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特開2024-141729セメント含有物の炭酸化装置、セメント含有物の炭酸化方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141729
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】セメント含有物の炭酸化装置、セメント含有物の炭酸化方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/14 20060101AFI20241003BHJP
   C04B 40/02 20060101ALI20241003BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20241003BHJP
   B01D 53/83 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B01D53/14 100
C04B40/02 ZAB
B01D53/62
B01D53/83
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053528
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本間 健一
(72)【発明者】
【氏名】木村 貴之
(72)【発明者】
【氏名】宮 由莉佳
【テーマコード(参考)】
4D002
4D020
4G112
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002AC01
4D002AC05
4D002AC10
4D002BA03
4D002BA14
4D002CA08
4D002DA05
4D002DA12
4D002FA02
4D002GA01
4D002GB03
4D002HA08
4D020AA03
4D020BA30
4D020BB01
4D020CA06
4D020DA03
4D020DB02
4G112RA02
(57)【要約】
【課題】炭酸化後のセメント含有物のコンクリート等への混合量を従来よりも高めることのできる、セメント含有物の炭酸化装置を提供する。
【解決手段】セメント含有物の炭酸化装置は、第一熱交換室と、第一熱交換室内に粒状のセメント含有物を導入する原料導入口と、第一熱交換室内にCO2を含有する高温の第一ガスを導入する第一導入口と、第一導入口よりも鉛直上方の位置に配置され第一熱交換室内のガスを排出する第一排出口と、第一熱交換室よりも鉛直下方において第一熱交換室と連絡して配置され第一熱交換室からセメント含有物が流入される第二熱交換室と、第二熱交換室内に第一ガスよりも低温の第二ガスを導入する第二導入口と、第二導入口よりも鉛直上方の位置に配置されて第二熱交換室内のガスを排出する第二排出口と、第二ガスが通流する第二熱交換室内を通過した後のセメント含有物を排出する原料排出口とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一熱交換室と、
前記第一熱交換室内に粒状のセメント含有物を導入する原料導入口と、
前記第一熱交換室内にCO2を含有する高温の第一ガスを導入する第一導入口と、
前記第一導入口よりも鉛直上方の位置に配置され、前記第一熱交換室内のガスを排出する第一排出口と、
前記第一熱交換室よりも鉛直下方において前記第一熱交換室と連絡して配置され、前記第一熱交換室から前記セメント含有物が流入される第二熱交換室と、
前記第二熱交換室内に前記第一ガスよりも低温の第二ガスを導入する第二導入口と、
前記第二導入口よりも鉛直上方の位置に配置されて、前記第二熱交換室内のガスを排出する第二排出口と、
前記第二ガスが通流する前記第二熱交換室内を通過した後の前記セメント含有物を排出する原料排出口とを備えることを特徴とする、セメント含有物の炭酸化装置。
【請求項2】
前記第一熱交換室の前記第二熱交換室に近い側に位置する領域と、前記第二熱交換室の前記第一熱交換室に近い側に位置する領域との間に配置され、前記セメント含有物の通過量を調整可能な遮蔽部材を備えることを特徴とする、請求項1に記載のセメント含有物の炭酸化装置。
【請求項3】
前記遮蔽部材は、開度の調整が可能な仕切部材であることを特徴とする、請求項2に記載のセメント含有物の炭酸化装置。
【請求項4】
前記第一熱交換室と前記第二熱交換室とを鉛直方向に連絡する連絡部を備え、
前記遮蔽部材は、前記連絡部内に配置されていることを特徴とする、請求項2又は3に記載のセメント含有物の炭酸化装置。
【請求項5】
前記第一熱交換室内における前記セメント含有物の流動性を高める第一流動補助部材を備えることを特徴とする、請求項1に記載のセメント含有物の炭酸化装置。
【請求項6】
前記第二熱交換室内における前記セメント含有物の流動性を高める第二流動補助部材を備えることを特徴とする、請求項1又は5に記載のセメント含有物の炭酸化装置。
【請求項7】
前記原料導入口は、前記第一熱交換室内において、前記第一導入口から前記第一排出口に向かう前記第一ガスの気流方向に関して、前記第一導入口と前記第一排出口との間に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載のセメント含有物の炭酸化装置。
【請求項8】
前記第一熱交換室は、
前記第一ガスが上昇気流を形成する第一領域と、
前記第一領域よりも鉛直上方の位置において前記第一領域に連絡され、前記第一領域を通過した前記第一ガスが達する第二領域と、
前記第二領域よりも鉛直下方の位置において前記第二領域に連絡され、前記第一ガスが下降気流を形成する第三領域とを含み、
前記第一導入口は、前記第一熱交換室の前記第一領域内に配置されていることを特徴とする、請求項7に記載のセメント含有物の炭酸化装置。
【請求項9】
前記第一熱交換室は、前記第一領域、前記第二領域、及び前記第三領域によってU字又はV字形状を呈することを特徴とする、請求項8に記載のセメント含有物の炭酸化装置。
【請求項10】
CO2を含有する高温の第一ガスが導入される第一熱交換室内に粒状のセメント含有物を導入して、前記第一ガスと前記セメント含有物との間で熱交換する工程(a)と、
前記第一ガスよりも低温の第二ガスが導入される第二熱交換室内に、前記工程(a)を経た前記セメント含有物を導入して、前記第二ガスと前記セメント含有物との間で熱交換する工程(b)と、
前記工程(b)を経た前記前記セメント含有物を回収する工程(c)とを有することを特徴とする、セメント含有物の炭酸化方法。
【請求項11】
前記第一熱交換室内に導入される前記第一ガスは、400℃~900℃であり、
前記第二熱交換室内に導入される前記第二ガスは、常温~150℃であることを特徴とする、請求項10に記載のセメント含有物の炭酸化方法。
【請求項12】
前記工程(b)は、前記第一熱交換室の前記第二熱交換室に近い側に位置する領域と、前記第二熱交換室の前記第一熱交換室に近い側に位置する領域との間に配置された遮蔽部材の開度を調整することで、前記工程(a)を経た前記セメント含有物を前記第二熱交換室内に送り込む工程を含むことを特徴とする、請求項10又は11に記載のセメント含有物の炭酸化方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント含有物の炭酸化装置及び炭酸化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化の抑制のため、炭酸ガス(二酸化炭素)の排出量の低減が重要な課題になっている。
【0003】
二酸化炭素の排出量を低減する手法の一つとして、排ガスに含まれている二酸化炭素を固定化する技術が知られている。例えば、本出願人と共同出願人は、下記特許文献1の技術を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-131074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の方法によれば、セメント含有物に対して二酸化炭素含有ガス中の二酸化炭素を効率的に固定化できる(炭酸化できる)。しかし、炭酸化された後のセメント含有物の活用方法については、十分な言及がなされていない。
【0006】
特許文献1の方法を実行後に得られる炭酸化された後のセメント含有物は、コンクリート等に混ぜると強度が低下したり、品質のばらつきが大きくなるため、混合できる量には限りがあった。よって、活用するに際しては、例えばセメント原料側に混合して焼成するしかなく、再利用の効率が低いという事情があった。
【0007】
本発明は上記に鑑み、炭酸化後のセメント含有物のコンクリート等への混合量を従来よりも高めることのできる、セメント含有物の炭酸化装置及び炭酸化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るセメント含有物の炭酸化装置は、
第一熱交換室と、
前記第一熱交換室内に粒状のセメント含有物を導入する原料導入口と、
前記第一熱交換室内にCO2を含有する高温の第一ガスを導入する第一導入口と、
前記第一導入口よりも鉛直上方の位置に配置され、前記第一熱交換室内のガスを排出する第一排出口と、
前記第一熱交換室よりも鉛直下方において前記第一熱交換室と連絡して配置され、前記第一熱交換室から前記セメント含有物が流入される第二熱交換室と、
前記第二熱交換室内に前記第一ガスよりも低温の第二ガスを導入する第二導入口と、
前記第二導入口よりも鉛直上方の位置に配置されて、前記第二熱交換室内のガスを排出する第二排出口と、
前記第二ガスが通流する前記第二熱交換室内を通過した後の前記セメント含有物を排出する原料排出口とを備えることを特徴とする。
【0009】
本明細書において「セメント含有物」は、セメント組成物を含む材料を指す。「セメント組成物」とは、水、骨材及び減水剤を含まない、セメント含有粉末又はそれに由来する物(水を含む混練物中の上記粉末の由来物、又はその硬化物)を指す。
【0010】
セメント含有物は、好適にはセメント組成物と水とを含む水硬性組成物であって、且つ、この水硬性組成物が硬化又は半硬化したものである。ここでいう「半硬化」とは硬化が進行中である状態を指す。
【0011】
廃棄物の利用促進の観点から、セメント含有物としては、再生使用されるセメント硬化体が好ましく用いられる。このようなセメント硬化体としては、再生骨材、コンクリート又はモルタルからなる建材の廃材、セメントペースト硬化体の廃材、レディーミクストコンクリートやコンクリート製品工場で発生するスラッジ等が挙げられる。セメント含有物として上記廃材が利用される場合、塊状であってもよいし、粉砕後に篩等を用いて粗骨材(砂利等)を除去してセメント組成物を多く含む粉末にしてもよい。
【0012】
上記炭酸化装置は、複数の熱交換室を備えている。相対的に鉛直上方に位置する第一熱交換室には、第一導入口よりCO2を含有する高温の第一ガスが導入される。この第一熱交換室内に、原料導入口より粒状のセメント含有物が導入されることで、第一ガスとの間で熱交換が行われる。第一ガスは高温であることから、第一ガス中に含まれるCO2がセメント含有物内の物質と反応し、CaCO3を生成する。つまり、セメント含有物が炭酸化する。この反応は、第一ガスの温度が350℃以上のときに、反応率が増大する。
【0013】
更に、第一ガスが高温であることから、第一熱交換室内においてセメント含有物が加熱されて、カルシウムシリケート水和物(xCaO・ySiO2・zH2O、以下「C-S-H」と記載する。)の一部が、ビーライト(2CaO・SiO2、以下「C2S」と記載する。)に変化する。このような反応は、第一ガスの温度が400℃以上である場合に起こりやすい。すなわち、第一ガスは、400℃以上であるのが好ましく、400℃~900℃であるのがより好ましい。第一ガスが400℃以上であれば、第一熱交換室内において、セメント含有物の炭酸化とC2Sの生成とが生じる。
【0014】
第一ガスとの間で熱交換がされたセメント含有物は、第一熱交換室に対して相対的に鉛直下方に連絡された第二熱交換室へと送り込まれる。第二熱交換室は、第一ガスよりも低温の第二ガスが導入されている。このため、第一熱交換室内において高温の第一ガスとの間で熱交換されて高温化したセメント含有物は、第二熱交換室内において、低温の第二ガスとの間で熱交換されることで急冷される。この結果、セメント含有物内における炭酸化の反応速度が低下し、第一熱交換室内で生成されたC2Sの炭酸化が抑制される。
【0015】
つまり、上記炭酸化装置によれば、第一熱交換室内において高温のCO2含有ガス(第一ガス)との接触を経てCO2が固定化されると共にC2Sが生成され、更にその後に第二熱交換室内で急冷されることで、C2Sを残存させることが可能となる。よって、第二熱交換室内を通過した後のセメント含有物は強度が向上するため、混合材として活用することで、コンクリートの強度を高めることができる。
【0016】
第一ガスに含まれるCO2の濃度は、体積分率の値として、好ましくは5%以上、より好ましくは6%以上、特に好ましくは7%以上である。前記濃度が5%以上であると、第一熱交換室内における炭酸化の速度が向上するため、セメント含有物に固定化される二酸化炭素の量が大きくなる。この結果、大気中への二酸化炭素の排出量の削減効果が高められる。
【0017】
前記炭酸化装置は、前記第一熱交換室の前記第二熱交換室に近い側に位置する領域と、前記第二熱交換室の前記第一熱交換室に近い側に位置する領域との間に配置され、前記セメント含有物の通過量を調整可能な遮蔽部材を備えるものとしても構わない。この遮蔽部材としては、例えば開度の調整が可能な仕切部材を採用することができる。
【0018】
上記構成によれば、第一熱交換室側から第二熱交換室内へと送り込むセメント含有物の量を調整することができる。
【0019】
また、遮蔽部材が閉じられている間は、第二熱交換室と第一熱交換室との間のガスの通流が抑制できるのが好ましい。これにより、第二熱交換室内に導入された低温の第二ガスが、第一熱交換室内へと流入することを抑制でき、第一熱交換室内を高温に保つことができる。
【0020】
前記炭酸化装置は、前記第一熱交換室と前記第二熱交換室とを鉛直方向に連絡する連絡部を備え、
前記遮蔽部材は、前記連絡部内に配置されているものとしても構わない。
【0021】
上記構成によれば、連絡部内に第一熱交換室内で熱交換がされた後のセメント含有物を一時的に貯留でき、第二熱交換室内に送り込むときの流量の調整が容易化される。更に、第二熱交換室内に導入された低温の第二ガスが、第一熱交換室内に流入することを抑制する効果が高められる。
【0022】
前記炭酸化装置は、前記第一熱交換室内における前記セメント含有物の流動性を高める第一流動補助部材を備えるものとしても構わない。
【0023】
上記構成によれば、第一熱交換室内におけるセメント含有物の流動性が高まり、セメント含有物同士が衝突しやすくなる。この結果、セメント含有物の粒子の表面が削れたりひびが入る等により、表面積が増加し、CO2を含む第一ガスとの接触効率が高められて、炭酸化速度が上昇する。加えて、セメント含有物の流動性が高められることで、第一熱交換室の内壁等にセメント含有物が固着したり融着することが防止され、コーチングトラブルの発生も抑制できる。
【0024】
第一流動補助部材としては、例えば、撹拌翼等の回転可能な板状部材、振動可能な板状部材、分散板、ガスノズル等が好適に利用できる。第一流動補助部材から発生した外力又は気流により、セメント含有物の運動量が高められる。
【0025】
同様に、前記炭酸化装置は、前記第二熱交換室内における前記セメント含有物の流動性を高める第二流動補助部材を備えるものとしても構わない。第二流動補助部材は、撹拌翼等の回転可能な板状部材、振動可能な板状部材、分散板、ガスノズル等が好適に利用できる。
【0026】
上記構成によれば、第二熱交換室内におけるセメント含有物の流動性が高まり、セメント含有物同士が衝突しやすくなる。この結果、セメント含有物の粒子の表面が削れたりひびが入る等により、表面積が増加し、低温の第二ガスとの接触効率が高められて、より急速な冷却が可能となる。この結果、C2Sの炭酸化を抑制する効果が高められ、第二熱交換室から排出されるセメント含有物の強度が更に向上する。
【0027】
前記原料導入口は、前記第一熱交換室内において、前記第一導入口から前記第一排出口に向かう前記第一ガスの気流方向に関して、前記第一導入口と前記第一排出口との間に配置されているものとしても構わない。
【0028】
上記構成によれば、原料導入口より第一熱交換室内に導入されたセメント含有物は、セメント含有物との間で熱交換がされる前の第一ガス、つまり、より高温の第一ガスと接触する。その後、第一ガスは第一排出口に向かって流れ、セメント含有物は第二熱交換室に向かって流れる。この結果、セメント含有物は、第二熱交換室に向かう迄の間に、既に接触したガスよりも更に高温のガスが吹き付けられる可能性が低下する。
【0029】
セメント含有物が炭酸化した後、更に高温のガスが接触すると、ガスの温度によっては脱炭酸が生じる可能性がある。上記構成によれば、高温状態の第一ガスがセメント含有物に接触する時点においては炭酸化が生じる前の状態であり、その後に接触する第一ガスは熱交換がされた後のガスであるため第一導入口から導入された直後よりも温度が低下している。よって、第一導入口から第一熱交換室内に導入される第一ガスの温度をかなり高温にしても、炭酸化により生じた物質が更に脱炭酸するのを抑制できる。
【0030】
具体的には、前記第一熱交換室は、
前記第一ガスが上昇気流を形成する第一領域と、
前記第一領域よりも鉛直上方の位置において前記第一領域に連絡され、前記第一領域を通過した前記第一ガスが達する第二領域と、
前記第二領域よりも鉛直下方の位置において前記第二領域に連絡され、前記第一ガスが下降気流を形成する第三領域とを含み、
前記第一導入口は、前記第一熱交換室の前記第一領域内に配置されているものとしても構わない。
【0031】
上記構成によれば、第一熱交換室内に導入されたセメント含有物は、第一領域内において高温の第一ガスと接触した後、この第一ガスの上昇気流に乗って第二領域内に運ばれる。その後、セメント含有物は、第一ガスの下降気流に乗って、第三領域内を下降して第二熱交換室側へと運ばれる。この構成によれば、第一ガスは、第一領域、第二領域、及び第三領域へと移行するに連れて温度が低下する。よって、第一熱交換室内で第二熱交換室側へとセメント含有物が移動中に、炭酸化することで生じた物質が更に脱炭酸するのを抑制できる。
【0032】
より具体的には、前記第一熱交換室は、前記第一領域、前記第二領域、及び前記第三領域によってU字又はV字形状を呈するものとしても構わない。
【0033】
本発明に係るセメント含有物の炭酸化方法は、
CO2を含有する高温の第一ガスが導入される第一熱交換室内に粒状のセメント含有物を導入して、前記第一ガスと前記セメント含有物との間で熱交換する工程(a)と、
前記第一ガスよりも低温の第二ガスが導入される第二熱交換室内に、前記工程(a)を経た前記セメント含有物を導入して、前記第二ガスと前記セメント含有物との間で熱交換する工程(b)と、
前記工程(b)を経た前記前記セメント含有物を回収する工程(c)とを有することを特徴とする。
【0034】
前記工程(b)は、前記第一熱交換室の前記第二熱交換室に近い側に位置する領域と、前記第二熱交換室の前記第一熱交換室に近い側に位置する領域との間に配置された遮蔽部材の開度を調整することで、前記工程(a)を経た前記セメント含有物を前記第二熱交換室内に送り込む工程を含むものとしても構わない。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、炭酸化された後のセメント含有物の強度を従来よりも高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】炭酸化装置の第一実施形態の構成を模式的に示す概念図である。
図2図1から第一熱交換室10の近傍を抽出して拡大した図面である。
図3図1から第二熱交換室20の近傍を抽出して拡大した図面である。
図4】炭酸化装置の第二実施形態の構成を模式的に示す概念図である。
図5図4から第一熱交換室10の近傍を抽出して拡大した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明に係る炭酸化装置及び炭酸化方法の実施形態につき、以下において適宜図面を参照して説明する。なお、以下の各図面は模式的に示されたものであり、図面の寸法比と実際の寸法比とは必ずしも一致しておらず、各図面の間での寸法比も必ずしも一致していない。
【0038】
なお、以下の各図では、気体の流れが二点鎖線を用いて模式的に示され、固体(後述するセメント含有物3)の流れが一点鎖線を用いて模式的に示される。
【0039】
[第一実施形態]
炭酸化装置の第一実施形態について、説明する。
【0040】
図1は、炭酸化装置の第一実施形態の構成を模式的に示す概念図である。また、図2図3は、いずれも図1の一部を抽出した図面である。以下、図1図3を適宜参照しながら説明する。
【0041】
炭酸化装置1は、第一熱交換室10と、第一熱交換室10よりも鉛直下方の位置に設置された第二熱交換室20と、第一熱交換室10と第二熱交換室20とを連絡する連絡部30とを備える。なお、各図において、+Z方向が鉛直上向きに対応する。
【0042】
炭酸化装置1は、第一熱交換室10内に粒状のセメント含有物3を導入する原料導入口41を備える。図1に示す例では、セメント含有物3が蓄積される原料貯留部42が設けられ、原料貯留部42からバルブ等の開度を調整することにより、所定の流量で原料導入口41を通じて第一熱交換室10内にセメント含有物3が導入される。
【0043】
セメント含有物3は、好適にはセメント組成物と水とを含む水硬性組成物であって、且つ、この水硬性組成物が硬化又は半硬化したものである。典型的には、再生骨材、コンクリート又はモルタルからなる建材の廃材、セメントペースト硬化体の廃材、及びレディーミクストコンクリートで発生するスラッジ等からなる群に属する一種以上である。
【0044】
セメント含有物3は、後述するように、第一熱交換室10内において高温の第一ガスG1との間で熱交換が行われる。かかる観点から、ある程度の流動性が得られる程度の粒径であるのが好適である。具体的には、セメント含有物3の粒径は、150μm以下が好ましい。セメント含有物3が、上記に例示した廃材等である場合には、原料貯留部42に貯留させる前に粉砕して粒径が調整されるものとしても構わない。
【0045】
第一熱交換室10には、高温の第一ガスG1が導入される第一導入口11と、この第一ガスG1がセメント含有物3と接触することで熱交換された後のガスG1aが排出される第一排出口13とが備えられている。第一導入口11から導入された第一ガスG1は、第一熱交換室10内を鉛直上方に向かって流れやすいため、好ましくは、第一排出口13は第一導入口11よりも鉛直上方の位置に設置される。
【0046】
第一ガスG1は、高温のCO2含有ガスである。第一ガスG1の温度は、好適には400℃以上であり、より具体的には400℃~900℃である。また、第一ガスG1に含まれるCO2の濃度は、体積分率の値として、好ましくは5%以上、より好ましくは6%以上、特に好ましくは7%以上である。
【0047】
第一ガスG1は、一例として、セメント工場の排ガス、石炭火力発電所の排ガス、塗装工場における排気処理で発生する排ガス等である。セメント工場の排ガスの例として、仮焼炉からの排ガスを利用することができる。また、第一ガスとして、工場の排ガスから分離及び回収することで、CO2の濃度が高められたガスを利用することもできる。
【0048】
第一導入口11を通じて第一熱交換室10内に導入された、高温のCO2含有ガスである第一ガスG1は、セメント含有物3との間で熱交換がされた後、第一ガスG1よりも温度の低いガスG1aとして、第一排出口13を通じて排出される。第一排出口13は、ガスG1aは通流可能であるが、セメント含有物3は通流できないような開度を有する仕切部材が内蔵されているのが好ましい。
【0049】
セメント含有物3は、第一熱交換室10内において、400℃以上の高温のCO2含有ガスである第一ガスG1と接触を繰り返す。この結果、高温の第一ガスG1中に含まれるCO2がセメント含有物3内の物質(C-S-H、水酸化カルシウム(CH)等)と反応し、CaCO3を生成する。つまり、セメント含有物3が炭酸化される。更に、第一ガスG1が400℃以上の高温であることから、第一熱交換室10内においてセメント含有物3が加熱され、C2Sが生成される。第一熱交換室10内において炭酸化処理及びC2Sの生成がなされたセメント含有物3は、連絡部30を通じて第二熱交換室20へと送り込まれる。セメント含有物3に対して第一熱交換室10内で行われる処理が、工程(a)に対応する。
【0050】
第二熱交換室20には、第一ガスG1よりも低温の第二ガスG2が導入される第二導入口21と、この第二ガスG2がセメント含有物3と接触することで熱交換された後のガスG2aが排出される第二排出口23とを備える。第二導入口21から導入された第二ガスG2は、第二熱交換室20内を鉛直上方に向かって流れやすいため、第二排出口23は第二導入口21よりも鉛直上方の位置に設置される。
【0051】
第一熱交換室10内で熱交換がされることで高温となったセメント含有物3が、第一熱交換室10から第二熱交換室20内に導入される。第二導入口21を通じて導入された低温の第二ガスG2は、高温のセメント含有物3と接触することで、セメント含有物3との間で熱交換がされた後、第二ガスG2よりも温度の高いガスG2aとして、第二排出口23を通じて排出される。第二排出口23は、ガスG2aは通流可能であるが、セメント含有物3は通流できないような開度を有する仕切部材が内蔵されているのが好ましい。
【0052】
第二ガスG2は、第一熱交換室10内で熱交換がされたことで温度が上昇したセメント含有物3を冷却(急冷)する目的で導入されるガスであり、例えば大気や支燃性ガスとすることができる。第二ガスG2の温度は、好適には常温~150℃程度であり、より好ましくは常温~80℃である。
【0053】
このように、第一熱交換室10内を通過することで高温化されたセメント含有物3は、第二熱交換室20内において、低温の第二ガスG2と接触することで熱交換されて冷却される。特に、図1に示す炭酸化装置1によれば、セメント含有物3は、第一熱交換室10内を通過して加熱された後、その後段に配置された第二熱交換室20を通過することで、セメント含有物3は急冷される。この結果、炭酸化が進行中であったセメント含有物3内の反応速度が急速に低下し、第一熱交換室10内で生成されたC2Sの炭酸化が抑制される。セメント含有物3に対して第二熱交換室20内で行われる処理が、工程(b)に対応する。
【0054】
炭酸化装置1は原料排出口43を備える。第二熱交換室20内において、第二ガスG2との間で熱交換がされることで急冷されたセメント含有物3は、原料排出口43を通じて排出される。図1に示す炭酸化装置1は、排出された処理後のセメント含有物3が蓄積される貯留槽44を備えている。処理後のセメント含有物3を原料排出口43を通じて排出・回収する工程が、工程(c)に対応する。
【0055】
図1に示す炭酸化装置1によれば、上述したように、第一熱交換室10内においてセメント含有物3が400℃以上のCO2含有ガスである第一ガスG1と接触することで、セメント含有物3が炭酸化されると共に、C2Sが生成される。更に、第一熱交換室10を通過して昇温されたセメント含有物3は、引き続き第二熱交換室20内を通過することで急速に冷却される。これにより、セメント含有物3に対して生じていた炭酸化反応の速度が低下し、C2Sの炭酸化が抑制される。つまり、原料排出口43を通じて排出される処理後のセメント含有物3は、第一ガスG1に含まれるCO2の固定化(炭酸化)が行われると共に、C2Sが内部に残存した状態を示す。よって、従来の処理後に得られた原料と比べて強度が向上しているため、混合材としてコンクリート等に混合して利用することができる。
【0056】
つまり、炭酸化装置1によれば、セメント含有物3に対して高温の第一ガスG1に接触させた後、急冷することにより、セメント含有物3を炭酸化しつつ、第一熱交換室10内において高温の第一ガスG1と接触することで生成されたC2Sを残存させることができる。
【0057】
第一熱交換室10内においては、第一ガスG1に含まれるCO2とセメント含有物3とが反応するため、第一導入口11を通じて導入される第一ガスG1の流量と比較して、第一排出口13を通じて排出されるガスG1aの流量は低下する。更に、第一熱交換室10内においては、高温の第一ガスG1と低温のセメント含有物3との間で熱交換が生じるため、第一導入口11を通じて導入される第一ガスG1の温度と比較して、第一排出口13を通じて排出されるガスG1aの温度は低下する。
【0058】
第一排出口13から排出されるガスG1aは、セメント含有物3との接触等で生じた粉塵を含む可能性がある。前記のように、第一排出口13を通じて排出されるガスG1aは、第一導入口11を通じて導入される第一ガスG1と比較して、流量及び温度が低下しているため、第一排出口13の後段に除塵装置を配置して、ガスG1aを除塵装置に通流させることで、粉塵を除去できる。また、除塵装置としても、比較的小型の装置を採用することが可能である。
【0059】
図2は、図1から第一熱交換室10の近傍を抽出して拡大した図面である。図2に示すように、第一熱交換室10内には、第一流動補助部材51が備えられるのが好ましい。
【0060】
第一流動補助部材51は、第一熱交換室10内に送り込まれたセメント含有物3の流動性を高める目的で設けられた部材である。図2の例では、第一流動補助部材51は、回転自在な板状部材(撹拌翼)であり、第一流動補助部材51が回転することで、第一流動補助部材51に接触したセメント含有物3に対して運動量を与えることができる。
【0061】
第一流動補助部材51は、セメント含有物3に対して追加的な運動量を加えることができれば、その構造は任意である。他の例として、第一流動補助部材51は、振動可能な板状部材、分散板、ガスノズル等が好適に利用できる。
【0062】
第一流動補助部材51によって、第一熱交換室10内におけるセメント含有物3の流動性が高められることで、セメント含有物3同士が衝突しやすくなる。セメント含有物3同士が衝突すると、粒子の表面に削れやひびが入り、表面積が増加する。この結果、セメント含有物3とCO2を含む第一ガスとの接触効率が高まり、炭酸化速度が上昇する。
【0063】
更に、第一熱交換室10内におけるセメント含有物3の流動性が高められることで、第一熱交換室10の内壁等にセメント含有物3が固着又は融着することが防止され、コーチングトラブルの発生も抑制できる。
【0064】
図2に示すように、連絡部30には、セメント含有物3の通過量を調整可能な遮蔽部材55が備えられるのが好ましい。図2に示す例では、遮蔽部材55が閉じられており、第一熱交換室10を通過した高温のセメント含有物3を一時的に貯留させることができる。遮蔽部材55としては、仕切り板、バルブ等で構成され、セメント含有物3の流れを遮断し、逆に遮断状態を解消できる機能を有する。好ましくは、遮蔽部材55が閉じられているときには、セメント含有物3のみならず、気体の流れについても遮断できるような構造である。なお、図1には、遮蔽部材55が開かれている状態が図示されている。
【0065】
図2に示すように、遮蔽部材55が閉じられていることで、第二熱交換室20内のガスG2aが第一熱交換室10側に流入することが抑制される。
【0066】
図2に示すように、連絡部30に近い側には、低温の第二ガスG2と第二熱交換室20内において高温のセメント含有物3との間で熱交換がされた後のガスG2aが排出される第二排出口23が設けられている。つまり、仮に遮蔽部材55が開けられて、第二熱交換室20内のガスが第一熱交換室10側に流入したとしても、このガスは、第二熱交換室20内において高温のセメント含有物3との間で熱交換がされたことで昇温された後のガスであるため、比較的高温である。よって、第一熱交換室10内の温度が急速に低下するということはない。ただし、第一導入口11から導入される第一ガスG1と比較すると、熱交換後のガスG2aは低温であることが想定されるため、セメント含有物3を第二熱交換室20内に流入させるタイミング以外は、遮蔽部材55を閉じておくのが好適である。
【0067】
遮蔽部材55が設けられることで、第一熱交換室10内で処理された後のセメント含有物3を第二熱交換室20内に導入するタイミングや流量を調整することができる。ただし、連絡部30内においてセメント含有物3が長時間にわたって貯留されると、貯留中にも炭酸化が継続的に進行し、第一熱交換室10内で生成されたC2Sも炭酸化することが想定される。かかる観点から、遮蔽部材55は長くても60分以内毎に開かれて、第一熱交換室10内で処理された後のセメント含有物3を第二熱交換室20内に送り込むのが好ましい。遮蔽部材55は、30分以内毎に開かれるのが好ましく、20分以内毎に開かれるのがより好ましい。
【0068】
図3は、図1から第二熱交換室20の近傍を抽出して拡大した図面である。図3に示すように、第二熱交換室20内には、第二流動補助部材52が備えられるのが好ましい。
【0069】
第二流動補助部材52は、第二熱交換室20内に送り込まれたセメント含有物3の流動性を高める目的で設けられた部材である。図3の例では、第二流動補助部材52は、第一流動補助部材51と同様に、回転自在な板状部材(撹拌翼)であり、第二流動補助部材52が回転することで、第二流動補助部材52に接触したセメント含有物3に対して運動量を与えることができる。第二流動補助部材52は、セメント含有物3に対して追加的な運動量を加えることができれば、その構造は任意である。他の例として、第二流動補助部材52は、振動可能な板状部材、分散板、ガスノズル等が好適に利用できる。
【0070】
第二流動補助部材52によって、第二熱交換室20内におけるセメント含有物3の流動性が高められることで、セメント含有物3同士が衝突しやすくなる。セメント含有物3同士が衝突すると、粒子の表面に削れやひびが入り、表面積が増加する。この結果、セメント含有物3と低温の第二ガスG2との接触効率が高められて、より急速な冷却が可能となる。この結果、第一熱交換室10内で生成された、セメント含有物3に含まれるC2Sの炭酸化を抑制する効果が高められ、第二熱交換室20から排出されるセメント含有物3の強度が更に向上する。
【0071】
第一導入口11から導入される第一ガスG1の流量や、第二導入口21から導入される第二ガスG2の流量については、各ガスの温度やセメント含有物3の温度の情報に基づいて、図示しない制御部によって制御されるものとしても構わない。
【0072】
炭酸化装置1は、第一熱交換室10で熱交換がされた後のセメント含有物3の温度を計測する温度計を備えていても構わない。例えば、図2に示すように、連絡部30内には一時的にセメント含有物3が蓄積されるため、この領域に接触温度計を設置することで、高温の第一ガスG1との間で熱交換がされた後のセメント含有物3の温度を計測することができる。また、炭酸化装置1は、第一排出口13に導かれるガスG1aの温度を計測する温度計を備えていても構わない。これらの温度計によって計測された温度情報によれば、セメント含有物3と高温の第一ガスG1との間で行われる熱交換の程度を把握することができるため、第一ガスG1の流量の制御に利用できる。
【0073】
炭酸化装置1は、第二熱交換室20で熱交換がされた後のセメント含有物3の温度を計測する温度計を備えていても構わない。例えば、図1に示すように、第二熱交換室20の底部において一時的にセメント含有物3が蓄積される構造である場合には、この領域に接触温度計を設置することで、低温の第二ガスG2との間で熱交換がされた後のセメント含有物3の温度を計測することができる。また、炭酸化装置1は、第二排出口23に導かれるガスG2aの温度を計測する温度計を備えていても構わない。これらの温度計によって計測された温度情報によれば、高温のセメント含有物3と低温の第二ガスG2との間で行われる熱交換の程度を把握することができるため、第二ガスG2の流量の制御に利用できる。
【0074】
[第二実施形態]
炭酸化装置の第二実施形態について、主として第一実施形態と異なる箇所について説明する。なお、第一実施形態と共通の要素については、共通の符号を付すことで、その説明が適宜簡略化又は省略される。
【0075】
図4は、炭酸化装置の第二実施形態の構成を模式的に示す概念図である。また、図5は、図4の一部、より詳細には第一熱交換室10の近傍を抽出した拡大図である。以下、図4図5を適宜参照しながら説明する。
【0076】
第二実施形態の炭酸化装置1は、第一実施形態の炭酸化装置1と比較して、第一熱交換室10の構造が異なっている。他の要素については、第一実施形態の炭酸化装置1と共通である。
【0077】
図4に示す炭酸化装置1は、第一熱交換室10内に第一ガスG1が導入される第一導入口11と、第一熱交換室10内にセメント含有物3を導入する原料導入口41とが近接した位置に配置されている。また、図4に示すように、第一熱交換室10はU字又はV字の形状を呈している。
【0078】
図5に示すように、第一熱交換室10は、第一領域61と第二領域62と第三領域63とを含む。
【0079】
第一領域61は、第一熱交換室10内に第一ガスG1が導入される第一導入口11に最も近い領域である。第一領域61内に導入された第一ガスG1は、上昇気流を形成しながら第一領域61内を進行する。
【0080】
第二領域62は、第一領域61よりも鉛直上方の位置において第一領域61に連絡されている。第一領域61を通過した第一ガスG1は、第二領域62に到達する。
【0081】
第三領域63は、第二領域62よりも鉛直下方の位置において第二領域62に連絡されている。第二領域62を通過して第三領域63内に導かれた第一ガスG1は、下降気流を形成しながら第三領域63内を進行する。
【0082】
本実施形態の炭酸化装置1によれば、第一熱交換室10内に導入されたセメント含有物3は、第一領域61内において高温の第一ガスG1と接触した後、この第一ガスG1の上昇気流に乗って第二領域62へと運ばれる。その後、セメント含有物3は、第一ガスG1の下降気流に乗って第三領域63内を下降しつつ落下し、連絡部30側へと運ばれる。
【0083】
つまり、本実施形態の炭酸化装置1においては、セメント含有物3は、第一導入口11から導入された第一ガスG1と接触した後、連絡部30側に達する迄の間に、既に接触した第一ガスG1よりも高温の第一ガスG1と接触する可能性が極めて低い。
【0084】
例えば、第一実施形態の炭酸化装置1の場合、図2に示すように、原料導入口41から導入されて連絡部30に向かうセメント含有物3の流れは、第一導入口11から導入されて第一排出口13に向かう高温の第一ガスG1の流れと実質的に逆向きになる。この場合、第一熱交換室10内で炭酸化されたセメント含有物3が、連絡部30に向けて流れる間に更に高温の第一ガスG1と接触する結果、第一導入口11から導入される第一ガスG1の温度がかなり高温である場合(典型的には750℃以上)に脱炭酸が生じる可能性がある。
【0085】
一方で、本実施形態の炭酸化装置1の場合、図5に示すように、原料導入口41から導入されて連絡部30に向かうセメント含有物3の流れを、第一導入口11から導入されて第一排出口13に向かう高温の第一ガスG1の流れと実質的に同じ向きにすることができる。高温状態の第一ガスG1がセメント含有物3に接触する時点においては、セメント含有物3に炭酸化が生じる前の状態であり、その後に接触する第一ガスG1は熱交換がされた後のガスであるため第一導入口11から導入された直後よりも温度が低下している。よって、第一導入口11から第一熱交換室10内に導入される第一ガスG1の温度を750℃以上の高温にしても、炭酸化により生じた物質(典型的には、CaCO3)が脱炭酸する現象を抑制できる。
【0086】
かかる観点から、図4図5に示す形状に限らず、原料導入口41を、第一熱交換室10内において第一導入口11から第一排出口13に向かう第一ガスG1の気流方向に関して、第一導入口11と第一排出口13との間に配置しておくのが好適であることが分かる。この構成にすることで、原料導入口41から導入されて連絡部30に向かうセメント含有物3の流れを、第一導入口11から導入されて第一排出口13に向かう高温の第一ガスG1の流れの向きに近づけることができる。
【0087】
[別実施形態]
以下、別実施形態につき説明する。
【0088】
〈1〉各実施形態の炭酸化装置1は、第一熱交換室10と第二熱交換室20とを連絡する連絡部30を備えるものとしたが、第一熱交換室10と第二熱交換室20とが直接連絡されていてもよい。この場合、遮蔽部材55は、第一熱交換室10の第二熱交換室20に近い側に位置する領域と、第二熱交換室20の第一熱交換室10に近い側に位置する領域との間に配置されるのが好適である。典型的には、遮蔽部材55は、第一熱交換室10と第二熱交換室20との境界付近に配置される。
【0089】
原料排出口43を通じて排出されたセメント含有物3を、コンベヤ等で上方に搬送して原料導入口41に導き、再び第一熱交換室10内に導入することで、セメント含有物3を循環利用するものとしても構わない。搬送に際しては、コンベヤ以外に、空気輸送装置、フィーダ、バッチ式荷上げ装置等が利用できる。この構成によれば、セメント含有物3は、複数回にわたって、第一熱交換室10内で高温のCO2含有ガスである第一ガスG1と接触する。これにより、セメント含有物3の炭酸化率を高める効果が期待される。
【0090】
〈3〉本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上述した実施形態は本発明のより良い理解のために詳細に説明したものであり、必ずしも説明の全ての構成を備えるものに限定されるものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0091】
1 :炭酸化装置
3 :セメント含有物
10 :第一熱交換室
11 :第一導入口
13 :第一排出口
20 :第二熱交換室
21 :第二導入口
23 :第二排出口
30 :連絡部
41 :原料導入口
42 :原料貯留部
43 :原料排出口
44 :貯留槽
51 :第一流動補助部材
52 :第二流動補助部材
55 :遮蔽部材
61 :第一領域
62 :第二領域
63 :第三領域
G1 :第一ガス
G1a :第一排出口から排出されるガス
G2 :第二ガス
G2a :第二排出口から排出されるガス
図1
図2
図3
図4
図5