(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141753
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】アスファルト混合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
E01C 7/18 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
E01C7/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053568
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】590002482
【氏名又は名称】株式会社NIPPO
(74)【代理人】
【識別番号】110003890
【氏名又は名称】弁理士法人SIPPs
(72)【発明者】
【氏名】小宮 耕介
(72)【発明者】
【氏名】人見 信男
(72)【発明者】
【氏名】石垣 勉
(72)【発明者】
【氏名】神尾 学
【テーマコード(参考)】
2D051
【Fターム(参考)】
2D051AA05
2D051AD07
2D051AG01
2D051AH02
(57)【要約】
【課題】本発明は、十分な品質が得られやすい新規アスファルト及び再生骨材を含むアスファルト混合物の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のアスファルト混合物の製造方法は、分離機によって、旧アスファルトを含む再生骨材の表面から旧アスファルトを剥離させる、旧アスファルトの分離工程(S2)、及び前記分離工程後の再生骨材と、新規アスファルトとを混合する、新規アスファルトの混合工程(S6)を含む。好ましくは、新規アスファルトは、フォームドアスファルトであり、また前記分離工程(S2)の前に、母材である再生骨材を分級して比較的粒径の大きい第一の再生骨材と比較的粒径の小さい第二の再生骨材とに分級する第一の分級工程(S1)を含み、前記分離工程(S2)を第一の再生骨材に対して行う。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分離機によって、旧アスファルトを含む再生骨材の表面から旧アスファルトを剥離させる、旧アスファルトの分離工程、及び
前記分離工程後の再生骨材と新規アスファルトとを混合する、新規アスファルトの混合工程
を含む、アスファルト混合物の製造方法。
【請求項2】
前記新規アスファルトが、フォームドアスファルトである、請求項1に記載のアスファルト混合物の製造方法。
【請求項3】
前記分離工程の前に、母材である再生骨材を分級して比較的粒径の大きい第一の再生骨材と比較的粒径の小さい第二の再生骨材とに分級する第一の分級工程を含み、前記分離工程を前記第一の再生骨材に対して行う、請求項2に記載のアスファルト混合物の製造方法。
【請求項4】
前記新規アスファルトの混合工程の前に、前記分離工程後の再生骨材を比較的粒径の大きい第三の再生骨材と比較的粒径の小さい第四の再生骨材とに分級する第二の分級工程を含む、請求項3に記載のアスファルト混合物の製造方法。
【請求項5】
前記新規アスファルトの混合工程を、前記第三の再生骨材を用いて行う、請求項4に記載のアスファルト混合物の製造方法。
【請求項6】
前記第二の再生骨材を、前記第四の再生骨材と混合する、骨材混合工程を含む、請求項4に記載のアスファルト混合物の製造方法。
【請求項7】
前記骨材混合工程においてさらに再生用添加剤を混合してアスファルトモルタルを調製する、アスファルトモルタルの調製工程を含み、前記新規アスファルトの混合工程において、前記アスファルトモルタルをさらに混合する、請求項6に記載のアスファルト混合物の製造方法。
【請求項8】
前記再生用添加剤が、脂肪酸化合物を含む、請求項7に記載のアスファルト混合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規アスファルト及び再生骨材を含むアスファルト混合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アスファルト舗装には、砕石や砂等の骨材とバインダとしてのアスファルトを混合した アスファルト混合物が用いられる。
【0003】
近年、地球温暖化防止のための取り組みとして、アスファルト混合物の製造温度、及び舗設時の施工温度の低減(中温化)が求められる。また、一般的な製造温度で混合し、一般的な施工温度で施工したときのアスファルト舗装の密度(基準密度)に対して、施工温度を低くしたときの密度の割合(締固め度)が同等以上であることが求められる。
【0004】
中温化技術の一つに、加熱したアスファルトに水を混合して発泡させたフォームドアスファルトを用いることによって、製造温度及び施工温度を低下させる技術がある。例えば、特許文献1では、フォームドアスファルトに消泡剤を含有させて泡を微細化することで、気泡の発泡時間を延長する方法が提案されている。
【0005】
また、近年、アスファルト舗装の表層と基層に施工されたアスファルト混合物の廃材を破砕して再利用する再生骨材が製造されている。この再生骨材は、アスファルト混合物の材料として用いられ、新規のアスファルト及び新規の骨材とを混ぜ合わせてアスファルト混合物としてアスファルト舗装道路に広く施工されている。
【0006】
例えば、従来のアスファルト混合物の製造方法では、
図5に示すように、再生骨材100をドライヤ101で加熱する。そして、加熱した再生骨材100を、加熱した新規の細骨材102及び粗骨材103、新規のアスファルト104と共にミキサー105に投入して攪拌混合することでアスファルト混合物を製造し、再生アスファルト舗装として路面に敷設している。
【0007】
再生骨材100は廃材となった旧骨材の表面に旧アスファルトが被覆されている。アスファルト舗装の再生骨材100を繰り返して再生することにより、旧アスファルトも製造時の再加熱や使用中の紫外線等による劣化を繰り返し発生するため、性能が悪い再生骨材が近年増加している。これにより、再生骨材を用いたアスファルト混合物の性能も低下する問題が生じる。
【0008】
この問題を改善するため、例えば特許文献2に記載された再生骨材は、油分が付着した表面を回転ドラム内で熱風、放射熱で加熱することで燃焼や劣化を促して旧アスファルトに付着した油分量を少なくする。そして、その後の加熱工程において、再生骨材に再生用添加剤を添加して新規のアスファルトと混合することで、アスファルト混合物の性能を高めるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第6026035号公報
【特許文献2】特開2009-102883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、再生骨材を用いた従来のアスファルト混合物は、十分な品質が得られないことがあった。そこで、本発明は、十分な品質が得られやすい新規アスファルト及び再生骨材を含むアスファルト混合物の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るアスファルト混合物の製造方法は、分離機によって、旧アスファルトを含む再生骨材の表面から旧アスファルトを剥離させる、旧アスファルトの分離工程、及び前記分離工程後の再生骨材と、新規アスファルトとを混合する、新規アスファルトの混合工程を含むことを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、分離機によって再生骨材の表面の旧アスファルトを剥離させることで、旧アスファルトの量を低減させることができ、旧アスファルトの量を低減させた分だけ新規アスファルトの量を増加させることができる。
【0013】
すなわち、再生骨材には旧アスファルトが含まれるため、再生骨材を用いてアスファルト混合物を製造するためには、新規に加えるアスファルトの量を、再生骨材に含まれる旧アスファルトの量に応じて減らす必要がある。それに対して、本発明の方法では、新規アスファルトの量を増やすことができ、かつ/又は旧アスファルトを効果的な再生させることができるため、十分な品質のアスファルト混合物を得やすい。
【0014】
本発明の方法において、新規アスファルトが、フォームドアスファルトであることが好ましい。
【0015】
従来、フォームドアスファルトを用いたアスファルト混合物においても、再生骨材を利用する検討がされてきた。しかしながら、フォームドアスファルトを用いたアスファルト混合物において再生骨材を利用した場合、発泡状態の維持がしづらく製造が困難であった。
【0016】
具体的には、フォームドアスファルトを用いたアスファルト混合物を製造する際に、再生骨材を用いる場合には、フォームドアスファルトとして加える新規アスファルトの量を減らす必要があり、フォームドアスファルトが少なくなりすぎる場合があった。それに対して本発明の製造方法においては、再生骨材に含まれる旧アスファルトの量を減らすことができるため、その分だけフォームドアスファルトを多く含有させることができ、製造が比較的容易で、かつ十分な品質が得られやすいフォームドアスファルト及び再生骨材を含むアスファルト混合物を得ることができる。
【0017】
本発明の方法において、前記分離工程の前に、母材である再生骨材を分級して比較的粒径の大きい第一の再生骨材と比較的粒径の小さい第二の再生骨材とに分級する第一の分級工程を含み、前記分離工程を第一の再生骨材に対して行うことが好ましい。
【0018】
母材である再生骨材から第一の再生骨材を分離機で分級することで、比較的粒径の大きい第一の再生骨材を骨材として再利用することができる。比較的粒径の大きい第一の再生骨材は、旧アスファルトを剥離させやすく、また単位重量当たりに含まれる旧アスファルトの量が、比較的粒径の小さい第二の再生骨材と比較して少ないため、第一の再生骨材を分離機に掛けてフォームドアスファルトに混合することが好ましい。
【0019】
本発明の方法において、前記新規アスファルトの混合工程の前に、前記分離工程後の再生骨材を比較的粒径の大きい第三の再生骨材と比較的粒径の小さい第四の再生骨材とに分級する第二の分級工程を含むことが好ましい。また、前記新規アスファルトの混合工程を、前記第三の再生骨材を用いて行うことが好ましい。
【0020】
単位重量当たりに含まれる旧アスファルトの量が少ない第三の再生骨材を用いると、より多くの量のフォームドアスファルトを新規アスファルトとして混合できるため、より発泡状態の維持がしやすく、より品質の高いアスファルト混合物を得ることができる。
【0021】
本発明において、前記第二の再生骨材を、前記第四の再生骨材と混合する、骨材混合工程を含むことが好ましい。
【0022】
粒径の比較的小さい第二の再生骨材及び第四の再生骨材を混合すると、粒径が同程度であるため流動性が高く、また再生用添加剤を混合する場合には旧アスファルトの再生効率を高めることができる。これらの実質的に全ての量又は一部の量を、分離機によって旧アスファルトを剥離した他の骨材とともに、フォームドアスファルトと混合させることができる。
【0023】
本発明において、前記骨材混合工程においてさらに再生用添加剤を混合するアスファルトモルタルの調製工程を含み、前記新規アスファルトの混合工程において、前記アスファルトモルタルをさらに混合することが好ましい。
【0024】
第二の再生骨材及び第四の再生骨材は、粒径が小さく、単位重量あたりに比較的多くの旧アスファルトを含むため、再生用添加剤をこれらの再生骨材に用いた場合には、再生用添加剤が非常に効果的に作用する。
【0025】
本発明において、前記再生用添加剤が、脂肪酸化合物を含むことが好ましい。
【0026】
再生用添加剤として脂肪酸化合物を用いると、再生骨材の再生効果が非常に高くなることが分かった。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、製造が比較的容易で、かつ十分な品質が得られやすいフォームドアスファルト及び再生骨材を含むアスファルト混合物の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の一実施形態によるアスファルト混合物の製造方法のフローを示す模式図である。
【
図3】旧アスファルトを含む再生骨材に基づいてアスファルト混合物を製造する工程を示すフロー図である。
【
図4】実施形態によるアスファルト混合物の製造方法の試験例を示す図である。
【
図5】従来例によるアスファルト混合物の製造装置と製造方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態によるアスファルト混合物の製造装置及び製造方法について
図1から
図4により説明する。
【0030】
先ず、アスファルト混合物Aを製造するために添加する再生骨材として、既設のアスファルト舗装の補修時や打ち換え時等に掘り起こしたアスファルト廃材を適当な大きさに破砕して再生骨材を製造する。破砕された再生骨材は、適宜範囲の粒径、例えば粒径(R)13mm~0mmの範囲を有する母材とされている。なお、本明細書において、粒径は、骨材の粒径として本分野で通常用いられている、ふるい分けによる粒径をいう。
【0031】
アスファルト混合物Aの製造装置1について、
図1~
図3により説明する。
【0032】
図1は本発明の実施形態によるアスファルト混合物Aの製造装置1を示すものである。アスファルト混合物Aの製造装置1において、旧アスファルトを含む再生骨材を母材として、母材のアスファルト再生骨材Bは、篩2からなる分級装置によって粒径2mm超(例えば、粒径13mm以下2mm超)、即ち粒径2mm超の第一の再生骨材(粗骨材)aと、粒径2mm以下(例えば、粒径2mm以下0mm超)の第二の再生骨材(細骨材)bとに分級するものとする。
【0033】
この分級は、粒径2mmを境にして第一の再生骨材と第二の再生骨材とを分けているが、境の粒径は2mmである必要はなく、例えば、1mm、3mm、4mm、5mm、又は6mm等であってもよい。
【0034】
なお、境の粒径は2mmである場合に、第一の再生骨材aは粒径2mm以下の範囲のものが含まれていてもよい。第一の再生骨材aには旧アスファルトが例えば3質量%程度含まれ、第二の再生骨材bには旧アスファルトが例えば7質量%程度含まれている。
【0035】
第一の再生骨材aは、整粒機3と分級手段である篩4を備えた分離装置5において処理され、再度分級される。整粒機3は第一の再生骨材aを投入してその外周面に位置する旧アスファルトの一部をはぎ取る装置である。整粒機3は、
図2に示すように、第一の再生骨材aが原料投入口7から開口8に投入され、回転するローター9によって適宜の速度で回転させられる。第一の再生骨材aは、回転するローター9の吐出口9aを介して遠心力で破砕室10に飛散させられる。
【0036】
飛散させられた第一の再生骨材aは破砕室10の内壁にデッドストックされ、次に飛散する第一の再生骨材aと衝突することで、表面の旧アスファルトが破砕され、剥離されて粒径が球体に近づく形状に調整される。剥離された旧アスファルトは小径の粒体や粉体になる。また、第一の再生骨材aは表面の旧アスファルトだけでなく骨材部分も一部破砕されて石粉等として分離することがある。整粒機3を通すことで、第一の再生骨材aは表面の旧アスファルトの一部が破砕され、或いは剥離され、はく奪されることで、分離される。
【0037】
整粒機3によって第一の再生骨材aを破砕することなく、表面の旧アスファルトの一部を主に分離させるために、ローター9は例えば周速10~60m/秒の範囲で適宜な周速に調整される。好ましくは、整粒機3は周速20~50m/秒程度に設定される。低速から高速までの適宜の速度を選択することで、第一の再生骨材aの破砕割合を調整できる。整粒機3にかける時間が長くなると例えば粒径2mm以下の第四の再生骨材(細骨材)bbが相対的に増大するので、必要に応じて稼働時間を調整する必要がある。
【0038】
整粒機3を通過した第一の再生骨材aは、篩4によって再度分級されて、粒径2mm超の第三の再生骨材(粗骨材)abと、粒径2mm以下の第四の再生骨材(細骨材)bbとに分級される。第三の再生骨材abと第四の再生骨材bbのアスファルト量は例えば2~8質量%、好ましくは3~6質量%とされている。
【0039】
また、アスファルト混合物Aの製造装置1は、新規アスファルトcを収容して加熱可能なアスファルト貯蔵サイロ13と、新規アスファルトcと再生用添加剤dと第二の再生骨材bと第四の再生骨材bbを加熱混合するための混合釜14とを備えている。混合釜14は内部に攪拌羽根15が内蔵されている。なお、再生用添加剤dに代えて、或いは再生用添加剤dと共に施工性改善剤eを添加してもよい。
【0040】
本発明において、混合釜14で混合されるアスファルトは、例えばフォームドアスファルトであるが、フォームドアスファルトの発泡は混合釜14で行ってもよく、又はサイロ13若しくはサイロ13と混合釜14とを繋ぐ供給管中に設置した発泡装置等で行ってもよい。フォームドアスファルトは、周知の方法によって製造することができ、例えば、加熱したアスファルトに、水、及び任意に発泡補助剤を添加し、アスファルトを発泡させて得ることができる。
【0041】
混合釜14でフォームドアスファルトを調製する場合には、新規アスファルトcと水等を混合して混合釜14でフォームドアスファルトを調製してから、再生骨材等を添加することができる。また、混合釜14にフォームドアスファルトを投入する場合には、そのフォームドアスファルトに再生骨材等を添加することができる。
【0042】
なお、サイロ13で発泡させたフォームドアスファルトを、混合窯14を介さずにミキサー18へ投入し、粗骨材及びアスファルトモルタルと混合しても良い。
【0043】
また、製造装置1には、混合釜14で攪拌されて製造されるアスファルトモルタルと第三の再生骨材abとを攪拌羽根19によって攪拌混合するミキサー18が設けられている。ミキサー18によってアスファルト混合物Aが製造される。なお、本明細書において、アスファルトモルタルとは、粗骨材を混合する前のアスファルト混合物をいう。
【0044】
次に、アスファルト混合物Aの製造装置1によるアスファルト混合物Aの製造方法について、
図1及び
図3に示すブロックを用いたフロー図により説明する。
【0045】
図3において、アスファルト再生骨材Bは篩2によって、粒径2mm超の第一の再生骨材(粗骨材)aと粒径2mm以下の第二の再生骨材(細骨材)bとに分級する(ステップS1:第1の分級工程)。なお、第一の再生骨材aには粒径2mm以下のものが含まれていてもよい。第一の再生骨材aには旧アスファルトが例えば3質量%程度含まれ、第二の再生骨材bには旧アスファルトが例えば7質量%程度含まれている。
【0046】
つぎに
図3において、第一の再生骨材aは、整粒機3と篩4を備えた分離装置5において処理され分級される。先ず、第一の再生骨材aを整粒機3に投入して表面の旧アスファルト部分を破砕し剥離させる(ステップS2:分離工程)。例えば、第一の再生骨材aに尖ったアスファルト部分があると割れや欠け等を生じ易いため、整粒機3に投入して尖った部分や角等を剥離させることで粒径をより滑らかなものに整えることができる。剥離された表面の旧アスファルトは粉体や微小な粒体となって第一の再生骨材aから分離し、第一の再生骨材aは角部や尖った部分等が削れて滑らかな曲面形状に近づくよう整粒化される。また、表面に露出する骨材の一部は、旧アスファルトと共に破砕されて細骨材や石粉等となることがある。
【0047】
整粒機3で破砕処理されたこれら第一の再生骨材aは篩4で再度分級され(ステップS3:第2の分級工程)、旧アスファルトがはく奪された粒径2mm超の第三の再生骨材abと、粒径2mm以下の第四の再生骨材bbとに分級される。この場合、第三の再生骨材abは第一の再生骨材aよりも旧アスファルトの含有量が少なくなっている。
【0048】
次に、混合釜14において、それぞれ同程度(粒径2mm以下)に分級された第二の再生骨材bと第四の再生骨材bbを混合する(ステップS4:骨材混合工程)。この場合、第四の再生骨材bbは第一の再生骨材aから旧アスファルトが整粒機3で剥離されているため旧アスファルトの粉体等が含まれている。そのため、第二の再生骨材bと第四の再生骨材bbの混合物は粒度が細かく流動性が向上し、アスファルトの再生効率が高い。また、これらは比較的多くの旧アスファルトを含むため、再生用添加剤を用いた場合に効果的に旧アスファルトの再生をすることができる。一方で、この分級して得られた第四の再生骨材bbの全量を用いずに、最終的なアスファルト混合物を製造してもよい。
【0049】
次に、混合釜14内にアスファルト貯蔵サイロ13から、例えば新規アスファルトcであるフォームドアスファルトを投入して第二の再生骨材b及び第四の再生骨材bbの混合物と混合する(ステップS5:アスファルトモルタルの調製工程)。これにより、流動性が高く高品質のアスファルトモルタルを製造できる。上述のように、フォームドアスファルトは、再生骨材の混合前に、混合釜14で調製してもよく、また供給管中に設置した発泡装置等で調製してから混合釜14に混合してもよい。
【0050】
新規アスファルトcに加えて、再生用添加剤d及び施工性改善剤eの一方か両方を添加して混合することもできる。これらの油性成分が追加されることで粒度が細かくて柔軟性と流動性の高い良質なアスファルトモルタルを製造できる(ステップS5)。
【0051】
母材であるアスファルト再生骨材Bの旧アスファルトは経年劣化で硬くなっているが、第二の再生骨材b及び第四の再生骨材bbの混合物は粒度の細かい旧アスファルトや砂や石粉等を含んでいる。そのため、新規アスファルトc、再生用添加剤d及び/又は施工性改善剤eを混合させることで、粒度が細かく流動性と柔軟性を高めた良質なアスファルトモルタルを製造できる。これを製品として、或いは他の材料を添加することで、舗装工事や補修工事等に利用することができる。
【0052】
再生用添加剤としては、本分野で周知のものを使用することができるが、特に脂肪酸化合物を含むものが好ましい。
【0053】
脂肪酸化合物としては、下記式(I)で表される化合物(以下、化合物(I)ともいう。)が好ましい。
R11-COO-(AO)m-R12・・・・(I)
(式中、R11は置換基を有してもよい炭素数1~24の直鎖状、分枝状もしくは環状の炭化水素基、R12は水素原子又はメチル基、AOは炭素数2~4の直鎖もしくは分枝状のオキシアルキレン基、mはオキシアルキレン基の付加モル数を表し0又は1~30の数である。)
式(II)において、R11の炭素数は6~24が好ましく、8~20がより好ましく、10~18がさらに好ましく、12~16が特に好ましい。
式(II)において、mは0又は1~25が好ましく、0又は1~20がより好ましく、0又は1~15がさらに好ましい。
式(II)において、AOはオキシエチレン基が好ましい。
【0054】
脂肪酸化合物としては、例えばヨウ素価が50~110、60~100、又は70~90の脂肪酸化合物を用いることができる。これらは、複数の脂肪酸化合物を組み合わせであってもよく、この場合、上記のヨウ素価については、複数の化合物が組み合わせられた脂肪酸化合物の値をいう。なお、脂肪酸化合物のヨウ素価は、JIS K0070-1992に準拠して測定したヨウ素価である。
【0055】
式(I)で表される脂肪酸化合物としては、脂肪酸および脂肪酸アルキルエステル、脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステルが好ましく、これらを単独で、あるいはこれらから選ばれる2種以上を混合して使用することができる。
【0056】
脂肪酸化合物の分子量(g/mol)は、例えば100以上、150以上、200以上、250以上、270以上、又は280以上であってもよく、500以下、450以下、400以下、350以下、330以下、又は320以下であってもよい。脂肪酸化合物が、複数の化合物の組み合わせで用いられる場合、これらの分子量は、重量平均分子量とすることができる。
【0057】
化合物(I)としては、脂肪酸:R11COOH、脂肪酸メチルエステル:R11COOCH3、脂肪酸(ポリ)オキシエチレンメチルエステル:R11COO(CH2CH2O)mCH3、(ポリ)オキシエチレン脂肪酸エステル:R11COO(CH2CH2OmH等が例示できる。
【0058】
具体的な例としては、パルミチン酸、パルミチン酸メチルエステル、パルミチン酸(ポリ)オキシエチレンメチルエステル(平均付加モル数:1~15)、(ポリ)オキシエチレンパルミチン酸エステル(平均付加モル数:1~15)、ステアリン酸、ステアリン酸メチルエステル、ステアリン酸(ポリ)オキシエチレンメチルエステル(平均付加モル数:1~15)、(ポリ)オキシエチレンステアリン酸エステル(平均付加モル数:1~15)、オレイン酸、オレイン酸メチルエステル、オレイン酸(ポリ)オキシエチレンメチルエステル(平均付加モル数:1~15)、(ポリ)オキシエチレンオレイン酸エステル(平均付加モル数:1~15)、リノール酸、リノール酸メチルエステル、リノール酸(ポリ)オキシエチレンメチルエステル(平均付加モル数:1~15)、(ポリ)オキシエチレンリノール酸エステル(平均付加モル数:1~15)、リノレン酸、リノレン酸メチルエステル、リノレン酸(ポリ)オキシエチレンメチルエステル(平均付加モル数:1~15)、(ポリ)オキシエチレンリノレン酸エステル(平均付加モル数:1~15)等が挙げられる。
【0059】
次いで、製造されたアスファルトモルタルを混合釜14からミキサー18に投入すると共に、粒径2mm超の第三の再生骨材abをミキサー18に投入し、混合することでアスファルト混合物Aを製造する(ステップS6:新規アスファルトの混合工程)。第三の再生骨材abは旧アスファルトを僅かに含む粗骨材であり、高品質に製造されたアスファルトモルタルと混合することで、ひび割れしにくく疲労耐久性が高いアスファルト混合物Aを得られる。なお、アスファルト混合物Aの製造時に施工性改善剤を添加してもよい。
【0060】
ミキサー18内の攪拌羽根19によって所定時間攪拌されることで得られたアスファルト混合物Aは、例えばダンプトラック20に投下されてアスファルト舗装の施工現場に搬送される。或いは、現場でミキサー18から直接、アスファルト混合物Aを排出して施工してもよい。
【0061】
本発明においては、フォームドアスファルトを用いてアスファルト混合物を製造するため、ミキサー18内の温度は通常より低めの温度、すなわち160℃以下、155℃以下、150℃以下、又は140℃以下で、100℃以上、120℃以上、130℃以上、又は140℃以上の温度とすることができる。
【0062】
上述したように、本実施形態によるアスファルト混合物Aの製造方法によれば、母材であるアスファルト再生骨材Bを分級した比較的粒径の大きい第一の再生骨材aから整粒機3によって表面の旧アスファルトを一部引き剥がすことができる。これによって、粒径2mm超の第三の再生骨材abと、粒径2mm以下の微小粒径の旧アスファルトを多く含む第四の再生骨材bbとに分級することができる。そのため、第四の再生骨材bbを第二の再生骨材bと混合することで柔軟性と耐久性の高いアスファルトモルタルを製造できる。
【0063】
更に、旧アスファルトをほとんど含まない第三の再生骨材abと混合することで柔軟性と疲労耐久性の高い高品質のアスファルト混合物Aを製造できる。
【0064】
次に上述した実施形態によるアスファルト混合物Aの製造方法について実施した試験例を
図4及び表1により説明する。
【0065】
図4において、母材としての再生骨材Bは例えば粒径13mm~0mmであり、含有するアスファルト量は5.4質量%とした。ここでは、分級の境となる粒径を2mmではなく5mmとし、この再生骨材を篩2で粒径の大きい第一の再生骨材a(粒径13mm~5超mm)と粒径の小さい第二の再生骨材b(粒径5mm~0mm)とに分級した。粒径の大きい第一の再生骨材aは40質量%、粒径の小さい第二の再生骨材bは60質量%である。第二の再生骨材bの量に占める旧アスファルト量の比率は6.5質量%、全体の再生骨材に対しては3.9質量%であり、分級前の再生骨材の旧アスファルト量は5.4質量%であるため、その含有比率は72%になる。
【0066】
また、粒径の大きい第一の再生骨材aに占める旧アスファルト量は3.8質量%、全体の再生骨材に対しては1.5質量%である。第一の再生骨材aを分離装置5の整粒機3に投入して剥離し、更に篩4で粒径の大きい第三の再生骨材ab(粒径13mm~5超mm)と粒径の小さい第四の再生骨材bb(粒径5mm~0mm)とに分級した。しかも、母材のアスファルト再生骨材Bに対する分離装置5の篩4で分級した粒径の小さい第二の再生骨材b及び第四の再生骨材bb(粒径5mm~0mm)のアスファルト量の比率は4.7質量%/5.4質量%×100=87%である。
【0067】
その結果、粒径の大きいものは25質量%、粒径の小さいものは75質量%であった。粒径の大きいものは旧アスファルト含有量が2.7質量%、アスファルト再生骨材B全体に対して旧アスファルト量は0.7質量%であった。粒径の小さいものは旧アスファルト含有量が6.3%、再生骨材全体に対して旧アスファルト量は4.7質量%であった。
【0068】
この試験例におけるアスファルト量の変化を表で示すと、下記の表1に示すものになった。アスファルト量はAs量で表示している。
【0069】
【0070】
なお、本発明によるアスファルト混合物Aの製造方法は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り、上記実施形態の構成を適宜置換したり変更したりすることができる。以下に、本実施形態によるアスファルト混合物Aとその製造方法の変形例について説明するが、上述した実施形態と同一または同様なもの等については同一の符号を用いて説明する。
【0071】
例えば、本実施形態によるアスファルト混合物の製造方法において、製造されたアスファルトモルタルは舗装面の表面処理材として使用することができる。これによって舗装表面の延命化を低廉に図ることができる。アスファルトモルタルはアスファルト混合物に含まれる。
【0072】
また、上述した実施形態では、第一の再生骨材aを整粒機3によって表面の旧アスファルトを剥離し分離したが、旧アスファルトを分離する手段として、整粒機3に限定されることなく破砕機やクラッシャー等、適宜の分離機を採用することができる。
【0073】
また、本実施形態では分級手段としての篩2、4によって母材であるアスファルト再生骨材Bや第一の再生骨材aを、粒径の比較的大きい再生骨材として粒径13mm~2mm超の粒径のものと、粒径の比較的小さい再生骨材として2mm~0mmの粒径のものに分級した。しかし、分級の粒度分けは上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜の粒径の再生骨材に分級することができる。
【符号の説明】
【0074】
1 アスファルト混合物の製造装置
2、4 篩
3 整粒機
5 分離装置
13 アスファルト貯蔵サイロ
14 混合釜
18 ミキサー
A アスファルト混合物
a 第一の再生骨材
B アスファルト再生骨材
b 第二の再生骨材
ab 第三の再生骨材
bb 第四の再生骨材
c 新規アスファルト
d 再生用添加剤
e 施工性改善剤