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特開2024-141730加速度検出デバイス、及び加速度センサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141730
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】加速度検出デバイス、及び加速度センサ
(51)【国際特許分類】
   G01P 15/125 20060101AFI20241003BHJP
   G01P 15/08 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G01P15/125 Z
G01P15/08 101A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053530
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】ヘラー,マーティン ウィルフリード
(72)【発明者】
【氏名】藤田 有真
(57)【要約】
【課題】検出可能範囲と感度が可変になる加速度検出デバイス、及び加速度センサを提供する。
【解決手段】加速度検出デバイス1は、マス17と共にX軸方向に変位可能である、第1可動電極18と、第1可動電極18に対してX軸方向に間隔を空けて対向する、第1固定電極19と、X軸方向に間隔を空けて対向しており、マス17と共にX軸方向に変位可能である、一対の第2可動電極20と、一対の第2可動電極20の間に配置される、第2固定電極21であって、一対の第2可動電極20と第2固定電極21にそれぞれ電圧が印可されるとき、一対の第2可動電極20との間に静電気力F,Fを生じる、第2固定電極21と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビティを有する、基板と、
前記キャビティの内側において、前記基板に対して機械的に接続されている、アンカーと、
前記アンカーに対して機械的に接続されており、第1方向に伸縮可能である、ばねと、
前記ばねに対して機械的に接続されており、前記基板から分離していることによって、前記第1方向に変位可能である、マスと、
前記マスに対して機械的に接続されて電気的に絶縁されており、前記マスから前記第1方向に垂直な第2方向に延びており、前記基板から分離していることによって、前記マスと共に前記第1方向に変位可能である、第1可動電極と、
前記基板に対して機械的に接続されて電気的に絶縁されており、前記第1可動電極に対して前記第1方向に間隔を空けて対向する、第1固定電極と、
前記第1方向に間隔を空けて対向するように、前記マスに対して機械的に接続されて電気的に絶縁されており、前記マスから前記第2方向に延びており、前記基板から分離していることによって、前記マスと共に前記第1方向に変位可能である、一対の第2可動電極と、
前記基板に対して機械的に接続されて電気的に絶縁されており、前記一対の第2可動電極の間に配置される、第2固定電極であって、前記一対の第2可動電極と前記第2固定電極にそれぞれ電圧が印可されるとき、前記一対の第2可動電極との間に静電気力を生じる、第2固定電極と、
を備える加速度検出デバイス。
【請求項2】
前記一対の第2可動電極と前記第2固定電極は、前記第1方向に延びて、互いに間隔を空けて前記第2方向に対向する櫛歯状の可動側櫛歯電極と固定側櫛歯電極をそれぞれ有する、請求項1に記載の加速度検出デバイス。
【請求項3】
前記加速度検出デバイスは、
前記アンカーと前記ばねとの間、
前記ばねと前記マスとの間、
前記マスと前記第1可動電極との間、
前記基板と前記第1固定電極との間、
前記マスと前記一対の第2可動電極との間、
及び前記基板と前記第2固定電極との間をそれぞれ、機械的に接続する一方、電気的に絶縁する、アイソレーションジョイントを備える、請求項1又は2に記載の加速度検出デバイス。
【請求項4】
請求項1に記載の加速度検出デバイスを備える加速度センサであって、
前記一対の第2可動電極と前記第2固定電極との間の静電気力を制御するように電圧を印加して、前記ばねと前記マスによって構成されるばね-マス系の共振周波数を調整する、共振周波数調整部と、
前記第1可動電極と前記第1固定電極との間の静電容量の変化に応じて加速度を算出する、加速度算出部と、
を備える加速度センサ。
【請求項5】
前記加速度センサは、
前記一対の第2可動電極に電圧が印可されるときの前記第2固定電極の電位に基づいて、前記マスの位置を検出して、前記第1可動電極と前記第1固定電極とが固着していることを判断する、電極固着判断部と、
前記電極固着判断部によって、前記第1可動電極と前記第1固定電極とが固着していることが判断された後、前記一対の第2可動電極と前記第2固定電極との間の静電気力を制御するように電圧を印加して、前記マスを前記第1方向に変位させて、前記第1可動電極と前記第1固定電極との間の固着を解除する、電極固着解除部と、を備える、請求項4に記載の加速度センサ。
【請求項6】
前記加速度センサは、
前記一対の第2可動電極と前記第2固定電極との間の静電気力を制御するように電圧を印加して、前記マスを前記第1方向に変位させて、加速度が前記マスに与えられていないときの前記第1方向における前記マスのゼロ点を補正する、オフセットトリム部を備える、請求項4又は5に記載の加速度センサ。
【請求項7】
前記加速度センサは、
加速度を算出可能であることを診断するセルフテストを行うとき、前記一対の第2可動電極と前記第2固定電極との間の静電気力を制御するように電圧を印加して、前記マスを前記第1方向に変位させる、セルフテスト部を備える、請求項4又は5に記載の加速度センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加速度検出デバイス、及び加速度センサに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、加速度が与えられることによって変化する第1電極と第2電極との間の距離に応じて変化する静電容量に基づいて、加速度を検出する静電容量型加速度センサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-88083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
静電容量型加速度センサは、一般的に、第1電極又は第2電極のいずれかがマスに対して機械的に接続されている。上記マスは、基板に固定されているばねに対して機械的に接続されており、ばねと共にばね-マス系を構成する。静電容量型加速度センサの検出可能範囲は、上記ばね-マス系の共振周波数に応じて決められる。ばねが機械ばねである場合、共振周波数は一定であるため、上記検出可能範囲も一定であるが、静電容量型加速度センサを適用する種々の製品に適応するため、検出可能範囲を可変させることが要求される場合がある。
【0005】
そこで、本開示は、検出可能範囲と感度が可変になる加速度検出デバイス、及び加速度センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
まず、本開示は、
キャビティを有する、基板と、
前記キャビティの内側において、前記基板に対して機械的に接続されている、アンカーと、
前記アンカーに対して機械的に接続されており、第1方向に伸縮可能である、ばねと、
前記ばねに対して機械的に接続されており、前記基板から分離していることによって、前記第1方向に変位可能である、マスと、
前記マスに対して機械的に接続されて電気的に絶縁されており、前記マスから前記第1方向に垂直な第2方向に延びており、前記基板から分離していることによって、前記マスと共に前記第1方向に変位可能である、第1可動電極と、
前記基板に対して機械的に接続されて電気的に絶縁されており、前記第1可動電極に対して前記第1方向に間隔を空けて対向する、第1固定電極と、
前記第1方向に間隔を空けて対向するように、前記マスに対して機械的に接続されて電気的に絶縁されており、前記マスから前記第2方向に延びており、前記基板から分離していることによって、前記マスと共に前記第1方向に変位可能である、一対の第2可動電極と、
前記基板に対して機械的に接続されて電気的に絶縁されており、前記一対の第2可動電極の間に配置される、第2固定電極であって、前記一対の第2可動電極と前記第2固定電極にそれぞれ電圧が印可されるとき、前記一対の第2可動電極との間に静電気力を生じる、前記第2固定電極と、
を備える加速度検出デバイスを提供する。
【0007】
また、本開示は、
前記加速度検出デバイスを備える加速度センサであって、
前記一対の第2可動電極と前記第2固定電極との間の静電気力を制御するように電圧を印加して、前記ばねと前記マスによって構成されるばね-マス系の共振周波数を調整する、共振周波数調整部と、
前記第1可動電極と前記第1固定電極との間の静電容量の変化に応じて加速度を算出する、加速度算出部と、
を備える加速度センサを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本開示の加速度検出デバイスは、第2固定電極と一対の第2可動電極との間に生じる静電気力を制御することによって、ばねとマスによって構成されるばね-マス系の共振周波数を調整すること、及びマスを第1方向に変位させることができる。共振周波数を調整することにより、加速度検出デバイスの検出可能範囲と感度は可変になる。また、一対の第2可動電極に電圧が印可されるときの第2固定電極の電位に基づいて、マスの位置を検出することができる。
【0009】
また、本開示の加速度センサは、共振周波数調整部によって、加速度検出デバイスを用いて検出できる加速度の検出可能範囲と感度を調整することができる。共振周波数調整部による加速度の検出可能範囲と感度の調整の後、加速度算出部によって、加速度を所望の検出可能範囲と感度で検出できる。
【0010】
したがって、本開示の加速度検出デバイス、及び加速度センサにより、検出可能範囲と感度が可変になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の一実施形態に係る加速度検出デバイスの平面図。
図2図1の加速度検出デバイスの第1基板の平面図。
図3図1の加速度検出デバイスを含む加速度センサのブロック図。
図4図3の加速度算出部によって行われる加速度算出のフローチャート。
図5図3の共振周波数パッシブ調整部によって行われる共振周波数調整のフローチャート。
図6図3の加速度検出デバイスと共振周波数アクティブ調整部のブロック図。
図7図6の共振周波数アクティブ調整部によって行われる共振周波数調整のフローチャート。
図8図3の電極固着判断・解除部によって行われる電極固着の判断と解除のフローチャート。
図9図3のオフセットトリム部によって行われるオフセットトリムのフローチャート。
図10図3のセルフテスト部によって行われるセルフテストのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の一実施形態について添付図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは相違している。
【0013】
[加速度検出デバイスの構造]
図1は、本開示の一実施形態に係る加速度検出デバイス1の平面図である。加速度検出デバイス1は、図1の奥側に位置している第1基板11と、図1の手前側に位置している第2基板12と、を備える。第1基板11と第2基板12は、それぞれ、平面視において、所定の第1方向と、該第1方向に垂直な第2方向と、に沿って延びる四角形状であって、第1基板11の上方に第2基板12を配置して、高さ方向に互いに対向して接合されている。
【0014】
本実施形態において、第1方向は、図1の上下方向であって、X軸方向と呼称される。第2方向は、図1の左右方向であって、Y軸方向と呼称される。高さ方向は、図1の手前側から奥側に沿う方向であって、Z軸方向と呼称される。また、図1の上方は+X方向、下方は-X方向、右側は+Y方向、左側は-Y方向、手前側は+Z方向、奥側は-Z方向と呼称される。
【0015】
本実施形態において、第1基板11は、シリコンからなるベース基板である一方、第2基板12は、シリコンからなるリッド基板である。第1基板11は、後述する第1基板11に設けられている電気回路に対して電気的に接続されて電気信号の入出力を行う電極パッド13a~13fを有する。
【0016】
図2は、図1の加速度検出デバイス1の第1基板11の平面図である。第1基板11は、+Z方向側の表面において、-Z方向に窪んでいる四角形状のキャビティ14を有する。
【0017】
加速度検出デバイス1は、キャビティ14の+X方向側の縁と-X方向側の縁にそれぞれ設けられている一対のアンカー15を備える。一対のアンカー15は、それぞれ、第1基板11に対して機械的に接続されており、キャビティ14の内側に向けてX軸方向に延びている。
【0018】
加速度検出デバイス1は、X軸方向において、一対のアンカー15よりもキャビティ14の内側に配置されている一対のばね16を備える。一対のばね16は、それぞれ、アンカー15に対して機械的に接続されて電気的に絶縁されており、X軸方向に伸縮可能である。
【0019】
本実施形態において、一対のばね16は、Y軸方向に延びており、+Y方向に延びる板状ばね16aと-Y方向に延びる板状ばね16bを含むが、他のばね形状、例えばコイル状ばねであってもよい。
【0020】
加速度検出デバイス1は、X軸方向において、一対のばね16の間に配置されているマス17を備える。マス17は、一対のばね16に対して機械的に接続されて電気的に絶縁されており、第1基板11のキャビティ14の底部から+Z方向に分離している。マス17は、第1基板11から分離していることによって、X軸方向の加速度が与えられるとき、X軸方向に変位可能である。
【0021】
本実施形態において、マス17は、X軸方向に延びる長方形状であるが、他の形状、例えば六角形状であってもよい。
【0022】
加速度検出デバイス1は、マス17よりもY軸方向の両側において、X軸方向に離間してそれぞれ配置されている4つの第1可動電極18を備える。第1可動電極18は、それぞれ、マス17の+Y方向側の縁の+X方向側と-X方向側、及びマス17の-Y方向側の縁の+X方向側と-X方向側に対して機械的に接続されて電気的に絶縁されている。第1可動電極18は、それぞれ、マス17からY軸方向に延びており、第1基板11のキャビティ14の底部から+Z方向に分離している。第1可動電極18は、それぞれ、マス17に機械的に接続されて第1基板11から分離していることによって、マス17と共にX軸方向に変位可能である。
【0023】
本実施形態において、第1可動電極18は、それぞれ、互いにX軸方向に対向して機械的に接続されて電気的に絶縁されている一対の平板電極18a,18bを有するが、他の電極形状、例えば櫛歯電極を有してもよい。
【0024】
加速度検出デバイス1は、キャビティ14の+Y方向側の縁と-Y方向側の縁において、X軸方向に離間してそれぞれ配置されている4つの第1固定電極19を備える。第1固定電極19は、それぞれ、第1基板11の内側における+Y方向側の縁の+X方向側と-X方向側、及び第1基板11の内側における-Y方向側の縁の+X方向側と-X方向側に対して機械的に接続されて電気的に絶縁されている。第1固定電極19は、それぞれ、第1基板11からY軸方向に延びており、第1可動電極18に対してX軸方向に間隔を空けて対向している。
【0025】
本実施形態において、第1固定電極19は、それぞれ、第1可動電極18を+X方向と-X方向の両側から挟み込むように、互いにX軸方向に対向している一対の平板電極19a,19bを有するが、第1可動電極18の形状に合わせて他の電極形状、例えば櫛歯電極を有してもよい。
【0026】
第1可動電極18の平板電極18aは、第1固定電極19の平板電極19aに対向している。第1可動電極18の平板電極18bは、第1固定電極19の平板電極19bに対向している。第1可動電極18と第1固定電極19は、マス17が、X軸方向の加速度を与えられていない、すなわち初期位置であるゼロ点に位置している場合、平板電極18aと平板電極19aとの間の間隔D1が平板電極18bと平板電極19bとの間の間隔D2と等しくなるように、配置されている。
【0027】
加速度検出デバイス1は、マス17よりもY軸方向の両側におけるそれぞれの第1可動電極18の間において、X軸方向に離間してそれぞれ配置されている二対の第2可動電極20を備える。二対の第2可動電極20は、それぞれ、マス17の+X方向側に対して機械的に接続されて電気的に絶縁されており、マス17からY軸方向に延びている+X方向側第2可動電極20aと、マス17の-X方向側に対して機械的に接続されて電気的に絶縁されており、マス17からY軸方向に延びている-X方向側第2可動電極20bと、を有する。+X方向側第2可動電極20aと-X方向側第2可動電極20bは、第1基板11のキャビティ14の底部から+Z方向に分離している。二対の第2可動電極20は、それぞれ、マス17に機械的に接続されて、第1基板11から分離していることによって、マス17と共にX軸方向に変位可能である。
【0028】
加速度検出デバイス1は、キャビティ14の+Y方向側の縁と-Y方向側の縁に配置されている2つの第2固定電極21を備える。第2固定電極21は、それぞれ、第1基板11の内側における+Y方向側の縁と-Y方向側の縁に対して機械的に接続されて電気的に絶縁されている。第2固定電極21は、それぞれ、第1基板11からY軸方向に延びており、+X方向側第2可動電極20aと-X方向側第2可動電極20bとの間に間隔を空けて配置されている。
【0029】
本実施形態において、+X方向側第2可動電極20aと第2固定電極21は、X方向に延びて、互いに間隔を空けてY軸方向に対向する櫛歯状の可動側櫛歯電極22aと固定側櫛歯電極23aをそれぞれ有する。また、-X方向側第2可動電極20bと第2固定電極21は、X方向に延びて、互いに間隔を空けてY軸方向に対向する櫛歯状の可動側櫛歯電極22bと固定側櫛歯電極23bをそれぞれ有する。
【0030】
第1可動電極18と第2可動電極20は、それぞれ、マス17に対して、アイソレーションジョイント24を介して、機械的に接続されて電気的に絶縁されている。マス17は、一対のばね16に対して、アイソレーションジョイント24を介して、機械的に接続されて電気的に絶縁されている。一対のばね16は、一対のアンカー15に対して、アイソレーションジョイント24を介して、機械的に接続されて電気的に絶縁されている。第1固定電極19と第2固定電極21は、第1基板11に対して、アイソレーションジョイント24を介して、機械的に接続されて電気的に絶縁されている。
【0031】
アイソレーションジョイント24は、例えば第1基板11にトレンチを形成して、トレンチの両壁の導電性シリコンを熱酸化することによって形成された酸化シリコンであって、アイソレーションジョイント24の両側を機械的に接続して電気的に絶縁する。アイソレーションジョイント24は、第1基板11のキャビティ14の底部から+Z方向に分離している。
【0032】
4つの第1可動電極18の平板電極18aの端部には、リード25aが電気的に接続されている。リード25aは、マス17において、不図示の配線層を介して+X方向側のばね16の板状ばね16bに電気的に接続されており、+X方向側の板状ばね16bを介して電極パッド13aに電気的に接続されている。
【0033】
4つの第1可動電極18の平板電極18bの端部には、リード25bが電気的に接続されている。リード25bは、マス17において、不図示の配線層を介して-X方向側のばね16の板状ばね16aに電気的に接続されており、-X方向側の板状ばね16aを介して電極パッド13bに電気的に接続されている。
【0034】
2つの+X方向側第2可動電極20aの端部には、リード25cが電気的に接続されている。リード25cは、マス17において、不図示の配線層を介して-X方向側のばね16の板状ばね16bに電気的に接続されており、-X方向側の板状ばね16bを介して電極パッド13cに電気的に接続されている。
【0035】
2つの-X方向側第2可動電極20bの端部には、リード25dが電気的に接続されている。リード25dは、マス17において、不図示の配線層を介して+X方向側のばね16の板状ばね16aに電気的に接続されており、+X方向側の板状ばね16aを介して電極パッド13dに電気的に接続されている。
【0036】
4つの第1固定電極19の端部には、それぞれ、リード25eが電気的に接続されている。リード25eは、電極パッド13eに電気的に接続されている。
【0037】
2つの第2固定電極21の端部には、それぞれ、リード25fが電気的に接続されている。リード25fは、電極パッド13fに電気的に接続されている。
【0038】
本実施形態において、マス17は、複数の孔26を有している。複数の孔26の底部は、それぞれ、等方性エッチングにより、互いに繋がって、キャビティ14が形成される。よって、マス17、及びマス17に機械的に接続している一対のばね16、4つの第1可動電極18、二対の第2可動電極20は、キャビティ14の底部から+Z方向に分離している。
【0039】
[加速度検出デバイスの動作]
電極パッド13a,13bには、第1可動電極18の平板電極18a,18bに対して互いに逆位相の電圧を印加するように、外部の交流電源が接続される。
【0040】
マス17は、X軸方向の加速度を与えられていない場合、初期位置であるゼロ点に位置する。マス17がゼロ点に位置している場合、第1可動電極18の平板電極18aと第1固定電極19の平板電極19aとの間の間隔D1が、第1可動電極18の平板電極18bと第1固定電極19の平板電極19bとの間の間隔D2と等しいため、平板電極18aと平板電極19aとの間の静電容量Cは、平板電極18bと平板電極19bとの間の静電容量Cと等しい。このとき、第1可動電極18に対向する第1固定電極19の電位は、平板電極18a,18bのそれぞれの電位の中間である中間電位Vmidになる。
【0041】
マス17が、X軸方向の加速度を与えられている場合、初期位置であるゼロ点からX軸方向に変位する。マス17がゼロ点からX軸方向に変位している場合、間隔D1が間隔D2と異なるため、静電容量Cは静電容量Cと異なる大きさになる。このとき、第1可動電極18に対向する第1固定電極19の電位は、中間電位Vmidと異なる電位になる。したがって、電極パッド13eを介して第1固定電極19の電位を検出することにより、第1固定電極19の電位と中間電位Vmidとの間の差から、マス17のX軸方向における変位量、及びマス17に与えられたX軸方向の加速度を算出することができる。
【0042】
電極パッド13c,13d,13fには、+X方向側第2可動電極20a、-X方向側第2可動電極20b、及び第2固定電極21に対してそれぞれ電圧を印加するように、外部の電源が接続される。
【0043】
+X方向側第2可動電極20aと第2固定電極21と-X方向側第2可動電極20bとの間で通電していることによって、静電誘導により、+X方向側第2可動電極20aと第2固定電極21との間、及び-X方向側第2可動電極20bと第2固定電極21との間において、互いに引き合う静電気力F,Fが生じる。
【0044】
静電気力は、距離の二乗に反比例することが知られている。したがって、例えば、マス17が、+X軸方向の加速度を与えられて、初期位置であるゼロ点から+X軸方向に変位した場合、+X方向側第2可動電極20aと第2固定電極21との間の距離D3が小さくなるため、+X方向側第2可動電極20aと第2固定電極21との間の静電気力Fは大きくなり、マス17がさらに+X軸方向に変位し易くなる。また、マス17が、-X軸方向の加速度を与えられて、初期位置であるゼロ点から-X軸方向に変位した場合、-X方向側第2可動電極20bと第2固定電極21との間の距離D4が小さくなるため、-X方向側第2可動電極20bと第2固定電極21との間の静電気力Fは大きくなり、マス17がさらに-X軸方向に変位し易くなる。したがって、+X方向側第2可動電極20aと第2固定電極21との間の静電気力F、又は-X方向側第2可動電極20bと第2固定電極21との間の静電気力Fは、マス17に与えられる加速度を助けるように同じ方向に作用して、一対のばね16の復元力に対向するように作用する。
【0045】
+X方向側第2可動電極20aの可動側櫛歯電極22aと第2固定電極21の固定側櫛歯電極23aのY軸方向にオーバーラップする面積は、マス17のX軸方向の変位に対して線形に変化する。同様に、-X方向側第2可動電極20bの可動側櫛歯電極22bと第2固定電極21の固定側櫛歯電極23bのY軸方向にオーバーラップする面積は、マス17のX軸方向の変位に対して線形に変化する。静電容量は電極のオーバーラップする面積に比例することが知られている。したがって、+X方向側第2可動電極20aと第2固定電極21との間の静電容量Cと、-X方向側第2可動電極20bと第2固定電極21との間の静電容量Cは、それぞれ、マス17のX軸方向の変位に対して線形に変化する。
【0046】
2つの電極間の静電エネルギーは静電容量に比例することが知られている。したがって、+X方向側第2可動電極20aと第2固定電極21との間の静電エネルギーは、静電容量Cに比例すると共に、マス17のX軸方向の変位に対して線形に変化する。同様に、-X方向側第2可動電極20bと第2固定電極21との間の静電エネルギーは、静電容量Cに比例すると共に、マス17のX軸方向の変位に対して線形に変化する。
【0047】
2つの電極間の静電気力F,Fは、2つの電極間の距離で静電エネルギーを微分することにより算出されることが知られている。したがって、静電気力F,Fは、以下の数1と数2に示す関係により定められる。数1と数2において、xはマス17のX軸方向の変位量である。また、Vは+X方向側第2可動電極20aと第2固定電極21との間に印加する電圧である。また、Vは-X方向側第2可動電極20bと第2固定電極21との間に印加する電圧である。また、βは、静電容量C又は静電容量Cを変位量xで微分した値である。
【数1】
【数2】
【0048】
一対のばね16、+X方向側第2可動電極20aと第2固定電極21、-X方向側第2可動電極20bと第2固定電極21、及びマス17によって構成される加速度検出デバイス1のばね-マス系に与えられる力の総和Feffは、以下の数3に示す関係により定められる。数3において、Fmechは一対のばね16の復元力である。
【数3】
【0049】
電極パッド13cから+X方向側第2可動電極20aに印加される電圧が、電極パッド13dから-X方向側第2可動電極20bに印加される電圧と等しい場合、+X方向側第2可動電極20aと第2固定電極21との間に印加する電圧Vと、-X方向側第2可動電極20bと第2固定電極21との間に印加する電位差Vは、それぞれ、マス17のX軸方向の変位量xに対して、以下の数4と数5に示す関係により定められる。数4と数5において、Vは、マス17がX軸方向の加速度を与えられていない場合の電圧V,Vである。また、γは、+X方向側第2可動電極20a、-X方向側第2可動電極20b、第2固定電極21の形状と大きさにより定まる係数である。
【数4】
【数5】
【0050】
数3、数4、数5に示す関係から、ばね-マス系に与えられる力の総和Feffとマス17のX軸方向の変位量xとの間の関係は、以下の数6により定められる。数6において、kmechは、一対のばね16の機械的なばね定数である。
【数6】
【0051】
したがって、+X方向側第2可動電極20aと第2固定電極21との間の静電気力F、及び-X方向側第2可動電極20bと第2固定電極21との間の静電気力Fは、マス17のX軸方向の変位量xに応じて、マス17に与えられる加速度と同じ向きに働く弾性力、すなわち一対のばね16の復元力に対向する弾性力として作用する。
【0052】
加速度検出デバイス1のばね-マス系全体のばね定数keffは、以下の数7に示す関係により定められる。数7において、kelecは、+X方向側第2可動電極20aと第2固定電極21との間の静電気力Fと、-X方向側第2可動電極20bと第2固定電極21との間の静電気力Fに関する静電的なばね定数である。
【数7】
【0053】
ばね-マス系の共振周波数f0は、以下の数8に示す関係により算出されることが知られている。数8において、mはマスの質量である。
【数8】
【0054】
したがって、加速度検出デバイス1のばね-マス系の共振周波数f0は、以下の数9に示す関係により定められる。
【数9】
【0055】
加速度検出デバイス1の検出可能範囲と感度は、共振周波数f0に応じて決まる。共振周波数f0が大きいほど、加速度検出デバイス1に与えられる加速度の振動数が共振周波数f0に到達し難いため、加速度検出デバイス1の検出可能範囲は広くなる。共振周波数f0が小さいほど、マス17の振動は大きくなり易いため、加速度検出デバイス1の感度は高くなる。
【0056】
[加速度センサの構成]
図3は、図1の加速度検出デバイス1を含む加速度センサ100のブロック図である。
【0057】
加速度センサ100は、加速度検出デバイス1の電極パッド13a,13b,13eに電気的に接続されている加速度算出部101を備える。加速度算出部101は、平板電極18aと平板電極19aとの間の静電容量C、及び平板電極18bと平板電極19bとの間の静電容量Cの変化に応じて、マス17に与えられたX軸方向の加速度を算出する。
【0058】
加速度センサ100は、電極パッド13c,13d,13fに電気的に接続されている共振周波数パッシブ調整部102aを備える。共振周波数パッシブ調整部102aは、+X方向側第2可動電極20aと第2固定電極21との間の静電気力F、及び-X方向側第2可動電極20bと第2固定電極21との間の静電気力Fを制御するように電圧を印加して、加速度検出デバイス1のばね-マス系の共振周波数f0を所望の値に調整する。特に、共振周波数パッシブ調整部102aは、共振周波数f0を小さくして、加速度検出デバイス1の感度を高くすることができる。
【0059】
加速度センサ100は、電極パッド13c,13d,13fに電気的に接続されている共振周波数アクティブ調整部102bを備える。共振周波数アクティブ調整部102bは、+X方向側第2可動電極20aと第2固定電極21との間の静電気力F、及び-X方向側第2可動電極20bと第2固定電極21との間の静電気力Fを制御するように電圧を印加して、加速度検出デバイス1のばね-マス系の共振周波数f0を所望の値に調整する。特に、共振周波数アクティブ調整部102bは、共振周波数f0を大きくして、加速度検出デバイス1の検出可能範囲を広くすることができる。
【0060】
加速度センサ100は、電極パッド13a,13b,13c,13d,13e,13fに電気的に接続されている電極固着判断・解除部103を備える。電極固着判断・解除部103は、二対の第2可動電極20に電圧が印可されるときの第2固定電極21の電位に基づいて、マス17の位置を検出して、第1可動電極18と第1固定電極19とが固着していることを判断する。電極固着判断・解除部103は、第1可動電極18と第1固定電極19とが固着していることが判断された後、第1可動電極18の平板電極18aと第1固定電極19の平板電極19aとの間の静電気力F、第1可動電極18の平板電極18bと第1固定電極19の平板電極19bとの間の静電気力F、+X方向側第2可動電極20aと第2固定電極21との間の静電気力F、及び-X方向側第2可動電極20bと第2固定電極21との間の静電気力Fを制御するように電圧を印加して、マス17をX軸方向に変位させて、第1可動電極18と第1固定電極19との間の固着を解除する。
【0061】
加速度センサ100は、電極パッド13a,13b,13c,13d,13e,13fに電気的に接続されているオフセットトリム部104を備える。オフセットトリム部104は、X軸方向の加速度がマス17に与えられていないとき、+X方向側第2可動電極20aと第2固定電極21との間の静電気力F、及び-X方向側第2可動電極20bと第2固定電極21との間の静電気力Fを制御するように電圧を印加して、マス17をX軸方向に変位させて、マス17のゼロ点を補正するオフセットを実行する。
【0062】
加速度センサ100は、電極パッド13c,13dに電気的に接続されているセルフテスト部105を備える。セルフテスト部105は、加速度を算出可能であることを診断するセルフテストを行うとき、+X方向側第2可動電極20aと第2固定電極21との間の静電気力F、及び-X方向側第2可動電極20bと第2固定電極21との間の静電気力Fを制御するように電圧を印加して、マス17をX軸方向に変位させる。
【0063】
本実施形態において、加速度算出部101、共振周波数パッシブ調整部102a、共振周波数アクティブ調整部102b、電極固着判断・解除部103、オフセットトリム部104、セルフテスト部105は、それぞれ、加速度検出デバイス1と共に、加速度センサ100内に設けられたASIC(特定用途向け集積回路)により実現されており、それぞれの機能を実行するためのプログラムが記憶されているメモリを有する。
【0064】
本実施形態において、加速度センサ100は、共振周波数パッシブ調整部102aと共振周波数アクティブ調整部102bを備えるが、いずれか片方だけを備えてもよく、それぞれの機能をまとめて有する単一の共振周波数調整部を備えてもよい。
【0065】
本実施形態において、加速度センサ100は、電極固着判断・解除部103を備えるが、第1可動電極18と第1固定電極19とが固着していることを判断する電極固着判断部と、第1可動電極18と第1固定電極19との間の固着を解除する電極固着解除部とをそれぞれ備えてもよい。
【0066】
[加速度算出部]
図4は、図3の加速度算出部101によって行われる加速度算出のフローチャートであって、特に加速度算出部101によって実行される制御処理を示している。加速度算出部101のメモリには、図示するフローチャートに沿って加速度算出を行うためのプログラムが記憶されている。
【0067】
ステップS1において、加速度算出部101は、電極パッド13eを介して、第1固定電極19の電位Vを検出する。
【0068】
上述のように、電極パッド13a,13bには、第1可動電極18の平板電極18a,18bに対して互いに逆位相の電圧を印加するように、外部の交流電源が接続されている。マス17がX軸方向の加速度を与えられていない場合、第1固定電極19の電位Vは、平板電極18a,18bのそれぞれの電位の中間である中間電位Vmidになる。マス17がX軸方向の加速度を与えられている場合、第1固定電極19の電位Vは、中間電位Vmidと異なる電位になる。加速度算出部101は、マス17に与えられたX軸方向の加速度に応じて変化する第1固定電極19の電位Vを検出する。
【0069】
本実施形態において、平板電極18aには、電極パッド13aを介して、1.0Vの電圧が印可される。また、平板電極18bには、電極パッド13bを介して、4.0Vの電圧が印可される。したがって、中間電位Vmidは、2.5Vになる。平板電極18a及び平板電極18bに印加される電圧と中間電位Vmidは、上述の値に限定されるものではなく、種々の値が設定されてもよい。
【0070】
ステップS2において、加速度算出部101は、検出された第1固定電極19の電位Vに基づいて、マス17に与えられたX軸方向の加速度を算出する。特に、加速度算出部101は、第1固定電極19の電位と中間電位Vmidとの間の差から、マス17のX軸方向における変位量、及びマス17に与えられたX軸方向の加速度を算出する。
【0071】
本実施形態において、加速度算出部101は、第1固定電極19の電位と中間電位Vmidとの間の差を増幅する増幅回路を有する。加速度算出部101は、第1固定電極19の電位と中間電位Vmidとの間の差が増幅されることにより、マス17に与えられたX軸方向の加速度を増幅して算出することができる。
【0072】
[共振周波数パッシブ調整部]
図5は、図3の共振周波数パッシブ調整部102aによって行われる共振周波数調整のフローチャートであって、特に共振周波数パッシブ調整部102aによって実行される制御処理を示している。共振周波数パッシブ調整部102aのメモリには、図示するフローチャートに沿って共振周波数調整を行うためのプログラムが記憶されている。
【0073】
ステップS11において、共振周波数パッシブ調整部102aは、外部から所望の共振周波数を用途に応じて設定される。特に、所望の共振周波数は、加速度センサ100の感度を高める要求に基づいて設定される。所望の共振周波数は、ユーザが設定してもよく、外部の制御部によって自動的に設定されてもよい。
【0074】
ステップS12において、共振周波数パッシブ調整部102aは、設定された所望の共振周波数に基づいて、必要な静電的なばね定数kelecを算出する。この静電的なばね定数kelecは、数9に示す関係に基づいて算出される。
【0075】
ステップS13において、共振周波数パッシブ調整部102aは、算出された静電的なばね定数kelecに基づいて、第2可動電極20に印加する電圧、特に+X方向側第2可動電極20aと第2固定電極21との間に印加する電圧Vと、-X方向側第2可動電極20bと第2固定電極21との間に印加する電圧Vを設定する。この電圧V,Vは、数7に示す関係に基づいて算出される電圧Vである。
【0076】
本実施形態において、電圧Vは1.5Vに設定される。特に、+X方向側第2可動電極20aには、電極パッド13cを介して、4.5Vの電圧が印可される。第2固定電極21には、電極パッド13fを介して、3.0Vの電圧が印可される。-X方向側第2可動電極20bには、電極パッド13dを介して、1.5Vの電圧が印可される。+X方向側第2可動電極20a、-X方向側第2可動電極20b、及び第2固定電極21に印加される電圧は、上述の値に限定されるものではなく、種々の値が設定されてもよい。
【0077】
ステップS14において、+X方向側第2可動電極20aと第2固定電極21との間、及び-X方向側第2可動電極20bと第2固定電極21との間に電圧V,Vが印可されることによって、静電気力F,Fがそれぞれ生じる。+X方向側第2可動電極20aと第2固定電極21との間の電圧Vが、-X方向側第2可動電極20bと第2固定電極21との間の電圧Vと等しいため、数1と数2に示す関係により、静電気力F,Fは、それぞれ、等しい大きさで互いに対向するように作用する。
【0078】
上述のように、静電気力F,Fを与えられた加速度検出デバイス1のばね-マス系は、共振周波数f0が調整される(ステップS15)。マス17がX軸方向の加速度を与えられていない場合、静電気力F,Fは、互いに釣り合うため、マス17はゼロ点に位置し続ける。マス17がX軸方向の加速度を与えられる場合、マス17に与えられる加速度と同じ方向に作用する静電気力F,Fの一方は大きくなり、マス17に与えられる加速度と反対の方向に作用する静電気力F,Fの他方は小さくなる。例えば、マス17が+X方向側の加速度を与えられる場合、マス17が+X方向側に移動して、+X方向側第2可動電極20aと第2固定電極21との間の距離D3が大きくなるため、静電気力Fは小さくなる。一方、-X方向側第2可動電極20bと第2固定電極21との間の距離D4が小さくなるため、静電気力Fは大きくなる。
【0079】
したがって、静電気力F,Fは、全体として、マス17に与えられる加速度を助けるように作用して、一対のばね16の復元力Fmechに対向するように作用する。静電気力F,Fが一対のばね16の復元力Fmechに対向することにより、加速度検出デバイス1のばね-マス系は振動し易くなり、共振周波数f0が小さくなる。共振周波数f0が小さくなることにより、マス17に与えられる加速度が低い周波数であっても、ばね-マス系が振動し易くなるため、加速度検出デバイス1の感度を高くすることができる。
【0080】
[共振周波数アクティブ調整部]
図6は、図3の加速度検出デバイス1と共振周波数アクティブ調整部102bのブロック図である。図示するように、加速度検出デバイス1と共振周波数アクティブ調整部102bは、フィードバック系を構成する。
【0081】
加速度aがマス17に与えられるとき、マス17は、加速度検出デバイス1のばね-マス系全体のばね定数keffにしたがって、X軸方向に変位量xの大きさで移動する。
【0082】
マス17が変位量xの大きさで移動するとき、+X方向側第2可動電極20aと第2固定電極21との間の静電容量Cと、-X方向側第2可動電極20bと第2固定電極21との間の静電容量Cが、それぞれ、マス17のX軸方向の変位量xに対して線形に変化する。したがって、第2固定電極21の電位Vは、マス17の変位量xに応じて変化する。
【0083】
共振周波数アクティブ調整部102bは、検出された第2固定電極21の電位Vに応じて、+X方向側第2可動電極20aと第2固定電極21との間に印加する電圧Vと、-X方向側第2可動電極20bと第2固定電極21との間に印加する電圧Vとを設定する。特に、共振周波数アクティブ調整部102bは、静電気力F,Fが、マス17に与えられる加速度aに対向して、一対のばね16の復元力Fmechを助けるように、電圧V,Vを設定する。
【0084】
+X方向側第2可動電極20aと第2固定電極21との間、及び-X方向側第2可動電極20bと第2固定電極21との間に電圧V,Vが印可されることによって、静電気力F,Fがそれぞれ生じる。特に、マス17に与えられる加速度と同じ方向に作用する静電気力F,Fの一方は小さくなり、マス17に与えられる加速度と反対の方向に作用する静電気力F,Fの他方は大きくなる。例えば、マス17が+X方向側の加速度を与えられる場合、+X方向側の加速度と同じ方向に作用する静電気力Fは小さくなる。一方、+X方向側の加速度と反対の方向に作用する静電気力Fは大きくなる。
【0085】
加速度検出デバイス1のばね-マス系全体には、静電気力F,Fと加速度aによる力とを足し合わされた力の総和Feffが作用する。静電気力F,Fは、全体として、マス17に与えられる加速度に対向するように作用して、復元力Fmechを助けるように作用する。したがって、ばね-マス系全体のばね定数keffは、一対のばね16の機械的なばね定数kmechより大きくなる。
【0086】
ばね-マス系全体のばね定数keffが、一対のばね16の機械的なばね定数kmechより大きくなるため、数8に示す関係により、ばね-マス系全体の共振周波数f0は大きくなる。
【0087】
図7は、図6の共振周波数アクティブ調整部102bによって行われる共振周波数調整のフローチャートであって、特に共振周波数アクティブ調整部102bによって実行される制御処理を示している。共振周波数アクティブ調整部102bのメモリには、図示するフローチャートに沿って共振周波数調整を行うためのプログラムが記憶されている。
【0088】
ステップS21において、共振周波数アクティブ調整部102bは、外部から所望の共振周波数を用途に応じて設定される。特に、所望の共振周波数は、加速度センサ100の検出可能範囲を広げる要求に基づいて設定される。所望の共振周波数は、ユーザが設定してもよく、外部の制御部によって自動的に設定されてもよい。
【0089】
ステップS22において、共振周波数アクティブ調整部102bは、電極パッド13fを介して、第2固定電極21の電位Vを検出する。
【0090】
電極パッド13c,13dには、+X方向側第2可動電極20aと-X方向側第2可動電極20bに対して、外部の電源が接続されている。マス17がX軸方向の加速度aを与えられていない場合、第2固定電極21の電位Vは、+X方向側第2可動電極20aと-X方向側第2可動電極20bのそれぞれの電位の中間である中間電位になる。マス17がX軸方向の加速度aを与えられている場合、第2固定電極21の電位Vは、中間電位と異なる電位になる。したがって、共振周波数アクティブ調整部102bは、マス17に与えられたX軸方向の加速度aに応じて変化する第2固定電極21の電位Vを検出する。
【0091】
ステップS23において、共振周波数アクティブ調整部102bは、設定された所望の共振周波数に基づいて、必要な静電気力F,Fを算出する。この静電気力F,Fは、数6と数9に示す関係に基づいて算出される。特に、共振周波数アクティブ調整部102bは、マス17に与えられる加速度と同じ方向に作用する静電気力F,Fの一方が小さくなり、マス17に与えられる加速度と反対の方向に作用する静電気力F,Fの他方が大きくなるように、静電気力F,Fを算出する。
【0092】
ステップS24において、共振周波数アクティブ調整部102bは、算出された静電気力F,Fに基づいて、第2可動電極20に印加する電圧、特に+X方向側第2可動電極20aと第2固定電極21との間に印加する電圧Vと、-X方向側第2可動電極20bと第2固定電極21との間に印加する電圧Vを設定する。
【0093】
ステップS25において、+X方向側第2可動電極20aと第2固定電極21との間、及び-X方向側第2可動電極20bと第2固定電極21との間に電圧V,Vが印可されることによって、静電気力F,Fがそれぞれ生じる。静電気力F,Fは、マス17に与えられる加速度と同じ方向に作用する静電気力F,Fの一方が小さくなり、マス17に与えられる加速度と反対の方向に作用する静電気力F,Fの他方が大きくなるため、全体として、マス17に与えられる加速度aに対向して、一対のばね16の復元力Fmechを助けるように作用する。静電気力F,Fは復元力Fmechを助けるように作用するため、ばね-マス系全体のばね定数keffは、一対のばね16の機械的なばね定数kmechより大きくなる。
【0094】
上述のように、静電気力F,Fを与えられた加速度検出デバイス1のばね-マス系は、共振周波数f0が調整される(ステップS26)。静電気力F,Fは、マス17に与えられる加速度aに対向して、一対のばね16の復元力Fmechを助けるように作用する。したがって、加速度検出デバイス1のばね-マス系は振動し難くなり、共振周波数f0が大きくなる。共振周波数f0が大きくなることにより、加速度aの振動数が共振周波数f0に到達し難くなるため、加速度検出デバイス1の検出可能範囲を広くすることができる。
【0095】
[電極固着判断・解除部]
図8は、図3の電極固着判断・解除部103によって行われる電極固着の判断と解除のフローチャートであって、特に電極固着判断・解除部103によって実行される制御処理を示している。電極固着判断・解除部103のメモリには、図示するフローチャートに沿って電極固着の判断と解除を行うためのプログラムが記憶されている。
【0096】
ステップS31において、電極固着判断・解除部103は、電極パッド13fを介して、第2固定電極21の電位Vを検出する。
【0097】
電極パッド13c,13dには、+X方向側第2可動電極20aと-X方向側第2可動電極20bに対して、外部の電源が接続されている。マス17がX軸方向に変位していない場合、第2固定電極21の電位Vは、+X方向側第2可動電極20aと-X方向側第2可動電極20bのそれぞれの電位の中間である中間電位になる。マス17がX軸方向に変位している場合、第2固定電極21の電位Vは、中間電位と異なる電位になる。したがって、電極固着判断・解除部103は、マス17のX軸方向の変位に応じて変化する第2固定電極21の電位Vを検出する。
【0098】
ステップS32において、電極固着判断・解除部103は、第2固定電極21の電位Vに基づいて、マス17のX軸方向の変位量を算出して、第1可動電極18と第1固定電極19とが固着しているか否かを判断する。特に、マス17がX軸方向に間隔D1,D2と等しい距離で変位していなければ(ステップS32がNO)、制御処理は終了する一方、マス17がX軸方向に間隔D1,D2と等しい距離で変位していれば(ステップS32がYES)、第1可動電極18と第1固定電極19とが固着していると判断されて、制御処理は次のステップS33に進む。
【0099】
ステップS33において、電極固着判断・解除部103は、第1可動電極18と第1固定電極19との間の固着を解除するため、第1可動電極18に印加する電圧、特に第1可動電極18の平板電極18aと第1固定電極19の平板電極19aとの間に印加する電圧Vと、第1可動電極18の平板電極18bと第1固定電極19の平板電極19bとの間に印加する電圧V、及び第2可動電極20に印加する電圧、特に+X方向側第2可動電極20aと第2固定電極21との間に印加する電圧Vと、-X方向側第2可動電極20bと第2固定電極21との間に印加する電圧Vを設定する。
【0100】
本実施形態において、第1可動電極18の平板電極18aと第1固定電極19の平板電極19aとの間に印加する電圧Vは0Vに設定される。第1可動電極18の平板電極18bと第1固定電極19の平板電極19bとの間に印加する電圧Vは5.0Vに設定される。+X方向側第2可動電極20aと第2固定電極21との間に印加する電圧Vは15.0Vに設定される。-X方向側第2可動電極20bと第2固定電極21との間に印加する電圧Vは0Vに設定される。特に、+X方向側第2可動電極20aには、電極パッド13cを介して、15.0Vの電圧が印可される。第1可動電極18の平板電極18bには、電極パッド13bを介して、5.0Vの電圧が印可される。第1可動電極18の平板電極18a,18b、第1固定電極19、+X方向側第2可動電極20a、-X方向側第2可動電極20b、及び第2固定電極21に印加される電圧は、上述の値に限定されるものではなく、種々の値が設定されてもよい。
【0101】
ステップS34において、第1可動電極18の平板電極18aと第1固定電極19の平板電極19aとの間、第1可動電極18の平板電極18bと第1固定電極19の平板電極19bとの間、+X方向側第2可動電極20aと第2固定電極21との間、及び-X方向側第2可動電極20bと第2固定電極21との間に電圧V,V,V,Vが印可されることによって、静電気力F,F,F,Fがそれぞれ生じる。
【0102】
本実施形態において、第1可動電極18の平板電極18aと第1固定電極19の平板電極19aとの間、及び+X方向側第2可動電極20aと第2固定電極21との間にのみ、電圧V,Vが印可されているため、静電気力F,Fのみ生じる。静電気力F,Fにより、マス17は、第1可動電極18と第1固定電極19との間の固着を解除するように、X軸方向に変位する。
【0103】
上述のように、静電気力F,F,F,Fを与えられた加速度検出デバイス1のばね-マス系は、第1可動電極18と第1固定電極19との間の固着が解除される(ステップS35)。
【0104】
本実施形態では、ステップS32において、電極固着判断・解除部103が、マス17がX軸方向に間隔D1,D2と等しい距離で変位しているか否かを判断しているが、加速度算出部101が安定して加速度を算出できる第1固定電極19に対する第1可動電極18のストローク量に基づいて閾値を設定して、第1可動電極18と第1固定電極19との間の固着を判断してもよい。
【0105】
[オフセットトリム部]
図9は、図3のオフセットトリム部104によって行われるオフセットトリムのフローチャートであって、特にオフセットトリム部104によって実行される制御処理を示している。オフセットトリム部104のメモリには、図示するフローチャートに沿って、マス17のゼロ点を補正するオフセットを行うためのプログラムが記憶されている。
【0106】
ステップS41において、オフセットトリム部104は、例えば製品出荷時のキャリブレーションを行うとき、X軸方向の加速度がマス17に与えられていない状態で、電極パッド13eを介して、第1固定電極19の電位Vを検出する。
【0107】
ステップS42において、オフセットトリム部104は、第1固定電極19の電位Vが、平板電極18a,18bのそれぞれの電位の中間である中間電位Vmidと一致するか否かを判断する。特に、電位Vが中間電位Vmidと一致していれば(ステップS42がNO)、制御処理は終了する一方、電位Vが中間電位Vmidと一致していなければ(ステップS42がYES)、マス17のゼロ点がずれていると判断されて、制御処理は次のステップS43に進む。
【0108】
ステップS43において、オフセットトリム部104は、X軸方向の加速度がマス17に与えられていないときの第1固定電極19の電位Vと中間電位Vmidとの間の差から、マス17のゼロ点を補正するために必要なオフセット量を算出する。
【0109】
ステップS44において、オフセットトリム部104は、マス17のゼロ点を補正するために必要なオフセット量に基づいて、第2可動電極20に印加する電圧、特に+X方向側第2可動電極20aと第2固定電極21との間に印加する電圧Vと、-X方向側第2可動電極20bと第2固定電極21との間に印加する電圧Vを設定する。
【0110】
本実施形態において、+X方向側第2可動電極20aと第2固定電極21との間に印加する電圧Vは1.55Vに設定される。また、-X方向側第2可動電極20bと第2固定電極21との間に印加する電圧Vは1.5Vに設定される。特に、+X方向側第2可動電極20aには、電極パッド13cを介して、4.55Vの電圧が印可される。第2固定電極21には、電極パッド13fを介して、3.0Vの電圧が印可される。-X方向側第2可動電極20bには、電極パッド13dを介して、1.5Vの電圧が印可される。+X方向側第2可動電極20a、-X方向側第2可動電極20b、及び第2固定電極21に印加される電圧は、上述の値に限定されるものではなく、種々の値が設定されてもよい。
【0111】
ステップS45において、+X方向側第2可動電極20aと第2固定電極21との間、及び-X方向側第2可動電極20bと第2固定電極21との間に電圧V,Vが印可されることによって、静電気力F,Fがそれぞれ生じる。電圧Vが電圧Vより大きいことにより、静電気力Fが静電気力Fよりも大きくなるため、マス17はゼロ点を補正するようにX軸方向に変位する。
【0112】
上述のように、マス17は、X軸方向に変位することにより、ゼロ点を補正するようにオフセットされる(ステップS46)。
【0113】
[セルフテスト部]
図10は、図3のセルフテスト部105によって行われるセルフテストのフローチャートであって、特にセルフテスト部105によって実行される制御処理を示している。セルフテスト部105のメモリには、図示するフローチャートに沿って、セルフテストにおいて、マス17を変位させるためのプログラムが記憶されている。
【0114】
ステップS51において、セルフテスト部105は、外部からセルフテスト実行指示を与えられる。セルフテスト実行指示は、ユーザによって与えられてもよく、外部の制御部によって自動的に与えられてもよい。
【0115】
ステップS52において、セルフテスト部105は、セルフテストにおいて、マス17を変位させるため、第2可動電極20に印加する電圧、特に+X方向側第2可動電極20aと第2固定電極21との間に印加する電圧Vと、-X方向側第2可動電極20bと第2固定電極21との間に印加する電圧Vを設定する。
【0116】
本実施形態において、+X方向側第2可動電極20aと第2固定電極21との間に印加する電圧Vは1.0Vに設定される。また、-X方向側第2可動電極20bと第2固定電極21との間に印加する電圧Vは2.0Vに設定される。特に、+X方向側第2可動電極20aには、電極パッド13cを介して、6.0Vの電圧が印可される。第2固定電極21には、電極パッド13fを介して、5.0Vの電圧が印可される。-X方向側第2可動電極20bには、電極パッド13dを介して、3.0Vの電圧が印可される。+X方向側第2可動電極20a、-X方向側第2可動電極20b、及び第2固定電極21に印加される電圧は、上述の値に限定されるものではなく、種々の値が設定されてもよい。
【0117】
ステップS53において、+X方向側第2可動電極20aと第2固定電極21との間、及び-X方向側第2可動電極20bと第2固定電極21との間に電圧V,Vが印可されることによって、静電気力F,Fがそれぞれ出力される。電圧Vが電圧Vより大きいことにより、静電気力Fが静電気力Fよりも大きくなるため、マス17はX軸方向に変位する。
【0118】
上述のように、マス17は、セルフテストにおいて、X軸方向に変位する(ステップS54)。加速度算出部101が、セルフテスト部105によるマス17のX軸方向の変位に対して、マス17のX軸方向における変位量、及びマス17に与えられたX軸方向の加速度を算出できれば、加速度センサ100が加速度を算出可能であることが分かる。
【0119】
本実施形態では、ステップS54において、加速度センサ100は、加速度算出部101が、セルフテスト部105によるマス17のX軸方向の変位に対して、マス17のX軸方向における変位量、及びマス17に与えられたX軸方向の加速度を算出できれば、加速度を算出可能であると判断するが、算出される該変位量と該加速度がセルフテスト部105によって設定された電圧V,Vに基づく理論値と一致していれば、加速度を算出可能であると判断してもよい。
【0120】
[作用効果]
上述の実施形態に係る加速度検出デバイス1、及び加速度センサ100によれば、次の効果が発揮される。
【0121】
本開示の加速度検出デバイス1は、第2固定電極21と+X方向側第2可動電極20a及び-X方向側第2可動電極20bとの間に生じる静電気力F,Fを制御することによって、一対のばね16とマス17によって構成されるばね-マス系の共振周波数f0を調整すること、及びマス17をX軸方向に変位させることができる。共振周波数f0を調整することにより、加速度検出デバイス1の検出可能範囲と感度は可変になる。また、+X方向側第2可動電極20a及び-X方向側第2可動電極20bに電圧が印可されるときの第2固定電極21の電位Vに基づいて、マスの位置を検出することができる。
【0122】
+X方向側第2可動電極20a及び-X方向側第2可動電極20bと第2固定電極21が互いに間隔を空けてY軸方向に対向する可動側櫛歯電極22a,22bと固定側櫛歯電極23a,23bを有することにより、マス17がX軸方向に変位したとき、+X方向側第2可動電極20a及び-X方向側第2可動電極20bと第2固定電極21との間の静電容量C,Cが線形に変化するため、共振周波数f0を調整し易いと共に、マス17の位置も調整し易くなる。
【0123】
加速度検出デバイス1は、それぞれの電極と機械的に接続されている箇所にアイソレーションジョイント24を備えることにより、それぞれの電極を電気的に絶縁して、それぞれの電極が電気的に干渉することを抑制しやすい。
【0124】
また、本開示の加速度センサ100は、共振周波数パッシブ調整部102aと共振周波数アクティブ調整部102bによって、加速度検出デバイス1を用いて検出できる加速度の検出可能範囲と感度を調整することができる。共振周波数パッシブ調整部102aと共振周波数アクティブ調整部102bによる加速度の検出可能範囲と感度の調整の後、加速度算出部101によって、加速度を所望の検出可能範囲と感度で検出できる。
【0125】
電極固着判断・解除部103によって、第1可動電極18と第1固定電極19とが固着していることが判断された後、第1可動電極18と第1固定電極19との間の固着を解除できる。
【0126】
オフセットトリム部104によって、X軸方向におけるマス17のゼロ点がずれているとき、該ゼロ点を補正できる。
【0127】
セルフテスト部105によって、加速度を算出可能であることを診断するセルフテストを行うとき、マス17をX軸方向に変位させて、第1可動電極18と第1固定電極19との間の静電容量の変化に応じて加速度を算出できるか否かを診断することができる。
【0128】
[他の実施形態]
なお、本発明は、上述の実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0129】
上述の実施形態では、加速度検出デバイス1は、一対のばね16、4つの第1可動電極18、及び4つの第1固定電極19を備えるが、単一のばね、単一の第1可動電極、及び単一の第1固定電極を備えてもよい。
【0130】
上述の実施形態では、第2可動電極20は可動側櫛歯電極22a,22bを有しており、第2固定電極21は固定側櫛歯電極23a,23bを有するが、第2可動電極と第2固定電極がそれぞれ平板電極であってもよい。
【0131】
本発明の第1の態様は、
キャビティを有する、基板と、
前記キャビティの内側において、前記基板に対して機械的に接続されている、アンカーと、
前記アンカーに対して機械的に接続されており、第1方向に伸縮可能である、ばねと、
前記ばねに対して機械的に接続されており、前記基板から分離していることによって、前記第1方向に変位可能である、マスと、
前記マスに対して機械的に接続されて電気的に絶縁されており、前記マスから前記第1方向に垂直な第2方向に延びており、前記基板から分離していることによって、前記マスと共に前記第1方向に変位可能である、第1可動電極と、
前記基板に対して機械的に接続されて電気的に絶縁されており、前記第1可動電極に対して前記第1方向に間隔を空けて対向する、第1固定電極と、
前記第1方向に間隔を空けて対向するように、前記マスに対して機械的に接続されて電気的に絶縁されており、前記マスから前記第2方向に延びており、前記基板から分離していることによって、前記マスと共に前記第1方向に変位可能である、一対の第2可動電極と、
前記基板に対して機械的に接続されて電気的に絶縁されており、前記一対の第2可動電極の間に配置される、第2固定電極であって、前記一対の第2可動電極と前記第2固定電極にそれぞれ電圧が印可されるとき、前記一対の第2可動電極との間に静電気力を生じる、前記第2固定電極と、
を備える加速度検出デバイスを提供する。
【0132】
本発明の第2の態様は、
前記一対の第2可動電極と前記第2固定電極は、前記第1方向に延びて、互いに間隔を空けて前記第2方向に対向する櫛歯状の可動側櫛歯電極と固定側櫛歯電極をそれぞれ有する、第1の態様に記載の加速度検出デバイスを提供する。
【0133】
本発明の第3の態様は、
前記加速度検出デバイスは、
前記アンカーと前記ばねとの間、
前記ばねと前記マスとの間、
前記マスと前記第1可動電極との間、
前記基板と前記第1固定電極との間、
前記マスと前記一対の第2可動電極との間、
及び前記基板と前記第2固定電極との間をそれぞれ、機械的に接続する一方、電気的に絶縁する、アイソレーションジョイントを備える、第1の態様又は第2の態様に記載の加速度検出デバイスを提供する。
【0134】
本発明の第4の態様は、
第1の態様に記載の加速度検出デバイスを備える加速度センサであって、
前記一対の第2可動電極と前記第2固定電極との間の静電気力を制御するように電圧を印加して、前記ばねと前記マスによって構成されるばね-マス系の共振周波数を調整する、共振周波数調整部と、
前記第1可動電極と前記第1固定電極との間の静電容量の変化に応じて加速度を算出する、加速度算出部と、
を備える加速度センサを提供する。
【0135】
本発明の第5の態様は、
前記加速度センサは、
前記一対の第2可動電極に電圧が印可されるときの前記第2固定電極の電位に基づいて、前記マスの位置を検出して、前記第1可動電極と前記第1固定電極とが固着していることを判断する、電極固着判断部と、
前記電極固着判断部によって、前記第1可動電極と前記第1固定電極とが固着していることが判断された後、前記一対の第2可動電極と前記第2固定電極との間の静電気力を制御するように電圧を印加して、前記マスを前記第1方向に変位させて、前記第1可動電極と前記第1固定電極との間の固着を解除する、電極固着解除部と、を備える、第4の態様に記載の加速度センサを提供する。
【0136】
本発明の第6の態様は、
前記加速度センサは、
前記一対の第2可動電極と前記第2固定電極との間の静電気力を制御するように電圧を印加して、前記マスを前記第1方向に変位させて、加速度が前記マスに与えられていないときの前記第1方向における前記マスのゼロ点を補正する、オフセットトリム部を備える、第4の態様又は第5の態様に記載の加速度センサを提供する。
【0137】
本発明の第7の態様は、
前記加速度センサは、
加速度を算出可能であることを診断するセルフテストを行うとき、前記一対の第2可動電極と前記第2固定電極との間の静電気力を制御するように電圧を印加して、前記マスを前記第1方向に変位させる、セルフテスト部を備える、第4の態様又は第5の態様に記載の加速度センサを提供する。
【符号の説明】
【0138】
1 加速度検出デバイス
11 第1基板
14 キャビティ
15 アンカー
16 ばね
17 マス
18 第1可動電極
19 第1固定電極
20 第2可動電極
21 第2固定電極
100 加速度センサ
101 加速度算出部
102a 共振周波数パッシブ調整部
102b 共振周波数アクティブ調整部
,F 静電気力
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10