(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141732
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】表面形状推定装置及び表面形状推定方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/24 20060101AFI20241003BHJP
C10B 29/00 20060101ALI20241003BHJP
G06T 7/579 20170101ALI20241003BHJP
【FI】
G01B11/24 B
C10B29/00
G01B11/24 K
G06T7/579
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053533
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】弁理士法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】小杉 聡史
【テーマコード(参考)】
2F065
5L096
【Fターム(参考)】
2F065AA51
2F065AA63
2F065BB08
2F065BB26
2F065CC39
2F065FF01
2F065FF04
2F065JJ03
2F065JJ19
2F065JJ26
2F065QQ21
2F065QQ24
2F065QQ25
2F065QQ28
2F065QQ31
2F065QQ36
2F065QQ38
2F065UU05
5L096AA09
5L096BA03
5L096CA04
5L096FA14
5L096FA26
5L096FA66
5L096FA67
5L096FA69
5L096HA05
(57)【要約】
【課題】コークス炉の炉壁の表面の凹凸を簡便に推定する。
【解決手段】コークス炉の炉壁の表面形状を推定する表面形状推定装置は、撮像装置を用いて炉壁を炉壁の法線方向に対して斜め方向から撮像した斜視画像を取得し、斜視画像の炉壁部分に設定された矩形の領域に対応する追跡領域を、炉壁の法線方向から見た正視画像に変換した追跡画像を生成する透視変換処理部と、互いに重複する部分を含む異なる2つの追跡画像から、炉壁の表面の同一位置に対応する特徴点を抽出する特徴点抽出部と、2つの追跡画像から抽出された特徴点に基づいて、炉壁の表面形状を算出する表面形状算出部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コークス炉の炉壁の表面形状を推定する表面形状推定装置であって、
撮像装置を用いて前記炉壁を前記炉壁の法線方向に対して斜め方向から撮像した斜視画像を取得し、前記斜視画像の前記炉壁部分に設定された矩形の領域に対応する追跡領域を、前記炉壁の法線方向から見た正視画像に変換した追跡画像を生成する透視変換処理部と、
互いに重複する部分を含む異なる2つの追跡画像から、前記炉壁の表面の同一位置に対応する特徴点を抽出する特徴点抽出部と、
前記2つの追跡画像から抽出された前記特徴点に基づいて、前記炉壁の表面形状を算出する表面形状算出部と、
を備える、表面形状推定装置。
【請求項2】
前記特徴点抽出部は、前記2つの追跡画像の同一位置に設定される仮想線上で輝度値が極値となる点を前記特徴点として抽出し、
前記表面形状算出部は、前記特徴点の位置と前記撮像装置の前記追跡画像を撮像した際の位置とに基づいて、前記炉壁の表面形状を算出する、請求項1に記載の表面形状推定装置。
【請求項3】
前記特徴点抽出部は、前記炉壁と前記撮像装置との幾何学的な位置関係に基づいて、前記2つの追跡画像に対応する前記炉壁の領域を判定することで前記特徴点を抽出し、
前記表面形状算出部は、前記特徴点の位置と前記炉壁と前記撮像装置との幾何学的な位置関係とに基づいて、前記炉壁の表面形状を算出する、請求項1に記載の表面形状推定装置。
【請求項4】
コークス炉の炉壁の表面形状を推定する表面形状推定方法であって、
撮像装置を用いて前記炉壁を前記炉壁の法線方向に対して斜め方向から撮像した斜視画像を取得し、前記斜視画像の前記炉壁部分に設定された矩形の領域に対応する追跡領域を、前記炉壁の法線方向から見た正視画像に変換した追跡画像を生成する透視変換処理ステップと、
互いに重複する部分を含む異なる2つの追跡画像から、前記炉壁の表面の同一位置に対応する特徴点を抽出する特徴点抽出ステップと、
前記2つの追跡画像から抽出された前記特徴点に基づいて、前記炉壁の表面形状を算出する表面形状算出ステップと、
を含む、表面形状推定方法。
【請求項5】
前記特徴点抽出ステップでは、前記2つの追跡画像の同一位置に設定される仮想線上で輝度値が極値となる点を前記特徴点として抽出し、
前記表面形状算出ステップでは、前記特徴点の位置と前記撮像装置の前記追跡画像を撮像した際の位置とに基づいて、前記炉壁の表面形状を算出する、請求項4に記載の表面形状推定方法。
【請求項6】
前記特徴点抽出ステップは、前記炉壁と前記撮像装置との幾何学的な位置関係に基づいて、前記2つの追跡画像に対応する前記炉壁の領域を判定することで前記特徴点を抽出し、
前記表面形状算出ステップでは、前記特徴点の位置と前記炉壁と前記撮像装置との幾何学的な位置関係とに基づいて、前記炉壁の表面形状を算出する、請求項4に記載の表面形状推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークス炉の炉壁の表面形状を推定する表面形状推定装置及び表面形状推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コークス炉の炭化室をはじめとする高温の炉室においては、炉壁が耐火物で構成されており、耐火物の劣化状況を的確に把握することはコークス炉などの炉操業管理上重要である。特に、コークス炉の炭化室は、過酷な条件下で通常30年以上の長期間にわたって連続操業される。炭化室を構成する耐火煉瓦は、熱的、化学的及び機械的要因によって徐々に劣化する。このため、炉壁の損傷や付着カーボン不良に起因するコークスの押し詰まりが生じ、発生した押し詰まりによってさらなる炉壁の損傷、生産スケジュール遅延、復旧作業のための作業負荷増大を招く。したがって、炭化室内の、特に炉壁を構成する耐火煉瓦の劣化状況を常時把握しておくことは、コークス炉操業管理上極めて重要である。
【0003】
炉壁煉瓦の劣化状況を把握する方法として、炉壁の映像を撮像する方法と、炉壁の凹凸形状を測定する方法とがある。炉壁の映像を撮像すれば、煉瓦の亀裂や目地切れの状況を二次元的に捉えることができる。凹凸形状を測定することにより、煉瓦の損耗状況を定量的に把握することができる。
【0004】
コークス炉の炉壁の映像を撮像する方法として、例えば特許文献1には、コークス炉炭化室の窯口よりカメラを内部に挿入し、内壁の撮像をもとに炉壁状況を観察するに際し、カメラの視野を斜めとし、炉壁を斜視像として順次撮影して、カメラで少なくとも炉長方向のほぼ全域を撮影し、斜視像の撮像位置情報(炉長方向位置)と、斜視像を正面像に変換した画像情報をもとに、炭化室内の炉壁状況を観察する、コークス炉炭化室の内壁観察方法が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、炭化室の両壁面を、これらの法線方向に対して傾斜した方向から各別のカメラにより撮像し、これらの壁面の斜視画像として与えられる画像データを参照して、両壁面に発生している損傷の種類を認識する技術が開示されている。
【0006】
さらに、特許文献3には、レーザ距離計が計測したコークス炉炭化室の内壁面までの距離に応じた出力電圧を信号変換器によって音声帯域信号に周波数変調し、ビデオカメラが撮影した内壁面の画像とともに記録することにより、内壁面の画像と撮像位置の窯幅とを対応付ける技術が開示されている。
【0007】
一方、炉壁の凹凸形状を測定する方法としては、従来から、炉幅計を用いた測定が行われている。コークス炉炭化室の炉壁は、狭い炉室において左右の炉壁が平行に相対しており、炉壁耐火物が損耗したり、コークス押出時に受ける側圧で炉壁が変形したりすれば、両炉壁間の距離が増大する。したがって、炉幅計を用いて左右の炉壁間の距離を測定することにより、炉壁を構成する耐火物の健全度合いを推定することができる。例えば特許文献4には、コークス押出機のラム等にそれぞれの炉壁に指向する1対または複数対の非接触式距離計を設け、その取り付け位置から左右の壁を同時測定し、その合計距離から炭化室の幅を連続測長するコークス炉炭化室巾測定装置が開示されている。押し出し機を水平移動することによって炭化室炉壁幅を連続的に測定することができる。
【0008】
また、上記特許文献5には、光ビーム照射装置と撮像装置に鏡面を組み合わせて光切断法により炉壁形状を測定する炉壁凹凸計測装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平3-105195号公報
【特許文献2】特開2001-3058号公報
【特許文献3】特開2001-11465号公報
【特許文献4】特開昭62―293112号公報
【特許文献5】特開2004-77019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上記特許文献1-3に記載の方法では、コークス炉の炉壁の画像から炉壁煉瓦の状況を把握することはできても、炉壁の画像から炉壁の凹凸形状を定量化することはできない。また、上記特許文献4に記載の方法では、左右の炉壁それぞれの凹凸を独立して測定することはできない。さらに、上記特許文献5に記載の方法のようにコークス炉の中で光切断法を行うには、炭化室が高温で炉壁煉瓦が自発光していることから高出力の光ビームが必要であり、実施が難しい。
【0011】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、コークス炉の炉壁の表面の凹凸を簡便に推定することが可能な、表面形状推定装置及び表面形状推定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、コークス炉の炉壁の表面形状を推定する表面形状推定装置であって、撮像装置を用いて前記炉壁を前記炉壁の法線方向に対して斜め方向から撮像した斜視画像を取得し、前記斜視画像の前記炉壁部分に設定された矩形の領域に対応する追跡領域を、前記炉壁の法線方向から見た正視画像に変換した追跡画像を生成する透視変換処理部と、互いに重複する部分を含む異なる2つの追跡画像から、前記炉壁の表面の同一位置に対応する特徴点を抽出する特徴点抽出部と、前記2つの追跡画像から抽出された前記特徴点に基づいて、前記炉壁の表面形状を算出する表面形状算出部と、を備える、表面形状推定装置が提供される。
【0013】
前記特徴点抽出部は、前記2つの追跡画像の同一位置に設定される仮想線上で輝度値が極値となる点を前記特徴点として抽出し、前記表面形状算出部は、前記特徴点の位置と前記撮像装置の前記追跡画像を撮像した際の位置とに基づいて、前記炉壁の表面形状を算出してもよい。
【0014】
また、前記特徴点抽出部は、前記炉壁と前記撮像装置との幾何学的な位置関係に基づいて、前記2つの追跡画像に対応する前記炉壁の領域を判定することで前記特徴点を抽出し、前記表面形状算出部は、前記特徴点の位置と前記炉壁と前記撮像装置との幾何学的な位置関係とに基づいて、前記炉壁の表面形状を算出してもよい。
【0015】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、コークス炉の炉壁の表面形状を推定する表面形状推定方法であって、撮像装置を用いて前記炉壁を前記炉壁の法線方向に対して斜め方向から撮像した斜視画像を取得し、前記斜視画像の前記炉壁部分に設定された矩形の領域に対応する追跡領域を、前記炉壁の法線方向から見た正視画像に変換した追跡画像を生成する透視変換処理ステップと、互いに重複する部分を含む異なる2つの追跡画像から、前記炉壁の表面の同一位置に対応する特徴点を抽出する特徴点抽出ステップと、前記2つの追跡画像から抽出された前記特徴点に基づいて、前記炉壁の表面形状を算出する表面形状算出ステップと、を含む、表面形状推定方法が提供される。
【0016】
前記特徴点抽出ステップでは、前記2つの追跡画像の同一位置に設定される仮想線上で輝度値が極値となる点を前記特徴点として抽出し、前記表面形状算出ステップでは、前記特徴点の位置と前記撮像装置の前記追跡画像を撮像した際の位置とに基づいて、前記炉壁の表面形状を算出してもよい。
【0017】
また、前記特徴点抽出ステップは、前記炉壁と前記撮像装置との幾何学的な位置関係に基づいて、前記2つの追跡画像に対応する前記炉壁の領域を判定することで前記特徴点を抽出し、前記表面形状算出ステップでは、前記特徴点の位置と前記炉壁と前記撮像装置との幾何学的な位置関係とに基づいて、前記炉壁の表面形状を算出してもよい。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように本発明によれば、コークス炉の炉壁の表面の凹凸を簡便に推定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る表面形状推定装置の一構成例を示す機能ブロック図である。
【
図2】撮像装置により撮像される炭化室内の画像の模式図である。
【
図3】斜視画像である撮像画像と、撮像画像の追跡領域を透視変換した正視画像である追跡画像とを示す説明図である。
【
図4】同実施形態に係る表面形状推定方法を示すフローチャートである。
【
図5】
図3に示した追跡領域の各頂点と透視変換した追跡画像の各頂点との対応を示す説明図である。
【
図6】追跡画像内の特徴点を抽出する処理の一例を説明する説明図である。
【
図7】2次元画像である追跡画像から炉壁の表面の3次元形状を復元する処理を説明するための説明図である。
【
図8】炉壁の表面からの深さと撮像装置との幾何学的な位置関係を示す説明図である。
【
図9】同実施形態に係る表面形状推定方法により得られる炉壁の表面形状を表す情報の一例を示すコンター図である。
【
図10】同本実施形態に係る表面形状推定装置として機能する情報処理装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0021】
[1.表面形状推定装置]
まず、
図1~
図3に基づいて、本発明の一実施形態に係る表面形状推定装置100について説明する。
図1は、本実施形態に係る表面形状推定装置の一構成例を示す機能ブロック図である。
図2は、撮像装置30により撮像される炭化室内の画像の模式図である。
図3は、斜視画像である撮像画像と、撮像画像の追跡領域を透視変換した正視画像である追跡画像とを示す説明図である。
【0022】
本実施形態に係る表面形状推定装置100は、コークス炉の炉壁の表面形状を推定する装置である。コークス炉は、コークスを生成するための窯炉である。コークス炉の炉体の上部には炭化室と燃焼室とが交互に配列され、下部には蓄熱室が設けられる。コークスは、蓄熱室でそれぞれ予熱された燃焼ガスと燃焼用空気とを燃焼室で燃焼させ、発生した熱によって炭化室に装入された石炭を乾留することによって生成される。本実施形態に係る表面形状推定装置100は、コークス炉の炭化室の幅方向に対向する2つの炉壁それぞれについて、コークスの押出方向に沿って撮像装置30により撮像された撮像画像に基づいて、炉壁の表面形状(例えば炉壁の表面の凹凸)を推定する。
【0023】
撮像装置30は、炭化室の内部を押出方向に移動しながら、炉壁を連続的に撮像することができるカメラやビデオカメラ等の装置である。本実施形態では、1台の撮像装置30によって取得された撮像画像を用いて炉壁の表面形状を推定することができる。撮像装置30は、例えば、炭化室のコークスを押し出す押出機のアームに設置され、炭化室内でアームを押出方向に移動させながら炉壁を連続的に撮像する。これにより、撮像装置30は、押出機側とコークス排出側との間の1回の移動において複数の撮像画像を取得する。例えば、押出機をアームから取り外し、当該アームに撮像装置30を設置して、炉壁の表面形状を取得したい炭化室に撮像装置30が設置されたアームを挿入する。そして、撮像装置30が設置されたアームを移動させる間に、炉壁を連続的に撮像する。このように、本実施形態では、簡便な作業で容易に取得し得る複数の撮像画像を用いて、炉壁の表面形状を推定することができる。
【0024】
撮像装置30が取得した撮像画像Iは、例えば
図2に示すように、押出方向が撮影方向となるように撮像装置30を設置すること等で、斜視の状態(炉壁11R、11Lの法線方向に対して斜め方向から見た状態)で炉壁11R、11Lが写るように撮像した画像である。
図2に示すように、撮像画像Iには、炉壁11R、11Lの他に、例えば炭化室の炉底13や炭化室の押出機側にある炭化室窯口15等が写っていてもよい。撮像装置30は、撮像装置30が設置されたアームを移動させる間に、炭化室内の炉壁の動画を撮像し、動画の各フレームを静止画として切り出すことで、撮像画像Iとしてもよい。撮像装置30の炭化室内の1回の移動によって取得された複数の撮像画像Iは、撮像画像記憶部50に記録される。
【0025】
表面形状推定装置100は、撮像装置30の炭化室内の1回の移動によって取得された複数の撮像画像のうち、炭化室内の炉壁の同一部分を含む2つの撮像画像を用いて、炉壁の表面の凹凸を推定(凹凸形状を定量化)する。表面形状推定装置100は、
図1に示すように、撮像画像取得部110と、透視変換処理部120と、特徴点抽出部130と、表面形状算出部140と、設定記憶部150とを備える。
【0026】
撮像画像取得部110は、撮像画像記憶部50から、炉壁の表面形状を推定する炭化室を撮像して取得された複数の撮像画像Iを取得する。撮像画像取得部110は、例えば、ユーザ端末70を用いてユーザから指定された窯の炭化室を撮像した複数の撮像画像Iを、撮像画像記憶部50から取得する。また、撮像画像取得部110は、撮像画像の中で、炉壁11R、11Lが写った部分に着目することで、取得した撮像画像Iを斜視画像I
Sとして認識することもできるし、撮像画像I中で、炉壁11R、11Lが写った部分だけを抽出して斜視画像I
Sとして取得してもよい。すなわち、
図2からも明らかなように、斜視画像I
Sは、炉壁11R、11Lが、炉壁11R、11Lの法線方向に対して斜め方向から撮像されたように写った画像となる。撮像画像取得部110は、取得した斜視画像I
Sを透視変換処理部120へ出力する。
【0027】
透視変換処理部120は、撮像装置30を用いて炉壁11R、11Lを炉壁11R、11Lの法線方向に対して斜め方向から撮像した斜視画像ISを取得し、斜視画像ISの炉壁11R、11L部分に設定された矩形の領域に対応する追跡領域Aを、炉壁11R、11Lの法線方向から見た正視画像に変換した追跡画像HAを生成する機能部である。すなわち、透視変換処理部120は、複数の斜視画像ISのそれぞれについて、炉壁11R、11L部分の上に予め設定された(正方形又は長方形の)矩形の領域に対応する、斜視画像IS上の領域(以下、追跡領域Aと称する。斜視画像ISが斜め方向から撮像した画像であるため、斜視画像ISで見ると台形状の領域になっている)を透視変換することで、追跡領域Aを炉壁11R、11Lの法線方向から見た画像である正視画像HAに変換した追跡画像を生成する。
【0028】
透視変換とは、変換前と変換後の画像の座標同士の対応を定めて、変換後の画像の任意座標の画素値を変換前の画像の対応する座標における画素値とする画素の変換の一つであり、本発明においては、斜視画像I
Sの炉壁11R、11Lに対応する部分を正面から見たような画像にする変換をいう。例えば
図3に示すように、透視変換処理部120は、斜視画像I
Sに対して、炉壁11R、11L上に予め指定された、炉壁11R、11L上の矩形の領域に対応する領域として、追跡領域Aを設定する。そして、透視変換処理部120は、撮像画像Iの追跡領域Aを透視変換して、追跡領域Aの正視画像(炉壁の法線方向から見た画像)である追跡画像H
Aを生成する。なお、透視変換についての詳細な説明は後述する。本実施形態に係る表面形状推定装置100は、後述するように、追跡領域A内の特徴点を追跡することで、炉壁の表面の凹凸を推定する。透視変換処理部120は、生成した追跡画像H
Aを、特徴点抽出部130へ出力する。
【0029】
特徴点抽出部130は、互いに重複する部分を含む異なる2つの追跡画像HAから、炉壁の表面の同一位置に対応する特徴点をそれぞれ抽出する機能部である。互いに重複する部分を含む異なる2つの追跡画像HAは、例えば、時間的に隣接する画像であってもよく、追跡画像HAの元となる撮像画像が取得された時間と撮像装置30の移動速度とに基づいて選択することもできる。特徴点は、画像中において、周囲の画素と輝度値または色が区別できることで、その位置を特定できる点である。複数の画像中から同じ位置に対応する特徴点を、それぞれの画像から抽出することにより、複数の画像を容易に対応付けることができる。
【0030】
特徴点抽出部130は、例えば、追跡画像HAのそれぞれについて、追跡画像HAの同一位置(例えば、同一の高さ)に仮想線を設定し、当該仮想線上で輝度値が極値となる点を特徴点として抽出してもよい。あるいは、特徴点抽出部130は、炉壁と撮像装置30との幾何学的な位置関係に基づいて、異なる2つの追跡画像HAのそれぞれにおける対応する炉壁の領域を判定することで、炉壁の同一位置を示す追跡画像HA中の点を特徴点として抽出してもよい。
【0031】
特徴点抽出部130は、撮像装置30の炭化室内の1回の移動によって取得された複数の斜視画像ISに対応する複数の追跡画像HAから、互いに重複する部分を含む異なる2つの追跡画像HAのセットを複数作成し、各セットについて2つの追跡画像HAのそれぞれから特徴点を抽出する。特徴点抽出部130は、各セットについて2つの追跡画像HAのそれぞれの特徴点を特定する情報(例えば追跡画像における特徴点の座標位置)を、表面形状算出部140へ出力する。
【0032】
表面形状算出部140は、異なる2つの追跡画像HAからそれぞれ抽出された特徴点に基づいて、炉壁の表面形状を算出する。例えば、表面形状算出部140は、追跡画像HA上での特徴点の位置に基づいて、追跡画像HAから炉壁の表面形状を復元し、炉壁の表面形状を算出してもよい。すなわち、表面形状算出部140は、SfM(Structure from Mothion)と呼ばれる画像処理技術を用いて、2次元画像である追跡画像HAから炉壁の表面の3次元形状を復元することで、炉壁の表面形状を算出することができる。あるいは、表面形状算出部140は、追跡画像HAの特徴点の位置と、炉壁と撮像装置30との幾何学的な位置関係とに基づいて、炉壁の表面形状を算出してもよい。なお、表面形状算出部140による炉壁の表面形状の算出処理についての詳細は後述する。表面形状算出部140は、算出した炉壁の表面形状を、ユーザ端末70へ出力する。
【0033】
設定記憶部150は、表面形状推定装置100において実行される各処理において用いる各種パラメータを記憶する記憶部である。設定記憶部150は、例えば、撮像画像Iにおける追跡領域Aの位置情報や、特徴量抽出部130にて追跡画像HA上に設定する仮想線の位置情報、表面形状算出部140のSfMの処理で用いる撮像装置30の焦点距離等の内部パラメータを記憶する。設定記憶部150が記憶する各種パラメータは、例えばユーザがユーザ端末70を用いて予め設定してもよい。
【0034】
なお、表面形状推定装置100に接続されているユーザ端末70は、ユーザが表面形状推定装置100に対して情報を入力し、表面形状推定装置100から出力された情報をユーザに出力するための情報処理装置である。例えば、ユーザ端末70は、マウス、キーボード、タッチパネル等の入力部と、ディスプレイ等の表示部とを備えるコンピュータであってもよい。なお、ユーザ端末70と表面形状推定装置100とは、1つの装置によって構成してもよい。
【0035】
また、表面形状推定装置100の各機能を実現するためのコンピュータプログラムを作成し、パーソナルコンピュータ等に実装することも可能である。また、このようなコンピュータプログラムが格納された、コンピュータで読み取り可能な記録媒体も提供することができる。記録媒体は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリ等である。また、上記のコンピュータプログラムは、記録媒体を用いずに、例えばネットワークを介して配信してもよい。
【0036】
[2.表面形状推定方法]
次に、
図4に基づいて、本実施形態に係るコークス炉の炉壁の表面形状を推定する表面形状推定方法を説明する。
図4は、本実施形態に係る表面形状推定方法を示すフローチャートである。
【0037】
本実施形態に係る表面形状推定方法は、
図4に示すように、まず、撮像画像取得部110は、撮像画像記憶部50から、炉壁の表面形状を推定する炭化室を撮像して取得された複数の撮像画像Iを取得し、炉壁が写った撮像画像Iから斜視画像I
Sを取得したうえで、透視変換処理部120に出力する(S10)。次いで、透視変換処理部120は、複数の斜視画像I
Sのそれぞれについて、斜視画像I
Sの炉壁11R、11L部分に設定された矩形の領域に対応する追跡領域Aを設定し、追跡領域Aを透視変換して、炉壁の法線方向から見た正視画像に変換した追跡画像H
Aを生成する(S20)。特徴点抽出部130は、互いに重複する部分を含む異なる2つの追跡画像H
Aから、炉壁の表面の同一位置に対応する特徴点をそれぞれ抽出する(S30)。そして、表面形状算出部140は、異なる2つの追跡画像H
Aからそれぞれ抽出された特徴点に基づいて、炉壁の表面形状を算出する(S40)。
【0038】
具体的には、2次元画像から炉壁の表面の3次元形状を復元する画像処理技術であるSfMを用いて炉壁の表面形状を算出する方法と、追跡画像から抽出される特徴点と、炉壁と撮像装置30との幾何学的な位置関係とに基づいて、炉壁の表面形状を算出する方法とがある。以下、それぞれの炉壁の表面形状の算出方法について説明する。
【0039】
[2-1.SfMを用いた炉壁の表面形状の算出]
(S10:炉壁の撮像画像取得)
SfMを用いた炉壁の表面形状の算出では、まず、
図4に示すように、撮像画像取得部110は、撮像画像記憶部50から、炉壁の表面形状を推定する炭化室を撮像して取得された複数の撮像画像Iを取得する。撮像画像取得部110は、例えば、ユーザ端末70を用いてユーザから指定された窯の炭化室を撮像した複数の撮像画像Iを、撮像画像記憶部50から取得する。複数の撮像画像Iは、例えば、撮像装置30を押出機側からコークス排出側に向かって1回移動させたときに取得された複数の画像であってもよく、動画の各フレームであってもよい。また、撮像画像取得部110は、炉壁11R、11Lが写った撮像画像Iを斜視画像I
Sと見なすか、または、撮像画像Iのそれぞれから炉壁11R、11Lが写った部分を抽出し、斜視画像I
Sとして取得する(S10)。そして、撮像画像取得部110は、取得した複数の斜視画像I
Sを透視変換処理部120へ出力する。
【0040】
(S20:透視変換処理)
次いで、透視変換処理部120は、斜視画像ISのそれぞれについて、炉壁11Rにおける追跡領域ARに透視変換を用いて炉壁11Rを含む撮像画像Iの右半分に対応する透視変換画像を生成し、同様に、炉壁11Lにおける追跡領域ALに透視変換を用いて炉壁11Lを含む画像Iの左半分に対応する透視変換画像を生成する(S20)。以下、追跡領域AR及び追跡領域ALの各々における透視変換を説明する際には、ARとALを単にAで表す。
【0041】
透視変換とは、炉壁を斜めから見た斜視画像ISの炉壁11R、11Lに対応する部分を正面から見たような画像に変換することで得られる座標(x,y)で与えられる画像への変換、すなわち、斜めに見た画像を正面から見た画像にする変換をいう。このことは、透視変換後の画像の座標(x,y)に対応する透視変換後の画素値を、H(x,y)で表し、斜視画像ISの座標(u,v)における画素値をI(u,v)で表すこととすると、下記式(1)~式(3)で表すことができる。下記式(1)のmkl(k=1,2,3、l=1,2,3)は、予め定められた定数である。
【0042】
【0043】
なお、デジタル画像の場合、座標はピクセル単位の整数の組である必要があるが、座標の対応で得られる斜視画像ISの座標(u,v)は必ずしも整数の組になるとは限らないことから、斜視画像ISの座標(u,v)において補間された画素値を用いる。
【0044】
上記m
klは、追跡領域Aの4つの頂点の座標と対応する追跡画像H
Aの4つの頂点の座標から定めておく。追跡領域Aは、炉壁の表面形状を推定する領域であり、各撮像画像(斜視画像I
S)の同一位置に設定される。例えば、
図3に示した例では、撮像画像Iの右側の炉壁11Rの下側に、追跡領域Aが設定されている。
図3に示したように、撮像画像Iに対応させて、左上の画素を原点とするuv座標系を設定したとき、例えば
図5に示すように、斜視画像I
Sに、頂点a
i=(u
i,v
i)(i=1,2,3,4)を頂点とする台形状の追跡領域Aを設定する。追跡領域Aを透視変換して得られた正視画像(追跡画像H
A)の座標系をxy座標系としたとき、追跡領域Aの各頂点に対応する追跡画像H
Aの各頂点をb
i=(x
i,y
i)で表せば、定数m
klは、上記式(1)において、u=u
i、v=v
i、x=x
i、y=y
iを代入し、m
klを未知とする8本の方程式を連立して解くことにより求めることができる。
【0045】
透視変換処理部120は、各撮像画像I(斜視画像IS)の追跡領域Aを透視変換して生成した追跡画像HAを、特徴点抽出部130へ出力する。
【0046】
(S30:特徴点抽出)
特徴点抽出部130は、互いに重複する部分を含む異なる2つの追跡画像HAから、炉壁の表面の同一位置に対応する特徴点をそれぞれ抽出する(S30)。特徴点抽出部130は、互いに重複する部分を含む異なる2つの追跡画像HAを、例えば、追跡画像HAの元となる撮像画像が取得された時間と撮像装置30の移動速度とに基づき選択する。例えば、2つの追跡画像HAとして、時系列に並べた複数の追跡画像HAのうちから隣り合う2つの追跡画像HAを用いてもよい。
【0047】
すなわち、特徴点抽出部130は、撮像画像I(斜視画像IS)(s=1、2、・・・)に対し、各々を透視変換したものをHs(s=1、2、・・・)で表す。H1内の追跡画像HA1をテンプレートとしてH2に対してテンプレートマッチングを行い、マッチした画像をHA2とする。その結果、HA1とHA2は炉壁上の同一の部分に相当する。s=3以上の画像についても同様の処理を行うことで、複数のフレームにおいて追跡画像HAsを得ることができる。
【0048】
特徴点抽出部130は、例えば、追跡画像H
ASのそれぞれについて、追跡画像H
ASの同一位置(例えば、同一の高さ)に仮想線を設定し、当該仮想線上で輝度値が極値となる点を特徴点として抽出してもよい。具体的には、例えば
図6に示すように、追跡画像H
ASに対して、予め指定された位置に仮想線L(L
S)を設定する。仮想線L
Sは、例えば追跡画像H
ASのx軸に平行な直線であってもよい。
【0049】
フレーム数s=1、2、・・・に応じて、仮想線LSをy軸方向の所定の位置に配置し、縦にフレーム数、横にHAsのx軸方向ピクセル数のサイズになる仮想線履歴画像を構成する。特徴点抽出部130は、仮想線履歴画像を基底関数法で平滑化して、平滑化した仮想線履歴画像の横軸方向微分を計算し、横軸方向の極値点を求める。求めた極値点を縦軸方向へ結んだ曲線がノイズを含んだ極値点の軌跡になるので、特徴点抽出部130は、当該曲線に直線を当てはめて、ノイズを除去した極値点の軌跡を求める。求めた極値点の軌跡から極値点の仮想線LS上の位置が得られ、仮想線LSの追跡画像HAS内の位置から、極値点の追跡画像内の位置が得られる。
【0050】
例えば、
図6左下には、追跡画像H
ASのy座標がy
tのときの仮想線L上の輝度値を示している。かかる輝度分布より、追跡画像H
ASのy座標がy
tのときには、輝度値が極大である画素P
aと、輝度値が極小である画素P
bとが、追跡画像H
ASの特徴点として抽出される。このように、特徴点抽出部130は、仮想線Lをy軸に沿って数画素ずつ移動させながら、y座標の各位置における仮想線L
S上の輝度値の極値を特徴点として抽出することで、例えば
図6右側に示すような追跡画像H
ASの特徴点を抽出する。
【0051】
仮想線L上において輝度値が極値を取る部分は、炉壁の表面の特徴的な欠陥や特徴的な凹凸がある部分等に対応する。したがって、互いに重複する部分を含む異なる2つの追跡画像HAにおいて、それぞれの追跡画像HAで極値となる部分は、2つの追跡画像HAで互いに対応関係があると考えられるため、互いに対応関係にある極値となる部分同士を突き合せれば、当該極値となる部分は、炉壁上の同じ位置を示しているといえる。
【0052】
そのため、輝度値が極値を取る部分を特徴点として抽出することで、2つの追跡画像HA(すなわち、撮像位置が既知で、異なる角度から見た2つの画像)において、実空間上の同じ位置が特定できるので、三角測量の要領から、炉壁の表面に凹凸がある部分の3次元位置を取得することができる。なお、特徴点抽出部130は、仮想線L上の輝度値の極値を特徴点として抽出した後、仮想線L上の極値以外の部分に、等間隔に特徴点を設定してもよい。仮想線L上の極値以外の部分は、炉壁の表面に凹凸の少ない平坦部分と考えられる。仮想線L上の極値以外の部分に特徴点を設定することで、炉壁の表面が平坦な部分も推定することが可能となる。
【0053】
特徴点抽出部130は、撮像装置30の炭化室内の1回の移動によって取得された複数の撮像画像に対応する複数の追跡画像から、互いに重複する部分を含む異なる2つの追跡画像のセットを複数作成し、各セットについて2つの追跡画像それぞれから特徴点を抽出する。そして、特徴点抽出部130は、各セットについて2つの追跡画像それぞれの特徴点を特定する情報(例えば追跡画像における特徴点の座標位置)を、表面形状算出部140へ出力する。
【0054】
(S40:表面形状算出)
表面形状算出部140は、異なる2つの追跡画像からそれぞれ抽出された特徴点に基づいて、炉壁の表面形状を算出する(S40)。
【0055】
例えば、表面形状算出部140は、撮影画像I(斜視画像IS)上での特徴点の位置と撮像装置の追跡画像HAを撮像した際の位置とに基づいて、追跡画像HAから炉壁の表面形状を復元し、炉壁の表面形状を算出する。すなわち、表面形状算出部140は、SfMを用いて、2次元画像である追跡画像から炉壁の表面の3次元形状を復元することで、炉壁の表面形状を算出する。
【0056】
具体的には、表面形状算出部140は、ステップS30にて抽出した特徴点それぞれについて、各撮影画像I(斜視画像IS)内で追跡し、特徴点の軌跡を求める。特徴点の追跡は、例えば、ステップS30内で用いたテンプレートマッチングによるテンプレートの移動量と極値点の追跡画像HAs内の位置から極値点の透視変換画像内の座標が算出でき、上記式(1)から極値点の撮影画像I内の座標を得る処理により行ってもよい。そして、表面形状算出部140は、各撮影画像I(斜視画像IS)内の特徴点の軌跡をピンホールモデルに当てはめて、SfMを用いて、炉壁の表面の3次元座標位置を推定する。
【0057】
図7に示すように、追跡画像H
A1を撮像したときの斜視画像をI
S1、追跡画像H
A2を撮像したときの斜視画像をI
S2とし、2つの斜視画像I
S1、I
S2における、複数の特徴点の画像上の座標を各々(u
α、v
α)(α=1、2、・・・n)、(u’
α、v’
α)(α=1、2、・・・n)とする。すなわち、下記式(4)のように表される。
【0058】
【0059】
また、追跡画像HA1を撮像したときの撮像装置30の光学中心をO1とし、光学中心O1を原点とするXYZ座標での特徴点の位置を(X,Y,Z)とし、同様に、追跡画像HA2を撮像したときの撮像装置30の光学中心をO2とし、光学中心O2を原点とするX’Y’Z’座標系での特徴点Pの位置(X’,Y’,Z’)とする。内部パラメータに当たる焦点距離をfx、fyで表すと、焦点距離fx、fyは下記式(5)で表される。
【0060】
【0061】
まず、特徴点の画像内の座標の情報から下記式(6)に示すξαを表す。
【0062】
【0063】
そして、下記式(7)に示す基本行列の推定行列E^(表記の都合上、Eの横に^を記しているが、実際は下記式(7)に示すように、Eの上に^がある。以下同様とする。)を最小化問題の解(e1,・・・,eg)から構成する。
【0064】
【0065】
次に、推定行列E^を特異値分解し、直交行列のUとV、対角行列のΣを、下記式(8)を満たすものとする。
【0066】
【0067】
そして、直交行列Uを下記式(9)で表し、回転行列の候補R±を下記式(10)で表す。
【0068】
【0069】
外部パラメータである平行移動と回転(T^,R^)(表記の都合上、TとRの横に^を記しているが、実際は後述する式(15)に示すように、TとRの上に^がある。以下同様とする。)の候補T-、R-(表記の都合上、TとRの横に-を記しているが、実際は下記式(11)に示すように、TとRの上に-がある。以下同様とする。なお、文字の上につく-は、当該文字に関する候補であることを示している。)を、下記式(11)に示す4通りについて算出する。
【0070】
【0071】
そして、各々に対して、下記式(12)を算出する。
【0072】
【0073】
すべてのα=1,・・・、nに対して下記式(13)となる(T-,R-)を外部パラメータの平行移動と回転(T^,R^)とし、その際の(Zα-,Z’α-)を(Zα^,Z’α^)とする。
【0074】
【0075】
求まった(Zα^,Z’α^)より下記式(14)を求める。
【0076】
【0077】
上記式(14)を整理すると、下記式(15)となる。
【0078】
【0079】
これより、点群は下記式(16)で表される。
【0080】
【0081】
上記式(16)を定数倍することで、追跡画像HA1を撮影したときのXYZ座標における特徴点の座標になる。点群に左右の炉壁にあたる2つの平面を当てはめて、平面間の距離を求め、コークス炉の設計時の炉壁間距離との比を用いて距離を補正することで、追跡画像HA1を撮影したときのXYZ座標における特徴点の座標が得られる。
【0082】
表面形状算出部140は、ステップS30にて抽出された特徴点について、上述の計算を行うことにより3次元位置を推定する。そして、表面形状算出部140は、算出した特徴点Pの3次元位置を、炉壁の表面形状を表す情報として、ユーザ端末70へ出力する。
【0083】
[2-2.幾何学的な位置関係に基づく炉壁の表面形状の算出]
(S10:炉壁の撮像画像取得)
幾何学的な位置関係に基づく炉壁の表面形状の算出では、まず、
図4に示すように、撮像画像取得部110は、撮像画像記憶部50から、炉壁の表面形状を推定する炭化室を撮像して取得された複数の撮像画像Iを取得し、撮像画像Iから斜視画像I
Sを取得する(S10)。なお、ステップS10の処理は、上述のSfMを用いて炉壁の表面形状を算出する場合と同様に行えばよいため、ここでは詳細な説明を省略する。撮像画像取得部110は、取得した複数の斜視画像I
Sを透視変換処理部120へ出力する。
【0084】
(S20:透視変換処理)
次いで、透視変換処理部120は、複数の斜視画像のそれぞれについて、撮像画像における追跡領域Aを透視変換して正視画像に変換した追跡画像HAを生成する(S20)。なお、ステップS20の処理も、上述のSfMを用いて炉壁の表面形状を算出する場合と同様に行えばよいため、ここでは詳細な説明を省略する。透視変換処理部120は、各撮像画像の追跡領域を透視変換して生成した追跡画像を、特徴点抽出部130へ出力する。
【0085】
(S30:特徴点抽出)
そして、特徴点抽出部130は、互いに重複する部分を含む異なる2つの追跡画像HAから、炉壁の表面の同一位置に対応する特徴点をそれぞれ抽出する(S30)。特徴点抽出部130は、上述のSfMを用いて炉壁の表面形状を算出する場合と同様に、互いに重複する部分を含む異なる2つの追跡画像HAを、例えば、追跡画像HAの元となる撮像画像Iが取得された時間と撮像装置30の移動速度とに基づき選択する。
【0086】
特徴点抽出部130は、炉壁と撮像装置30との幾何学的な位置関係に基づいて、異なる2つの追跡画像HAのそれぞれが対応する炉壁の領域を判定して、炉壁の同一位置を示す任意の点を特徴点として、それぞれの追跡画像HAから抽出する。特徴点の抽出は既存の任意の手法を用いて行ってもよく、上述のSfMを用いて炉壁の表面形状を算出した場合と同様に輝度の極値を特徴量としてもよい。また、特徴点抽出部130は、仮想線L上の輝度値の極値を特徴点として抽出した後、仮想線L上の極値以外の部分に、等間隔に特徴点を設定してもよい。
【0087】
撮像装置30の炭化室内の1回の移動によって取得された複数の撮像画像に対応する複数の追跡画像から、互いに重複する部分を含む異なる2つの追跡画像HAのセットを複数作成し、各セットについて2つの追跡画像それぞれから特徴点を抽出する。そして、特徴点抽出部130は、各セットについて2つの追跡画像HAのそれぞれの特徴点を特定する情報(例えば追跡画像における特徴点の座標位置)を、表面形状算出部140へ出力する。
【0088】
(S40:表面形状算出)
表面形状算出部140は、異なる2つの追跡画像HAからそれぞれ抽出された特徴点に基づいて、炉壁の表面形状を算出する(S40)。ここでは、表面形状算出部140は、特徴点と、炉壁と撮像装置30との幾何学的な位置関係とに基づいて、炉壁の表面形状を算出する。
【0089】
具体的には、
図8に示すように、ある特徴点に対応する炉壁の表面位置Pでの炉壁の表面からの深さdは、下記式(17)により表される。
【0090】
【0091】
ここで、Wは炭化室の幅、uは追跡画像HA1、HA2間における特徴点Pの移動距離である。sは追跡画像HA1を取得したときの撮像装置30の光学中心O1と追跡画像HA2を取得したときの撮像装置30の光学中心O2の移動距離であり、テンプレートマッチング処理により求まる追跡画像の移動量である。
【0092】
表面形状算出部140は、ステップS30にて抽出された特徴点について、上記式(17)を用いて炉壁の表面からの深さdをそれぞれ算出する。そして、表面形状算出部140は、算出した炉壁の表面からの深さdを、炉壁の表面形状を表す情報として、ユーザ端末70へ出力する。
【0093】
図9に、本実施形態に係る表面形状推定方法により得られる炉壁の表面形状を表す情報の一例を示す。
図9は、幾何学的な位置関係に基づき炉壁の表面形状を推定して得られた、左右の炉壁の一部領域における深さを示したコンター図である。
図9のコンター図では、濃淡によって炉壁の凹凸を表しており、右炉壁の黒い部分では炉壁に比較的深い凹部があることがわかる。
【0094】
また、
図9に示すようなコンター図の他にも、炉壁の表面形状を表す情報として、各特徴点について、追跡画像H
A1、H
A2間における特徴点Pの移動距離uと光学中心O
1、O
2の移動距離sとの比u/sを算出してもよい。比u/sの値が正の場合には炉壁の表面は平坦部分から突出していると推定でき、比u/sの値が負の場合には炉壁の表面は平坦部分から窪んでいると推定できる。
図9のように、特徴点が対応する炉壁の位置に、記号または色によって比u/sの正負を示すことで、炉壁の表面形状を示すことができる。
【0095】
なお、SfMを用いて炉壁の表面形状を算出する場合にも同様に、
図9等に示すような炉壁の表面形状を表す情報を得ることができる。
【0096】
以上、本実施形態に係るコークス炉の炉壁の表面形状を推定する表面形状推定装置100と、これを用いた表面形状推定方法とについて説明した。本実施形態によれば、コークス炉の内部で1台の撮像装置を移動させながら順次撮像した複数の撮像画像を用いて、炉壁の表面形状を推定する。このように、炉壁の表面形状の推定に用いる複数の撮像画像は、複雑で大掛かりな装置を用いることなく、簡便な作業で取得し得る。また、本実施形態では、撮像画像に対し追跡領域を設定し、追跡領域内の炉壁の表面形状を推定する。追跡領域は任意に設定することができ、これにより、例えば左右の炉壁の表面形状を独立して評価することもできる。
【0097】
[3.ハードウェア構成]
図10に基づいて、本実施形態に係る表面形状推定装置100のハードウェア構成について説明する。
図10は、本実施形態に係る表面形状推定装置100として機能する情報処理装置900のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0098】
情報処理装置900は、CPU(Central Processing Unit)901等の1または複数のハードウェアプロセッサ、RAM(Random Access Memory)905、ROM(Read Only Memory)903等の1または複数のメモリを具備し、メモリに格納される1または複数のプログラムが1または複数のハードウェアプロセッサにより実行されることで各種の演算を実行する。また、情報処理装置900は、バス907と、入力I/F909と、出力I/F911と、ストレージ装置913と、ドライブ915と、接続ポート917と、通信装置919とを含む。
【0099】
例えば、CPU901は、演算処理装置及び制御装置として機能する。CPU901は、ROM903、RAM905、ストレージ装置913、またはリムーバブル記録媒体925に記録された各種プログラムに従って、情報処理装置900内の動作全般またはその一部を制御する。ROM903は、CPU901が使用するプログラムあるいは演算パラメータ等を記憶する。RAM905は、CPU901が使用するプログラム、あるいは、プログラムの実行において適宜変化するパラメータ等を一次記憶する。これらはCPUバス等の内部バスにより構成されるバス907により相互に接続されている。バス907は、ブリッジを介して、PCI(Peripheral Component Interconnect/Interface)バス、PCI Express(登録商標)などの外部バスに接続されている。
【0100】
なお、演算処理装置及び制御装置は、CPU901以外に、PLC(Programmable Logic Controller)によって実現してもよいし、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の専用のハードウェアによって実現してもよい。
【0101】
入力I/F909は、例えば、マウス、キーボード、タッチパネル、ボタン、スイッチ及びレバー等の、ユーザが操作する操作手段である入力装置921からの入力を受け付けるインタフェースである。入力I/F909は、例えば、ユーザが入力装置921を用いて入力した情報に基づいて入力信号を生成し、CPU901に出力する入力制御回路等として構成されている。入力装置921は、例えば、赤外線あるいはその他の電波を利用したリモートコントロール装置、あるいは、情報処理装置900の操作に対応したPDA等の外部機器927であってもよい。情報処理装置900のユーザは、入力装置921を操作し、情報処理装置900に対して各種のデータを入力したり処理動作を指示したりすることができる。
【0102】
出力I/F911は、入力された情報を、ユーザに対して視覚的または聴覚的に通知可能な出力装置923へ出力するインタフェースである。出力装置923は、例えば、CRTディスプレイ装置、液晶ディスプレイ装置、プラズマディスプレイ装置、ELディスプレイ装置およびランプ等の表示装置であってもよい。あるいは、出力装置923は、スピーカ及びヘッドホン等の音声出力装置や、プリンター、移動通信端末、ファクシミリ等であってもよい。出力I/F911は、出力装置923に対して、例えば、情報処理装置900により実行された各種処理にて得られた処理結果を出力するよう指示する。具体的には、出力I/F911は、表示装置に対して情報処理装置900による処理結果を、テキストまたはイメージで表示するよう指示する。また、出力I/F911は、音声出力装置に対し、再生指示を受けた音声データ等のオーディオ信号をアナログ信号に変換して出力するよう指示する。
【0103】
ストレージ装置913は、情報処理装置900の記憶部の1つであり、データ格納用の装置である。ストレージ装置913は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)等の磁気記憶デバイス、SSD(Solid State Drive)等の半導体記憶デバイス、光記憶デバイスまたは光磁気記憶デバイス等により構成される。ストレージ装置913は、CPU901が実行するプログラム、プログラムの実行により生成された各種データ、及び、外部から取得した各種データ等を格納する。
【0104】
ドライブ915は、記録媒体用リーダライタであり、情報処理装置900に内蔵あるいは外付けされる。ドライブ915は、装着されているリムーバブル記録媒体925に記録されている情報を読み出し、RAM905に出力する。また、ドライブ915は、装着されているリムーバブル記録媒体925に情報を書き込むことも可能である。リムーバブル記録媒体925は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスクまたは半導体メモリ等である。具体的には、リムーバブル記録媒体925は、CDメディア、DVDメディア、Blu-ray(登録商標)メディア、コンパクトフラッシュ(登録商標)(CompactFlash:CF)、フラッシュメモリ、SDメモリカード(Secure Digital memory card)等であってもよい。また、リムーバブル記録媒体925は、例えば、非接触型ICチップを搭載したICカード(Integrated Circuit card)または電子機器等であってもよい。
【0105】
接続ポート917は、機器を情報処理装置900に直接接続するためのポートである。接続ポート917は、例えば、USB(Universal Serial Bus)ポート、eSATA(external Serial Advanced Technology Attachment)、SAS(Serial Attached SCSI(Small Computer System Interface))ポート等である。情報処理装置900は、接続ポート917に接続された外部機器927から、直接各種データを取得したり外部機器927に各種データを提供したりすることができる。例えば接続ポート917を介して、アラーム情報を通知するための回転灯等のアラーム通知装置を接続してもよい。また、外部機器927として、NAS(Network Attached Storage)を接続し、記憶装置として用いてもよい。
【0106】
通信装置919は、例えば、通信網929に接続するための通信デバイス等で構成された通信インタフェースである。通信装置919は、例えば、有線または無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)またはWUSB(Wireless USB)用の通信カード等である。また、通信装置919は、光通信用のルータ、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)用のルータ、または、各種通信用のモデム等であってもよい。通信装置919は、例えば、インターネットや他の通信機器との間で、例えばTCP/IP等の所定のプロトコルに則して信号等を送受信することができる。例えば、通信装置919を介して、情報処理装置900を操作するためのコンピュータを接続することもできる。また、通信装置919に接続される通信網929は、有線または無線によって接続されたネットワーク等により構成されている。例えば、通信網929は、インターネット、家庭内LAN、赤外線通信、ラジオ波通信または衛星通信等である。
【0107】
以上、情報処理装置900のハードウェア構成の一例を示した。上述の各構成要素は、汎用的な部材を用いて構成されてもよく、各構成要素の機能に特化したハードウェアにより構成されてもよい。情報処理装置900のハードウェア構成は、本実施形態を実施する時々の技術レベルに応じて適宜変更可能である。
【0108】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0109】
11L、11R 炉壁
13 炉底
15 炭化室窯口
30 撮像装置
50 撮像画像記憶部
70 ユーザ端末
100 表面形状推定装置
110 撮像画像取得部
120 透視変換処理部
130 特徴点抽出部
140 表面形状算出部
150 設定記憶部
900 情報処理装置
901 CPU
903 ROM
905 RAM
907 バス
909 入力I/F
911 出力I/F
913 ストレージ装置
915 ドライブ
917 接続ポート
919 通信装置
921 入力装置
923 出力装置
925 リムーバブル記録媒体
927 外部機器
929 通信網
A 追跡領域
I 撮像画像
IS 斜視画像
HA 追跡画像