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特開2024-141767交通状況判定装置、交通状況判定方法、およびコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024141767
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】交通状況判定装置、交通状況判定方法、およびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/01 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
G08G1/01 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053587
(22)【出願日】2023-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】504126112
【氏名又は名称】住友電工システムソリューション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123021
【弁理士】
【氏名又は名称】渥美 元幸
(74)【代理人】
【識別番号】100126538
【弁理士】
【氏名又は名称】嶺 直道
(72)【発明者】
【氏名】石井 宏顕
(72)【発明者】
【氏名】坂田 佳隆
(72)【発明者】
【氏名】横手 悟
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB13
5H181DD04
5H181FF10
5H181FF13
5H181FF27
5H181MC14
5H181MC27
(57)【要約】
【課題】道路リンクを走行する車両の進行方向間で発生する渋滞状況の差異を早期に判定することのできる交通状況判定装置を提供する。
【解決手段】交通状況判定装置は、車両のプローブ情報を取得するプローブ情報取得部と、前記プローブ情報に基づいて、旅行時間の算出に用いられる道路上の単位区間である道路リンクよりも短い距離の間隔で所定の対象区間を分割することにより得られる1以上のサブ区間の各々について、前記車両の当該サブ区間における走行速度を算出する速度算出部と、前記走行速度に基づいて、前記対象区間における前記車両の速度特性を決定する速度特性決定部と、前記速度特性に基づいて、前記対象区間を走行する前記車両の進行方向の間で渋滞状況に差異が生じているか否かを判定する差異判定部とを備える。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のプローブ情報を取得するプローブ情報取得部と、
前記プローブ情報に基づいて、旅行時間の算出に用いられる道路上の単位区間である道路リンクよりも短い距離の間隔で所定の対象区間を分割することにより得られる1以上のサブ区間の各々について、前記車両の当該サブ区間における走行速度を算出する速度算出部と、
前記走行速度に基づいて、前記対象区間における前記車両の速度特性を決定する速度特性決定部と、
前記速度特性に基づいて、前記対象区間を走行する前記車両の進行方向の間で渋滞状況に差異が生じているか否かを判定する差異判定部とを備える、交通状況判定装置。
【請求項2】
前記速度特性決定部は、前記対象区間に含まれる所定の定義区間内の各前記サブ区間における前記走行速度のうちの上位速度の速度範囲である高速度範囲および下位速度の速度範囲である低速度範囲を、前記速度特性として決定し、
前記差異判定部は、前記高速度範囲の幅および前記低速度範囲の幅の差に基づいて、前記対象区間を走行する前記車両の進行方向の間で渋滞状況に差異が生じているか否かを判定する、請求項1に記載の交通状況判定装置。
【請求項3】
前記対象区間を走行する前記車両の進行方向の間で渋滞状況に差異が生じている判定された場合に、当該対象区間に対応して予め定められた進行方向において渋滞が生じていると判定する渋滞方向判定部をさらに備える、請求項1または請求項2に記載の交通状況判定装置。
【請求項4】
前記速度特性決定部は、前記走行速度に基づいて、前記対象区間における上位速度の速度分布である高速度分布および前記対象区間における下位速度の速度分布である低速度分布を、前記速度特性として決定し、
前記差異判定部は、前記高速度分布および前記低速度分布に基づいて、前記対象区間を走行する前記車両の進行方向の間で渋滞状況に差異が生じているか否かを判定する、請求項1に記載の交通状況判定装置。
【請求項5】
前記交通状況判定装置は、前記高速度分布および前記低速度分布の各々に基づいて、前記車両の渋滞末尾位置を決定する渋滞末尾位置決定部をさらに備え、
前記差異判定部は、前記高速度分布に基づいて決定された渋滞末尾位置および前記低速度分布に基づいて決定された渋滞末尾位置に基づいて、前記対象区間を走行する前記車両の進行方向の間で渋滞状況に差異が生じているか否かを判定する、請求項4に記載の交通状況判定装置。
【請求項6】
前記高速度分布および前記低速度分布を表示させる表示制御部をさらに備える、請求項4に記載の交通状況判定装置。
【請求項7】
前記高速度範囲および前記低速度範囲を表示させる表示制御部をさらに備える、請求項2に記載の交通状況判定装置。
【請求項8】
車両のプローブ情報を取得するステップと、
前記プローブ情報に基づいて、旅行時間の算出に用いられる道路上の単位区間である道路リンクよりも短い距離の間隔で所定の対象区間を分割することにより得られる1以上のサブ区間の各々について、前記車両の当該サブ区間における走行速度を算出するステップと、
前記走行速度に基づいて、前記対象区間における前記車両の速度特性を決定するステップと、
前記速度特性に基づいて、前記対象区間を走行する前記車両の進行方向の間で渋滞状況に差異が生じているか否かを判定するステップとを含む、交通状況判定方法。
【請求項9】
コンピュータを、
車両のプローブ情報を取得するプローブ情報取得部、
前記プローブ情報に基づいて、旅行時間の算出に用いられる道路上の単位区間である道路リンクよりも短い距離の間隔で所定の対象区間を分割することにより得られる1以上のサブ区間の各々について、前記車両の当該サブ区間における走行速度を算出する速度算出部、
前記走行速度に基づいて、前記対象区間における前記車両の速度特性を決定する速度特性決定部、および、
前記速度特性に基づいて、前記対象区間を走行する前記車両の進行方向の間で渋滞状況に差異が生じているか否かを判定する差異判定部として機能させるためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、交通状況判定装置、交通状況判定方法、およびコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
道路上を走行する車両のプローブ情報を用いて、車両の旅行時間を算出するシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなシステムにおいては、道路ネットワークを、交差点などのノードと、隣接するノード間を接続する道路リンクにより表現し、各道路リンクを通過した車両の旅行時間(以下、「リンク旅行時間」という)を算出する。所定時間幅内に道路リンクを通過した複数の車両のリンク旅行時間の平均値を平均リンク旅行時間として算出する。出発地から目的地までの間に車両が通過する予定の全道路リンクの平均リンク旅行時間を合計することにより、車両が現時刻に出発地を出発すると仮定した場合の出発地から目的地までの旅行時間(以下、「行程旅行時間」という)を推測することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-101504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のシステムでは、車両が道路リンクの上流側のノードを通過してから下流側のノードを通過し終えた時点で当該道路リンクのリンク旅行時間が算出される。このため、各道路リンクのリンク旅行時間は、現在の道路リンクの渋滞等の交通状況を正確に反映しているとは限らない。例えば、車両が道路リンク上で発生した渋滞に巻き込まれたが、当該車両が道路リンクを通過し終えた時点においては渋滞が解消されているとする。この場合、算出されたリンク旅行時間は渋滞の影響を受けており、渋滞が解消している現在のリンク旅行時間よりも長くなる。
【0006】
また、道路リンク内に進行方向の異なる複数の車線が含まれている場合であっても、平均リンク旅行時間は車線ごとに算出されない。このため、進行方向間(車線間)で渋滞の程度に偏りが生じている場合であっても、渋滞の程度を考慮せずに平均リンク旅行時間が算出される。例えば、右折車線および直左折車線を含む道路リンクにおいて、右折車線が渋滞しており、直左折車線が渋滞していないとする。この場合、道路リンク走行後に右折する車両のリンク旅行時間は、道路リンク走行後に直進または左折する車両のリンク旅行時間に比べて長くなり、両者は明確に異なる。しかし、平均リンク旅行時間は、これらのリンク旅行時間を平均化した値となる。このため、行程旅行時間を正確に算出することができない。
【0007】
また、高速道路において、出口料金所の混雑を原因として出口に向かう走行車線に車両が滞留し、走行車線で渋滞が発生する場合がある。このような場合であっても、追越車線が渋滞していない場合には、進行方向間(車線間)で渋滞の程度に偏りが生じる。このため、上記と同様に行程旅行時間を正確に算出することができない。
【0008】
車両の進行方向間で渋滞状況の差異が生じていることが分かれば、平均旅行時間の補正などを行うことにより、行程旅行時間をより正確に算出することができる。
【0009】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであり、道路リンクを走行する車両の進行方向間で発生する渋滞状況の差異を早期に判定することのできる交通状況判定装置、交通状況判定方法、およびコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一態様に係る交通状況判定装置は、車両のプローブ情報を取得するプローブ情報取得部と、前記プローブ情報に基づいて、旅行時間の算出に用いられる道路上の単位区間である道路リンクよりも短い距離の間隔で所定の対象区間を分割することにより得られる1以上のサブ区間の各々について、前記車両の当該サブ区間における走行速度を算出する速度算出部と、前記走行速度に基づいて、前記対象区間における前記車両の速度特性を決定する速度特性決定部と、前記速度特性に基づいて、前記対象区間を走行する前記車両の進行方向の間で渋滞状況に差異が生じているか否かを判定する差異判定部とを備える。
【発明の効果】
【0011】
本開示によると、道路リンクを走行する車両の進行方向間で発生する渋滞状況の差異を早期に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本開示の実施形態に係る交通状況判定システムの構成を示すブロック図である。
図2図2は、交通状況判定装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図3図3は、渋滞方向推測情報の一例を示す図である。
図4図4は、道路上の渋滞状況の一例を示す図である。
図5図5は、道路リンクの一例を示す図である。
図6図6は、サブ区間の生成方法について説明するための図である。
図7図7は、渋滞監視対象区間に含まれるサブ区間ごとのプローブ車両の速度分布の一例を示す図である。
図8図8は、本開示の実施形態に係る交通状況判定装置の機能的な構成を示すブロック図である。
図9図9は、高速度範囲および低速度範囲を含む速度範囲の一例を示す図である。
図10図10は、渋滞末尾位置決定部によるプローブ車両の渋滞末尾位置の決定方法について説明するための図である。
図11図11は、交通状況判定装置が実行するプローブ情報収集処理の手順を示すフローチャートである。
図12図12は、交通状況判定装置が実行する交通状況判定処理の手順を示すフローチャートである。
図13図13は、渋滞推移決定処理(図12のステップS14)の詳細を示すフローチャートである。
図14図14は、渋滞推移決定処理(図12のステップS14)を実行することによる、延伸カウンタおよび解消カウンタのそれぞれの値の推移と、渋滞末尾位置決定部の判定結果との一例を示す図である。
図15図15は、速度範囲確認処理(図12のステップS21)の詳細を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[本開示の実施形態の概要]
最初に本開示の実施形態の概要を列記して説明する。
(1)本開示の一実施形態に係る交通状況判定装置は、車両のプローブ情報を取得するプローブ情報取得部と、前記プローブ情報に基づいて、旅行時間の算出に用いられる道路上の単位区間である道路リンクよりも短い距離の間隔で所定の対象区間を分割することにより得られる1以上のサブ区間の各々について、前記車両の当該サブ区間における走行速度を算出する速度算出部と、前記走行速度に基づいて、前記対象区間における前記車両の速度特性を決定する速度特性決定部と、前記速度特性に基づいて、前記対象区間を走行する前記車両の進行方向の間で渋滞状況に差異が生じているか否かを判定する差異判定部とを備える。
【0014】
この構成によると、道路リンクよりも短いサブ区間の単位で車両の走行速度が算出されるため、車両の走行速度から決定される速度特性は、最新の道路の渋滞状況を反映している。このため、進行方向間で渋滞状況に差異が生じている場合の車両の速度特性と、進行方向間で渋滞状況に差異が生じていない場合の車両の速度特性とのパターンを予め規定しておくことにより、速度特性から、道路リンクを走行する車両の進行方向間で発生する渋滞状況の差異を早期に判定することができる。
【0015】
(2)上記(1)において、前記速度特性決定部は、前記対象区間に含まれる所定の定義区間内の各前記サブ区間における前記走行速度のうちの上位速度の速度範囲である高速度範囲および下位速度の速度範囲である低速度範囲を、前記速度特性として決定し、前記差異判定部は、前記高速度範囲の幅および前記低速度範囲の幅の差に基づいて、前記対象区間を走行する前記車両の進行方向の間で渋滞状況に差異が生じているか否かを判定してもよい。
【0016】
高速度範囲の幅と、低速度範囲の幅との差が小さい場合には、所定の定義区間の速度のばらつきが小さく、当該差が大きい場合には、当該速度のばらつきが大きいと考えることができる。このため、速度のばらつきに応じて、車両の進行方向間で発生する渋滞状況の差異を判定することができる。
【0017】
(3)上記(1)または(2)において、前記対象区間を走行する前記車両の進行方向の間で渋滞状況に差異が生じている判定された場合に、当該対象区間に対応して予め定められた進行方向において渋滞が生じていると判定する渋滞方向判定部をさらに備えてもよい。
【0018】
この構成によると、渋滞が生じやすい進行方向が事前にわかっている場合には、即座に渋滞が生じている進行方向を判定することができる。
【0019】
(4)上記(1)において、前記速度特性決定部は、前記走行速度に基づいて、前記対象区間における上位速度の速度分布である高速度分布および前記対象区間における下位速度の速度分布である低速度分布を、前記速度特性として決定し、前記差異判定部は、前記高速度分布および前記低速度分布に基づいて、前記対象区間を走行する前記車両の進行方向の間で渋滞状況に差異が生じているか否かを判定してもよい。
【0020】
例えば、第1進行方向の車線で渋滞が発生していないものの、第2進行方向の車線で渋滞が発生している場合には、低速度分布と高速度分布との間の相違が多い。一方、第1進行方向の車線および第2進行方向の車線の双方で渋滞が発生している場合には、低速度分布と高速度分布との間の違いが少ない。よって、両分布を比較することにより、進行方向の間で渋滞状況に差異が生じているかを正確に判定することができる。
【0021】
(5)上記(4)において、前記高速度分布および前記低速度分布の各々に基づいて、前記車両の渋滞末尾位置を決定する渋滞末尾位置決定部をさらに備え、前記差異判定部は、前記高速度分布に基づいて決定された渋滞末尾位置および前記低速度分布に基づいて決定された渋滞末尾位置に基づいて、前記対象区間を走行する前記車両の進行方向の間で渋滞状況に差異が生じているか否かを判定してもよい。
【0022】
例えば、第1進行方向の車線で渋滞が発生していないものの、第2進行方向の車線で渋滞が発生し、渋滞が延伸している場合には、高速度分布に基づいて決定された渋滞末尾位置は上流側に移動しないものの、低速度分布に基づいて決定された渋滞末尾位置は上流側に移動する。一方、第1進行方向の車線および第2進行方向の車線の双方で渋滞が発生し、渋滞が延伸している場合には、高速度分布に基づいて決定された渋滞末尾位置および低速度分布に基づいて決定された渋滞末尾位置の双方が上流側に移動する。よって、2つの渋滞末尾位置から渋滞状況に差異が生じているかを正確に判定することができる。
【0023】
(6)上記(4)または(5)において、前記高速度分布および前記低速度分布を表示させる表示制御部をさらに備えてもよい。
【0024】
この構成によると、表示を見たユーザは、高速度分布に基づいて決定された渋滞末尾位置および低速度分布に基づいて決定された渋滞末尾位置を直感的に把握することができる。これにより、進行方向間で渋滞状況に差異が生じているか否かを直感的に把握することができる。
【0025】
(7)上記(2)において、前記高速度範囲および前記低速度範囲を表示させる表示制御部をさらに備えてもよい。
【0026】
この構成によると、表示を見たユーザは、高速度範囲および低速度範囲を直感的に把握することができる。これにより、所定の定義区間において速度のばらつきが生じているかを把握することができ、進行方向間で渋滞状況に差異が生じているか否かを直感的に把握することができる。
【0027】
(8)本開示の他の実施形態に係る交通状況判定方法は、車両のプローブ情報を取得するステップと、前記プローブ情報に基づいて、旅行時間の算出に用いられる道路上の単位区間である道路リンクよりも短い距離の間隔で所定の対象区間を分割することにより得られる1以上のサブ区間の各々について、前記車両の当該サブ区間における走行速度を算出するステップと、前記走行速度に基づいて、前記対象区間における前記車両の速度特性を決定するステップと、前記速度特性に基づいて、前記対象区間を走行する前記車両の進行方向の間で渋滞状況に差異が生じているか否かを判定するステップとを含む。
【0028】
この構成は、上述の交通状況判定装置における特徴的な処理をステップとして含む。このため、上述の交通状況判定装置と同様の作用および効果を奏することができる。
【0029】
(9)本開示の他の実施形態に係るコンピュータプログラムは、コンピュータを、車両のプローブ情報を取得するプローブ情報取得部、前記プローブ情報に基づいて、旅行時間の算出に用いられる道路上の単位区間である道路リンクよりも短い距離の間隔で所定の対象区間を分割することにより得られる1以上のサブ区間の各々について、前記車両の当該サブ区間における走行速度を算出する速度算出部、前記走行速度に基づいて、前記対象区間における前記車両の速度特性を決定する速度特性決定部、および、前記速度特性に基づいて、前記対象区間を走行する前記車両の進行方向の間で渋滞状況に差異が生じているか否かを判定する差異判定部として機能させる。
【0030】
この構成によると、コンピュータを、上述の交通状況判定装置として機能させることができる。このため、上述の交通状況判定装置と同様の作用および効果を奏することができる。
【0031】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下で説明する実施形態は、いずれも本開示の一具体例を示すものである。以下の実施形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定するものではない。また、以下の実施形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意に付加可能な構成要素である。また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。
【0032】
また、同一の構成要素には同一の符号を付す。それらの機能および名称も同様であるため、それらの説明は適宜省略する。
【0033】
〔交通状況判定システムの全体構成〕
図1は、本開示の実施形態に係る交通状況判定システムの構成を示すブロック図である。
交通状況判定システム1は、道路上の渋滞の状況を判定するシステムであり、交通状況判定装置2と、複数のプローブ車両3とを備える。
【0034】
プローブ車両3は、自動車またはオートバイなどの車両であり、自車両の位置、時刻(当該位置に存在した時刻)および方位を検出し、検出した自車両の位置、時刻および方位を含むプローブ情報を無線通信により送信する。なお、プローブ車両3の位置および時刻の変化からプローブ車両3の方位は算出可能である。このため、プローブ情報にプローブ車両3の方位が含まれていなくてもよい。また、プローブ情報は、プローブ車両3が検出可能または取得可能な他の情報を含んでいてもよい。例えば、プローブ情報は、プローブ車両3の速度、加速度、エンジン回転数、ブレーキの使用状況(例えば、ブレーキの強度、頻度、時間)を含んでいてもよい。
【0035】
プローブ車両3は、ネットワーク4の無線基地局4Aにプローブ情報を送信し、プローブ情報は、ネットワーク4を介して交通状況判定装置2に送信される。なお、プローブ車両3からのプローブ情報の送信方法は、これには限定されない。例えば、プローブ車両3は、ITS(Intelligent Transport Systems)スポット等の路側装置にプローブ情報を送信し、交通状況判定装置2は、路側装置を介してプローブ車両3から送信されたプローブ情報を収集してもよい。また、プローブ車両3は、通信機能を備える他の車両に対してプローブ情報を送信し、交通状況判定装置2は、当該他の車両を介してプローブ車両3から送信されたプローブ情報を収集してもよい。
【0036】
交通状況判定装置2は、複数のプローブ車両3からプローブ情報を受信し、受信したプローブ情報に基づいて、道路ネットワークに含まれる所定の渋滞監視対象区間における渋滞の状況を判定する。渋滞監視対象区間は、例えば、交通状況判定装置2の管理者が設定する。
【0037】
交通状況判定装置2には、表示装置2Aが接続されており、交通状況判定装置2は、表示装置2Aに、複数のプローブ車両3の速度特性等を表示させる。プローブ車両3の速度特性には、後述するプローブ車両3の速度分布およびプローブ車両3の速度範囲が含まれる。なお、交通状況判定装置2と表示装置2Aとはケーブルで直接接続される場合に限られず、交通状況判定装置2と表示装置2Aとがネットワーク4を介して接続されていてもよい。
【0038】
〔交通状況判定装置2のハードウェア構成〕
図2は、交通状況判定装置2のハードウェア構成を示すブロック図である。
交通状況判定装置2は、通信I/F(インタフェース)210と、入出力I/F220と、メモリ230と、プロセッサ240とを備える。通信I/F210、入出力I/F220、メモリ230およびプロセッサ240は、バス250を介して相互に接続される。
【0039】
通信I/F210は、交通状況判定装置2をネットワーク4に接続するための通信インタフェースであり、交通状況判定装置2は、通信I/F210を介して外部の装置と通信を行う。
【0040】
入出力I/F220は、キーボードまたはマウスなどの入力デバイス、および表示装置2Aなどの出力デバイスと、交通状況判定装置2とを接続するためのインタフェースである。
【0041】
メモリ230は、SRAM(Static RAM)またはDRAM(Dynamic RAM)などの揮発性のメモリ素子、フラッシュメモリ若しくはEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)などの不揮発性のメモリ素子、または、ハードディスクなどの磁気記憶装置などにより構成されている。
【0042】
メモリ230は、プロセッサ240で実行されるコンピュータプログラム231を記憶する。また、メモリ230は、コンピュータプログラム231の実行時に利用される渋滞方向推測情報232およびプローブ情報233などを記憶する。
【0043】
図3は、渋滞方向推測情報232の一例を示す図である。渋滞方向推測情報232は、道路リンクごとに渋滞が発生しやすい車両の進行方向を示す情報である。渋滞方向推測情報232は、リンク情報と渋滞方向の組からなる。リンク情報は道路リンクを特定するための情報であり、渋滞方向は渋滞が発生しやすい車両の進行方向を示す情報である。リンク情報において、「Ln(Na→Nb)」との表記は、上流側のノードNaから下流側のノードNbへ向かうリンクLnを示す。この場合、車両は、ノードNaからノードNbに向かって走行する。なお、進行方向の異なる同一のリンク「Ln(Nb→Na)」についても、同様に渋滞情報が定義される。
【0044】
例えば、ノードN1からノードN2に向かうリンクL1における渋滞方向は右折方向である。ノードN2からノードN3に向かうリンクL2における渋滞方向は直進方向である。ノードN4からノードN2に向かうリンクL3における渋滞方向は直進方向である。ノードN5からノードN2に向かうリンクL4における渋滞方向は左折方向である。
【0045】
再び図2を参照して、プロセッサ240は、CPU(Central Processing Unit)またはGPU(Graphics Processing Unit)などにより構成され、メモリ230に記憶されているコンピュータプログラム231を実行する。
【0046】
〔渋滞状況の判定方法の概要について〕
以下では、交通状況判定装置2による渋滞状況の判定方法の概要について説明する。
図4は、道路上の渋滞状況の一例を示す図である。
図4では、交差点N2(ノードN2)に向かう道路30、および道路30上を走行する車両5を模式的に示している。道路30は、直左折車線30Aおよび右折車線30Bからなる2車線の道路である。直左折車線30Aを走行する車両5は、交差点N2において直進または左折する。右折車線30Bを走行する車両5は、交差点N2において右折する。
【0047】
図4に示すように、右折車線30Bに車両5の列が発生しており、右折車線30Bが渋滞しているものとする。また、直左折車線30Aには車両5の列は発生しておらず、直左折車線30Aは渋滞していないものとする。
【0048】
上述したように、進行方向間(車線間)で渋滞の程度に偏りが生じている場合には、進行方向間で道路リンクのリンク旅行時間にも差が生じる。このため、出発地から目的地までの行程旅行時間を正確に算出することができない。なお、道路リンクとは、旅行時間の算出の際に用いられる道路上の区間の単位であり、一般的には、隣接する交差点間が1つの道路リンクとされる。ただし、交差点間の距離が長い場合等には、交差点間を複数の道路リンクで表現する場合もある。道路リンクは、道路ネットワークの管理者または交通状況判定装置2の管理者などにより事前に設定される。
【0049】
道路リンクを通過し終えた時点でしかリンク旅行時間を算出できない場合には、現在の道路リンクの渋滞等の交通状況を正確に反映しているとは限らない。
【0050】
そこで、交通状況判定装置2は、道路リンクを道路リンクの長さよりも短い距離の間隔で分割して複数のサブ区間を生成する。道路リンクの距離は、一般的には数百mから数kmである。このため、例えば、サブ区間の長さを50mとする。
【0051】
交通状況判定装置2は、サブ区間ごとにプローブ車両3のサブ区間走行時の走行速度を算出する。交通状況判定装置2は、算出したプローブ車両3の走行速度の速度特性から、交通状況判定装置2の進行方向の間で渋滞状況に差異が生じているか否かを判定する。
【0052】
図5は、道路リンクの一例を示す図である。例えば、道路の接続関係を示す道路ネットワーク上に、各々が交差点の位置を示すノードN1からノードN5と、ノード間を接続するリンクL1からリンクL4とが設けられているものとする。リンクL1はノードN1およびノードN2を接続する。リンクL2はノードN2およびノードN3を接続する。リンクL3はノードN2およびノードN4を接続する。リンクL4はノードN2およびノードN5を接続する。
【0053】
図6は、サブ区間の生成方法について説明するための図である。図6は、ノードN1およびノードN2を接続するリンクL1の一例を示している。交通状況判定装置2は、リンクL1を所定の距離間隔で分割することにより、複数のサブ区間を生成する。例えば、交通状況判定装置2は、ノードN2から所定の距離間隔でサブノードSN1,SN2,SN3,SN4を設定する。交通状況判定装置2は、隣接するノードまたはサブノード間を接続するサブ区間を生成する。例えば、交通状況判定装置2は、ノードN2およびサブノードSN1を接続するサブ区間Sec1と、サブノードSN1およびサブノードSN2を接続するサブ区間Sec2と、サブノードSN2およびサブノードSN3を接続するサブ区間Sec3とを生成する。また、交通状況判定装置2は、サブノードSN3およびサブノードSN4を接続するサブ区間Sec4と、サブノードSN4およびノードN1を接続するサブ区間Sec5とを生成する。
【0054】
なお、交通状況判定装置2は、ノードN1から所定の距離間隔でサブノードを設定するものであってもよい。
【0055】
図7は、渋滞監視対象区間に含まれるサブ区間ごとのプローブ車両3の速度分布の一例を示す図である。プローブ車両3の速度分布は、プローブ車両3の速度特性の一例である。
図7の(a)は、渋滞監視対象区間を低速走行したプローブ車両3の速度分布を示す図である。速度分布の横方向は、渋滞監視対象区間におけるサブ区間の位置を示しており、右側が渋滞監視対象区間の上流側のサブ区間を示し、左側が渋滞監視対象区間の下流側のサブ区間を示す。速度分布の縦方向は時刻を表し、6時から12時までの時刻を示している。速度分布は、複数のタイルから構成されているものとする。各タイルは、所定の時間(例えば、6:00から6:05)に当該タイルに対応するサブ区間を通過したプローブ車両3のうち、当該サブ区間を低速走行するプローブ車両3の速度の平均値を濃淡の違いで示したものである。ここで、低速走行するプローブ車両3とは、例えば、所定の時間にサブ区間を通過したプローブ車両3を、当該サブ区間における走行速度の昇順に並べた場合に、最低速度のプローブ車両3から数えて所定台数のプローブ車両3のことである。
【0056】
図7の(b)は、渋滞監視対象区間を高速走行したプローブ車両3の速度分布を示す図である。速度分布の横方向および縦方向は、図7の(a)と同様である。速度分布は、複数のタイルから構成されているものとする。各タイルは、所定の時間(例えば、6:00から6:05)に当該タイルに対応するサブ区間を通過したプローブ車両3のうち、当該サブ区間を高速走行するプローブ車両3の速度の平均値を濃淡の違いで示したものである。ここで、高速走行するプローブ車両3とは、例えば、所定の時間にサブ区間を通過したプローブ車両3を、当該サブ区間における走行速度の降順に並べた場合に、最高速度のプローブ車両3から数えて所定台数のプローブ車両3のことである。
【0057】
図7の(c)は、渋滞監視対象区間を走行したプローブ車両3の速度分散分布を示す図である。速度分散分布の横方向および縦方向は、図7の(a)と同様である。速度分散分布は、複数のタイルから構成されているものとする。各タイルは、所定の時間(例えば、6:00から6:05)に当該タイルに対応するサブ区間を通過したプローブ車両3の当該サブ区間における走行速度の分散を濃淡の違いで示したものである。
【0058】
図7の(d)は、渋滞監視対象区間を走行したプローブ車両3の平均速度分布を示す図である。平均速度分布の横方向および縦方向は、図7の(a)と同様である。平均速度分布は、複数のタイルから構成されているものとする。各タイルは、所定の時間(例えば、6:00から6:05)に当該タイルに対応するサブ区間を通過したプローブ車両3の当該サブ区間における平均走行速度を濃淡の違いで示したものである。
【0059】
ここで、破線矩形で示した時間帯Aおよび時間帯Bに着目する。時間帯Aは、6時30分頃から8時頃の時間帯である。時間帯Bは、9時頃から10時頃の時間帯である。
【0060】
図7の(a)の速度分布から、時間帯Aおよび時間帯Bにおいては、ともに、低速のタイルの位置が時間の経過とともに上流側に移動している。つまり、渋滞が延伸していることが推測される。
【0061】
一方、図7の(b)の速度分布からは、時間帯Aおよび時間帯Bにおいて、高速走行するプローブ車両3が存在していることがわかる。このため、渋滞延伸の影響を受けていないプローブ車両3が存在することが推測される。
【0062】
また、図7の(c)の速度分散分布からは、時間帯Bの方が時間帯Aよりも、相対的に分散値が小さいことがわかる。これは、図7の(b)の時間帯Bの速度分布において、低速のプローブ車両3が存在していることと一致する。
【0063】
したがって、時間帯Aでは進行方向間(車線間)で渋滞状況に差異が生じているが、時間帯Bでは進行方向間(車線間)で渋滞状況に大きな差異が生じていないと考えられる。つまり、交通状況判定装置2は、低速走行するプローブ車両3の速度分布と、高速走行するプローブ車両3の速度分布とから、進行方向間の渋滞状況の差異を判定する。
【0064】
なお、図7の(d)に示す平均速度分布だけからは、進行方向間の渋滞状況の差異を検出することは困難である。
【0065】
〔交通状況判定装置2の機能的構成〕
図8は、本開示の実施形態に係る交通状況判定装置2の機能的な構成を示すブロック図である。
交通状況判定装置2は、メモリ230に記憶されているコンピュータプログラム231をプロセッサ240が実行することにより実現される機能的な構成として、プローブ情報取得部21と、速度算出部22と、速度特性決定部23と、渋滞末尾位置決定部24と、差異判定部25と、渋滞方向判定部26と、表示制御部27とを備える。
【0066】
プローブ情報取得部21は、通信I/F210を介して、各プローブ車両3からプローブ情報を受信することにより、当該プローブ車両3のプローブ情報を取得する。なお、プローブ情報取得部21は、プローブ車両3からプローブ情報を直接受信するものに限定されない。プローブ情報取得部21は、プローブ車両3のプローブ情報を収集する他のサーバからプローブ車両3のプローブ情報を受信してもよい。
【0067】
速度算出部22は、プローブ情報取得部21が取得したプローブ情報に基づいて、道路リンクよりも短い距離の間隔で所定の対象区間を分割することにより得られる1以上のサブ区間の各々について、各プローブ車両3の当該サブ区間における走行速度を算出する。本実施形態では、対象区間を渋滞監視対象区間として説明を行う。なお、対象区間を、所定の道路リンクとしてもよい。サブ区間の長さは、上述したように、例えば50mである。
【0068】
速度特性決定部23は、速度算出部22が算出したプローブ車両3のサブ区間ごとの走行速度に基づいて、渋滞監視対象区間におけるプローブ車両3の速度特性を決定する。具体的には、速度特性決定部23は、複数のプローブ車両3のサブ区間ごとの速度に基づいて、渋滞監視対象区間における下位速度の速度分布である低速度分布を、プローブ車両3の速度特性として決定する。低速度分布の一例は、図7の(a)に示した渋滞監視対象区間を低速走行したプローブ車両3の速度分布である。また、速度特性決定部23は、複数のプローブ車両3のサブ区間ごとの速度に基づいて、渋滞監視対象区間における上位速度の速度分布である高速度分布を、プローブ車両3の速度特性として決定する。高速度分布の一例は、図7の(b)に示した渋滞監視対象区間を高速走行したプローブ車両3の速度分布である。
【0069】
また、速度特性決定部23は、渋滞監視対象区間に含まれる所定の定義区間における当該定義区間に含まれるサブ区間ごとの複数のプローブ車両3の走行速度のうちの上位速度の速度範囲である高速度範囲および下位速度の速度範囲である低速度範囲を、プローブ車両3の速度特性として決定する。ここで、所定の定義区間とは、例えば、渋滞監視対象区間のうち、進行方向間で車両の速度差が生じやすい区間である。例えば、渋滞監視対象区間の最下流地点から所定距離までの区間を定義区間としてもよい。また、渋滞監視対象区間の全体を定義区間としてもよい。定義区間は、例えば、交通状況判定装置2の管理者が定義する。
【0070】
図9は、高速度範囲および低速度範囲を含む速度範囲の一例を示す図である。図9の横軸は時刻を示し、縦軸は速度を示す。図9に示すバーは、5分間の間に定義区間に含まれる各サブ区間を走行したプローブ車両3の当該サブ区間における走行速度の範囲を示している。具体的には、図9の右側に凡例を示すように、当該バーは、プローブ車両3の走行速度の最小値から最大値までの範囲と、25%タイル値から50%タイル値までの範囲と、50%タイル値から75%タイル値までの範囲とを示している。ただし、バーの間隔は5分間に限定されるものではない。本実施形態では25%タイル値から50%タイル値までの範囲を低速度範囲とし、50%タイル値から75%タイル値までの範囲を高速度範囲とする。図9に示すプローブ車両3の速度範囲は、プローブ車両3の速度特性の一例である。
【0071】
再び図8を参照して、渋滞末尾位置決定部24は、高速度分布および低速度分布の各々に基づいて、プローブ車両3の渋滞末尾位置を決定する。
【0072】
図10は、渋滞末尾位置決定部24によるプローブ車両3の渋滞末尾位置の決定方法について説明するための図である。
【0073】
例えば、渋滞監視対象区間の最下流位置から上流側に向けてサブ区間Sec1からサブ区間Sec8が設定されているものとする。渋滞末尾位置決定部24は、高速度分布に基づいて、各サブ区間を走行するプローブ車両3の平均速度と所定の渋滞判定速度閾値とを比較する。渋滞末尾位置決定部24は、渋滞監視対象区間の最下流位置から見て、平均速度が最後に渋滞判定速度閾値未満となったサブ区間(サブ区間の上流側の端部)を渋滞末尾位置と決定する。
【0074】
図10の(a)は、7:00時点の高速度分布が示すサブ区間Sec1からサブ区間Sec8の平均速度を示したものである。サブ区間Sec1およびサブ区間Sec2では平均速度が渋滞判定速度閾値未満であるが、サブ区間Sec3からサブ区間Sec8では平均速度が渋滞判定速度閾値以上である。このため、渋滞末尾位置決定部24は、サブ区間Sec2(サブ区間Sec2の上流側の端部)を渋滞末尾位置と決定する。
【0075】
図10の(b)は、7:05時点の高速度分布が示すサブ区間Sec1からサブ区間Sec8の平均速度を示す。サブ区間Sec1からサブ区間Sec4では平均速度が渋滞判定速度閾値未満であるが、サブ区間Sec5からサブ区間Sec8では平均速度が渋滞判定速度閾値以上である。このため、渋滞末尾位置決定部24は、サブ区間Sec4(サブ区間Sec4の上流側の端部)を渋滞末尾位置と決定する。
【0076】
図10の(c)は、7:10時点の高速度分布が示すサブ区間Sec1からサブ区間Sec8の平均速度を示す。サブ区間Sec1からサブ区間Sec6では平均速度が渋滞判定速度閾値未満であるが、サブ区間Sec7およびSec8では平均速度が渋滞判定速度閾値以上である。このため、渋滞末尾位置決定部24は、サブ区間Sec6(サブ区間Sec6の上流側の端部)を渋滞末尾位置と決定する。
【0077】
渋滞末尾位置決定部24は、低速度分布についても、高速度分布に基づく渋滞末尾位置の決定方法と同様に、渋滞末尾位置を決定する。
【0078】
以下の説明では、高速度分布に基づいて決定された渋滞末尾位置を、「高速度渋滞末尾位置」といい、低速度分布に基づいて決定された渋滞末尾位置を、「低速度渋滞末尾位置」という。
【0079】
差異判定部25は、速度特性決定部23が決定したプローブ車両3の速度特性に基づいて、渋滞監視対象区間を走行する車両5の進行方向の間で渋滞状況に差異が生じているか否かを判定する。具体的には、差異判定部25は、図9に示した高速度範囲の幅および低速度範囲の幅の差に基づいて、渋滞監視対象区間を走行する車両5の進行方向の間で渋滞状況に差異が生じているか否かを判定する。ここで、速度範囲の幅とは、速度範囲の大きさのことである。より詳細には、差異判定部25は、図9の各バーについて、75%タイル値から50%タイル値を減算することにより高速度範囲の幅を算出し、50%タイル値から25%タイル値を減算することにより低速度範囲の幅を算出する。差異判定部25は、高速度範囲の幅と低速度範囲の幅との差(差の絶対値)を算出する。例えば、第1進行方向の車線で渋滞が発生し、第2進行方向の車線で渋滞が発生していない場合には、プローブ車両3の走行速度のばらつきが大きくなる。このため、高速度範囲と低速度範囲とを合わせた幅は大きくなる。一方、第1進行方向を走行する渋滞に巻き込まれたプローブ車両3の方が、第2進行方向を走行するプローブ車両3よりも多いと考えられる。このため、プローブ車両3の走行速度の中央値(50%タイル値)は、渋滞の影響を受けて低速度となる。つまり、道路30中に渋滞の発生している車線と渋滞の発生していない車線とが混在している場合には、高速度範囲の幅が低速度範囲の幅に比べて極めて大きくなる。このため、差異判定部25は、高速度範囲の幅と低速度範囲の幅との差が所定の閾値以上の場合には、進行方向間で渋滞状況に差が生じていると判定する。差異判定部25は、当該差が所定の閾値未満の場合には、進行方向間で渋滞状況に差が生じていないと判定する。
【0080】
図9を参照して、例えば、8時頃に着目すると高速度範囲の幅が低速度範囲の幅に比べて相対的に大きい。このような場合には、高速度範囲の幅と低速度範囲の幅との差が閾値以上となるため、進行方向間で渋滞状況に差が生じていると判定される。一方、10時頃に着目すると、高速度範囲の幅と低速度範囲の幅とは同じぐらいである。このような場合には、高速度範囲の幅と低速度範囲の幅との差が閾値未満となるため、進行方向間で渋滞状況に差が生じていない判定される。
【0081】
差異判定部25は、さらに、速度特性決定部23が決定した高速度分布および低速度分布に基づいて、車両5の進行方向間で渋滞状況に差異が生じているか否かを判定する。より詳細には、差異判定部25は、渋滞末尾位置決定部24が決定した高速度渋滞末尾位置および低速度渋滞末尾位置に基づいて、車両5の進行方向間で渋滞状況に差異が生じているか否かを判定する。例えば、差異判定部25は、高速度渋滞末尾位置が時間の経過とともに上流側に移動(渋滞が延伸)し、かつ、低速度渋滞末尾位置が時間の経過とともに上流側に移動(渋滞が延伸)している場合には、車両5の進行方向間で渋滞状況に差異が生じていないと判定する。
【0082】
なお、差異判定部25は、高速度渋滞末尾位置が時間の経過とともに下流側に移動(渋滞が解消)している場合、または、低速度渋滞末尾位置が時間の経過とともに下流側に移動(渋滞が解消)している場合には、渋滞末尾位置だけからは渋滞状況の差異の判定を行うことができないと判断する。この場合には、差異判定部25は、上述した高速度範囲および低速度範囲の差に基づいて、渋滞監視対象区間を走行する車両5の進行方向の間で渋滞状況に差異が生じているか否かを判定する。
【0083】
渋滞方向判定部26は、差異判定部25によって進行方向間で渋滞状況に差異があると判定された場合に、渋滞監視対象区間に対応して予め定められた進行方向において渋滞が生じていると判定する。具体的には、渋滞方向判定部26は、渋滞状況に差異があると判定された場合に、メモリ230に記憶されている渋滞方向推測情報232を参照して、渋滞監視対象区間に含まれる道路リンクに対応する渋滞方向を特定する。渋滞方向判定部26は、特定した渋滞方向において渋滞が生じていると判定する。図3を参照して、例えば、渋滞監視対象区間に含まれる最下流の道路リンクがL1(N1→N2)の場合には、渋滞方向判定部26は、右折方向において渋滞が生じていると判定する。
【0084】
表示制御部27は、図7の(a)に示したような渋滞監視対象区間の低速度分布、および図7の(b)に示したような渋滞監視対象区間の高速度分布の少なくとも一方を示す画像情報を表示装置2Aに送信し、表示装置2Aに当該画像情報を表示させる。
【0085】
また、表示制御部27は、図9に示したような高速度範囲および低速度範囲を含む速度範囲を示す画像情報を表示装置2Aに送信し、表示装置2Aに当該画像情報を表示させる。
【0086】
〔交通状況判定装置2の処理手順〕
図11は、交通状況判定装置2が実行するプローブ情報収集処理の手順を示すフローチャートである。
プローブ情報取得部21は、プローブ車両3が定期的に送信するプローブ情報を受信する(ステップS1)。
【0087】
プローブ情報取得部21は、受信したプローブ情報233を、メモリ230に格納する(ステップS2)。
プローブ情報取得部21は、ステップS1およびステップS2の処理を繰り返し実行する。
【0088】
図12は、交通状況判定装置2が実行する交通状況判定処理の手順を示すフローチャートである。交通状況判定処理は、プローブ情報収集処理(図11)と並行して実行される。交通状況判定処理は、所定の時間間隔(例えば、5分間隔)で繰り返し実行されるものとする。
【0089】
速度算出部22は、メモリ230に格納されているプローブ車両3ごとのプローブ情報233に基づいて、渋滞監視対象区間に含まれるサブ区間の各々について、各プローブ車両3が当該サブ区間を走行する際の速度を算出する(ステップS11)。具体的には、速度算出部22は、プローブ車両3のプローブ情報が示すプローブ車両3の位置および時刻に基づいて、当該サブ区間を通過するのに要する時間を算出し、算出した時間と当該サブ区間の距離から、プローブ車両3の速度を算出する。
【0090】
速度特性決定部23は、速度算出部22が算出したプローブ車両3のサブ区間ごとの速度に基づいて、低速度分布を決定する(ステップS12)。例えば、速度特性決定部23は、サブ区間ごとに、過去5分間の間に当該サブ区間を通過したプローブ車両3の走行速度のうち、下位から所定個数の走行速度の平均速度を算出する。速度特性決定部23は、今回算出したサブ区間ごとの平均速度と、過去に算出したサブ区間ごとの平均速度とを合わせて、図7の(a)に示したような低速度分布を決定する。
【0091】
渋滞末尾位置決定部24は、速度特性決定部23が今回算出したサブ区間ごとの平均速度に基づいて、低速度渋滞末尾位置を決定する(ステップS13)。
【0092】
渋滞末尾位置決定部24は、決定した低速度渋滞末尾位置に基づいて、低速で走行する車両の渋滞の推移を決定する(ステップS14)。
【0093】
図13は、渋滞推移決定処理(図12のステップS14)の詳細を示すフローチャートである。ここで、低速度渋滞末尾位置に基づく渋滞推移を決定する際に用いられる後述の延伸カウンタおよび解消カウンタのそれぞれの値は、初回の交通状況判定処理(図12)の実行前に0に初期化されているものとする。
【0094】
渋滞末尾位置決定部24は、前回の交通状況判定処理(図12)の実行時に比べて、渋滞が延伸しているか否かを判定する(ステップS31)。具体的には、渋滞末尾位置決定部24は、低速度渋滞末尾位置が上流側に移動している場合には、渋滞が延伸していると判定する。
【0095】
渋滞が延伸していると判定した場合には(ステップS31においてYES)、渋滞末尾位置決定部24は、延伸カウンタの値を1つインクリメントする(ステップS32)。
渋滞末尾位置決定部24は、延伸カウンタの値が3であるか否かを判定する(ステップS33)。
【0096】
延伸カウンタの値が3であると判定した場合には(ステップS33においてYES)、渋滞末尾位置決定部24は、解消カウンタの値を0にリセットする(ステップS34)。
【0097】
渋滞が延伸していないと判定した場合には(ステップS31においてNO)、渋滞末尾位置決定部24は、前回の交通状況判定処理(図12)の実行時に比べて、渋滞が解消しているか否かを判定する(ステップS35)。具体的には、渋滞末尾位置決定部24は、低速度渋滞末尾位置が下流側に移動している場合には、渋滞が解消していると判定する。
【0098】
渋滞が解消していると判定した場合には(ステップS35においてYES)、渋滞末尾位置決定部24は、解消カウンタの値を1つインクリメントする(ステップS36)。
渋滞末尾位置決定部24は、解消カウンタの値が3であるか否かを判定する(ステップS37)。
【0099】
解消カウンタの値が3であると判定した場合には(ステップS37においてYES)、渋滞末尾位置決定部24は、延伸カウンタの値を0にリセットする(ステップS38)。
【0100】
解消カウンタの値を0にリセットした場合(ステップS34)、延伸カウンタの値が3ではないと判定された場合(ステップS33においてNO)、延伸カウンタの値を0にリセットした場合(ステップS38)、解消カウンタの値が3ではないと判定された場合(ステップS37においてNO)、または、渋滞が延伸も解消もしていないと判定された場合(ステップS35においてNO)には、渋滞末尾位置決定部24は、延伸カウンタの値が3以上か否かを判定する(ステップS39)。
【0101】
延伸カウンタの値が3以上と判定された場合には(ステップS39においてYES)、渋滞末尾位置決定部24は、渋滞が「延伸中」であると判定する(ステップS40)。
【0102】
延伸カウンタの値が3未満と判定された場合には(ステップS39においてNO)、渋滞末尾位置決定部24は、解消カウンタの値が3以上か否かを判定する(ステップS41)。
【0103】
解消カウンタの値が3以上と判定された場合には(ステップS41においてYES)、渋滞末尾位置決定部24は、渋滞が「解消中」であると判定する(ステップS42)。
【0104】
解消カウンタの値が3未満と判定された場合には(ステップS41においてNO)、渋滞末尾位置決定部24は、渋滞が「解消中」であると判定する(ステップS43)。なお、ステップS43の実行時には、延伸カウンタおよび解消カウンタの双方が3未満であるため、渋滞末尾位置決定部24は、渋滞の状況が未定であると判定してもよい。
【0105】
図14は、渋滞推移決定処理(図12のステップS14)を実行することによる、延伸カウンタおよび解消カウンタのそれぞれの値の推移と、渋滞末尾位置決定部24の判定結果との一例を示す図である。
【0106】
ここでは、渋滞監視対象区間の最下流位置から上流側に向けてサブ区間Sec1からサブ区間Sec8が設定されているものとする。図14では、渋滞末尾位置を三角形により示している。例えば、7:00時点の渋滞末尾位置は、サブ区間Sec2(サブ区間Sec2の上流側の端部)であり、7:05時点の渋滞末尾位置は、サブ区間Sec4(サブ区間Sec4の上流側の端部)である。
【0107】
図14の「渋滞末尾(延伸m,解消n)」との記載は、延伸カウンタの値がmであり、解消カウンタの値がnであることを示している。例えば、7:00を初回の交通状況判定処理(図12)の実行時とすると、7:00時点の延伸カウンタおよび解消カウンタのそれぞれの値は0である。
【0108】
7:05時点のように、前時刻(7:00)から渋滞末尾位置が上流側に移動した場合には、延伸カウンタの値が1つインクリメントされる。7:15時点のように、前時刻(7:10)から渋滞末尾位置が下流側に移動した場合には、解消カウンタの値が1つインクリメントされる。7:40時点のように、前時刻(7:35)から渋滞末尾位置が移動していない場合には、延伸カウンタおよび解消カウンタの値は変化しない。
【0109】
7:25時点のように、延伸カウンタの値が1つインクリメントされ3になると、解消カウンタの値が0にリセットされる。8:00時点のように、解消カウンタの値が1つインクリメントされ3になると、延伸カウンタの値が0にリセットされる。
【0110】
7:00から7:20の間は、延伸カウンタの値および解消カウンタの値はいずれも3未満である。このため、渋滞末尾位置決定部24は、当該時間区間においては渋滞が「解消中」であると判定する(図13のステップS43)。
【0111】
7:25から7:55の間は、延伸カウンタの値が3以上である。このため、渋滞末尾位置決定部24は、当該時間区間においては渋滞が「延伸中」であると判定する(図13のステップS40)。
【0112】
8:00から8:25の間は、解消カウンタの値が3以上である。このため、渋滞末尾位置決定部24は、当該時間区間においては渋滞が「解消中」であると判定する(図13のステップS42)。
【0113】
再び図12を参照して、速度特性決定部23が低速で走行する車両の渋滞が「延伸中」であると判定した場合には(ステップS15においてYES)、速度特性決定部23は、速度算出部22が算出したプローブ車両3のサブ区間ごとの速度に基づいて、高速度分布を決定する(ステップS16)。例えば、速度特性決定部23は、サブ区間ごとに、過去5分間の間に当該サブ区間を通過したプローブ車両3の走行速度のうち、上位から所定個数の走行速度の平均速度を算出する。速度特性決定部23は、今回算出したサブ区間ごとの平均速度と、過去に算出したサブ区間ごとの平均速度とを合わせて、図7の(b)に示したような高速度分布を決定する。
【0114】
渋滞末尾位置決定部24は、速度特性決定部23が今回算出したサブ区間ごとの平均速度に基づいて、高速度渋滞末尾位置を決定する(ステップS17)。
【0115】
渋滞末尾位置決定部24は、決定した高速度渋滞末尾位置に基づいて、高速で走行する車両の渋滞の推移を決定する(ステップS18)。ステップS18の詳細な処理を示すフローチャートは、図13に示した渋滞推移決定処理(図12のステップS14)の詳細を示すフローチャートと同様である。つまり、渋滞末尾位置決定部24は、低速度渋滞末尾位置の代わりに高速度渋滞末尾位置を用いて、高速で走行する車両の渋滞の推移を決定する。
【0116】
ここで、高速度渋滞末尾位置に基づく渋滞推移を決定する際に用いられる延伸カウンタおよび解消カウンタは、低速度渋滞末尾位置に基づく渋滞推移を決定する際に用いられる延伸カウンタおよび解消カウンタとは異なるものとする。また、高速度渋滞末尾位置に基づく渋滞推移を決定する際に用いられる延伸カウンタおよび解消カウンタのそれぞれの値は、初回の交通状況判定処理(図12)の実行前に0に初期化されているものとする。
【0117】
速度特性決定部23が高速で走行する車両の渋滞が「延伸中」であると判定した場合には(ステップS19において延伸中)、低速で走行する車両の渋滞および高速で走行する車両の渋滞がともに「延伸中」であると判定されたことになる。このため、差異判定部25は、渋滞監視対象区間の進行方向(車線)間で渋滞状況に差異が生じていないと判定し、渋滞方向判定部26は、渋滞末尾位置決定部24が決定した渋滞末尾位置に基づいて、全車線共通の渋滞度を決定する(ステップS20)。渋滞度は、例えば、「順調」、「混雑」、「渋滞」の3段階で渋滞の度合いを示したものである。渋滞方向判定部26は、渋滞監視対象区間を3区間に分割した場合に、渋滞末尾位置が属する区間に基づいて渋滞度を決定する。例えば、渋滞方向判定部26は、渋滞監視対象区間の長さが1000mとした場合に、渋滞監視対象区間の最下流位置から200mの範囲内(200m未満の範囲内)に渋滞末尾位置が属する場合には、渋滞度を「順調」と決定する。また、渋滞方向判定部26は、渋滞監視対象区間の最下流位置を基準として200mから600mの範囲内(200m以上かつ600m未満の範囲内)に渋滞末尾位置が属する場合には、渋滞度を「混雑」と決定する。さらに、渋滞方向判定部26は、渋滞監視対象区間の最下流位置を基準として600mから1000mの範囲内(600m以上かつ1000m未満の範囲内)に渋滞末尾位置が属する場合には、渋滞度を「渋滞」と決定する。例えば、渋滞方向判定部26は、ステップS13において決定された低速度渋滞末尾位置およびステップS17において決定された高速度渋滞末尾位置のうち、上流側の渋滞末尾位置が属する渋滞監視対象区間中の区間位置に基づいて、全車線共通の渋滞度を決定する。
【0118】
速度特性決定部23が低速で走行する車両の渋滞が「解消中」であると判定した場合(ステップS13において解消中)、または、速度特性決定部23が高速で走行する車両の渋滞が「解消中」であると判定した場合には(ステップS19において解消中)、交通状況判定装置2は、後述の速度範囲確認処理を実行する(ステップS21)。
【0119】
図15は、速度範囲確認処理(図12のステップS21)の詳細を示すフローチャートである。
速度特性決定部23は、渋滞監視対象区間に含まれる所定の定義区間における各サブ区間での複数のプローブ車両3の走行速度のうちの上位速度の速度範囲である高速度範囲を決定する(ステップS51)。例えば、図9を参照して、速度特性決定部23は、渋滞監視対象区間の最下流位置から1km以内の範囲の定義区間において、5分間の間に定義区間に含まれる各サブ区間を通過したプローブ車両3のサブ区間の走行速度の範囲のうち、50%タイル値から75%タイル値までの範囲を高速度範囲として決定する。つまり、速度特性決定部23は、75%タイル値から50%タイル値を減算した値を高速度範囲として決定する。
【0120】
速度特性決定部23は、渋滞監視対象区間に含まれる所定の定義区間における各サブ区間での複数のプローブ車両3の走行速度のうちの下位速度の速度範囲である低速度範囲を決定する(ステップS52)。例えば、図9を参照して、速度特性決定部23は、渋滞監視対象区間の最下流位置から1km以内の範囲の定義区間において、5分間の間に定義区間に含まれる各サブ区間を通過したプローブ車両3のサブ区間の走行速度の範囲のうち、25%タイル値から50%タイル値までの範囲を低速度範囲として決定する。つまり、速度特性決定部23は、50%タイル値から25%タイル値を減算した値を低速度範囲として決定する。
【0121】
差異判定部25は、高速度範囲の幅と低速度範囲の幅との絶対値差が所定の閾値以上か否かを判定する(ステップS53)。つまり、差異判定部25は、高速度範囲の幅から低速度範囲の幅を減算した値の絶対値が閾値以上か否かを判定する。
【0122】
上記絶対値差が所定の閾値以上であると判定された場合には(ステップS53においてYES)、差異判定部25は、渋滞監視対象区間の進行方向(車線)間で渋滞状況に差異が生じていると判定し、渋滞方向判定部26は、渋滞方向推測情報232と、ステップS13において決定された低速度渋滞末尾位置およびステップS17において決定された高速度渋滞末尾位置とに基づいて進行方向ごとの渋滞度を決定する(ステップS54)。例えば、渋滞方向判定部26は、渋滞方向推測情報232に基づいて、渋滞監視対象区間の最上流位置が属する道路リンクにおける渋滞が発生しやすい進行方向を決定する。渋滞方向判定部26は、ステップS20で説明したように、渋滞監視対象区間を3区間に分割した場合の低速度渋滞末尾位置が属する区間に基づいて、渋滞が発生しやすい進行方向の車線の渋滞度を決定する。また、渋滞方向判定部26は、ステップS20で説明したように、渋滞監視対象区間を3区間に分割した場合の高速度渋滞末尾位置が属する区間に基づいて、渋滞が発生しやすい進行方向の車線以外の車線の渋滞度を決定する。
【0123】
上記絶対値差が所定の閾値未満であると判定された場合には(ステップS53においてNO)、差異判定部25は、渋滞監視対象区間の進行方向(車線)間で渋滞状況に差異が生じていないと判定し、渋滞方向判定部26は、全車線共通の渋滞度を決定する(ステップS55)。ステップS55の処理は、ステップS20の処理と同様であるため、説明を繰り返さない。
【0124】
交通状況判定装置2によると、道路リンクよりも短いサブ区間の単位でプローブ車両3の走行速度が算出されるため、プローブ車両3の走行速度から決定される速度特性は、最新の道路の渋滞状況を反映している。このため、進行方向間で渋滞状況に差異が生じている場合のプローブ車両3の速度特性と、進行方向間で渋滞状況に差異が生じていない場合のプローブ車両3の速度特性とのパターンを予め規定しておくことにより、速度特性から、道路リンクを走行する車両5の進行方向間で発生する渋滞状況の差異を早期に判定することができる。
【0125】
図9に示した高速度範囲の幅および低速度範囲の幅の差が小さい場合には、所定の定義区間の速度のばらつきが小さく、当該差が大きい場合には、当該速度のばらつきが大きいと考えることができる。このため、速度のばらつきに応じて、車両5の進行方向間で発生する渋滞状況の差異を判定することができる。
【0126】
交通状況判定装置2の渋滞方向判定部26は、渋滞監視対象区間を走行する前記車両の進行方向の間で渋滞状況に差異が生じている判定された場合に、渋滞監視対象区間(渋滞監視対象区間に含まれる道路リンク)に対応して予め定められた進行方向において渋滞が生じていると判定する。このため、渋滞が生じやすい進行方向が事前にわかっている場合には、即座に渋滞が生じている進行方向を判定することができる。
【0127】
また、例えば、第1進行方向の車線で渋滞が発生していないものの、第2進行方向の車線で渋滞が発生している場合には、低速度分布と高速度分布との間の相違が多い。一方、第1進行方向の車線および第2進行方向の車線の双方で渋滞が発生している場合には、低速度分布と高速度分布との間の違いが少ない。よって、交通状況判定装置2は、両分布を比較することにより、進行方向の間で渋滞状況に差異が生じているかを正確に判定することができる。
【0128】
また、例えば、第1進行方向の車線で渋滞が発生していないものの、第2進行方向の車線で渋滞が発生し、渋滞が延伸している場合には、高速度分布に基づいて決定された渋滞末尾位置は上流側に移動しないものの、低速度分布に基づいて決定された渋滞末尾位置は上流側に移動する。一方、第1進行方向の車線および第2進行方向の車線の双方で渋滞が発生し、渋滞が延伸している場合には、高速度分布に基づいて決定された渋滞末尾位置および低速度分布に基づいて決定された渋滞末尾位置の双方が上流側に移動する。よって、交通状況判定装置2は、2つの渋滞末尾位置から渋滞状況に差異が生じているかを正確に判定することができる。
【0129】
また、表示制御部27は、図7に示したような高速度分布および低速度分布を表示させることができる。このため、高速度分布および低速度分布の表示を見たユーザは、高速度分布に基づいて決定された渋滞末尾位置および低速度分布に基づいて決定された渋滞末尾位置を直感的に把握することができる。これにより、進行方向間で渋滞状況に差異が生じているか否かを直感的に把握することができる。
【0130】
また、表示制御部27は、図9に示したような高速度範囲および低速度範囲を表示させることができる。このため、表示を見たユーザは、高速度範囲および低速度範囲を直感的に把握することができる。これにより、所定の定義区間において速度のばらつきが生じているかを把握することができ、進行方向間で渋滞状況に差異が生じているか否かを直感的に把握することができる。
【0131】
[付記]
上述の実施形態の各処理(各機能)は、1又は複数のプロセッサを含む処理回路(Circuitry)により実現される。上記処理回路は、上記1又は複数のプロセッサに加え、1又は複数のメモリ、各種アナログ回路、各種デジタル回路が組み合わされた集積回路等で構成されてもよい。上記1又は複数のメモリは、上記各処理を上記1又は複数のプロセッサに実行させるプログラム(命令)を格納する。上記1又は複数のプロセッサは、上記1又は複数のメモリから読み出した上記プログラムに従い上記各処理を実行してもよいし、予め上記各処理を実行するように設計された論理回路に従って上記各処理を実行してもよい。上記プロセッサは、CPU、GPU、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等、コンピュータの制御に適合する種々のプロセッサであってよい。なお、物理的に分離した上記複数のプロセッサが互いに協働して上記各処理を実行してもよい。例えば、物理的に分離した複数のコンピュータのそれぞれに搭載された上記プロセッサが、LAN(Local Area Network)、WAN (Wide Area Network)、インターネット等のネットワークを介して互いに協働して上記各処理を実行してもよい。上記プログラムは、外部のサーバ装置等から上記ネットワークを介して上記メモリにインストールされても構わないし、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、半導体メモリ等の記録媒体に格納された状態で流通し、上記記録媒体から上記メモリにインストールされても構わない。
【0132】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0133】
1 交通状況判定システム
2 交通状況判定装置
2A 表示装置
3 プローブ車両
4 ネットワーク
4A 無線基地局
5 車両
21 プローブ情報取得部
22 速度算出部
23 速度特性決定部
24 渋滞末尾位置決定部
25 差異判定部
26 渋滞方向判定部
27 表示制御部
30 道路
30A 直左折車線
30B 右折車線
210 通信I/F
220 入出力I/F
230 メモリ
231 コンピュータプログラム
232 渋滞方向推測情報
233 プローブ情報
240 プロセッサ
250 バス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15