、16 記憶部、17 敷設データ、18 履歴データ、19 連動設定データ、100 火災報知システム、141 表示灯、142 銘板、151 発報表示、152 発報情報、153 図形表示、154 トレンドグラフ、155 感知器情報、156 ランキング表示、157 防排煙装置情報、158 連動元情報、159 状態履歴。
図1
図2
図3
図4
図5
図6