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特開2024-141748光学部材用スチレン系樹脂組成物、光学部材、及び導光板
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  • 特開-光学部材用スチレン系樹脂組成物、光学部材、及び導光板 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141748
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】光学部材用スチレン系樹脂組成物、光学部材、及び導光板
(51)【国際特許分類】
   C08L 25/04 20060101AFI20241003BHJP
   C08K 5/13 20060101ALI20241003BHJP
   C08K 5/3435 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C08L25/04
C08K5/13
C08K5/3435
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053560
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】399051593
【氏名又は名称】東洋スチレン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】中村 亘佑
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BC031
4J002BC041
4J002BC071
4J002EJ026
4J002EJ036
4J002EJ066
4J002EU077
4J002EU087
4J002FD047
4J002FD076
4J002GP00
(57)【要約】
【課題】耐光性及び耐熱性に優れる光学部材用スチレン系樹脂組成物を提供する。
【解決手段】本発明によれば、光学部材用スチレン系樹脂組成物であって、スチレン系樹脂(A)と、フェノ-ル系酸化防止剤(B)と、光安定剤(C)と、を含み、前記光安定剤(C)は、ヒンダ-ドアミン系光安定剤を含み、前記光学部材用スチレン系樹脂組成物を115mm×80mm×2mmの板状に成形した板状成形品に対して、25℃の条件下において、前記板状成形品から0.2mm離れた位置に8.5cdの白色LEDチップを7mm間隔で配列して2000時間光照射した前後の光路長115mmにおける黄色度の変化量ΔYI(LED)が1.5以下である、光学部材用スチレン系樹脂組成物が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学部材用スチレン系樹脂組成物であって、
スチレン系樹脂(A)と、フェノ-ル系酸化防止剤(B)と、光安定剤(C)と、を含み、
前記光安定剤(C)は、ヒンダ-ドアミン系光安定剤を含み、
前記光学部材用スチレン系樹脂組成物を115mm×80mm×2mmの板状に成形した板状成形品に対して、25℃の条件下において、前記板状成形品から0.2mm離れた位置に8.5cdの白色LEDチップを7mm間隔で配列して2000時間光照射した前後の光路長115mmにおける黄色度の変化量ΔYI(LED)が1.5以下である、
光学部材用スチレン系樹脂組成物。
【請求項2】
前記板状成形品に対して、80℃の環境に1000時間曝露した前後の光路長115mmにおける黄色度の変化量ΔYI(heat)が4.5以下である、請求項1に記載の光学部材用スチレン系樹脂組成物。
【請求項3】
前記ヒンダ-ドアミン系光安定剤は、N-アルキルオキシ型ヒンダ-ドアミン系光安定剤である、請求項1に記載の光学部材用スチレン系樹脂組成物。
【請求項4】
前記スチレン系樹脂(A)100質量部と、
前記フェノ-ル系酸化防止剤(B)0.05質量部以上、0.5質量部以下と、
前記光安定剤(C)0.01質量部以上、0.2質量部未満と、を含む、
請求項1に記載の光学部材用スチレン系樹脂組成物。
【請求項5】
前記スチレン系樹脂(A)は、スチレン系単量体の単独重合体である、請求項1に記載の光学部材用スチレン系樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~請求項5の何れか1つに記載の光学部材用スチレン系樹脂組成物からなる光学部材。
【請求項7】
請求項1~請求項5の何れか1つに記載の光学部材用スチレン系樹脂組成物からなる導光板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部材用スチレン系樹脂組成物、光学部材、及び導光板に関する。
【背景技術】
【0002】
導光板等の光学部材用にスチレン系樹脂組成物が用いられてきた。近年、ディスプレイ等においてLED光源が用いられてきており、このような光源からの光照射に対する耐光性が重要になってきている。
【0003】
一方で、光源から発せられる熱等に対する耐熱性も兼ね備えることが求められており、フェノ-ル系酸化防止剤等の酸化防止剤が用いられることがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6496339号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、LED光源を用いた場合に耐光性が充分でない場合や、耐熱性との両立が難しい場合があった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、耐光性及び耐熱性に優れる光学部材用スチレン系樹脂組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1]光学部材用スチレン系樹脂組成物であって、スチレン系樹脂(A)と、フェノ-ル系酸化防止剤(B)と、光安定剤(C)と、を含み、前記光安定剤(C)は、ヒンダ-ドアミン系光安定剤を含み、前記光学部材用スチレン系樹脂組成物を115mm×80mm×2mmの板状に成形した板状成形品に対して、25℃の条件下において、前記板状成形品から0.2mm離れた位置に8.5cdの白色LEDチップを7mm間隔で配列して2000時間光照射した前後の光路長115mmにおける黄色度の変化量ΔYI(LED)が1.5以下である、光学部材用スチレン系樹脂組成物。
[2]前記板状成形品に対して、80℃の環境に1000時間曝露した前後の光路長115mmにおける黄色度の変化量ΔYI(heat)が4.5以下である、[1]に記載の光学部材用スチレン系樹脂組成物。
[3]前記ヒンダ-ドアミン系光安定剤は、N-アルキルオキシ型ヒンダ-ドアミン系光安定剤である、[1]~[2]の何れか1つに記載の光学部材用スチレン系樹脂組成物。
[4]前記スチレン系樹脂(A)100質量部と、前記フェノ-ル系酸化防止剤(B)0.05質量部以上、0.5質量部以下と、前記光安定剤(C)0.01質量部以上、0.2質量部未満と、を含む、[1]~[3]の何れか1つに記載の光学部材用スチレン系樹脂組成物。
[5]前記スチレン系樹脂(A)は、スチレン系単量体の単独重合体である、[1]~[4]の何れか1つに記載の光学部材用スチレン系樹脂組成物。
[6][1]~[5]の何れか1つに記載の光学部材用スチレン系樹脂組成物からなる光学部材。
[7][1]~[5]の何れか1つに記載の光学部材用スチレン系樹脂組成物からなる導光板。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、試験片(板状成形品1)の形状を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<用語の説明>
本願明細書において、例えば、「A~B」なる記載は、A以上でありB以下であることを意味する。
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0011】
1.光学部材用スチレン系樹脂組成物
本発明の一実施形態に係る光学部材用スチレン系樹脂組成物は、スチレン系樹脂(A)と、フェノ-ル系酸化防止剤(B)と、光安定剤(C)と、を含む樹脂組成物である。
【0012】
<スチレン系樹脂(A)>
スチレン系樹脂(A)は、スチレン系単量体単位を有する重合体である。スチレン系樹脂(A)は、スチレン系単量体単位を有する重合体100質量%中に、好ましくはスチレン系単量体単位を15質量%超、100質量%以下有する。一態様においては、スチレン系樹脂(A)は、スチレン系単量体の重合体(スチレン系重合体)であってよい。一態様においては、スチレン系樹脂(A)は、スチレン系単量体単位と、(メタ)アクリル系単量体単位とを有する共重合体(スチレン-(メタ)アクリル系共重合体)であってよい。
【0013】
スチレン系重合体は、1種のスチレン系単量体のみを重合させたスチレン系単量体の単独重合体であってもよく、2種以上のスチレン系単量体のみを重合させた共重合体であってもよい。また、スチレン系重合体は、当該スチレン系重合体100質量%中に、好ましくはスチレン系単量体単位を95質量%以上有し、より好ましくは(実質的に)100質量%有する。スチレン系単量体単位の含有量は、当該スチレン系重合体100質量%中に、具体的には例えば、95,96,97,98,99,99.5,100質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。なお、当該含有量は2種以上のスチレン系単量体単位を用いている場合にはその合計質量である。スチレン系重合体は、寸法変化を少なくするという観点からは、好ましくはスチレンの単独重合体である。
【0014】
(メタ)アクリル系単量体単位は、(メタ)アクリル酸系単量体単位又は(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位である。スチレン-(メタ)アクリル系共重合体は、スチレン-(メタ)アクリル酸系共重合体、又は、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル系共重合体である。
【0015】
スチレン-(メタ)アクリル酸系共重合体は、スチレン系単量体単位と、(メタ)アクリル酸系単量体単位と、を有する共重合体である。スチレン-(メタ)アクリル酸系共重合体は、当該スチレン-(メタ)アクリル酸系共重合体100質量%中に、(メタ)アクリル酸系単量体単位を好ましくは1~20質量%有し、より好ましくは5~13質量%有する。(メタ)アクリル酸単量体系単位含有量が5質量%未満では成形品の耐熱性が不十分になることがある。また、(メタ)アクリル酸系単量体単位含有量が13質量%を超えると、共重合体の製造工程で共重合体中にゲルが生成することがある。ゲルが生成すると、成形品の光学特性が悪化することがある。(メタ)アクリル酸系単量体単位の含有量は、当該スチレン-(メタ)アクリル酸系共重合体100質量%中に、具体的には例えば、1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。なお、当該含有量は2種以上の(メタ)アクリル酸系単量体単位を用いている場合にはその合計質量である。
【0016】
スチレン-(メタ)アクリル酸系共重合体は、当該スチレン-(メタ)アクリル酸系共重合体100質量%中に、スチレン系単量体単位を好ましくは80~99質量%有し、より好ましくは95~85質量%有する。スチレン系単量体単位の含有量は、当該スチレン-(メタ)アクリル酸系共重合体100質量%中に、具体的には例えば、80,81,82,83,84,85,86,87,88,89,90,91,92,93,94,95,96,97,98,99質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。なお、当該含有量は2種以上のスチレン系単量体単位を用いている場合にはその合計質量である。
【0017】
スチレン-(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、スチレン系単量体単位と、(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位と、を有する共重合体である。スチレン-(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、当該スチレン-(メタ)アクリル酸エステル系共重合体100質量%中に、(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位を、好ましくは15質量%超有し、より好ましくは20~80質量%有し、さらに好ましくは40~70質量%有する。(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位含有量が5質量%未満では表面硬度が低下して傷付きやすくなることがある。(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位が80質量%を超えると、吸水性が増加するため、吸湿による寸法変形が大きくなることがある。(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位の含有量は、当該スチレン-(メタ)アクリル酸エステル系共重合体100質量%中に、具体的には例えば、16,20,25,30,35,40,45,50,51,52,53,54,55,56,57,58,59,60,61,62,63,64,65,66,67,68,69,70,75,80質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。なお、当該含有量は2種以上の(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位を用いている場合にはその合計質量である。
【0018】
スチレン-(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、当該スチレン-(メタ)アクリル酸エステル系共重合体100質量%中に、スチレン系単量体単位を好ましくは20~80質量%有し、より好ましくは30~50質量%有する。スチレン系単量体単位の含有量は、当該スチレン-(メタ)アクリル酸エステル系共重合体100質量%中に、具体的には例えば、20,25,30,35,40,45,50,51,52,53,54,55,56,57,58,59,60,61,62,63,64,65,66,67,68,69,70,75,80質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。なお、当該含有量は2種以上のスチレン系単量体単位を用いている場合にはその合計質量である。
【0019】
スチレン系単量体単位は、スチレン系単量体に由来する重合体の構成単位である。スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,5-ジメチルスチレン、3,4-ジメチルスチレン、3,5-ジメチルスチレン、p-エチルスチレン、m-エチルスチレン、о-エチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン等が挙げられる。スチレン系単量体は、好ましくはスチレンである。スチレン系単量体は、単独で使用しても2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0020】
(メタ)アクリル酸系単量体単位は、(メタ)アクリル酸系単量体に由来する重合体の構成単位である。(メタ)アクリル酸系単量体は、アクリル酸又はメタクリル酸である。(メタ)アクリル酸系単量体は、単独で使用しても2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0021】
(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位は、(メタ)アクリル酸エステル系単量体に由来する重合体の構成単位である。(メタ)アクリル酸エステル系単量体は、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルである。(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、より具体的には例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸アリ-ルエステル;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸4-t-ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2-ノルボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンタン-1-イル、(メタ)アクリル酸2-メチルアダマンタン-2-イル、(メタ)アクリル酸2-エチル-2-アダマンチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカニル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;(メタ)アクリル酸グリシジル;(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル系単量体は、好ましくは(メタ)アクリル酸アルキルエステルであり、より好ましくはメタクリル酸メチルである。(メタ)アクリル酸エステル系単量体は、単独で使用しても2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0022】
スチレン-(メタ)アクリル酸系共重合体は、スチレン系単量体及び(メタ)アクリル酸系単量体と共重合可能な単量体に由来する単量体単位を有していてもよい。共重合可能な単量体としては、例えば、上記(メタ)アクリル酸エステル系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル;無水マレイン酸、フマル酸等のα,β-エチレン不飽和カルボン酸類;フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のイミド類が挙げられる。これらは1種を単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0023】
スチレン-(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、スチレン系単量体及び(メタ)アクリル酸エステル系単量体と共重合可能な単量体に由来する単量体単位を有していてもよい。共重合可能な単量体としては、例えば、上記(メタ)アクリル酸系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル;無水マレイン酸、フマル酸等のα,β-エチレン不飽和カルボン酸類;フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のイミド類が挙げられる。これらは1種を単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0024】
スチレン系樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは5万~45万であり、より好ましくは15万~40万である。このような範囲にすることにより成形性と強度を両立することができる。重量平均分子量が5万未満では成形品の強度が不十分となり、45万を超えると成形性が低下する場合がある。スチレン系樹脂(A)の重量平均分子量は、具体的には例えば、5万,6万,7万,8万,9万,10万,11万,12万,13万,14万,15万,16万,17万,18万,19万,20万,21万,22万,23万,24万,25万,26万,27万,28万,29万,30万,31万,32万,33万,34万,35万,36万,37万,38万,39万,40万,41万,42万,43万,44万,45万であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0025】
1種のスチレン系単量体のみを重合させたスチレン系単量体の単独重合体の重量平均分子量は、好ましくは25~45万であり、より好ましくは30~40万である。スチレン-(メタ)アクリル酸系共重合体の重量平均分子量は、好ましくは15~40万であり、より好ましくは20~35万である。スチレン-(メタ)アクリル酸系共重合体の重量平均分子量は、好ましくは10~30万であり、より好ましくは15~25万である。
【0026】
スチレン系樹脂(A)の温度200℃、49N荷重の条件でのメルトマスフローレート(MFR)は、0.5~5.0g/10分であることが好ましく、より好ましくは、1.0~4.0g/10分である。MFRが0.5g/10分未満では、成形安定性が低下し、MFRが5.0g/10分を超えると強度が不十分となる。
【0027】
スチレン系樹脂(A)のビカット軟化温度は、好ましくは95~130℃であり、より好ましくは100~120℃である。ビカット軟化温度が95℃未満では耐熱性が不足し、使用環境によっては導光板が変形する可能性がある。
【0028】
<フェノ-ル系酸化防止剤(B)>
光学部材用スチレン系樹脂組成物は、スチレン系樹脂(A)100質量部に対して、フェノール系酸化防止剤(B)を好ましくは0.05質量部以上、0.5質量部以下(0.05~0.5質量部)含み、より好ましくは0.06~0.4質量部含む。フェノール系酸化防止剤(B)の含有量が0.05質量部以上である場合に特に耐熱性が向上し、0.5質量部以下である場合に色相が良好である。フェノール系酸化防止剤スチレン系樹脂(A)100質量部に対して、の含有量は、スチレン系樹脂(A)100質量部に対して、具体的には例えば、0.05,0.06,0.07,0.08,0.09,0.1,0.15,0.2,0.25,0.3,0.35,0.4,0.45,0.5質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。また、フェノール系酸化防止剤(B)は、1種を単独又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。なお、当該含有量は2種以上のフェノール系酸化防止剤(B)を用いている場合にはその合計質量である。
【0029】
フェノール系酸化防止剤(B)は、基本骨格にフェノール性水酸基を持つ化合物からなる酸化防止剤である。フェノール系酸化防止剤(B)の具体例としては、例えば、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、エチレンビス(オキシエチレン)ビス〔3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート〕、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が挙げられる。これらは1種を単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0030】
酸化防止剤には、6-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロポキシ]-2,4,8,10-テトラ-tert-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピンのように、同一分子内にフォスファイト構造とフェノール構造を併せ持つ、リン-フェノール系化合物がある。このような化合物の場合、光学用スチレン系樹脂組成物には、リン系酸化防止剤とフェノール系酸化防止剤のそれぞれを含有すると考え、例えば、スチレン系樹脂(A)100質量部に対して、リン-フェノール系化合物を0.1質量部含有する場合には、リン系酸化防止剤を0.1質量部、フェノール系酸化防止剤を0.1質量部含有すると考える。
【0031】
<光安定剤(C)>
光学用スチレン系樹脂組成物は、光安定剤(C)を含む。光安定剤(C)は、ヒンダ-ドアミン系光安定剤を含む。光学用スチレン系樹脂組成物は、スチレン系樹脂(A)100質量部に対して、光安定剤(C)を好ましくは0.01質量部以上、0.2質量部未満含有し、より好ましくは0.05~0.19質量部含有する。光安定剤(C)の含有量は、スチレン系樹脂(A)100質量部に対して、具体的には例えば、0.01,0.02,0.03,0.04,0.05,0.06,0.07,0.08,0.09,0.10,0.11,0.12,0.13,0.14,0.15,0.16,0.17,0.18,0.19質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。また、光安定剤(C)は、1種を単独又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。なお、当該含有量は2種以上の光安定剤(C)を用いている場合にはその合計質量である。
【0032】
一態様においては、光学用スチレン系樹脂組成物は、スチレン系樹脂(A)100質量部に対して、ヒンダ-ドアミン系光安定剤を好ましくは0.01質量部以上、0.2質量部未満含有し、好ましくは0.05~0.19質量部含有する。このような範囲とすることで、色相、LED光源に対する光安定性が優れる。光安定剤(C)の含有量は、スチレン系樹脂(A)100質量部に対して、具体的には例えば、0.01,0.02,0.03,0.04,0.05,0.06,0.07,0.08,0.09,0.10,0.11,0.12,0.13,0.14,0.15,0.16,0.17,0.18,0.19質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0033】
光安定剤(C)としては、ヒンダ-ドアミン系光安定剤(HALS)、及び紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0034】
ヒンダードアミン系光安定剤は、次の一般式(1)で表される構造単位を有する化合物である。
【0035】
【化1】
【0036】
一般式(1)中、Xは炭素原子、酸素原子、窒素原子を介してピペリジル基の4-位と結合する有機基であり、Rとしては、水素原子、炭素数1~10の直鎖状、または分岐状のアルキル基、メチレン基、アルコキシ基が挙げられる。ここで、Rが水素原子の場合を、N-H型ヒンダードアミン系光安定剤、Rが炭素数1~10の直鎖状、または分岐状のアルキル基、メチレン基の場合を、N-R型ヒンダードアミン系光安定剤(N-アルキル型ヒンダ-ドアミン系光安定剤)、Rがアルコキシ基の場合を、N-OR型ヒンダードアミン系光安定剤(N-アルキルオキシ型ヒンダ-ドアミン系光安定剤)とする。
【0037】
N-H型ヒンダードアミン系光安定剤の具体例としては、ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)セバケート(BASF社製 TINUVIN770DF)、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルヘキサデカノエート、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルオクタデカノエート(SONGWON社製 SABOSTAB UV91)、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート(ADEKA社製 ADK STAB LA-57)、N,N′-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサメチレンジアミンと4-モルホリノ2,6-ジクロロ-1,3,5-トリアジンとの重縮合物(SONGWON社製 SABOSTAB UV79)、2,4-ジクロロ-6-(1,1,3,3-テトラメチルブチルアミノ)と1,3,5-トリアジン・N,N′-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ヘキサメチレンジアミンとの重縮合物(BASF社製 Chimassоrb944FDL)、N,N′-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサメチレンジアミンと2,4,6-トリクロロ-1,3,5-トリアジンとN-ブチル-1ーブタンアミンとN-ブチル-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジンアミンとの重縮合物(SONGWON社製 SABOSTAB UV40)、1,6,11-トリス〔2,4-ビス(N-ブチル-N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イル〕アミノウンデカン(BASF社製 Chimassоrb2020FDL)、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジノールとβ,β,β′,β′-テトラメチル-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデンカン―3,9-ジエタノールとの重縮合物(ADEKA社製 ADKSTAB LA-68)、ドデシル 3-(2,2,4,4-テトラメチル-21-オキソ-7-オキサ-3,20-ジアザジスピロ(5.1.11.2)ヘニコサン-20-イル)プロピオネート、テトラデシル 3-(2,2,4,4-テトラメチル-21-オキソ-7-オキサ-3,20-ジアザジスピロ(5.1.11.2)ヘニコサン-20-イル)プロピオネート(CLARIANT社製 HOSTAVIN3030)、2,2,4,4-テトラメチル-7-オキサ-3,20-ジアザジスピロ-(5.1.11.2)ヘニコサン-21-オンとエピクロロヒドリンとの重縮合物(CLARIANT社製 HOSTAVIN N30P)が挙げられる。
【0038】
N-R型ヒンダードアミン系光安定剤の具体例としては、メチル(1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イル)セバケート(BASF社製 TINUVIN292,TINUVIN765)、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イル)n-ブチル3,5-ジ-tert-ブチル4-ヒドロキシベンジルマロネート(BASF社製 TINUVIN144)、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノールとコハク酸ジメチルエステルとの重縮合物(BASF社製 TINUVIN622SF)、1,5,8,12-テトラキス〔4,6-ビス(N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ)-1,3,5-トリアジン-2-イル〕-1,5,8,12-テトラアザドデカン(BASF社製 Chimassоrb119)、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノールとβ,β,β',β'-テトラメチル-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデンカン―3,9-ジエタノールとの重縮合物(ADEKA社製 ADKSTAB LA-63P)、コハク酸と(4-ヒドロキシ―2,2,6,6-テトラメチルピペリジン―1-イル)エタノールとの重縮合物及び、N,N′,N′′,N′′′-テトラキス-(4,6-ビス-(ブチル-(N-メチル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-トリアジン-2-イル)-4,7-ジアザデカン-1,10-ジアミンの混合物(BASF社製 TINUVIN111FDL)が挙げられる。
【0039】
N-OR型ヒンダードアミン系光安定剤の具体例としては、ビス(1-オクチルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジル)セバケート(BASF社製 TINUVIN123)、ビス(1-ウンデカノキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)カーボネート(ADEKA社製 ADKSTAB LA-81)が挙げられる。
【0040】
紫外線吸収剤としては、公知の紫外線吸収剤を用いることができるが、具体的には例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2,2'-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-tert-オクチルフェノール(ADEKA社製 ADKSTAB LA-31RG)、2-(2'-ヒドロキシ-5'-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール(ADEKA社製 ADKSTAB LA-32)、2-(2'-ヒドロキシ-3'-tert-ブチル-5'-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール(ADEKA社製 ADKSTAB LA-36)、2-(2'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール(城北化学社製 JF-80)、2-(2'-ヒドロキシ-5'-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール(ADEKA社製 ADKSTAB LA-29)、6-(2-ベンゾトリアゾリル)-4-tert-オクチル-6'-tert-ブチル-4'-メチル-2,2'-メチレンビスフェノール](城北化学社製 JAST-500)等が挙げられる。
【0041】
一態様においては、光学用スチレン系樹脂組成物は、スチレン系樹脂(A)100質量部に対して、紫外線吸収剤を好ましくは0.05質量部未満含有し、好ましくは0.01質量部未満含有し、より好ましくは0.001質量部未満含有する。紫外線吸収剤の含有量は、スチレン系樹脂(A)100質量部に対して、具体的には例えば、0,0.001,0.01,0.02,0.03,0.04質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0042】
光安定剤(C)としては、光学用スチレン系樹脂組成物の耐熱性の観点から、N-OR型ヒンダードアミン系光安定剤が特に好ましい。N-H型ヒンダードアミン系光安定剤及びN-R型ヒンダードアミン系光安定剤に比べN-OR型ヒンダードアミン系光安定剤を用いた場合に特に優れる理由は明らかにはなっていないが、N-H型ヒンダードアミン系光安定剤及びN-R型ヒンダードアミン系光安定剤はフェノール系酸化防止剤とより反応し易く、より黄変が進行しているのではないかと推測される。
【0043】
一態様においては、光学用スチレン系樹脂組成物は、スチレン系樹脂(A)100質量部に対して、N-OR型ヒンダードアミン系光安定剤を0.01質量部以上、0.2質量部未満含有する一方、N-H型ヒンダードアミン系光安定剤及びN-R型ヒンダードアミン系光安定剤の含有量はそれぞれ、好ましくは0.01質量部未満であり、好ましくは0.001質量部未満である。
<その他の成分>
光学用スチレン系樹脂組成物には、本発明の特性を損なわない範囲で、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤、帯電防止剤、親水性添加剤、流動パラフィン(ミネラルオイル)、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ブルーイング剤、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド等の高級脂肪酸アミド、ラウリン酸モノグリセライド、パルミチン酸モノグリセライド、ステアリン酸モノグリセライド、ベヘン酸モノグリセライド等の高級脂肪酸グリセライド、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール等の高級アルコール等の離型剤を含んでいてもよい。
【0044】
リン系酸化防止剤は、基本骨格にフェノール性水酸基を有しない(亜)リン酸エステル類であり、好ましくは三価のリン化合物である亜リン酸エステル類である。リン系酸化防止剤の具体例としては、2,2′-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチル-1-フェニルオキシ)(2-エチルヘキシルオキシ)ホスホラス、ビス-(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)フォスファイト、3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ〔5,5〕ウンデカン、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)〔1,1ビフェニル〕-4,4′-ジイルビスホスホナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)エチル亜リン酸エステル等が挙げられる。これらは1種を単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0045】
光学用スチレン系樹脂組成物は、スチレン系樹脂(A)100質量部に対して、リン系酸化防止剤を好ましくは0.001~0.5質量部含有し、より好ましくは0.01~0.4質量部含有する。
【0046】
<色相>
(初期色相:YI)
光学部材用スチレン系樹脂組成物を115mm×80mm×2mmの板状に成形した板状成形品について、後述の耐熱試験又はLED照射試験前の光路長115mmにおける初期の黄色度は、好ましくは15.0以下であり、より好ましくは10.0以下である。初期の黄色度は、具体的には例えば、0,1.0,2.0,3.0,4.0,4.5,5.0,5.5,6.0,6.5,7.0,7.5,8.0,8.5,9.0,9.5,10.0,10.5,11.0,11.5,12.0,12.5,13.0,13.5,14.0,14.5,15.0であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0047】
(耐熱試験前後の色相変化:ΔYI(heat))
光学部材用スチレン系樹脂組成物を115mm×80mm×2mmの板状に成形した板状成形品に対して、80℃の環境に1000時間曝露した前後の光路長115mmにおける黄色度の変化量ΔYI(heat)は、好ましくは4.5以下であり、より好ましくは3.0以下である。ΔYI(heat)は、具体的には例えば、0,0.1,0.5,1.0,1.5,2.0,2.1,2.2,2.3,2.4,2.5,2.6,2.7,2.8,2.9,3.0,3.5,4.0,4.4,4.5であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0048】
(LED照射試験前後の色相変化:ΔYI(LED))
光学部材用スチレン系樹脂組成物を115mm×80mm×2mmの板状に成形した板状成形品に対して、25℃の条件下において、板状成形品から0.2mm離れた位置に8.5cdの白色LEDチップを7mm間隔で配列して2000時間光照射した前後の光路長115mmにおける黄色度の変化量ΔYI(LED)は、1.5以下であり、好ましくは1.0以下であり、より好ましくは0.5以下であり、さらに好ましくは0.1以下である。ΔYI(LED)は、具体的には例えば、0,0.01,0.02,0.03,0.04,0.05,0.06,0.07,0.08,0.09,0.1,0.2,0.3,0.4,0.5,0.6,0.7,0.8,0.9,1.0,1.1,1.2,1.3,1.4,1.5であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0049】
<寸法変化率>
光学部材用スチレン系樹脂組成物を115mm×80mm×2mmの板状に成形した板状成形品を温度60℃、湿度90%の恒温恒湿機に96時間静置した前後の長辺の寸法変化率は、好ましくは0.20%以下であり、より好ましくは0.10%以下である。
【0050】
<光学用スチレン系樹脂組成物の製造方法>
スチレン系樹脂(A)の重合方法としては、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等公知のスチレン重合方法が挙げられる。品質面や生産性の面では、塊状重合法、溶液重合法が好ましく、連続重合であることが好ましい。溶媒として例えばベンゼン、トルエン、エチルベンゼン及びキシレン等のアルキルベンゼン類やアセトンやメチルエチルケトン等のケトン類、ヘキサンやシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素等が使用できる。
【0051】
スチレン系樹脂(A)の重合時に、必要に応じて重合開始剤、連鎖移動剤、架橋剤などの重合助剤、その他の重合助剤を使用することができる。重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤が好ましく、公知慣用の例えば、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ジ(t-ブチルパーオキシ)ブタン、2,2-ジ(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1-ジ(t-アミルパーオキシ)シクロヘキサン等のパーオキシケタール類、クメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、t-アミルパーオキシイソノナノエート等のアルキルパーオキサイド類、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ヘキシルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート等のパーオキシエステル類、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ポリエーテルテトラキス(t-ブチルパーオキシカーボネート)等のパーオキシカーボネート類、N,N′-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、N,N′-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、N,N′-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、N,N′-アゾビス[2-(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]等が挙げられ、これらの1種あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。連鎖移動剤としては、n-ドデシルメルカプタン、tert-ドデシルメルカプタン等の脂肪族メルカプタン、芳香族メルカプタン、チオグリコール酸、メルカプトプロピオン酸等のチオカルボン酸類、エチレングリコール、テトラエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール水酸基をチオグリコール酸、またはメルカプトプロピオン酸でエステル化した多官能メルカプタン、ペンタフェニルエタン、α-メチルスチレンダイマー及びテルピノーレン等が挙げられる。中でも、分子量調整が容易な点から、脂肪族メルカプタン、芳香族メルカプタン、チオカルボン酸類、多官能メルカプタンが好ましい。
【0052】
連続重合の場合、スチレン系樹脂(A)は、重合工程と、脱揮工程、造粒工程を備える方法によって製造可能である。
【0053】
まず重合工程にて公知の完全混合槽型攪拌槽や塔型反応器等を用い、目標の分子量、分子量分布、反応転化率となるよう、重合温度調整等により重合反応が制御される。
【0054】
重合工程を出た重合体を含む重合溶液は、脱揮工程に移送され、未反応の単量体及び重合溶媒が除去される。脱揮工程は加熱器付きの真空脱揮槽やベント付き脱揮押出機などで構成される。脱揮工程を出た溶融状態の重合体は造粒工程へ移送される。造粒工程では、多孔ダイよりストランド状に溶融樹脂を押出し、コールドカット方式や空中ホットカット方式、水中ホットカット方式にてペレット形状に加工される。
【0055】
光学用スチレン系樹脂組成物は、スチレン系樹脂(A)にフェノ-ル系酸化防止剤(B)と光安定剤(C)とを添加することにより製造可能である。フェノ-ル系酸化防止剤(B)及び光安定剤(C)はそれぞれ、スチレン系樹脂(A)の重合前に原料溶液中に添加してもよいし、スチレン系樹脂(A)を重合後、造粒前に設置された押出機、若しくは静的混合装置で混合してもよい。また、スチレン系樹脂(A)を造粒後のペレットとフェノ-ル系酸化防止剤(B)及び光安定剤(C)をドライブレンドし、溶融混練して製造してもよい。また、フェノ-ル系酸化防止剤(B)及び光安定剤(C)を予め少量のスチレン系樹脂と共に溶融混練して得たペレット状のマスターバッチを作成し、スチレン系樹脂(A)と該マスターバッチをドライブレンド後、溶融混練し、調整してもよい。
【0056】
2.成形体
本発明の一実施形態に係る成形体は、上記光学用スチレン系樹脂組成物を成形してなる成形体である。成形体は、例えば、光学部材等である。光学部材は、例えば、導光板及び光拡散板等である。導光板は、例えば、エッジライト型面光源ユニットに用いることが可能な導光板である。光拡散板は、直下型面光源ユニットに用いることが可能な光拡散板である。
【0057】
<導光板の形状>
導光板は、導光板の表面に凹凸形状を有していてよい。より詳細には、導光板の表面に複数のレンチキュラー形状及び/又はプリズム形状の凸部を有していてよい。凸部は、導光板の少なくとも一つの面に設けられていることが好ましく、特に導光板の前面(発光面)である一つの面に設けられる。他の面についても必要であれば設けてもよいが、導光板の前面(発光面)にのみ設けられていることがより好ましい。
【0058】
ここで、レンチキュラー形状の凸部とは、円弧状の凸部であり、断面の縁形状が円弧状の突条体である。また、プリズム形状とは、円弧状の凸部であり、断面の縁形状が三角山形の突条体である。また、凸部は複数条、互いに平行関係となるように形成されうる。また、凸部は導光板に一体的に形成されうる。
【0059】
導光板の厚みは、0.2~3.0mmであり、好ましくは0.3~2.5mmであり、より好ましくは0.4~2.4mmである。このような範囲内であると、光学用スチレン系樹脂組成物の成形において、優れた押出安定性等の成形性や強度に優れる導光板を製造することが容易である。
【0060】
<導光板の製造方法>
本発明の一実施形態に係る導光板は、上記の光学用スチレン系樹脂組成物を成形して得られ、成形方法としては、シート押出成形や、射出成形、圧縮成形等の公知の方法を用いることができるが、生産性、成形品の大型化が容易という点で、表面形状転写型を備えた連続シート押出成形であることが好ましい。該シート押出成形の例としては、樹脂を加熱溶融状態でフィードブロックに供給し、ダイから連続的に押し出しシートを作成する押出工程と、前記樹脂シートを、圧着ロールと冷却ロールで挟み込む押圧工程、押圧工程後、樹脂シートを冷却ロールに密着させながら搬送する搬送工程を有し、冷却ロールの表面に転写型を備える連続シート押出成形法が挙げられ、該転写型の形状を変更することで、シート表面に任意の凹凸形状を転写することができる。
【0061】
また、導光板は、前面(発光面)に凹凸形状を有していてよく、背面には光を乱反射させる反射加工が施されうる。反射加工としては、例えば、シルク印刷やインクジェット印刷のほか、レーザー照射によりドット形状の凹凸を付与する方法が挙げられ、ドットパターンの印刷には、光を拡散させる微粒子を有するインクを使用することができる。
【実施例0062】
以下に実施例をあげて本発明を更に詳細に説明する。また、これらはいずれも例示的なものであって、本発明の内容を限定するものではない。
【0063】
<スチレン系樹脂(A)>
下記の通りスチレン系樹脂(A-1)~(A-3)を表1の条件1~条件3に基づき調製した。
完全混合型撹拌槽である第1反応器と第2反応器及び静的混合器付プラグフロ-型反応 器である第3反応器を直列に接続して重合工程を構成し、表1に示す条件によりスチレン 系樹脂の製造を実施した。各反応器の容量は、第1反応器を39リットル、第2反応器を39リットル、第3反応器を16リットルとした。表1に記載の原料組成にて、原料溶液を作成し、第1反応器に原料溶液を表1に記載の流量にて連続的に供給した。重合開始剤は、第1反応器の入口で表1に記載の添加濃度(原料単量体(スチレン、メタクリル酸メチル、及びメタクリル酸)の合計量に対する質量基準の濃度)となるように原料溶液に添加し、均一混合した。表1に記載の重合開始剤は次の通りである。
重合開始剤-1:2,2-ジ(4,4-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン[日油株式会社製パーテトラA]
重合開始剤-2:1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン[日油株式会社製パーヘキサC]
なお、第3反応器では、流れの方向に沿って温度勾配をつけ、中間部分、出口部分で表1の温度となるよう調整した。続いて、第3反応器より連続的に取り出した重合体を含む溶液を直列に2段より構成される予熱器付き真空脱揮槽に導入し、表1に記載の樹脂温度となるよう予熱器の温度を調整し、表1に記載の圧力に調整することで、未反応スチレン及びエチルベンゼンを分離した後、多孔ダイよりストランド状に押し出しして、コ-ルドカット方式にて、ストランドを冷却および切断しペレット化した。
なお、表1中の各重合開始剤の添加量「ppm」は、重合に用いた原料組成中の単量体の合計質量に対する量である。すなわち、条件1では重合に用いたスチレンに対する質量基準の濃度であり、条件2では重合に用いたスチレン及びメタクリル酸メチルの合計に対する質量基準の濃度であり、条件3では重合に用いたスチレン及びメタクリル酸の合計に対する質量基準の濃度である。
【0064】
<重量平均分子量(Mw)>
スチレン系樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、次の条件で測定した。測定結果を表1に示す。
GPC機種:昭和電工株式会社製Shodex GPC-101
カラム:ポリマーラボラトリーズ社製 PLgel 10μm MIXED-B
移動相:テトラヒドロフラン
試料濃度:0.2質量%
温度:オーブン40℃、注入口35℃、検出器35℃
検出器:示差屈折計
分子量は単分散ポリスチレンの溶出曲線より各溶出時間における分子量を算出し、ポリスチレン換算の分子量として算出したものである。
【0065】
<メルトマスフローレート>
スチレン系樹脂(A)のメルトマスフローレート(MFR)は、JIS K 7210に従って、温度200℃、49N荷重の条件で測定した。測定結果を表1に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
<ビカット軟化温度>
スチレン系樹脂(A)のビカット軟化温度は、JIS K 7206に従って、昇温速度50℃/hr、試験荷重50Nで測定した。測定結果を表1に示す。
【0068】
[実施例1~12及び比較例1~3]
表2に示す含有量にて、スチレン系樹脂A-1~A-3と添加剤をスクリュ-径40mmの単軸押出機を用いて、シリンダ-温度230℃、スクリュ-回転数100rpmで溶融混錬してペレット(樹脂組成物ペレット)を得た。表2で用いた添加剤は次の通りである。
【0069】
<フェノ-ル系酸化防止剤(B)>
B-1:6-〔3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロポキシ〕-2,4,8,10-テトラ-tert-ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン(フェノ-ル系酸化防止剤;住友化学株式会社製;スミライザ-GP)
B-2:3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸オクタデシル(フェノ-ル系酸化防止剤;BASFジャパン株式会社製;Irganox1076)
【0070】
<光安定剤(C)>
C-1:ビス(1-ウンデカノキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イン)カ-ボネ-ト(N-アルキルオキシ型HALS;ADEKA株式会社製;アデカスタブ LA-81)
C-2:テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ブタン-1,2,3,4-テトラカルボキシレ-ト(N-H型HALS;ADEKA株式会社製;アデカスタブ LA-57)
C-3:テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)ブタン-1,2,3,4-テトラカルボキシレ-ト(N-アルキル型HALS;ADEKA株式会社製;アデカスタブ LA-52)
C-4:2,2'-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾ-ル-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノ-ル](紫外線吸収剤;ADEKA株式会社製;アデカスタブ LA-31RG)
【0071】
次にスチレン系樹脂組成物の評価について説明する。
【0072】
<試験片の作製>
評価用いた試験片(板状成形品1)を次のように準備した。
得られた樹脂組成物ペレットを用いて、鏡面加工された金型を使用し、シリンダ-温度230℃、金型温度50℃にて射出成形を行い、115mm×80mm×2mm(縦×横×厚さ)に成形し、図1に示すように端面に鏡面3を有する(鏡面3として図示した各面の反対面も鏡面3である)板状成形品1を成形した。
【0073】
<初期色相評価>
板状成形品1について、日本分光株式会社製の紫外線 可視分光光度計V-670を用いて、大きさ20×1.6mm、広がり角度0°の入射光 において、光路長115mmでの波長350nm~800nmの分光透過率を測定し、C光源における、視野2°でのYI値をJIS K7105に倣い算出した。光路長115mmにおけるYIを「YI(初期)」とした。
【0074】
<LED照射試験>
板状成形品1の端面(鏡面3)に長辺(成形時に115mmとした辺)方向(図1において矢印5が示す方向)で光が当たるように、当該端面から0.2mm離れた位置に8.5cdの白色LEDチップを7mm間隔で配列し、25℃条件下において2000時間照射した。
LED照射試験前後の板状成形品1について、上記の方法で光路長115mmにおけるYIの測定を実施した。LED照射試験後の光路長115mmにおけるYIを「YI(LED)」とした。
【0075】
そして、LED照射試験前後の黄色度変化量「ΔYI(LED)」は、YI(初期)とLED照射試験後YI(LED)の差として下記式に基づいて算出した。
ΔYI(LED)=YI(LED)-YI(初期)
【0076】
<耐熱試験>
板状成形品1を、80℃(乾燥(加湿せず))の環境下に1000時間曝露した。耐熱試験後の板状成形品1について、上記の方法で光路長115mmにおけるYIの測定を実施した。耐熱試験後の光路長115mmにおけるYIを「YI(heat)」とした。
【0077】
そして、耐熱試験前後の黄色度変化量「ΔYI(heat)」は、YI(初期)と耐熱試験後YI(heat)の差として下記式に基づいて算出した。
ΔYI(heat)=YI(heat)-YI(初期)
【0078】
<寸法変化率>
板状成形品1を、80℃で24時間乾燥し、シリカゲルを入れたデシケ-タ内で2時間静置した後、ノギスを使用して板状成形品1の長辺(成形時に115mmとした辺)の寸法を測定し、得られた長さを「L1」とした。その後、試験片を温度60℃、湿度90%の恒温恒湿機に96時間静置し、取り出し5分後に、ノギスを使用して板状成形品1の長辺(成形時に115mmとした辺)の寸法を測定し、得られた長さを「L2」とした。恒温恒湿機に静置した前後の寸法から、寸法変化率を下記式に基づいて算出した。 寸法変化率(%)=((L2ーL1)/L1)×100
【0079】
【表2】
【符号の説明】
【0080】
1:成形品
3:鏡面
5:矢印(LED照射試験における照射方向)
図1