(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141750
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】廃コンクリートからのセメントペーストの回収方法
(51)【国際特許分類】
C04B 18/16 20230101AFI20241003BHJP
B09B 3/35 20220101ALI20241003BHJP
【FI】
C04B18/16 ZAB
B09B3/35
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053562
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉澤 建
(72)【発明者】
【氏名】佐野 浩希
(72)【発明者】
【氏名】明戸 剛
(72)【発明者】
【氏名】一坪 幸輝
(72)【発明者】
【氏名】大和田 秀二
【テーマコード(参考)】
4D004
【Fターム(参考)】
4D004AA33
4D004BA01
4D004CA04
4D004CA07
4D004CB13
(57)【要約】 (修正有)
【課題】廃コンクリートから高品位のセメントペーストを収率よく回収する方法を提供すること。
【解決手段】所定の粒度の廃コンクリートを破砕する破砕工程と、破砕物を、水平方向に対して所定の角度で傾斜させた多孔板を振動させつつ下方から多孔板に向けて気体を噴出するエアテーブル式比重選別装置に供給して、重比重物と、中間比重物と、軽比重物と、集塵物とに分離する比重選別工程と、軽産物及び集塵物を回収する回収工程を含む、廃コンクリートからのセメントペーストの回収方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の粒度の廃コンクリートを破砕する破砕工程と、
破砕物を、水平方向に対して所定の角度で傾斜させた多孔板を振動させつつ下方から多孔板に向けて気体を噴出するエアテーブル式比重選別装置に供給して、重比重物と、中間比重物と、軽比重物と、集塵物とに分離する比重選別工程と、
軽産物及び集塵物を回収する回収工程
を含む、廃コンクリートからのセメントペーストの回収方法。
【請求項2】
比重選別工程で分離された中間比重物を破砕工程に供給し、破砕工程、比重選別工程及び回収工程を行う、請求項1記載の回収方法。
【請求項3】
破砕工程前に、又は破砕工程後であって、比重選別工程前に、廃コンクリートの水分含有量を調整する水分調整工程を含む、請求項1又は2記載の回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃コンクリートからのセメントペーストの回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリート建築物等の解体工事に伴って発生する廃コンクリートは、鉄筋等のコンクリート以外の異物を除去した後、粒径が40mmアンダー程度となるまで破砕され、路盤材又は埋戻し材等として活用されていた。しかし、大都市部を中心に廃コンクリートが増加しているのに対し、路盤材等の需要が減少傾向にあるため、破砕後の廃コンクリートを更に磨砕等することで、コンクリート中の骨材に付着しているセメントペーストと骨材とを分離し、この骨材を再生骨材として再利用する試みがなされている。
【0003】
例えば、粒径1000mm以下の廃コンクリートを破砕機及び細破砕機により篩分機を介在させて粒径約5mm以下に粉砕した後、粒径0.5~5mmの粉砕物を比重選別し、粒径0.5mm以下の粉砕物をサイクロンで選別し、高比重物を再生細骨材として回収する方法(特許文献1)、約40mm以下の廃コンクリート破砕物を更に5mm以下に破砕し、これを研磨してモルタルを除去し、被処理物から微粉を除去して再生細骨材として回収する方法(特許文献2)が提案されている。また、廃コンクリートを破砕し、振動篩により粒径5mm未満の砂セメントと粒径5mm以上の砂利砕石分とに選別した後、砂利砕石分を摩鉱してモルタル分を剥離して砂利砕石分とモルタル分との集合体とし、この集合体を比重選別して高比重物を再生骨材として回収するとともに、砂セメントを摩鉱してモルタル分を剥離して砂分とモルタル分との集合体とし、この集合体をスパイラル分級して砂とセメントを回収する方法(特許文献3)も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-220192号公報
【特許文献2】特開平08-245248号公報
【特許文献3】特開平11-314951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記した先行技術により回収されるセメントペーストには、カルシウムが濃縮しているものの、再生骨材の品位を向上させるために過粉砕されることに起因し、骨材を多く含んでいる。ゆえに、回収されるセメントペーストは、アルカリ等量が高くなるため、その再利用が制限されるという課題が存在する。また、再生骨材の普及が進んでいないことから、再生骨材製造工程のみに依存せず、セメントペーストを収率よく回収できる方法が求められている。
したがって、本発明の課題は、廃コンクリートから高品位のセメントペーストを収率よく回収する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、廃コンクリートからのセメントペーストの回収率を向上させるべく検討した結果、所定の粒度の廃コンクリートを破砕し、破砕物を所定の比重選別に供して重比重物と、中間比重物と、軽比重物と、集塵物とに分離し、軽産物及び集塵物を回収することで、廃コンクリートから骨材の混入の抑えられた高品位のセメントペーストを収率よく回収できることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、次の〔1〕~〔3〕を提供するものである。
〔1〕所定の粒度の廃コンクリートを破砕する破砕工程と、
破砕物を、水平方向に対して所定の角度で傾斜させた多孔板を振動させつつ下方から多孔板に向けて気体を噴出するエアテーブル式比重選別装置に供給して、重比重物と、中間比重物と、軽比重物と、集塵物とに分離する比重選別工程と、
軽産物及び集塵物を回収する回収工程
を含む、廃コンクリートからのセメントペーストの回収方法。
〔2〕比重選別工程で分離された中間比重物を破砕工程に供給し、破砕工程、比重選別工程及び回収工程を行う、前記〔1〕記載の回収方法。
〔3〕破砕工程前に、又は破砕工程後であって、比重選別工程前に、廃コンクリートの水分含有量を調整する水分調整工程を含む、前記〔1〕又は〔2〕記載の回収方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、廃コンクリートから骨材の混入の抑えられた高品位のセメントペーストを収率よく回収できることができる。したがって、本発明により回収されたセメントペーストは、アルカリ等量が低いため、高い原料原単位で再利用することができる。更に、本発明によれば、廃コンクリートから再生骨材として再資源化可能な材料も効率的に回収することができる。したがって、本発明の回収方法は、廃コンクリートの再生方法として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る回収方法に適用可能なセメントペースト回収装置の一例を示す図である。
【
図2】セメントペースト及び骨材の粒子径と、終末沈降速度との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら好適な実施形態を詳細に説明する。
本実施形態に係る回収方法に適用可能なセメントペースト回収装置の一例を
図1に示す。
図1に示されるセメントペースト回収装置は、所定の粒度の廃コンクリートを貯蔵する廃コンクリートホッパと、当該廃コンクリートを破砕する破砕機と、廃コンクリートの破砕物を比重選別するエアテーブル式比重選別装置を備える。破砕機及びエアテーブル式比重選別装置の下流側には、破砕時に発生するダストと、比重選別時に気流に乗って比重選別装置から排出されたダストを吸引する吸気ファンが設けられ、更に吸引ファンの下流側には、吸引ファンで吸引したダストを集塵するバグフィルターが設けられている。
【0011】
本実施形態に係る回収方法は、破砕工程、比重選別工程及び回収工程を含むものである。以下、各工程について説明する。
【0012】
(破砕工程)
本工程は、所定の粒度の廃コンクリートを破砕する工程である。これにより、廃コンクリートに含まれる骨材からセメントペーストが剥離され、セメントペーストを回収しやすくなる。
廃コンクリートとしては、例えば、土木工事や構造物の解体等によって発生する解体コンクリートを挙げることができるが、使用骨材に石灰石骨材を含まないものが好ましい。廃コンクリートとして、建築物等の建設時等に発生した余剰コンクリートを使用してもよい。また、廃コンクリートとして、作業効率、セメントペーストの品位向上の観点から、鉄筋等の異物を分離する目的で、小割り、磁力選別、手選別されたコンクリートを用いることもできる。
【0013】
本工程で使用する廃コンクリートは、最大粒径が通常5mmであるが、セメントペースト回収率の向上の観点から、最大粒径は、1~5mmが好ましく、2~5mmがより好ましく、3~5mmが更に好ましい。ここで、本明細書において「最大粒径」とは、廃コンクリートがすべて通過する篩の最小の目開きで表した粒径をいう。廃コンクリートが目開き5mmの篩を通過しない場合、廃コンクリートを更に破砕し、篩選別を行えばよい。
【0014】
本工程に係る破砕には、破砕機を使用することができる。破砕機としては、工業用の装置を使用することができるが、骨材の割れを抑制するために、例えば、フレームに固定された固定刃と動刃によって圧縮破砕するジョークラッシャ、撹拌型ミル、ジョークラッシャ、ボールミル、アトライタミル、ジェットミル、2個のロールを回転させその間で圧縮破砕するダブルロールクラッシャを好適に使用することができる。なお、破砕機の破砕室内に廃コンクリートが常に充填されるように排出部に滞留機構を設けることもできる。
【0015】
破砕の際には、破砕機内に気流を通過させ、廃コンクリートを破砕する際に発生するダストを吸引ファンで吸引して破砕機から排出し、吸引ファンで導かれたダストをバグフィルターで集塵してもよい。そして、
図1に示されるように、バグフィルターのろ布表面に付着した集塵物(微粉)をセメントペーストとして回収することができる。なお、破砕機内に流通させる気体は特に限定されないが、例えば、空気を挙げることができる。また、バグフィルターのろ布の材質は適宜選択することが可能である。
【0016】
(水分調整工程)
本工程は、廃コンクリートの水分含量が5質量%を超える場合、廃コンクリートの水分含量が5質量%未満となるように水分調整を行う工程である。これにより、後述する比重選別工程において、セメントペーストと骨材とを効率よく選別することができる。
水分の調整方法は、所望の水分含有量に調整できれば特に限定されないが、例えば、酸化カルシウムによる改質、土間乾燥、加熱乾燥を挙げることができる。中でも、セメント製造工程から排出される排ガスを抽気して廃コンクリートを加熱乾燥することが好ましい。加熱乾燥する場合の温度は、好ましくは20~300℃であり、更に好ましくは75~110℃である。
なお、本工程は、破砕工程前に行っても、破砕工程後、比重選別工程前に行っても構わない。
【0017】
(比重選別工程)
本工程は、廃コンクリートの破砕物を所定の比重選別に供し、重比重物と、中間比重物と、軽比重物と、集塵物とに分離する工程である。これにより、高比重の骨材は重比重物として分離されるため、軽比重物及び集塵物にセメントペーストを濃縮させることができる。なお、ここでいう「重比重物、中間比重物及び軽比重物」とは、相対的な比重の違いを意味し、例えば、重比重物は嵩比重が通常2.4g/cm3以上であり、軽比重物は嵩比重が通常2.1g/cm3以下であり、中間比重物の嵩比重は、重比重物と軽比重物との間である。
【0018】
本工程においては、セメントペーストの品位向上、回収率向上の観点から、比重選別装置として、エアテーブル式比重選別装置を使用する。エアテーブル式比重選別装置は、工業用の装置を使用することが可能であり、多孔板の平面形状は、三角形型及び長方形型のいずれでも構わない。
【0019】
エアテーブル式比重選別装置は、原料投入部から分離物の排出部へ至る経路となる多孔板と、当該経路を挟み投入部側から排出部側へ延びる1対の側板と、1対の側板相互間で当該経路を横切る向きに延びる少なくとも一つの邪魔板とを備える。多孔板は、投入部側から排出部側へ下る傾斜(サイドスロープ)と、側板の一方から他方へ下る傾斜(エンドスロープ)を有する。サイドスロープ及びエンドスロープの傾斜角は、廃コンクリートの粒径等により適宜設定可能であるが、通常1~20°の範囲内である。また、多孔板には、裏面から表面に貫通する孔が複数設けられており、これらの孔から空気等の気体が噴出手段により上昇流として噴出される。なお、多孔板の孔径は、廃コンクリートの粒度等により適宜設定可能である、また、多孔板は、振動機構により、例えば、邪魔板と平行な向きに沿って振動可能である。なお、多孔板の振動数は、廃コンクリートの粒度等により適宜設定可能であるが、通常10~100Hzの範囲内である。
【0020】
エアテーブル型分離装置では、多孔板を振動させるとともに、孔から気体を噴出させることによって、原料投入部から投入された廃コンクリートを比重差により分離する。高比重の骨材は、多孔板による摩擦の影響を強く受けるため、多孔板の振動によってエンドスロープの上方側に向かう力を受け、多孔板の上方に向かって移動する。他方、低比重のセメントペーストは、多孔板の振動よりも上昇流の影響を強く受けて舞い上がり、舞い上がったセメントペーストのうち、比較的高比重の粒子はエンドスロープの下方側に向かう力を受け、多孔板の下方に向かって移動する。また、中間比重物は、比重が重比重物と軽比重物との間であるため、重比重物や軽比重物のように多孔板の振動や上昇流の影響を受け難く、その位置に留まる。このようにして、多孔板上で重比重物、中間比重物及び軽比重物がそれぞれ一列に並び、3つに分けられた状態になる。そして、これら3成分が互いに混入しないように排出ゲートが調整され、排出される。なお、舞い上がったセメントペーストのうち、比較的低比重の粒子は、
図1に示されるように、吸引ファンで吸引されて比重選別装置から排出され、吸引ファンで導かれた微粉がバグフィルターで集塵される。
【0021】
エアテーブル式比重選別装置を用いて、重比重物と、中間比重物と、軽比重物とに効率よく分離するためには、多孔板の下方から上昇流として噴出する気体の風速を制御すればよい。本発明者らは、本工程で使用する廃コンクリートが主にセメントペーストと骨材から構成されることに着目し、セメントペースト及び骨材の粒子径と、終末沈降速度との関係に基づいて、多孔板の下方から噴出する気体の風速を制御することで、セメントペーストと骨材とを効率よく分離できることを見出した。即ち、粒子が空気中を落下するとき、重力と空気による抵抗を受け、一定の終末沈降速度で落下する。そのため、終末沈降速度と同じ風速で多孔板の下方から気体を噴き上げれば、粒子は浮遊することになる。したがって、終末沈降速度が異なる粒子について、その差を利用して分離することができる。本工程で使用する廃コンクリートは、上記のとおり、主にセメントペーストと骨材から構成されるところ、両者には大きな比重差があるから、両者の終末沈降速度は大きく異なる。そこで、本発明者らは、セメントペースト及び骨材のそれぞれについて、粒子径と終末沈降速度との関係を検討した。なお、終末沈降速度は、ストークスの式を用いて算出したものである。その結果を
図2に示す。そして、
図2に基づいて、本工程で回収を所望するセメントペーストの粒子径に対応する終末沈降速度を把握し、その粒子径に対応する骨材の終末沈降速度よりも低い速度に多孔板の下方から噴出する気体の風速を設定する。例えば、粒子径が0.5mm程度のセメントペーストの回収を所望した場合、
図2を参照するとセメントペーストと骨材の終末沈降速度はそれぞれ約1m/sと約2m/sであるから、多孔板の下方から噴出する気体の風速を骨材の終末沈降速度よりも低い1.5m/s程度に設定すればよい。
【0022】
また、本工程で回収する軽比重物及び集塵物を混合した混合物のセメントペースト含有率に基づいて気体の風速を管理することもできる。例えば、混合物のセメントペースト含有率が、好ましくは30質量%以上、より好ましくは33質量%以上、更に好ましくは35質量%以上となるように気体の風速を設定すればよい。なお、セメントペースト含有率は、後掲の実施例に記載の方法により分析することができる。
【0023】
比重選別工程で分離された重比重物は、再生骨材として再利用することが可能である。また、比重選別工程で分離された中間比重物は、後述する循環工程に供することができる。
【0024】
(回収工程)
本工程では、比重選別工程により分離された軽比重物のみならず、バグフィルターのろ布表面に付着した微粉(集塵物)をセメントペーストとして回収する。軽比重物と集塵物を混合することで、セメントペーストの回収率を、通常40%以上、好ましくは45%以上、更に好ましくは50%以上にまで向上させることができる。更に、混合物中のセメントペースト含有率が、好ましくは30質量%以上、より好ましくは33質量%以上、更に好ましくは35質量%以上に高められるだけでなく、アルカリ等量を概ね2%以下に低減することもできる。このように、本発明の回収方法により、セメントペースト含有率が高く、アルカリ等量の低いセメントペーストを収率よく回収することができる。
【0025】
(循環工程)
本工程は、比重選別工程で分離された中間比重物について、
図1に示されるように、破砕機に供給し、破砕工程、比重選別工程、及び回収工程を順次行う工程である。これにより、セメントペーストの回収率をより一層向上させることができる。なお、循環工程で分離された中間比重物について、破砕機に供給し、破砕工程、比重選別工程、及び回収工程を繰り返し行っても構わない。
【0026】
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本発明は上記実施形
態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能
である。例えば、上記実施形態においては、破砕工程において、吸引ファンで導かれたダストをバグフィルターで集塵したが、バグフィルターの代わりに、吸引風力式比重選別機(サイクロン)を装着してもよい。この場合、重比重物と軽比重物とに選別し、軽比重物をセメントペーストとして回収すればよい。
【実施例0027】
以下、実施例を挙げて、本発明の実施の形態を更に具体的に説明する。但し、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
【0028】
1.セメントペースト含有率の分析
セメント協会F-18法に準拠し、試料を粉砕後、塩酸(1+100)溶解により残分質量を測定した。次に、下記式(i)により不溶残分(in.sol)の質量割合を算出し、骨材含有率とした。
【0029】
骨材含有率(in.sol) (%)=w/s×100 (i)
【0030】
〔式中、wは残分質量(g)を示し、sは試料質量(g)を示す。〕
【0031】
次に、試料はセメントペーストと骨材の2成分のみであると仮定し、下記式(ii)からセメントペースト含有率を求めた。
【0032】
セメントペースト含有率(%)=100-骨材含有率(%) (ii)
【0033】
2.セメントペースト回収率
各産物(粉砕工程の集塵物、比重選別工程の重比重物、中間比重物、軽比重物及び集塵物)の質量にセメントペースト含有率を乗ずることで、各産物中のセメントペースト質量を算出した。そして、各セメントペースト質量を合計してセメントペーストの全質量を算出した後、セメントペーストの全質量のうち、セメントペーストとして回収したものに含まれるセメントペーストの質量割合をセメントペースト回収率として算出した。
【0034】
3.化学分析(CaO、Na2O、K2O)
蛍光X線分析(XRF)を行い、ファンダメンタルパラメータ法(FP法)による半定量分析を実施した。なお、蛍光X線分析装置として、ZSX PrimusII(リガク社製)を用いた。
【0035】
4.アルカリ等量(R2O)の分析
アルカリ等量(Na2Oeq:試料中の全アルカリの含有率)は、化学分析のCaO、Na2O及びK2Oの各質量割合に基づいて、下記式(ii)によって算出した。
【0036】
アルカリ等量(Na2Oeq)=Na2O+0.658K2O (ii)
〔式中、Na2Oは試料中の酸化ナトリウムの含有率(%)であり、K2Oは試料中の酸化カリウムの含有率 (%)である。〕
【0037】
製造例1
廃コンクリート塊をコーンクラッシャにて破砕し、破砕物を目開き5mmと0.6mmの篩で篩選別し、5mmオーバーの廃コンクリートと、0.6mmオーバーから5mmアンダーの廃コンクリートと、0.6mmアンダーの廃コンクリートとに分離した。
【0038】
実施例1
(破砕工程)
製造例1で得られた、0.6mmオーバーから5mmアンダーの廃コンクリートをジョークラッシャにて破砕した。
(比重選別工程)
製造例1で得られた0.6mmアンダーの廃コンクリートと、破砕工程で得られたすべての破砕物を混合した。次に、混合物をエアテーブル式比重選別装置に供給し、多孔板の下方から空気を吹き込んで比重選別し、重比重物、中間比重物及び軽比重物に分離するとともに、比重選別の際に発生するダストを吸引ファンで吸引して比重選別装置から排出し、吸引ファンで導かれたダストをバグフィルターで集塵した。なお、比重選別工程において、気流速度を
図2に基づいて1.5m/sに設定し、サイドスロープ及びエンドスロープの傾斜角をそれぞれ5°に設定し、多孔板の振動数を60Hzに設定した。
(回収工程)
比重選別工程で分離された軽比重物と、バグフィルターのろ布表面に付着した集塵物を混合し、混合物をセメントペーストとして回収した。回収したセメントペーストについて、セメントペースト含有率、CaO含有量、アルカリ等量(R
2O)を分析した。その結果を表1に示す。
【0039】
実施例2
(破砕工程)
製造例1で得られた、0.6mmオーバーから5mmアンダーの廃コンクリートをジョークラッシャにて破砕し、破砕物を目開き0.6mmの篩で篩選別し、0.6mmアンダーの廃コンクリートと、0.6mmオーバーの廃コンクリートとに分離した。
(比重選別工程)
製造例1で得られた0.6mmアンダーの廃コンクリートと、破砕工程で得られた0.6mmアンダーの廃コンクリートを混合した。次に、混合物を、実施例1と同様の操作により比重選別し、重比重物、中間比重物、軽比重物、集塵物を得た。なお、比重選別工程において、気流速度を
図2に基づいて0.5m/sに設定し、サイドスロープ及びエンドスロープの傾斜角をそれぞれ5°、多孔板の振動数を60Hzに設定した。
(回収工程)
比重選別工程で分離された軽比重物と、バグフィルターのろ布表面に付着した集塵物を混合し、混合物をセメントペーストとして回収した。回収したセメントペーストについて、セメントペースト含有率、CaO含有量、アルカリ等量(R
2O)を分析した。その結果を表1に示す。
【0040】
実施例3
(破砕工程・比重選別工程・回収工程)
実施例1と同様の操作により、粉砕工程、比重選別工程及び回収工程に供し、第1の軽比重物と、バグフィルターのろ布表面に付着した第1の集塵物を回収した。
(循環工程)
比重選別工程において分離された中間比重物を、ジョークラッシャに投入して破砕し、破砕物を再びジョークラッシャに再投入して破砕した。次いで、破砕物を実施例1と同様の操作により比重選別工程を行った後、比重選別工程で分離された第2の軽比重物と、バグフィルターのろ布表面に付着した第2の集塵物を回収した。
(回収工程)
第1及第2の軽比重物と、第1及び第2の集塵物を混合し、混合物をセメントペーストとして回収した。回収したセメントペーストについて、セメントペースト含有率、CaO含有量、アルカリ等量(R2O)を分析した。その結果を表1に示す。
【0041】
比較例1
実施例1と同様の操作により粒度調整工程、比重選別工程を行った後、回収工程において、集塵物を回収せず、軽比重物のみをセメントペーストとして回収した。回収したセメントペーストについて、セメントペースト含有率、CaO含有量、アルカリ等量(R2O)を分析した。その結果を表1に示す。
【0042】
比較例2
(破砕工程)
製造例1で得られた、0.6mmオーバーから5mmアンダーの廃コンクリートをジョークラッシャにて破砕した。破砕物と、製造例1で得られた、0.6mmアンダーの廃コンクリートを混合し、目開き0.3mmの篩で篩選別し、0.3mmアンダーの廃コンクリートと、0.3mmオーバーの廃コンクリートとに分離した。
(回収工程)
0.3mmアンダーの廃コンクリートをセメントペーストとして回収した。回収したセメントペーストについて、セメントペースト含有率、CaO含有量、アルカリ等量(R2O)を分析した。その結果を表1に示す。
【0043】
【0044】
表1から、所定の粒度の廃コンクリートを破砕し、破砕物を所定の比重選別に供して重比重物と、中間比重物と、軽比重物と、集塵物とに分離し、軽産物及び集塵物を回収することで、廃コンクリートから骨材の混入の抑えられた高品位のセメントペーストを収率よく回収できることがわかる。