(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141743
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】露光装置
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20241003BHJP
G01J 1/02 20060101ALN20241003BHJP
【FI】
G03F7/20 501
G01J1/02 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053550
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】出井 諒
【テーマコード(参考)】
2G065
2H197
【Fターム(参考)】
2G065AA03
2G065AB05
2G065AB22
2G065AB23
2G065BA05
2G065BA06
2G065BB14
2G065DA05
2H197AA05
2H197BA07
2H197BA09
2H197BA11
2H197CA03
2H197CA05
2H197CA07
2H197CB16
2H197CC16
2H197CD12
2H197CD13
2H197CD15
2H197CD17
2H197CD18
2H197CD41
2H197DB10
2H197DB11
2H197DB23
2H197DC02
2H197DC12
2H197EA06
2H197EA15
2H197EA17
2H197EA19
2H197EA25
2H197EB17
2H197EB22
2H197EB23
2H197HA03
2H197HA08
2H197HA10
(57)【要約】
【課題】高い露光精度を実現することが可能な露光装置を提供すること。
【解決手段】本露光装置は、光出射部と、マスクステージと、ワークステージと、投影光学系と、センサ機構とを具備する。前記光出射部は、露光光を出射する。前記マスクステージは、露光用マスクを保持する。前記ワークステージは、ワークを保持する。前記投影光学系は、前記光出射部から出射され前記露光用マスクを透過した前記露光光を、前記ワークステージに保持された前記ワークに照射する。前記センサ機構は、前記露光用マスクにより前記光出射部に向かって反射される反射光、又は前記露光用マスクを透過し前記投影光学系に向かって進行する透過光に基づいて、前記露光用マスクの開口率に関する情報を検出する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
露光光を出射する光出射部と、
露光用マスクを保持するマスクステージと、
ワークを保持するワークステージと、
前記光出射部から出射され前記露光用マスクを透過した前記露光光を、前記ワークステージに保持された前記ワークに照射する投影光学系と、
前記露光用マスクにより前記光出射部に向かって反射される反射光、又は前記露光用マスクを透過し前記投影光学系に向かって進行する透過光に基づいて、前記露光用マスクの開口率に関する情報を検出するセンサ機構と
を具備する露光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の露光装置であって、
前記センサ機構は、前記開口率に関する情報として、前記反射光の光量、又は前記透過光の光量を検出する
露光装置。
【請求項3】
請求項1に記載の露光装置であって、
前記センサ機構は、
前記光出射部から前記露光用マスクまでの前記露光光の光路上に配置され、前記光出射部から出射された前記露光光の一部を前記露光用マスクに向かって透過させ、前記露光用マスクにより反射される前記反射光を前記光路から外れる方向に向かって反射するビームスプリッタと、
前記ビームスプリッタにより反射された前記反射光が入射する位置に配置される光学センサと
を有する
露光装置。
【請求項4】
請求項3に記載の露光装置であって、
前記センサ機構は、前記光出射部から前記露光用マスクまでの前記露光光の光路上の所定の検出位置と、前記露光光の光路から外れた退避位置との間で、前記ビームスプリッタを移動させることが可能な移動機構を有する
露光装置。
【請求項5】
請求項1に記載の露光装置であって、
前記センサ機構は、
前記露光用マスクから前記投影光学系までの前記露光光の光路上に配置され、前記露光用マスクを透過した前記透過光の一部を前記投影光学系に向かって透過させ、前記露光用マスクを透過した前記透過光の他の一部を前記光路から外れる方向に向かって反射するビームスプリッタと、
前記ビームスプリッタにより反射された前記反射光が入射する位置に配置される光学センサと
を有する
露光装置。
【請求項6】
請求項5に記載の露光装置であって、
前記センサ機構は、前記露光用マスクから前記投影光学系までの前記露光光の光路上の所定の検出位置と、前記露光光の光路から外れた退避位置との間で、前記ビームスプリッタを移動させることが可能な移動機構を有する
露光装置。
【請求項7】
請求項1に記載の露光装置であって、
前記センサ機構は、
前記露光用マスクから前記投影光学系までの前記露光光の光路上に配置され、前記露光用マスクを透過した前記透過光を前記光路から外れる方向に向かって反射する反射部材と、
前記反射部材により反射された前記透過光が入射する位置に配置される光学センサと、
前記露光用マスクから前記投影光学系までの前記露光光の光路上の所定の検出位置と、前記露光光の光路から外れた退避位置との間で、前記反射部材を移動させることが可能な移動機構と
を有する
露光装置。
【請求項8】
請求項4又は6に記載の露光装置であって、さらに、
前記開口率に関する情報の検出工程時に前記検出位置に前記ビームスプリッタを移動させ、前記ワークに対する露光工程時に前記退避位置に前記ビームスプリッタを移動させる移動制御部を具備する
露光装置。
【請求項9】
請求項7に記載の露光装置であって、さらに、
前記開口率に関する情報の検出工程時に前記検出位置に前記反射部材を移動させ、前記ワークに対する露光工程時に前記退避位置に前記反射部材を移動させる移動制御部を具備する
露光装置。
【請求項10】
請求項1に記載の露光装置であって、さらに、
前記センサ機構により検出された前記開口率に関する情報に基づいて、前記投影光学系のフォーカスを制御するフォーカス制御部を具備する
露光装置。
【請求項11】
請求項10に記載の露光装置であって、
前記フォーカス制御部は、前記センサ機構により検出された前記開口率に関する情報に基づいて前記露光用マスクの開口率を算出し、前記露光用マスクの開口率に基づいて前記投影光学系のフォーカスを制御する
露光装置。
【請求項12】
請求項1に記載の露光装置であって、
前記センサ機構は、前記開口率に関する情報として、前記露光用マスクの開口部分の形状及びサイズの少なくとも一方を検出する
露光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投影光学系を含む露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子、プリント基板、又は液晶基板等のパターンをフォトリソグラフィにより製造する工程において、露光装置が使用される。露光装置は、パターンを形成したマスク(レクチル)と、そのパターンが転写されるワークとが所定の位置関係となるように位置合わせ(アライメント)される。その後、マスクに照射された露光光が、投影光学系によりワークに照射され、ワークにマスクパターンが転写(露光)される。
【0003】
特許文献1には、上記のような露光装置において、マスクとワークとの位置合わせを行うためのアライメントユニット(アライメント顕微鏡ともいう)について開示されている。アライメントユニットによりマスクに形成されたマスクマークと、ワークに形成されたワークマークとが撮影される。撮影されたマスクマーク及びワークマークの各々の画像に基づいて、マスクマーク及びワークマークの各々の位置座標が算出される。両者の位置が予め設定された位置関係になるようにマスクおよびワークの少なくとも一方が移動される。
【0004】
特許文献1に記載の露光装置では、ワークステージの略全面に全反射ミラーもしくはハーフミラーからなる反射部材が埋没される。マスクマークの検出工程時には、反射部材に投影されたマスクマークが、アライメントユニットにより撮影される。
【0005】
特許文献2には、ショット毎に領域が異なる場合でもマスクの透過率を短時間で算出し、光学特性の変動量を正確に補正することを目的とした技術が開示されている。特許文献1に示す露光装置では、ウエハが載置される移動ステージ上に設置されたフォトディテクタの測定結果に基づいて、マスクの透過率が算出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8-233529号公報
【特許文献2】特開2001-297961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年では、配線パターン等の微細化がますます進み、露光精度のさらなる向上が求められている。
【0008】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、高い露光精度を実現することが可能な露光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る露光装置は、光出射部と、マスクステージと、ワークステージと、投影光学系と、センサ機構とを具備する。
前記光出射部は、露光光を出射する。
前記マスクステージは、露光用マスクを保持する。
前記ワークステージは、ワークを保持する。
前記投影光学系は、前記光出射部から出射され前記露光用マスクを透過した前記露光光を、前記ワークステージに保持された前記ワークに照射する。
前記センサ機構は、前記露光用マスクにより前記光出射部に向かって反射される反射光、又は前記露光用マスクを透過し前記投影光学系に向かって進行する透過光に基づいて、前記露光用マスクの開口率に関する情報を検出する。
【0010】
この露光装置では、センサ機構により、露光用マスクにより光出射部に向かって反射される反射光、又は露光用マスクを透過し投影光学系に向かって進行する透過光に基づいて、露光用マスクの開口率に関する情報が検出される。検出された開口率に関する情報に基づいて、高い露光精度を実現することが可能となる。
【0011】
前記センサ機構は、前記開口率に関する情報として、前記反射光の光量、又は前記透過光の光量を検出してもよい。
【0012】
前記センサ機構は、前記光出射部から前記露光用マスクまでの前記露光光の光路上に配置され、前記光出射部から出射された前記露光光の一部を前記露光用マスクに向かって透過させ、前記露光用マスクにより反射される前記反射光を前記光路から外れる方向に向かって反射するビームスプリッタと、前記ビームスプリッタにより反射された前記反射光が入射する位置に配置される光学センサとを有してもよい。
【0013】
前記センサ機構は、前記光出射部から前記露光用マスクまでの前記露光光の光路上の所定の検出位置と、前記露光光の光路から外れた退避位置との間で、前記ビームスプリッタを移動させることが可能な移動機構を有してもよい。
【0014】
前記センサ機構は、前記露光用マスクから前記投影光学系までの前記露光光の光路上に配置され、前記露光用マスクを透過した前記透過光の一部を前記投影光学系に向かって透過させ、前記露光用マスクを透過した前記透過光の他の一部を前記光路から外れる方向に向かって反射するビームスプリッタと、前記ビームスプリッタにより反射された前記反射光が入射する位置に配置される光学センサとを有してもよい。
【0015】
前記センサ機構は、前記露光用マスクから前記投影光学系までの前記露光光の光路上の所定の検出位置と、前記露光光の光路から外れた退避位置との間で、前記ビームスプリッタを移動させることが可能な移動機構を有してもよい。
【0016】
前記センサ機構は、前記露光用マスクから前記投影光学系までの前記露光光の光路上に配置され、前記露光用マスクを透過した前記透過光を前記光路から外れる方向に向かって反射する反射部材と、前記反射部材により反射された前記透過光が入射する位置に配置される光学センサと、前記露光用マスクから前記投影光学系までの前記露光光の光路上の所定の検出位置と、前記露光光の光路から外れた退避位置との間で、前記反射部材を移動させることが可能な移動機構とを有してもよい。
【0017】
前記露光装置は、さらに、前記開口率に関する情報の検出工程時に前記検出位置に前記ビームスプリッタを移動させ、前記ワークに対する露光工程時に前記退避位置に前記ビームスプリッタを移動させる移動制御部を具備してもよい。
【0018】
前記露光装置は、さらに、前記開口率に関する情報の検出工程時に前記検出位置に前記反射部材を移動させ、前記ワークに対する露光工程時に前記退避位置に前記反射部材を移動させる移動制御部を具備してもよい。
【0019】
前記露光装置は、さらに、前記センサ機構により検出された前記開口率に関する情報に基づいて、前記投影光学系のフォーカスを制御するフォーカス制御部を具備してもよい。
【0020】
前記フォーカス制御部は、前記センサ機構により検出された前記開口率に関する情報に基づいて前記露光用マスクの開口率を算出し、前記露光用マスクの開口率に基づいて前記投影光学系のフォーカスを制御してもよい。
【0021】
前記センサ機構は、前記開口率に関する情報として、前記露光用マスクの開口部分の形状及びサイズの少なくとも一方を検出してもよい。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明によれば、高い露光精度を実現することが可能となる。なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本開示中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態に係る露光装置の基本的な構成例を示す模式図である。
【
図2】アライメント顕微鏡を用いたアライメントマークの検出動作例を説明するための模式図である(マスクマークの検出)。
【
図3】アライメント顕微鏡を用いたアライメントマークの検出動作例を説明するための模式図である(ワークマークの検出)。
【
図4】開口率センサ機構の具体的な構成例を示す模式図である。
【
図5】開口率センサ機構の他の構成例を示す模式図である。
【
図6】開口率センサ機構の他の構成例を示す模式図である。
【
図7】開口率センサ機構の他の構成例を示す模式図である。
【
図8】時間の経過に対する投影光学系のフォーカス位置の変動例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0025】
[露光装置の構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る露光装置の基本的な構成例を示す模式図である。
露光装置1は、光出射部2と、マスクステージMSと、ワークステージWSと、投影光学系3と、アライメント顕微鏡4と、マスクステージ移動機構5と、ワークステージ移動機構6と、投影光学系調整機構7と、顕微鏡移動機構8と、開口率センサ機構9と、モニタ10と、制御装置11とを有する。
【0026】
以下、
図1に示すように、光出射部2の光軸方向(露光光ELの出射方向)をZ方向とし、Z軸の正側を上方側、負側を下方側とする。またZ方向に直交し、図中の左右に延在する方向をX方向とし、X軸の正側を右側、負側を左側とする。また、Z方向及びX方向の各々に直交し、紙面に対して垂直となる奥行方向をY方向とし、Y軸の正側を奥側、負側を手前側とする。もちろん、本技術の適用について、露光装置1が配置される向き等が限定される訳ではない。
【0027】
光出射部2は、下方側に向けて露光光ELを出射する。例えば、光出射部2として、ショートアーク型の水銀ランプが用いられる。水銀ランプからは、例えば、波長365nm(i線)、405nm(h線)、436nm(g線)等を含む紫外光が出射される。もちろんこのような構成に限定されず、紫外光とは異なる波長帯域の光を出射するランプが用いられてもよい。その他、LED(Light Emitting Diode)やLD(Laser Diode)等の固体光源が用いられてもよい。
【0028】
マスクステージMSは、光出射部2の下方側に配置される。マスクステージMSは、露光用マスク(以下、単にマスクと記載する)Mを保持する。本実施形態では、光出射部2の光軸方向(Z方向)に直交するように、マスクMが配置される。マスクMには、所定のマスクパターンMPが形成されている。またマスクMには、アライメントマーク(マスクマーク)MAMが形成されている。マスクマークMAMは、マスク・アライメントマークとも呼ばれる。
【0029】
投影光学系3は、光出射部2から出射されマスクMを透過した露光光ELを、ワークステージWSに保持されたワークWに照射する。これにより、マスクMに形成されているマスクパターンMPの像がワークWに投影される。投影光学系3は、投影レンズを有する結像光学系として構成される。投影光学系3の詳しい構成は限定されず、任意の構成が採用されてよい。
【0030】
ワークステージWSは、ワークWを保持する。本実施形態では、光出射部2の光軸方向(Z方向)に直交するように、ワークWが配置される。
【0031】
ワークステージWSは、ワークWが載置される載置面(載置領域)12を有する。載置面12に複数の真空吸着孔が形成され、真空吸着によりワークWが保持される。なお、ワークWを保持するための具体的な構成や方法は限定されず、任意に設計されてよい。
【0032】
マスクステージ移動機構5は、マスクステージMSを、左右方向(X方向)、奥行方向(Y方向)、及び上下方向(Z方向)の各々において、直線的に移動させる(直動させる)。また、マスクステージ移動機構5は、マスクステージMSを、上下方向(Z方向)を回転軸方向として回転させる。またマスクステージ移動機構5は、マスクステージMSを、光出射部2の光軸方向(Z方向)に対してチルトさせる(傾斜させる)。
【0033】
ワークステージ移動機構6は、ワークステージWSを、左右方向(X方向)、奥行方向(Y方向)、及び上下方向(Z方向)の各々において、直線的に移動させる。また、ワークステージ移動機構6は、ワークステージWSを、上下方向(Z方向)を回転軸方向として回転させる。またワークステージ移動機構6は、ワークステージWSを、光出射部2の光軸方向(Z方向)に対してチルトさせる。
【0034】
マスクステージ移動機構5及びワークステージ移動機構6の各々が駆動することで、マスクMに対するワークWの相対位置を変動させることが可能である。
【0035】
マスクステージ移動機構5及びワークステージ移動機構6の具体的な構成は限定されず、例えばステッピングモータ等を使ったリニアステージ等の任意の移動機構や、ギア機構等を使った任意の回転機構等が用いられてよい。
【0036】
例えば、ワークステージWSを定盤(プラテン)に配置し、リニアモータにより磁気浮上した状態で移動させる。このような構成を採用することも可能である。この場合、定盤も含めた全体をワークステージと呼び、ワークWを保持するワークステージWSを移動体と呼ぶことも可能である。
【0037】
また、マスクステージ移動機構5及びワークステージ移動機構6の構成として、マスクステージMSに対するワークステージWSの相対的な位置関係を変動可能な任意の構成を採用することが可能である。
【0038】
例えば、マスクステージ移動機構5のみが設けられ、マスクステージMSのみが移動可能であってもよい。あるいは、ワークステージ移動機構6のみが設けられ、ワークステージWSのみが移動可能であってもよい。また、左右方向(X方向)、奥行方向(Y方向)、及び上下方向(Z方向)の移動については、マスクステージ移動機構5によりマスクステージMSが移動される。上下方向(Z方向)を回転軸方向とする回転、及び光軸方向(Z方向)に対するチルト(傾斜)については、ワークステージ移動機構6によりワークステージWSが移動される。このような構成も採用可能である。
【0039】
ワークWには、アライメントマーク(ワークマーク)WAMが形成されている。ワークマークWAMは、ワーク・アライメントマークとも呼ばれる。
【0040】
左右方向(X方向)、奥行方向(Y方向)、及び上下方向(Z方向)を回転軸方向とする回転方向において、マスクMとワークWとの位置合わせを行うために、マスクMに対して3個以上のマスクマークMAMを形成することが望ましい。3個以上のマスクマークMAMに対応して、ワークWに同数のワークマークWAMが形成される。
【0041】
例えば、上下方向(Z方向)から見た場合に、矩形状となるマスクMが用いられるとする。この場合、例えば、マスクMの4隅に、マスクマークMAMが形成される。また上下方向(Z方向)から見た場合に、矩形状となる基板がワークWとして配置される。マスクMの4隅に形成されたマスクマークMAMに対応して、ワークWの4隅にワークマークWAMが形成される。もちろん、このような構成に限定されるわけではない。
【0042】
互いに対応するマスクマークMAM及びワークマークWAMは、上下方向(Z方向)から見た場合にマスクM及びワークWが所望の位置関係となる場合に、所定の位置関係となるように形成される。本実施形態では、マスクM及びワークWが所望の位置関係となる場合に、互いに対応するマスクマークMAM及びワークマークWAMが同じ位置となるものとして説明を行う。もちろんそのような設定に限定されず、所定の位置関係として、任意の位置関係が設定されてよい。
【0043】
図1に示すように、ワークステージWSの左側の端部には、反射部材13が接続されて固定される。反射部材13は、上方側の表面S1の高さ位置が、載置面12に載置されたワークWの上方側の表面S2の高さ位置と等しくなるように接続され、ワークステージWSと一体的に移動する。
【0044】
反射部材13としては、例えば全反射ミラーやハーフミラー等が用いられる。その他、後に説明するマスクマークMAMの検出工程時において、反射部材13に投影されるマスクマークMAMを撮影可能であるならば、反射部材13として任意の構成が採用されてよい。
【0045】
また、反射部材13は、上方から見た場合に、マスクMを透過して投影光学系3により照射される露光光ELの照射領域IA以上の大きさで構成される。典型的には、反射部材13は、露光光ELの照射領域IAよりも大きいサイズで構成される。すなわち、反射部材13は、露光光ELの照射領域IAをカバーするサイズで構成される。なお、露光光ELの照射領域IAは、ワークWの露光工程時において、露光が可能な露光面となる。
【0046】
ワークステージ移動機構6が駆動して、ワークステージWSに接続された反射部材13が、投影光学系3の下方側の露光光ELの光軸上の位置に配置されたとする。その状態で露光光ELが照射されると、反射部材13により、投影光学系3により照射される露光光ELの全体が反射される。
【0047】
従って、反射部材13上には、マスクMの像光が結像し、マスクMの像の全体が映ることになる。もちろん、反射部材13上にマスクマークMAMの像も映ることになる。
【0048】
投影光学系調整機構7は、投影光学系3の調整を行う。例えば、投影光学系調整機構7が駆動することで、フォーカス位置の調整、結像倍率の調整、ディストーションの補正等が行われる。例えば、投影光学系3に含まれる投影レンズ等の光学素子の位置の調整、加工、交換等により、投影光学系3の調整を行うことが可能である。投影光学系調整機構7の具体的な構成は限定されず、任意の構成が採用されてよい。
【0049】
顕微鏡移動機構8は、アライメント顕微鏡4を、左右方向(X方向)、奥行方向(Y方向)、及び上下方向(Z方向)の各々において、直線的に移動させる。なお、顕微鏡移動機構8により、アライメント顕微鏡4が、上下方向(Z方向)を回転軸方向として回転可能であってもよい。また顕微鏡移動機構8により、アライメント顕微鏡4が、光出射部2の光軸方向(Z方向)に対してチルト可能であってもよい。
【0050】
顕微鏡移動機構8が駆動することで、アライメント顕微鏡4を、投影光学系3とワークステージWS(ワークW)との間の撮影位置(
図2及び
図3参照)から、
図1に示す退避位置までの間で移動させることが可能となる。
【0051】
なお、アライメント顕微鏡4が撮影位置と退避位置との間で移動可能であるのならば、移動可能な方向が制限されていてもよい。例えば、左右方向(X方向)、奥行方向(Y方向)、及び上下方向(Z方向)の各々における直動のみが可能な構成が採用されてもよい。あるいは、左右方向(X方向)のみに移動可能な構成が採用されてもよい。
【0052】
顕微鏡移動機構8の具体的な構成は限定されず、例えばステッピングモータ等を使ったリニアステージ等の任意の移動機構や、ギア機構等を使った任意の回転機構等が用いられてよい。
【0053】
開口率センサ機構9は、マスクMの開口率に関する情報を検出する。
図1では、開口率センサ機構9は模式的に図示されており、詳しい構成や動作については後述する。なお、マスクMの開口率は、マスクMの開口部分を透過する露光光ELの透過率ともいえる。
【0054】
アライメント顕微鏡4は、マスクMとワークWとの位置合わせを行う際に用いられる。アライメント顕微鏡4は、マスクマークMAMの拡大画像、及びワークマークWAMの拡大画像を撮影することが可能である。
【0055】
アライメント顕微鏡4は、おおよその形状が、一方向に延在する柱形状からなり、内部に、ビームスプリッタ14と、レンズ系15と、光学センサ16とを有する。
【0056】
アライメント顕微鏡4の内部において、ビームスプリッタ14、レンズ系15、及び光学センサ16は、光学センサ16の撮影光軸Oを基準として配置される。
【0057】
ビームスプリッタ14として、入射する光を分割して光学センサ16に出射することが可能な任意の構成が採用されてよい。例えば、プレート型ビームスプリッタ、ペリクル型ビームスプリッタ、キューブ型ビームスプリッタ等の、様々な構成のビームスプリッタが用いられてよい。
【0058】
レンズ系15としては、対物レンズ等を含む任意の構成が採用されてよい。例えば、キューブ型ビームスプリッタを用いる場合には、レンズ系15として収差補正レンズが配置されてもよい。
【0059】
本実施形態では、光学センサ16として、2次元の画像を撮影可能な撮像デバイス(撮像部)が用いられる。例えばCCD(Charge Coupled Device)センサやCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)センサ等のイメージセンサを備えるデジタルカメラを用いることが可能である。これに限定されず、非テレセントリックレンズやテレセントリックレンズ等の結像レンズと上記イメージセンサを組み合わせたデジタルカメラが用いられてもよい。
【0060】
またアライメント顕微鏡4のビームスプリッタ14の下方側の位置には、照明部17が配置される。照明部17は、下方側に向かって非露光光NEL(
図3参照)を出射する。例えば、照明部17としてリング照明が用いられ、非露光光NELとして可視光が出射される。もちろん、このような構成に限定されるわけではなく、同軸照明法を行う構成が採用されてもよい。
【0061】
制御装置11は、露光装置1が有する各ブロックの動作を制御する。制御装置11は、例えばCPU、GPU、DSP等のプロセッサ、ROM、RAM等のメモリ、HDD等の記憶デバイス等、コンピュータに必要なハードウェアを有する。本実施形態では、不揮発性メモリ等の記憶デバイス等により記憶部18が構成される。記憶部18を実現するために、コンピュータ読み取り可能な非一過性の任意の記憶媒体が用いられてよい。
【0062】
制御装置11のプロセッサが記憶部18やメモリに記憶されている本技術に係るプログラムをRAMにロードして実行することにより、本技術に係る位置合わせ方法(アライメント方法)、開口率算出方法、フォーカス制御方法を含む露光方法が実行される。
【0063】
例えばPC(Personal Computer)等の任意のコンピュータにより、制御装置11を実現することが可能である。もちろんFPGA(Field Programmable Gate Array)等のPLD(Programmable Logic Device)や、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェアが用いられてもよい。
【0064】
本実施形態では、制御装置11のプロセッサが本技術に係るプログラムを実行することで、機能ブロックとして、顕微鏡移動制御部19、位置合わせ制御部20、及びフォーカス制御部21が実現される。
【0065】
顕微鏡移動制御部19は、顕微鏡移動機構8を制御して、アライメント顕微鏡4を移動させる。マスクマークMAMの検出工程時、及びワークマークWAMの検出工程時には、アライメント顕微鏡4は、投影光学系3とワークステージWS(ワークW)との間の撮影位置に移動される(
図2及び
図3参照)。ワークWに対する露光工程時には、
図1に示すようにアライメント顕微鏡4は、退避位置に移動される。
【0066】
位置合わせ制御部20は、アライメント顕微鏡4の光学センサ16により撮影されたマスクマークMAMの画像及びワークマークWAMの画像に基づいて、マスクマークMAMの位置及びワークマークWAMの位置の各々を検出する。
【0067】
また位置合わせ制御部20は、検出されたマスクマークMAMの位置、及びワークマークWAMの位置に基づいて、マスクステージ移動機構5及びワークステージ移動機構6を制御して、マスクM及びワークWが所望の位置関係となるように位置合わせを行う。具体的には、マスクマークMAM及びワークマークWAMが互いに同じ位置となるように(所定の位置関係となるように)、マスクステージ移動機構5及びワークステージ移動機構6が制御される。これによりマスクM及びワークWの位置合わせが可能となる。
【0068】
フォーカス制御部21は、ワークWに投影(結像)されるマスクパターンMPのフォーカスを制御する。具体的には、フォーカス制御部21により、ワークWが、投影光学系3のフォーカス位置に配置されるように、投影光学系調整機構7、マスクステージ移動機構5、及びワークステージ移動機構6が制御される。
【0069】
本実施形態では、フォーカス制御として、投影光学系調整機構7を駆動することによる投影光学系3のフォーカス位置の調整、マスクステージ移動機構5を駆動することによるマスクステージMSの上下方向(Z方向)における位置の調整、及びワークステージ移動機構6を駆動することによるワークステージWSの上下方向(Z方向)における位置の調整が実行される。もちろん、このような制御に限定されず、任意のフォーカス制御が実行されてよい。
【0070】
例えば、投影光学系3のフォーカス位置の調整、マスクステージMSの上下方向(Z方向)における位置の調整、及びワークステージWSの上下方向(Z方向)における位置の調整のいずれかのみが実行されてもよい。
【0071】
その他、制御装置11には、露光に関する様々な制御を実行する機能ブロックが構築されるが、図示は省略している。また、各機能ブロックを実現するために、IC(集積回路)等の専用のハードウェアが適宜用いられてもよい。
【0072】
マスクMとワークWとの位置合わせ、及びフォーカス制御が完了すると、ワークWに対する露光工程が開始され、光出射部2から露光光ELが出射される。光出射部2から出射された露光光ELは、マスクパターンMPが形成されたマスクMと、投影光学系3とを介して、レジストを塗布したワークW上に照射される。これにより、マスクパターンMPがワークW上に投影されて露光される。
【0073】
図2及び
図3は、アライメント顕微鏡4を用いたアライメントマーク(マスクマークMAM/ワークマークWAM)の検出動作例を説明するための模式図である。
図2は、マスクマークMAMの検出工程を示す模式図である。
図3は、ワークマークWAMの検出工程を示す模式図である。
【0074】
まず
図2に示すように、マスクステージMSにマスクMが配置される。例えば、制御装置11により、ロボットアーム等(図示は省略)が駆動され、位置合わせ前の基準位置にマスクMが配置される。もちろん、オペレータにより、マスクMが配置されてもよい。
【0075】
また、マスクマークMAMの検出工程時に、投影光学系3により照射される露光光ELの照射領域IAから外れた位置から、照射領域IAに反射部材13が移動される。
【0076】
本実施形態では、ワークステージ移動機構6が駆動することで、載置面12が露光光ELの照射領域IAから外れるようにワークステージWSが移動され、露光光ELの照射領域IAに反射部材13が移動される。反射部材13はワークステージWSの載置面12とは異なる位置に接続されている。ワークステージ移動機構6は、ワークステージWSを移動させることで、露光光ELの照射領域IAに反射部材13を移動させる。
【0077】
図2に示すように、アライメント顕微鏡4が、アライメントマークの撮影位置に移動される。アライメントマークの撮影位置は、投影光学系3とワークステージWS(ワークW)との間に設定されている。
【0078】
アライメントマークの撮影位置は、アライメント顕微鏡4のビームスプリッタ14が、マスクマークMAMに照射された露光光ELの光路上に配置される位置に設定される。言い換えれば、アライメントマークの撮影位置は、アライメント顕微鏡4のビームスプリッタ14に、マスクマークMAMに照射された露光光ELが入射する位置に設定される。
【0079】
図2に示すように、本実施形態では、ビームスプリッタ14が、上下方向(Z方向)に延在する露光光ELの光路に対して、交差角度が45度となるように配置される。具体的には、左上から右下に向かう斜め45度の方向に平行となるように、ビームスプリッタ14が配置される。
【0080】
光出射部2から露光光ELが出射されると、マスクマークMAMに照射された露光光ELは、投影光学系3を介して上方側からビームスプリッタ14に入射する。ビームスプリッタ14を透過し下方側に進む露光光ELは、反射部材13により上方側に反射される。
【0081】
上方側に反射された露光光ELは、ビームスプリッタ14により反射され左右方向(X方向)に沿って左側に向かって進み、光学センサ16に入射する。これにより、光学センサ16により、マスクマークMAMの画像が撮影される。
【0082】
このように本実施形態では、マスクマークMAMに照射された露光光ELの光路上にアライメント顕微鏡4が配置され、反射部材13により反射された反射光に基づいてマスクマークMAMの画像が撮影される。
【0083】
制御装置11の位置合わせ制御部20は、アライメント顕微鏡4の光学センサ16により撮影されたマスクマークMAMの画像に基づいて、マスクマークMAMの位置を検出する。また、位置合わせ制御部20は、光学センサ16により撮影されたマスクマークMAMの画像を取り込み、モニタ10に表示させることも可能である。オペレータは、モニタ10に表示されるマスクマークMAMの画像を目視することで、マスクマークMAMの検出を確認することができる。
【0084】
本実施形態では、位置合わせ制御部20により、マスクマークMAMの中心位置の座標が、マスクマークMAMの位置として検出される。
図2に示す例では、円形状からなるマスクマークMAMが検出され、その中心位置の座標が算出される。もちろん、マスクマークMAMの形状や、マスクマークMAMのどの部分の位置をマスクマークMAMの位置として検出するかは限定されず、任意に設定されてよい。
【0085】
マスクマークMAMの位置を検出するために、例えば、画像サイズの換算、文字認識、形状認識、物体のモデル画像を用いたマッチング処理、エッジ検出、射影変換等の任意の画像認識技術が用いられてよい。また、例えばDNN(Deep Neural Network:深層ニューラルネットワーク)、RNN(Recurrent Neural Network:回帰型ニューラルネットワーク)、CNN(Convolutional Neural Network:畳み込みニューラルネットワーク)等を用いた任意の機械学習アルゴリズムが用いられてもよい。なお機械学習アルゴリズムの適用は、本開示内の任意の処理に対して実行されてよい。
【0086】
位置合わせ制御部20により取得されたマスクマークMAMの画像、及び位置合わせ制御部20により検出されたマスクマークMAMの位置(中心位置座標)は、記憶部18に記憶される。
【0087】
図3に示すように、ワークマークWAMの検出工程時には、光出射部2による露光光ELの出射が停止される。そして、ワークステージWSの載置面12にワークWが載置され、投影光学系3の下方側にワークWが配置されるように、ワークステージWSが移動される。
【0088】
例えば、制御装置11により、ロボットアーム等(図示は省略)が駆動され、載置面12にワークWが配置される。もちろん、オペレータにより、ワークWが配置されてもよい。
【0089】
アライメント顕微鏡4は移動されず、アライメントマークの撮影位置に配置されたままの状態である。そして、アライメント顕微鏡4の照明部17により、ワークマークWAMに向かって非露光光NELが照射される。ワークマークWAMに照射された非露光光NELは、ワークマークWAMにより反射され、ワークマークWAMの上方側に配置されたビームスプリッタ14に入射する。
【0090】
ビームスプリッタ14に入射する非露光光NELは反射され、左右方向(X方向)に沿って左側に向かって進み、光学センサ16に入射する。これにより、光学センサ16により、ワークマークWAMの画像が撮影される。
【0091】
制御装置11の位置合わせ制御部20は、アライメント顕微鏡4の光学センサ16により撮影されたワークマークWAMの画像に基づいて、ワークマークWAMの位置を検出する。また位置合わせ制御部20は、光学センサ16により撮影されたワークマークWAMの画像を取り込み、モニタ10に表示させることも可能である。これにより、オペレータは、モニタ10に表示されるワークマークWAMの画像を目視することで、ワークマークWAMの検出を確認することができる。
【0092】
図3に示すように本実施形態では、十字形状からなるワークマークWAMの中心位置の座標が、ワークマークWAMの位置として算出される。もちろん、ワークマークWAMの形状や、ワークマークWAMのどの部分の位置をワークマークWAMの位置として検出するかは限定されず、任意に設定されてよい。例えば、マスクマークMAMと同じ形状で、ワークマークWAMが構成されてもよい。
【0093】
位置合わせ制御部20により取得されたワークマークWAMの画像、及び位置合わせ制御部20により検出されたワークマークWAMの位置(中心位置座標)は、記憶部18に記憶される。
【0094】
位置合わせ制御部20により、マスクマークMAM及びワークマークWAMの位置関係が所定の位置関係となるように、ワークステージWSが制御される。本実施形態では、マスクマークMAMの位置(中心位置座標)と、ワークマークWAMの位置(中心位置座標)とが一致するように、マスクステージ移動機構5及びワークステージ移動機構6が駆動され、マスクMに対するワークWの相対位置が制御される。
【0095】
図1~
図3では、互いに対応する1組のマスクマークMAM及びワークマークWAMに対して配置される1個のアライメント顕微鏡4のみが図示されている。複数の組のマスクマークMAM及びワークマークWAMが形成される場合には、互いに対応する複数の組のマスクマークMAM及びワークマークWAMの各々に対して、アライメント顕微鏡4を用いて位置合わせが行われる。
【0096】
例えば互いに対応するマスクマークMAM及びワークマークWAMの各組に対して1個ずつアライメント顕微鏡4が配置され、マスクマークMAMの画像及びワークマークWAMの画像が撮影される。これに限定されず、マスクマークMAM及びワークマークWAMの組数よりも少ない数(例えば1個)のアライメント顕微鏡4により、マスクマークMAMの画像及びワークマークWAMの画像が順次撮影されてもよい。
【0097】
例えば、矩形状のマスクMの4隅にマスクマークMAMが形成され、矩形状の基板からなるワークWの4隅にワークマークWAMが形成される。この場合、4つのアライメント顕微鏡4が、マスクマークMAMに照射される露光光ELの光路上の位置であり、対応するワークマークWAMに照射される非露光光NELの光路上の位置であるアライメントマークの撮影位置にそれぞれ配置される。
【0098】
制御装置11の位置合わせ制御部20により、4個のマスクマークMAMの位置と、4個のワークマークWAMの位置とがそれぞれ検出される。そして、互いに対応する4組のマスクマークMAMとワークマークWAMとが、それぞれ所定の位置関係となるように、マスクステージ移動機構5及びワークステージ移動機構6が制御される。これにより、左右方向(X方向)、奥行方向(Y方向)、上下方向(Z方向)を回転軸方向とする回転方向において、マスクMとワークWとの位置合わせを行うことが可能となる。
【0099】
マスクMとワークWとの位置合わせが完了すると、アライメント顕微鏡4は、
図1に示す退避位置に退避される。もちろん、マスクマークMAMの画像及びワークマークWAMの画像の撮影が完了したタイミングや、位置合わせ制御部20によりマスクマークMAMの位置及びワークマークWAMの位置の検出が完了したタイミング等、他のタイミングでアライメント顕微鏡4が退避位置に退避されてもよい。
【0100】
このように本実施形態では、マスクマークMAMの検出工程時に、露光光ELの照射領域IAに、照射領域IA以上の大きさを有する反射部材13が配置される。これにより、露光面(照射領域IA)の任意の位置にアライメントマーク(マスクマークMAM/ワークマークWAM)が配置される場合でも、高い精度で位置合わせが可能となる。
【0101】
すなわち、反射部材13上のマスクマークMAMが投影される位置にアライメント顕微鏡4を適宜移動させる。これにより、マスクマークMAM及びワークマークWAMの各々の画像を撮影することが可能となり、アライメントマークの位置合わせが可能となる。この結果、様々なマスクM及びワークWに対して、高い精度で位置合わせを行うことが可能となる。
【0102】
上記の特許文献1に記載の露光装置では、ワークステージの略全面に反射部材が埋没される。すなわち、ワークステージの載置面の全体に、反射部材が設けられる。マスクマークの検出工程は、ワークが配置されず反射部材が上方側に向けて露出する状態で行われる。
【0103】
ワークステージの載置面に反射部材が埋設される構成では、載置面に載置されるワークに対する吸着機能が制限される可能性が高い。例えば、マスクマークの検出工程時におけるマスクマークの撮影への影響が出ないように、真空吸着孔の数や位置等の吸着機構の構成が制限される可能性が高い。また、そもそもミラー部材等から構成される反射部材に対して、真空吸着用の真空吸着孔を形成することも難しい。
【0104】
このように吸着機構の構成が制限されてしまうと、反射部材のサイズが大きくなるほど、ワークを吸着できる部分が減少してしまう。この結果、プリント基板やウエハのような薄いワーク(例えば、厚みが0.05mm以下のワーク)は、十分に真空吸着(固定)できず、ワークの平坦度やワークの位置決め精度等の低下により露光精度が低下してしまう。また、アライメント顕微鏡によるマスクマークMAMの検出精度も低下してしまう。
【0105】
また、透光性を有する透明なワークに対しては、露光工程時にワークを透過した露光光が、載置面に設けられた反射部材により多重反射してしまうこともあり得る。この場合、レジストの不要な感光等が発生することにより、露光精度が低下してしまう。またワークマークの検出工程時において、多重反射によりワークマークの撮影精度が低下してしまうこともあり得る。
【0106】
また、ワークステージの載置面に反射部材が埋設される構成では、マスクマークの検出工程時において、ワークの載置面(反射部材)が投影光学系の直下に位置し、露光光が照射さる状態となる。従って、マスクマークの検出工程時に、ワークを交換して載置面に配置するといったことができない。
【0107】
この結果、マスクマークの検出工程の後に、光出射部による露光光の出射を停止させてから、載置面(反射部材)にワークを載置するという工程を順番に行う必要があり、生産性が低くなってしまう。
【0108】
また、ワークステージの載置面に反射部材が埋設される構成では、反射部材の上方側の表面の高さ位置と、ワークの上方側の表面の高さ位置とを等しくすることはできない。従って、マスクマークの検出工程時に、ワークステージをワークの厚み分だけ上方側に移動させて、反射部材に投影されるマスクマークの像のフォーカスを合わせる必要がある。この結果、ワークの厚み分の動作ストロークの精度が求められ、上方側への移動の際の位置ズレが生じた場合、アライメントマークの位置合わせ精度が低下してしまう。
【0109】
本実施形態に係る露光装置1では、ワークステージWSの載置面12とは異なる位置に反射部材13が設けられ、露光光ELの照射領域IAから外れるように載置面12を移動させるとともに、露光光ELの照射領域IAに反射部材13が移動される。
【0110】
この結果、載置面12に、ワークWを十分に真空吸着することが可能な吸着機構を構築することが可能となる。例えば、載置面12の全領域にわたって真空吸着孔を偏りなく形成し、載置面12の全面にわたってワークWを吸着するような構成を実現することが可能となる。
【0111】
これにより、薄いワークWに対しても十分に固定して保持することが可能となり、ワークWの平坦度や位置決め精度の低下を防止することが可能となる。また透明なワークWに対して、ワークWを透過する露光光ELの多重反射等を防止することが可能となる。この結果、種々のワークWに対して高い露光精度を発揮することが可能となり、高いワーク対応力が発揮される。
【0112】
また本実施形態に係る露光装置1では、マスクマークMAMの検出工程時には、ワークステージWSの載置面12が、露光光ELの照射領域IAから外れた位置に移動される。従って、マスクマークMAMの検出工程時に、ワークWの交換作業を同時に行うことが可能である。この結果、スループットの向上及びタクトタイムの短縮が可能となり、高い生産性を発揮することが可能である。
【0113】
また本実施形態に係る露光装置1では、
図1等に示すように、反射部材13の上方側の表面S1の高さ位置と、ワークWの上方側の表面S2の高さ位置とが等しくなるように、ワークステージWSに対して反射部材13を接続することが可能である。
【0114】
従って、ワークステージWSを水平方向(XY平面方向)に移動させることで、反射部材13の表面S1の高さ位置が、ワークステージWSに保持されたワークWの表面S2の高さ位置と等しくなるように、反射部材13を照射領域IAに配置することが可能となる。
【0115】
この結果、例えばマスクマークMAMの検出工程時に、ワークWの厚み分の上方側への移動を不要とすることが可能となり、高い精度でアライメントマークの位置合わせを行うことが可能となる。
【0116】
また、マスクマークMAMの検出工程時に、反射部材13の表面S1の高さ位置を、ワークWの表面S2の高さ位置に高精度に一致させるために、ワークステージWSを上下方向(Z方向)に沿って移動させる場合でも、調整量(移動量)が少なくて済むので、移動に伴う誤差が少なく、高い精度でアライメントマークの位置合わせを行うことが可能となる。
【0117】
このように本実施形態に係る露光装置1では、マスクマークMAMの検出工程時に、露光光ELの照射領域IAから外れた位置から、照射領域IAに反射部材13が移動される。これにより、マスクMとワークWとの位置合わせ精度を向上させ、高い露光精度を実現することが可能となる。
【0118】
本技術を適用することで、露光面(照射領域IA)内における任意のアライメントマークの位置合わせを、ワークWの平坦度や生産性、露光精度を高く維持した状態で実現することが可能となる。
【0119】
[開口率センサ機構]
図1~
図3に示す開口率センサ機構9について説明する。
開口率センサ機構9は、光出射部2により露光光ELが出射された際に、マスクMにより光出射部2に向かって反射される反射光RL(
図4参照)、又はマスクMを透過し投影光学系3に向かって進行する透過光TL(
図5参照)に基づいて、マスクMの開口率に関する情報を検出する。
【0120】
開口率に関する情報は、マスクMの開口率を算出することが可能な任意の情報を含む。例えば、反射光RLの光量(照度)、及び透過光TLの光量(照度)は、開口率に関する情報に含まれる。また、反射光RL及び透過光TLを撮影することで得られるマスクMの開口部分の画像も開口率に関する情報に含まれる。また開口部分の画像から得られる開口部分の形状やサイズ等も、開口率に関する情報に含まれる。さらに、本開示では、算出された開口率自体も、開口率に関する情報に含まれるものとする。
【0121】
開口率センサ機構9は、本発明に係るセンサ機構の一実施形態に相当する。
【0122】
図4は、開口率センサ機構9の具体的な構成例を示す模式図である。
図4に示す開口率センサ機構9は、ビームスプリッタ22と、光学センサ23とを有する。ビームスプリッタ22は、光出射部2からマスクMまでの露光光ELの光路上に配置され、光出射部2から出射された露光光ELの一部をマスクMに向かって透過させ、マスクMにより反射される反射光RLを光路から外れる方向に向かって反射する。
【0123】
図4に示すように、本実施形態では、ビームスプリッタ22が、上下方向(Z方向)に延在する露光光ELの光路に対して、交差角度が45度となるように配置される。具体的には、右上から左下に向かう斜め45度の方向に平行となるように、ビームスプリッタ22が配置される。ビームスプリッタ22の具体的な構成は限定されず、任意の構成が採用されてよい。
【0124】
光学センサ23は、ビームスプリッタ22により反射された反射光RLが入射する位置に配置される。光学センサ23としては、ビームスプリッタ22により反射された反射光RLの光量(照度)を測定可能な任意の光量センサ(照度センサ)が用いられる。CCDセンサやCOMセンサ等の2次元の画像を撮影可能なイメージセンサを、光量センサ(照度センサ)として用いることも可能である。
【0125】
光出射部2から露光光ELが出射されると、ビームスプリッタ22に対して上方側から露光光ELが入射する。ビームスプリッタ22を透過した露光光ELのうち、マスクMの開口部分に照射された露光光ELは、開口部分を透過して投影光学系3に照射される。ビームスプリッタ22を透過した露光光ELのうち、マスクMの非開口部分(開口していない部分)に照射された露光光ELは、非開口部分により光出射部2に向かって反射される。
【0126】
マスクMの非開口部分により反射された反射光RLは、ビームスプリッタ22により反射され左右方向(X方向)に沿って右側に向かって進み、光学センサ23に入射する。これにより、光学センサ23により、反射光RLの光量を検出することが可能となる。
【0127】
算出された反射光RLの光量は、マスクMの開口率に関する情報として、制御装置11のフォーカス制御部21に出力される。フォーカス制御部21は、受け取った反射光RLの光量に基づいて、マスクMの開口率を算出する。
【0128】
本実施形態では、マスクステージMSに全透過(開口率100%)の開口率測定用の全透過マスクを配置した場合の、光学センサ23による検出結果が、全透過光量(開口率100%の光量)として用いられる。全透過マスクの具体的な構成は限定されず、任意に設計されてよい。
【0129】
また、マスクステージMSに全反射(開口率0%)の開口率測定用の全反射マスクを配置した場合の、光学センサ23による検出結果が、全反射光量(開口率0%の光量)として用いられる。全透過マスクの具体的な構成は限定されず、任意に設計されてよい。
【0130】
全透過光量、及び全反射光量を用いて、以下の式により、マスクMの反射率を算出することが可能である。
マスクMの反射率=(反射光RLの光量-全透過光量)/(全反射光量-全透過光量)
【0131】
算出されたマスクMの反射率を用いて、以下の式により、マスクMの開口率を算出することが可能である。
マスクMの開口率=1-(マスクMの反射率)
【0132】
なお、上記の式では、マスクMの反射率及び開口率が、0以上1以下の範囲で算出されている。各式において、右辺に100を乗算することで、マスクMの反射率及び開口率を、パーセントで算出することが可能である
【0133】
全透過光量、及び全反射光量を用いることで、マスクパターンMPのレイアウトが分からない状態であっても、マスクMの開口率を算出することが可能である。
【0134】
なお、反射光RLの光量に基づいてマスクMの開口率を算出する方法(アルゴリズム)として、他の任意の方法が用いられてもよい。例えばキャリブレーション等により、反射光RLの光量と、マスクMの開口率との相関関係を示す関数やテーブル等が設定されてもよい。設定された相関関係に従って、測定された反射光RLの光量からマスクMの開口率が算出されてもよい。
【0135】
図5は、開口率センサ機構9の他の構成例を示す模式図である。
図5に示す開口率センサ機構9では、マスクMから投影光学系3までの露光光ELの光路上に、ビームスプリッタ24が配置される。ビームスプリッタ24は、マスクMを透過した透過光TLの一部(光線L1)を投影光学系3に向かって透過させ、マスクMを透過した透過光TLの他の一部(光線L2)を光路から外れる方向に向かって反射する。
【0136】
図5に示すように、ビームスプリッタ24は、上下方向(Z方向)に延在する露光光ELの光路に対して、交差角度が45度となるように配置される。具体的には、右上から左下に向かう斜め45度の方向に平行となるように、ビームスプリッタ24が配置される。ビームスプリッタ24の具体的な構成は限定されず、任意の構成が採用されてよい。
【0137】
ビームスプリッタ24により反射された透過光TL(光線L2)が入射する位置には、光学センサ25が配置される。光学センサ25としては、ビームスプリッタ24により反射された透過光TL(光線L2)の光量を測定可能な任意の光量センサが用いられる。CCDセンサやCOMセンサ等の2次元の画像を撮影可能なイメージセンサを、光量センサとして用いることも可能である。
【0138】
光学センサ25により、マスクMを透過した透過光TLの光量を検出することが可能である。
【0139】
算出された透過光TLの光量は、マスクMの開口率に関する情報として、制御装置11のフォーカス制御部21に出力される。フォーカス制御部21は、受け取った透過光TLの光量に基づいて、マスクMの開口率を算出する。
【0140】
本実施形態においても、マスクステージMSに全透過(開口率100%)の開口率測定用の全透過マスクを配置した場合の、光学センサ25による検出結果が、全透過光量(開口率100%の光量)として用いられる。
【0141】
また、マスクステージMSに全反射(開口率0%)の開口率測定用の全反射マスクを配置した場合の、光学センサ25による検出結果が、全反射光量(開口率0%の光量)として用いられる。
【0142】
全透過光量、及び全反射光量を用いて、以下の式により、マスクMの開口率を算出することが可能である。
マスクMの開口率=(透過光TLの光量-全反射光量)/(全透過光量-全反射光量)
【0143】
なお、上記の式では、マスクMの開口率が、0以上1以下の範囲で算出されている。各式において、右辺に100を乗算することで、マスクMの反射率及び開口率を、パーセントで算出することが可能である
【0144】
全透過光量、及び全反射光量を用いることで、マスクパターンMPのレイアウトが分からない状態であっても、マスクMの開口率を算出することが可能である。
【0145】
なお、反射光RLの光量に基づいてマスクMの開口率を算出する方法(アルゴリズム)として、他の任意の方法が用いられてもよい。例えばキャリブレーション等により、透過光TLの光量と、マスクMの開口率との相関関係を示す関数やテーブル等が設定されてもよい。設定された相関関係に従って、測定された透過光TLの光量からマスクMの開口率が算出されてもよい。
【0146】
マスクMと投影光学系3との間の空間が大きいと、投影光学系3の分解能を上げるために開口数を大きくする必要があり、開口数を大きくするためには径の大きな投影光学系3が必要となる。この結果、レンズ作製が難しくなり、また装置の大型化の要因ともなり得る。このような観点に着目すれば、
図4に示すようなビームスプリッタ22を光出射部2とマスクMとの間に配置する構成の方が、
図5に示すような構成よりも有利な構成といえる。
【0147】
図4及び
図5に示す例では、ビームスプリッタ22及び24は、固定されている。従って、ワークWに対する露光工程時において、ビームスプリッタ22及び24を透過する露光光ELにより、露光が行われる。
【0148】
図6及び
図7は、開口率センサ機構9の他の構成例を示す模式図である。
図6及び
図7に示す開口率センサ機構9は、ビームスプリッタ22と、光学センサ23と、ビームスプリッタ移動機構27とを有する。
【0149】
ビームスプリッタ移動機構27は、光出射部2からマスクMまでの露光光ELの光路上の所定の検出位置と、露光光ELの光路から外れた退避位置との間で、ビームスプリッタ22を移動させることが可能である。
【0150】
図6に示すように、所定の検出位置は、光出射部2から出射された露光光ELの一部をマスクMに向かって透過させ、マスクMにより反射される反射光RLを光路から外れる方向に向かって反射することが可能な位置である。
【0151】
図7に示すように、退避位置は、光出射部2からマスクMに向かって出射される露光光ELの光路から外れた位置であり、露光光ELの進行を遮らない位置である。
【0152】
ビームスプリッタ移動機構27の具体的な構成は限定されず、任意の構成が採用されてよい。
【0153】
また
図6及び
図7に示す例では、制御装置11に機能ブロックとして、ビームスプリッタ移動制御部28が構成される。ビームスプリッタ移動制御部28は、開口率に関する情報の検出工程時、すなわち反射光RLの光量の検出時に、
図6に示す検出位置にビームスプリッタ22を移動させ、ワークWに対する露光工程時に
図7に示す退避位置にビームスプリッタ22を移動させる。
【0154】
図5に示す構成に対して、ビームスプリッタ移動機構が構築されてもよい。すなわち、マスクMから投影光学系3までの露光光ELの光路上の所定の検出位置と、露光光ELの光路から外れた退避位置との間で、ビームスプリッタ24が移動可能であってもよい。
【0155】
所定の検出位置は、マスクMを透過した透過光TLの一部(光線L1)を投影光学系3に向かって透過させ、マスクMを透過した透過光TLの他の一部(光線L2)を光路から外れる方向に向かって反射することが可能な位置である。退避位置は、マスクMから投影光学系3に向かって出射される透過光TLの光路から外れた位置であり、透過光TLの進行を遮らない位置である。
【0156】
制御装置11には機能ブロックとして、ビームスプリッタ移動制御部が構成される。ビームスプリッタ移動制御部は、開口率に関する情報の検出工程時、すなわち透過光TLの光量の検出時に検出位置にビームスプリッタ24を移動させ、ワークWに対する露光工程時に退避位置にビームスプリッタ24を移動させる。
【0157】
また、
図5に示す構成に対して、ビームスプリッタ移動機構が構築される場合、ビームスプリッタ24の位置に、光学センサ25に向けて透過光TLを反射する任意の反射部材を配置することが可能である。すなわち、マスクMから投影光学系3までの露光光ELの光路上に配置され、マスクMを透過した透過光TLを光路から外れる方向に向かって反射することが可能な任意の反射部材を用いることが可能である。
【0158】
例えば、全反射ミラー等の、マスクMを透過した透過光TLを全反射する部材が用いられてもよい。なお、本開示において、反射部材は、入射する光の少なくとも一部を反射する部材であり、ビームスプリッタ24も含む概念である。
【0159】
光学センサ25は、反射部材により反射された透過光TLが入射する位置に配置される。反射部材を移動可能な移動機構により、マスクMから投影光学系3までの露光光ELの光路上の所定の検出位置と、露光光ELの光路から外れた退避位置との間で、反射部材が移動される。
【0160】
制御装置11には、機能ブロックとして、反射部材の移動を制御する移動制御部が構成される。当該移動制御部は、開口率に関する情報の検出工程時、すなわち透過光TLの光量の検出時に検出位置に反射部材を移動させ、ワークWに対する露光工程時に退避位置に反射部材を移動させる。
【0161】
図4及び
図5に示すようなビームスプリッタ22(24)を固定させる構成では、露光工程時に、リアルタイムでマスクMの開口率を算出することが可能となる。また、ビームスプリッタ移動機構27が設けられないので、装置の小型化に有利である。
【0162】
図6及び
図7に示すようなビームスプリッタ移動機構27が設けられる構成では、露光工程時において、ビームスプリッタ22(24)による露光光ELの損失を避けることが可能である。また、ビームスプリッタ22、ビームスプリッタ24を含む反射部材の経年劣化の進行を抑制することが可能となる。
【0163】
ビームスプリッタ移動機構27は、本発明に係る、ビームスプリッタを移動させることが可能な移動機構の一実施形態に相当する。他の反射部材が用いられる場合は、本発明に係る、反射部材を移動させることが可能な移動機構の一実施形態に相当する。
【0164】
ビームスプリッタ移動制御部28は、本発明に係る、ビームスプリッタを移動させる移動制御部の一実施形態に相当する。他の反射部材が用いられる場合は、本発明に係る、反射部材を移動させる移動制御部の一実施形態に相当する。
【0165】
フォーカス制御部21は、算出されたマスクMの開口率に基づいて、フォーカス制御を実行する。フォーカス制御部21は、本発明に係る、センサ機構により検出された開口率に関する情報に基づいて、投影光学系のフォーカスを制御するフォーカス制御部の一実施形態に相当する。
【0166】
図8は、時間の経過に対する投影光学系3のフォーカス位置の変動例を示すグラフである。
【0167】
投影光学系3に露光光ELが入射すると、時間の経過とともに、熱(温度)の影響により結像性能が変動する。すなわち、時間の経過とともの投影光学系3のフォーカス位置が変動する。
図8に示すように、マスクMの開口率が0%の場合は、投影光学系3に露光光ELは入射しないので、フォーカス位置の変動は発生しない。
【0168】
マスクMの開口率が100%の場合は、熱の影響が最も大きくなり、フォーカス位置の変動も最も大きくなる。
図8に示すように、マスクMの開口率に応じて、時間経過に対するフォーカス位置の変動量は変化する。例えば、
図8に示すように、時間経過に対するフォーカス位置の変動量が、ほぼリニアに変化する場合も多い。
【0169】
すなわち、マスクMの開口率が50%の場合は、開口率100%の場合に発生するフォーカス位置の変動量の50%の大きさで、フォーカス位置が変動する。開口率が25%の場合は、開口率100%の場合に発生するフォーカス位置の変動量の25%の大きさで、フォーカス位置が変動する。
【0170】
もちろん、マスクMの開口率に対するフォーカス位置の変動の態様が、
図8に示すような態様となる場合に限定されるわけではなく、さらに複雑な態様でフォーカス位置が変動する場合もあり得る。いずれの場合でも、マスクMの開口率と投影光学系3のフォーカス位置の変動量との間には、相関性が存在する。当該相関性に基づいて、フォーカス制御を実行することが可能である。
【0171】
すなわち、フォーカス位置の変動に対応して、ワークWが投影光学系3のフォーカス位置に配置されるように、投影光学系調整機構7、マスクステージ移動機構5、及びワークステージ移動機構6が制御される。これにより、精度の高いフォーカス制御を実現することが可能となり、高い露光精度を実現することが可能となる。
【0172】
[露光工程に対するフォーカス制御の動作例]
所定のマスクMを用いて複数のワークWに対して露光を行う際のフォーカス制御の動作例について説明する。
【0173】
まず、マスクステージMSに全透過マスクが配置され、全透過光量が算出される。算出された全透過光量は、記憶部18に記憶される。次に、マスクステージMSに全反射マスクが配置され、全反射光量が算出される。算出された全反射光量は、記憶部18に記憶される。
【0174】
マスクステージMSにマスクMが配置され、全透過光量及び全反射光量を用いて、マスクMの開口率が算出される。算出されたマスクMの開口率に基づいて、フォーカス制御が実行され、露光工程が実行される。
【0175】
ワークWに対して連続的に露光を行う上で、時間経過に応じた投影光学系3のフォーカス位置の変動を補正するように、フォーカス制御を行う。これにより、各ワークWに対して、高精度の露光を実行することが可能となる。
【0176】
同じマスクMを用いて、同じ条件で露光工程を行う場合には、最初のワークWに対する露光工程時に算出されたマスクMの開口率が、その後も使用することが可能である。マスクMの変更、光出射部2の光量の変更等、露光条件が変更されるとする。この場合には、露光条件が変更されるたびに、全透過光量及び全反射光量の算出工程が実行され、マスクMの開口率が算出される。これにより、高精度の露光を実現することが可能となる。
【0177】
もちろん、このような動作に限定されるわけではない。同じ露光条件で連続的に露光が行われる場合において、所定のタイミングで定期的にマスクMの開口率が算出されてもよい。
【0178】
以上、本実施形態に係る露光装置1では、開口率センサ機構9により、マスクMにより光出射部2に向かって反射される反射光RL、又はマスクMを透過し投影光学系3に向かって進行する透過光TLに基づいて、マスクMの開口率に関する情報(反射光RLの光量、透過光TLの光量)が検出される。検出された開口率に関する情報に基づいて、高い露光精度を実現することが可能となる。
【0179】
従来、マスクの開口率の算出する方法としては、露光装置を使用するユーザが予め、外部の専用の測定装置で測定した後、露光装置のマスクステージにマスクをセッティングする方法が用いられていた。この方法では、露光装置と外部の測定装置との間でマスクを搬送する手間や外部の測定装置の空き時間待ちが生じる等の問題がある。
【0180】
本発明では、露光装置1により、マスクMの開口率を高い精度で算出可能であり、このような問題を解決することが可能である。
【0181】
また、上記の特許文献2に記載の露光装置のように、ウエハが載置される移動ステージ上に設置されたフォトディテクタの測定結果に基づいて、マスクの開口率を算出する方法もある。この方法では、投影光学系を介した光の測定結果が用いられることになる。従って、経年劣化等により投影光学系の透過率が変化すると、マスクの開口率の算出精度が低下してしまう。近年では、配線の微細化・実装密度の高密度化が進んでおり、このようなマスクの開口率の算出精度の低下の影響は無視できない。
【0182】
本発明では、マスクMの非開口部分により反射される反射光RL、又はマスクMの開口部分を透過した透過光TLの光量を、直接的に検出することが可能である。従って、高い精度でマスクMの開口率を算出することが可能となる。この結果、精度の高いフォーカス制御を実現することが可能となり、高い露光精度を実現することが可能となる。
【0183】
<その他の実施形態>
本発明は、以上説明した実施形態に限定されず、他の種々の実施形態を実現することができる。
【0184】
本発明に係る露光装置を用いて露光を行うことで、所定のパターンが形成された種々の基板を、部品として製造することが可能となる。例えば、部品として、電気回路素子、光学素子、MEMS、記録素子、センサ、或いは、型等を製造することが可能である。
電気回路素子としては、DRAM、SRAM、フラッシュメモリ、MRAMのような、揮発性あるいは不揮発性の半導体メモリや、LSI、CCD、イメージセンサ、FPGAのような半導体素子等が挙げられる。型としては、インプリント用のモールド等が挙げられる。
【0185】
図4及び
図5に示すようなビームスプリッタ22(24)において、入射する光に対する透過率及び反射率の割合は、適宜設定されてよい。例えば、ビームスプリッタ22(24)を固定させる構成では、露光に用いられる光の光量が大きくなるように、透過率が高く反射率が低い特性となるように、ビームスプリッタ22(24)を構成するのが好ましい。例えば、透過率92%~99%、反射率1%~8%といった、透過率が非常に高い特性からなるビームスプリッタ22(24)が用いられる。
【0186】
例えば、透明基板の両面又は片面に、誘電体等からなる単層膜又は多層膜を適宜コーティングすることで、高透過率及び低反射率の特性を有するビームスプリッタ22(24)を作成することが可能である。
【0187】
高透過率及び低反射率の特性を実現させるために、例えば、反射率を2%程度に抑えることが可能な反射防止コートが表面に施されてもよい。その他、ビームスプリッタ22(24)の具体的な構成は限定されず、任意の構成が採用されてよい。
【0188】
透過率50%反射率50%のビームスプリッタ
透過率60%反射率40%のビームスプリッタ
透過率70%反射率30%のビームスプリッタ
透過率80%反射率20%のビームスプリッタ
等の、任意の構成を採用することが可能である。なおビームスプリッタをハーフミラーと呼ぶことも可能である。
【0189】
ビームスプリッタ22(24)を配置する角度も限定されない。反射光TL又は透過光TLを光路から外れる方向に向かって反射可能であるのならば、任意の交差角度が採用されてよい。ビームスプリッタ22(24)により反射される反射光TL又は透過光TLが入射する位置に光学センサ23(25)が配置されればよい。
【0190】
一方で、光路に対して交差角度が45度となるようにビームスプリッタ22(24)を配置する構成では、装置設計が容易となる。
【0191】
上下方向(Z方向)に沿って、上方側から見た場合に、マスクMの全体ではなく、マスクMの一部の領域と重なるように、ビームスプリッタ22(24)が配置されてもよい。例えば、マスクパターンMPとして、所定のパターンが周期的に形成されている場合等では、周期単位となる周期パターンの領域に対して、ビームスプリッタ22(24)が配置されてもよい。周期パターンに対する反射光RL又は透過光TLの光量に基づいて、マスクMの開口率を算出することも可能である。
【0192】
なお、マスクMの一部の領域に対してビームスプリッタ22(24)が配置される場合には、
図6及び
図7に示すようなビームスプリッタ移動機構27が設けられる構成が好ましい。
【0193】
上記では、フォーカス制御部21により、マスクMの開口率に関する情報(反射光RLの光量、透過光TLの光量)に基づいてマスクMの開口率が算出され、マスクMの開口率に基づいて投影光学系3のフォーカス制御が実行される。これに限定されず、マスクMの開口率に関する情報(反射光RLの光量、透過光TLの光量)を直接的に用いて、フォーカス制御が実行されてもよい。もちろん、マスクMの反射率に基づいて、フォーカス制御を実行することも可能である。
【0194】
本開示では、反射光RLの光量や透過光TLの光量のみならず、マスクMの開口率、マスクMの反射率も、マスクMの開口率に関する情報に含まれる。従って、これらのパラメータを用いたフォーカス制御は、マスクMの開口率に関する情報に基づいて投影光学系3のフォーカスを制御するという事項に含まれる。
【0195】
光学センサ23(25)として、イメージセンサが用いられる場合、マスクMの開口率に関する情報として、マスクMの開口部分の画像から得られる開口部分の形状又はサイズを検出することが可能である。当該開口部分の形状又はサイズに基づいて、マスクMの開口率を算出することも可能である。算出されたマスクMの開口率に基づいて、精度の高いフォーカス制御を実現することが可能となり、高い露光精度を実現することが可能となる。
【0196】
開口率に関する情報の検出工程時に、ビームスプリッタ22(24)のみならず、光学センサ23(25)を含む開口率センサ機構が、光路上に配置されてもよい。ワークWに対する露光工程時には、開口率センサ機構全体を、光路から外れた退避位置に移動させる。これにより、問題なく露光工程を実行することが可能である。
【0197】
マスクMの開口率に基づいて、フォーカス制御とは異なる制御が実行されてもよい。例えば、投影光学系3の結像倍率の制御やディストーションの補正等が実行されてもよい。この場合でも、高い精度でマスクMの開口率を算出することが可能であるので、結像倍率の制御やディストーションの補正等も高い精度で実行することが可能である。
【0198】
各図面を参照して説明した露光装置、制御装置、アライメント顕微鏡、開口率センサ機構、ビームスプリッタ、光学センサ等の各構成、開口率算出シーケンス、フォーカス制御シーケンス等はあくまで一実施形態であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、任意に変形可能である。すなわち本発明を実施するための他の任意の構成、処理フロー、アルゴリズム等が採用されてよい。
【0199】
本開示において、説明の理解を容易とするために、「略」「ほぼ」「おおよそ」等の文言が適宜使用されている。一方で、これら「略」「ほぼ」「おおよそ」等の文言を使用する場合と使用しない場合とで、明確な差異が規定されるわけではない。
すなわち、本開示において、「中心」「中央」「均一」「等しい」「同じ」「直交」「平行」「対称」「延在」「軸方向」「円柱形状」「円筒形状」「リング形状」「円環形状」等の、形状、サイズ、位置関係、状態等を規定する概念は、「実質的に中心」「実質的に中央」「実質的に均一」「実質的に等しい」「実質的に同じ」「実質的に直交」「実質的に平行」「実質的に対称」「実質的に延在」「実質的に軸方向」「実質的に円柱形状」「実質的に円筒形状」「実質的にリング形状」「実質的に円環形状」等を含む概念とする。
例えば「完全に中心」「完全に中央」「完全に均一」「完全に等しい」「完全に同じ」「完全に直交」「完全に平行」「完全に対称」「完全に延在」「完全に軸方向」「完全に円柱形状」「完全に円筒形状」「完全にリング形状」「完全に円環形状」等を基準とした所定の範囲(例えば±10%の範囲)に含まれる状態も含まれる。
従って、「略」「ほぼ」「おおよそ」等の文言が付加されていない場合でも、いわゆる「略」「ほぼ」「おおよそ」等を付加して表現される概念が含まれ得る。反対に、「略」「ほぼ」「おおよそ」等を付加して表現された状態について、完全な状態が必ず排除されるというわけではない。
【0200】
本開示において、「Aより大きい」「Aより小さい」といった「より」を使った表現は、Aと同等である場合を含む概念と、Aと同等である場合を含まない概念の両方を包括的に含む表現である。例えば「Aより大きい」は、Aと同等は含まない場合に限定されず、「A以上」も含む。また「Aより小さい」は、「A未満」に限定されず、「A以下」も含む。
本技術を実施する際には、上記で説明した効果が発揮されるように、「Aより大きい」及び「Aより小さい」に含まれる概念から、具体的な設定等を適宜採用すればよい。
【0201】
以上説明した本技術に係る特徴部分のうち、少なくとも2つの特徴部分を組み合わせることも可能である。すなわち各実施形態で説明した種々の特徴部分は、各実施形態の区別なく、任意に組み合わされてもよい。また上記で記載した種々の効果は、あくまで例示であって限定されるものではなく、また他の効果が発揮されてもよい。
【符号の説明】
【0202】
EL…露光光
M…露光用マスク(マスク)
MS…マスクステージ
NEL…非露光光
RL…反射光
TL…透過光
W…ワーク
WS…ワークステージ
1…露光装置
2…光出射部
3…投影光学系
4…アライメント顕微鏡
5…マスクステージ移動機構
6…ワークステージ移動機構
7…投影光学系調整機構
9…開口率センサ機構
11…制御装置
18…記憶部
19…顕微鏡移動制御部
20…位置合わせ制御部
21…フォーカス制御部
22、24…ビームスプリッタ
23、25…光学センサ
27…ビームスプリッタ移動機構
28…ビームスプリッタ移動制御部